説明

エアゾール容器用キャップ

【課題】エアゾール容器の薬剤を使い切った後に余っているガスを噴出させる場合に、エアゾール容器の噴出管を操作するためのボタンとは別の部材を用意することなく、しかも、簡単、かつ、小さな力でもってボタンを押したままで保持できるようにすることで、ガスを噴出させる作業性を良好にする。
【解決手段】エアゾール容器に固定されるキャップ本体10には、ボタン30と、ストッパ50とが設けられている。ストッパ50は、押し状態にあるボタン30に当接して該ボタン30が元に戻るのを阻止する当接状態と、押し状態にあるボタン30から離れる非当接状態とに切り替える切替機構を有している。切替機構は、ストッパ50が非当接状態にあるときに所定の操作力の作用によって該ストッパ50を当接状態に切り替え、操作力が除かれた状態で当接状態を維持するように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば薬剤等を噴出するエアゾール容器に取り付けられるエアゾール容器用キャップに関するものであり、特に、ガスが余った場合に噴出させる構造の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
一般に、エアゾール容器は、例えば薬剤と薬剤を噴出させるための圧縮ガスとが収容された容器本体と、この容器本体に設けられ、弁を構成する噴射管とを備えている。噴射管を容器本体の内方へ押すことで、薬剤がガスの圧力により噴射管から噴出される。
【0003】
上記エアゾール容器には、例えば、特許文献1〜5に開示されているように、噴出管を操作するためのボタンが取り付けられている。また、エアゾール容器においては、薬剤を使い切った後に余っているガスを噴出させてから廃棄しなければならない。各特許文献には、余ったガスを噴出させるための各種構造が開示されている。
【0004】
特許文献1では、噴出管を操作するためのボタンがエアゾール容器に取り付けられ、このボタンを覆う別体のキャップがエアゾール容器に着脱可能に取り付けられている。使用時には、キャップを外してボタンを操作する。キャップには、ボタンに当接する突起部が設けられており、この突起部は、ボタンに当接する位置と、ボタンから離れた位置とに切り替えられるようになっている。そして、薬剤を使い切っていない通常の保管時には、キャップの突起部をボタンに当接しない位置にしておいてからキャップをエアゾール容器に装着する。一方、薬剤を使い切った後に余っているガスを噴出させる際には、キャップの突起部をボタンに当接する位置に切り替えた後、キャップをエアゾール容器に装着する。これにより、ボタンが押された状態が維持されて容器本体内の略全てのガスが噴出する。
【0005】
特許文献2では、特許文献1と同様にボタンがエアゾール容器に取り付けられるとともに、別体のキャップがエアゾール容器に着脱可能に取り付けられている。キャップの天板部は、下方へ変形してボタンに係合するように形成されている。薬剤を使い切った後に余っているガスを噴出させる際には、キャップの天板部を下方へ変形させることでボタンに係合し、該ボタンが押された状態が維持されて略全てのガスが噴出する。
【0006】
特許文献3では、エアゾール容器の噴出管を覆うように形成されたキャップに、ボタンが上下方向に揺動可能に設けられており、ボタンを下方へ揺動させることによって噴出管が押されるようになっている。キャップには、貫通孔が形成されており、この貫通孔には、ボタンを下方へ揺動させた状態を維持するための棒材が挿通するようになっている。棒材を貫通孔に挿通させることで、ボタンが押されて略全てのガスが噴出する。
【0007】
特許文献4では、エアゾール容器の噴出管を覆うように形成されたキャップにボタンが設けられている。キャップの周壁部には、キャップの内方へ向けて弾性変形する掛止部が形成されている。使用者は、薬剤を使い切った後に余っているガスを噴出させる際には、ボタンを押し下げた状態で掛止部を内方へ押して弾性変形させてボタンに係合させる。これにより、ボタンが押された状態が維持されて略全てのガスが噴出する。
【0008】
特許文献5では、特許文献4と同様に、キャップにボタンが設けられている。キャップの左右両側壁部には、キャップの内方へ向けて弾性変形する左側及び右側弾性変形部が形成されている。使用者は、薬剤を使い切った後に余っているガスを噴出させる際には、ボタンを押し下げた状態で、左側及び右側弾性変形部をキャップの内方へ押して弾性変形させてボタンに係合させる。これにより、ボタンが押された状態が維持されて略全てのガスが噴出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】実開平3−66884号公報
【特許文献2】特開平10−59450号公報
【特許文献3】特開2006−89091号公報
【特許文献4】特開2007−320648号公報
【特許文献5】国際公開第2006/080320号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1、2では、余ったガスを噴出させるための構造を、使用時に取り外す脱着式のキャップに設けているので、使用者がキャップを誤って紛失してしまった場合には、最後に余ったガスを噴出させる際、結局、自分でボタンを押し続けなければならず、作業が面倒である。
【0011】
また、特許文献3では、余ったガスを噴出させる際に、棒材を用意しなければならない。しかも、その棒材は、キャップの貫通孔に挿通可能な太さであること、及び、ボタンを押すことができる程度の硬さ及び長さを有するものである必要がある。そのような適当な棒材を用意するのは面倒である。
【0012】
そこで、特許文献4、5のように、エアゾール容器の噴出管を覆うキャップにボタンを設けることで、使用時にキャップを容器から取り外さない構造にし、かつ、そのキャップに、ボタンを押した状態で維持するための弾性変形部を設けることが考えられる。これにより、キャップの紛失の虞れがなくなるとともに、特許文献3のような別部材を用意せずに済む。
【0013】
ところが、特許文献4では、キャップの弾性変形部を、ボタンの一部に引っ掛かるまで押し続けなければならない。このとき、弾性変形部をボタンにうまく引っ掛けるには、ボタンの押し具合及び弾性変形部の変形量を対応させる必要があり、操作性が悪い。また、特許文献5においても、ボタンの押し具合及び弾性変形部の変形量を対応させなければならず、しかも、キャップの左側及び右側の2つの弾性変形部を、ボタンの一部に引っ掛かるまで押し続けなければならず、大きな力が必要で、操作性が悪い。
【0014】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、エアゾール容器の薬剤を使い切った後に余っているガスを噴出させる場合に、エアゾール容器の噴出管を操作するためのボタンとは別の部材を用意することなく、しかも、簡単、かつ、小さな力でもってボタンを押した状態で維持できるようにすることで、ガスを噴出させる作業性を良好にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するために、本発明では、エアゾール容器に固定されるキャップ本体にボタンを設け、さらに、そのキャップ本体に、押し状態にあるボタンのストッパを設け、ストッパは、所定の操作力によってボタンと当接する状態に切り替えられるようにし、操作力が除かれた状態でもその当接状態を維持するようにした。
【0016】
第1の発明は、噴出物及び該噴出物を噴出させるための圧縮ガスが収容された容器本体と、該容器本体に対し内方へ押動可能に設けられ、内方へ押動された状態で噴出物をガスの圧力によって噴出するための噴出管とを有するエアゾール容器に取り付けられるエアゾール容器用キャップにおいて、上記エアゾール容器に固定されるキャップ本体には、上記噴出管の押動方向に変位するボタンと、上記噴出管を押動させた押し状態にあるボタンに当接して該ボタンが元に戻るのを阻止するストッパとが設けられ、上記ストッパは、押し状態にある上記ボタンに当接して該ボタンが元に戻るのを阻止する当接状態と、押し状態にある上記ボタンから離れる非当接状態とに切り替える切替機構を有し、上記切替機構は、上記ストッパが非当接状態にあるときに所定の操作力の作用によって該ストッパを当接状態に切り替え、操作力が除かれた状態で当接状態を維持するように構成されていることを特徴とするものである。
【0017】
この構成によれば、エアゾール容器に固定されるキャップ本体に、ボタンと、ボタンのストッパとを設けたので、余っているガスを噴出させる際には、従来例のような着脱式のキャップや棒材等の別部材を用意することなく、ストッパを当接状態に切り替えるだけで、ボタンを押し状態で維持することが可能になり、エアゾール容器内の余ったガスを噴出管から噴出することが可能になる。
【0018】
非当接状態にあるストッパを当接状態に切り替える際には、所定の操作力を作用させるだけで、その後、使用者が操作力を除いてもストッパは当接状態を維持する。この当接状態にあるストッパに、押し状態にあるボタンが当接して元に戻るのが阻止されるので、従来例のキャップの弾性変形部を設けた場合のようにボタンの一部に引っ掛かるまで押し続けるという動作が不要になり、小さな力を短時間作用させればよく、操作が簡単になる。
【0019】
第2の発明は、第1の発明において、ボタンは、使用者の指を載せて押圧力を作用させるための押圧部を有し、上記押圧部とストッパとは、エアゾール容器の噴出管の径方向に離れて配置されることを特徴とするものである。
【0020】
この構成によれば、使用者が指を載せる押圧部と、使用者が操作するストッパとが、互いに噴出管の径方向に離れて位置することになる。従って、一方の手の指で押圧部を押してボタンを押し状態にしながら、他方の手の指でストッパに操作力を作用させて当接状態に切り替えるようにする場合に、押圧部とストッパとが離れていることで、一方の操作が他方の操作の邪魔になりにくい。
【0021】
第3の発明は、第1または2の発明において、ストッパは、キャップ本体においてエアゾール容器に固定される側と反対側の端部に配置されていることを特徴とするものである。
【0022】
この構成によれば、ストッパがエアゾール容器から離れることになるので、ストッパを操作する際にエアゾール容器の形状や大きさが影響しにくくなる。
【0023】
第4の発明は、第1から3のいずれか1つに記載のエアゾール容器用キャップにおいて、ボタンには、ストッパに当接する当接部が設けられ、キャップ本体は、上記当接部を挟むように配置された樹脂製の第1側壁部及び第2側壁部を有し、上記ストッパは、上記第1側壁部の当接部側に薄肉ヒンジを介して連結された第1可動部と、上記第2側壁部の当接部側に薄肉ヒンジを介して連結された第2可動部とを有し、上記第1可動部と上記第2可動部とは薄肉ヒンジを介して連結されていることを特徴とするものである。
【0024】
この構成によれば、ストッパの第1可動部と第2可動部とを薄肉ヒンジ周りに回動させることでストッパを当接状態に容易に切り替えることが可能になる。このとき、第1可動部は薄肉ヒンジで第1側壁部に一体成形され、第2可動部は薄肉ヒンジで第2側壁部に一体成形されるので、部品点数の増加が抑制される。
【発明の効果】
【0025】
第1の発明によれば、エアゾール容器に固定されるキャップ本体にボタンとストッパとを設けたので、余っているガスを噴出させる際に、別部材を用意することなく、ストッパをボタンに当接する当接状態に切り替えるだけ済む。さらに、ストッパの切替機構は、所定の操作力の作用によって当接状態に切り替えた後、操作力を除いても当接状態を維持するので、簡単、かつ、小さな力でもってボタンを押したままで保持でき、ガスを噴出させる作業性を良好にできる。
【0026】
第2の発明によれば、ボタンの押圧部とストッパとを離して配置することができるので、押圧部とストッパとを別の手の指で操作する場合に容易に行うことができる。
【0027】
第3の発明によれば、ストッパを、キャップ本体においてエアゾール容器に固定される側と反対側の端部に配置したので、エアゾール容器の形状や大きさがストッパの操作に影響しにくくなり、ストッパの操作性をより一層良好にすることができる。
【0028】
第4の発明によれば、キャップ本体に、ボタンの当接部を挟むように樹脂製の第1側壁部及び第2側壁部を設け、ストッパは、第1側壁部に薄肉ヒンジを介して連結された第1可動部と、第2側壁部に薄肉ヒンジを介して連結された第2可動部とを有し、これら可動部を薄肉ヒンジを介して連結したので、部品点数の増加を抑制しながら、ストッパを当接状態に切り替える際の操作性を良好にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】ストッパが非当接状態にあるエアゾール容器用キャップを前側から見た斜視図である。
【図2】ストッパが非当接状態にあるエアゾール容器用キャップの左右方向中心部における縦断面図である。
【図3】ストッパが非当接状態にあるエアゾール容器用キャップの正面図である。
【図4】非当接状態にあるストッパ近傍を拡大して示す正面図である。
【図5】ボタンを押した状態の図2相当図である。
【図6】ストッパが当接状態にある図1相当図である。
【図7】ストッパが当接状態にある図2相当図である。
【図8】ストッパが当接状態にある図4相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0031】
図1は、本発明の実施形態にかかるエアゾール容器用キャップ1を示すものである。このエアゾール容器用キャップ1は、図2に示すように、エアゾール容器100に取り付けられて使用されるもである。
【0032】
尚、この実施形態の説明では、「前側」とは、使用者がエアゾール容器100を使用する状態としたときに使用者から見て前方となる側をいい、「後側」とは、同状態としたときに使用者から見て後方となる側をいい、「右側」とは、同状態としたときに使用者から見て右となる側をいい、「左側」とは、同状態としたときに使用者から見て左となる側をいうものとする。
【0033】
エアゾール容器用キャップ1の説明の前に、エアゾール容器100について説明すると、エアゾール容器100は、図2に仮想線で示すように、殺虫剤(噴出物)及び殺虫剤を噴出させるための圧縮ガスが収容された縦長の容器本体101と、容器本体101に設けられた噴出管102とを備えた周知の構造のものである。容器本体101は、円筒状である。また、噴出管102は、容器本体101の上壁部の略中心部に設けられている。噴出管102は、容器本体101の上壁部から上方へ突出するように上方へ付勢されており、下方(容器本体101の内方)へ押動可能となっている。噴出管102を下方へ押動した状態で内部の弁(図示せず)が開放されて殺虫剤がガスの圧力によって噴出される。また、容器本体101に収容する噴出物は、殺虫剤に限られるものではなく、例えば、消臭剤、芳香剤、整髪料等が挙げられる。また、ガスの種類も特に限定されない。
【0034】
図1に示すように、上記エアゾール容器用キャップ1は、容器本体101の上部に取り付けられるキャップ本体10と、噴出管102を操作するためのボタン30(図2にも示す)と、押し状態にあるボタン30に当接して該ボタン30が元に戻るのを阻止するストッパ50とを備えている。ボタン30及びストッパ50は、キャップ本体10に設けられるものであり、キャップ本体10、ボタン30及びストッパ50は、弾性を有する樹脂材を用いて一体成形されている。
【0035】
キャップ本体10は、容器本体101に固定されるベース部11と、ベース部11における右側から上方へ突出するように延びる右側壁部(第1側壁部)12と、ベース部11における左側から上方へ突出するように延びる左側壁部(第2側壁部)13とを有している。
【0036】
ベース部11における右側壁部12と左側壁部13との間には、バネ部14が設けられている。このバネ部14には、右側壁部12と左側壁部13との間に位置するように上記ボタン30が設けられている。また、図2に示すように、ボタン30には、噴出管102に接続される吐出管31と、吐出管31に連通するノズル32とが設けられている。また、ストッパ50は、右側壁部12と左側壁部13との上部に設けられており、ボタン30の上部に当接可能な状態となるように構成されている。
【0037】
キャップ本体10のベース部11は、容器本体101の上部を周方向に囲む略円環状に形成された外環部15と、外環部15の内方に設けられ、容器本体101の上端部の凹部101aに嵌る右側及び左側嵌合部16(図2に右側のもののみ示す)とを備えている。右側嵌合部16は、ベース部11の裏面(下面)における右側部分から下方へ突出する板状に形成され、左側嵌合部は左側部分から同様に下方へ突出している。
【0038】
両嵌合部16は、容器本体101の周方向に略円弧状に延びていて、容器本体101の径方向に弾性変形するようになっている。各嵌合部16の下端部には、爪部16aが形成されており、この爪部16aが上記容器本体101の凹部101aに嵌って係合するようになっている。
【0039】
外環部15は、嵌合部16よりも下方に延びている。嵌合部16や容器本体101の凹部101aは外環部15によって覆われて外部から見えにくくなっている。また、図1及び図3に示すように、外環部15の右側及び左側には、容器本体101の径方向外方へ延出する右側及び左側延出部15a,15bがそれぞれ形成されている。
【0040】
図2に示すように、ベース部11の裏面の前部には、右側嵌合部16と左側嵌合部とを繋ぐように左右方向に延びるリブ17が下方へ突出するように形成されている。上記バネ部14は、ベース部11におけるリブ17の形成部位から後方へ延びる平板状に形成されている。バネ部14は後方へいくほど上側に位置するように傾斜している。バネ部14の後端部は、容器本体101への取付状態で、噴出管102よりも前側に位置している。バネ部14の前側の幅は、右側壁部12と左側壁部13との下端部の左右方向の間隔と略同じに設定されている。図3に示すように、バネ部14は、後側へ行くほど幅が狭くなっている。
【0041】
図2に示すように、バネ部14の下面のリブ17近傍には、凹部14aが形成されている。この凹部14aの形成により、バネ部14の前端部が、バネ部14の他の部分に比べて低剛性となる。従って、バネ部14の後端部に上下方向の力を加えると、バネ部14は、主に前端部が弾性変形して上下方向に撓み変形する。また、バネ部14の左右両縁部には、下方へ突出して前後方向に延びるリブ14b(図2に右側のもののみ示す)がそれぞれ形成されている。
【0042】
図1に示すように、右側壁部12は、右側へ向けて湾曲するように形成されている。右側壁部12の上部には、ストッパ50が形成されるストッパ形成部12aが設けられている。ストッパ形成部12aは、右側壁部12の上側の前縁部から後方へ延び、かつ、上下方向に延びる板状をなしている。右側壁部12の前縁部には、上下方向に延びる内側板部12bが形成されている。内側板部12bの上端部はストッパ形成部12aの下縁部に連なっており、下端部は、ベース部11に連なっている。
【0043】
右側壁部12の左右方向の寸法は、下に行くほど長くなるように設定されている。また、右側壁部12の前後方向の幅も、下に行くほど広くなるように設定されている。右側壁部12と左側壁部13との左右方向の間隔は、後側へ行くほど広くなっている。
【0044】
左側壁部13は、右側壁部12と左右対称構造であり、ストッパ形成部13a及び内側板部(図示せず)を有している。
【0045】
上記ボタン30の吐出管31は、上下方向に延びている。吐出管31の前部がバネ部14の後端部に連続している。吐出管31の下端部は、バネ部14の後端部よりも下方へ突出しており、吐出管31の下端部の前部には、リブ14bの後端部が連続している。このように、リブ14bと吐出管31とを連続させたことで、バネ部14とボタン30とが強固に一体化する。
【0046】
吐出管31の下端近傍の内周面には、内方へ向けて突出する2つの突起31a,31aが形成されている。これら突起31a,31aは、周方向に間隔をあけて配置されている。エアゾール容器100の噴出管102は、吐出管31の下端部の内側に嵌るようになっており、この状態で吐出管31と噴出管102とが接続されるようになっている。また、吐出管31の内部の突起31a、31aは、噴出管102の上端部に上方から当接するようになっており、噴出管102が吐出管31の内部に所定深さ以上入らないようになっている。
【0047】
ボタン30のノズル32は、吐出管31の上端部近傍から前方へ延びる円管状に形成されている。ノズル32の延びる方向と、吐出管31の延びる方向とは略直交している。ノズル32の断面積は、吐出管31の断面積よりも小さく設定されている。
【0048】
ノズル32の前端部(先端部)には、前側へ行くほど拡大する筒状のフレア形状部32aが設けられている。このフレア形状部32aの内部において、ノズル32の前端部が開口している。
【0049】
図1にも示すように、ノズル32の上部には、ストッパ50に当接する当接板35が形成されている。当接板35は、ノズル32外周面の上部から上方へ延び、かつ、ノズル32の軸線に沿って前後方向に延びている。図3及び図4にも示すように、当接板35の厚み寸法(左右方向の寸法)は、ノズル32の外径寸法よりも短く設定されている。図2に示すように、当接板35の前縁部は、上下方向に延びており、上に行くほど前側に位置するように若干傾斜している。当接板35の後縁部は、吐出管31の上端部の外周面に連続している。この当接板35は、吐出管31の上端部とノズル32の後端部との接続部分を補強するリブとしての機能も有している。
【0050】
また、吐出管31の上端部には、当接板35よりも上方へ突出して左右方向に延びる突板31bが設けられている。
【0051】
ボタン30の後部には、殺虫剤を噴射する際に使用者が指を載せるための指載置部37が形成されている。指載置部37は、吐出管31の外周面の後側から後方へ略水平に延びる水平部37aと、水平板部37aの後縁部から下方へ延びる後板部37bとを有している。指載置部37の左右寸法は、吐出管31の外径寸法よりも長く、右側壁部12と左側壁部13との間隔と略同じに設定されている。指載置部37の水平板部37aの上面には、凹面(押圧部)37cが形成されている。図5に仮想線で示すように、この凹面37cに指の腹の部分が嵌るようになっており、指の押圧力が直接的に作用する。
【0052】
指載置部37の後板部37bは、ベース部11の外環部15の内方に位置するようになっている。水平板部37aの下面には、左右方向の略中央部から下方へ延びるリブ39が形成されている。リブ39の前縁部は、吐出管31の下部に連なっており、後縁部は後板部37bに連なっている。従って、指載置部37は、吐出管31と強固に一体化することになる。
【0053】
指載置部37を下方へ押圧すると、図5に示すように、バネ部14の前端部近傍が弾性変形して、吐出管31、ノズル32、当接板35が指載置部37と共に下方へ変位するとともに、バネ部14よりも上方のノズル32や当接板35は同時に後方に変位する。
【0054】
ストッパ50は、当接板35に当接する当接状態(図6〜図8に示す)と、当接板35から離れた非当接状態(図1〜図5に示す)とに切り替えられる構造のものであり、図4に示すように、右側壁部12のストッパ形成部12aに一体成形された右側可動片(第1可動部)51と、左側壁部13のストッパ形成部13aに一体成形された左側可動片(第2可動部)52と、中央可動片53とを備えるとともに、右側可動片51をストッパ形成部12aに回動可能に連結する第1右側薄肉ヒンジ51aと、左側可動片52をストッパ形成部13aに回動可能に連結する第1左側薄肉ヒンジ52aと、中央可動片53を右側可動片51に回動可能に連結する第2右側薄肉ヒンジ53aと、中央可動片53を左側可動片52に回動可能に連結する第2左側薄肉ヒンジ53bとを備えている。
【0055】
図1及び図6に示すように、右側可動片51は、前後方向に長い形状とされ、図2に示すように、右側可動片51の前端部は、右側壁部12の前縁部に対応するように位置し、後縁部は、ストッパ形成部12aの後縁部近傍に位置している。図4に示すように、右側可動片51は、前方から見て緩い円弧を描くように湾曲している。左側可動片52は右側可動片51と略同じ形状とされている。中央可動片53は、右側可動片51よりも幅が狭く、前後に細長い棒状となっている。中央可動片53の前後寸法は、右側可動片51の前後寸法と略同じである。可動片51〜53の前端は揃っており、また、後端も揃っている。
【0056】
第1右側薄肉ヒンジ51aは、ストッパ形成部12aと右側可動片51の右縁部とを連結するように右側壁部12及び右側可動片51に一体成形されており、その回動軸は、前後方向に延びている。従って、右側可動片51は、第1右側薄肉ヒンジ51a周りに上下方向に回動可能となる。
【0057】
第1左側薄肉ヒンジ52aは、ストッパ形成部13aと左側可動片52の右縁部とを連結するように左側壁部13及び左側可動片52に一体成形されており、その回動軸は、前後方向に延びている。従って、左側可動片52は、第1左側薄肉ヒンジ52a周りに上下方向に回動可能となる。
【0058】
第2右側薄肉ヒンジ53aは、右側可動片51の左縁部及び中央可動片53の右縁部を連結するように右側可動片51及び中央可動片53に一体成形されており、その回動軸は、前後方向に延びている。従って、中央可動片53は、第2右側薄肉ヒンジ53a周りに回動可能となる。
【0059】
第2左側薄肉ヒンジ53bは、左側可動片52の右縁部及び中央可動片53の左縁部を連結するように左側可動片52及び中央可動片53に一体成形されており、その回動軸は、前後方向に延びている。従って、中央可動片53は、第2左側薄肉ヒンジ53b周りにも回動可能となる。右側可動片51と、左側可動片52とは、薄肉ヒンジ51a,52a,53a,53bを介して連結されることになる。薄肉ヒンジ51a,52a,53a,53bは、本発明の切替機構を構成している。
【0060】
図4に示すように、右側可動片51の幅W1、左側可動片52の幅W2及び中央可動片53の幅W3を合計すると、右側壁部12のストッパ形成部12aと左側壁部13のストッパ形成部13aの左右方向の隙間寸法Lよりも長くなるように、各部の寸法W1〜W3、Lが設定されている。
【0061】
従って、使用者等による外力が除かれた状態では、右側、左側及び中央可動片51〜53が、左右に延びる一直線上に並ぶことはなく、図1〜図5に示すように中央可動片53が第1右側薄肉ヒンジ51aや第1左側薄肉ヒンジ52aよりも上に位置する状態と、図6〜図8に示すように中央可動片53が第1右側薄肉ヒンジ51aや第1左側薄肉ヒンジ52aよりも下に位置する状態との一方となる。
【0062】
ストッパ50の図1〜図5に示す状態が、当接板35に当接しない非当接状態である。ストッパ50が非当接状態にあるときには、ボタン30が押し状態(図5に示すようにノズル32から殺虫剤が噴出している状態)にあるとき、及び、ボタン30が押されていない状態(図2に示すようにノズル32から殺虫剤が噴出していない状態)にあるときの両方で、当接板35から離れる。このとき、中央可動片53は、当接板35の上縁部よりも上方で、かつ、右側可動片51及び左側可動片52よりも上方に位置している。また、右側可動片51は、その左側が右側よりも上方に位置するように傾斜しており、左側可動片52は、その右側が左側よりも上方に位置するように傾斜している。従って、中央可動片53、右側可動片51及び左側可動片52は、上方へ湾曲するアーチを形作っている。
【0063】
さらに、非当接状態では、最も上に位置することになる中央可動片53は、右側壁部12及び左側壁部13の上端部よりも若干下方に位置している。これにより、中央可動片53や、右側可動片51及び左側可動片52は、右側壁部12及び左側壁部13によって保護されることになり、物品等が不意に当たってストッパ50が破損してしまうのを回避できるとともに、非当接状態から当接状態に不意に切り替わってしまうのを防止することもできる。
【0064】
非当接状態にあるストッパ50を上方から下方へ押すと当接状態に切り替わる。すなわち、中央可動片53、右側可動片51及び左側可動片52が上方から押されると、各可動片51〜53が弾性変形するとともに、右側側壁部12及び左側側壁部13が、両者の間隔が左右に広がるように弾性変形する。これにより、図8に示すように、右側可動片51が第1右側薄肉ヒンジ51a周りに下方へ回動するとともに、左側可動片52が第1左側薄肉ヒンジ52a周りに下方へ回動し、さらに、中央可動片53が第2右側薄肉ヒンジ53a及び第2左側薄肉ヒンジ53b周りに回動する。そして、右側可動片51は、その左側が右側よりも下方に位置するように傾斜し、左側可動片52は、その右側が左側よりも下方に位置するように傾斜する。このとき、図7に示すように、ボタン30が押し状態であれば、ストッパ50の中央可動片53の後端部と、ボタン30の当接板35の前縁部とが当接する位置関係となり、これにより、ボタン30への押圧力を除いても、当接板35が中央可動片53に当接してボタン30が押し状態から元の状態に戻るのが阻止される。
【0065】
詳細には、一方の手の指にてボタン30をそのストロークエンドまで押し切った状態で、他方の手の指にてストッパ50を当接状態に切り替えた後、ボタン30から一方の手の指を外すことにより、ボタン30は多少元の状態に戻りかけるが、ストッパ50との当接により完全には元の状態に戻りきらず、ノズル32から十分な量のガス噴出状態を維持するものである。
【0066】
次に、上記のように構成されたエアゾール容器用キャップ1をエアゾール容器100に取り付けて使用する場合について説明する。尚、ストッパ50は非当接状態としておく。
【0067】
エアゾール容器用キャップ1をエアゾール容器100に取り付ける際には、エアゾール容器用キャップ1を、容器本体101にその上方から押し付ける。すると、エアゾール容器用キャップ1の右側及び左側嵌合部16が開くように弾性変形し、爪部16aが容器本体100の凹部101aに嵌り、係合する。これにより、エアゾール容器用キャップ1がエアゾール容器100に取り付けられ、噴出管102の上端部がエアゾール容器用キャップ1の吐出管31の下端部の内側に挿入されて接続される。
【0068】
殺虫剤を噴射する場合には、図5に示すように、使用者は指(仮想線で示す)をエアゾール容器用キャップ1の指載置部37に載せる。そして、指載置部37を押すと、バネ部14は前端部近傍が弾性変形し、吐出管31、ノズル32及び当接板35が下方へ変位する。吐出管31の下方への変位によって噴出管103が容器本体101の内方へ押動される。噴出管103が押動されると、容器本体101内の殺虫剤がガスの圧力によって噴出管102から噴出して吐出管31を通ってノズル32の前端から放出される。
【0069】
次に、殺虫剤を使い終わった後、ガスが残っている場合について説明する。まず、使用者の一方の手の指をエアゾール容器用キャップ1の指載置部37に載せて上記図5に示すように押し、噴出管103を押動させる。これにより、ガスがノズル32から放出される。
【0070】
その後、他方の手の指でストッパ50を下方へ押し、非当接状態から図7に示す当接状態に切り替える。このとき、上記したようにストッパ50に加える操作力は、各可動片51〜53を薄肉ヒンジ51a,52a,53a,53b周りに回動させるだけなので、小さな力で済み、しかも、非当接状態に切り替わった後は、操作力を除いてもその状態が維持されるので、従来例の弾性変形部を設けた場合のようにボタン30の一部に引っ掛かるまで押し続けるという動作が不要になり、小さな力を短時間作用させればよく、操作が簡単になる。
【0071】
また、指載置部37とストッパ50とは、噴出管102を基準にして径方向(キャップ1の前後方向)について反対側に位置していて互いに離れているので、一方の手の指によるボタン30の操作と、他方の手の指によるストッパ50の操作とが、お互いに邪魔になることはなく、ストッパ50の操作性は良好である。
【0072】
また、ストッパ50はキャップ本体10においてエアゾール容器100に固定される側(下側)と反対側である上側の端部に配置されているので、エアゾール容器100の形状や大きさがストッパ50の操作に影響を及ぼしにくくなる。
【0073】
ストッパ50が当接状態に切り替えられてから、指載置部37から指を離すと、図6にも示すように、ストッパ50の中央可動片53の後端部が押し状態にあるボタン30の当接板35の前縁部に当接する。これにより、使用者は指載置部37及びストッパ50の両方から指を離しても、ボタン30が元に戻るのが阻止されて、ガスが噴出したままとなる。尚、もし、ガスの噴出を途中で止めたい場合には、ストッパ50を非当接状態にすることで、ボタン30が元に戻るので、簡単な操作で行える。
【0074】
以上説明したように、この実施形態にかかるエアゾール容器用キャップ1によれば、キャップ本体10に、ボタン30とストッパ50とを設けたので、余っているガスを噴出させる際には、従来例のような着脱式のキャップや棒材等の別部材を用意することなく、ストッパ50を当接状態に切り替えるだけで、ボタン30を押し状態で維持することが可能になり、エアゾール容器100内の余ったガスを噴出できる。
【0075】
そして、非当接状態にあるストッパ50を当接状態に切り替える際には、従来例のような押し続けるという動作は不要で、小さな力を短時間作用させればよいので、簡単、かつ、小さな力でもってボタン30を押したままで保持でき、ガスを噴出させる作業性を良好にできる。
【0076】
また、ボタン30の指載置部37とストッパ50とを離して配置したので、指載置部37とストッパ50とを別の手の指で操作する場合に容易に行うことができる。
【0077】
また、ストッパ50を、キャップ本体10においてエアゾール容器100に固定される側と反対側の上端部に配置したので、エアゾール容器100の形状や大きさがストッパ50の操作に影響しにくくなり、ストッパ50の操作性をより一層良好にすることができる。
【0078】
また、キャップ本体10に、ボタン30の当接板35を挟むように樹脂製の右側壁部12及び左側壁部13を設けている。そして、ストッパ50は、右側壁部12に第1右側薄肉ヒンジ51aを介して連結された右側可動片51と、左側壁部13に第1左側薄肉ヒンジ52aを介して連結された左側可動片52とを有する構造としたので、部品点数の増加を抑制しながら、ストッパ50を当接状態に切り替える際の操作性を良好にすることができる。
【0079】
尚、上記実施形態では、ストッパ50をボタン30の当接板35に当接させるようにしたが、これに限らず、ストッパ50を、吐出管31、ノズル32、指載置部37等に当接させるようにしてもよい。これら吐出管31、ノズル32、指載置部37に当接させる場合には、ストッパ50を設ける位置を対応する部分に変更すればよい。
【0080】
また、ストッパ50の構造は上記に限られるものではなく、例えば、中央可動片53を省略して、右側可動片51及び左側可動片52を薄肉ヒンジにより連結する構造であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0081】
以上説明したように、本発明にかかるエアゾール容器用キャップは、例えば、殺虫剤等を収容したエアゾール容器に取り付けて使用するのに適している。
【符号の説明】
【0082】
1 エアゾール容器用キャップ
10 キャップ本体
30 ボタン
50 ストッパ
51 右側可動片
51a,52a,53a,53b 薄肉ヒンジ(切替機構)
52 左側可動片
53 中央可動片
100 エアゾール容器
101 容器本体
102 噴出管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
噴出物及び該噴出物を噴出させるための圧縮ガスが収容された容器本体と、該容器本体に対し内方へ押動可能に設けられ、内方へ押動された状態で噴出物をガスの圧力によって噴出するための噴出管とを有するエアゾール容器に取り付けられるエアゾール容器用キャップにおいて、
上記エアゾール容器に固定されるキャップ本体には、上記噴出管の押動方向に変位するボタンと、上記噴出管を押動させた押し状態にあるボタンに当接して該ボタンが元に戻るのを阻止するストッパとが設けられ、
上記ストッパは、押し状態にある上記ボタンに当接して該ボタンが元に戻るのを阻止する当接状態と、押し状態にある上記ボタンから離れる非当接状態とに切り替える切替機構を有し、
上記切替機構は、上記ストッパが非当接状態にあるときに所定の操作力の作用によって該ストッパを当接状態に切り替え、操作力が除かれた状態で当接状態を維持するように構成されていることを特徴とするエアゾール容器用キャップ。
【請求項2】
請求項1に記載のエアゾール容器用キャップにおいて、
ボタンは、使用者の指を載せて押圧力を作用させるための押圧部を有し、
上記押圧部とストッパとは、エアゾール容器の噴出管の径方向に離れて配置されることを特徴とするエアゾール容器用キャップ。
【請求項3】
請求項1または2に記載のエアゾール容器用キャップにおいて、
ストッパは、キャップ本体においてエアゾール容器に固定される側と反対側の端部に配置されていることを特徴とするエアゾール容器用キャップ。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1つに記載のエアゾール容器用キャップにおいて、
ボタンには、ストッパに当接する当接部が設けられ、
キャップ本体は、上記当接部を挟むように配置された樹脂製の第1側壁部及び第2側壁部を有し、
上記ストッパは、上記第1側壁部の当接部側に薄肉ヒンジを介して連結された第1可動部と、上記第2側壁部の当接部側に薄肉ヒンジを介して連結された第2可動部とを有し、上記第1可動部と上記第2可動部とは薄肉ヒンジを介して連結されていることを特徴とするエアゾール容器用キャップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−184070(P2011−184070A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−50979(P2010−50979)
【出願日】平成22年3月8日(2010.3.8)
【出願人】(000112853)フマキラー株式会社 (155)
【出願人】(000204608)大下産業株式会社 (13)
【Fターム(参考)】