説明

エアゾール組成物

【課題】ジェル状の噴射物が内部に気泡を有し、泡が破れるときに大きな破泡音を発し、かつ破泡が持続するエアゾール組成物を得ること、噴射物の一部、特に表面が凍って指先で摘むことができる程度の硬さを有するジェルあるいはグミ状となるエアゾール組成物を得ること。
【解決手段】水性原液と液化ガスとからなるエアゾール組成物であって、前記水性原液がカラギーナンと界面活性剤とを含有し、前記カラギーナンが、水性原液中に1〜10重量%含有され、前記水性原液と前記液化ガスとの配合比が50/50〜10/90(重量比)である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアゾール組成物に関する。さらに詳しくは、カラギーナンと界面活性剤とを含有する水性原液と、液化ガスとからなるエアゾール組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1、2には、水溶性高分子と界面活性剤を含有する水性原液と、液化ガスとからなり、吐出するとパチパチと音を立てるフォームを形成するエアゾール組成物の技術が開示されている。特許文献1記載のエアゾール消炎鎮痛組成物の噴射物は、霧状ないし泡状に噴射されたのち、皮膚などの目的部位に付着するため、冷却感および爽快感が付与されるという効果がある。また、特許文献2記載のエアゾール組成物の噴射物は、フォーム状に噴射されたのち、皮膚や頭髪などに付着するとともに、冷却感と、破泡音による爽快感を付与することができる。
【0003】
【特許文献1】特開2001−335468号公報
【特許文献2】特開2003−336529号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1、2のエアゾール組成物は、水性原液中に水溶性高分子を含有し、沸点の低い液化ガスを所定量含有しているため、破泡時に比較的大きな破泡音を発するが長続きしないという問題がある。また噴射後は泡状になるため、指先で摘んで目的の部位だけに塗布することができないという問題がある。
【0005】
本発明のエアゾール組成物は、上記従来の問題に鑑みてなされたものであり、噴射物が内部に気泡を有するジェル状となり、泡が破れるときに大きな破泡音を発し、かつ破泡が持続するエアゾール組成物を得ることを目的としている、また、噴射物の一部、特に表面が凍って指先で摘むことができる程度の硬さを有するジェルあるいはグミ状となるエアゾール組成物を得ることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明にかかわるエアゾール組成物は、水性原液と液化ガスとからなるエアゾール組成物であって、前記水性原液がカラギーナンと界面活性剤とを含有し、前記カラギーナンが、水性原液中に1〜10重量%含有され、前記水性原液と前記液化ガスとの配合比が50/50〜10/90(重量比)であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
本発明にかかわるエアゾール組成物は、ジェル状の噴射物が内部に気泡を有し、その泡が破れるときにバチバチと非常に大きな破泡音を長時間発するため、破泡による好適な刺激と冷却効果が長く得られる。さらに、噴射物の一部、好ましくは表面が凍って指で摘める程度の硬さを有するジェルあるいはグミ状になるため、指で摘んで所望の部位にのみ塗布することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明のエアゾール組成物は、水性原液と液化ガスとからなるエアゾール組成物であって、前記水性原液がカラギーナンと界面活性剤とを含有し、前記カラギーナンが、水性原液中に1〜10重量%含有され、前記水性原液と前記液化ガスとの配合比が50/50〜10/90(重量比)である。
【0009】
前記カラギーナンは、所定量を界面活性剤と共に水に配合すると液膜強度が高くなり、噴射物中に液化ガスが長く保持され、液膜が破れるときに非常に大きな破泡音を発し、破泡により皮膚に良好な刺激を与えることができる。また液化ガスの保持力が極めて高くなるため、冷却効果が長続きし、さらに液化ガスの気化熱が噴射物に伝わりやすくなるため、噴射物の一部、好ましくは表面を凍らせて指で摘める程度の硬さを有するジェルあるいはグミ状になる。
【0010】
前記カラギーナンの配合量は、水性原液中1〜10重量%、さらには2〜8重量%であることが好ましい。カラギーナンの配合量が1重量%よりも少ない場合は、液膜強度が弱く液化ガスの保持能力が不充分となるため、液化ガスの気化を抑えることができず、破泡音が小さい、破泡が持続しない、冷却効果が持続しないという問題がある。また、噴射物の表面が凍らず、指で摘める程度の硬さにならない傾向があり、10重量%よりも多い場合は、水性原液の粘度が高くなりすぎ液化ガスと混ざりにくく乳化が困難になる。また、乳化物そのものの粘度が大きくなり、べたつくなどの使用感を損ねる傾向がある。また、缶への充填時に、切れが悪くなるなど、製造上の利便性が低下する傾向がある。
【0011】
前記界面活性剤は、エアゾール容器内で水性原液と液化ガスとを乳化させる、前記カラギーナンと相まって液膜強度を強くし液化ガスの保持能力を高めて、破泡音を大きくかつ持続させる、気化熱を噴射物に伝わりやすくして噴射物の一部好ましくは表面が凍って指で摘める程度の硬さにする、などの目的で配合される。
【0012】
前記界面活性剤としては、たとえば、モノヤシ油脂肪酸POEソルビタン、モノステアリン酸POEソルビタン、モノオレイン酸POEソルビタンなどのポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル;POE・POPセチルエーテル、POE・POPデシルテトラデシルエーテルなどのポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル;モノステアリン酸POEグリセリルなどのポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル;POEラノリンアルコールなどのポリオキシエチレンラノリンアルコール;POE硬化ヒマシ油などのポリオキシエチレン硬化ヒマシ油;POEセチルエーテル、POEステアリルエーテル、POEオレイルエーテル、POEラウリルエーテル、POEベヘニルエーテル、POEオクチルドデシルエーテル、POEイソセチルエーテル、POEイソステアリルエーテルなどのポリオキシエチレンアルキルエーテル;モノステアリン酸ポリエチレングリコールなどのポリエチレングリコール脂肪酸エステル、モノラウリン酸ヘキサグリセリル、モノミリスチン酸ヘキサグリセリル、モノラウリン酸ペンタグリセリル、モノミリスチン酸ペンタグリセリル、モノオレイン酸ペンタグリセリル、モノステアリン酸ペンタグリセリル、モノラウリン酸デカグルセリル、モノミリスチン酸デカグリセリル、モノステアリン酸デカグリセリル、モノイソステアリン酸デカグリセリル、モノオレイン酸デカグリセリル、モノリノール酸デカグリセリルなどのポリグリセリン脂肪酸エステル;モノオレイン酸POEグリセリルなどのポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル;モノパルミチン酸POEソルビタン、モノステアリン酸POEソルビタン、モノイソステアリン酸POEソルビタン、モノオレイン酸POEソルビタンなどのポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル;モノラウリン酸POEソルビット、テトラステアリン酸POEソルビット、テトラオレイン酸POEソルビットなどのポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル;などのHLBが10〜19、好ましくは11〜18であるものがあげられる。HLBが10よりも小さい場合は、液化ガスが連続相になりやすいため、内部に泡を保持しにくく破泡効果が得られにくい。また、液化ガスが連続相になると噴射と同時に気化しやすく噴射物に気化熱が伝わりにくくなるため、噴射物の表面一部が凍らず指で摘める程度の硬さを有するジェルあるいはグミ状になりにくい。HLBが19よりも大きい場合は液化ガスを乳化しにくくなる傾向がある。前記界面活性剤の中では、液膜強度が高くなり、液化ガスの保持能力が高くなる点からポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルを用いることが好ましい。
【0013】
前記界面活性剤の配合量は、水性原液中0.01〜10重量%、さらには0.1〜8重量%であることが好ましい。界面活性剤の配合量が0.01重量%よりも少ない場合は、水性原液と液化ガスとが乳化しにくくなり、また液膜強度が弱く液化ガスの保持能力が不充分となるため破泡音を発しなくなる、噴射物が凍りにくく指で摘める程度の硬さを有するジェルあるいはグミ状になりにくい傾向があり、10重量%よりも多い場合は皮膚上で残りやすくなり使用感が低下する傾向がある。
【0014】
前記カラギーナンと界面活性剤を溶解する溶媒は水であり、水性原液の水性成分を構成する。またエアゾール容器内部では液化ガスと乳化しており、噴射されると液化ガスを内部に保持する液膜となる。
【0015】
前記水としては、たとえば、精製水、イオン交換水、生理食塩水、海洋深層水などがあげられる。
【0016】
前記水の配合量は、水性原液中50〜97重量%、さらには60〜95重量%であることが好ましい。水の配合量が50重量%よりも少ない場合は液化ガスと乳化しにくくなる傾向があり、97重量%よりも多い場合はカラギーナンと界面活性剤を必要量配合しにくくなる。
【0017】
本発明に用いられる水性原液は、用途や目的などに応じて有効成分、アルコール類、カラギーナン以外の水溶性高分子、油分、粉体などを配合することができる。
【0018】
前記有効成分としては、たとえば、クロタミトン、d-カンフルなどの鎮痒剤、サリチル酸メチル、インドメタシン、ピロキシカム、フェルビナク、ケトプロフェンなどの消炎鎮痛剤;オキシコナゾール、クロトリマゾール、スルコナゾール、ビフォナゾール、ミコナゾール、イソコナゾール、エコナゾール、チオコナゾール、ブテナフィン、およびこれらの塩酸塩、硝酸塩、酢酸塩などの塩、などの抗真菌剤;酸化亜鉛、アラントインヒドロキシアルミニウム、タンニン酸、クエン酸、乳酸などの収斂剤;アラントイン、グリシルレチン酸、グリチルリチン酸ジカリウム、アズレンなどの抗炎症剤;塩酸ジブカイン、塩酸テトラカイン、リドカイン、塩酸リドカインなどの局所麻酔剤;ジフェンヒドラミン、塩酸ジフェンヒドラミン、マレイン酸クロルフェニラミンなどの抗ヒスタミン剤;パラオキシ安息香酸エステル、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸カリウム、フェノキシエタノール、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化クロルヘキシジン、感光素、パラクロルメタクレゾールなどの殺菌消毒剤;l−メントール、カンフルなどの清涼剤;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、1,3−ブチレングリコール、コラーゲン、キシリトール、ソルビトール、ヒアルロン酸、カロニン酸、乳酸ナトリウム、dl−ピロリドンカルボン酸塩、ケラチン、カゼイン、レシチン、尿素などの保湿剤;ラウリル酸メタクリレート、安息香酸メチル、フェニル酢酸メチル、ゲラニルクロトレート、ミリスチン酸アセトフェノン、酢酸ベンジル、プロピオン酸ベンジルなどの消臭剤;N,N−ジエチル−m−トルアミド(ディート)、カプリル酸ジエチルアミドなどの害虫忌避剤;グリシン、アラニン、ロイシン、セリン、トリプトファン、シスチン、システイン、メチオニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、アルギニンなどのアミノ酸;ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、パラメトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル、エチルヘキシルトリアゾン、オキシベンゾン、ヒドロキシベンゾフェノンスルホン酸、ジヒドロキシベンゾフェノンスルホン酸ナトリウム、ジヒドロキシベンゾフェノンなどの紫外線吸収剤;酸化亜鉛、酸化チタン、オクチルトリメトキシシラン被覆酸化チタンなどの紫外線散乱剤;レチノール、酢酸レチノール、パルミチン酸レチノール、パントテン酸カルシウム、アスコルビン酸リン酸マグネシウム、アスコルビン酸ナトリウム、dl−α−トコフェロール、酢酸トコフェロール、トコフェロール、ニコチン酸トコフェロール、ジベンゾイルチアミン、リボフラビンおよびこれらの混合物などのビタミン類;アスコルビン酸、α−トコフェロール、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソールなどの酸化防止剤;シャクヤクエキス、ヘチマエキス、バラエキス、レモンエキス、アロエエキス、ショウブ根エキス、ユーカリエキス、セージエキス、茶エキス、海藻エキス、プラセンタエキス、シルク抽出液などの抽出液;アルブチン、コウジ酸などの美白剤;天然香料、合成香料などの各種香料;などがあげられる。
【0019】
前記有効成分の配合量は、水性原液中0.05〜20重量%、好ましくは0.1〜15重量%配合される。有効成分の配合量が0.05重量%よりも少ない場合は、有効成分の効果が充分に発揮できない傾向があり、20重量%よりも多い場合は、有効成分濃度が高くなりすぎ、有効成分によっては人体へ悪影響を及ぼす場合がある。
【0020】
前記アルコール類は、使用感を向上させるだけでなく、水に溶解しにくい有効成分を溶解するための溶媒として、また噴射物の凍りやすさ、噴射物の硬さを調整するなどの目的で用いられる。
【0021】
前記アルコール類としては、たとえば、エタノール、イソプロパノールなどの炭素数が2〜3個の1価アルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリンなどの2〜3価のポリオールなどがあげられる。
【0022】
前記アルコール類の配合量は30重量%未満であることが好ましく、30重量%を超える場合は水性原液と液化ガスとが乳化しにくく、噴射物が破泡しても破泡音を発しにくくなる。なおアルコール類の配合量が15重量%未満、特に10重量%未満である場合は、ジェル状の噴射物が起泡して表面が凍りやすく、グミのように摘みやすい硬さになる。
【0023】
前記カラギーナン以外の水溶性高分子は、水性原液の粘度を調整する、噴射物の固さを調整する、などの目的で用いられる。
【0024】
前記カラギーナン以外の水溶性高分子としては、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ニトロセルロース、結晶セルロースなどのセルロース系高分子;キサンタンガム、アラビアゴム、トラガントゴム、カチオン化グアガム、グアガム、ジェランガム、ローカストビーンガムなどのガム質;ゼラチン、デキストラン、カルボキシメチルデキストランナトリウム、デキストリン、ペクチン、デンプン、トウモロコシデンプン、コムギデンプン、アルギン酸ナトリウム、変性ポテトスターチ、ヒアルロン酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマーなどの水溶性高分子;などがあげられる。
【0025】
前記カラギーナン以外の水溶性高分子の配合量は、水性原液中に0.05〜10重量%、さらには0.1〜5重量%であることが好ましい。水溶性高分子の含有量が0.05重量%未満の場合は前述の効果が得られにくく、10重量%を超える場合は水性原液の粘度が高くなりすぎ、液化ガスと乳化するときに手間がかかり、さらに使用感が低下する。
【0026】
前記油分は、水性原液と液化ガスとの乳化状態を調整する、皮膚への接着性を調整するなど噴射物の状態を調整する、などの目的で用いられる。
【0027】
前記油分としては、たとえば、流動パラフィン、スクワレン、スクワラン、イソパラフィンなどの炭化水素油;アジピン酸ジイソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、オクタン酸セチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ステアリン酸ブチル、ミリスチン酸ミリスチル、オレイン酸デシル、乳酸セチル、ステアリン酸イソセチル、セトステアリルアルコール、アジピン酸ジイソブチル、セバシン酸ジイソプロピル、コハク酸ジエトキシエチル、リンゴ酸ジイソステアリルなどのエステル油;メチルポリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、メチルシクロポリシロキサン、テトラヒドロテトラメチルシクロテトラシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサンなどのシリコーンオイル;ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、オレイン酸、イソステアリン酸などの脂肪酸;ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、ラノリンアルコールなどの高級アルコール;アボガド油、マカダミアナッツ油、シア脂、オリーブ油、ツバキ油などの油脂;ミツロウ、ラノリンロウなどのロウ類;などがあげられる。
【0028】
前記油分の配合量は、水性原液中1〜20重量%、さらには3〜15重量%であることが好ましい。油分の配合量が1重量%よりも少ない場合は、油分を配合する効果が得られにくく、20重量%よりも多い場合は乾燥性が悪くなるなど、使用感が低下する。
【0029】
前記粉体は、水性原液と液化ガスとを乳化しやすくする、乳化安定性を向上させるなど、乳化補助剤として用いられる。また、粉体自体が有効成分として作用したり、他の有効成分を担持する担体、付着剤などとしても用いることができる。
【0030】
前記粉体としては、たとえば、タルク、酸化亜鉛、カオリン、雲母、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、ケイ酸亜鉛、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム、シリカ、ゼオライト、セラミックパウダー、窒化ホウ素などがあげられる。
【0031】
前記粉体の配合量は、水性原液中0.1〜5重量%、さらには0.3〜3重量%であることが好ましい。粉体の配合量が0.1重量%よりも少ない場合は、粉体を配合しても、その効果が得られにくく、5重量%よりも多い場合はバルブや吐出部材の吐出孔で詰まりやすくなる傾向がある。また静置した状態で長期間保存した場合、粉体が容器底部で固まりやすくなり(ケーキング)、均一な組成物を吐出し難くなる傾向がある。
【0032】
本発明に用いられる水性原液は、カラギーナン、界面活性剤、必要に応じて配合される有効成分などを水やアルコール類に溶解させて調製する。なお、水性原液は、必要に応じて油成分を乳化させたり、粉体を分散させてもよい。
【0033】
前記液化ガスは、エアゾール容器内では液体であり、水性原液と乳化して乳化物を形成する。大気中に噴射されると気化して容積が増大し水性原液を発泡させるが、本願のエアゾール組成物に用いる水性原液は液膜強度が極めて強いため、一部は瞬時に気化するが、気化熱が水性原液に伝わりやすいため噴射物が充分に冷却され、残りの液化ガスはゆっくりと気化し、ゆっくり発泡する。その結果、泡が破れにくく、破れる際には極めて大きな破泡音を発する。また液化ガスによる冷却効果が持続する。
【0034】
前記液化ガスとしては、たとえば、プロパン、ノルマルブタン、イソブタンおよびこれらの混合物である液化石油ガス、ジメチルエーテル、前記液化石油ガスとジメチルエーテルの混合物などがあげられる。
【0035】
前記液化ガスのうち、水性原液と乳化しやすく安定性に優れ、噴射物が大きな破泡音を発し、かつ持続しやすいという観点から、液化石油ガスを液化ガス中に60重量%以上、さらには70重量%以上含有するものを用いることが好ましい。
【0036】
本発明のエアゾール組成物は、たとえば、耐圧容器に水性原液を充填し、次いで液化ガスをアンダーカップ充填などで充填したのちバルブを固着し、エアゾール容器を振とうして水性原液と液化ガスとを乳化させることにより調製することができる。なお、前記水性原液は温度により粘度変化が大きく、30℃での粘度が25℃の粘度の1/5以下に低下するため、少ない加熱処理で容器への充填が容易になり、液化ガスとの乳化が容易になる。
【0037】
前記水性原液と液化ガスとの配合比(重量比)は50/50〜10/90であり、45/55〜15/85であることが好ましい。配合比が50/50よりも大きい場合は、すなわち、液化ガスの配合量がエアゾール組成物中50重量%よりも少ない場合は、液化ガスの冷却能力が不充分であり、噴射物が短時間で起泡しやすくなり、破泡音が小さく、かつ持続しにくくなる。一方、配合比が10/90よりも小さい場合、すなわち、液化ガスの配合量が90重量%よりも多い場合は液化ガスを乳化しにくく、乳化が不安定になりやすい。
【0038】
なおエアゾール組成物の圧力を調整するために、加圧剤として炭酸ガス、チッ素ガス、圧縮空気、酸素ガスなどの圧縮ガスを用いることができる。
【0039】
本発明のエアゾール組成物は、噴射物が極めて大きな破泡音を発し、かつ持続する、破泡による好適な刺激が長続きする、冷却効果が長続きするため、たとえば、育毛剤、消炎鎮痛剤、鎮痒剤、制汗剤、収斂剤、ほてり止めなど、皮膚に使用する製品に好適に用いることができる。
【0040】
以下、実施例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0041】
評価方法を下記に示す。
【0042】
1)乳化
20℃に調整した水性原液を透明な耐圧容器(ポリエチレンテレフタレート製)に充填し、エアゾールバルブを取り付けた後で液化ガスを充填した。容器を上下に振り、水性原液と液化ガスの乳化状態を目視観察し、乳化に要した振とう回数を下記の基準に基づき評価した。
◎:乳化に要した振とう回数が、10回以下であった。
○:乳化に要した振とう回数が、10〜20回であった。
△:乳化に要した振とう回数が、20〜30回であった。
×:30回振っても乳化しなかった。
【0043】
次に、水性原液を30℃に調整したこと以外は上記と同様に製造し、噴射物の状態、破泡音を、下記の基準に基づき評価した。
【0044】
2)噴射物の状態
得られたエアゾール組成物を25℃の恒温水槽中に1時間浸漬し、人工皮革に0.5g噴射したときの噴射物の状態を下記の水準に基づき評価した。
◎:噴射物は起泡して表面が凍り、指で摘める硬さになった。
○:噴射物は起泡し、破泡しても繰り返し起泡した。
△:噴射物はほとんど起泡せず、固く凍結した。
×:噴射物は起泡し、一度破泡すると起泡しなかった。
××:噴射物は水性原液と液化ガスとが分離した状態になった。
【0045】
3)破泡音
◎:バチバチと極めて大きな破泡音を発し、破泡時間が3分以上持続した。
○:バチバチと大きな破泡音を発し、破泡時間が1〜3分持続した。
△:パチパチと破泡音を発するが小さく、破泡時間が1〜3分持続した。
×:パチパチと破泡音を発するが小さく、30秒以上持続しなかった。
××:破泡音を発しなかった。
【実施例】
【0046】
実施例1
下記の水性原液を調製し、水性原液12.5gをポリエチレンテレフタレート製耐圧容器に充填した。耐圧容器の開口部にエアゾールバルブをクリンプし、バルブから液化石油ガス(*3)32.5gを充填した。次いでエアゾール容器を上下に振り、水性原液と液化石油ガスとを乳化させてエアゾール組成物を製造した。結果を表1に示す。
【0047】
なお、水性原液の粘度は20℃で8,200(cps)、25℃で5,400(cps)、30℃で570(cps)であり、原液を30℃に調整することで原液充填および液化石油ガスとの乳化を簡単に行えた。
【0048】
<水性原液>
カラギーナン(*1) 3.0
POE(20)POP(8)セチルエーテル(*2) 1.0
タルク 1.0
精製水 95.0
合 計 100.0(重量%)
【0049】
<エアゾール組成物>
水性原液/液化石油ガス(*3)=25/75(重量比)
*1:アクアジェルI−2(商品名)、新田ゼラチン(株)社製
*2:NIKKOL PBC−44(商品名)、HLB12.5、日光ケミカルズ(株)社製
*3:イソブタンとノルマルブタンの混合物、20℃での蒸気圧が0.15(MPa)
【0050】
実施例2
カラギーナンの配合量を1.5%、精製水の配合量を96.5%にしたほかは、実施例1と同じ配合で調製し、エアゾール組成物を製造した。結果を表1に示す。
【0051】
実施例3
95%エタノールの配合量を10%、精製水の配合量を85%にしたほかは、実施例1と同じ配合で調製し、エアゾール組成物を製造した。結果を表1に示す。
【0052】
実施例4
下記の水性原液を調製し、水性原液15gをポリエチレンテレフタレート製耐圧容器に充填した。耐圧容器の開口部にエアゾールバルブをクリンプし、バルブから液化石油ガス(*3)35gを充填した。次いでエアゾール容器を上下に振り、水性原液と液化石油ガスとを乳化させてエアゾール組成物を製造した。結果を表1に示す。
【0053】
<水性原液>
カラギーナン(*1) 3.0
POE(20)POP(8)セチルエーテル(*2) 1.0
タルク 1.0
95%エタノール 2.5
精製水 92.5
合 計 100.0(重量%)
【0054】
<エアゾール組成物>
水性原液/液化石油ガス(*3)=30/70(重量比)
【0055】
実施例5
95%エタノールの配合量を25%、精製水の配合量を70%にしたほかは、実施例3と同じ配合で調製し、エアゾール組成物を製造した。結果を表1に示す。
【0056】
比較例1
カラギーナンの配合量を0.5%、精製水の配合量を97.5%にしたほかは、実施例1と同じ配合で調製し、エアゾール組成物を製造した。結果を表1に示す。
【0057】
比較例2
カラギーナンの配合量を11%、精製水の配合量を87%にしたほかは、実施例1と同じ配合で調製し、エアゾール組成物を製造した。結果を表1に示す。
【0058】
比較例3
水性原液と液化石油ガス(*3)の配合割合を55/45にしたほかは、実施例1と同じ配合で調製し、エアゾール組成物を製造した。結果を表1に示す。
【0059】
比較例4
水性原液と液化石油ガス(*3)の配合割合を8/92にしたほかは、実施例1と同じ配合で調製し、エアゾール組成物を製造した。結果を表1に示す。
【0060】
比較例5
カラギーナンの代わりにヒドロキシエチルセルロース(*4)を用いたこと以外は、実施例1と同じ配合で調製し、エアゾール組成物を製造した。結果を表1に示す。
*4:HEC SE850(商品名)、ダイセル化学工業(株)社製
【0061】
比較例6
ヒドロキシエチルセルロースの配合量を0.5%、精製水の配合量を97.5%にしたほかは、実施例1と同じ配合で調製し、エアゾール組成物を製造した。結果を表1に示す。
【0062】
比較例7
カラギーナンの代わりにキサンタンガム(*5)を用いたほかは、実施例1と同じ配合で調製し、エアゾール組成物を製造した。結果を表1に示す。
*5:エコーガム(商品名)、大日本住友製薬(株)社製
【0063】
比較例8
カラギーナンの代わりにジェランガム(*6)を用いたほかは、実施例1と同じ配合で調製し、エアゾール組成物を製造した。結果を表1に示す。
*6:ケルコゲル(商品名)、大日本住友製薬(株)社製
【0064】
【表1】

【0065】
表1に示されるように、本願発明のエアゾール組成物(実施例1〜4)は、噴射物の表面が凍り、指で摘める硬さになり、細かな部分にも塗布できた。また噴射物に、指先で塗り伸ばすなどのせん断を加えなくてもバチバチと非常に大きな破泡音を発し、3分間以上破泡音が持続した。
【0066】
実施例5のエアゾール組成物は噴射物の表面は凍らなかったがゆっくりと起泡し、実施例1と同様に噴射物にせん断を加えなくてもバチバチと非常に大きな破泡音を発し、3分間以上破泡音が持続した。
【0067】
次に処方例を示す。
【0068】
処方例1 ヘアトニック
<水性原液>
カラギーナン 2.00
POE(20)POP(8)セチルエーテル(*2) 1.00
酢酸トコフェロール 0.03
グリチルリチン酸 0.10
メチルパラベン 0.10
l−メントール 0.30
タルク 1.00
95%エタノール 15.00
精製水 80.47
合 計 100.00(重量%)
【0069】
<エアゾール組成物>
水性原液/液化石油ガス(*3)=40/60(重量比)
【0070】
製品例2 フットケア
<水性原液>
カラギーナン 3.0
POE(20)POP(8)セチルエーテル(*2) 1.0
トリポリリン酸二水素アルミニウム(*7) 0.5
香料 0.3
タルク 1.0
95%エタノール 2.5
精製水 91.7
合 計 100.0(重量%)
【0071】
<エアゾール組成物>
水性原液/液化石油ガス(*3)=40/60(重量比)
*7:K−FRESH MZO(商品名)、テイカ(株)社製
【0072】
製品例3 消炎鎮痛剤
<水性原液>
カラギーナン 3.0
POE(20)POP(8)セチルエーテル(*2) 1.0
サリチル酸メチル 0.5
ユーカリオイル 0.2
l−メントール 0.5
タルク 1.0
95%エタノール 10.0
精製水 83.8
合 計 100.0(重量%)
【0073】
<エアゾール組成物>
水性原液/液化石油ガス(*3)=30/70(重量比)
【0074】
製品例4 ほてり止め
<水性原液>
カラギーナン 3.0
POE(20)POP(8)セチルエーテル(*2) 1.0
グリチルリチン酸ジカリウム 0.1
l−メントール 0.5
タルク 1.0
精製水 83.8
合 計 100.0(重量%)
【0075】
<エアゾール組成物>
水性原液/液化石油ガス(*3)=27/75(重量比)
【0076】
製品例5 かゆみ止め
<水性原液>
カラギーナン 3.0
POE(20)POP(8)セチルエーテル(*2) 1.0
ジフェンヒドラミン 0.2
サリチル酸メチル 0.5
ジフェンヒドラミン 0.5
l−メントール 1.0
タルク 1.0
精製水 92.8
合 計 100.0(重量%)
【0077】
<エアゾール組成物>
水性原液/液化石油ガス(*3)=27/75(重量比)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性原液と液化ガスとからなるエアゾール組成物であって、
前記水性原液がカラギーナンと界面活性剤とを含有し、
前記カラギーナンが、水性原液中に1〜10重量%含有され、
前記水性原液と前記液化ガスとの配合比が50/50〜10/90(重量比)であるエアゾール組成物。

【公開番号】特開2009−286734(P2009−286734A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−141430(P2008−141430)
【出願日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【出願人】(391021031)株式会社ダイゾー (130)
【Fターム(参考)】