説明

エアゾール製品およびその容器

【課題】 使用者が使用直前に噴射容量を調整でき、その噴射容量以上の噴射を防止するエアゾール製品およびその容器を提供する。
【解決手段】 透光性を有する有底筒状の容器本体11と、その口部に固着されるエアゾールバルブ12と、そのエアゾールバルブの下端に連結される液体貯留部材13と、エアゾール組成物14とから構成されているエアゾール製品10。この液体貯留部材13の上端にはスリット28が形成されており、このスリット28はエアゾール組成物の気相部に開口しており、エアゾールバルブの下端には、液体貯留部材とエアゾールバルブ内とを連通するディップチューブ24が挿入されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエアゾール製品およびその容器に関する。さらに詳しくは、使用直前に噴射容量の調整が可能なエアゾール製品およびその容器に関する。
【背景技術】
【0002】
【特許文献1】特開平7−315462号公報
【特許文献2】特開平11−179250号公報
【0003】
エアゾール製品は、使用者が噴射部材を操作している間は継続して内容物が噴射されるため、使用者の感覚によってその噴射量を調整する。そのため、噴射量が少なくなりすぎてメーカー側が設定している効果が得られなかったり、噴射量が多くなりすぎて使用感が悪くなったり、内容物(有効成分等)によっては人体に対して害を及ぼす結果にもなる。
一方、一回の噴射操作で所定量だけ噴射できるようにした定量噴射型エアゾールバルブが知られている。この定量噴射型エアゾールバルブは、内容物の通路に定量室を設けたものである。この定量噴射型エアゾールバルブを備えたエアゾール容器は、噴射操作をすることにより定量室を大気に開放すると同時に定量室を容器本体との連通を遮断し、噴射部材を継続して操作しても噴射操作をする前に収容されている定量室内の内容物以外は噴射されないように構成されたものである。そのため、内容物の過剰噴射を防止できる。しかし、任意にその噴射容量を変えることができないため、通常量より多く噴射したいときは繰り返し噴射操作をする必要があり手間がかかっていた。
【0004】
特許文献1には、エアゾール容器を倒立にして使用する定量バルブが開示されている。この定量バルブは、そのハウジングが内容物を導入するための孔部と、内容物を一時収容する空間部を有しているものである。そのため、この定量バルブを備えたエアゾール容器を倒立にすることにより、内容物が孔部からハウジング内である空間部に導入される。そして、その倒立状態で噴射操作を行うことによりハウジング内の空間部と大気とを連通させると同時に孔部を閉鎖し、空間部内に収容された内容物を噴射するものである。
【0005】
特許文献2には、用時に必要量の内容物(原液)をエアゾール容器内に充填することができる充填システムが開示されている。また、この充填システムのリフィル容器(エアゾール容器)とその中のシリンダーが透光性の合成樹脂やガラスから構成されており、シリンダーに目盛りを設けることが記載されている。そのため、充填されたリフィル容器内のシリンダーを目視しながら噴射することにより任意に噴射容量をコントロールすることができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1の定量バルブは、従来のバルブと同様に導入孔である孔部が噴射操作によりバルブ内で閉じられ、任意にその噴射容量を変えることができるものではない。さらに、空間部には容器内の圧力が伝わらないため、空間内の内容物は自圧で噴射することになり、噴射の途中で勢いが弱くなったり、空間部内の内容物を全量噴射できない場合がある。また、特許文献2に開示されているリフィル容器は、シリンダーを目視しながら噴射することにより任意に噴射容量をコントロールすることができるが、噴射操作を行いながらシリンダーの目盛りを目視するのは困難であり、また噴射操作を行う限り噴射は止まらないため、正確に噴射容量をコントロールすることは困難であるといえる。
【0007】
本発明は、使用者が使用直前に噴射容量の調整が可能であり、その噴射容量以上の噴射を防止するエアゾール容器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のエアゾール製品は、容器本体と、その容器本体の口部に固着されるエアゾールバルブと、そのエアゾールバルブに連結される液体貯留部材と、容器本体内に充填されるエアゾール組成物とからなり、前記液体貯留部材がエアゾール組成物の気相部に開口する導入孔を備えており、前記液体貯留部材の底部近辺とエアゾールバルブ内とを直接連通する筒状の液体供給通路を備えていることを特徴としている(請求項1)。ここで筒状の液体供給通路とは、外形あるいは内形が丸であるものに限定されず、一方の開口部から他方の開口部に液体を誘導するものをいう。
【0009】
このようなエアゾール製品であって、液体貯留部材が有底筒状であり、エアゾールバルブのハウジングに装着されるものが好ましい(請求項2)。また、前記液体供給通路が、両端が開口した筒であり、一端の開口が液体貯留部材の底部近辺に配置され他端の開口がエアゾールバルブのハウジングに装着されるもの(請求項3)、さらには、前記液体供給通路が、エアゾールバルブのハウジング下部に一体成形された筒部であり、筒部の下端開口が液体貯留部材の底部近辺に配置されているものが好ましい(請求項4)。また、このようにエアゾールバルブに装着された液体供給通路に液体貯留部材が装着されていてもよい(請求項5)。
【0010】
また、本発明のエアゾール製品であって、容器本体および液体貯留部材が透光性の材料で成形されているもの(請求項6)、そして、前記液体貯留部材に噴射容量を示す目盛りが設けられていてもよい(請求項7)。さらに、液体貯留部材の全体がエアゾール組成物の気相部に露出しているもの(請求項8)、または、導入孔の断面積が5mm以上であるものであってもよい(請求項9)。
【0011】
本発明のエアゾール製品の第2の態様は、容器本体と、その容器本体の口部に固着されるエアゾールバルブと、その容器本体内に充填されるエアゾール組成物とからなり、エアゾールバルブが、エアゾール組成物の気相部に開口する導入孔と、導入孔から導入されるエアゾール組成物の液体を貯留するための液体貯留部と、液体貯留部の液体をハウジング内に供給するための液体供給通路とを備えていることを特徴としている(請求項10)。
【0012】
本発明のエアゾール容器は、容器本体と、その容器本体の口部に固着されるエアゾールバルブと、そのエアゾールバルブに連結される液体貯留部材とからなり、前記液体貯留部材が、その上部に容器本体内と連通する導入孔を備えており、前記液体貯留部材内の底部近辺とエアゾールバルブ内とを連通する通路とを備えていることを特徴としている(請求項11)。
本発明のエアゾール容器の第2の態様は、容器本体と、その容器本体の口部に固着されるエアゾールバルブとからなり、前記エアゾールバルブが、上部室と下部室とに区画されたハウジングを備えており、下部室が容器本体と連通する導入孔を有し、下部室の底部近辺と上部室とを連通する液体供給通路を備えていることを特徴としている(請求項12)。
【発明の効果】
【0013】
本発明のエアゾール製品は、容器本体と、その容器本体の口部に固着されるエアゾールバルブと、そのエアゾールバルブに連結される液体貯留部材と、容器本体内に充填されるエアゾール組成物とからなり、前記液体貯留部材がエアゾール組成物(以下、内容物という)の気相部に開口する導入孔を備えており、前記液体貯留部材の底部近辺とエアゾールバルブ内とを直接連通する筒状の液体供給通路を備えているため、噴射する前にエアゾール容器を上下に振る/上下逆さまにするなどにより液体貯留部材内に内容物の液相部を導入孔から導入して初めて噴射可能となる。そのため、エアゾール容器を上下に振る/逆さまにする回数によって噴射容量を調整することができる。またエアゾールバルブを開放すると、液体貯留部材に導入された内容物のみがスムーズに噴射され、液体貯留部材内の内容物を噴射した後は、エアゾール組成物のガスだけが噴射される。そのため使用者は目的とした内容物が噴射されたことを認識することができ、過剰噴射を防止することができる。
【0014】
また、液体貯留部材の底部近辺とエアゾールバルブ内とを直接連通する筒状の液体供給通路を備えているため、液体貯留部材内に導入されたエアゾール組成物の液体を、噴射状態を変えることなく全量噴射することができる。
【0015】
さらに、本発明のエアゾール製品は液体貯留部材内に液体の内容物が貯留されない限り、たとえ噴射操作してもガスしか噴射されないため、不必要時にバルブが開放されても、特に引火性を有する内容物であっても、安全である。また、エアゾール製品が不要になったときは、バルブを開放位置に固定するとガスだけが排出され、原液が可燃物であっても排出されないため引火しにくく安全である。さらに、ガス排出後の原液を回収することができる(請求項1)。
【0016】
このようなエアゾール製品であって、液体貯留部材が有底筒状であり、エアゾールバルブのハウジングに装着される場合、従来公知のエアゾール容器を用い、現行のエアゾールバルブに液体貯留部材を装着するだけで製造することができその構造が簡単である。特に既存の製造装置を用いて製造することができ好ましい。また、口部の小さいボトル形状の容器本体であってもバルブの装着が容易である。さらに、液体貯留部材の内径と長さにより一回で噴射できる最大の噴射容量を調整することができる(請求項2)。
また、前記筒状の液体供給通路が、両端が開口した筒であり、一端の開口が液体貯留部材の底部近辺に配置され他端の開口がエアゾールバルブに装着される場合、液体供給通路の長さや内径を自由に変えることができ、噴射状態を調整することができる(請求項3)。
さらに前記液体供給通路が、ハウジング下部に一体成形された筒部であり、筒部の下端開口が液体貯留部材の底部近辺に配置されている場合、部品点数を少なくすることができ、低コストでの生産が可能となる(請求項4)。
【0017】
上述したようにエアゾールバルブに連結される液体供給通路に液体貯留部材が装着されている場合、液体供給通路および液体貯留部材のエアゾールバルブへの全体としての装着が容易になる。特に、液体供給通路としてディップチューブを用いた場合、これらを1ユニットとして取り扱うことができる(請求項5)。
【0018】
前記容器本体および液体貯留部材が透光性の材料で成形されている場合、噴射容量を目視で確認しながら調整することができ、正確に調整することができる(請求項6)。また、その透光性の容器本体および液体貯留部材を用い、液体貯留部材に噴射容量を示す目盛りが設けられている場合、一層正確な噴射が可能となる。たとえば、消臭剤や芳香剤など、空間に噴射するエアゾール製品に用いる場合、噴射する部屋の大きさ(容積)に応じて噴射容量を正確に調整することができる。また、医薬品や医薬品外品のように、使用者の年齢などによって1日当たりまたは1回当たりの適性使用量が異なる場合に好適に使用できる(請求項7)。さらに、液体貯留部材の全体がエアゾール組成物の気相部に露出している場合、液体噴射部材内に導入された内容物量を目視で確認することが一層容易になる(請求項8)。
【0019】
また、液体貯留部材の導入孔の断面積が5mm以上である場合、エアゾール組成物の液体を液体貯留部材内にスムーズに導入することができる(請求項9)。
【0020】
本発明のエアゾール製品の第2の態様は、容器本体と、その容器本体の口部に固着されるエアゾールバルブと、その容器本体内に充填されるエアゾール組成物とからなり、エアゾールバルブが、エアゾール組成物の気相部に開口する導入孔と、導入孔から導入されるエアゾール組成物の液体を貯留するための液体貯留部と、液体貯留部の液体をハウジング内に供給するための液体供給通路とを備えているため、前述したように使用者は使用前に液体貯留部材内に内容物を導入させて、任意の量の噴射が可能である(請求項10)。
【0021】
本発明のエアゾール容器は、容器本体と、その容器本体の口部に固着されるエアゾールバルブと、そのエアゾールバルブに連結される液体貯留部材とからなり、前記液体貯留部材が、その上部に容器本体内と連通する導入孔を備えており、前記液体貯留部材内の底部近辺とエアゾールバルブ内とを連通する通路とを備えているため、内容物を適正充填量(容器本体の満注量の70〜80容量%)よりも大きい量(最大で満注量の90容量%)まで充填しても液体貯留部材の導入孔が内容物の気相と連通する。また、上述したように液体貯留部材に貯留された内容物だけを噴射することができる(請求項11)。
【0022】
本発明のエアゾール容器の第2の態様は、容器本体と、その容器本体の口部に固着されるエアゾールバルブとからなり、前記エアゾールバルブが、上部室と下部室とに区画されたハウジングを備えており、下部室が容器本体と連通する導入孔を有し、下部室の底部近辺と上部室とを連通する液体供給通路を備えているため、下部室(液体貯留部)内に導入した容量だけの噴射が可能である(請求項12)。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
次に本発明のエアゾール製品およびエアゾール容器を図面を用いて説明する。図1は本発明のエアゾール製品の一実施形態を示す断面図、図2aは図1のエアゾール製品のエアゾールバルブを示す拡大断面図、図2bは図2aのハウジングと液体貯留部材との装着部を示す拡大側面図、図2cは図2aの液体貯留部材を示す斜視図、図3aは本発明のエアゾール製品の他の実施形態を示す断面図、図3bは図3aの液体貯留部材を示す斜視図、図4は本発明のエアゾール製品のさらに他の実施形態を示す一部断面図、図5は本発明のエアゾール製品のさらに他の実施形態を示す一部断面図、図6は本発明のエアゾール製品のさらに他の実施形態を示す一部断面図、図7は本発明のエアゾール製品のさらに他の実施形態を示す一部断面図、図8は本発明のエアゾール製品のさらに他の実施形態を示す一部断面図、図9は本発明のエアゾール製品のさらに他の実施形態を示す断面図である。
【0024】
図1に示すエアゾール製品10は、透光性を有する有底筒状の容器本体11と、その口部に固着されるエアゾールバルブ12と、エアゾールバルブのステムに装着される噴射部材(押しボタン)15と、そのエアゾールバルブの下端に連結される液体貯留部材13と、エアゾール組成物14(A:気相部、B:液相部)とから構成されている。ここで内容物14を充填していない状態のものをエアゾール容器とする。
【0025】
容器本体11は、底部11a、胴部11b、肩部11c、首部11dおよび口部11eとからなり、ポリエチレンテレフタレートなどの合成樹脂や耐圧ガラスなどの透光性を有する材料を用いてボトル形状に成型されている。ただし、金属や不透明な合成樹脂など不透明な材料を用いてもよい。
【0026】
図2aに示すように、エアゾールバルブ12は、容器本体の口部11eの天面にガスケット16を介して載置されるフランジ部17を上部に備えたハウジング18と、ハウジング18の内部に上下移動自在に収容されるステム19と、そのステム19を常時上向きに付勢するスプリング20と、ステム19のステム孔21を塞ぐステムラバー22と、ハウジング18の下端に設けられたチューブ装着部23の内周に装着されるディップチューブ(筒)24と、エアゾールバルブ12を容器本体11の口部11eに固着するためのカバーキャップ26とからなる。また、ハウジング18の下端のチューブ装着部23において容器本体11の内部と連通する連通孔25が設けられている。
【0027】
液体貯留部材13は、底部13a、筒部13bおよび上端開口13cとからなる有底筒状のものであり、上端開口13cがチューブ装着部23の外周に装着される。また、上端開口13cには、図2cに示すように、下方に延びるスリット27が形成されている。そして、液体貯留部材の底部13aと筒部13bとからなる内部空間28が内容物(液体)を貯留するための液体貯留室として作用するものである。このような液体貯留部材13の容量としては0.1〜5ml、特に0.3〜3mlが好ましい。
このような液体貯留部材22の材料としてはポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリアセタールなどの透光性を有する合成樹脂などが挙げられる。ただし、金属や不透明な合成樹脂などの不透明な材料を用いてもよい。
【0028】
このように構成された液体貯留部材13をチューブ装着部の外周に装着することにより、図2bに示すようにスリット27が容器本体11内と内部空間28とを連通する。つまり、スリット27は容器本体11内の内容物を液体貯留部材13内に導入するための導入孔として作用する。なお、導入孔の断面積は5mm以上であることが好ましく、特に10mm以上であることが好ましい。また、このとき、ハウジングの下端に連結されたディップチューブ24は液体貯留部材13の底部13a付近まで延びており、液体貯留部材の底部近辺とエアゾールバルブ内とを連通する液体供給通路として作用する。そして、液体貯留部材13内に貯留された内容物は通常のエアゾール製品と同様にディップチューブ24によってハウジング18内に導入される。
【0029】
エアゾール組成物14は、容器本体11内で液相部Bと気相部Aとに分かれており、エアゾール容器10を静置させている状態では、スリット27が内容物の気相部と連通するように充填される。
このように充填される内容物(エアゾール組成物)としては特に限定されないが、有効成分を溶媒に配合した原液と、液化石油ガスやジメチルエーテル、およびこれらの混合物である液化ガスとからなる噴射剤が好ましい。
有効成分としては、たとえば、消臭成分、芳香成分、殺虫成分、除菌成分などの空間用有効成分、抗真菌成分、鎮痒成分、鎮痛成分、抗ヒスタミン成分、殺菌成分、局所麻酔成分、清涼成分、保湿成分、育毛成分などの人体用有効成分などが挙げられる。
溶媒としては、精製水やイオン交換水などの水、エタノールやイソプロパノールなどの低級アルコール、灯油や流動パラフィンなどの炭化水素、ミリスチン酸イソプロピルなどのエステル油、メチルポリシロキサンなどのシリコーンオイルなどが挙げられる。
【0030】
このように構成されたエアゾール製品10は、容器本体11に原液を充填し、液体貯留部材13を装着したエアゾールバルブ12を容器本体11に固着し、エアゾールバルブのステムを押し下げてステムから噴射剤を充填して製造される。なお、噴射剤はエアゾールバルブを固着する直前にアンダーカップ充填してもよい。また、容器本体11に液体貯留部材13を装着したエアゾールバルブ12を固着してエアゾール容器を製造し、その後、エアゾールバルブのステムを押し下げてステムから原液および噴射剤を充填して製造してもよい。これらは内容物の種類によって適宜選択することができる。
【0031】
次にこのエアゾール製品10の使用方法を説明する。このエアゾール製品10は噴射する直前に、容器本体11を把持して上下に振る、あるいは上下に反転させるなどの振とう行為を行う。これによって、容器本体11内の内容物を均一に混合し、その内容物を液体貯留部材13のスリット27(導入孔)から内部空間28(液体貯留室)に導入する。エアゾール製品10は液体貯留部材13内に液体の内容物が充填されていないと噴射されないためである。次いで、噴射部材15を押し下げてバルブを開放すると、内部空間28にある液体の内容物がディップチューブ24の下端開口からディップチューブ24内を通ってハウジング18内に導入され、さらに、ステム19、噴射部材の通路を通って噴射孔より外部に噴射される。このときディップチューブ24の下端開口は液体貯留部材13の底部近辺に位置するため、液体貯留部材13に貯留された液体の内容物の全部を噴射状態を変化させることなく噴射することができる。なお、噴射後は液体貯留部材13の内部空間28(液体貯留室)は空となり、液体貯留部材13は容器本体11の内容物の気相部と連通しているため、ガスだけが噴射されるようになり、使用者は液体の内容物を過剰に噴射することがない。
【0032】
噴射される内容物量は前述の振とう行為の回数や時間により調整することができ、一回で噴射できる最大の噴射量は液体貯留部材の内部空間の容積により調整することができる。また、この形態では容器本体および液体貯留部材が透光性を有する材質で構成されているため、外部から液体貯留室内に貯留されている内容物量を確認することができる。
【0033】
図3aに示すエアゾール製品30は、液体貯留部材31の筒状部分が図1のエアゾール製品の液体貯留部材13よりも短くなっており、内部空間の容積を小さくし、一回で噴射できる最大の噴射量を小さくしたものである。また、液体貯留部材31の筒部の外周面には噴射容量を示す目盛り32(図3b参照)が設けられており、液体貯留部材31全体を気相部中に露出させるように配置されている。そして、液体貯留部材31の上部にスリット33(導入孔)が形成されている。このスリット33は一個でも、複数個設けても良い。この導入孔の大きさは内容物の用途を考慮し、製造段階で適宜調整することができる。
【0034】
図4に示すエアゾール製品40は、ハウジング下端の筒状のチューブ装着部41の下端を延長し、開口44が液体貯留部材42の底部43近辺に位置するようにしたものである。他の構成は図1のエアゾール製品10と実質的に同じものである。これはチューブ装着部41を液体貯留部材の底部近辺とエアゾールバルブのハウジング内とを連通する液体供給通路としてディップチューブの代用としたものであり、開口44を備えている。これにより、エアゾール製品の部品点数を減らし、製造工程を減少させることができる。
【0035】
図5に示すエアゾール製品50は、容器本体51がアルミニウムなどの金属製であり、円盤状に成形したスラグをインパクト加工、絞り・しごき加工などにより有底筒状に成形し、さらに、ネッキング加工、ローリング加工などにより肩部、ビード部を成形したモノブロック缶、あるいは、ツーピース缶を用いることができる。また、金属板を円筒状に成型して胴部とし、胴部の上下開口部にビード部を備えた目金部と底部とを二重巻締めにより固着したスリーピース缶を用いても良い。
【0036】
この容器本体51の口部に取り付けるエアゾールバルブ52は、容器本体51のビード部51aにガスケット53を介して固着されるマウンティングキャップ54と、マウンティングキャップの中央に保持される筒状のハウジング55と、ハウジング内に上下移動自在に収容されるステム56と、そのステムを常に上方に付勢するスプリング57と、ステムラバー58とを備えている。また、図1のエアゾール製品10と同様にチューブ装着部59の内面にディップチューブ60が装着されている。
【0037】
液体貯留部材61は、チューブ装着部59の外周に装着されており、その装着部より径が大きい円筒部62と、底部63と、円筒部62の上端の天面64に導入孔65が形成されている。このように液体貯留部材61は構成されているため、一回で噴射できる最大の噴射量が大きくなっている。そのような噴射量としてたとえば、0.1〜10ml、特に0.3〜8mlが好ましい。
【0038】
このように構成されているエアゾール製品50は、原液を容器本体51に充填した後、エアゾールバルブ52を容器本体51の口部に載置し、ビード部51aとマウンティングカップ54との間から噴射剤を充填(アンダーカップ充填法)し、最後にマウンティングカップ54をビード部51aに固着して製造される。しかし、前述したようにエアゾール容器を製造し、ステムから内容物を充填してもよい。
このようなエアゾール製品50は、容器本体の開口部面積を大きくすることができるため、容量の大きい液体貯留部材61を装着することができ、たとえば殺虫剤や芳香剤、消臭剤など空間に噴射する製品に好適に用いることができる。
【0039】
図6に示すエアゾール製品66は、液体貯留部材61の上端周縁67が上に向かって拡がるようにテーパー状に形成された、いわゆる漏斗型の液体貯留部材68を備えたものである。他の構成は図5のエアゾール製品50と実質的に同じである。
このように液体貯留部材68は上に向かって注ぎ口が広く構成されているため、エアゾール製品66を倒立状態にして、容器本体内の液体内容物を液体貯留部材68に導入する。また、容器本体内の液体内容物が少なくなったときでも、その残留内容物をしっかり液体貯留部材68内に導入することができる。また、一度液体貯留部材68に導入された内容物はエアゾール製品を倒立状態にしない限り漏れない。
【0040】
図7に示すエアゾール製品70は、底部に凹部71が形成された有底筒状の液体貯留部材72と、ハウジングの下端と一体に成型され、かつ、筒状に延びている液体供給通路73を備えたエアゾールバルブ74とを備えている。また、液体供給通路73の側面下部には開口75が形成されている。この液体貯留部材72は、液体供給通路73の端部を液体貯留部材72の凹部71に嵌め込むことにより装着されており、このとき開口75が凹部71に閉鎖されないように構成されている。他の構成は図1のエアゾール製品10と実質的に同じである。
【0041】
このように構成されているため、前述したいずれのエアゾール製品と同様に液体貯留部材72の上端開口部が導入孔76として作用し、使用者がエアゾール製品70を上下に振る等することにより容器本体の内容物が液体貯留部材72内に導入される。また、導入された内容物は開口75から液体供給通路73を経てハウジング内に導入されて噴射部材から噴射される。このエアゾール製品70を用いることにより、容器本体から液体貯留部材への導入孔76の面積を大きくすることができるため、一回の操作で比較的大きい量の内容物を液体貯留部材に導入することができる。
【0042】
図8に示すエアゾール製品80は、エアゾールバルブ81のハウジング82が円筒状の胴部85を有し、胴部の内部に胴部を上部室82aと下部室82bとに区画する隔壁83が設けられているものである。上部室82aには、従来のハウジングと同様にステムとスプリングが収容されている。下部室82bは下端が開口しており、その開口に底栓87を嵌入することにより液体貯留部84を構成する。また、下部室82bの上部(隔壁より下方)には容器本体と連通する導入孔86が形成されている。さらに隔壁83の中央から図7のエアゾールバルブ74と同様に、筒状に延びている液体供給通路88が一体に形成されている。このエアゾール製品80も前述したいずれのエアゾール製品と同様に、エアゾール製品を上下に振ることにより、容器本体の内容物が導入孔86を介して液体貯留部84内に導入され、液体供給通路88、上部室を経て噴射部材より噴射される。
【0043】
図9に示すエアゾール製品90は、液体貯留部材91が液体供給通路であるディップチューブ92に装着されているものである。この液体貯留部材91は、有底筒状であり、円筒部93と、その円筒部の上端に形成されている天面94と、その円筒部の下端に嵌入される底栓95とからなる。また天面94には、ディップチューブ92を嵌入するディップチューブ装着部96がその中心に形成されており、容器本体の内容物を液体貯留部材91内に導入する導入孔97がディップチューブ装着部96の周縁に形成されている。他の構成は図3のエアゾール製品30と実質的に同じものである。
【0044】
このように上述したいずれのエアゾール製品にも、エアゾールバルブの連通孔25(図2参照)の部位、あるいは液体供給通路24にガラスまたはセラミック材料によるキャピラリーチューブや焼結体等の流量抑制部材を設けても良い。本発明のエアゾール製品は液体貯留部材をエアゾールバルブに装着して製造することができるため、このような流量抑制部材の設置が容易である。このように流量抑制部材を設けることにより、噴射量の速度を調整することができ、例えば、液体貯留部材内の内容物を所定の時間で噴射する時限式のエアゾール製品とすることができる。また、噴射の勢いを抑えるために、いずれのエアゾール製品のエアゾールバルブにもベーパータップを形成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明のエアゾール製品の一実施形態を示す断面図である。
【図2】図2aは図1のエアゾール製品のエアゾールバルブを示す拡大断面図であり、図2bは図2aのハウジングと液体貯留部材との装着部を示す拡大側面図であり、図2cは図2aの液体貯留部材を示す斜視図である。
【図3】図3aは本発明のエアゾール製品の他の実施形態を示す断面図であり、図3bは図3aの液体貯留部材を示す斜視図である。
【図4】本発明のエアゾール製品のさらに他の実施形態を示す一部断面図である。
【図5】本発明のエアゾール製品のさらに他の実施形態を示す一部断面図である。
【図6】本発明のエアゾール製品のさらに他の実施形態を示す一部断面図である。
【図7】本発明のエアゾール製品のさらに他の実施形態を示す一部断面図である。
【図8】本発明のエアゾール製品のさらに他の実施形態を示す一部断面図である。
【図9】本発明のエアゾール製品のさらに他の実施形態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0046】
A 気相部
B 液相部
10 エアゾール製品
11 容器本体
11a 底部
11b 胴部
11c 肩部
11d 首部
11e 口部
12 エアゾールバルブ
13 液体貯留部材
13a 底部
13b 筒部
13c 上端開口
14 エアゾール組成物
15 噴射部材
16 ガスケット
17 フランジ部
18 ハウジング
19 ステム
20 スプリング
21 ステム孔
22 ステムラバー
23 チューブ装着部
24 ディップチューブ
25 連通孔
26 カバーキャップ
27 スリット
28 内部空間
30 エアゾール製品
31 液体貯留部材
32 目盛り
33 スリット
40 エアゾール製品
41 チューブ装着部
42 液体貯留部材
43 底部
50 エアゾール製品
51 容器本体
51a ビード部
52 エアゾールバルブ
53 ガスケット
54 マウンティングカップ
55 ハウジング
56 ステム
57 スプリング
58 ステムラバー
59 チューブ装着部
60 ディップチューブ
61 液体貯留部材
62 円筒部
63 底部
64 天面
65 導入孔
66 エアゾール製品
67 上端周縁
68 液体貯留部材
70 エアゾール製品
71 凹部
72 液体貯留部材
73 液体供給通路
74 エアゾールバルブ
75 開口
76 導入孔
80 エアゾール製品
81 エアゾールバルブ
82 ハウジング
82a 上部室
82b 下部室
83 隔壁
84 液体貯留部材
85 胴部
86 導入孔
87 底栓
88 液体供給通路
90 エアゾール製品
91 液体貯留部材
92 ディップチューブ
93 円筒部
94 天面
95 底栓
96 ディップチューブ装着部
97 導入孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器本体と、その容器本体の口部に固着されるエアゾールバルブと、そのエアゾールバルブに連結される液体貯留部材と、容器本体内に充填されるエアゾール組成物とからなり、
前記液体貯留部材がエアゾール組成物の気相部に開口する導入孔を備えており、
前記液体貯留部材の底部近辺とエアゾールバルブ内とを直接連通する筒状の液体供給通路を備えているエアゾール製品。
【請求項2】
前記液体貯留部材が有底筒状であり、エアゾールバルブのハウジングに装着される請求項1記載のエアゾール製品。
【請求項3】
前記筒状の液体供給通路が、両端が開口した筒であり、一端の開口が液体貯留部材の底部近辺に配置され他端の開口がエアゾールバルブのハウジングに装着される請求項1記載のエアゾール製品。
【請求項4】
前記液体供給通路が、エアゾールバルブのハウジング下部に一体成形された筒部であり、筒部の下端開口が液体貯留部材の底部近辺に配置されている請求項1記載のエアゾール製品。
【請求項5】
前記液体貯留部材が液体供給通路に装着されている請求項3または4記載のエアゾール製品。
【請求項6】
容器本体および液体貯留部材が透光性の材料で成形されている請求項1記載のエアゾール製品。
【請求項7】
前記液体貯留部材に噴射容量を示す目盛りが設けられている請求項6記載のエアゾール製品。
【請求項8】
前記液体貯留部材の全体がエアゾール組成物の気相部に露出している請求項1記載のエアゾール製品。
【請求項9】
前記導入孔の断面積が5mm以上である請求項1記載のエアゾール製品。
【請求項10】
容器本体と、その容器本体の口部に固着されるエアゾールバルブと、その容器本体内に充填されるエアゾール組成物とからなり、
前記エアゾールバルブが、エアゾール組成物の気相部に開口する導入孔と、導入孔から導入されるエアゾール組成物の液体を貯留するための液体貯留部と、その液体貯留部の液体をエアゾールバルブのハウジング内に供給するための液体供給通路とを備えているエアゾール製品。
【請求項11】
容器本体と、その容器本体の口部に固着されるエアゾールバルブと、そのエアゾールバルブに連結される液体貯留部材とからなり、
前記液体貯留部材が、その上部に容器本体内と連通する導入孔を備えており、
前記液体貯留部材内の底部近辺とエアゾールバルブ内とを連通する液体供給通路とを備えているエアゾール容器。
【請求項12】
容器本体と、その容器本体の口部に固着されるエアゾールバルブとからなり、
前記エアゾールバルブが、上部室と下部室とに区画されたハウジングを備えており、下部室が容器本体と連通する導入孔を有し、下部室の底部近辺と上部室とを連通する液体供給通路を備えているエアゾール容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−321532(P2006−321532A)
【公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−146293(P2005−146293)
【出願日】平成17年5月19日(2005.5.19)
【出願人】(391021031)株式会社ダイゾー (130)
【Fターム(参考)】