説明

エアタンク搭載構造

【課題】エアタンクのサポートへの搭載時に表面の傷付きを抑制して外観品質を従来よりも向上し得るエアタンク搭載構造を提供する。
【解決手段】エアタンク1を上下二段に配置して車両のサイドレール2に搭載するための構造に関し、車両のサイドレール2に基端側を取り付けて先端側を車幅方向外側へ張り出し且つその上下面にエアタンク1を車幅方向に向け安定して圧接し得るよう該エアタンク1の外周面に沿う安置座4を備えたサポート3と、該サポート3の上下面における車幅方向複数箇所に一対一組で基端を傾動自在に枢着された平帯状のエアタンクバンド5とを備え、該エアタンクバンド5を各組で互いの先端同士を締結金具10を介し連結し且つ近接方向に締め込み得るように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアタンク搭載構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、大型トラック等においては、ブレーキやエアサスペンション等の駆動源として使用するための加圧空気を貯蔵するエアタンクが搭載されており、一般的には、シャシフレームのサイドレールに、エアタンクを支持するためのサポートの基端側を締結して先端側を車幅方向外側へ張り出させ、このサポートに対しエアタンクをUボルトにより締め付けて固定するようにしている。
【0003】
尚、この種のエアタンクをUボルトによりサポートに固定する構造に関連する先行技術文献情報としては下記の特許文献1等がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−282309号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、近年においては、燃費向上を目的とした軽量化を図るために、アルミ合金製のエアタンクを採用することが増えてきているが、アルミ合金製のエアタンクは、表面に傷が付き易いという難点があり、従来通りのUボルトにより締め付けて固定する方式では、作業中にエアタンクの表面に傷が付き易く、外観品質を保つのが難しいという問題があった。
【0006】
即ち、Uボルトにより締め付けて固定する場合、締め付けの際の伸びを均一にするためにUボルトの両端部をナットで締め上げるようにしており、該各ナットからの端部の飛び出し量が最終的に略同等になるように、前記各ナットを片側ずつ締め上げてボルト位置を概ね決定する仮締めの段階と、そこから目標トルクまで締め上げる最終的な締め上げの段階とに分けて行うようにしているが、仮締めの段階でインパクトレンチ等の工具の振動によりUボルトが振動してエアタンクの表面に多数の傷を付けてしまうことがあり、また、前記各ナットを片側ずつ締め上げることでエアタンクがサポートに対し転動し、該サポートがエアタンクの表面を引っ掻いて傷を付けてしまうこともあった。
【0007】
更に付言すると、Uボルトは強度面から高い剛性を有していて、特に可撓性を有するようには作られていないため、既にエアタンクの胴部にUボルトを掛け回す段階から表面に押付力を作用させてしまうという不具合があり、しかも、断面形状が円形であることからエアタンクとの接触が線接触となってエアタンクの表面に高い面圧を与えてしまうという不具合もあった。
【0008】
本発明は上述の実情に鑑みてなしたもので、エアタンクのサポートへの搭載時に表面の傷付きを抑制して外観品質を従来よりも向上し得るエアタンク搭載構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、エアタンクを上下二段に配置して車両のサイドレールに搭載するための構造であって、車両のサイドレールに基端側を取り付けて先端側を車幅方向外側へ張り出し且つその上下面にエアタンクを車幅方向に向け安定して圧接し得るよう該エアタンクの外周面に沿う安置座を備えたサポートと、該サポートの上下面における車幅方向複数箇所に一対一組で基端を傾動自在に枢着された平帯状のエアタンクバンドとを備え、該エアタンクバンドが各組で互いの先端同士を連結し且つ近接方向に締め込み得るように構成されていることを特徴とするエアタンク搭載構造、に係るものである。
【0010】
而して、サポートに対しエアタンクを組み付ける際には、サポートをサイドレールに取り付ける前の段階で先端側を上に向けて起立させ、その起立する長手部分の両面(サイドレールへの取り付け時に上下面となる面)にエアタンクを夫々沿わせ且つ各安置座に当接させた状態とし、斯かる状態で各組で対になっているエアタンクバンドでエアタンクの胴部を両側から挟み込むように閉じ合わせ、その先端同士を連結し且つ近接方向に締め込むことでエアタンクをサポートに固定し、該サポートにエアタンクを組み付けてアッセンブリ化した上でサイドレールに取り付ける。
【0011】
このようにエアタンクを平帯状のエアタンクバンドにより締め付けて固定する場合、該エアタンクバンドはUボルトと違って十分な可撓性を有しているため、エアタンクの外周面に密着しない限り該エアタンクへの押付力は発生せず、しかも、工具を使ってエアタンクバンドの先端同士を近接方向に締め込んでも、その工具の振動によりエアタンクバンドが振動するようなこともなく、更には、エアタンクとの接触が面接触となることでエアタンクの表面に高い面圧を与えてしまうことが回避されるため、エアタンクの表面に傷が付くような事態が大幅に抑制されることになる。
【0012】
尚、エアタンクをサポートの安置座に当接させる際には、前記サポートにおける車幅方向複数箇所に一対一組で基端を傾動自在に枢着されているエアタンクバンドを前記基端を中心に左右に開いて作業の邪魔にならないようにしておけば良いので、エアタンクバンドを安置座とエアタンクとの間に挟み込んで該エアタンクの表面に傷が付いてしまうような事態が未然に回避される。
【0013】
また、この種のエアタンクバンドは、各組で対になっているエアタンクバンドの基端相互の間隔をエアタンクの直径より狭く絞り込んで該エアタンクの安定保持を図るようにするのが通常であり、このように各組のエアタンクバンドの基端を枢着するにあたり、サポートの幅をエアタンクの幅(直径)より大きく設定する必要はないため、実質的にエアタンクの直径に相当する幅(僅かにエアタンクバンドの厚さ分だけ増えた幅)のスペースをサイドレールの長手方向に確保するだけでエアタンクを上下二段にコンパクトに搭載することが可能となる。
【0014】
即ち、従来のUボルトを用いた場合には、その中央部でエアタンクの胴部を約半周分押さえてから両端部を接線方向に延ばしてナットで締結することになるため、結果的に前記Uボルトの両端部をナットで締結するためのブラケット部分がエアタンクの幅(直径)より大きく張り出すことになるが、エアタンクバンドを用いた場合には、そのようなブラケット部分の張り出しが不要である。
【0015】
また、本発明においては、エアタンクバンドが各組で左右略均等の長さに形成されていることが好ましく、このようにすれば、左右のエアタンクバンドによる締付力が略均等になり、エアタンクをサポートに対し転動させずに締め付けて固定することが可能となるので、エアタンクにサポートによる引っ掻き傷が付くような事態も大幅に抑制されることになる。
【0016】
また、本発明は、表面に傷が付き易いアルミ合金製のエアタンクを採用している場合に特に好適であり、外観品質を高く保持しながらアルミ合金製のエアタンクの採用を実現して軽量化を図ることが可能となる。
【発明の効果】
【0017】
上記した本発明のエアタンク搭載構造によれば、下記の如き種々の優れた効果を奏し得る。
【0018】
(I)エアタンクのサポートへの搭載時に表面に傷が付いてしまう事態を従来よりも大幅に抑制することができるので、エアタンクのサポートへの搭載後における外観品質を従来よりも著しく向上することができる。
【0019】
(II)実質的にエアタンクの直径に相当する幅(僅かにエアタンクバンドの厚さ分だけ増えた幅)のスペースをサイドレールの長手方向に確保するだけでエアタンクを上下二段にコンパクトに搭載することができるので、従来のUボルトを用いた場合よりもエアタンクの搭載効率を大幅に向上することができる。
【0020】
(III)エアタンクバンドを各組で左右略均等の長さに形成すれば、左右のエアタンクバンドによる締付力を略均等にすることができ、エアタンクをサポートに対し転動させずに締め付けて固定することができるので、エアタンクにサポートによる引っ掻き傷が付くような事態も大幅に抑制することができる。
【0021】
(IV)表面に傷が付き易いアルミ合金製のエアタンクを採用しても外観品質を高く保持することができるので、該エアタンクの軽量化による燃費向上を外観品質の低下と引き換えにせずに実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明を実施する形態の一例を示す斜視図である。
【図2】図1のエアタンク搭載構造の側面図である。
【図3】図1のエアタンク搭載構造の正面図である。
【図4】図1の締結金具の詳細を示す拡大図である。
【図5】図4の締結金具を分解して示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
【0024】
図1〜図5は本発明を実施する形態の一例を示すもので、図中1はアルミ合金製のエアタンク、2は車両の前後方向に延びるサイドレール、3は該サイドレール2に基端側を取り付けて先端側を車幅方向外側へ張り出すようにしたサポートを示し、該サポート3を挟んだ上下二段に前記エアタンク1が夫々搭載されるようになっている。
【0025】
前記サポート3の上下面には、前記エアタンク1を車幅方向に向け安定して圧接し得るよう該エアタンク1の外周面に沿う安置座4が車幅方向複数箇所(図示する例では二箇所)に備えられており、該安置座4が備えられている箇所には、一対一組で基端を傾動自在に枢着された平帯状のエアタンクバンド5が備えられている。
【0026】
ここで、特に図4に拡大して示す如く、前記エアタンクバンド5の基端には、折り返しによりループ部6が形成されており、該ループ部6の孔を通してピン7を前記安置座4近傍のピン孔(図示せず)に固定することで前記エアタンクバンド5の基端を傾動自在に枢着するようにしている。
【0027】
尚、ピン7を安置座4近傍のピン孔(図示なし)に固定するにあたっては、例えば、このピン孔にピン7を差し込んだ後に、該ピン7の先端の直径方向に開けた孔(図示なし)にスナップピン8を差し込んで平ワッシャー9を介し抜け止めして固定するようにすれば良い。
【0028】
また、前記各組のエアタンクバンド5は、左右略均等の長さに形成されて互いの先端同士を締結金具10を介し連結し且つ近接方向に締め込み得るように構成されている。この締結金具10の詳細は図4及び図5に示す通りであり、T字状の締結ボルト11をT字状の仲介パイプ12に挿通せしめ、前記締結ボルト11のネジ部に対する締結ナット13の締め込みにより、締結ボルト11と仲介パイプ12とにおけるハンマーヘッド部分11a,12aの相互間隔を調整し得るようにしてある。
【0029】
即ち、締結ボルト11を仲介パイプ12に挿通させて締結ナット13で抜け止めし、斯かる状態で各ハンマーヘッド部分11a,12aの夫々に、各組で対になっているエアタンクバンド5の先端を夫々掛止させると、該各エアタンクバンド5の先端同士が連結されることになり、更には、工具により締結ナット13を締め込むことでハンマーヘッド部分11a,12aの相互間隔を縮めると、前記各エアタンクバンド5の先端同士が近接方向に締め込まれることになる。
【0030】
而して、サポート3に対しエアタンク1を組み付ける際には、サポート3をサイドレール2に取り付ける前の段階で先端側を上に向けて起立させ、その起立する長手部分の両面(サイドレール2への取り付け時に上下面となる面)にエアタンク1を夫々沿わせ且つ各安置座4に当接させた状態とし、斯かる状態で各組で対になっているエアタンクバンド5でエアタンク1の胴部を両側から挟み込むように閉じ合わせ、その先端同士を前記締結金具10を介し連結し且つ近接方向に締め込むことでエアタンク1をサポート3に固定し、該サポート3にエアタンク1を組み付けてアッセンブリ化した上でサイドレール2に取り付ける。
【0031】
このようにエアタンク1を平帯状のエアタンクバンド5により締め付けて固定する場合、該エアタンクバンド5はUボルトと違って十分な可撓性を有しているため、エアタンク1の外周面に密着しない限り該エアタンク1への押付力は発生せず、しかも、工具を使って締結ボルト11のネジ部に対し締結ナット13の締め込みを行い、エアタンクバンド5の先端同士を近接方向に締め込んでも、その工具の振動によりエアタンクバンド5が振動するようなこともなく、更には、エアタンク1との接触が面接触となることでエアタンク1の表面に高い面圧を与えてしまうことが回避されるため、エアタンク1の表面に傷が付くような事態が大幅に抑制されることになる。
【0032】
また、エアタンクバンド5が各組で左右略均等の長さに形成されているので、左右のエアタンクバンド5による締付力が略均等になり、エアタンク1をサポート3に対し転動させずに締め付けて固定することが可能となり、エアタンク1にサポート3による引っ掻き傷が付くような事態も大幅に抑制されることになる。
【0033】
尚、エアタンク1をサポート3の安置座4に当接させる際には、前記サポート3における安置座4近傍に一対一組で基端を傾動自在に枢着されているエアタンクバンド5をピン7を中心に左右に開いて作業の邪魔にならないようにしておけば良いので、エアタンクバンド5を安置座4とエアタンク1との間に挟み込んで該エアタンク1の表面に傷が付いてしまうような事態が未然に回避される。
【0034】
また、この種のエアタンクバンド5は、各組で対になっているエアタンクバンド5の基端相互の間隔をエアタンク1の直径より狭く絞り込んで該エアタンク1の安定保持を図るようにするのが通常であり(図3及び図4参照)、このように各組のエアタンクバンド5の基端を枢着するにあたり、サポート3の幅をエアタンク1の幅(直径)より大きく設定する必要はないため、実質的にエアタンク1の直径に相当する幅(僅かにエアタンクバンド5の厚さ分だけ増えた幅)のスペースをサイドレール2の長手方向に確保するだけでエアタンク1を上下二段にコンパクトに搭載することが可能となる。
【0035】
即ち、従来のUボルトを用いた場合には、その中央部でエアタンク1の胴部を約半周分押さえてから両端部を接線方向に延ばしてナットで締結することになるため、結果的に前記Uボルトの両端部をナットで締結するためのブラケット部分がエアタンク1の幅(直径)より大きく張り出すことになるが、エアタンクバンド5を用いた場合には、そのようなブラケット部分の張り出しが不要である。
【0036】
従って、上記形態例によれば、エアタンク1のサポート3への搭載時に表面に傷が付いてしまう事態を従来よりも大幅に抑制することができるので、エアタンク1のサポート3への搭載後における外観品質を従来よりも著しく向上することができ、また、実質的にエアタンク1の直径に相当する幅(僅かにエアタンクバンド5の厚さ分だけ増えた幅)のスペースをサイドレール2の長手方向に確保するだけでエアタンク1を上下二段にコンパクトに搭載することができるので、従来のUボルトを用いた場合よりもエアタンク1の搭載効率を大幅に向上することができる。
【0037】
特に本形態例においては、エアタンクバンド5を各組で左右略均等の長さに形成しているので、左右のエアタンクバンド5による締付力を略均等にすることができ、エアタンク1をサポート3に対し転動させずに締め付けて固定することができ、これによりエアタンク1にサポート3による引っ掻き傷が付くような事態を大幅に抑制することができる。
【0038】
更に、表面に傷が付き易いアルミ合金製のエアタンク1を採用しても外観品質を高く保持することができるので、該エアタンク1の軽量化による燃費向上を外観品質の低下と引き換えにせずに実現することができる。
【0039】
尚、本発明のエアタンク搭載構造は、上述の形態例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0040】
1 エアタンク
2 サイドレール
3 サポート
4 安置座
5 エアタンクバンド
10 締結金具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアタンクを上下二段に配置して車両のサイドレールに搭載するための構造であって、車両のサイドレールに基端側を取り付けて先端側を車幅方向外側へ張り出し且つその上下面にエアタンクを車幅方向に向け安定して圧接し得るよう該エアタンクの外周面に沿う安置座を備えたサポートと、該サポートの上下面における車幅方向複数箇所に一対一組で基端を傾動自在に枢着された平帯状のエアタンクバンドとを備え、該エアタンクバンドが各組で互いの先端同士を連結し且つ近接方向に締め込み得るように構成されていることを特徴とするエアタンク搭載構造。
【請求項2】
エアタンクバンドが各組で左右略均等の長さに形成されていることを特徴とする請求項1に記載のエアタンク搭載構造。
【請求項3】
エアタンクがアルミ合金製であることを特徴とする請求項1又は2に記載のエアタンク搭載構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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