説明

エアドライヤ装置用キャッチタンク

【課題】 簡単かつ低コストな構成でありながら、通気抵抗が小さく所望のパージ性能を維持しつつ、不用意に水分や油分・塵挨等を排出することがなく環境への悪影響の少ないエアドライヤ装置用キャッチタンクを提供する。
【解決手段】 本発明は、エアドライヤ装置10のパージ処理の際に排出されるパージエアから水分を分離して貯留するエアドライヤ装置用キャッチタンク100であって、エアドライヤ装置10のパージ処理の際に排出されるパージエアをパージエア導入通路120を介して導入し内壁に衝突させて気水分離を図る第1室110Aと、第1仕切板130を介して第1室110Aの上方に配設され第1室110Aにより所定に気水分離が行われたパージエアを第1仕切板130の貫通部131を介して導入する第2室110Bと、第2室110Bに導入されたパージエアを外部へ排出する外部連通部140と、を備えて構成したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等においてサービスブレーキ、エアサスなど利用されるサービスエアから水分等を除去するためのエアドライヤ装置のパージ処理の際にパージエアから水分、油分・塵埃等を分離して貯留するエアドライヤ装置用キャッチタンクに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、トラック、バスなどの大型車両においては、エアコンプレッサにより所定圧力(例えば、10kgf/cm程度)に圧縮した空気をエアタンクに貯留しておき、この圧縮空気(サービスエア)を作動動力源の一部として利用するといったサービスブレーキシステムや、コイルスプリングや板バネの代わりに圧縮空気を利用したエアサスペンションシステムなどが採用されている。
【0003】
ここで、エアコンプレッサにより圧縮された空気は、通常圧力の大気圧状態に比べて含有する水蒸気の凝結により水を発生しやすい状態にある。
また、エンジンにより回転駆動されるクランク機構やピストンを含んで構成されるエアコンプレッサを潤滑するための潤滑油が圧縮空気中に混在するといった場合も想定される。
【0004】
このため、エアコンプレッサにより圧縮した空気を、そのままエアタンクに貯留しておいて圧縮空気を、サービスブレーキシステム等の各種エアシステムに供給してしまうと、圧縮空気が触れる部分に腐食や汚損などを発生させ、延いては各種エアシステムに機能障害などを生じさせるおそれがあるなど、システムの信頼性等に悪影響を及ぼすおそれがある。
【0005】
このようなことから、エアコンプレッサにより圧縮した空気を、エアタンクに貯留する前に、エアドライヤ装置によって乾燥させ油分を除去して浄化することなどが行われている。
【0006】
かかるエアドライヤ装置の一例として、例えば特許文献1に記載されているようなものがあり、このものは、図12に示すように、エアコンプレッサ20が空気を圧縮する負荷状態の時(ロード時)には、この圧縮された空気をインレットポート11からエアドライヤ装置10内へ取り入れ、取り入れた圧縮空気をフィルタ室12のフィルタ13へ導き通過させ、油分や塵埃等を捕集した後、乾燥室14に導くようになっている。
そして、乾燥室14では、当該乾燥室14に収容されている乾燥剤15によって圧縮空気に含まれている水分を吸着除去し、その後、圧縮空気はパージ室16を経てアウトレット17を介してエアタンク30へ導かれるようになっている。
【0007】
この一方、エアタンク30内の圧力が所定圧力(例えば、10kgf/cm程度)に到達すると、プレッシャーレギュレータ40が動作し、エアコンプレッサ20は空気を圧縮しない無負荷状態(アンロード状態)とされるが、この状態において、パージバルブ18を開弁し、パージ室16内の圧縮空気を、乾燥室14及びフィルタ室12を通過させつつ外部へ排出する所謂パージ処理を行うようになっている。
【0008】
なお、かかるパージ処理により、乾燥室14内の水分(乾燥剤に吸着された水分や底部に溜まった水分など)と、フィルタ室12内の油分や塵挨(フィルタ13に捕集された油分や塵挨等、及び底部に溜まった油分や塵挨など)が外部へ排出され、乾燥剤15やフィルタ13の再生がなされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】実開平5−26136号公報
【特許文献2】実公平7−8020号公報
【特許文献3】実開平6−76798号公報
【特許文献4】実開平7−10514号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、所定圧力のパージエアを用いて乾燥剤15やフィルタ13を再生するパージ処理を行うと、エアドライヤ装置10内に蓄積されていた水分や油分等がドレン19からパージエアと伴に空気中や地面に向けて噴出されるため、付近の壁や地面を汚損するなどといったおそれがあり、不用意にこのような油分を含んだ水分を外部へ排出しないようにすることが望まれる。
【0011】
このようなことから、特許文献2や特許文献3に記載されているエアドライヤ装置では、水分や油分を含むパージエアをドレンタンクに導き、このドレンタンク内に油分や水分等を一時的に貯留できる構成として、適切な時と場所においてドレンタンクに設けられたドレンを開放することで、不用意にドレンタンク内に油分や水分等を排出しないようにしている。
【0012】
また、特許文献4に記載のエアドライヤ装置では、同様に、水分や油分を含むパージエアをケーシング(容器)へと導くが、このケーシング内を複数の小孔が設けられた仕切り板により仕切ると共に合成樹脂ファイバ層を設けることで、消音化を図りつつ油分を捕集して浄化された水のみをパージエアと伴に外部へ排出するといった構成が採用されている。
【0013】
しかしながら、パージ処理において所望のパージ性能を発揮させ良好に乾燥剤やフィルタを再生させるためには単位時間当たりに所定量のパージエア(例えば、4L/秒)を乾燥剤やフィルタに流す必要があるため、ドレンタンクの通気抵抗を小さくする必要があり、このようなことから比較的小さい通気抵抗となるように設計された特許文献2や特許文献3に記載のエアドライヤ装置では、パージ処理の際には、ドレンタンク内に流入するパージエアの圧力は比較的高く維持され、この高い圧力のまま外部へ排出されることになるので、ドレンタンク内にパージエア中の水分や油分などを一旦貯留できたとしても、これらをパージエアが再び巻き込み噴霧状態となって排出口から外部へ排出されてしまうといったおそれがある。
【0014】
また、特許文献4に記載のエアドライヤ装置では、油分は除去できたとしても、パージ処理の度に水分は不用意に排出されることになると共に、ケーシングの通気抵抗が高くなるおそれがあるため、所望のパージ性能を得ることが難しいといったおそれがある。
【0015】
本発明は、かかる実情に鑑みなされたもので、簡単かつ低コストな構成でありながら、通気抵抗が小さく所望のパージ性能を維持しつつ、不用意に水分や油分・塵挨等を排出することがなく環境への悪影響の少ないエアドライヤ装置用キャッチタンクを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
このため、本発明は、
圧縮したエアをエアタンクに貯留して利用するエアシステムにおけるエアドライヤ装置のパージ処理の際に排出されるパージエアから少なくとも水分(水分以外に油分や塵埃などが含まれる場合も想定される)を分離して貯留するエアドライヤ装置用キャッチタンクであって、
エアドライヤ装置のパージ処理の際に排出されるパージエアをパージエア導入通路を介して導入し、パージエア導入通路の出口部から噴出されるパージエアを内壁に衝突させて気水分離を図る第1室と、
第1仕切板を介して第1室の上方に配設され第1室により所定に気水分離が行われたパージエアを第1仕切板の貫通部を介して導入する第2室と、
第2室に導入されたパージエアを外部へ排出する外部連通部と、
を備えて構成したことを特徴とする。
【0017】
本発明において、第1室の底部より下方に配設されパージエアから分離された少なくとも水分を導入して貯留する第3室が配設されることを特徴とすることができる。
【0018】
本発明において、前記第3室は、第2仕切板を介して第1室の下方に配設され、第1室によりパージエアから分離された少なくとも水分を第2仕切板の貫通部を介して導入することを特徴とすることができる。
【0019】
本発明において、パージエア導入通路の出口部が、気水分離促進要素により覆われていることを特徴とすることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、簡単かつ低コストな構成でありながら、通気抵抗が小さく所望のパージ性能を維持しつつ、不用意に水分や油分・塵挨等を排出することがなく環境への悪影響の少ないエアドライヤ装置用キャッチタンクを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態の実施例1に係るエアドライヤ装置用キャッチタンクを備えたエアドライヤシステムの全体構成を概略的に示す全体構成図である。
【図2】同上実施例1に係るエアドライヤ装置用キャッチタンクを拡大して示した断面図である。
【図3】同上実施例1に係るエアドライヤ装置用キャッチタンク(キャッチタンク110が透明である場合の一例)を斜め上方から見た斜視図である。
【図4】同上実施例1に係るエアドライヤ装置用キャッチタンクの他の一例を拡大して示した断面図である。
【図5】同上実施例1に係るエアドライヤ装置用キャッチタンクの他の一例を拡大して示した断面図である。
【図6】同上実施例1に係るエアドライヤ装置用キャッチタンクに利用される気水分離促進要素を例示した斜視図である。
【図7】本発明の実施形態の実施例2に係るエアドライヤ装置用キャッチタンクを拡大して示した断面図である。
【図8】同上実施例2に係るエアドライヤ装置用キャッチタンクの他の一例を拡大して示した断面図である。
【図9】本発明の実施形態の実施例3に係るエアドライヤ装置用キャッチタンクを拡大して示した断面図である。
【図10】同上実施例3に係るエアドライヤ装置用キャッチタンクの他の一例を拡大して示した断面図である。
【図11】同上実施例3に係るエアドライヤ装置用キャッチタンクの他の一例を拡大して示した断面図である。
【図12】従来のエアドライヤシステムの構成例を説明するための全体構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本発明に係るエアドライヤ装置用キャッチタンクの一実施形態について、添付の図面を参照しつつ説明する。なお、以下で説明する実施形態により、本発明が限定されるものではない。
【実施例1】
【0023】
本実施形態の実施例1に係るエアドライヤ装置用キャッチタンク100は、図1に示すように、エアドライヤ装置10のドレン19からパージ処理の際に排出されるパージエア(水分や油分・塵埃等を含む。例えば、圧力10kgf/cm程度で、単位時間流量約4L/秒)を、インレットパイプ120を介して全量を内部に導入するように構成されている。なお、既に説明した要素と同一の要素には同一の符号を付すこととして、その説明は省略する。
【0024】
なお、図2は、図1に示したエアドライヤ装置用キャッチタンク100を拡大して示した断面図であり、図3はエアドライヤ装置用キャッチタンク100(キャッチタンク110が透明である場合の一例)を斜め上方から見た斜視図である。
【0025】
パージエア導入通路として機能するインレットパイプ120は、図1〜図3に示すように、所定長さの管状部材により構成され、エアドライヤ装置用キャッチタンク100の上側に入口端120Aが配設され、内部に空間を有するキャッチタンク110の該空間内を延伸してキャッチタンク110を上下方向において第1室110Aと第2室110Bとに画成する仕切板(第1仕切板)130を貫通して該仕切板130より下側に出口端120Bが配設されるように構成されている。
【0026】
インレットパイプ120の入口端120Aには、樹脂製ホースなどを介して、エアドライヤ装置10のドレン19が接続される。
【0027】
インレットパイプ120の出口端120B付近には、インレットパイプ120の外周にキャップ状部材121が被せられている。
【0028】
キャップ状部材121は、一端が閉塞され他端が開放された管状部材などにより構成されることができ、開放されている端がインレットパイプ120の出口端120Bを挿入して固定されるようになっている。
【0029】
なお、キャップ状部材121の底部と、インレットパイプ120の出口端120Bと、は所定隙間を有して取り付けられ、この所定隙間には、キャップ状部材121の側方(インレットパイプ120の長手方向と略直交或いは所定角度で交差する方向)に沿って伸びる複数の排出穴(ノズル)122が開口されている。なお、排出穴122の数やサイズ、形状、レイアウト等は適宜に変更可能である。
【0030】
また、前記仕切板130には、図2、図3に示すように、第1室110Aと第2室110Bとを連通する複数の貫通穴(貫通部)131が設けられている。なお、貫通穴131の数やサイズ、形状、レイアウト等は適宜に変更可能である。
【0031】
そして、第2室110Bには、第2室110Bと外部とを連通する外部連通パイプ(外部連通部)140が設けられている。図1〜図3では、ラビリンス効果を得るために、外部連通パイプ140の一端が第2室110B内方に突出して配設されていると共に、外部連通パイプ140は仕切板130の貫通穴131の貫通方向に対して交差する方向(図1〜図3では略直交する方向が例示)に延在されている。なお、図3では、外部連通パイプ140が対面配置されて2つ設けられているが、外部連通パイプ140の数やサイズ、形状、レイアウト等は適宜に変更可能である。
【0032】
上述したような構成を有するエアドライヤ装置用キャッチタンク100では、以下のようにして、エアドライヤ装置10のドレン19からパージ処理の際に排出されるパージエア(水分や油分・塵埃等を含む)から、水分や油分・塵埃等を分離して、水分や油分・塵埃等を含まないパージエアのみを外部へ排出することができるようになっている。
【0033】
すなわち、エアドライヤ装置10のドレン19からパージ処理の際に排出されるパージエア(水分や油分・塵埃等を含む)は、インレットパイプ120を介してその全量がエアドライヤ装置用キャッチタンク100に導入されるが、まず、インレットパイプ120の入口端120Aから出口端120Bに向かってパージエアは流れる。
【0034】
出口端120Bへ導かれたパージエアは、出口端120Bから出るとキャップ状部材121により流れの方向が制御され、キャップ状部材121に設けられた排出穴(ノズル)122を介して、断面略円筒状のインレットパイプ120やキャッチタンク110の中心軸に対する半径方向に噴出されて、キャッチタンク110内の第1室110Aに導かれる。
【0035】
この排出穴(ノズル)122を介して勢い良く噴出されたパージエアは、第1室110Aの内壁(内側側壁)に衝突し、これによりパージエアに含まれていた水分や油分・塵埃等が第1室110Aの内壁(内側側壁)に付着され、水分や油分・塵埃等がパージエアから分離される(水分や油分・塵埃等を含むパージエアの気水分離が行われる)。
なお、パージエアから分離された水分や油分・塵埃等は、第1室110Aの底部に集められる。
【0036】
その後、気水分離された第1室110A内のパージエアのみが、仕切板130に設けられた貫通穴131を介して、キャッチタンク110内の第2室110Bへ導かれる。
【0037】
第2室110Bへ導かれたパージエアは、第2室110Bと外部とを連通する外部連通パイプ140を介して外部へ排出される。
【0038】
なお、第2室110Bへ導かれたパージエアは、貫通穴131を通過してくるため、図1〜図3において上向きの流れをもっているので、外部連通パイプ140をパージエアの流れ方向と交差する方向(図1〜図3では、略直交する方向)に延在させることで、直接的にパージエアが外部連通パイプ140に流れ込まないようにしている(ラビリンス効果)。
【0039】
すなわち、第1室110Aにおいて分離し切れなかった水分、油分・塵埃等がパージエアに含まれているような場合でも、パージエアを外部連通パイプ140の外壁に衝突させたり、第2室110Bの内壁に衝突させることにより、パージエアから水分や油分・塵埃等を分離することができ、かかる気水分離後において、パージエアを外部連通パイプ140を介して外部へ排出させることができるように構成されている。
【0040】
なお、パージ処理後には、第2室110Bでパージエアから分離された水分や油分・塵埃等は、仕切板130の貫通穴131を介して第1室110Aへ自然落下等により導かれて、第1室110Aの底部に貯留された水分や油分・塵埃等に合流されるようになっている。
【0041】
ところで、図2等に示したように、第1室110Aの底部にはドレンコック150などを設けることができ、適宜の場所やタイミングにおいて、第1室110Aの底部に貯留されている水分や油分・塵埃等を排出することができ、従来のように、パージ処理の度に、不用意に水分や油分・塵挨等を排出することがないので、付近の壁や地面を汚損するなどのおそれを抑制することができる。
【0042】
このように、実施例1に係るエアドライヤ装置用キャッチタンク100によれば、エアドライヤ装置10のパージ処理の際に排出されるパージエアを導入し内壁に衝突させて気水分離を図る第1室110Aと、仕切板130を介して第1室110Aの上方に配設され第1室110Aにより所定に気水分離が行われたパージエアを水分や油分・塵挨等の再巻き込みなどを抑制しながら仕切板130の貫通穴131を介して導入する第2室110Bと、第2室110Bに導入されるパージエアの流れ方向と交差する方向(例えば略直交する方向)に延在される外部連通パイプ140と、を備えて構成したので、従来のように、ドレンタンク内にパージエア中の水分や油分などを一旦貯留できたとしても、これらをパージエアが再び巻き込み噴霧状態となって排出口から外部へ排出されてしまうといったおそれを抑制することができ、パージ処理の際に効率良くパージエアの気水分離を図ることができ、以って不用意に水分や油分・塵挨等を排出することがなく周辺の汚損防止や環境にも有利なエアドライヤ装置用キャッチタンクを提供することができる。
【0043】
また、本実施例に係るエアドライヤ装置用キャッチタンク100によれば、パージエアの通気抵抗を低く抑えることができるため、所望のパージ性能を得ることも可能である。
【0044】
すなわち、本実施例に係るエアドライヤ装置用キャッチタンク100によれば、簡単かつ低コストな構成でありながら、通気抵抗が小さく所望のパージ性能を維持しつつ、不用意に水分や油分・塵挨等を排出することがなく環境への悪影響の少ないエアドライヤ装置用キャッチタンクを提供することができる。
【0045】
なお、キャップ状部材121に設けられる排出穴(ノズル)122の周囲は、図4に示すように、気水分離促進要素160を配設し、パージエアを気水分離促進要素160に衝突させつつ通過させることで気水分離性能を向上させることも可能である。
【0046】
気水分離促進要素160としては、樹脂や金属等のメッシュ、多孔質材、樹脂や金属等のパンチング部材(打ち抜き開口を有する部材)、金属濾網(例えば、金属たわしのように、多数の線状や帯状の金属を所定形状にまとめたもの)などを採用することができる(図6参照)。
【0047】
また、図5に示すように、キャップ状部材121に代えて、気水分離促進要素160を収容した気水分離促進容器170を、インレットパイプ120の出口を覆うように配設した構成とすることもできる。気水分離促進容器170から側方に向けてパージエアを噴出させるように、気水分離促進容器170の壁に開口を設けることができる。なお、図5では側方に向けて噴出させる場合を示しているが、側方或いは下方の一方若しくは双方に向けてパージエアを噴出させることもできる。
【実施例2】
【0048】
本実施形態の実施例2に係るエアドライヤ装置用キャッチタンク200は、実施例1の場合と同様に、エアドライヤ装置10のドレン19からパージ処理の際に排出されるパージエア(水分や油分・塵埃等を含む)を、インレットパイプ120を介して全量を内部に導入するように構成されている。なお、同一要素には同一の符号を付すこととして、既に説明した符号についての説明は省略する。
【0049】
実施例2に係るエアドライヤ装置用キャッチタンク200は、図7に示すように、第1室110Aの下側に、仕切板(第2仕切板)210を介して画成された第3室110Cが設けられている。
【0050】
仕切板210には貫通穴(貫通部)211が設けられており、第1室110A(或いは第2室110B)にてパージエアから分離された水分や油分・塵埃等が、この貫通穴211を通って第3室110Cに滴下して収容されるようになっている。
【0051】
なお、第3室110Cの底部にはドレンコック150などを設けることができ、適宜の場所やタイミングにおいて、第3室110Cの底部に貯留されている水分や油分・塵埃等を排出することができ、従来のように、パージ処理の度に、不用意に水分や油分・塵挨等を排出することがないので、付近の壁や地面を汚損するなどのおそれを抑制することができる。
【0052】
このように、第3室110Cを備えて構成された実施例2に係るエアドライヤ装置用キャッチタンク200によれば、実施例1に比べて、パージ処理の際に、第1室110Aの底部に貯留される水分や油分・塵埃等がパージエアに巻き込まれるおそれを抑制することができるため、外部へ水分や油分・塵埃等が第2室110B延いては外部連通パイプ140へ運ばれて外部へ排出されてしまうといったおそれをより確実に抑制することができる。
【0053】
なお、実施例2の場合には、第1室110Aにてパージエアから分離された水分や油分・塵埃等が再びパージエアに巻き込まれるおそれを抑制することができるため、図8に示すように、外部連通パイプ140を省略して、第2室110Bの壁に直接的に開口される開口部220を設けた構成とすることができる。かかる開口部220の数やサイズ、形状、レイアウト等は適宜に変更可能であり、例えば、第2室110Bの側壁或いは上壁の一方若しくは双方に配設することができる。
【実施例3】
【0054】
本実施形態の実施例3に係るエアドライヤ装置用キャッチタンク300は、実施例1と同様に、エアドライヤ装置10のドレン19からパージ処理の際に排出されるパージエア(水分や油分・塵埃等を含む)を、インレットパイプ320を介して全量を内部に導入するように構成されている。なお、同一要素には同一の符号を付すこととして、既に説明した符号についての説明は省略する。
【0055】
ここで、実施例1や実施例2に係るエアドライヤ装置用キャッチタンク100(200)では、第1室110Aにおいて気水分離された後のパージエアは、上方の第2室110Bへ導かれるが、その際に上方から挿入されているインレットパイプ120の外周と、キャッチタンク110の内壁と、の間を通過することになる。
【0056】
比較的高圧なパージエアの流速は、インレットパイプ120の周囲と、キャッチタンク110の内壁と、の隙間の大きさに影響され、設置スペースなどの制約により当該隙間を大きく取ることが難しいような場合には、パージエアの通過断面積が小さくなって比較的高速となり、かかる場合には、第1室110Aにおいて一旦分離した水分や油分・塵挨等を再びパージエアが巻き込んで、外部へ排出しまうといったことも想定される。
【0057】
このため、実施例3では、図9に示すように、インレットパイプ320を、第3室110C側から挿入して第1室110A内の気水分離促進容器170へ接続する構成とした。
【0058】
かかる構成により、実施例3では、実施例2に比べて、第1室110A内のパージエアの流速を効果的に低減させることができるため、第1室110Aにおいて一旦分離された水分や油分・塵挨等がパージエアに巻き込まれて第2室110B側へ運ばれ、開口部220などを介して、水分や油分・塵挨等がパージ処理の際に不用意に外部に排出されてしまうといったおそれを一層効果的に抑制することができる。
【0059】
なお、図10に示すように、開口部220を第2室110Bの上壁に設ける場合には、水分や油分・塵挨等が直接的に外部へ排出されないように、開口部220を通過したパージエアを衝突させ気水分離作用を発揮させるカバー部材330を設けた構成とすることもできる。
【0060】
また、図10に示したように、インレットパイプ320を略直交する方向に折り曲げ、図10平面に略直交する方向から見たときに第3室110Cと重畳させることで、図10の上下方向長さを短くして車両への搭載性の自由度を向上させることなども可能である。
【0061】
以上説明したように、実施例2、3に係るエアドライヤ装置用キャッチタンク200、300によれば、エアドライヤ装置10のパージ処理の際に排出されるパージエアを導入し内壁に衝突させて気水分離を図る第1室110Aと、仕切板130を介して第1室110Aの上方に配設され第1室110Aにより所定に気水分離が行われたパージエアを水分や油分・塵挨等の再巻き込みなどを抑制しながら仕切板130の貫通穴131を介して導入する第2室110Bと、第1室110Aにおいてパージエアから分離された水分や油分・塵挨等を導入して貯留する第3室110Cと、第2室110Bに導入されるパージエアを外部へ排出する開口部220と、を備えて構成したので、従来のように、ドレンタンク内にパージエア中の水分や油分などを一旦貯留できたとしても、これらをパージエアが再び巻き込み噴霧状態となって排出口から外部へ排出されてしまうといったおそれを抑制することができ、パージ処理の際に、より一層効率良くパージエアの気水分離を図ることができ、以って不用意に水分や油分・塵挨等を排出することがなく周辺の汚損防止や環境にも有利なエアドライヤ装置用キャッチタンクを提供することができる。
【0062】
また、実施例2、3に係るエアドライヤ装置用キャッチタンク200、300によれば、パージエアの通気抵抗を低く抑えることができるため、所望のパージ性能を得ることも可能である。
【0063】
すなわち、実施例2、3に係るエアドライヤ装置用キャッチタンク200、300によれば、簡単かつ低コストな構成でありながら、通気抵抗が小さく所望のパージ性能を維持しつつ、不用意に水分や油分・塵挨等を排出することがなく環境への悪影響の少ないエアドライヤ装置用キャッチタンクを提供することができる。
【0064】
なお、実施例2、3では、第3室110Cを、仕切板210を介して第1室110Aの下側に連設した構成として説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、図11に示すように、パイプやホースなどを利用した連通路410などを介して第1室110Aから分離された第3室110Cを採用することも可能である。
【0065】
ところで、上述した各実施例に係るキャッチタンク110は、捕集した水分や油分・塵挨等の量を容易に確認することができるように、例えば透明な材質などにより製造されることができ、また、車両等に対して簡単に着脱可能として、例え作業者や使用者等は取り外して上下逆さまにするなどして、捕集した水分や油分・塵挨等を簡単に廃棄することができるように構成されることができる。
【0066】
以上で説明した実施形態は、本発明を説明するための例示に過ぎず、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々変更を加え得ることは可能である。
【符号の説明】
【0067】
10 エアドライヤ装置
12 フィルタ室
13 フィルタ
14 乾燥室
15 乾燥剤
16 パージ室
19 ドレン
20 エアコンプレッサ
30 エアタンク
100 エアドライヤ装置用キャッチタンク
110 キャッチタンク
110A 第1室
110B 第2室
110C 第3室
120 インレットパイプ(パージエア導入通路)
120A 入口端
120B 出口端
121 キャップ状部材
122 排出穴(ノズル)
130 仕切板(第1仕切板に相当)
131 貫通穴(貫通部)
140 外部連通パイプ(外部連通部)
150 ドレンコック
160 気水分離促進要素
170 気水分離促進容器
200 エアドライヤ装置用キャッチタンク(実施例2)
210 仕切板(第2仕切板に相当)
211 貫通穴(貫通部)
220 開口部(外部連通部)
300 エアドライヤ装置用キャッチタンク(実施例3)
320 インレットパイプ(パージエア導入通路)
410 連通路


【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮したエアをエアタンクに貯留して利用するエアシステムにおけるエアドライヤ装置のパージ処理の際に排出されるパージエアから少なくとも水分を分離して貯留するエアドライヤ装置用キャッチタンクであって、
エアドライヤ装置のパージ処理の際に排出されるパージエアをパージエア導入通路を介して導入し、パージエア導入通路の出口部から噴出されるパージエアを内壁に衝突させて気水分離を図る第1室と、
第1仕切板を介して第1室の上方に配設され第1室により所定に気水分離が行われたパージエアを第1仕切板の貫通部を介して導入する第2室と、
第2室に導入されたパージエアを外部へ排出する外部連通部と、
を備えて構成したことを特徴とするエアドライヤ装置用キャッチタンク。
【請求項2】
第1室の底部より下方に配設されパージエアから分離された少なくとも水分を導入して貯留する第3室が配設されることを特徴とする請求項1に記載のエアドライヤ装置用キャッチタンク。
【請求項3】
前記第3室は、第2仕切板を介して第1室の下方に配設され、第1室によりパージエアから分離された少なくとも水分を第2仕切板の貫通部を介して導入することを特徴とする請求項2に記載のエアドライヤ装置用キャッチタンク。
【請求項4】
パージエア導入通路の出口部が、気水分離促進要素により覆われていることを特徴とする請求項1〜請求項3の何れか1つに記載のエアドライヤ装置用キャッチタンク。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−31798(P2013−31798A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−168892(P2011−168892)
【出願日】平成23年8月2日(2011.8.2)
【出願人】(000005463)日野自動車株式会社 (1,484)
【Fターム(参考)】