説明

エアバッグ付マット

【課題】睡眠中に呼吸が停止するような状態を確実に検出して、検出した結果を利用者の呼吸回復のための刺激に利用できるエアバッグ付マットを提供すること。
【解決手段】エアバッグ付マット1は、マット本体2と、前記マット本体2の利用時における利用者の胸位置に対応させられ且つ前記マット本体2の幅方向両端に向けて延設して装着されたエアバッグ(3,13)と、前記エアバッグ(3,13)内の圧力を検出して圧力検出信号を出力する圧力検出手段(圧力センサ11)と、前記圧力検出信号を受けてその圧力変化から前記利用者の呼吸の変化を求める演算制御手段(演算制御回路7)を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、利用者の呼吸を検出可能なエアバッグ付マットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、マット本体の人体当接面に複数のエアバッグを装着して、エアバッグを膨張・収縮させることにより、利用者の身体をマッサージするマット式エアマッサージ装置が知られている。
【0003】
一方、エアマッサージ装置には、エアバッグにより呼吸数、脈拍数、血圧等の生体情報を検出するようにした椅子式エアマッサージ装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
この椅子式エアマッサージ装置では、エア・マッサージ機のエア・バッグにより呼吸数、脈拍数、血圧等の生体情報を検出し、該検出結果をマッサージ動作にフィードバックさせるようにしている。この構成をマット式エアマッサージ装置に適用することもできる。
【0005】
しかし、椅子式エアマッサージ装置では生態情報を検出してもマッサージ動作以外に利用することは考えていないものであったので、この生態情報を検出してマッサージ動作にフィードバックさせる構成をマット式エアマッサージ装置に用いても、検出した生態情報をマッサージ動作以外に利用することは考えられないものであった。
【特許文献1】特開2003−225268号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、睡眠中(就寝時)に気道(鼻や喉)が何らかの理由で塞がってしまい、呼吸ができず窒息状態となる睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome:SAS)が知られている。その症状としては、通常大きないびきが10秒以上あり、場合によって1分以上呼吸が消失した後に再度激しいいびきが出現して、その繰り返しとなる。そして、ひどくなると完全に呼吸が止まってしまう事もある。
【0007】
しかし、上述した椅子式エアマッサージ装置では、装置がマッサージ動作中に利用者の生態情報を検出するようにしているものであるため、睡眠中に呼吸が停止するような状態を検出できないものであった。
【0008】
そこで、この発明は、睡眠中に呼吸が停止するような状態を確実に検出して、検出した結果を利用者の呼吸回復のための刺激に利用できるエアバッグ付マットを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的を達成するため、請求項1の発明は、マット本体と、前記マット本体の利用時における利用者の胸位置に対応させられ且つ前記マット本体の幅方向両端に向けて延設して装着されたエアバッグと、前記エアバッグ内の圧力を検出して圧力検出信号を出力する圧力検出手段と、前記圧力検出信号を受けてその圧力変化から前記利用者の呼吸の変化を求める演算制御手段を有するエアバッグ付マットとしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
この構成によれば、エアバッグは利用者の胸位置に対応してマット本体の幅方向の略全範囲に装着されていて、睡眠中に利用者が寝返りをしても利用者の呼吸の状態をマット本体の幅方向の何れの部分でも検出できるようになっているので、睡眠中に呼吸が停止するような状態をエアバッグ内の圧力変化から確実に検出して、検出した結果を利用者の呼吸回復のための刺激に利用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0012】
図1において、1は寝具としてのエアバッグ付マットである。このエアバッグ付マット1は、長方形状のマット本体2と、このマット本体2の人体当接面2a上に配設された複数(図1では5個)のエアバッグ3を有する。このエアバッグ3は、利用者の呼吸に伴う圧力変化を検出するのに用いられると共に、利用者に刺激を付与する刺激付与手段として用いられる。
【0013】
この複数のエアバッグ3は、利用時における利用者の胸位置に対応させてマット本体2に取り付けられている。また、複数のエアバッグ3は、マット本体2の幅方向の略全範囲に亘って等ピッチで直線的に配列されている。
【0014】
各エアバッグ3は、図3,図4に示したように、ブロー成形により中空で略扁平形状に形成されている。しかも、エアバッグ3の上壁3aには、二重の環状膨出突部3b,3c及び中央の膨出突部3dが形成されている。
【0015】
また、各エアバッグ3は、図3〜図5に示したようにホース4で互いに接続されている。これにより、隣接するエアバッグ3,3内の空間5,5は、これらの間に配設されたホース4内の細い通路4aを介して互いに連通している。
【0016】
更に、複数のエアバッグ3は、エア給排気装置(エア給排気手段)6により膨張・収縮させられるようになっている。このエア給排気装置6は、演算制御回路(演算制御手段)7と、この演算制御回路7により作動制御されるエアポンプ(エア供給源)8と、エアポンプ8の吐出側に接続されたエア給排気切替手段9を有する。
【0017】
このエア給排気手段9には周知のロータリバルブや電磁弁等が用いられていて、エア給排気手段9は演算制御回路7により作動制御されるようになっている。また、このエア給排気手段9には、上述した各エアバッグ3がエアホース10を介してそれぞれ接続されている。
【0018】
そして、複数のエアバッグ3のうち中央のエアバッグ3に接続されたエアホース10には圧力センサ11が接続されている。この圧力センサ11はバンドパスフィルタ12を介して演算制御回路7に接続されている。このバンドパスフィルタ12は、圧力変化検出信号からノイズを除去して呼吸成分の信号を取り出して、この取り出した呼吸成分の信号のみを演算制御回路7に入力するようになっている。
【0019】
次に、このような構成のエアバッグ付マット1の作用を説明する。
【0020】
利用者が睡眠する際には、複数のエアバッグ3上に胸が対応するようにして寝ると共に、図示しない電源をONさせて演算制御回路7を作動させる。
【0021】
この際、複数の各エアバッグ3内の空間5はホース4の通路4aを介して互いに連通しているので、利用者の呼吸に伴って複数のエアバッグ3のうちのいずれかの圧力が変化すると、この圧力変化は全てのエアバッグ3に伝わることになる。そして、この圧力変化は中央のエアバッグ3に接続されたエアホース10の圧力センサ11で検出され、圧力センサ11は圧力検出信号を出力する。
【0022】
この圧力センサ11は圧力変化検出信号をバンドパスフィルタ12に入力する。このバンドパスフィルタ12は、圧力変化検出信号からノイズを除去して呼吸成分の信号を取り出して、この取り出した呼吸成分の信号のみを演算制御回路7に入力する。
【0023】
ところで、利用者に睡眠時無呼吸症候群がある場合において例えば1分(所定時間)以上呼吸が消失した場合、利用者の呼吸が完全に止まってしまっていることも考えられる。
【0024】
従って、このような場合に演算制御回路7は、利用者の呼吸が止まっていると判断して、エアポンプ8を作動させると共にエア給排気切替手段9を作動制御して、エアポンプ8から吐出されるエアをエア給排気切替手段9及び複数のエアホース10を介して複数のエアバッグ3に供給し、各エアバッグ3を膨張させ、エアバッグ3で利用者の身体に刺激を与え、利用者の呼吸の回復を促す。
【0025】
また、演算制御回路7は、エアバッグ3の1回の膨張のみでは利用者の呼吸が直ちに回復しない場合に、エア給排気切替手段9を作動制御して、エアバッグ3に対しエアの給排気を行って、エアバッグ3を膨張・収縮させ、利用者の身体に与える刺激を変化させ、利用者の呼吸を更に強く促すようにする。
(変形例1)
上述した実施例では、利用者の呼吸が所定時間以上検出されなかった場合に、エアバッグ3を膨張または膨張・収縮させて、利用者の身体にエアバッグ3により刺激を与え、利用者の呼吸の回復を促すようにしたが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0026】
例えば、利用者の呼吸が所定時間以上検出されなかった場合に、この状態をスピーカー等で直接利用者に音で知らせても良いし第3者に知らせるようにしても良い。また、利用者の呼吸が所定時間以上検出されなかった場合に、電気マッサージ器等のマッサージ手段により、利用者に電気的な刺激を与えて、利用者の呼吸の回復を促すようにすることもできる。
(変形例2)
以上説明した実施例では、複数のエアバッグ3と圧力センサ11で利用者の呼吸を検出するようにしたが、必ずしもこれに限定されるものではない。例えば、図6に示したように一つの細長いエアバッグ13と圧力センサ11で利用者の呼吸を検出して、演算制御回路7によりエアバッグ13を上述したエアバッグ3と同様な膨張・収縮制御を行うようにしても良い。この場合にも、エアバッグ13はマット本体2の略幅方向全体に延びている。
(変形例3)
更に、上述した実施例では、寝具として用いるエアバッグ付マット1の複数のエアバッグ3と圧力センサ11で利用者の呼吸を検出するようにしたが、必ずしもこれに限定されるものではない。例えば、複数のエアバッグ3と圧力センサ11で利用者の呼吸を検出する構成を、マット式エアマッサージ装置に適用しても良い。図7は、この例を示したもので、上述したエアバッグ付マット1のマット本体2に首肩用エアバッグ14,中背用エアバッグ15,腰用エアバッグ16,大腿用エアバッグ17等を設けたものである。
【0027】
そして、これらのエアバッグ14〜17は、図9の演算制御回路7によりエアポンプ8及びエア給排気切替手段9を作動制御して、エアポンプ8からのエアをエア給排気切替手段9を介して給排気することにより、膨張・収縮制御されて、マッサージを行うことができるようになっている。また、エアバッグ3も、利用者の上背中のマッサージに利用することができる。
【0028】
尚、上述した図1〜図5に示した実施例と同一部分には図1〜図5に付した符号と同一の符号を付してその説明は省略する。
【0029】
以上説明したように、この発明の実施の形態のエアバッグ付マット1は、マット本体2と、前記マット本体2の利用時における利用者の胸位置に対応させられ且つ前記マット本体2の幅方向両端に向けて延設して装着されたエアバッグ(3,13)と、前記エアバッグ(3,13)内の圧力を検出して圧力検出信号を出力する圧力検出手段(圧力センサ11)と、前記圧力検出信号を受けてその圧力変化から前記利用者の呼吸の変化を求める演算制御手段(演算制御回路7)を有する。
【0030】
この構成によれば、エアバッグ(3,13)は利用者の胸位置に対応してマット本体2の幅方向の略全範囲に装着されていて、睡眠中に利用者が寝返りをしても利用者の呼吸の状態をマット本体2の幅方向の何れの部分でも検出できるようになっているので、睡眠中に呼吸が停止するような状態をエアバッグ(3,13)内の圧力変化から確実に検出して、検出した結果を利用者の呼吸回復のための刺激に利用できる。
【0031】
また、この発明の実施の形態のエアバッグ付マット1において、前記エアバッグ(3)は前記マット本体の幅方向に複数配列されている。
【0032】
この構成によれば、圧力検出に用いるエアバッグ(3)を小さくして複数用いるようにしているので、利用者の呼吸の検出精度を上げることができる。
【0033】
更に、この発明の実施の形態のエアバッグ付マット1において、前記複数のエアバッグ(3)は通路4aを介して直列に連通接続させられている。
【0034】
この構成によれば、一つの圧力センサ11で利用者の呼吸を検出することができるので、部品点数を少なくできる。
【0035】
また、この発明の実施の形態のエアバッグ付マット1は、作動させられたときに前記使用者に刺激を与える刺激付与手段(3,13)が設けられていると共に、前記演算制御手段(演算制御回路7)は前記圧力検出手段(3,13)から出力された前記圧力検出信号を基に所定時間以上呼吸の変化がないと判断したときに前記刺激付与手段(3,13)を作動させるようになっている。
【0036】
この構成によれば、エアバッグ(3,13)は利用者の胸位置に対応してマット本体2の幅方向の略全範囲に装着されていて、睡眠中に利用者が寝返りをしても利用者の呼吸の状態をマット本体2の幅方向の何れの部分でも検出できるようになっているので、睡眠中に呼吸が停止するような状態をエアバッグ(3,13)内の圧力変化から確実に検出して、刺激付与手段(3,13)を作動させることにより、刺激付与手段(3,13)で利用者に呼吸回復のための刺激を与えることができる。
【0037】
また、この発明の実施の形態のエアバッグ付マット1において前記刺激付与手段は前記エアバッグ(3,13)であり、前記エアバッグ(3,13)に対してエアを給排気するエア給排気手段(エア給排気装置6)が設けられていると共に、前記演算制御手段(演算制御回路7)は前記圧力検出手段(圧力センサ11)から出力された前記圧力検出信号を基に所定時間以上呼吸の変化がないと判断したときに前記エア給排気手段(エア給排気装置6)を作動制御して少なくとも前記エアバッグ(3,13)を膨張させるようになっている。
【0038】
この構成によれば、睡眠中に呼吸が停止するような状態をエアバッグ(3,13)内の圧力変化から確実に検出して、エアバッグ(3,13)を作動させることにより、エアバッグ(3,13)を膨張または膨張・収縮させて、利用者に呼吸回復のための刺激を与えることができる。
【0039】
また、この発明の実施の形態のエアバッグ付マット1において、前記エアバッグ(3,13)はマッサージ用のエアバッグを兼用している。
【0040】
この構成によれば、呼吸検出用のエアバッグ3を用いて利用者の上背中のマッサージを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】この発明に係るエアバッグ付マットの概略斜視図である。
【図2】図1のエアバッグの呼吸検出回路を示す説明図である。
【図3】図1の腰部拡大平面図である。
【図4】図3のA1−A1線に沿う断面図である。
【図5】図4の要部拡大断面図である。
【図6】この発明の変形例を示すエアバッグ付マットの斜視図である。
【図7】この発明の他の変形例を示すエアバッグ付マットの斜視図である。
【図8】図7のエアバッグの呼吸検出回路を示す説明図である。
【符号の説明】
【0042】
1…エアバッグ付マット
2…マット本体
3…エアバッグ(刺激付与手段)
4…ホース
4a…通路
7…演算制御回路(演算制御手段)
11…圧力センサ(圧力検出手段)
13…エアバッグ(刺激付与手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マット本体と、
前記マット本体の利用時における利用者の胸位置に対応させられ且つ前記マット本体の幅方向両端に向けて延設して装着されたエアバッグと、
前記エアバッグ内の圧力を検出して圧力検出信号を出力する圧力検出手段と、
前記圧力検出信号を受けてその圧力変化から前記利用者の呼吸の変化を求める演算制御手段を有することを特徴とするエアバッグ付マット。
【請求項2】
前記エアバッグは前記マット本体の幅方向に複数配列されていることを特徴とする請求項1に記載のエアバッグ付マット。
【請求項3】
前記複数のエアバッグは通路を介して直列に連通接続させられていることを特徴とする請求項2に記載のエアバッグ付マット。
【請求項4】
作動させられたときに前記使用者に刺激を与える刺激付与手段が設けられていると共に、前記演算制御手段は前記圧力検出手段から出力された前記圧力検出信号を基に所定時間以上呼吸の変化がないと判断したときに前記刺激付与手段を作動させることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載のエアバッグ付マット。
【請求項5】
前記刺激付与手段は前記エアバッグであり、前記エアバッグに対してエアを給排気するエア給排気手段が設けられていると共に、前記演算制御手段は前記圧力検出手段から出力された前記圧力検出信号を基に所定時間以上呼吸の変化がないと判断したときに前記エア給排気手段を作動制御して少なくとも前記エアバッグを膨張させることを特徴とする請求項4に記載のエアバッグ付マット。
【請求項6】
前記エアバッグはマッサージ用のエアバッグを兼用していることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載のエアバッグ付マット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−95179(P2006−95179A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−286918(P2004−286918)
【出願日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【出願人】(000003562)東芝テック株式会社 (5,631)
【Fターム(参考)】