説明

エアー取り入れ装置

【課題】 ラジエータ後方から車両前方に回り込んで吹き返してきた熱気がエアクリーナ吸気ダクト内に入り込むのを防止しつつ、限られたスペースにおいて流路を確保する。
【解決手段】 フード1と、このフードで覆われるモータルーム2内に配置されたラジエータ3の上部との間に配置され、車両前方からエアーを取り込んでエアクリーナへと導くエアクリーナ吸気ダクト6と、エアクリーナ吸気ダクトの外気取り入れ口8の前方に配置され、車両前方から前記外気取り入れ口8へとエアーを案内するエアー案内流通路15を形成するエアーガイドカバー16と、このエアーガイドカバー16に可動自在に取り付けられ、前記エアー案内流通路15を開閉自在とする流路開閉部材17とを備える。この流路開閉部材17は、車両停止時にはエアー案内流通路15を閉じた状態とし、車両走行時には車両前方から前記エアー案内流通路15へと流れ込むエアーの力によって流路を開く。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアー取り入れ装置に関し、詳細には、ラジエータ後方から前方へと回り込んで吹き返す熱気を遮断するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、高温になったエンジンルーム内の空気をエアクリーナに導くとエンジン性能が低下することから、エアーダクトを使用して冷たい外気を直接エアクリーナに導くようにしている。
【0003】
従来の構造としては、例えばエアーダクトを車両幅方向に延長し、そのエアーダクトの外気取り入れ口を車両前方に向け、ラジエータ上部とダクト壁部との間、およびフードインナーとダクト上面との間をそれぞれシール部材でシールし、高温となった熱が回り込んで外気取り入れ口から入るのを防止した構造が提案さている(例えば、特許文献1など参照)。
【特許文献1】特開平8−177658号公報(第2頁及び第3頁、図1及び図3参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載の構造では、エンジンルーム内の高温となった空気がラジエータ後方から車両前方に回り込む吹き返しは、前記シール部材によって防ぐことが可能である。
【0005】
しかしながら、例えば燃料電池自動車のように大型のラジエータを限られたスペース内に搭載する必要がある場合には、特許文献1に記載の構造では、ラジエータ上端とフードインナー間のスペースが狭まり、エアーダクト及び/又はエアーダクト前方の流路が小さくなることから、外部から取り込むことのできる空気量が減少してしまう。そのため、この構造では、走行時など吸入空気量を増加させようとした場合、圧力損失を起こす可能性がある。
【0006】
そこで、本発明は、ラジエータ後方から車両前方に回り込んで吹き返してきた熱気がエアクリーナ吸気ダクト内に入り込むのを防止しつつ、限られたスペース内において流路を確保することのできるエアー取り入れ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るエアー取り入れ装置は、フードと、このフードで覆われるモータルーム内に配置されたラジエータの上部との間に配置され、車両前方からエアーを取り込んでエアクリーナへと導くエアクリーナ吸気ダクトと、エアクリーナ吸気ダクトの外気取り入れ口の前方に配置され、車両前方から前記外気取り入れ口へとエアーを案内するエアー案内流通路を形成するエアーガイドカバーと、このエアーガイドカバーに可動自在に取り付けられ、前記エアー案内流通路を開閉自在とする流路開閉手段とを備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明のエアー取り入れ装置によれば、エアクリーナ吸気ダクトの外気取り入れ口の前方に配置したエアーガイドカバーに、車両前方から流入するエアー(外気)を外気取り入れ口へと案内するエアー案内流通路を開閉自在とする流路開閉手段を設けたので、車両走行時には流路開閉手段が開いてエアー案内流通路を開放させ車両外部から冷たいエアー(外気)をエアクリーナ吸気ダクトに導くことができ、また、車両停止時(アイドル時)には流路開閉手段が閉じてエアー案内流通路を封鎖してラジエータ後方から車両前方へと回り込んで吹き返してきた熱気を遮断することができる。
【0009】
したがって、本発明によれば、モータルーム内の熱気をエアクリーナ吸気ダクトの外気取り入れ口前でシャットアウトすることができ、当該熱気をエアクリーナへと流れ込むのを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を適用した具体的な実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0011】
図1はフードを取り外してモータルームを上から見た状態の平面図、図2はモータールームカバーを取り外してモータルームを上から見た状態の平面図、図3はフードが取り付けられた状態での図1A−A線における要部拡大断面図、図4はエアクリーナ吸気ダクト近傍部の要部拡大断面図、図5は図1B−B線における要部拡大断面図、図6は走行状態を示し、エアー案内流通路が流路開閉手段で開放された状態を示す要部拡大断面図、図7はアイドル状態を示し、エアー案内流通路が流路開閉手段で封鎖された状態を示す要部拡大断面図である。
【0012】
本実施の形態は、空気と燃料(水素)を反応させることで起電力を発生させる燃料電池システムを搭載した燃料電池自動車に、本発明のエアー取り入れ装置を適用した例である。
【0013】
フード1は、図1から図3に示すように、燃料電池システムを構成する空気系部品、燃料系部品、冷却系部品及び補器類など、或いは駆動モータなどの駆動系を収容させるモータルーム2を覆って設けられている。かかるフード1で覆われるモータルーム2の車両前方部には、モータルーム2内のぎりぎりの高さまで大きくした大型のラジエータ3が配置されている。
【0014】
燃料電池自動車では、発電時に生じる発熱量が多いため、内燃機関用のラジエータよりも大型のものが使用される。例えば、かかるラジエータ3は、モータルーム2の前端側上方幅方向に配されたアッパーレール4よりもラジエータ3の上端部は高く、しかも車両後方に傾斜して配置されている。また、このラジエータ3は、内燃機関用のラジエータに比べて厚みが厚く、放熱性能を高めるべくコア面積が十分大きなものとされている。
【0015】
そして、上記フード1とラジエータ3の上部との間には、車両前方からエアーを取り込んでエアクリーナ5へと導くためのエアクリーナ吸気ダクト6が配置されている。エアクリーナ吸気ダクト6は、モータルーム2内の車両底部一側縁寄りに配置されたエアクリーナ5と接続され、車両底部から車両前方上部へと延在すると共に、車両幅方向一側縁から車両中央部へとほぼ90度に車幅方向へ向きを変えて延在して設けられ、外気取り入れ口8をラジエータ3のほぼ真上に配置させている。
【0016】
上記外気取り入れ口8が形成されるエアクリーナ吸気ダクト6のエアー取り込み部分9は、図4に示すように、アッパーレール4にスクリューボルトなどの留め具10で固定されたブラケット11の先端側に固定されている。ブラケット11とエアー取り込み部分9は、図示を省略する係合突起と係合孔との係合により、或いはリベット止めで固定されている。
【0017】
また、フード1の内側には、モータルーム2の上部を覆うモータールームカバー14が設けられている。モータールームカバー14は、モータルーム2内に配置される電動モータや空気系部品などを覆ってこれらの部品を保護すると共に、その外見上見栄えを良くする役目をする。そして、このモータールームカバー14の先端側には、車両前方から外気取り入れ口8へとエアー(外気)を案内させる(導くための)エアー案内流通路15を形成するエアーガイドカバー16が一体的に設けられている。
【0018】
エアーガイドカバー16は、図4に示すように、モータールームカバー14の前端縁から車両前方に延びるようにして当該モータールームカバー14と一体化され、上記したブラケット11の上に所定間隔を置いて配置されることで、当該ブラケット11との間にエアー案内流通路15を形成する。エアー案内流通路15は、車両前端からブラケット11に固定されたエアー取り込み部分9の外気取り入れ口8の前方近傍部まで連通して設けられている。また、エアーガイドカバー16は、ラジエータ3の前方且つ前面上部を覆うようにして車両の幅方向に延在して設けられている。そして、このエアーガイドカバー16には、エアー案内流通路15を開閉自在とする流路開閉手段である流路開閉部材17が可動自在に取り付けられている。
【0019】
かかる流路開閉部材17は、図4及び図5に示すように、耐熱性に優れた長尺状のラバー部材から形成され、その一端部を外気取り入れ口8に近いエアーガイドカバー16の内面に形成した切り欠き部18に挿入させ接着固定させている。そして、この流路開閉部材17は、その自由端側である先端部が、ブラケット11と接触する程度の長さとして垂れ下がって設けられている。
【0020】
また、この流路開閉部材17には、その長手方向に沿ってエアーガイドカバー16側(上部側)からブラケット11側(下方側)に向かってスリット19が複数形成されており、いわゆる「のれん」のような形状とされている。したがって、走行時に車両前方のバンパー20に形成された開口部21からモータルーム2内へと流入するエアーがこのエアー案内流通路15を流れることで、そのエアーによる力で流路開閉部材17が可動してエアー案内流通路15を開放させる。一方、アイドル時などエアー案内流通路15にエアーが流れない或いはエアーが流れてもその流量が少ない場合は、流路開閉部材17は垂れ下がったままで当該エアー案内流通路15が封鎖された状態を保持する。
【0021】
なお、流路開閉部材17は、一定の車速に達した際にモータルーム2内に流入するエアー(外気)のラム圧(走行中にモータルーム2内に自然に入ってくる空気の圧力のこと)によりそれぞれのスリット19で分割された片部が開き始める(車速上昇に伴いその片部の開度は増す)ことで、前記したエアー案内流通路15を開放する。また、流路開閉部材17の開閉動作をラム圧によって動作させる以外にもアクチュエータを使用し、一定の車速を感知すると電子制御でアクチュエータを作動させて流路開閉部材17を開閉するようにしても良い。
【0022】
また、モータールームカバー14とエアーガイドカバー16との間には、前記外気取り入れ口8に連通する空気流入口22が設けられている。この空気流入口22は、流路開閉部材17の上方位置に、横長矩形状をなす開口として形成されている。外気取り入れ口8には、この空気流入口22から流入するエアーと、エアー案内流通路15を介して流入するエアーとが取り込まれる。
【0023】
また、フード1とモータールームカバー14との間に、ラジエータ3の後方からの熱気を該ラジエータ3の前方へと回り込んで吹き返すのを阻止する第1シール部材23が設けられている。第1シール部材23は、図4に示すように、空気流入口22近傍のモータールームカバー14の上面とフード1の内面にそれぞれ接触して設けられ、何れか一方の面に固定されている。また、第1シール部材23は、図1中一点鎖線で示すように、空気流入口22の前方を除いて当該空気流入口22を取り囲むように略コ字状とされており、ラジエータ3の後方から前方へと回り込んで吹き返す熱気を遮断し、空気流入口22への熱気の進入を阻止する。
【0024】
また、モータールームカバー14とエアクリーナ吸気ダクト6との間に、ラジエータ3の後方からの熱気を該ラジエータ3の前方へと回り込んで吹き返すのを阻止する第2シール部材24が設けられている。第2シール部材24は、図4に示すように、外気取り入れ口8近傍のモータールームカバー14の内面とエアクリーナ吸気ダクト6のエアー取り込み部分9の上面にそれぞれ接触して設けられ、何れか一方の面に固定されている。また、この第2シール部材24は、図2中一点鎖線で示すように、外気取り入れ口8の前方を除いて当該外気取り入れ口8を取り囲むように略コ字状とされており、ラジエータ3の後方から前方へと回り込んで吹き返す熱気を遮断し、外気取り入れ口8への熱気の進入を阻止する。
【0025】
なお、第1シール部材23及び第2シール部材24は、何れも耐熱性に優れたラバーやウレタンフォームなどによって形成されている。
【0026】
このように構成されたエアー取り入れ装置では、車両走行時は、図3に示すように、バンパー20に形成された開口部21からモータルーム2内へと流入したエアーA1(冷気)が、フード1とエアーガイドカバー16との間の流路を通って空気流入口22からエアクリーナ吸気ダクト6内に流入する。また、これとは別経路でエアーがエアクリーナ吸気ダクト6に流入する。すなわち、車両前方からモータルーム2内に流入したエアーA1は、図6に示すように、エアーガイドカバー16とブラケット11間に形成されたエアー案内流通路15を流れ、そのエアー力で流路開閉部材17を押し開いて外気取り入れ口8へと流入する。
【0027】
したがって、この外気取り入れ口8からエアクリーナ吸気ダクト6内に流れるエアーの流量が増え、コンプレッサーによる吸入空気量増加に伴う圧力損失を防止することができる。特に、燃料電池自動車のようにコンプレッサーによって空気を取り込む吸入システムでは、ラジエータ後方の高温になった熱が車両前方に回り込んで吸入されるとコンプレッサー内の温度が上昇し、コンプレッサーが壊れる可能性がある。そのため、通常はコンプレッサーの吸入温度が設定温度を超えると制御が掛かり、システムを停止するようにしている。しかしながら、本実施の形態では、前記した構造を採用することで、限られたモータルーム2内のスペースを利用して十分なエアーを取り込むことができるため、前記した不具合を回避することができる。
【0028】
また、本実施の形態では、エアーガイドカバー16を車両の幅方向に延在して設けているので、このエアーガイドカバー16によって車両前方からモータルーム2内へと流入したエアーA1が上から押さ付けられる。そのため、このエアーガイドカバー16によって押さえ付けられたエアーA1の多くがラジエータ3に吹き付けられ、そのエアーA1によって当該ラジエータ3が冷却され、より一層熱交換効率が高まる。
【0029】
一方、アイドル時は、図1及び図2に示すように、高温となった熱気A2がラジエータ3の後方から回り込んで車両前方へと吹き返す。しかしながら、本実施の形態では、流路開閉部材17は、図7に示すように、アイドル時では垂れ下がった状態を保持しエアー案内流通路15を封鎖した状態とするので、車両前方に回り込んできた熱気A2の外気取り入れ口8への進入を阻止する。
【0030】
さらに、本実施の形態では、フード1とモータールームカバー14との間に第1シール部材23を設けているので、ラジエータ3後方から車両前方へと回り込んで吹き返してきた熱気A2をこの第1シール部材23によって遮断することができ、前記外気取り入れ口8への熱気A2の進入を阻止できる。同様に、本実施の形態では、モータールームカバー14とエアクリーナ吸気ダクト6のエアー取り込み部分9との間に第2シール部材24を設けているので、ラジエータ3後方から車両前方へと回り込んで吹き返してきた熱気A2をこの第2シール部材24によって遮断でき、外気取り入れ口8への熱気A2の進入を阻止することができる。
【0031】
また、本実施の形態では、エアーガイドカバー16をモータールームカバー14と一体的に形成したので、コストの削減、取り付け作業効率の向上、並びに見栄えの向上を実現できる。
【0032】
以上、本発明を適用した具体的な実施の形態について説明したが、上述の実施の形態は本発明の一例であり、この実施の形態に制限されることはない。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】フードを取り外してモータルームを上から見た状態の平面図である。
【図2】モータールームカバーを取り外してモータルームを上から見た状態の平面図である。
【図3】フードが取り付けられた状態での図1A−A線における要部拡大断面図である。
【図4】エアクリーナ吸気ダクト近傍部の要部拡大断面図である。
【図5】図1B−B線における要部拡大断面図である。
【図6】走行状態を示し、エアー案内流通路が流路開閉手段で開放された状態を示す要部拡大断面図である。
【図7】アイドル状態を示し、エアー案内流通路が流路開閉手段で封鎖された状態を示す要部拡大断面図である。
【符号の説明】
【0034】
1…フード
2…モータルーム
3…ラジエータ
5…エアクリーナ
6…エアクリーナ吸気ダクト
8…外気取り入れ口
9…エアー取り込み部分
11…ブラケット
14…モータールームカバー
15…エアー案内流通路
16…エアーガイドカバー
17…流路開閉部材(流路開閉手段)
19…スリット
20…バンパー
21…開口部
A1…エアー(外気)
A2…熱気

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フードと、このフードで覆われるモータルーム内に配置されたラジエータの上部との間に配置され、車両前方からエアーを取り込んでエアクリーナへと導くエアクリーナ吸気ダクトと、
前記エアクリーナ吸気ダクトの外気取り入れ口の前方に配置され、車両前方から前記外気取り入れ口へとエアーを案内するエアー案内流通路を形成するエアーガイドカバーと、
前記エアーガイドカバーに可動自在に取り付けられ、前記エアー案内流通路を開閉自在とする流路開閉手段とを備えた
ことを特徴とするエアー取り入れ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のエアー取り入れ装置であって、
前記流路開閉手段は、車両停止時には前記エアー案内流通路を閉じた状態とし、車両走行時には車両前方から前記エアー案内流通路へと流れ込むエアーの力によって該エアー案内流通路を開く
ことを特徴とするエアー取り入れ装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のエアー取り入れ装置であって、
前記エアーガイドカバーは、前記ラジエータの前方且つ前面上部を覆うようにして車両の幅方向に延在して設けられている
ことを特徴とするエアー取り入れ装置。
【請求項4】
少なくとも請求項1から請求項3の何れか一つに記載のエアー取り入れ装置であって、
前記エアーガイドカバーは、前記フードの内側に配置されるモータールームカバーと一体的に形成されている
ことを特徴とするエアー取り入れ装置。
【請求項5】
請求項4に記載のエアー取り入れ装置であって、
前記フードと前記モータールームカバーとの間に、前記ラジエータ後方からの熱気を該ラジエータ前方へ吹き返すのを阻止する第1シール部材を設けた
ことを特徴とするエアー取り入れ装置。
【請求項6】
請求項4または請求項5に記載のエアー取り入れ装置であって、
前記モータールームカバーと前記エアクリーナ吸気ダクトとの間に、前記ラジエータ後方からの熱気を該ラジエータ前方へ吹き返すのを阻止する第2シール部材を設けた
ことを特徴とするエアー取り入れ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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