説明

エア抜き機構付切替弁

【課題】煩雑なエア抜き作業を要することなくエア抜きのできる構造の切替弁を提供する。
【解決手段】切替弁は、スプール1の一端側に流体が流入する配管3が接続され、他端側のスプリング座10にスプリング4が配置される。そのような切替弁において、スプール1の一端面に空気流通用小孔11を穿設させ、小孔11を他端のスプリング座10まで連通させた。配管3をスプール1一端側に接続した後、作動油を流せば、作動油に押された空気は、小孔11からスプリング座10に抜けていく。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、エア抜き機構が備えられる切替弁に関する。
【背景技術】
【0002】
流体圧を利用した切替弁として、図2に示すように、スプール70の一端に流体が流入する配管71が接続され、他端のスプリング座にスプリング72が配置される直線作動型の形態がある。特に同図は、油圧ショベルの走行モータ用1速/2速切替弁に用いられる例であるが、一端側にかかる流体圧と、他端側にかかるスプリング72の弾性力とのバランスにより、スプール70が弁ケース73内で左右に摺動し、これにより開くポート74,75が切り替わり、モータの1速と2速とが決定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−293661号公報(0002〜0005段)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のような切替弁を組み立てるにあたっては、スプール70一端のプラグ76に配管71を組付け、その後、配管71に作動油等の流体を流すことになる。このとき、スプール70端部に残留エアが残っていると、所望の圧力が得られなくなり、組立直後の2速切替作動不良の原因となる(エア混入による問題については、例えば特許文献1の0002〜0005段参照)。そこで従来は、組立直後に、別途エア抜きの作業を要するものなっていた。
【0005】
この発明は、従来技術の以上ような問題に鑑み創案されたもので、別途エア抜き作業を必要としない構造の切替弁を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このため、この発明に係るエア抜き機構付切替弁は、スプールの一端側に流体が流入する配管が接続され、他端側のスプリング座にスプリングが配置される切替弁において、前記スプールの一端面に空気流通用小孔を穿設させ、該小孔を他端のスプリング座まで連通させたことを特徴とする。
【0007】
前記空気流通用小孔は、空気は自由に通すが、流体圧用流体はその流通を阻害する程度の大きさの小孔を指す。また、その小孔はスプリング座に連通するものとなっており、その形態として、まず、小孔がスプリング座まで延伸して直接連通する形態が考えられるが、一端面から他端側のスプリング座まで距離があるときは、後述する実施形態例に示すように、スプール内に比較的大径の貫通孔を形成し、その貫通孔を介して連通させるといった間接的な連通形式でも良い。
【0008】
本発明では、スプールの一端側に配管を接続した後、作動油を流していけば、その中の空気は作動油に押されて空気流通用小孔に入っていき、スプリング座まで抜けていく。つまり、切替弁の組立後、特別なエア抜き作業をすることもなく、エアが自動的に抜けるものとなる。
【発明の効果】
【0009】
以上説明したように、この発明によれば、弁組立後に作動油を流せば、エア抜きが自動的に行われるので、従来煩雑だったエア抜き作業がまったく不要となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態例の説明図であり、油圧ショベルの走行モータ用1速/2速切替弁の断面図である。
【図2】従来の油圧ショベルの走行モータ用1速/2速切替弁の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係る具体的実施形態例を図1に基づき説明する。なお、本発明が以下の形態例に限定されるものでないことは当然である。
【0012】
本形態例は油圧ショベルの走行モータ用1速/2速切替弁における具体例であり、図示のように、スプール1の一端側に配管接続用プラグ5が取り付けられる一方、他端側に形成された深溝のスプリング座10にスプリング4が配置され、スプール1が弁ケース2内で直線作動する切替弁となっている。スプール1一端側の前記プラグ5には、作動油が流入する配管3が接続される。スプール1の外周面には、周方向に沿った溝12,13,14が3箇所切られる一方、弁ケース2内周の上方にはメイン流路ポート20が、また下方には1速用ポート21及び2速用ポート22がそれぞれ設けられており、スプール1の左右移動により1速と2速のいずれかのポート21,22が開いて流路が切り替わるものとなっている。また、弁ケース2内周の下方のうち、前記2速ポート22の奥には、ドレン孔23が形成される。
【0013】
このような切替弁において、本形態例では、前記スプール1の一端側の端面に、極小径のブリード孔11が穿設される一方、他端側のスプリング座10の座面から多少径の大きな貫通孔11aが前記ブリード孔11に至るまで穿設され、該ブリード孔11がその貫通孔11aに連通されている。すなわち、スプール1一端側のブリード孔11が前記貫通孔11aを介して他端側のスプリング座10に連通されている。ブリード孔11の直径は、空気を通すが作動油はほとんど通過させない極小径として設定され、本形態例では0.6mmとなっている。なお、スプール1一端面からスプリング座10までの距離が短ければ、ブリード孔11を直接スプリング座10まで連通させる形態としても良いが、本形態例では、その間の多少距離があるので、極小径のブリード孔11を直接スプリング座10まで連通させずに、穿設作業がより容易な、径の大きい貫通孔11aを介して連通させるものとしている。
【0014】
以上のような本形態例では、切替弁の組立の際、スプール1一端のプラグ5に配管3を接続した後、作動油を流していけば、プラグ5内の空気は作動油に押されてブリード孔11に入っていき、貫通孔11aを通ってスプリング座10まで抜け、さらにスプリング4の間を通過してドレン孔23に至ることになる。つまり、切替弁の組立後、特別なエア抜き作業をすることもなく、エアが自動的に抜けることになるものであり、前記ブリード孔11のスプリング座10への連通機構が自動エア抜き機構となっている。
【0015】
なお、本発明が以上の形態に限定されないことは上述したとおりであり、特許請求の範囲の構成を満足させる形態であれば、上記切替弁の形態を適宜変更しても当然にその技術的範囲に属するものである。例えば、切替ポートの位置や大きさ、数等の変更や、スプール、スプリング座の形状の変更等があっても、さらには他の用途の切替弁に適用される形態であっても、本発明の技術的範囲に含まれ得るものである。
【産業上の利用可能性】
【0016】
この発明は、スプールの一端に流体が流入する配管が接続され、他端のスプリング座にスプリングが配置される直線作動型の切替弁に適用可能である。
【符号の説明】
【0017】
1 スプール
2 弁ケース
3 配管
4 スプリング
10 スプリング座
11 ブリード孔(空気流通用小孔)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スプールの一端側に流体が流入する配管が接続され、他端側のスプリング座にスプリングが配置される切替弁において、前記スプールの一端面に空気流通用小孔を穿設させ、該小孔を他端のスプリング座まで連通させたことを特徴とするエア抜き機構付切替弁。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−7235(P2011−7235A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−149841(P2009−149841)
【出願日】平成21年6月24日(2009.6.24)
【出願人】(505236469)キャタピラー エス エー アール エル (144)
【Fターム(参考)】