説明

エア集塵装置

【課題】簡単かつ安価な構成で基板表面の塵を除去でき、かつ除去された塵を効率よく吸引して廃棄することができる装置を提供する。
【解決手段】このエア集塵装置は、基板表面の塵をエアにより除去する装置であって、エアが導入されるエア導入部1と、エジェクタ部2と、排気部3と、を備えている。エジェクタ部2はエア導入部1からのエアの流速を高めてワーク表面に吹き出す。排気部3はエジェクタ部2から吹き出されたエア及びその周囲のエアを吸入して排気する。そして、エジェクタ部2から排気部3に流れるエアのエジェクタ効果によって基板表面の気圧を周囲の大気圧より低くする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エア集塵装置、特に、基板等のワーク表面の塵をエアにより除去するエア集塵装置に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池等の積層基板においては、ガラス基板上に金属膜や半導体膜等の薄膜が積層されている。そして、これらの薄膜には、絶縁処理のために複数の分離溝が形成される。この分離溝は、レーザ光を用いたレーザヘッドや、ダイヤモンド等の刃先を用いたメカニカルツールによって形成される。
【0003】
以上のような薄膜に溝を形成した際には、基板上に除去された膜の一部が塵等の異物として付着する。このような異物は、不良品の原因となるので基板上から除去する必要がある。
【0004】
従来、このような基板上の塵等の異物を除去する装置として、例えば特許文献1に示されるような装置が提供されている。この特許文献1に示された装置は、基板等のワーク表面に圧縮エアを吹き付け、これによりワーク表面に付着した塵を除去するものである。
【0005】
具体的には、特許文献1に示された装置は、エア洗浄ヘッドと、超音波発振制御部と、2つの超音波発生器と、を備えている。エア洗浄ヘッドは、圧縮エアが供給される加圧チャンバと、噴出された圧縮エアを塵とともに吸引する負圧チャンバと、を有している。加圧チャンバには互いに連通する2つの加圧室が設けられており、超音波発生器はこの2つの加圧室に設けられている。また、2つの加圧室には、超音波エアを噴出する1対の噴出ノズルが設けられている。
【0006】
このような装置では、1対の噴出ノズルからワーク表面に対して高速の超音波エアが噴出される。そして、負圧チャンバに設けられた塵吸引口から負圧室内にエアとともに塵が吸引される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−200121号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に示された装置では、エア洗浄ヘッドに加えて、超音波発生器や超音波発振制御部が必要となり、装置が高価になる。また、超音波エアを高速でワーク表面に吹き付けることによってワーク表面に付着した塵を除去することができるが、除去された塵を効率的に負圧室内に吸引することは困難である。このため、除去された塵が再度ワーク表面に付着してしまう場合がある。
【0009】
本発明の課題は、簡単かつ安価な構成でワーク表面の塵を除去でき、かつ除去された塵を効率よく吸引して排気することができる装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に係るエア集塵装置は、ワーク表面の塵をエアにより除去するエア集塵装置であって、エアが導入されるエア導入部と、エジェクタ部と、排気部と、を備えている。エジェクタ部はエア導入部からのエアの流速を高めてワーク表面に吹き出す。排気部はエジェクタ部から吹き出されたエア及びその周囲のエアを吸入して排気する。そして、エジェクタ部から排気部に流れるエアのエジェクタ効果によってワーク表面の気圧を周囲の大気圧より低くする。
【0011】
この装置では、エア導入部に外部からエアが導入される。この導入されたエアは、エジェクタ部により流速が高められてワーク表面に噴出される。このとき、エジェクタ部から排気部に流れるエアによってエジェクタ効果が発生し、ワーク表面近傍の気圧は周囲の大気圧より低くなる。このため、ワーク表面には、エジェクタ部からのエアとともに周囲のエアが流れ込み、このエアの流れによってワーク表面の塵が除去される。そして、ワーク表面から除去された塵は、エアとともに排気部に吸入されて排出される。
【0012】
ここでは、簡単かつ安価な構成でワーク表面の塵を除去することができる。また、従来装置のように高速のエアをワーク表面に噴射する場合に比較して、効率よくエア及び塵を吸入して排気することができる。
【0013】
請求項2に係るエア集塵装置は、請求項1の装置において、エジェクタ部は、ワーク表面の気圧を、ワークが持ち上がらない程度の負圧にする。
【0014】
ここで、エジェクタ効果によってワーク表面近傍の気圧を下げすぎると、ワーク表面がテーブル等の載置部から持ち上げられる場合がある。そして、ワーク表面が持ち上げられると、ワークの位置がずれ、加工誤差の原因になる。
【0015】
そこでこの請求項2に係る発明では、ワーク表面の負圧の程度が調整されている。このため、ワークが持ち上げられることはなく、ワークの位置ズレによる加工誤差を避けることができる。
【0016】
請求項3に係るエア集塵装置は、請求項1又は2の装置において、エア導入部は排気部を挟んで対向して配置された1対のエア導入口を有している。また、エジェクタ部は、1対の絞り部と、1対のエア流出部と、を有している。1対の絞り部は、1対のエア導入口のエア流路下流側に排気部を挟んで対向して配置され、エア導入口からのエアの流速を高める。1対のエア流出部は1対の絞り部のエア流路下流側に配置されている。
【0017】
ここでは、対向して配置された2つのエア導入口からエアが導入され、また2つのエア流出部からのエアがワーク表面に吹き付けられる。そして、これらの間に排気部が配置されている。したがって、ワーク表面に効率よくエアを吹き付けることができ、また効率よくエア及び塵を除去して排気することができる。
【0018】
請求項4に係るエア集塵装置は、請求項3の装置において、排気部は、内部に排気室が設けられるとともに下端に排気室に連通する吸入口が設けられた1対の排気用プレート部材を有している。また、エジェクタ部は、それぞれ1対の排気用プレート部材の外側に装着され、1対の排気用プレート部材との間に絞り部とエア流出部とを形成する1対のエジェクタ用プレート部材を有している。そして、1対の排気用プレート部材と1対のエジェクタ用プレート部材との間に設けられ、絞り部のエア流路断面積を調整するためのシムをさらに備えている。
【0019】
ここでは、簡単な構成によってエジェクタ部及び排気部を構成でき、かつ組立及び分解が容易である。また、エジェクタ用プレート部材と排気用プレート部材との間にシムを設けているので、このシムによってエジェクタ部の絞り部のエア流路断面積(絞り径)を調節でき、ワーク表面のエアの気圧を容易に適切な圧力にすることができる。
【発明の効果】
【0020】
以上のような本発明では、簡単かつ安価な構成でワーク表面の塵を除去できる。また、除去された塵を効率的に吸引して排気することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態によるエア集塵装置の外観斜視図。
【図2】前記エア集塵装置の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
[全体構成]
図1は本発明の一実施形態によるエア集塵装置の外観斜視図、図2はその断面図である。このエア集塵装置は、例えば太陽電池用基板をパターニング処理する際に、基板表面に付着した塵を除去するために用いられる装置である。
【0023】
この装置は、複数のエア導入部1と、エジェクタ部2と、排気部3と、を備えている。なお、排気部3は対向して配置された1対の排気用プレート部材5によって構成されている。また、エジェクタ部2は、1対の排気用プレート部材5と1対のエジェクタ用プレート部材6とによって構成されている。1対のエジェクタ用プレート部材6は、1対の排気用プレート部材5のそれぞれの外側に複数のボルト7によって固定されている。各プレート部材5,6は、図1から明らかなように、一方向に長く延びる帯状に形成されている。
【0024】
[エア導入部]
エア導入部1は、複数の供給パイプ10と、複数の供給パイプ10のそれぞれに連結して設けられた1対の導入パイプ11と、を有している。複数の供給パイプ10には、図示しないコンプレッサ等のエア供給源が連結されている。1対の導入パイプ11は、1つの供給パイプ10から分岐して設けられており、その先端にはジョイント(エア導入口)12が設けられている。各ジョイント12は1対のエジェクタ用プレート部材6に装着されている。このような構成により、排気部3の両側からエアが導入されるようになっている。
【0025】
[エジェクタ部]
エジェクタ部2は、それぞれ排気部3を挟んで対向するように配置された、1対のエア導入室14と、1対の絞り部15と、1対のエア流出部16と、を有している。エジェクタ部2は、エア導入部1からのエアの流速を高めて基板Gの表面に対して吹き出す部分である。このエジェクタ部2から排気部3に向かうエアの流れによってエジェクタ効果が得られ、基板表面の気圧が周囲の大気圧より低い負圧になる。なお、基板表面の気圧は、基板Gが持ち上がらない程度の負圧になるように制御されている。
【0026】
エジェクタ部2は、排気部3を挟んで対称に形成されているので、以下では一方のみの構成について説明する。
【0027】
エジェクタ部2は、排気用プレート部材5とエジェクタ用プレート部材6とによって構成されている。具体的には、エジェクタ用プレート部材6は、排気用プレート部材5と対向する側面に、エア導入室14を構成する上側凹部と、エア流出部16を構成する下側凹部と、を有している。
【0028】
上側凹部は、エジェクタ用プレート部材6の上部から上下方向の中央部及びその下方にかけて形成されており、上壁14aと側壁14bと上傾斜壁14cとを有している。上壁14aは水平に形成されている。側壁14bは垂直に形成されており、この側壁14bにエア導入部1のジョイント12が接続されている。上傾斜壁14cは、側壁14bの下端からさらに下方に延びており、下方にいくにしたがって排気用プレート部材5に近づくように傾斜している。
【0029】
下側凹部はエジェクタ用プレート部材6の下端部に形成されている。この下側凹部は、下傾斜壁16aと側壁16bとを有しており、下方は開放している。下傾斜壁16aは、下側凹部の上部を形成しており、排気用プレート部材5から離れるにしたがって上方に傾斜している。また、排気用プレート部材5において、下側凹部と対向する部分は下方にいくにしたがって内側に傾斜する外傾斜部5aを有している。また、側壁16bは垂直に形成されている。このような下側凹部と排気用プレート部材の外傾斜部5aによって、エア流出部16が構成されている。このような構成により、後述する絞り部15を通過してエア流出部16に流入したエアは、外傾斜部5aに沿って内側に流れ、下傾斜壁16aに沿って外側に流出することはない。従って、エア流出部16に流入したエアがエア集塵装置の外側に流出することによる塵の飛散が防止される。
【0030】
絞り部15は、上側凹部(エア導入室14)と下側凹部(エア流出部16)との間に形成されている。この絞り部15は、エジェクタ用プレート部材6の内側端面と、排気用プレート部材5の外側端面との間に形成された所定の隙間であり、上下方向に所定の長さを有している。そして、エア導入室14から流れてくるエアがこの絞り部15を通過することにより、流速が高速になり、エア流出部16から排気部3に至る部分においてエジェクタ効果が発生するようになっている。
【0031】
[排気部]
排気部3はエジェクタ部2からのエア及びその周囲のエアを吸入して排気するものである。排気部3は、前述のように、対向する1対の排気用プレート部材5から構成されており、1対の排気用プレート部材5の間に、排気室18が構成されている。そして、この排気室18には複数の排気パイプ19が接続されている。複数の排気パイプ19は、図1から明らかなように、長手方向に沿って所定の間隔で配置されている。また、排気室18の下端部には、排気用の吸入口20が形成されている。排気用吸入口20の下端には、下方にいくにしたがって外側に拡がるように傾斜する1対の内傾斜部20aが形成されている。この内傾斜部20aによって外部からのエアが排気室18に流入しやすくなっている。
【0032】
[シム]
エジェクタ用プレート部材6と排気用プレート部材5との間の上部には、シム22が挿入されている。シム22の厚みや枚数を調整することによって、絞り部15の絞り径、すなわちエアの流路断面積を調整することが可能である。この絞り部15の絞り径と、エア導入部1に供給されるエアの圧力と、を調整することによって、エジェクタ効果による基板表面の負圧が調整され、本装置の下方に配置された基板Gが持ち上げられないようになっている。
【0033】
[動作]
供給パイプ10を介してエア導入部1からエアが導入されると、エアはジョイント12を介してエジェクタ部2に流入する。エジェクタ部2においては、エアはいったんエア導入室14に流入した後、絞り部15を通過してエア流出部16に流れる。このとき、絞り部15から流出したエアは高速になり、基板表面を通過して排気部3の吸入口20に向かって流れる。このようなエアの流れによって、基板表面はその周囲の大気圧より低い負圧になる。この負圧とエアの粘性によって、排気部3の吸入口20に流れ込むエア流に周囲のエアが引き込まれる。このようなエジェクタ効果によって、基板表面に付着している塵は、エアとともに排気部3の吸入口20に引き込まれ、排気部3の排気室18に流入する。その後は、排気パイプ19を介して外部に排気される。
【0034】
[特徴]
(1)エアを基板表面に吹き付けて塵を吹き飛ばすのではなく、エジェクタ効果によって周囲のエアとともに塵を排気部3に吸引するので、効率よく塵の除去及び排気を行うことができる。
【0035】
(2)シム22によってエジェクタ部2の絞り部15の絞り径(エア流路断面積)を簡単に調整できるので、容易に最適なエジェクタ効果を得ることができる。
【0036】
(3)排気部3を挟んでエジェクタ部2のエア流出部16を対向して配置しているので、より効率よく基板表面の塵を除去して排気することができる。
【0037】
(4)それぞれ1対の排気用プレート部材5及びエジェクタ用プレート部材6によって装置の主な構成部分を実現できる。したがって、簡単で、かつ安価に装置を実現できる。また、分解、組立が容易であり、メンテナンス作業が容易になる。
【0038】
[他の実施形態]
本発明は以上のような実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱することなく種々の変形又は修正が可能である。
【0039】
エア導入部やエジェクタ部の配置、構成は前記実施形態に限定されるものではない。例えば、エア導入部及びエジェクタ部を排気部の片側のみに配置してもよい。
【符号の説明】
【0040】
1 エア導入部
2 エジェクタ部
3 排気部
5 排気用プレート部材
6 エジェクタ用プレート部材
12 ジョイント(エア導入口)
14 エア導入室
15 絞り部
16 エア流出部
18 排気室
22 シム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワーク表面の塵をエアにより除去するエア集塵装置であって、
エアが導入されるエア導入部と、
前記エア導入部からのエアの流速を高めてワーク表面に吹き出すエジェクタ部と、
前記エジェクタ部から吹き出されたエア及びその周囲のエアを吸入して排気する排気部と、
を備え、
前記エジェクタ部から前記排気部に流れるエアのエジェクタ効果によってワーク表面の気圧を周囲の大気圧より低くする、
エア集塵装置。
【請求項2】
前記エジェクタ部は、ワーク表面の気圧を、前記ワークが持ち上がらない程度の負圧にする、請求項1の記載のエア集塵装置。
【請求項3】
前記エア導入部は前記排気部を挟んで対向して配置された1対のエア導入口を有し、
前記エジェクタ部は、前記1対のエア導入口のエア流路下流側に前記排気部を挟んで対向して配置され前記エア導入口からのエアの流速を高める1対の絞り部と、前記1対の絞り部のエア流路下流側に配置された1対のエア流出部と、を有する、
請求項1又は2に記載のエア集塵装置。
【請求項4】
前記排気部は、内部に排気室が設けられるとともに下端に前記排気室に連通する吸入口が設けられた1対の排気用プレート部材を有し、
前記エジェクタ部は、それぞれ前記1対の排気用プレート部材の外側に装着され、前記1対の排気用プレート部材との間に前記絞り部と前記エア流出部とを形成する1対のエジェクタ用プレート部材を有し、
前記1対の排気用プレート部材と前記1対のエジェクタ用プレート部材との間に設けられ、前記絞り部のエア流路断面積を調整するためのシムをさらに備えた、
請求項3に記載のエア集塵装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−200830(P2011−200830A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−72481(P2010−72481)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(390000608)三星ダイヤモンド工業株式会社 (383)
【Fターム(参考)】