説明

エイコサノイド代謝を調節する方法

本発明の対象は、エイコサノイド代謝プロセスの調節を必要とする動物の細胞におけるエイコサノイド代謝プロセスを調節する方法であって、エイコサノイドオキシゲナーゼの活性を制御するために有効量の本発明の組成物を上記動物に投与するステップを含む方法に関する。具体的には、本発明の対象は、リポキシゲナーゼ及びシクロオキシゲナーゼを制御するために有効量の本発明の組成物を投与することによるアラキドン酸代謝を調節する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本出願は、2005年6月14日出願の米国仮特許出願第60/690,161号、及び2006年4月17日出願の米国仮特許出願第60/792,330号の利益を主張し、これらの内容は、参照により本明細書中に全体として組み入れられる。
【0002】
[発明の対象の背景]
(1.発明の対象の分野)
本発明の対象は、エイコサノイド代謝プロセスの調節を必要とする動物の細胞におけるエイコサノイド代謝プロセスを調節する方法に関し、エイコサノイドオキシゲナーゼの活性を制御するために有効量の本発明の組成物を動物に投与するステップを含む。特に、本発明の対象は、リポキシゲナーゼ及びシクロオキシゲナーゼの活性を制御するために有効量の本発明の組成物を投与することによるアラキドン酸代謝を調節する方法に関する。
【0003】
(2.背景)
前立腺癌などの癌の早期診断及び治療において進歩がなされたが、前立腺癌は、依然として、最も共通した悪性腫瘍であり、米国において死に関連した男性の癌の2番目に多い原因である。この疾患のより関心の高い局面の1つは、潜在的な前立腺癌はアジアと米国の男性の両方で等しい割合で発症するが、臨床的に重大な前立腺癌の発症率はアジアよりも米国の方が非常に高いという事実である。この相違が異なった集団の食事摂取に関連していることを信じるには多数の理由があり、これらの観察が、前立腺癌の進行に影響を与える可能性のある様々な食事の要因の大規模な調査を促進した。高脂肪の食事は、前立腺癌の危険性の上昇と結び付くため、疫学的研究の中には、これは部分的には、典型的な西洋の食事と比べてアジアの食事の脂肪摂取量が低いことに原因があるかもしれないと示唆するものもある。
【0004】
本出願人らは、本発明の組成物の投与が、骨髄性白血病KBM−5細胞におけるTNF誘導のNF−κB活性化を阻害し、肺腺癌H1299細胞におけるタバコの煙の濃縮物によって誘導されるNF−κB活性化を阻害することを見出した。本発明の組成物の投与はまた、TNF誘導の細胞浸潤及び排除されたRANKL誘導の破骨細胞形成の抑制をもたらす。更に、本発明の組成物の投与は、TNF誘導の種々の抗アポトーシス、増殖及び転移に関わる遺伝子産物の発現を抑制する。
【0005】
[発明の対象の概要]
本発明の対象は、エイコサノイド代謝プロセスの調節を必要とする動物の細胞におけるエイコサノイド代謝プロセスを調節する方法に関し、この方法は、エイコサノイドオキシゲナーゼの活性を制御するために有効量の本発明の組成物を上記動物に投与するステップを含み、上記組成物は、ローズマリー、ウコン、オレガノ及びジンジャーの治療的に有効量の超臨界抽出物;並びに、ホーリーバジル、ジンジャー、ウコン、コガネバナ(Scutellaria baicalensis)、ローズマリー、グリーンティー、イタドリ(huzhang)、黄蓮(Chinese goldthread)及びメギの治療的に有効量の含水アルコール抽出物を含む。
【0006】
本発明の対象は、更に、13−S−HODEの送達を必要とする動物に13−S−HODEを送達する方法に関し、ローズマリー、ウコン、オレガノ及びジンジャーの治療的に有効量の超臨界抽出物;並びに、ホーリーバジル、ジンジャー、ウコン、コガネバナ、ローズマリー、グリーンティー、イタドリ、黄蓮及びメギの治療的に有効量の含水アルコール抽出物を含む組成物を動物に投与するステップを含む。
【0007】
その上、本発明の対象は、アラキドン酸が媒介した炎症の阻害を必要とする動物におけるアラキドン酸が媒介した炎症を阻害する方法に関し、ローズマリー、ウコン、オレガノ及びジンジャーの治療的に有効量の超臨界抽出物;並びに、ホーリーバジル、ジンジャー、ウコン、コガネバナ、ローズマリー、グリーンティー、イタドリ、黄蓮及びメギの治療的に有効量の含水アルコール抽出物を含む組成物を上記動物に投与するステップを含む。
【0008】
更に、本発明の対象は、NF−κBに制御される遺伝子産物のレベルの調節を必要とする動物の細胞におけるNF−κBに制御される遺伝子産物のレベルを調節する方法に関し、ローズマリー、ウコン、オレガノ及びジンジャーの治療的に有効量の超臨界抽出物;並びに、ホーリーバジル、ジンジャー、ウコン、コガネバナ、ローズマリー、グリーンティー、イタドリ、黄蓮及びメギの治療的に有効量の含水アルコール抽出物を含む組成物を上記動物に投与するステップを含む。
【0009】
[発明の対象の詳細な説明]
(定義)
用語「調節すること」は、生物の生物学的活性、機能、健康、又は状態に対する効果を生じさせるプロセスを意味し、このような生物学的活性、機能、健康、又は状態は、生物の一般的な健康及び幸福と調和するように、維持され、増強され、減少され、又は処置される。
【0010】
生物の生物学的活性、機能、健康、又は状態を「増強すること」という用語は、増大、補強、強化、又は改善のプロセスを意味する。
【0011】
用語「エイコサノイド」は、アラキドン酸及びリノリニックアシッド(linolinic acid)などの多価不飽和脂肪酸から誘導される化合物の分類のいずれかを意味し、細胞活性に関与する。
【0012】
用語「オキシゲナーゼ」は、酵素の基質への、酸素分子の導入を触媒する、酵素の分類のいずれかを意味する。
【0013】
用語「超臨界ガス」又は「超臨界流体」は、本明細書中で使用するとき、臨界点温度まで加熱されたガスを意味し、この温度を超えると、ガスは圧力にかかわらずに、ガス状態を維持し、液体に変わらない。ガスの臨界点を超える温度に加熱されたガスは、圧縮により高密になるであろうし、そのためガスの特徴は、流体の特徴に似ているが、液体になるであろう。二酸化炭素は、通常、超臨界流体を必要とする用途において使用されている。超臨界流体の一般的な特性、及び抽出過程での超臨界流体の一般的な使用は、例えば、Taylor,Supercritical Fluid Extraction,Wiley,1996;McHugh and Krukonis,Superscritical Fluid Extraction:Principles and Practice,2nd ed.,Butterworth−Heinemann,1994;及び、Williams and Clifford,Supercritical Fluid Methods and Protocols,Humana Press,2000に記載され、これらの内容は、参照により本明細書中に組み入れられる。
【0014】
本出願人らは、ハーブ抽出物で構成される混合物を開発し、この混合物は、COX−2阻害活性を有する。本出願人らの組成物は、組成物のいくつかの成分が超臨界CO抽出法を経て調製される点で独特である。従来の溶媒系抽出法とは異なって、超臨界CO抽出は、化学的な残留物を残すことなくハーブにおける天然産物を調製物中に得ることができる。
【0015】
用語「超臨界抽出」は、本明細書中で使用するとき、疎水性化合物が超臨界流体を利用する試料から抽出され得る手法を意味する。超臨界流体の溶媒和力は、圧力及び温度が臨界点を上回って上昇するにつれて増加し、疎水性分子の分離のために有効な溶媒を生成する。用語「超臨界抽出物」は、超臨界抽出によって調製された抽出物を意味する。
【0016】
用語「含水アルコール抽出」は、本明細書中で使用するとき、親水性化合物がアルコール及び水を利用して試料から抽出され、その後、溶液を蒸発させて、溶解した固体からなる抽出物を生成する手法を意味する。用語「含水アルコール抽出物」は、含水アルコール抽出によって調製された抽出物を意味する。
【0017】
用語「13−S−HODE」は、13−ヒドロキシオクタデカ−9Z,11E−ジエン酸を意味する。
【0018】
用語「NF−κB」又は「nuclear factor kappa B」は、遺伝子発現に関与するマルチサブユニットの転写因子を意味する。活性なNF−κBは、RELファミリー/p65サブユニット及びp50若しくはp52サブユニットの二量体からなる。NF−κBは、NF−κBの阻害剤IκBとの相互作用を通じて細胞質に維持されるが、解離によって、細胞核に移動する。
【0019】
(本発明の組成物)
本発明の組成物は、抗増殖活性、抗炎症活性、抗酸化活性、抗血管形成活性、及びアポトーシス活性を示す構成成分を含むポリハーブ調製剤の類である。本発明の組成物は、ローズマリー、ウコン、オレガノ及びジンジャーの治療的に有効量の超臨界抽出物;並びに、ホーリーバジル、ジンジャー、ウコン、コガネバナ、ローズマリー、グリーンティー、イタドリ、黄蓮及びメギの治療的に有効量の含水アルコール抽出物で構成される。
【0020】
一態様では、活性な組成物は、下記を含む。
(A)約4.5重量%〜約7.5重量%、より好ましくは約5.5重量%〜約6.5重量%のジンジャーの含水アルコール抽出物;
(B)約5.5重量%〜約8.5重量%、より好ましくは約6重量%〜約8重量%のジンジャーの超臨界抽出物;
(C)約1.0重量%〜約1.5重量%、より好ましくは約1.2重量%〜約1.4重量%のウコンの超臨界抽出物;
(D)約10.0重量%〜約16.0重量%、より好ましくは約11.5重量%〜約14.5重量%のローズマリーの超臨界抽出物;
(E)約4.0重量%〜約6.0重量%、より好ましくは約4.5重量%〜約5.5重量%のオレガノの超臨界抽出物;
(F)約10.0重量%〜約16.0重量%、より好ましくは約11.5重量%〜約14.5重量%のウコンの含水アルコール抽出物;
(G)約5.5重量%〜約8.0重量%、より好ましくは約6.0重量%〜約7.0重量%のローズマリーの含水アルコール抽出物;
(H)約10.0重量%〜約16.0重量%、より好ましくは約11.5重量%〜約14.5重量%のホーリーバジルの含水アルコール抽出物;
(I)約10.0重量%〜約16.0重量%、より好ましくは約11.5重量%〜約14.5重量%のグリーンティーの含水アルコール抽出物;
(J)約8.0重量%〜約12.0重量%、より好ましくは約9.0重量%〜約11.0重量%のイタドリの含水アルコール抽出物;
(K)約4.0重量%〜約6.0重量%、より好ましくは約4.5重量%〜約5.5重量%の黄蓮の含水アルコール抽出物;
(L)約4.0重量%〜約6.0重量%、より好ましくは約4.5重量%〜約5.5重量%のメギの含水アルコール抽出物;及び
(M)約2.0重量%〜約3.0重量%、より好ましくは約2.25重量%〜約2.75重量%のコガネバナの含水アルコール抽出物。
【0021】
場合により、本発明で用いられるジンジャー、ローズマリー、ウコン、又はオレガノの含水アルコール抽出物は、好ましくは、下記の通りに調製される。植物又は植物の一部は、熱に感受性の成分を保存するために、好ましくは低温で粉砕し、好ましくは二酸化炭素を用いて超臨界抽出に共し、本明細書では「超臨界抽出物」と呼ぶオイル抽出物を得る。更なる任意の態様では、オイル不含残留物は、第一段階から単離され、次に、アルコール60〜80部と水40〜20部で構成される混合物である水/アルコール、好ましくは水/エタノール中で抽出される。次に、アルコール/水の液体を蒸発させて、本明細書中では「含水アルコール抽出物」と呼ぶ粉末化した抽出残留物が残る。
【0022】
本発明で場合により用いられるジンジャー、ローズマリー、ウコン、及びオレガノの超臨界抽出物は、例えば、本明細書中に参照により組み入れられるE.Stahl,K.W.Quirin,D.Gerard,Dense Gases for Extraction and Refining,Springer Verlag 4 1988に開示される既知の超臨界抽出法に従って調製することができる。
【0023】
好ましい態様では、ジンジャーの超臨界抽出物とジンジャーの含水アルコール抽出物との重量比は、約0.8:1〜約1.4:1である。
【0024】
本発明で用いられるローズマリー、ウコン、ホーリーバジル、グリーンティー、イタドリ、黄蓮、メギ及びコガネバナの含水アルコール抽出物は、従来の含水アルコール抽出手法に従って調製することができる。例えば、含水アルコール抽出物は、アルコール60〜80部と水40〜20部で構成される混合物である水/アルコール、好ましくは水/エタノール中で植物部分を抽出し、次に、水/アルコールの液体を蒸発させて、本明細書中では「含水アルコール抽出物」と呼ぶ粉末化した抽出残留物を残すことによって調製することができる。
【0025】
更に別の態様では、ウコンの含水アルコール抽出物とウコンの超臨界抽出物との重量比は、約8:1〜約12:1である。
【0026】
代替の態様では、ローズマリーの超臨界抽出物とローズマリーの含水アルコール抽出物の重量比は、約1.6:1〜約2.4:1である。
【0027】
なお更なる態様では、ジンジャーの含水アルコール抽出物は、約2.4重量%〜約3.6重量%、より好ましくは約2.7重量%〜約3.3重量%、最も好ましくは約3.0重量%の刺激性化合物を含む。
【0028】
別の態様では、ジンジャーの超臨界抽出物は、約24重量%〜約36重量%、より好ましくは約27重量%〜約33重量%、最も好ましくは約30重量%の刺激性化合物を含み;約6.4重量%〜約9.6重量%、より好ましくは約7.2重量%〜約8.8重量%、最も好ましくは約8重量%のジンギベレンを含む。
【0029】
更なる態様では、ウコンの超臨界抽出物は、約36重量%〜約54重量%、より好ましくは約40.5重量%〜約49.5重量%、最も好ましくは約45重量%のターメロン(turmerones)を含む。
【0030】
別の態様では、ローズマリーの超臨界抽出物は、約18.4重量%〜約27.6重量%、より好ましくは約20.7重量%〜約25.3重量%、最も好ましくは約23重量%の全フェノール系抗酸化物質を含む。
【0031】
更に別の態様では、オレガノの超臨界抽出物は、約4.0重量%、より好ましくは約4.5重量%〜約5.5重量%、最も好ましくは約5.0重量%の全フェノール系抗酸化物質を含む。
【0032】
なお更なる態様では、ウコンの含水アルコール抽出物は、約5.6重量%〜約8.4重量%、より好ましくは約6.3重量%〜約7.7重量%、最も好ましくは約7%のクルクミンを含む。
【0033】
別の態様では、ローズマリーの含水アルコール抽出物は、約18.4重量%〜約27.6重量%、より好ましくは約20.7重量%〜約25.3重量%、最も好ましくは約23重量%の全フェノール系抗酸化物質を含む。
【0034】
更なる態様では、ホーリーバジルの含水アルコール抽出物は、約1.6重量%〜約2.4重量%、より好ましくは約1.8重量%〜約2.2重量%、最も好ましくは約2重量%のウルソル酸を含む。
【0035】
更なる態様では、グリーンティーの含水アルコール抽出物は、約36重量%〜約54重量%、より好ましくは約40.5重量%〜約49.5重量%、最も好ましくは45重量%のポリフェノールを含む。
【0036】
別の態様では、イタドリの含水アルコール抽出物は、約6.4重量%〜約9.6重量%、より好ましくは約7.2重量%〜約8.8重量%、最も好ましくは約8重量%のレザバトロール(reservatrols)を含む。
【0037】
別の態様では、黄蓮の含水アルコール抽出物は、約4.8重量%〜約7.2重量%、より好ましくは約5.4重量%〜約6.6重量%、最も好ましくは約6重量%のベルベリンを含む。
【0038】
更なる態様では、メギの含水アルコール抽出物は、約4.8重量%〜約7.2重量%、より好ましくは約5.4重量%〜約6.6重量%、最も好ましくは約6重量%のベルベリンを含む。
【0039】
代替の態様では、上記組成物は、下記を含む。
(A)約4.5重量%〜約7.5重量%のジンジャーの含水アルコール抽出物、ここで、この抽出物は、約2.4重量%〜約3.6重量%の刺激性化合物を含む;
(B)約5.5重量%〜約8.5重量%のジンジャーの超臨界抽出物、ここで、この抽出物は、約24重量%〜約36重量%の刺激性物質及び約6.4重量%〜約9.6重量%のジンギベレンを含む;
(C)約1.0重量%〜約1.5重量%のウコンの超臨界抽出物、ここで、この抽出物は、約36重量%〜約54重量%のターメロンを含む;
(D)約10.0重量%〜約16.0重量%のローズマリーの超臨界抽出物、ここで、この抽出物は、約18.4重量%〜約27.6重量%の全フェノール系抗酸化物質を含む;
(E)約4.0重量%〜約6.0重量%のオレガノの超臨界抽出物、ここで、この抽出物は、約4.0重量%を超える全フェノール系抗酸化物質を含む;
(F)約10.0重量%〜約16.0重量%のウコンの含水アルコール抽出物、ここで、この抽出物は、約5.6重量%〜約8.4重量%のクルクミンを含む;
(G)約5.5重量%〜約8.0重量%のローズマリーの含水アルコール抽出物、ここで、この抽出物は、約18.4重量%〜約27.6重量%の全フェノール系抗酸化物質を含む;
(H)約10.0重量%〜約16.0重量%のホーリーバジルの含水アルコール抽出物、ここで、この抽出物は、約1.6重量%〜約2.4重量%のウルソル酸を含む;
(I)約10.0重量%〜約16.0重量%のグリーンティーの含水アルコール抽出物、ここで、この抽出物は、約36重量%〜約54重量%のポリフェノールを含む;
(J)約8.0重量%〜約12.0重量%のイタドリの含水アルコール抽出物、ここで、この抽出物は、約6.4重量%〜約9.6重量%のレザバトロールを含む;
(K)約4.0重量%〜約6.0重量%の黄蓮の含水アルコール抽出物、ここで、この抽出物は、約4.8重量%〜約7,2重量%のベルベリンを含む;
(L)約4.0重量%〜約6.0重量%のメギの含水アルコール抽出物、ここで、この抽出物は、約4.8重量%〜約7.2重量%のベルベリンを含む;及び
(M)約2.0重量%〜約3.0重量%のコガネバナの含水アルコール抽出物を含み、ここで、上記組成物は、更に、下記を含む。
(i)含水アルコール抽出物の1部に対して超臨界抽出物の約0.8〜約1.4部の重量比であるジンジャーの超臨界抽出物及びジンジャーの含水アルコール抽出物;
(ii)超臨界抽出物の1部に対して含水アルコール抽出物の約8〜約12部の重量比であるウコンの含水アルコール抽出及びウコンの超臨界抽出物;及び
(iii)含水アルコール抽出物の1部に対して超臨界抽出物の約1.6〜約2.4部の重量比であるローズマリーの超臨界抽出物及びローズマリーの含水アルコール抽出物。
【0040】
代替の態様では、組成物は、抗腫瘍剤、成長阻害剤、及び栄養素からなる群から選択される追加の薬物を含む。
【0041】
不活性な成分を除いて、本発明の方法で用いられる経口投与される組成物の好ましい実施形態が、表1に記載される。表1に示された量は、列挙された成分の好ましい投薬量を表す。
【0042】
【表1】

【0043】
好ましくは、表1に記載される組成物はまた、エクストラバージンオリーブオイル及び蜜ろうを含む。
【0044】
(本発明の対象の方法)
本発明の対象の組成物は、概して、典型的には東洋の食生活で消費される植物産物(ジンジャー、ローズマリー、ウコンの根、ホーリーバジル、グリーンティー、イタドリ、黄蓮、メギ、オレガノ、及びコガネバナ)からの規準化した超臨界CO濃縮抽出物を含む。
【0045】
本発明の組成物は、ヒトPC3細胞に対する抗増殖作用について調べ、具体的には、この前立腺癌細胞株におけるエイコサノイド代謝における効果について分析した。本発明の組成物は、クローニングされたCOX−1、COX−2及び5−LOX活性の濃度依存的な阻害を生じることが観察され、5−HETE産生の阻害は、PGE2形成の阻害よりも大きかった。
【0046】
無傷のPC3に適用した場合、本発明の組成物は、12−LOX活性に対して最も強力であることが分かり、続いて5−LOX活性、次にCOX活性に対してであった。驚くべきことに、PC3細胞における13−S−HODEの出現は、本発明の組成物それ自体におけるこのエイコサノイドの存在が原因であり、細胞内の15−LOX活性の刺激ではなかった。PC3細胞の増殖の濃度依存的な阻害は、細胞周期の選択的なG2/M停止及びアポトーシスの誘導に関連し、アネキシンV及びホスファチジルイノシトールを用いたPC3細胞のフローサイトメトリー染色によって証明された。
【0047】
本発明の組成物はまた、5−LOX及び12−LOX発現の濃度依存的なダウンレギュレーション(down−regulation)を生じるが、高濃度では、COX−2発現のアップレギュレーション(up−regulation)が示された。いくつかの細胞情報伝達タンパク質のリン酸化状態を測定した。本発明の組成物は、p21のリン酸化の増加を生じたが、Rb及びSTAT1タンパク質のリン酸化をダウンレギュレートした。pRbタンパク質の減少は、12−LOXの阻害、及び細胞における12−HETEレベルの減少によることが示された。本発明の組成物で処理した細胞への12−HETEの添加は、細胞増殖を阻害する本発明の組成物の能力を克服し、これと一致して、12−HETEは、Rbタンパク質のリン酸化をダウンレギュレートする本発明の組成物の能力を阻害した。
【0048】
本発明の組成物を用いたヒト前立腺癌細胞の増殖の効果的な制御は、複合機構的であるが、部分的には、12−LOXなどの異常な腫瘍細胞のエイコサノイド代謝の制御、13−(S)−HODEなどの植物由来のエイコサノイド産物の適用、並びにリン酸化状態の制御を通じたRb腫瘍抑制タンパク質機能の制御に関わると結論付けられる。
【0049】
更に、他の実験では、組成物はシクロゲナーゼ(クローニングされたCOX−1及びCOX−2)の強力な阻害を示したものの、この産物によって引き起こされるヒト前立腺腫瘍細胞成長を低下する能力は、大部分、COX−2に独立した機構によると考えられることが示された。細胞及び組織における複数のエイコサノイドを同時に測定するLC/MS/MSに基づく方法を用いて、この独自のハーブ組成物によって生じる細胞及び組織におけるエイコサノイド代謝の変化を調べた。
【0050】
細胞内のPGE2、12−HETE並びに5−HETEのレベルは、組成物に暴露することにより濃度依存的に減少した。対照的に、15−HETE及び13−HODEの細胞レベルは上昇した。13−HODEの上昇は、劇的ではあったが、上記で検討したように、ハーブ組成物それ自体に存在する13−HODEの高い含有量に起因するものであり、この重要なエイコサノイドの細胞による生成に依存しなかった。13−HODEレベルは、腫瘍細胞成長の阻害を説明するには十分に高いと考えられ、これは真の13−HODEを腫瘍細胞培養物に添加することによって独立に検証された。
【0051】
ヒト腫瘍細胞(PC3前立腺癌細胞)の本発明の組成物への曝露はまた、ウェスタンブロット分析によって測定される5−LOX発現のダウンレギュレーションをもたらした。アラキドン酸が媒介したマウスの耳炎症を阻害する本発明の能力はまた評価された。本発明の組成物は、LTB4合成の有意な阻害を生じ、15−HETEの産生をアップレギュレートした。
【0052】
したがって、本発明の対象は、エイコサノイド代謝プロセスの調節を必要とする動物の細胞におけるエイコサノイド代謝プロセスを調節するための方法に関し、この方法は、エイコサノイドオキシゲナーゼの活性を制御するために有効量の組成物を上記動物に投与するステップを含み、当該組成物は、ローズマリー、ウコン、オレガノ及びジンジャーの治療的に有効量の超臨界抽出物;並びに、ホーリーバジル、ジンジャー、ウコン、コガネバナ、ローズマリー、グリーンティー、イタドリ、黄蓮及びメギの治療的に有効量の含水アルコール抽出物を含む。
【0053】
本発明の対象の一態様では、細胞は癌細胞である。一実施形態では、癌細胞は、前立腺癌細胞、乳癌細胞、肺癌細胞、結腸癌細胞、又はそれらの組合せを含む。
【0054】
代替の実施形態では、エイコサノイド代謝プロセスは、細胞の癌への形質転換、癌細胞増殖、癌細胞転移、癌細胞浸潤、癌細胞調節の血管形成、癌細胞調節のアポトーシス抑制、又はそれらの組合せに関連した異常代謝である。
【0055】
エイコサノイド代謝。アラキドン酸及びその前駆体、リノール酸、及びリノリニックアシッド(linolinic acid)は、動物脂肪及び様々な植物油に存在し、一般的には、東洋の食生活と比較して、典型的な西洋の食生活により大量に消費されていると考えられる。これらの脂肪酸の摂取の増加は、リポキシゲナーゼ(LOX)及びシクロオキシゲナーゼ(COX)などのオキシゲナーゼに対する基質利用性を増加させ、これらの酵素は、アラキドン酸などのエイコサノイドのプロスタグランジン、ロイコトレン、リポキシン、13−S−HODE、5−HETE、及び12−HETEなどのシグナル分子への変換に関与する。多くの重要な生物学的経路におけるセカンドメッセンジャーとしてのそれらの重要な役割に加えて、エイコサノイド代謝のこれらの産物は、腫瘍発生、進行、増殖、及び転移のあらゆる局面に関わり合っている。
【0056】
リポキシゲナーゼ及びエイコサノイド代謝。リポキシゲナーゼ酵素(LOX)は、細胞における細胞の生存及びアポトーシスの重要な調節因子であることが知られている。リポキシゲナーゼ酵素は、アラキドン酸酸化の部位特異性について分類される脂質過酸化酵素の異種ファミリーを構成する。LOXは、5−、8−、12−、及び15−LOXアイソフォームとして示され、5(S)−、8(S)−、12(S)−、及び15(S)−HETEとして知られている最終産物を生成する。PC3細胞におけるCOX及びLOX代謝のLC/MS/MS分析の応用は、以前に公開された手法を用いて行った。結果は、本発明の組成物が、期待された通りに、クローニングされたCOX−1及びCOX−2の酵素活性の阻害剤であることを示した。更に、当該組成物はまた、クローニングされた5−LOX活性を阻害し、実際に、COX阻害剤よりは5−LOX阻害剤としてより強力であった。培養中のPC3細胞の処理は、本発明の組成物の、COXの阻害を通じてPGE2の形成を阻害する能力が、5−LOXを阻害する能力より小さく、これは、言い換えると、ヒト前立腺癌の増殖及び転移に重要であることで知られる酵素である12−LOXの、本発明を介した阻害よりも小さいことを示した。
【0057】
12−HETE。いくつかの証拠が、現在、癌細胞の発生の調節因子として12−LOXを明確に関連付けている。K.Honnの研究所は、特に、ヒト前立腺癌における血小板型12−LOX及びその産物である12(S)−HETEの役割の理解に大きく貢献してきた。彼らは、例えば、12−LOXがいくつかの前立腺癌細胞株において発現すること、バイカレイン又はBHPPなどの12−LOXの阻害剤が前立腺腫瘍の転移を有意に阻害すること、12−LOXレベルがヒト前立腺腫瘍の等級及び重症度と相関することを報告した。このグループからの最近の優れた報告では、前立腺細胞成長及び増殖のバイカレイン阻害が12−LOX阻害と特異的に関連し、12−HETEの減少がリン酸化されたRbタンパク質の喪失と相関することも示された。RBのリン酸化の減少は、言い換えると、RBタンパク質がDNA合成に必要とされる転写因子に結合したままにし、癌細胞増殖の阻害をもたらす。
【0058】
早期段階の前立腺癌などの癌と関連した炎症に関与する生物活性な脂質が多く存在する。これらは、腫瘍細胞増殖を刺激するPGEの十分に立証された能力を含む。これは、典型的には、腫瘍におけるCOX−2の過剰発現を通じて起こり、PGDH活性の減少のより最近の知見でもあり、この酵素は、PGEの代謝に関与する。5−リポキシゲナーゼからの5−HETE及び12−リポキシゲナーゼからの12−HETEなどのリポキシゲナーゼ産物はまた、前立腺腫瘍細胞増殖を特異的に誘導することが示されている。12−HETEは、前立腺癌の増殖、転移及び血管形成と関連することが示されているので、12−LOXの阻害が前立腺癌の治療における可能性のある治療的アプローチを示すという示唆が最近なされている。15−LOX−1の産物である13−S−HODE、及び15−LOX−2の産物である15−HETEなどの他のエイコサノイドは、癌、特に、前立腺癌のシグナリングに対して拮抗的な作用をするようであり、実際には、エイコサノイドの作用においては腫瘍タイプ選択的であるかもしれない。
【0059】
悪性疾患に対する組織炎症の進行における選択された生物活性なエイコサノイドの役割をより良く理解するために、本出願人らは、自らが開発したエレクトロスプレイ・タンデム質量分析アッセイを用いて、前立腺細胞に関連する炎症プロフィールを試験した。この方法は、アラキドン酸又はリノール酸などの外因子基質を添加する必要がなく、一度に最大10個のシクロオキシゲナーゼ、リポキシゲナーゼ及び/又はチトクロームP450誘導のエイコサノイドの同時分析を通じて細胞又は組織試料における「ミニ−リピドミクス(mini−lipidomics)」の測定を可能にする。
【0060】
ヒトの癌におけるエイコサノイドの役割をより良く理解するために、本出願人らは、PC3細胞におけるこの新規な組織炎症アッセイを用いて、このヒトの疾患の増殖に重要であると考えられるシクロオキシゲナーゼ及びリポキシゲナーゼ誘導のエイコサノイドに対する本発明の組成物の効果を測定した。本出願人らは、本発明の組成物が、エイコサノイド代謝において、もし、シクロオキシゲナーゼ活性の阻害以外の効果を生じるならば、どのような効果が生じるのかを測定した。本出願人らのデータは、このマルチハーブ産物が、5−LOX及び12−LOX活性を阻害することを示唆している。後者の知見は、12−LOX活性の抑制が、腫瘍細胞増殖及びRbリン酸化の阻害、したがって、ホルモン抵抗性PC3前立腺腫瘍細胞に対する腫瘍抑制活性の復帰と特異的に関連していることを見出した点で、特に興味深いものであるかもしれない。
【0061】
したがって、好ましい態様では、エイコサノイドは、アラキドン酸及びリノリニックアシッド(linolinic acid)からなる群から選択される。
【0062】
より好ましい態様では、エイコサノイドは、アラキドン酸である。
【0063】
本発明の対象の更なる態様では、エイコサノドオキシゲナーゼは、シクロオキシゲナーゼ−1、シクロオキシゲナーゼ−2、5−リポキシゲナーゼ、12−リポキシゲナーゼ、又はそれらの組み合わせである。
【0064】
好ましい態様では、エイコサノイドオキシゲナーゼは、12−リポキシゲナーゼである。
【0065】
別の好ましい態様では、エイコサノイドオキシゲナーゼは、5−リポキシゲナーゼである。
【0066】
シクロオキシゲナーゼ。エイコサノイド代謝を媒介するシクロオキシゲナーゼ酵素は、多くの組織で構成的に発現しているシクロオキシゲナーゼ−1(COX−1)、炎症及び癌などの疾患状態で典型的に誘導されるシクロオキシゲナーゼ−2(COX−2)の2種類に代表される。多くの分子生物学及び細胞生物学的試験によるデータはまた、COX−2遺伝子は、アポトーシス、増殖、接着、血管形成及び分化を調節する経路に影響する初期の成長応答遺伝子であることを示唆している。
【0067】
COX及び特にCOX−2阻害は、何年もの間、抗炎症剤設計の主要な標的であったが、しかしながら、COX−2発現及び癌との間の結びつきは、より最近になって認められたに過ぎない。いくつかの集団ベースの試験による観察は、強力なCOX阻害活性を有する非ステロイド系抗炎症剤を規則的に摂取する人々において結腸直腸癌の危険性の有意な減少を示している。結腸直腸腫瘍の発症を調査した組織学的試験は、大部分のヒト及び動物の結腸直腸腫瘍が、上昇したCOX−2レベルを発現し、近接する正常な結腸直腸の上皮細胞が、低度から検出できない程度のCOX−2レベルであることを示した。これらの観察に類似して、いくつかの研究所はまた、COX−2発現が、正常な上皮細胞と比較して、初期及び進行中の前立腺癌細胞において上昇することを報告しているが、しかしながら、この知見には異論がある。
【0068】
とは言っても、いくつかの薬理学的なCOX−2阻害剤は、インビトロにおいて前立腺癌細胞成長を抑制し、アポトーシスを誘導し、免疫欠損マウスモデル又はTRAMPマウスなどの前立腺癌のトランスジェニックモデルにおけるヒトの前立腺腫瘍異種移植片の成長を抑制する能力を示したことは明らかである。COX−2が前立腺癌発症又は進行の因子であるかについて異論はあるが、既知のCOX阻害剤のいくつかは、様々なCOXに依存しない抗癌作用を有すると考えられ、これらの作用は、阻害剤の中で相違しているようである。
【0069】
これに関して、地域の食生活に目立つ多くの植物は、COX阻害活性を有する物質を含むことは非常に興味深い。これらの植物からの抽出物は、粗製な形態及び単離した成分の両方で、強力な抗炎症活性及び抗癌活性を有することが分かった。サリチル酸は、例えば、ヤナギの木の皮で見つけられた伝統的な炎症阻害剤であり、この薬物の化学的誘導体であるアスピリンは、依然として世界中で最も一般的に用いられるCOX阻害性物質の1つである。本研究では、本出願人らは、COX−1及びCOX−2酵素活性に影響を与え、通常用いられるヒト前立腺癌細胞モデルシステムであるLNCaP細胞の挙動に影響を及ぼす能力に関して、独特で商業化が可能なハーブ調製物である本発明の組成物の可能性を考察した。上記で詳述した通り、本発明の組成物は、10個の規準化されたハーブ抽出物(ローズマリー、ウコン、ジンジャー、ホーリーバジル、グリーンティー、イタドリ、黄蓮、メギ、オレガノ及びコガネバナ)を含む。これらのハーブの各々は、COX活性又は発現に影響を及ぼす独特な化学的構成成分を含むことが示され、各々は、抗炎症性活性又は抗癌活性のいずれかについて試験された。この試験は、任意の所定のハーブにおいて見出された優れた化合物に焦点を当てる傾向にあるが、しかしながら、癌などの疾患に対する複数のハーブ/食餌性薬物(dietary agents)の組み合わせに付加的な利益があることを信じるには理由がある。本発明の組成物に存在する複数及び化学的に多様な構成成分は、各々、典型的なアジアの食生活に不可欠な成分であるが、任意の単独のハーブ抽出物のみよりは前立腺癌に対して効果的である可能性がある。
【0070】
したがって、本発明の対象の代替の態様では、エイコサノイドオキシゲナーゼは、シクロオキシゲナーゼ−1、シクロオキシゲナーゼ−2、又はそれらの組み合わせである。
【0071】
好ましい実施態様では、エイコサノイドオキシゲナーゼは、シクロオキシゲナーゼ−1である。
【0072】
更に好ましい実施態様では、エイコサノイドオキシゲナーゼは、シクロオキシゲナーゼ−2である。
【0073】
本発明の対象の一の代替の態様では、エイコサノイドオキシゲナーゼの活性制御は、オキシゲナーゼ阻害である。
【0074】
本発明の対象の代替の態様では、エイコサノイド代謝プロセスの調節は、動物の細胞におけるNF−κB活性を阻害することを含む。
【0075】
本発明の対象は、更に、13−S−HODEの送達を必要とする動物における13−S−HODEを送達する方法に関し、この方法は、ローズマリー、ウコン、オレガノ及びジンジャーの治療的に有効量の超臨界抽出物;並びに、ホーリーバジル、ジンジャー、ウコン、コガネバナ、ローズマリー、グリーンティー、イタドリ、黄蓮及びメギの治療的に有効量の含水アルコール抽出物を含む組成物を上記動物に投与するステップを含む。
【0076】
更に、本発明の対象は、アラキドン酸が媒介する炎症の阻害を必要とする動物におけるアラキドン酸が媒介した炎症を阻害する方法に関し、この方法は、ローズマリー、ウコン、オレガノ及びジンジャーの治療的に有効量の超臨界抽出物;並びに、ホーリーバジル、ジンジャー、ウコン、コガネバナ、ローズマリー、グリーンティー、イタドリ、黄蓮及びメギの治療的に有効量の含水アルコール抽出物を含む組成物を上記動物に投与することを含む。
【0077】
NF−κB。核因子κBは、全ての細胞の細胞質に存在するRelドメインを含むタンパク質のファミリーであり、IκBα、IκBβ、IκBγ、IκBε、bcl−3、p105及びp100を含むアンカリン(anchorin)ドメイン含有タンパク質のファミリーによって不活性な状態で維持される。静止条件下で、NF−κBは、細胞質中でp50、p65、及びIκBαのヘテロ三量体から成り;活性化され、核に移行された場合のみ、一連のイベントが転写開始へと導く。大部分の発癌物質、炎症性物質、並びにタバコの煙の濃縮物、ホルボールエステル、オカダ酸、H、及び腫瘍壊死因子(TNF)を含む腫瘍促進剤は、NF−κB活性化経路を活性化することが示されている。NF−κBの活性化は、IκBαのリン酸化、ユビキチン化及び分解並びにp65のリン酸化を含み、続いて、細胞核へのNF−κBの移行をもたらし、DNAの特定の応答エレメントに結合する。IκBαのリン酸化は、大部分の薬物によるNF−κB活性化に必須であるIκBαキナーゼ(IKK)によって触媒される。NF−κBは、遺伝子産物が腫瘍形成に関与する多数の遺伝子の発現を制御することが示されている。これらは、抗アポトーシス遺伝子(例えば、ciap、suvivin、traf、cflip、bfl−1、bcl−2及びbcl−xl)、血管形成(cox−2、mmp−9、vegf)、接着分子、ケモカイン、及び炎症性サイトカインをコードする遺伝子;及び細胞周期制御遺伝子(例えば、cyclin d1、c−myc)を含む。
【0078】
特定の作用機構に結びつけることなしに、本出願人らは、本発明の組成物が、核因子κB(「NF−κB」)の活性化を調節し、言い換えると、腫瘍細胞の増殖、浸潤、及び転移を制御し、フィードバックNF−κB活性化を阻害し、NF−κB制御の遺伝子産物の発現を制御すると考えている。特に、出願人は、本発明の組成物がNF−κBリガンド誘導の破骨細胞形成の受容体活性因子を阻害し、腫瘍壊死因子(TNF)誘導の浸潤を抑制し、TNF及び化学療法剤によって誘導されるアポトーシスを促進することを見出した。更に、本発明の組成物は、TNF及びタバコの煙の濃縮物の両方によって誘導されるNF−κB活性化を抑制する。加えて、本発明の組成物は、アポトーシス阻害タンパク質1/2、Bcl−2、Bcl−xL、FADD様インターロイキン−1β変換酵素(FLICE)/カスパーゼ−8阻害性タンパク質、TNF受容体関連因子1、及びサバイビンを含む抗アポトーシスに関与するNF−κB制御の遺伝子産物の発現をダウンレギュレートし、更に、血管内皮細胞増殖因子、シクロオキシゲナーゼ−2、細胞間接着分子、及びマトリックスメタロプロテイナーゼを含む血管形成に関与する遺伝子産物の発現をダウンレギュレートする。これらの結果は、TNF及び化学療法剤によって誘導されるアポトーシスの促進と相関する。本出願人らの全体的な結果は、本発明の組成物が破骨細胞形成を抑制し、浸潤を阻害し、NF−κB活性化のダウンレギュレーション及びNF−κB制御の遺伝子産物のダウンレギュレーションを介してアポトーシスを促進することを示す。
【0079】
本出願人らは、NF−κB活性化経路に対する本発明の組成物の効果、並びに腫瘍細胞の生存、増殖、浸潤、血管形成及び転移を調節するNF−κB制御の遺伝子産物に対する本発明の組成物の効果のいくつかを測定し、本発明の組成物が、RANKL誘導の破骨細胞形成及びTNF誘導の浸潤を阻害し、種々の腫瘍細胞株におけるTNF及び化学療法剤によって誘導されるアポトーシスを促進することを見出した。IAP1、Bfl−1/A1、Bcl−2、TRAF1、及びcFLIPを含む抗アポトーシスに関与する遺伝子産物の発現、MMP−9、COX−2、ICAM−1、及びVEGFを含む転移に関与する遺伝子産物の発現はまた、本発明の組成物によってダウンレギュレートされた。
【0080】
本出願人らのデータは、本発明の組成物が、ヒト骨髄性白血病KBM−5細胞におけるTNF、肺腺癌H1299細胞におけるタバコの煙の濃縮物、によって活性化されるNF−κBを抑制することを示す。これは、異なる刺激によって活性化されるNF−κBにおける本発明の組成物の効果を調べた最初の研究である。これらの結果は、本発明の組成物が、これらの薬物に共通した段階で作用することを示唆している。癌の増殖及び転移に関与しているいくつかの遺伝子は、NF−κBによって制御されることが示されている(例えば、Aggarwal,B.B.(2004)Nuclear factor−kappa B:the enemy within.Cancer Cell,6,203−208を参照されたい)。本出願人らは、本発明の組成物が、NF−κBによって制御されるCOX−2、MMP−9、及びVEGFの発現を阻害することを示した。
【0081】
更に、最近の報告では、本発明の組成物はCOX−1及びCOX−2の酵素的活性を抑制することを示唆しているが(例えば、Bemis,D.L.,Capodice,J.L.,Anastasiadis,A.G.,Katz,A.E.and Buttyan,R.(2005)Zyflamend,a unique herbal preparation with nonselective COX inhibitory activity,induces apoptosis of prostate cancer cells that lack COX−2 expression. Nutr.Cancer.,52,202−212を参照されたい)、本出願人らは、本発明の組成物がCOX−2タンパク質の発現を阻害することを示した。
【0082】
本出願人らのデータは、本発明の組成物がNF−κBの直接的な阻害を通じてNF−κB制御の経路にその抗癌特性を発揮することを示唆する。NF−κBは、IAP1、xIAP、Bfl−1/A1、TRAF1、Bcl−2、cFLIP、及びサバイビンの発現を制御することで知られ、多数の腫瘍におけるそれらの過剰発現は、生存、化学療法剤耐性、及び放射線耐性と結び付く(例えば、Takada,Y.,Singh,S.and Aggarwal,B.B.(2004)Identification of a p65 peptide that selectively inhibits NF−kappa B activation induced by various inflammatory stimuli and its role in down−regulation of NF−kappa B−mediated gene expression and up−regulation of apoptosis.J.Biol.Chem,279,15096−15104を参照されたい)。本出願人らのデータは、本発明の組成物の処理が、これらの遺伝子産物の大部分をダウンレギュレートすることを示す。以前の報告では、本発明の組成物はヒト前立腺癌細胞におけるカスパーゼ媒介の経路を通じてアポトーシスを誘導することが示唆された(例えば、Bemisら,(2005)を参照されたい)。本出願人らの結果はまた、本発明の組成物がTNF、タキソール、及びドキソルビシンのアポトーシス効果を促進することを示す。これらの効果は、NF−κBの特異的な阻害剤を用いて報告された効果と類似する(例えば、Takada,ら(2004)を参照されたい)。
【0083】
更に、特定の作用機序に結び付けることなく、本出願人らは、本発明の組成物の投与により観察された抗増殖効果、アポトーシス促進効果、抗浸潤効果、抗破骨細胞形成効果、抗血管形成効果、及び抗転移効果がNF−κB制御の遺伝子産物の抑制を介して仲介されると考える。本発明の組成物の製剤化に用いられる各ハーブは、独特の抗炎症性及び抗癌性化合物を含有することで知られているが、本発明の組成物の成分の共通する特性の1つは、NF−κB活性化を抑制する能力であるようである。
【0084】
本発明の組成物が天然のハーブ供給源から誘導され、健康食品及び栄養補給供給源から容易に入手できるという事実を考慮することによって、癌の処方薬よりも癌を予防し治療するためのより便利で好ましい手段となる。
【0085】
したがって、本発明の対象はまた、NF−κB制御の遺伝子産物のレベルの調節を必要とする動物の細胞におけるNF−κB制御の遺伝子産物のレベルを調節する方法に関し、この方法は、ローズマリー、ウコン、オレガノ及びジンジャーの治療的に有効量の超臨界抽出物;並びに、ホーリーバジル、ジンジャー、ウコン、コガネバナ、ローズマリー、グリーンティー、イタドリ、黄蓮及びメギの治療的に有効量の含水アルコール抽出物を上記動物に投与することを含む。
【0086】
上記で開示した全ての本発明の方法における動物は、マウス、ラット、ネコ、イヌ、ウマ、ウシ、又は他の家畜、あるいはヒトなどの哺乳動物であってよい。好ましい実施態様では、動物はヒトである。ヒトの疾患、障害、及び状態を治療するための使用に加えて、本発明の方法は、獣医的な用途を有してもよい。
【0087】
(投与経路)
好ましい実施態様では、経口投与される組成物は、1以上のカプセル、1以上の錠剤、又は1以上の丸薬の形態である。
【0088】
本発明の組成物は、好ましくは、薬学的に許容される担体を用いて患者に送達される。このような担体は、当該技術分野において周知であり、固体形態又は液体形態のいずれかである。本発明の対象に従って調製されてもよい固体形態の医薬製剤は、粉剤、錠剤、分散顆粒、カプセル、カシェ(cachet)及び坐薬を含む。一般的に、固体形態製剤は、約5重量%〜約90重量%の活性剤を含む。
【0089】
固体担体は、希釈剤、香味剤、可溶化剤、潤滑剤、懸濁剤、結合剤又は錠剤崩壊剤のように作用してもよい1以上の物質であり得る;それはまた、封入剤であり得る。粉剤では、担体は、粘性な活性化合物との混合状態である微細に分割した固体である。錠剤では、活性化合物は、適した比率で必要な結合特性を有する担体と混合され、所望の形状及び大きさに圧縮される。適した固体担体は、炭酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、糖、ラクトース、ペクチン、デキストリン、でんぷん、ゼラチン、トラガカント、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、低融点ワックス、ココアバターなどを含む。用語「調製」は、活性成分(他の担体の有無を問わない)が担体によって取り囲まれるカプセル、したがって、担体と関連しているカプセルを提供する担体として封入材を含む活性化合物の調合を含むことが意図される。同様に、カシェが含まれる。錠剤、粉剤、カシェ、及びカプセルは、経口投与に適した固体投薬形態であり得る。利便性又は患者の受け入れの理由で望ましい場合、本発明の対象に従って製造される医薬錠剤は、当該技術分野において周知の技術を用いて、チュアブルな形態で提供されてもよい。
【0090】
坐薬を製造するためには、脂肪酸グリセリド又はココアバターの混合物のような低融点ワックスがまず融解され、有効成分を撹拌などでその中に均一に分散させる。次に、融解された均一な混合物は、都合の良い大きさの鋳型に注ぎ込まれ、冷却され、凝固される。
【0091】
液状形態製剤は、溶液、懸濁液、及びエマルジョンを含む。一例として、非経口的注射用に水又は水/プロピレングリコール溶液が挙げられる。液体製剤はまた、水性ポリエチレングリコール溶液中に溶液で調合することができる。経口使用に適した水溶液は、水に有効成分を溶解し、必要に応じて、適した着色剤、フレーバー、安定化材及び増粘剤を添加することによって調合することができる。経口使用に適した水性懸濁液は、粘性の材料、即ち、天然ゴム又は合成ゴム、レジン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、及び他の周知の懸濁剤と共に水中に微細に分割した有効成分を分散することによって調製することができる。液体医薬製剤は100重量%までの対象の活性剤を含むことができる。
【0092】
経口又は非経口投与のために液体形態製剤に使用直前に変換されることが意図される固体形態製剤がまた適した担体として意図される。このような液体形態は、溶液、懸濁液、及びエマルジョンを含む。これらの特定の固体製剤は、単位投薬形態で最も好都合に提供され、このような製剤は単一の液体投薬単位を提供するために使用される。あるいは、十分な固体は、液体に変換した後、複数の独立した液体投薬量が、シリンジ、ティースプーン、又は他の計量容器を用いて液体形態製剤の所定の容積を測定することによって得ることができる。複数の液体投薬量がそのように調製される場合、考えられる分解を遅延させるために、低温(即ち、冷却下)で液体投薬量の未使用の部分を維持することが好ましい。液体形態に変換されることが意図される固体形態製剤は、活性材料に加えて、香味剤、着色剤、安定化剤、緩衝剤、人工及び天然の甘味剤、分散剤、増粘剤、可溶化剤等を含んでもよい。有用な液体形態製剤を製造するために利用される液体は、水、等張水、エタノール、グリセリン、プロピレングリコールなど、並びにそれらの混合物であってよい。当然に、利用される液体は、投与経路に関して選ばれる。例えば、大量のエタノールを含む液体製剤は、非経口的使用には適していない。
【0093】
本発明の医薬製剤は、安息香酸、ソルビン酸、メチルパラベン、プロピルパラベン及びエチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)などの当該技術分野において周知の1以上の保存剤を含んでもよい。保存剤は、一般的には、薬学的組成物の最大約1重量%、好ましくは約0.05〜約0.5重量%の量で存在する。
【0094】
本発明の対象の目的のための有用な緩衝液は、薬学的組成物の最大約1重量%、好ましくは約0.05〜約0.5重量%の量のクエン酸−クエン酸ナトリウム、リン酸−リン酸ナトリウム、及び酢酸−酢酸ナトリウムを含む。有用な懸濁剤又は増粘剤は、薬学的組成物の最大約20%、好ましくは約1重量%〜約15%の量でメチルセルロースのようなセルロース誘導体、アルギン酸及びその誘導体のようなカラゲナン、キサンタンガム、ゼラチン、アカシア、及び微結晶性セルロースを含む。
【0095】
採用することができる甘味剤は、当該技術分野において周知である天然及び人工の甘味剤を含む。キシロース、リボース、グルコース、マンノース、ガラクトース、フルクトース、デキシトロース、スクロース、マルトース、部分加水分解でんぷん又はコーンシロップ固形物などの単糖、二糖及び多糖、及びソルビトール、キシリトール、マンニトール及びそれらの混合物などの糖アルコールなどの甘味剤は、薬学的組成物の約10重量%〜約60重量%、好ましくは約20重量%〜約50重量%の量で利用されてもよい。サッカリン並びにサッカリンのナトリウム又はカルシウムなどの塩、シクラミン酸塩、アセスルファム−K、アルパルテーム等、及びそれらの混合物などの水溶性人工甘味剤は、組成物の約0.001重量%〜約5重量%の量で利用されてもよい。
【0096】
本発明の対象の薬学的生成物で採用されてもよい香味剤は、天然及び人工のフレーバー、及びペパーミントなどのミント、メントール、バニラ、人工バニラ、チョコレート、人工チョコレート、シナモン、様々なフルーツフレーバーを個別で及び混合して、薬学的組成物の約0.5重量%〜約5重量%の量で含む。
【0097】
本発明の対象に有用な着色剤は、組成物の最大約6重量%の量で導入されてもよい色素を含む。好ましい色素の二酸化チタンは、最大約1%で導入されてもよい。また、着色剤は、F.D.&C.染料等として知られる食品、薬物及び化粧品用途に適した他の染料を含んでもよい。このような染料は、一般的に、薬学的製剤の最大約0.25重量%、好ましくは約0.05重量%〜約0.2重量%の量で存在する。全てのF.D.&C.染料、D.&C.及びそれらの対応する化学構造の全般的な詳細は、Kirk−Othmer Encyclopedia of Chemical Technology,第5巻,857−884ページに見出すことができ、したがって、このテキストは、参照により本明細書中に組み入れられる。
【0098】
有用な可溶化剤は、アルコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等を含み、フレーバーを可溶化するために用いることができる。可溶化剤は、一般的に、薬学的組成物の最大約10重量%;好ましくは約2重量%〜約5重量%で存在する。
【0099】
この組成物に所望される場合に用いることができる潤滑剤は、置換及び未置換のポリシロキサンなどのシリコーン油又は流体物、例えば、ジメチコーンとしても知られるジメチルポリシロキサンを含む。他の周知の潤滑剤を採用してもよい。
【0100】
薬学的組成物はまた、単位投薬形態で調製することができる。このような形態では、製剤は、有効成分の適した量を含む単位投薬量に更に分割される。単位投薬形態は、パッケージされた製剤、製剤の別個の量を含むパッケージ、例えば、バイアル又はアンプル中のパッケージ化した錠剤、カプセル、及び粉剤であり得る。単位投薬形態はまた、カプセル、カシェ、又は錠剤それ自体であり得て、あるいは、パッケージ化した形態の適した数のこれらのいずれかであり得る。
【0101】
本発明の対象の化合物は、他の人工又は天然に発生する物質と不都合な相互作用を示すとは考えられない。したがって、本発明の対象の化合物は、例えば、癌を治療するための他の化合物及び組成物を併用して投与されてもよい。特に、本発明の対象の化合物は、本発明の対象の他の化合物、化学療法物質などを併用して投与されてもよい。
【0102】
最適な医薬製剤は、投与経路及び所望の投薬量に依存して、当業者によって決定される。例えば、参照により本明細書中に組み入れられる、“Remington’s Pharmaceutical Sciences”,第18版(1990,Mack Publiching Co.,Easton,PA 18042),1435−1712ページを参照されたい。このような製剤は、本発明の対象の治療薬の物理的状態、安定性、インビボでの放出速度、及びインビボでの浄化速度に影響を与えるかもしれない。
【0103】
(投薬量)
有効成分化合物又は組成物の約0.001mg〜約100mg/kg体重の次数の投薬レベルは、上記状態の治療に有用であり、好ましいレベルは、200mg/日〜1600mg/日の範囲である。本発明の対象の化合物及び組成物は、通常、毎日2又は3回の投薬で与えることができる。毎日2回の低投薬量(200〜300mg)から開始して、必要に応じてより高い投薬量に徐々に上げることは好ましいストラテジーである。1回の投薬量形態を生じるように担体材料と組み合わせてもよい有効成分の量は、治療される宿主及び投与の特定の様式に応じて変化する。
【0104】
しかしながら、任意の特定の患者の特定の投薬レベルは、採用される特定の化合物の活性;患者の年齢、体重、一般的な健康、性別及び食事;投与時間;排出速度;薬物の組み合わせ;治療される特定の障害の重症度;投与形態を含む様々な因子に依存する。当業者は、このような因子の変動を十分理解するであろうし、単なる日常的な実験を用いて特定の投薬レベルを確立することができる。
【実施例】
【0105】
下記の実施例は、本発明の対象の例示であり、それに限定することを意図してはいない。他に指示がなければ、全てのパーセントは、100重量%の最終組成物に基づいている。
【0106】
(一般的材料及び方法)
New Chapter Inc.(St.Louis,MO)から入手されるZyflamend(登録商標)は、10mg/ml保存液としてジメチルスルホキシド(「DMSO」)に溶解させ、−20℃で保存した。5×10U/mgの比活性の均一物になるように精製された、細菌由来のヒト腫瘍壊死因子アルファ(「TNF−α」)は、Genentech,Inc.(South San Francisco,CA)から好意により提供された。ペニシリン、ストレプトマイシン、RPMI1640培地、Iscove変法ダルベッコ培地(「IMDM」)、D−MEM/F12培地、及びウシ胎児血清(「FBS」)は、Invitrogen(Grand Island,NY)から入手した。下記のポリクローナル抗体は、Santa Cruz Biotechnology,Inc.(Santa Cruz,CA)から入手した:抗マトリックスメタロプロテイナーゼ9(「MMP−9」);抗細胞接着分子(「ICAM」);抗アポトーシス阻害タンパク質1/2(「IAP1/2」);抗Bcl−2;抗Bfl−1/A1;及び抗TNF受容体関連因子(「TRAF1」)。抗COX−2及びXIAPは、BD Biosciences(San Diego,CA)から入手した。タバコの煙の濃縮物(「CSC」)は、Anto,R.J.,Mukhopadhyay,A.,Shishodia,S.,Gairola,C.G.and Aggarwal,B.B.(2002)Cigarette smoke condensate activates nuclear transcription factor−kappa B through phosphorylation and degradation of I kappa B(alpha):correlation with induction of cyclooxygenase−2.Carcinogenesis,23,1511−1518に記載されるように調製し、Dr.G.Gairola(University of Kentucky,Lexington,KY)から好意により供給された。抗血管内皮細胞増殖因子(「VEGF」)は、NeoMarkers(Fremont,CA)から購入した。サバイビン抗体は、R&B Systems(Minneapolis,MN)から入手した。FADD様インターロイキン−1β−変換酵素(「FLICE」)/カスパーゼ−8−阻害性タンパク質(「cFLIP」)抗体は、Imgenex(San Diego,CA)から好意により提供された。
【0107】
本出願人らの研究で用いられる細胞株は、ヒト非小細胞性肺癌腫(H1299)、ヒト骨髄性白血病(KBM−5)、ヒト多発性骨髄腫(U266)、マウスマクロファージ(RAW264.7)細胞株を含み、American Type Culture Collection(Manassas,VA)から入手した。H1299及びU266細胞は、10% FBSを含むRPMI1640で培養した。KBM−5細胞は、15% FBSを含むIMDMで培養した。RAW264.7細胞は、10% FBSを添加したD−MEM/F12培地で培養した。全ての培地には、100U/mlペニシリン及び100μg/mlストレプトマイシンが添加された。
【0108】
(実施例1)
(細胞成長の阻害)
一般的な開始点として、培養中の樹立されたげっ歯類又はヒト細胞株を用いて、細胞成長を阻害する生成物又は薬物の相対的能力を調査する。これの目的は、単に、有効でないか又は毒性である濃度と有意に阻害的又は「効果的」である濃度とを識別することができることである。所定の生成物の作用機構の調査は、幾分ではあるが著しくはない成長阻害及び大量でない細胞死を生じる濃度でなされなければならない。更に、これらの種類の試験は、細胞イベントにおける時間依存的な変化の当初見積もりを提供する。それは、成長阻害又は細胞死の最初の示唆に関連した、薬物媒介のイベントが認められる時である。これは、言い換えると、関与する一連のイベントを示唆するかもしれない。
【0109】
取り組んでいる大部分の試験は、ヒト前立腺癌細胞株を用いることを含む。これの理由は、これが対象の細胞株であり、当該細胞株がエイコサノイド代謝に関して本出願人らによって特徴付けられ、本出願人らがPINの治療/予防に本発明の組成物の進行中の臨床試験に関与するという事実を含む。しかしながら、データが得られるにつれて、前立腺癌それ自体とはほとんど関係がないが、代わりに、一般的な抗炎症活性及びメカニズムを理解するのに有用である他の細胞株及び動物モデルが使用されてもよい。
【0110】
図1は、ヒトA549肺癌及びヒトPC3前立腺癌細胞株の成長に対する本発明の化合物の阻害効果を示す。本発明の組成物の経口製剤が使用された。組成物は、培養中の細胞に添加され、細胞成長の相対的阻害は、薬物への連続曝露の72時間後に評価した。「MTT」法を使用し、未処理の対照細胞群に対する細胞増殖を評価した。肺腺癌細胞より顕著な前立腺PC3細胞の成長阻害が見られる。
【0111】
同様に、図8及び表2は、ヒト乳癌MCF7及びMDA231細胞株の成長に対する化合物の阻害効果を示す。ここでも、本発明の組成物の経口製剤が使用された。組成物を培養中の細胞に添加し、細胞成長の相対的阻害は、薬物への連続曝露の72時間後に評価した。「MTT」法を使用して、未処理の対照細胞増殖に対する細胞増殖を評価した。MCF7細胞は、MDA231細胞よりも組成物曝露に感受性であった。
【0112】
【表2】

【0113】
IC50は、薬剤への曝露の所定条件(通常は継続期間)下で、(未処理の細胞と比較して)50%まで細胞の成長阻害を生じる物質の濃度(μg/ml)として定義される。
【0114】
試験されるまさに「正常な」ヒト内皮細胞株に対する細胞毒性の相対的欠如は、薬剤の患者の耐性及び投与プロトコールの順守の目的のためには明らかに興味深い。ヒト乳腺MCF−7エストロゲン感受性細胞株の組成物への感受性は特に関心があり、この細胞株は、確かにこれまでに試験した最も感受性のある細胞である。本出願人らは、エストロゲン結合をブロックする本発明の組成物を製造するために使用されるいずれの化合物も植物抽出物において認識しておらず、本出願人らは、観察された高い感受性にこの代替の説明は無関係であると考える。
【0115】
(実施例2)
(シクロオキシゲナーゼ(COX)及びリポキシゲナーゼ(LOX)酵素を阻害するための本発明の組成物の能力)
本出願人は、COX−1、COX−2、及び対象となる他のエイコサノイドに対する本発明の組成物の相対的効果を測定した。これらの試験は、組成物が、(クローニングされた酵素として)COX−1及びCOX−2の両方を阻害することを示し、本出願人が本発明の組成物を構成する種々のハーブ抽出物から得た多様な抗炎症成分に基づいて予期していた通りであった。データはまた、組成物が、同様に5−リポキシゲナーゼ(5−LOX)の有用な阻害剤であることを示す。15−LOX−2から誘導されたエイコサノイド産物における選択的な変化は観察されなかった。データはまた、組成物が濃度依存的に12−リポキシゲナーゼを阻害することを示す。図2及び図3のデータは、組成物がクローニングされたCOX酵素並びに培養中の細胞の酵素を阻害するという観点で有力であることを示す。ほんの少ないマイクロリットル量の液体中の本発明の組成物は、シクロオキシゲナーゼ酵素の有意な阻害を生じるには十分であった。これは、組成物のこの特定の製剤の60%が、それ自体はエイコサノイド代謝に影響を与えないオリーブ油であることを思い起こすと、特に強い印象を与える。
【0116】
図2は、クローニングされたCOX−1(ヒツジ)及びCOX−2(ヒト)酵素を用いたPGE2の形成における組成物の効果が、5mM EDTA、2mMフェノール、及び1μMヘマチンを含有する0.1M Tris−HCl緩衝液、pH8.0中の酵素(15 IU)と共に10μM AAのインキュベーションによって測定されたことを示す。組成物のアリコートは、AAの添加前にチューブに添加した。対照のインキュベーションには、組成物を含めなかった。アスタリスクを付するバーは、「オリーブ油」の対照を表わす。インキュベーションは、37℃で15分間行った。1Nクエン酸の添加によって反応を停止させた。次に、エイコサノイドは、ヘキサン:酢酸エチル(1:1)溶媒混合物を用いて抽出した;抽出物は、窒素下で乾燥させた。インキュベーション中に形成されたPGE2は、前述したように抽出され、次に、本出願人らによって公開されたLC/MS/MS法(Yangら Anal Bicochem.308:168−177,2002)を用いて分析した。図2に示したデータは、本発明の組成物がCOX−1及びCOX−2の両方によってPGE2の形成を阻害するが、生成物はCOX−2よりもCOX−1の阻害において有力であることを示唆する。
【0117】
図3は、PC3細胞におけるPGE2及び5−HETEの形成における組成物の効果を示す。種々の濃度の組成物は、15μM BSAを添加した新鮮な無血清培地中での細胞培養物に添加され、37℃で10分間インキュベートした。次に、アラキドン酸(100μM)及び補因子を添加した。10分後、細胞を洗浄し、細胞内に形成したエイコサノイドを測定するために抽出した(図2の説明文を参照されたい)。データは、PC3細胞におけるPGE2及び5−HETEの濃度依存的な阻害を示す。データは、平均±SD(n=3)として提示される。は、対照との比較によるP<0.05を示す。
【0118】
(実施例3)
(5−リポキシゲナーゼの細胞発現に対する本発明の組成物の効果)
抗炎症剤は、多くの異なる機構を通じてその薬学的効果を達成することができる。所定の生成物は、炎症に関連する分子の形成に関与する選択的酵素を阻害することができ、例えばPGE2の形成を減少させるためにCOX−2を阻害し、又は5−HETEの形成を阻害させるために5−リポキシゲナーゼを阻害する。組成物はまた、NF−κBの活性化のクルクミン媒介の阻害などの炎症関連遺伝子の活性化に直接関与することで知られている転写因子の活性化を阻害する。
【0119】
更に、所定の生成物はまた、細胞又は組織中の酵素の実際の合成、したがって発現を直接阻害するというよりは減少させるために作用してもよい。本出願人らが得た初期のデータは、本発明の組成物が、酵素活性の阻害に加えて細胞の5−リポキシゲナーゼの相対的発現の濃度依存的な阻害を提供することを示す。組成物がCOX−2の相対的な組織発現を阻害しないようであるため、酵素発現の相対的阻害は、一般的な現象ではない。
【0120】
(実施例4)
(本発明の組成物における13−S−HODEの同定)
図4は、ヒトA549肺癌細胞におけるエイコサノイド代謝に対する本発明の組成物の濃度依存的な効果を示し、13−S−HODEの形成における明らかに濃度依存的な増加を示す。細胞(1×10)は、組織培養プレートに一晩接着させ、次に、図に示されるように、異なる濃度の組成物で24時間処理した。次に、細胞を回収し、LC/MS/MSによるエイコサノイド分析のために抽出した。データは、2μl/mlの組成物濃度でPGE2の小さな阻害(32%)を示すが、また、1及び2μl/mlで13−S−HODEの「明らかな」劇的な形成を示す。
【0121】
いくつかの細胞株でのアラキドン酸から種々のエイコサノイド生成物への変換における組成物の効果を試験した。上記で示されるデータは、少なくともヒト肺A459細胞に関しては、組成物がシクロオキシゲナーゼ又はリポキシゲナーゼ酵素に対する大きな効果を持たないことを示唆する。しかしながら、15−LOX−1酵素の生成物である13−S−HODEの濃度依存的な増加は目覚しい。13−S−HODEのこのような増加は、酵素それ自体の誘導、又は酵素活性、13−S−HODEを優先的に生じるリノール酸などの適した基質の添加、又は別のメカニズムを介して生じるであろう。15−LOX−1の誘導は、実際には、NSAIDが結腸癌細胞に添加される場合に起こり、これは結腸癌の予防薬としてのアスピリンの薬効に対して部分的な説明に役立つ。しかしながら、ウェスタンブロットによって、組成物を用いたインキュベーションの結果として15−LOX−1酵素の有意な誘導は観察されなかった。本発明の組成物はまた、15−LOX−1酵素を介して13−S−HODEを生じ得る基質であるリノール酸の相対的含有量を調べた。GC/MS/MS装置を用いることで、最小量のリノール酸だけが見出された。しかしながら、組成物それ自体の試験は、下記の実施例6で検討されるように、大量の13−S−HODEの存在を示した。
【0122】
図5は、本発明の組成物に13−S−HODEの存在を示す質量分析データを示す。図5は、関連した情報の3つのプロットを表わす。最上段のプロットは、重水素化した13−S−HODEの総イオンクロマトグラムである(13−S−HODE−d4として示される)。4つの重水素原子は、13−S−HODEそれ自体の質量に対してより高分子量(4の追加)を提供する。重水素化した生成物の質量(上段右の電荷比に対する質量によって示される)は「299」である。これは、基本的には、この生成物の質量である。299>281の表記は、本出願人らが質量299に対して装置に選択させ、次に281で特徴的な「娘」イオンを生じるようにアルゴン(不活性ガス)を有する分子を衝突させることを意味する。この娘イオンは、定量目的で用いることができる。
【0123】
中段のプロットは、Cayman Chemicals(Ann Arbor,MI)から購入した真正の13−S−HODE(25ng/ml)に対するイオントレースを示す。13−S−HODEは質量が295.3であり、これはプロットに示される。本出願人らは、化合物を特徴付ける277.2の娘イオンを見る。即ち、277.2の娘イオンを生じるために「分解して」277.2の質量を有するいずれか1つの分子の可能性は、対象である実際の分子:13−S−HODEを除きほとんどゼロである。
【0124】
下段のプロットは、本発明の組成物の抽出物である。質量分析は、質量295.3を有する全分子を探すために指示された。次に、本出願人らは、277.2で特徴的な娘イオンだけを見るように装置をセットした。装置が、それらを大量に見出したという事実は、13−S−HODEが本発明の組成物に存在するということを疑いの余地なく示す。抽出物は、たった5μlの組成物から得られた。各ピークの2つの数は、ピークの保持時間(例えば、6.69分)及び相対的なイオン量を表わす。後者は、ピーク内の生成物の「量」に類似している。25ng/mlで13−S−HODEの真正な標準が864,412のピーク量を提供し、たった5μlの組成物が6,338,606のピーク「量」を生じるという事実は、組成物内における多量のこのエイコサノイドの存在を明らかに示している。肝心なことは、これは、組成物が大量の13−S−HODEを含むという「確かな」証明であるということである。
【0125】
13−S−HODEが処理される物質であることを確かめるために、本発明の組成物中の13−S−HODEの存在を、抗体ベースの酵素免疫アッセイキットを用いて評価した。抗体は、13−S−HODEを検出するための特異性を提供する。EIA分析は、本発明の組成物中に大量の13−S−HODEが存在することを確かめた。
【0126】
抗炎症剤は、多くの異なったメカニズムを通じて薬学的効果を達成することができる。例えば、所定の生成物は、炎症に関連した分子の形成に関与する選択的酵素を阻害することができる(例えば、PGEの形成を減少させるためにCOX−2を阻害し、又は5−HETEの形成を阻害させるために5−リポキシゲナーゼを阻害する)。生成物はまた、炎症に関連した遺伝子の活性化に直接関与することで知られる転写因子の活性化を阻害することができる(例えば、NF−κBの活性化のクルクミン媒介の阻害)。更に、所定の生成物はまた、酵素を直接的に阻害するというよりはむしろ、細胞又は組織中の酵素の実際の合成、したがって発現を減少させるために作用してもよい。得られた初期のデータは、本発明の組成物が、酵素活性の阻害に加えて、実際に、細胞の5−リポキシゲナーゼの相対的発現の濃度依存的な阻害へと導くことができることを示す。組成物が12−LOXの相対的な組織発現を阻害しないようであるため、酵素発現の相対的阻害は、一般的な現象ではない。5−LOXの発現の消失(ダウンレギュレーション)もまた、細胞への5−LOX阻害剤の曝露の一般的な結果ではない。本明細書中にはないが、PC3細胞が、確立した5−LOX阻害剤であるZileutonに曝露された後の、5−LOXタンパク質含有量(ウェスタンブロット)の相対的効果を調べた。図9に示されるように、Zileutonは、有力な5−LOX阻害剤である(このために喘息の治療に有用である)が、細胞内の相対的な5−LOX酵素含量のいかなる変化をも提供しなかった。
【0127】
興味深いことの1つは、組成物の細胞への曝露の結果として発生するCOX−2タンパク質発現における濃度依存的な増加である。一見したところでは、これは、まさに、本出願人らが起こらないことを望んでいたことのようであった。結局、COX−2の阻害は、大きな製薬ビジネスのための基盤である。しかし、Celebrex(セレコキシブ)は、COX−2の既知の誘導因子であるという事実はほとんど認識されていない。酵素活性が阻害されるために、炎症が抑制され、自然の力が酵素の合成の増加をさせてそれを克服させようと最善を尽くす。換言すれば、COX−2の阻害剤を受けている人々は、彼らがそれらの摂取を止めるまでまさに良好である。
【0128】
(実施例5)
(本発明の組成物の抗炎症作用のインビボでの測定:マウス耳モデル)
非常に単純ではあるが効果的な炎症の動物モデルは、過去数年間用いられてきた。試験マウスの右耳は、推定される抗炎症剤で予め処理され、次に、30分間放置される。次に、炎症剤(典型的には、アセトン中のアラキドン酸(AA))が、同じ耳に適用される。ビヒクルが対照として左耳に適用される。AA適用後の固定時間、マウスを麻酔し、その後、組織の均一なセグメントを得るために、丸い耳のパンチを用いる。マウスの各耳のパンチの組織の重量差を、炎症の相対的な阻害の相対的指数として使用する。計量後、耳パンチ試料は、それに続く、本出願人のLC/MS/MS法の使用を通じた、特定のエイコサノイド代謝の分析のために急速に凍結される。
【0129】
図6は、マウスの耳浮腫における本発明の組成物の抗炎症作用を示す。組成物(10μl)は、右耳に局所的に投与し、アセトンビヒクルのみを左耳に適用した。AA処理の1時間後、マウスを麻酔し、均一な組織片を得るために耳を「パンチ」した。次に、右耳の重量が、浮腫を測定するために、左耳の重量から差し引かれる。データは、AA媒介の耳浮腫を阻害する所定の試験物質の相対的能力を反映している。データは、10匹の動物からの平均±SDとして提示される。P<0.001処理対AA(浮腫)対照(AA媒介炎症)。
【0130】
図6のデータは、組成物が、アラキドン酸が媒介する炎症の有意な阻害を生じることを示す。
【0131】
同様に、図10は、アラキドン酸が媒介したマウス耳浮腫における本発明の組成物の効果を示す。処理群は、1)オリーブ油対照、2)アセトン対照、3)オリーブ油+AA、4)本発明の組成物(10μl)+AA、5)本発明の組成物(5μl)+AA、及び6)本発明の組成物(2.5μl)+AAからなる。データは、平均±SD(n=10匹のマウス/群)として提供される。再度、組成物は、AAによって生じた浮腫を阻害した。図10に示されるように、浮腫の最大阻害は、3つ全ての組成物の「投薬量」で得られたが、2.5μlの組成物の使用は、2つのより高い濃度のいずれかよりも僅かに低い効果であるようであった。
【0132】
(実施例6)
(本発明の組成物における13−S−HODEのハーブ供給源及び相対的重要性)
組成物の液体形態の相対的エイコサノイド含量の分析では、大量の13−S−HODEを見ることは驚くべきことであった。これらの分析は、真正の重水素化した標準を、本出願人らが正しいピーク同定を得たことを確かめるために用いたLC/MS/MSを用いて行った。この観察を二重に確かめるために、液体組成物はまた、13−S−HODEの測定のために特に調製した酵素免疫アッセイキットを用いて分析した。EIA分析からの結果は、質量分析データを裏付け、表3に示される。
【0133】
【表3】

【0134】
組成物の経口形態は、60%オリーブ油(13−S−HODEを含有しない)であるという事実は、抽出材料中の13−S−HODEの相対的含量が上記で示されるよりもなお高いことを示す。
【0135】
図7は、種々の癌細胞株の増殖に対する13−S−HODEの効果を示す。上記のデータは、酵素15−LOX−2の産物である13−S−HODEが、ヒト腫瘍前立腺(PC3)及び結腸(LS174)の細胞成長を完全に阻害することができるが、肺腺癌(A549)細胞成長は阻害できないことを示す。前立腺癌及び結腸癌細胞株を阻害するための13−S−HODEの相対的能力は、IC50が3〜4μMである。これは、本発明の組成物中の13−S−HODEの含有量と比較した場合に重要である。換言すれば、上記の表2に示されるように、細胞成長の阻害を説明するのには組成物内に十分な13−S−HODEが存在する。組成物内の他の因子もまた、前立腺及び結腸腫瘍細胞成長を阻害する能力に貢献することに疑いはないが、阻害することができる組成物内の13−S−HODEの能力は非常に興味深い。
【0136】
組成物の液体形態の相対的なエイコサノイド含量を調べ、大量の13−S−HODEを見ることは驚くべきことであった。これらの分析は、正しいピーク同定を得たことを裏付けるために真正の重水素化した標準を用いたLC/MS/MSを用いて行った。この観察を二重に確かめるために、液体組成物はまた、13−S−HODEの測定のために特に調製した酵素免疫アッセイキットを用いて分析した。EIA分析からの結果は、質量分析データを裏づけた。組成物の経口形態は、60%オリーブ油(13−S−HODEを含有しない)であるという事実は、抽出物中の13−S−HODEの相対的含有量が上記で示されるよりもなお高いことを示す。
【0137】
組成物を調製するために用いられる異なったハーブ及び植物抽出成分の中で、エイコサノイド生成物の13−S−HODEの供給源について調査を行った。アプローチは、抽出物を可溶化させるか又は有機溶媒の混合物に抽出物を共し、その後、脂溶性エイコサノイドを取り出すことである。次に、これらを窒素下で乾燥させ、質量分析装置に適合する固定量の緩衝液中で再構成させる。別のアリコートを、GC/MS/MSを用いた相対的なリノール酸含量の分析のために使用した。この背景にある論理的根拠は、13−S−HODEそれ自体が抽出物中に存在するか、又は細胞が15−LOX−1を含有し、基質リノール酸を補給した場合の培養中の細胞において酵素反応を通じて誘導され得るということである。
【0138】
下記の表4のデータは、リノール酸及び13−S−HODEの両方を含む抽出物が存在するが、エイコサノイドそれ自体は、本発明の組成物を調製するために用いられるいくつかのハーブ抽出物の成分であることを納得の行くように示している。13−S−HODEがいくつかの抽出物(例えば、グリーンティー)に存在しないという事実はまた興味深く、測定が正しいという事実に信憑性を与える。
【0139】
【表4】

【0140】
13−HODE及びリノール酸の測定を3回行い、同程度の結果であった。13−S−HODEは、LC/MS/MSを用いて測定し、リノール酸含量は、GC/MS/MSを用いて測定した。組成物の13−S−HODEの供給源は、大部分、ジンジャー及びウコンによるものと見られる。この特定のエイコサノイドは、ジンジャーのPSE及びSCE抽出物、同様に、より少ない程度でウコンの根に存在することは興味深い。大量の13−HODEの存在は、必ずしも、13−S−HODEを生成する15−LOX−1の基質である大量のリノール酸と関連するとは限らないことは注目に値する。
【0141】
(実施例7)
(破骨細胞分化アッセイ)
NF−κBリガンド(RANKL)誘導の破骨細胞形成の受容体活性化因子に対する本発明の組成物の効果を測定するために、本出願人らは、インビトロでRANKLによって破骨細胞に分化し得るRAW264.7細胞を培養した。RAW264.7細胞は、1×10細胞/ウェルの密度で24ウェルディッシュ中で培養し、一晩接着させた。次に、培地を交換し、細胞を様々な濃度の本発明の組成物及び5nM RANKLを用いて共培養した。5日目に、酸性ホスファターゼキット(Sigma−Aldrich)を用いて以前に説明したように酒石酸塩耐性の酸性ホスファターゼ(TRAP)を染色し、TRAP陽性の多核破骨細胞(>3個の核)/ウェルをカウントした。
【0142】
RAW264.7細胞(1×10細胞/ウェル)を単独で又は5nM RANKL及び0.8mg/mlの本発明の組成物の存在下で5日間インキュベートし、TRAP発現について染色した。図11(A)に示されるように、TRAP陽性細胞を撮影した(オリジナル倍率、100×)。
【0143】
RAW264.7細胞(1×10細胞/ウェル)を単独で又は5nM RANKL及び所定濃度の本発明の組成物の存在下で5日間インキュベートし、TRAP発現について染色した。多核(3個の核)破骨細胞をカウントし、結果は、図11(B)に図式的に示した。
【0144】
本発明の組成物は、RANKL誘導の破骨細胞形成を抑制することが示される。TNFスーパーファミリーのメンバーであるRANKLはNF−κBの活性化を通じて破骨細胞形成を誘導するため、本出願人らは、本発明の組成物がRANKL誘導の破骨細胞形成を抑制することができるかどうかを測定した。本出願人らは、図11(A)に示されるように、RANKLは、TRAPの発現によって示される破骨細胞の分化を誘導し、本発明の組成物が図11(B)に示されるように、濃度依存的にこの誘導を抑制することを見出した。
【0145】
(実施例8)
(浸潤アッセイ)
細胞外マトリックスを介した浸潤が腫瘍転移における重要な段階であるため、細胞浸潤を評価するために膜浸潤培養システムを用いた。BD BioCoat Tumor Invasionシステムは、8μm径の細孔を有する光漏れのないポリエチレンテレフタレート膜を有するチャンバーであり、再構成した基底膜ゲル(BD Biosciences,San Diego,CA)で被覆されている。H1299全体(2.5×10細胞)を無血清培地に懸濁し、上段ウェルに播種した。一晩のインキュベーション後、細胞は、様々な濃度の本発明の組成物及び1nM TNFと、1% FBSの存在下でさらに24時間、同時にインキュベートした。マトリゲルを通過して浸潤した細胞(即ち、インキュベーション中に下段のチャンバーに移動した細胞)は、PBS中の4μg/mlのCalcein AM(Molecular Probes,Eugene,OR)を用いて30分間37℃で染色し、Victor3マルチプレートリーダー(Perkin Elmer Life and Analytical Sciences,Boston,MA)を用いて蛍光をスキャンし、蛍光細胞をカウントした。
【0146】
H1299細胞(2.5×10細胞/ウェル)は、血清なしで、マトリゲル浸潤チャンバーの上段ウェルに一晩播種され、0.3mg/mlの本発明の組成物及び1nM TNFを用いて、1%血清の存在下で同時にインキュベートし、次に、浸潤アッセイに供した。結果は、図12に示されるように、図式的に示した。本発明の組成物なし及びTNFなしの値を1.0に合わせた。
【0147】
本発明の組成物は、TNF誘導の腫瘍細胞の浸潤活性を抑制することが示される。NF−κBは、腫瘍細胞浸潤を媒介する遺伝子産物(例えば、MMP−9、COX−2、及びVEGF)の発現を制御することが知られている。本発明の組成物が、TNF誘導の腫瘍細胞浸潤活性を調節することができるかどうかをインビトロで調べた。これを測定するために、腫瘍細胞は、本発明の組成物の存在下又は非存在下で、TNFと共にマトリゲル浸潤チャンバーの上段チャンバーに播種され、次に、浸潤について調べた。図12に示されるように、TNF誘導の腫瘍細胞はほぼ2倍浸潤したが、本発明の組成物は、濃度依存的にこの活性を抑制した。本発明の組成物単独では、浸潤活性に影響がなかった。
【0148】
(実施例9)
(生/死(LIVE/DEAD)アッセイ)
アポトーシスを測定するために、本出願人らは、細胞内エステラーゼ活性及び細胞膜の完全性を測定する生/死アッセイ(Molecular Probes,Eugene,OR)を用いた。このアッセイは、生細胞内に保持されるポリアニオン性染料であるカルセインを採用し、緑色の蛍光を与える。それはまた、損傷した膜を通過してのみ細胞に入り、核酸に結合することができるエチジウムモノマー染料(赤色蛍光)を採用するが、生細胞の無傷な細胞膜によっては排除される。簡単には、1×10細胞は、0.5mg/mlの本発明の組成物と共に24時間インキュベートし、次に、1nM TNF又は種々の化学療法剤と16時間、37℃で処理した。細胞を生/死試薬(5μMエチジウムホモ二量体、5μMカルセイン−AM)で染色し、次に、37℃で30分間インキュベートした。細胞は、蛍光顕微鏡(Labophot 2;Nikon、東京、日本)下で解析した。
【0149】
ヒト多発性骨髄腫U266細胞(1×10細胞/ml)は24時間血清を枯渇され、次に、1nM TNF、1nMタキソール及び300nMドキソルビシン単独で、又は(0.5mg/ml)の本発明の組成物と共に、24時間示されたようにインキュベートした。細胞死は、図13に示されるように、カルセインAMベースの生/死アッセイによって測定した。赤色は、死細胞を強調し、緑色は生細胞を強調する。
【0150】
本発明の組成物は、TNF及び化学療法剤のアポトーシス作用を促進する。NF−κB活性化は、種々の薬物によって誘導されるアポトーシスを阻害することが示されているので、本発明の組成物がTNF及び化学療法剤によって誘導されるアポトーシスを調節するかどうかを調べた。TNF及び化学療法剤誘導のアポトーシスにおける本発明の組成物の効果は、生/死アッセイによって調べた。生/死アッセイは、細胞内エステラーゼ活性及び細胞膜の完全性を測定するものであり、本発明の組成物は、腫瘍細胞に対するTNF、タキソール、及びドキソルビシンのアポトーシス作用を増加することを示した。
【0151】
(実施例10)
(NF−κB活性化の電気泳動移動度シフトアッセイ)
NF−κB活性化を測定するために、本出願人らは、基本的には、Chaturvedi,M.M.,Mukhopadhyay,A.and Aggarwal,B.B.(2000)Assay for redox−senstitive transcription factor.Methods Enzymol.,319,585−602に以前に記載されるように、電気泳動移動度シフトアッセイ(EMSA)を行った。簡単には、核抽出物は(1×10細胞/ml)は、ヒト免疫不全ウイルスの長い末端反復、5’−TTGTTACAA GGGACTTTC CGCTG GGGACTTTC CAGGGAGGCGTGG−3’(太字はNF−κB結合部位を指す)由来の32P末端標識した45merの二本鎖NF−κBオリゴヌクレオチド(16fmolのDNAと15μgのタンパク質)と共に、30分間37℃でインキュベートし、形成されたDNA−タンパク質複合体は、6.6%の非変性ポリアクリルアミドゲル上で遊離のオリゴヌクレオチドから分離した。二本鎖変異オリゴヌクレオチド、5’−TTGTTACAA CTCACTTTC CGCTG CTCACTTTC CAGGGAGGCGTGG−3’は、NF−κBのDNAへの結合の特異性を調べるために用いた。乾燥したゲルを視覚化し、放射性バンドは、ImageQuantソフトウェアプログラムを有するStorm 820 phosphorimager(Amersham,Piscataway,NJ)を用いて定量した。
【0152】
KBM−5細胞(2×10細胞/ml)は、指定した濃度の本発明の組成物で1時間プレインキュベートし、0.1nM TNFで30分間処理した。核抽出物は、図14(A)に示されるように、EMSAによってNF−κB活性化についてアッセイした。
【0153】
本発明の組成物は、用量及び時間依存的にNF−κB活性化を抑制する。NF−κBは、アポトーシス及び細胞浸潤において重要な役割を果たすので、本出願人らは、この転写因子の活性化における本発明の組成物の効果を調べた。本出願人らは、第一に、ヒト骨髄性白血病(KBM−5)細胞においてTNFによって誘導されるNF−κBの活性化に対する本発明の組成物の効果を調べた。DNA結合アッセイ(EMSA)の結果は、本発明の組成物単独では、NF−κB活性化に効果がないことを示した。しかしながら、本発明の組成物は、図14(A)に示されるように、用量依存的にTNF媒介のNF−κB活性化を阻害する。
【0154】
KBM−5細胞(2×10細胞/ml)は、1mg/mlの本発明の組成物と共に指定した時間プレインキュベートし、次に、0.1nM TNFで30分間処理した。核抽出物は、図14(B)に示されるように、EMSAによってNF−κB活性化についてアッセイした。本発明の組成物によるNF−κB活性化の抑制はまた、時間依存的であることが分かった。
【0155】
本発明の組成物は、タバコの煙誘導のNF−κB活性化を阻害する。H1299細胞は、本発明の組成物(1mg/ml)で1時間プレインキュベートし、次に、タバコの煙(10μg/ml)で1時間処理した。核抽出物は、図14(C)に示されるように、EMSAによってNF−κB活性化についてアッセイした。
【0156】
本発明の組成物は、タバコの煙の濃縮物によって誘導されるNF−κB活性化をブロックする。本出願人らは、次に、非小肺腺癌H1299細胞におけるタバコの煙の濃縮物によって誘導されるNF−κBの活性化における本発明の組成物の効果を調べた。DNA結合アッセイ(EMSA)の結果は、図14(C)に示されるように、本発明の組成物が、タバコの煙の濃縮物によって誘導されるNF−κB活性化を抑制することを示した。これらの結果は、本発明の組成物が、TNF及びタバコの煙の濃縮物に共通するNF−κB活性化経路の段階で作用したことを示唆する。
【0157】
(実施例11)
(TNF誘導の遺伝子発現のウェスタンブロット解析)
COX−2、VEGF、ICAM−1、MMP−9、cIAP−1/2、サバイビン、Bfl−1/A1、Bcl−2、Bclx、cFLIP、TRAF1、及びXIAPの処理した細胞(2×10細胞/ml)の全細胞抽出物におけるTNFに誘導された発現に対する本発明の組成物の効果を測定するために、30μgのタンパク質を、製造業者推薦のプロトコールの通り、SDS−PAGEで分離し、特異的な抗体を用いたウェスタンブロットによって検出した。ブロットを洗浄し、HRP結合の二次抗体に1時間暴露し、最後に、ECL試薬(Amersham Pharmacia Biotechnology,Piscataway,NJ)によって検出した。
【0158】
本発明の組成物は、腫瘍細胞の増殖及び転移に関与するTNF誘導によるNF−κB依存の遺伝子産物を阻害する。本出願人らはまた、本発明の組成物が腫瘍細胞の増殖及び転移に関与するNF−κB依存の遺伝子産物を調節することができるかどうかを調べた。TNFはCOX−2、MMP−9、ICAM−1、及びVEGFを誘導することが示されており、これら全てはそれらのプロモーター中にNF−κB結合部位を有する。図15(A)に示されるように、TNF処理は、COX−2、VEGF、ICAM−1及びMMP−9遺伝子産物の発現を誘導し、本発明の組成物はその発現を制止した。
【0159】
KBM−5細胞(2×10細胞/ml)は、1mg/mlの本発明の組成物で1時間インキュベートし、次に、1nM TNFで指定した時間処理した。全細胞抽出物を調製し、図15(B)に示されるように、指定した抗体を用いてウェスタンブロット解析に供した。
【0160】
本発明の組成物は、TNF誘導によるNF−κB依存の抗アポトーシス遺伝子産物を阻害する。NF−κBは、抗アポトーシスタンパク質であるIAP1、IAP2、サバイビン、Bfl−1/A1、Bcl−2、Bcl−XL、cFLIP、TRAF1、及びXIAPの発現をアップレギュレートする。次に、本出願人らは、本発明の組成物が、これらの遺伝子産物の発現に影響するかどうかを調べた。本出願人らは、本発明の組成物が、図15(B)に示されるように、これら全てのタンパク質のTNF誘導並びに基礎的発現を阻害することを見出した。
【0161】
(実施例12)
(本発明の組成物によって媒介されるPC3細胞のG/M停止の証拠)
図16に示されるように、本発明の組成物を用いたPC3細胞の処理は、細胞周期の濃度依存的な阻害を生じる。ハーブ生成物は、0.28μl/mlという低い濃度でさえ明白である細胞の明らかなG/M蓄積を生じる。より高い濃度では、G/M期は、サブGピークがアポトーシスを示すので、より明白である。G/Mにおける細胞数の上昇と一致して、細胞周期のG1部分に連続的で濃度依存的な細胞の減少が存在する。対照細胞の10%だけが、通常、G/M期に存在するが、0.57μl/mlの本発明の組成物を用いた処理によって、40%を超える細胞がG/Mブロックに存在する結果となる。
【0162】
図16Aに示されるように、上段左のプロットは、PC3細胞の正常な細胞周期分布を示す。細胞のG2/Mパーセントは少なく、図の右の小さな(小さな濃い影のピークである。第2のプロット(上段右)では、PC3細胞は、本発明の組成物0.28μl/ml組織培養液で処理した。G2/Mピークのサイズが増大する。下段左(本発明の組成物0.57μl/ml)及び下段右(1.14μl/ml)のプロットは、本発明の組成物の濃度増加により細胞周期ブロックが増加することを示す。
【0163】
図16Bに示されるように、図16Aのフローサイトメトリー解析のデータは、図16Bにおいてヒストグラムで再度プロットされる。この図に見られるように、細胞周期のG2/M期での細胞パーセントの明らかな濃度依存的増加があり、一方、これは、細胞周期のG1期の細胞における関連した減少である。
【0164】
(実施例13)
(本発明の組成物によって媒介されるアポトーシスのフローサイトメトリー解析)
図17に示されるように、ほんの低レベルのG/Mブロックを生じた本発明の組成物の濃度は、アネキシンV及びホスファチジルイノシトール(PI)による細胞染色によって明らかにされるように、初期のアポトーシスの誘導と関連することが分かった。調べた最低濃度0.28μl/mlでさえ、反転した膜ホスファチジルセリンへのアネキシンVの結合の明らかな証拠が、本発明の組成物で処理したPC3細胞のフローサイトメトリーによって明らかである。マルチハーブを介したアポトーシス発生の更なる証拠は、細胞膜完全性の破損に続く細胞死の後期段階における核酸に結合したヨウ化プロピジウムの濃度応答にある。
【0165】
図17Aに示されるように、PC3細胞は、指定濃度で本発明の組成物を用いて24時間処理した。次に、細胞をアネキシンV及びPI溶液で染色した。フローサイトメトリー分析(FACS)によってアポトーシスを測定した。0.28μl/mlの低濃度でさえ、初期のアポトーシスの明らかな兆候がある。過剰の1.1μl/mlの濃度では、大部分の細胞は死滅し、後期アポトーシス(細胞死)段階であるようである。
【0166】
図17Bに示されるように、本発明の組成物で処理したPC3細胞のフローサイトメトリー分析データ(図17A)は、図17Bのヒストグラムで示される。初期のアポトーシスの特質である細胞膜改変を示すPI染色において明らかな濃度依存的な増加がある。本発明の組成物の最低濃度でさえ、アネキシンV染色は、アポトーシスに関連したDNA染色を示す。アネキシンVで染色された細胞のパーセントは、細胞死のために本発明の組成物の濃度増加と共に減少する。
【0167】
(実施例14)
(本発明の組成物によって媒介されるエイコサノイド代謝における変化)
図18A−18Dに示されるように、クローニングされたヒトCOX−1、COX−2及び5−LOX酵素の処理は、それぞれ、エイコサノイド生成物、PGE及び5−HETEの形成の濃度依存的な阻害を生じ、5−LOXの形成は、COX−1又はCOX−2のいずれかよりも強力に阻害した(データ示さず)。次に、本発明の組成物とのインキュベーションによるエイコサノイド代謝における細胞内変化を調べた。図18(A)−(D)に見られるように、本発明の組成物を用いたPC3細胞の処理は、PGE(図18A)及び5−HETE(図18B)の形成を減少させた。しかしながら、恐らく12−LOX活性の阻害に起因する12−HETEレベルの細胞内の減少は、より目覚しかった。0.25μl/minという低い本発明の組成物の濃度は、未処理の対照細胞と比較して、12−HETEレベルの有意な減少を生じた。調べた最も高い濃度(1μl/ml)の本発明の組成物は、PC3細胞内で12−HETEレベルのおよそ80%の減少をもたらした(図18C)。
【0168】
本発明の組成物によるPC3細胞の処理はまた、ウェスタンブロット分析によって証明されるように、5−LOXタンパク質の細胞内含量を明確に減少させた(図18D)。12−LOXタンパク質含量の減少はまた、0.25μl/mlよりも高い本発明の組成物の濃度で示された。より高レベルの本発明の組成物を用いたPC3細胞のインキュベーションによるCOX−2タンパク質の増加は、セレコキシブなどの他の抗炎症剤を用いた細胞の処理による、この酵素の上昇を想起させる。
【0169】
表5のデータは、本発明の組成物又はスクテラリア(Scutellaria)の成分であるバイカレインのいずれかの非毒性な濃度での処理後、PC3細胞溶解物のリン酸化タンパク質分析から得られた。タンパク質をゲル電気泳動を用いて分離し、次に、ゲルをタンパク質に対するモノクローナル抗体で検出した。抗体は、タンパク質のリン酸化状態の差異を検出することができた。次に、ゲルを、濃度計を用いて定量した。相対的な変化(有意であるが)だけが、上記の表において示されている。細胞周期ブロックに関与するタンパク質(例えば、サイクリンD1、サイクリンD3及びpRB)、又はアポトーシスに関連したタンパク質(例えば、サバイビン、Bcl−X、及びBcl−2)の類似したアップレギュレーション又はダウンレギュレーションのシグナルを伝えるリン酸化状態の変化において多くの類似性がある。本発明の組成物及びバイカレインはまた、12−LOX活性を阻害する。しかしながら、本発明の組成物又はバイカレインのいずれかでの処理後、これらの重要なタンパク質のリン酸化状態における変化の全部が同一であるわけではなく、本発明の組成物の作用機構が複雑であり、バイカレイン単独の含有量によらないことを示唆している。
【0170】
【表5】

【0171】
(実施例15)
(本発明の組成物によって媒介されるRbタンパク質のリン酸化の減少)
図19Aに示されるように、Rbのリン酸化は濃度依存的に阻害される。0.25μl/mlという低い濃度は、対照と比較してpRbを有意に減少させ、Rbの量は、pRbが減少するにつれて増加した。本発明の組成物の複数の濃度で起こったRbタンパク質のリン酸化の減少はまた、G/M細胞周期ブロック及び初期のアポトーシスに関連した。ウェスタンブロットデータの定量は、図19Bに示される。
【0172】
リン酸化されていない(Rb)及びリン酸化された(pRb)などの網膜芽細胞腫のウェスタンブロットが、図19Aに示されている。下段のバンド(β−アクチン)は、充填対照としてのみ示される。データは、24時間、示された濃度の本発明の組成物で処理されたPC3細胞から導かれる。次に、細胞を可溶化し、ゲル上でタンパク質を分離した。Rb及びpRbタンパク質の存在は、特異的なモノクローナル抗体を用いて測定した。バンド密度の定量を可能にする測光スキャニング装置でゲルをスキャンした後のデータも下段の図に示す。データは、本発明の組成物の0.25μl/mlの濃度でさえ、pRb(リン酸化された形態)を明らかに抑制し、Rb(リン酸化されていない形態)を増加することを示す。
【0173】
2μl/mlの濃度の本発明の組成物を用いてPC3細胞を24時間インキュベーションした結果、Rbリン酸化の減少が、T356(対照と比較して59%減少)、S807(62%↓)、T821(62%↓)及びT826(79%↓;他はデータを示さない)を含む複数のアミノ酸部位で起った。
【0174】
【表6】

【0175】
省略形は下記の通りである:PC3、アンドロゲン非感受性ヒト前立腺癌;Rb、網膜芽細胞腫タンパク質;STAT1、シグナル伝達性転写因子1(signal transducer and activator of transcription 1);Fos、Fos−c FBJマウス骨肉腫癌タンパク質関連転写因子;HspB1、熱ショック27kDaタンパク質;p21、p21活性化タンパク質セリンキナーゼ。
【0176】
(実施例16)
(本発明の組成物によるPC3増殖の阻害をブロックする12−HETEの能力)
図20A−20Cに示されるように、成長阻害濃度の本発明の組成物で処理したPC3細胞へのPGE又は5−HETEの添加は、細胞増殖をブロックしなかった。対照的に、図20Aは、本発明の組成物(1μl/ml;アポトーシス及びG/M停止の強力な誘導を生じる濃度)で処理した細胞へ添加した12−HETEは、結果として、対照である未処理の細胞レベルまで戻ることはないが、細胞増殖をほぼ2倍にしたことを示す。
【0177】
12−HETE(12−Hと表す)の添加はまた、結果として、PC3細胞におけるRBタンパク質のリン酸化状態を逆転させる本発明の組成物の能力をブロックした(図20B);PGE2及び5−HETEはいずれもpRb状態を変更する本発明の組成物の能力にいなかる効果もなかった。最後に、PC3細胞に添加した12−HETEはまた、G2/Mブロックを媒介した本発明の組成物の部分的な逆転を提供し、本発明の組成物によって媒介されるPC3細胞増殖の阻害におけるこの特別なエイコサノイドの重要性を指摘する。
【0178】
したがって、図20Aに示されるように、「添加−逆転」実験において、PC3細胞は、指示した濃度の本発明の組成物で処理され、結果として、細胞増殖は濃度依存的に阻害された(相対的な蛍光は細胞数を示す)。12−HETE、すなわち12−リポキシゲナーゼの添加は、PC3細胞増殖において中程度の増殖をもたらした。しかしながら、本発明の組成物で処理した細胞への12−HETEの添加は、本発明の組成物によって媒介された腫瘍細胞増殖阻害を大いにブロックした。
【0179】
図20Bに示されるように、本発明の組成物は、pRbの発現を濃度依存的に減少させた。5−HETE(5−H)又はPGE2のいずれの添加も、この効果をブロックしなかった。しかしながら、12−LOX生成物、12−HETEの添加は、pRb発現の産生を部分的に戻した。総合すれば、これらのデータは、本発明の組成物によって媒介された12−LOXの阻害は、12−HETEが抗増殖活性をブロックし、腫瘍抑制タンパク質Rbの発現を回復させる本発明の組成物の能力をブロックすることができる点で重要であることを示す。
【0180】
(参考文献)
下記の参考文献は、関連する技術分野におけるその位置付けに照らして、本発明の対象の理解に有用であると考えられる。本明細書中での引用は、引用されたいずれかの参考文献が本発明の対象の特許性に関連するという主張及び承認として解釈されるべきではない。本出願人らは、情報開示陳述書における特許性に関連する情報を適切に開示している。各参考文献の内容は、本明細書中に全体として組み入れられる。
【0181】
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【0182】
本発明の対象はこのように記載され、その対象は、多数の方法で修飾又は変更してもよいことは明らかである。このような修飾及び変更は、本発明の対象の精神及び範囲からの逸脱であると見なされるべきではなく、このような全ての修飾及び変更は、上記の特許請求の範囲内に含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0183】
【図1】図1は、ヒトA549肺癌細胞株及びヒトPC3前立腺癌細胞株の成長における本発明の対象の組成物の阻害効果を示すグラフである。
【図2】図2は、PGE2の形成における本発明の組成物の効果を示すグラフである。
【図3】図3は、PC3細胞におけるPGE2及び5−HETEの形成における本発明の組成物の効果を示すグラフである。
【図4】図4は、ヒトA549肺癌細胞におけるエイコサノイド代謝に対する本発明の組成物の濃度依存的な効果を示すグラフである。
【図5】図5は、本発明の組成物中に13−S−HODEが存在することを示す質量分析データを示す。
【図6】図6は、マウスの耳浮腫における本発明の化合物の抗炎症作用を示すグラフである。
【図7】図7は、種々の癌細胞株の増殖における13−S−HODEの効果を示すグラフである。
【図8】図8は、ヒト乳癌MCF7細胞株及びMDA231細胞株の成長における本発明の化合物の阻害効果を示すグラフである。
【図9】図9は、ヒト腫瘍細胞株(例えば、PC3)における5−リポキシゲナーゼの存在を濃度依存的にダウンレギュレートする本発明の組成物の能力を示すウェスタンブロットである。
【図10】図10は、アラキドン酸(AA)が媒介したマウスの耳浮腫における本発明の組成物の効果を示すグラフである。
【図11A】図11(A)は、単独で、又は0.8mg/mlの本発明の組成物と共に5nM RANKLの存在下で5日間インキュベーション後、TRAP陽性のRAW 264.7細胞を示す一連の写真である。
【図11B】図11(B)は、単独で、又は0.8mg/mlの本発明の組成物と共に5nM RANKLの存在下で5日間インキュベーション後、RAW 264.7細胞においてカウントした多核化(3個の核)の破骨細胞の数を示すグラフである。
【図12】図12は、1%血清の存在下又は非存在下で0.3mg/mlの本発明の組成物及び1nM TNFで24時間、一晩の同時インキュベーション後、マトリゲル浸潤チャンバーの浸潤アッセイを示すグラフである。
【図13】図13は、1nM TNF、1nMタキソール、及び300nMドキソルビシンを単独で、又は0.5mg/mlの本発明の組成物を併用してインキュベートしたヒト多発性骨髄腫U266細胞の細胞死をを示す一連の写真であり、本明細書中に記載されるカルセインAMベースの生/死アッセイによって測定した。赤色は死細胞を表し、緑色は生細胞を表している。
【図14A】図14(A)は、指定濃度の本発明の組成物と共にプレインキュベートし、0.1nM TNFで30分間処理したKBM−5細胞のNF−κB活性化を示す写真である。
【図14B】図14(B)は、1mg/mlの本発明の組成物と共にプレインキュベートし、0.1nM TNFで30分間処理したKBM−5細胞のNF−κB活性化を示す写真である。
【図14C】図14(C)は、1mg/mlの本発明の組成物と共にプレインキュベートし、タバコの煙(10μg/ml)で1時間処理したKBM−5細胞のNF−κB活性化を示す写真である。
【図15A】図15(A)は、1mg/mlの本発明の組成物と共に1時間インキュベートし、1nM TNFで指定時間処理したKBM−5細胞の増殖性及び転移性タンパク質の発現を示す写真である。
【図15B】図15(B)は、1mg/mlの本発明の組成物と共に1時間インキュベートし、1nM TNFで所定時間処理したKBM−5細胞の抗アポトーシスタンパク質の発現を示す写真である。
【図16A】図16(A)は、細胞周期の分布プロットを示す一連のグラフである。上段左のプロットは、PC3細胞の正常な細胞周期分布を示す。上段右のプロットでは、G2/Mピークの大きさが増している。下段左及び下段右のプロットは、本発明の組成物の濃度増加によって増している細胞周期のブロックを示す。
【図16B】図16(B)は、ヒストグラムとして、図16(A)のフローサイトメトリー分析に基づくデータを示すグラフである。
【図17A】図17(A)は、指定濃度の本発明の組成物で処理し、次に、アネキシンV及びPI溶液で染色したPC3細胞を示す一連のグラフである。
【図17B】図17(B)は、指定濃度の本発明の組成物で処理し、次に、アネキシンV及びPI溶液で染色したPC3細胞を示す一連のグラフである。
【図17C】図17(C)は、指定濃度の本発明の組成物で処理し、次に、アネキシンV及びPI溶液で染色したPC3細胞を示す一連のグラフである。
【図17D】図17(D)は、指定濃度の本発明の組成物で処理し、次に、アネキシンV及びPI溶液で染色したPC3細胞を示す一連のグラフである。
【図17E】図17(E)は、ヒストグラムとして、図17のフローサイトメトリー分析に基づくデータを示すグラフである。
【図18A】図18(A)は、示した本発明の組成物の濃度に関するPGEの形成を示すグラフである。
【図18B】図18(B)は、示した本発明の組成物の濃度に関する5−HETEの形成を示すグラフである。
【図18C】図18(C)は、示した本発明の組成物の濃度に関する12−HETEの形成を示すグラフである。
【図18D】図18(D)は、本発明の組成物及び細胞含有量の5−LOXタンパク質を用いたPC3細胞の処理を示すウェスタンブロットの写真である。
【図19A】図19(A)は、リン酸化されていない(Rb)タンパク質及びリン酸化された(pRb)タンパク質として網膜芽腫タンパク質を示すウェスタンブロットの写真である。
【図19B】図19(B)は、バンド密度の定量を可能にする側光スキャニング装置でゲルをスキャン後の図19(A)のデータを示すグラフである。
【図20A】図20(A)は、指定濃度の本発明の組成物で処理したPC3細胞及び細胞増殖の阻害を示すグラフである。
【図20B】図20(B)は、本発明の組成物によって引き起こされるpRbの発現の濃度依存的な減少を示すウェスタンブロットの写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エイコサノイド代謝プロセスの調節を必要とする動物の細胞におけるエイコサノイド代謝プロセスを調節する方法であって、エイコサノイドオキシゲナーゼの活性を制御するために有効量の組成物を前記動物に投与するステップを含み、
ここで、当該組成物が、ローズマリー、ウコン、オレガノ及びジンジャーの治療的に有効量の超臨界抽出物;並びに、ホーリーバジル、ジンジャー、ウコン、コガネバナ(Scutellaria baicalensis)、ローズマリー、グリーンティー、イタドリ(huzhang)、黄蓮(Chinese goldthread)及びメギの治療的に有効量の含水アルコール抽出物を含む方法。
【請求項2】
前記細胞が癌細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記癌細胞が、前立腺癌細胞、乳癌細胞、肺癌細胞、結腸癌細胞、又はそれらの組合せを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記エイコサノイド代謝プロセスが、細胞の癌への形質転換、癌細胞増殖、癌細胞転移、癌細胞浸潤、癌細胞に調節された血管形成、癌細胞に調節されたアポトーシス抑制、又はそれらの組合せに関連した異常代謝である、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記エイコサノイドが、アラキドン酸及びリノリニックアシッド(linolinic acid)からなる群から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記エイコサノイドがアラキドン酸である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記エイコサノイドオキシゲナーゼが、シクロオキシゲナーゼ−1、シクロオキシゲナーゼ−2、5−リポキシゲナーゼ、12−リポキシゲナーゼ、又はそれらの組合せである、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記エイコサノイドオキシゲナーゼが12−リポキシゲナーゼである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記エイコサノイドオキシゲナーゼが5−リポキシゲナーゼである、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記エイコサノイドオキシゲナーゼが、シクロオキシゲナーゼ−1、シクロオキシゲナーゼ−2、又はそれらの組合せである、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記エイコサノイドオキシゲナーゼがシクロオキシゲナーゼ−1である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記エイコサノイドオキシゲナーゼがシクロオキシゲナーゼ−2である、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記エイコサノイドオキシゲナーゼ活性の制御が阻害である、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記エイコサノイド代謝プロセスの調節が、動物の細胞におけるNF−κB活性を阻害するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記動物がヒトである、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
13−S−HODEの送達を必要とする動物に13−S−HODEを送達する方法であって、ローズマリー、ウコン、オレガノ及びジンジャーの治療的に有効量の超臨界抽出物;並びに、ホーリーバジル、ジンジャー、ウコン、コガネバナ、ローズマリー、グリーンティー、イタドリ、黄蓮及びメギの治療的に有効量の含水アルコール抽出物を含む組成物を前記動物に投与するステップを含む方法。
【請求項17】
前記動物がヒトである、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
アラキドン酸が媒介した炎症の阻害を必要とする動物におけるアラキドン酸が媒介した炎症を阻害する方法であって、ローズマリー、ウコン、オレガノ及びジンジャーの治療的に有効量の超臨界抽出物;並びに、ホーリーバジル、ジンジャー、ウコン、コガネバナ、ローズマリー、グリーンティー、イタドリ、黄蓮及びメギの治療的に有効量の含水アルコール抽出物を含む組成物を当該動物に投与するステップを含む方法。
【請求項19】
前記動物がヒトである、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
NF−κB制御の遺伝子産物のレベルの調節を必要とする動物の細胞におけるNF−κB制御の遺伝子産物のレベルを調節する方法であって、ローズマリー、ウコン、オレガノ及びジンジャーの治療的に有効量の超臨界抽出物;並びに、ホーリーバジル、ジンジャー、ウコン、コガネバナ、ローズマリー、グリーンティー、イタドリ、黄蓮及びメギの治療的に有効量の含水アルコール抽出物を含む組成物を前記動物に投与するステップを含む方法。
【請求項21】
前記動物がヒトである、請求項20に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11A】
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【図11B】
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【図12】
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【図13】
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【図14A】
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【図14B】
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【図14C】
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【図15A】
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【図15B】
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【図16A】
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【図16B】
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【図17A】
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【図17B】
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【図17C】
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【図17D】
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【図17E】
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【図18A】
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【図18B】
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【図18C】
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【図18D】
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【図19A】
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【図19B】
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【図20A】
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【図20B】
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【公表番号】特表2008−543852(P2008−543852A)
【公表日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−517012(P2008−517012)
【出願日】平成18年6月14日(2006.6.14)
【国際出願番号】PCT/US2006/022967
【国際公開番号】WO2006/138296
【国際公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【出願人】(506384235)ニュー チャプター,インコーポレイテッド (2)
【出願人】(507410113)ザ ユニヴァーシティー オブ テキサス エム.ディー. アンダーソン キャンサー センター (2)
【Fターム(参考)】