説明

エコー中継ユニット

【課題】業務用移動無線(防災無線移動系)では、移動局は基地局の通信員を介して見通し外の局と間接通信を行う不便さがあった。移動局から基地局にて人員を介さず見通し外の端末と通信可能とする「エコー中継ユニット」を提供する。
【解決手段】移動局からのメッセージを基地局が受信して蓄積し、それをプッシュトーク方式で繰返し送信する。受信に通話とは別周波数(f2)のトーンスケルチを実装し、基地局受信部のアンテナ入力部に分岐接続し、このトーンを受信した時のみ中継ユニットが動作する。着信すると音声録音が開始され、着信が切れると数秒後に送信部とアンテナ切り替え部を起動させ、録音した音声を再生送信する。送信機能を具備する移動局は送信側にトーンスケルチ送信機能を要する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、業務用無線回線の運用上制限のあった、移動局同士の通信範囲を拡大するものであって、電波法上の基地局と移動局の関係をそのまま維持するとともに、基地局に中継ユニットという、いわば通信員に代わる通信ロボットを付加装置として追加するものである。電波法の規制範囲内で通信範囲を拡大する、運用技術改善の技術分野になります。電波法上は制御装置の追加と送受信の第3装置の追加とういう申請が必要になる。また、送受信にかかわるトーンスケルチ周波数の追加を申請し、割り当てをもらう必要があります。業務用無線では、移動局同士の通信は可能であるが通信範囲が限られ、基地局を介して伝達してもらう不便さがあり、技術的限界とされてきた。多数の移動局が1波を共用するのであるから、基地局の統制機能は不可欠であるが、この不便さ故に有料の携帯電話を使用することが多くなっている。
【背景技術】
【0002】
従来技術では、電波法上の基地局と移動局の関係に縛られ、業務無線の技術とはこの程度とのあきらめがあった。従って業務で使用するのに、個人所有の携帯電話を使用するなどして、管理上の問題や費用負担の問題が発生していた。確かに現状ではどんな地方でも携帯電話網がつながっていて、業務無線の運用比率は極端に低下しているのが実情である。
【0003】
しかし、現状の携帯電話網に頼る体制では、一旦災害や事件が発生した場合、危機管理者は個々の電話呼び出しに没頭することになり、携帯電話の普及が拡大したが時代であるが故の不便さに直面する。
災害時のアクセス制限への不安もあり、業務無線の一斉呼び出しと傍受の容易さが見直されているものの、通話範囲の技術的制限から、MCA無線等に2重に経費をかけているケースも増加している。
VHFの150MHz帯は、デジタル化への移行がきまっており、消防無線等、局数の多さと指令センターの機能が確立している帯域では問題外であるが、UHF帯域の460MHz帯域では、今後も10年以上の存続が確実であり、より利便性を追求すべき余地がある。
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
業務無線の方式が、電波法上の基地局と移動局の関係に縛られ、移動局は見通しの範囲内通信でがまんし、見通し外の通信は基地局の通信員に伝達して間接通信となる不便さ、これが最大の課題である。
携帯電話機が普及し、通信費が増大してしまったので、この通信費の節減が課題である。携帯電話網は電話機が膨大に普及してしまったが故に、非常災害時には使い物にならない時代になってきた。この時代の非常通信のあり方が課題である。現に使用可能な無線機が存在し、多数の現場要員が現場に出動して業務を遂行し、各現場の状況を連絡したり、通信の傍受で状況をタイムリーに把握しようとしても、場所によっては、傍受も通信も出来なくなる事態は、現場要員にかなりのストレスを与えている。こうした現場要員の要望にどう応えるかが課題である。
【0005】
災害現場に出動する消防団員等は、防災行政波の移動系を運用しているケースが多いが、現場に着いてからの運用に支障はないものの、肝心の初動時の情報伝達に力を発揮できていない。広範囲の応援要請が必要なとき、この無線回線を生かすことが課題である。
業務無線は、電波法上の「単信」通信の性格上、送話した内容を受信者は繰り返して内容を確認する必要がある。情報伝達の習熟に必要な訓練の方法が課題である。
また、基地局、中継局は地震災害時の被害に耐えるよう設置されているが、万が一基地局の制御が出来なくなった場合のバックアップ対策が課題である。
【課題を解決する為の手段】
【0006】
そこで、本発明では、第1に、基地局に「エコー中継ユニット」装置を追加接続する。これは、基地局無線装置の受信周波数と同じ周波数の送受信装置に、別途申請の上許可されたトーンスケルチ周波数(f2)を実装して、受信時のトーンスケルチを監視し、オン信号を取り出して内蔵のIC録音装置の録音を起動させ、オフになると録音停止させる。停止後のタイマー設定時間により、送信部を送信起動させ、アンテナを切り替える。制御部には、IC録音装置の再生起動と再生停止後の送信停止、という一連の中継機能を持たせる。これにより、基地局や中継局の反対側にいる、直接波通信のできない移動局と通信を可能にさせる。
【0007】
第2に、移動局においては、同じ送信周波数を2チャンネルに実装し、この送信チャンネルに別に指定されたトーンスケルチ周波数(f2)を実装して通信路を選択する、トーンスケルチ選択中継方式。
受信のトーンスケルチ周波数は、同一である。運用に際しては、移動局の2チャンネルで送信起動し、自局のコールサインと現在地及び呼び出したい局、及び2チャンネル送信であることを簡潔に送信する。5秒後に自分のメッセージが受信され、このメッセージを受信した相手局が、同様に2チャンネルに切り替え応答送信する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の実施形態は、各地の自治体や事業所に、本発明の趣旨説明のうえ利用希望を募り、一定程度の需要が見込める段階で試作を行い、総務省との整合をとることとなる。その後、業務無線を開設している免許人が主体となり、業者を指定して、運用している基地局や中継局にこの「エコー中継ユニット」の追加工事を実施する。メーカーはユニットの詳細な回路設計、試作、運用試験を経て運用効果を実証するデータを蓄積する。
運用効果の測定方法としては、広範囲に移動する行政現場部門、水道やごみ収集車、建設部門、消防団等で試験運用し、導入前後の評価をアンケート形式でデータを収集することになる。
移動局においては、チャンネルごとにトーンスケルチを設定できない装置もあり、評価が高ければ、設備更新の理由ともなる。
【発明の効果】
【0009】
以上、本発明によって、無線交信に繰り返しがあって、冗長ぎみではあるものの、現行の電波法の規制範囲内で「裏技」ともいえる中継ロボットを介在させる無線回線が完成する。
この発明の効果は、第1に、通信範囲の拡大で現場要員のモチベーションの持続的増大であり、その副次的効果として、通信費の節約効果が期待できる。基地局に通信員を配置しなくても、移動局の通信範囲を拡大できるので人件費の節約になり、今まで連絡網として期待していなかった、事務部門や福祉サービス部門でも、積極的運用が広まり、携帯電話にかけていた通信費の節約効果が期待できる。
【0010】
第2に、非常災害時のバックアップ機能にあります。地震災害の到来が心配されている折、役場や本社の建物が被害を受けた場合、各部署における基地局の有線式遠隔操作に支障がでた場合でも、基地局が生きていれば、即座に通信機能を復活させる、バックアップ機能が期待できる。基地局無線装置が損傷した場合でも、エコー中継ユニットの予備装置とアンテナを単独で高台に仮設置すれば、即座に広範囲の移動局同士が通信可能となり、危機管理指揮者は、移動局を駆使して情報収集と災害対策に当たることができる。いわば、非常災害時のバックアップ回線機能をもつことになります。
【0011】
第3に、基地局及び移動局の日常通信試験機能である。このエコー中継ユニットを装備すると、通常の通信では知ることのできない自局送信波の音質、明瞭度、通信事項、を日常的に確認することができる。また場所によって変化する明瞭度、走行中の音声のとぎれ等、無線回線特有の変動を直接感じ取ることが出来るので、一方的になりがちな通信の伝達が、変動を踏まえたより確実なものとなる。
通信の障害になる事項、通信時の混信障害、装置故障、外来雑音等の症状がフィードバックされやすく、中継ユニットの録音機能を拡張すれば、外来局混信等の記録することができるので、保守作業がより確実に迅速に出来ることになる。
【0012】
第4に、業務無線移動系の無線回線以外にも応用範囲が広がります。防災無線固定系の子局では、山影の周辺地域では、弱電解で動作の不安定な子局が数多く見られる。こうした弱電界地域の子局対策として、再送信のミニ中継子局の方式が存在しているが、同時送信にこだわらず、放送内容を重視するのであれば、この「エコー中継ユニット」を装備すれば、1周波数時間差放送にてローコストな無線回線の構成が可能となる。
【0013】
第5に消防団無線への活発な活用が期待できます。団長からの無線指令が、あたかも基地局から発せられたと同様の通信エリアを持つことになり、消防団の出動時に不可欠な災害位置情報や初期情報が広範囲な移動局で傍受でき、移動しながらの通信連絡にも活用できます。災害場所における現場連絡に限られていた無線に利用が飛躍的に拡大します。
第6に単信方式の無線交信に慣れていない若手の職員でも、この方式によれば、自分の送話内容を確認しながら通信することになるので、「いつ、どこで、だれが、何を、どうした」の5W1Hについて、簡潔な送話の訓練になり、スムーズな情報伝達が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】エコー中継ユニット説明図
【符号の説明】
【0015】
1・移動局から2CHで呼び出し
2・2CH着信すると録音開始音声終了で録音終了
3・録音終了S秒後送信部に起動信号を出し音声を再生する
4・直接波の届かない移動局応答
【0016】
▲1▼エコー中継ユニット
▲2▼受信部
▲3▼IC録音装置
▲4▼中継制御部
▲5▼送信部
▲6▼受信ユニット接続部
▲7▼送信ユニット接続部
▲8▼ANT切り替えユニット
▲9▼移動局CH増設

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線基地局に追加設置する見通し外通信用「エコー中継ユニット」
見通し外の移動局同士の通信を可能にする、図1の「エコー中継ユニット」を提供します。「エコー中継ユニット」は、基地局無線装置と同一周波数の送受信装置を分岐接続し、別途申請の上許可されたトーンスケルチ周波数(f2)を受信側に実装して、受信時のトーンスケルチを監視する。▲2▼の受信部が受信するとオン信号を取り出して内蔵の▲3▼IC録音装置の録音を起動させ、オフになると録音停止させる。▲4▼の中継制御部は、停止後のタイマー設定時間により、送信部を送信起動させ、アンテナを切り替えて、IC録音装置の録音内容を再生して送り出す。再生停止後の送信停止によって、一連の中継動作を完了する。▲5▼の送信部トーンスケルチ周波数(f1)は基地局と同じである。これにより、送信部は受信した内容をそっくり再生送信することになり、基地局や中継局の反対側にいる、直接波通信のできない移動局にメッセージを伝え、通信を可能にさせる。
【請求項2】
移動局のトーンスケルチ選択中継方式
▲9▼の移動局においては、同じ送信周波数を2チャンネルに実装し、この送信チャンネルに別に指定されたトーンスケルチ周波数(f2)を実装して通信路を選択する、トーンスケルチ選択中継方式を提供する。受信のトーンスケルチ周波数は、1チャンネルと同一である。運用に際しては、移動局の2チャンネルで送信起動し、自局のコールサインと現在地、呼び出したい局、及び2チャンネル送信であることを簡潔に送信する。基地局の「エコー中継ユニット」が動作して、数秒後に自分のメッセージが受信され、このメッセージを受信した相手局が、同様に2チャンネルに切り替え応答送信する。
【請求項3】
無条件中継ユニット接続方式
現状の基地局無線装置に支障を与えない無条件中継ユニット接続方式を提供します。中継ユニットの接続方式は、受信入力が、基地局受信部のアンテナ入力部に分配器と3dB補償アンプを組み込んだ、基地局同一条件の入力方式であり、送信側は、アンテナ切り替え方式なので、現状の無線装置に手を加えることなく、しかも運用に支障をあたえない無条件接続方式である。基地局無線装置はメーカーや製造年代で様々な形式があるが、この接続方式は、無条件に接続可能であり、機種を問わない。
【請求項4】
基地局及び移動局の日常通信試験機能
このエコー中継ユニットを装備すると、自分の声が帰ってきますので、通常の通信では知ることのできない自局送信波の音質、明瞭度、通信事項、を日常的に確認する機能が提供できます。また場所によって変化する明瞭度、走行中の音声のとぎれ等、無線回線特有の変動を直接感じ取ることが出来るので、単信方式で一方的になりがちな通信の伝達が、変動を踏まえたより確実な運用になります。
通信の障害になる事項、通信時の混信輻輳状況、装置故障、外来雑音等の症状がフィードバックされて把握しやすく、中継ユニットの録音機能を拡張すれば、外来局混信等の記録することができるので、保守作業がより確実に迅速に出来ることになる。
【請求項5】
非常災害時のバックアップ機能
地震災害の到来が心配されている折、基地局制御系のバックアップ機能が提供できます。災害で役場や本社の建物が被害を受けた場合、各部署における基地局の有線式遠隔操作ラインが切断され、運用に支障がでた場合でも、基地局無線装置さえ生きていれば、即座に通信機能を復活させることができます。基地局無線装置が損傷した場合でも、エコー中継ユニットの予備装置とアンテナを単独で高台に仮設置すれば、即座に広範囲の移動局同士が通信可能となります。通常有線で連絡している出先機関や支所等の連絡が切断された場合でも、危機管理指揮者は、移動局を駆使して広域に移動しながら情報収集と災害対策に当たることができる。いわば、非常災害時のバックアップ回線機能をもつことになります。携帯電話は非常災害時のアクセス制限が強化されて使えないので、ますますこの災害時バックアップ機能が有効になってきています。
【請求項6】
防災無線固定系の低電界地帯子局再送信機能
業務無線移動系の無線回線以外にも応用範囲が広がります。防災無線固定系の子局では、山影の周辺地域では、弱電界で動作の不安定な子局が数多く見られる。こうした弱電界地域の子局対策として、再送信のミニ中継子局の方式が存在しているが、同時送信にこだわらず、放送内容を重視するのであれば、この「エコー中継ユニット」を装備して、1周波数時間差放送にてローコストな無線回線の構成が可能となる。
【請求項7】
情報共有と通信経費節減の機能
業務無線の同報性を活用した情報の共有により、携帯電話使用による通信費の拡大をくい止める、通信経費節減機能を提供します。現状では、業務無線の移動局には通信範囲の制限があり、利便性から携帯電話が業務連絡に多用されていて、通信費が増大しています。1対向通信が基本の携帯電話では、現場の問題点を連絡するのに、関係者にそれぞれ連絡することになり、無駄な時間と通信費がかさみます。これに対し業務無線の同報性を活用すれば、ゴミ収集や水道、道路補修は勿論、広域の移動業務での問題点は無線の傍受でリアルタイムの状況把握が可能となります。個人情報を含む複雑な連絡事項は別として、業務無線の同報性が再認識されると、情報共有が迅速化され、現場要員のモチベーションが向上して、携帯電話に掛かっていた通信費の節減が期待できる。
【請求項8】
消防団無線活用機能
消防団無線への活用が容易になり、消防団活動の活発化に期待できます。もともと消防団の無線通信は、基地局を持たず、災害現場の現場連絡に限られてきました。このエコー中継湯ユニットが装備されると、団長からの無線指令が、あたかも基地局から発せられたと同様の通信エリアを持つことになり、消防団の出動時に不可欠な災害位置情報や初期情報が広範囲な移動局で傍受でき、移動しながらの通信連絡にも活用できます。
【請求項9】
基地局無線装置の輻輳対策
このエコー中継ユニットには、万一故障時の非常停止機能、1CH通常運用の優先対策、等の安全対策を組み込み、機器故障による連続送信や送信停止の障害を防止します。また、同時受信の場合は、音声が混在しますので、通信管理者を決めて、通信順序を指示して統制をとる必要があります。

【図1】
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【公開番号】特開2010−21979(P2010−21979A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−206329(P2008−206329)
【出願日】平成20年7月14日(2008.7.14)
【出願人】(504365593)
【Fターム(参考)】