エジェクタ
【課題】エジェクタ40の原価低減を図る。
【解決手段】ボディ46やノズル41の主要構造部を樹脂材にて形成する。
エジェクタ40のノズル41は、作動流に晒される内壁形状は高い加工精度、つまり高い寸法精度および所定の面粗度を必要とする。また、エジェクタ式冷凍サイクル用のエジェクタ40では、昇圧部42、43においてノズル41から噴射する冷媒と蒸発器30から吸引した冷媒とを混合させながら速度エネルギーを圧力エネルギーに変換するので、昇圧部42、43の内壁形状もノズル41の内壁形状と同様に高い加工精度を必要とする。このため、従来一般的には、放電加工やワイヤーカットにてノズル41を製造し、切削加工にて昇圧部42、43を製造している。このような従来に比べて、ボディ46やノズル41の主要構造部を樹脂で形成することにより、エジェクタ40の原価低減が可能となる。
【解決手段】ボディ46やノズル41の主要構造部を樹脂材にて形成する。
エジェクタ40のノズル41は、作動流に晒される内壁形状は高い加工精度、つまり高い寸法精度および所定の面粗度を必要とする。また、エジェクタ式冷凍サイクル用のエジェクタ40では、昇圧部42、43においてノズル41から噴射する冷媒と蒸発器30から吸引した冷媒とを混合させながら速度エネルギーを圧力エネルギーに変換するので、昇圧部42、43の内壁形状もノズル41の内壁形状と同様に高い加工精度を必要とする。このため、従来一般的には、放電加工やワイヤーカットにてノズル41を製造し、切削加工にて昇圧部42、43を製造している。このような従来に比べて、ボディ46やノズル41の主要構造部を樹脂で形成することにより、エジェクタ40の原価低減が可能となる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高速で噴出する作動流体の巻き込み作用によって流体輸送を行う運動量輸送式ポンプであるエジェクタ(JIS Z 8126 番号2.1.2.3等参照)に関するものであり、冷媒を循環させるポンプ手段としてエジェクタを採用した冷凍装置(以下、エジェクタ式冷凍サイクルという。)に適用して有効である。
【背景技術】
【0002】
エジェクタの製造原価低減を図った従来技術として、下記特許文献1がある。これは、ノズルを焼結金属製にするとともに、昇圧部(混合部およびディフューザ部)を金属製の管材に塑性加工を施すことによって製造している。
【特許文献1】特開2003−326196号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
エジェクタ性能に大きく影響する要因として混合部に対するノズルの同軸度があり、この同軸度を管理するには混合部を含む昇圧部とノズルを保持する吸引部とが一体で作れることが望ましい。しかしながら、上記した従来技術の場合、吸引部は吸引口が一方向に出て周方向に不均一な形状となるため、吸引部と昇圧部とを一体で塑性加工することができないという問題点がある。
【0004】
本発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目して成されたものであり、その目的は、製造原価を低減することのできる新規なエジェクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記目的を達成するために、下記の技術的手段を採用する。すなわち、請求項1に記載の発明では、ボディ(46)内に配置されたノズル(41)から高速で噴出する作動流体の巻き込み作用によって流体輸送を行う運動量輸送式ポンプであるエジェクタであり、ボディ(46)もしくはノズル(41)の主要構造部が樹脂材にて形成されていることを特徴としている。
【0006】
エジェクタ(40)のノズル(41)は、作動流体を減圧して流体を加速するものであり、作動流に晒される内壁形状は高い加工精度、つまり高い寸法精度および所定の面粗度を必要とする。また、エジェクタ式冷凍サイクル用のエジェクタ(40)では、昇圧部(42、43)においてノズル(41)から噴射する冷媒と蒸発器(30)から吸引した冷媒とを混合させながら速度エネルギーを圧力エネルギーに変換するので、昇圧部(42、43)の内壁形状もノズル(41)の内壁形状と同様に高い加工精度を必要とする。
【0007】
このため、従来一般的には、放電加工やワイヤーカットにてノズル(41)を製造し、切削加工にて昇圧部(42、43)を製造している。このような従来に比べて、ボディ(46)もしくはノズル(41)の主要構造部を樹脂で形成することにより、エジェクタ(40)の製造原価の低減が可能となる。
【0008】
また、請求項2に記載の発明では、請求項1に記載のエジェクタにおいて、ボディ(46)を樹脂材で形成しているとともに、ノズル(41)を保持する部分に金属部材(47)をインサート成形していることを特徴としている。図11は、従来のエジェクタ構造にてボディ(46A)もノズル(41A)も樹脂化した場合の問題点を説明するエジェクタ(40A)の模式図である。
【0009】
従来の金属製のエジェクタ(40)のように、樹脂製のボディ(46A)に樹脂製のノズル(41A)を圧入保持させようとすると、圧入部A1にて樹脂材がクリープを起こして保持力が弱くなり、軸方向の位置ずれ、同軸度の悪化、作動流体の洩れ、最悪の場合にはノズル(41A)がボディ(46A)から脱落するという問題が起こりうる。
【0010】
しかし、請求項2に記載の発明によれば、ボディ(46)を樹脂化した場合においてもノズル(41)を保持する部分に金属部材(47)をインサートすることによって圧入後の保持力を確保できるようになり、軸方向の位置ずれ、同軸度の悪化、作動流体の洩れ、ノズル(41A)がボディ(46A)から脱落するという問題を防ぐことができる。
【0011】
また、請求項3に記載の発明では、請求項1に記載のエジェクタにおいて、ノズル(41)を樹脂材で形成しているとともに、ボディ(46)に保持される部分に金属部材(45)をインサート成形していることを特徴としている。この請求項3に記載の発明によれば、ノズル(41)を樹脂化した場合においてもボディ(46)に保持される部分に金属部材(45)をインサートすることによって圧入後の保持力を確保できるようになり、軸方向の位置ずれ、同軸度の悪化、作動流体の洩れ、ノズル(41A)がボディ(46A)から脱落するという問題を防ぐことができる。
【0012】
また、請求項4に記載の発明では、請求項1に記載のエジェクタにおいて、ノズル(41)を樹脂材で形成しているとともに、駆動流の路路部分に金属部材(44)をインサート成形していることを特徴としている。ノズル(41)を樹脂化した場合、特に喉部(411)以降の部分(図11中のA2部)は流体が高速で流れるため、樹脂のように硬度の低い材料では流体摩擦によって磨耗を生じて最適形状からはずれ、性能低下を引き起こしてしまうという問題が起こりうる。しかし、請求項4に記載の発明によれば、駆動流路路部分の高い寸法精度および所定の面粗度を確保することができる。
【0013】
また、請求項5に記載の発明では、請求項4に記載のエジェクタにおいて、金属部材(44)を塑性加工にて形成していることを特徴としている。なお、駆動流路路部分の金属部材(44)を塑性加工する方法として、管材にスエージング加工、プレス加工、スピニング加工およびへら絞り加工など(JIS B 0122参照)を施す方法がある。この請求項5に記載の発明によれば、高い加工精度を維持しながら、短時間にて駆動流路路部分を製造することができるので、エジェクタ(40)の製造原価の低減が可能となる。
【0014】
また、請求項6に記載の発明では、請求項2ないし請求項5のうちいずれか1項に記載のエジェクタにおいて、金属部材(44、45、47)の樹脂材と接合する部分にずれ防止形状(48)を備えていることを特徴としている。この請求項6に記載の発明によれば、樹脂材で形成したボディ(46)やノズル(41)に対して金属部材(44、45、47)がずれるのを防ぐことができ、混合部(42)に対するノズル(41)の同軸度を確保することが容易となる。
【0015】
また、請求項7に記載の発明では、請求項1に記載のエジェクタにおいて、樹脂材で形成するボディ(46)の中に、金属製のノズル(41)をインサート成形していることを特徴としている。これは、吸引部のテーパを無くして、樹脂製のボディ(46)を成形する際に金属製のノズル(41)をボディ(46)の中にインサート成形できるようにしたものである。
【0016】
この請求項7に記載の発明によれば、ノズル(41)は金属製となるが、ボディ(46)とノズル(41)以外の部材、例えば上記したインサートするための金属部材(44、45、47)が不要となるうえ、インサート整形したボディ(46)とノズル(41)とを圧入結合させる工程も不要となって製造工程が簡単になることより、エジェクタ(40)の製造原価の低減が可能となる。
【0017】
なお、特許請求の範囲および上記各手段に記載の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態について添付した図1ないし図3を用いて詳細に説明する。図1は、本発明の実施形態に係るエジェクタ式冷凍サイクルの模式図であり、図2は、図1のエジェクタ式冷凍サイクルのp−h線図である。そして図3は、本発明の第1実施形態におけるエジェクタ40Bの模式図である。
【0019】
本実施形態は、本発明に係るエジェクタ40を車両用空調装置のエジェクタ式冷凍サイクルに適用したものであり、作動流体として本実施形態では二酸化炭素冷媒を用いている。圧縮機10は、図示しない車両走行用エンジンから動力を得て冷媒を吸入圧縮する周知の可変容量型などの圧縮機10である。
【0020】
放熱器20は、圧縮機10から吐出される冷媒と車外空気(外気)とを熱交換して冷媒を冷却する高圧側熱交換器である。また、蒸発器30は、車室内に吹き出す空気と気液二相冷媒とを熱交換させて気液二相冷媒を蒸発させることによって車室内に吹き出す空気を冷却する低圧側熱交換器である。また、エジェクタ40は、冷媒を減圧膨張させて蒸発器30にて蒸発した気相冷媒を吸引するとともに、膨張エネルギーを圧力エネルギーに変換して圧縮機10の吸入圧を上昇させるものである。
【0021】
そして、エジェクタ40は、図1に示すように、流入する高圧冷媒の圧力エネルギーを速度エネルギーに変換して冷媒を等エントロピ的に減圧膨張させるノズル41、ノズル41から噴射する高い速度の冷媒流により蒸発器30にて蒸発した気相冷媒を吸引しながら、ノズル41から噴射する冷媒流とを混合する混合部42、およびノズル41から噴射する冷媒と蒸発器30から吸引した冷媒とを混合させながら速度エネルギーを圧力エネルギーに変換して冷媒の圧力を昇圧させるディフューザ部43などからなるものである。
【0022】
このとき、混合部42においては、駆動流の運動量と吸引流の運動量との和が保存されるように駆動流と吸引流とが混合するので、混合部42においても冷媒の圧力が(静圧)が上昇する。一方、ディフューザ部43においては、通路断面積を徐々に拡大することにより、冷媒の速度エネルギ(動圧)を圧力エネルギ(静圧)に変換するので、エジェクタ40においては、混合部42およびディフューザ部43の両者にて冷媒圧力を昇圧する。
【0023】
そこで、以下、混合部42とディフューザ部43とを総称して昇圧部と呼ぶ。本実施形態では、ノズル41から噴出する冷媒の速度を音速以上まで加速するために、通路途中に通路面積が最も縮小した喉部411(図11参照)を有するラバールノズル(流体工学(東京大学出版会)参照)を採用しているが、勿論、先細ノズルを採用しても良いことは言うまでもない。
【0024】
また、図1中の気液分離器50は、エジェクタ40から流出した冷媒が流入するとともに、その流入した冷媒を気相冷媒と液相冷媒とに分離して液相冷媒を蓄える気液分離手段であり、気液分離器50の気相冷媒流出口は圧縮機10の吸引側に接続され、液相冷媒流出口は蒸発器30の流入側に接続される。絞り60は、気液分離器50から流出した液相冷媒を減圧する減圧手段である。
【0025】
そして、本実施形態では、図2に示すように、圧縮機10にてノズル41に流入する高圧の冷媒を冷媒の臨界圧力以上まで昇圧させている。図2に●で示される符号は、図1に●で示される符号位置における冷媒の状態を示すものである。次に、エジェクタ式冷凍サイクルの概略作動を述べる(図2参照)。
【0026】
圧縮機10から吐出される冷媒は、放熱器20側に循環される。これにより、放熱器20にて冷却された冷媒は、エジェクタ40のノズル41にて等エントロピ的に減圧膨張して、音速以上の速度で混合部42内に流入する。そして、混合部42に流入した高速冷媒の巻き込み作用に伴うポンプ作用により、蒸発器30内で蒸発した冷媒が混合部42内に吸引される。
【0027】
このため、低圧側の冷媒が気液分離器50→絞り60→蒸発器30→エジェクタ40(昇圧部)→気液分離器50の順に循環する。一方、蒸発器30から吸引された冷媒(吸引流)とノズル41から吹き出す冷媒(駆動流)とは、混合部42にて混合しながらディフューザ部43にてその動圧が静圧に変換されて気液分離器50に戻る。
【0028】
次に、図3を用いて、本実施形態のエジェクタ40Bの具体的な構造について説明する。本実施形態のエジェクタ40Bは、樹脂で形成したボディ46Bの中に、従来と同様に金属で形成したノズル41を圧入して構成したものである。ボディ46Bは、例えばフェノール樹脂を射出成形して形成するとともに、ノズル41を保持する部分には金属製のボディ内側インサート(本発明で言う金属部材)47をインサート成形している。
【0029】
ボディ内側インサート47の外周面の樹脂材と接合する部分には、樹脂材とのずれの発生を防止するための凹部(本発明で言うずれ防止形状)48を複数箇所形成している。なお、このずれ防止形状は、例えばインサートの外周面に施したローレット加工などでも良く、形状を限定するものではない。
【0030】
ノズル41は、ステンレスなどの金属部材を放電加工やワイヤーカットして製造したものであっても良いし、金属(例えば、ステンレス)製の粉体を金型内に充填してノズル41の形状を圧縮成形した後、高温や高圧で焼結したいわゆる焼結金属にてノズルを製造したものであっても良い。
【0031】
次に、本実施形態での特徴と、その効果について述べる。まず、ボディ46の主要構造部が樹脂材にて形成されている。エジェクタ式冷凍サイクル用のエジェクタ40では、ボディ46の昇圧部42、43においてノズル41から噴射する冷媒と蒸発器30から吸引した冷媒とを混合させながら速度エネルギーを圧力エネルギーに変換するので、昇圧部42、43の内壁形状はノズル41の内壁形状と同様に高い加工精度を必要とする。
【0032】
このため、従来一般的には、切削加工にて昇圧部42、43を製造している。このような従来に比べて、ボディ46Bとして主要構造部を樹脂で形成することにより、エジェクタ40Bの製造原価の低減が可能となる。また、エジェクタ40B全体を軽量化することができる。
【0033】
また、ボディ46Bを樹脂材で形成しているとともに、ノズル41を保持する部分にボディ内側インサート47をインサート成形している。これによれば、ボディ46Bを樹脂化した場合においてもノズル41を保持する部分にボディ内側インサート47をインサートすることによって圧入後の保持力を確保できるようになり、軸方向の位置ずれ、同軸度の悪化、作動流体の洩れ、ノズル41がボディ46Bから脱落するという問題を防ぐことができる。
【0034】
また、ボディ内側インサート47の樹脂材と接合する部分にずれ防止形状としての凹部48を備えている。これによれば、樹脂材で形成したボディ46Bに対してボディ内側インサート47がずれるのを防ぐことができ、混合部42に対するノズル41の同軸度を確保することが容易となる。
【0035】
(第2実施形態)
図4は、本発明の第2実施形態におけるエジェクタ40Cの模式図である。なお、以降の各実施形態では、上述した第1実施形態と同様の構成要素については同じ符号を付して説明を省略し、上述した実施形態と異なる特徴部分について説明する。本実施形態のエジェクタ40Cは、従来と同様に金属で形成したボディ46の中に、樹脂で形成したノズル41Bを圧入して構成したものである。
【0036】
ノズル41Bは、例えばフェノール樹脂を射出成形して形成するとともに、ボディ46に保持される部分には金属製のノズル外側インサート(本発明で言う金属部材)45をインサート成形し、駆動流の路路部分には駆動流部インサート(本発明で言う金属部材)44Aをインサート成形している。
【0037】
また、ノズル外側インサート45の内周面および駆動流部インサート44外周面の樹脂材と接合する部分には、第1実施形態と同様に樹脂材とのずれの発生を防止するための凹部48を複数箇所形成している。このずれ防止形状は、以降の各実施形態においても、樹脂材中にインサート成形する金属部材については同様に施すものである。ボディ46は、ステンレスなどの金属部材を切削加工して製造したものであっても良いし、金属(例えば、ステンレス)製の管材に塑性加工を施すことによって製造したものであっても良い。
【0038】
次に、本実施形態での特徴と、その効果について述べる。まず、ノズル41の主要構造部が樹脂材にて形成されている。エジェクタ40のノズル41は、作動流体を減圧して流体を加速するものであり、作動流に晒される内壁形状は高い加工精度、つまり高い寸法精度および所定の面粗度を必要とする。このため、従来一般的には、放電加工やワイヤーカットにてノズル41を製造している。
【0039】
このような従来に比べて、ノズル41Bの主要構造部を樹脂で形成することにより、エジェクタ40の製造原価の低減が可能となる。また、エジェクタ40C全体を軽量化することができる。
【0040】
また、ノズル41Bを樹脂材で形成しているとともに、ボディ46に保持される部分にノズル外側インサート45をインサート成形、および駆動流の路路部分に駆動流部インサート44をインサート成形している。これによれば、ノズル41Bを樹脂化した場合においてもボディ46に保持される部分にノズル外側インサート45をインサートすることによって圧入後の保持力を確保できるようになり、軸方向の位置ずれ、同軸度の悪化、作動流体の洩れ、ノズル41Bがボディ46から脱落するという問題を防ぐことができる。
【0041】
また、ノズル41Bを樹脂化した場合、特に喉部411以降の部分(図11中のA2部)は流体が高速で流れるため、樹脂のように硬度の低い材料では流体摩擦によって磨耗を生じて最適形状からはずれ、性能低下を引き起こしてしまうという問題が起こりうる。しかし、これによれば、駆動流路路部分の高い寸法精度および所定の面粗度を確保することができる。
【0042】
(第3実施形態)
図5は、本発明の第3実施形態におけるエジェクタ40Dの模式図である。本実施形態のエジェクタ40Dは、樹脂で形成したボディ46Bの中に、樹脂で形成したノズル41Bを圧入して構成したものである。ボディ46Bは、第1実施形態と同様に樹脂材で形成しているとともに、ノズル41Bを保持する部分には金属製のボディ内側インサート(本発明で言う金属部材)47をインサート成形している。
【0043】
また、ノズル41Bは、第2実施形態と同様に樹脂材で形成しているとともに、ボディ46Bに保持される部分には金属製のノズル外側インサート45をインサート成形し、駆動流の路路部分には駆動流部インサート44Aをインサート成形している。このように、ボディ46とノズル41との両方の主要構造部を樹脂材にて形成している。これにより、エジェクタ40D全体をさらに軽量化することができる。
【0044】
(第4実施形態)
図6は、本発明の第4実施形態におけるエジェクタ40Eの模式図である。上述した第3実施形態と異なる特徴部分を説明する。本実施形態では、樹脂で形成するノズル41Cにおいて、駆動流部インサート44Bを喉部411以降の部分だけにしたものである。これによれば、駆動流部インサート44Bの加工が少なくて済むことよりエジェクタ40Eの製造原価のさらなる低減が可能となる。また、エジェクタ40E全体をさらに軽量化することができる。
【0045】
(第5実施形態)
図7は、本発明の第5実施形態におけるエジェクタ40Fの模式図である。上述した各実施形態と異なる特徴部分を説明する。本実施形態では、樹脂で形成するノズル41Dにおいて、駆動流部インサート44Cを塑性加工にて形成している。図8は、塑性加工しただけのノズル44Cを用いた場合の問題点を説明するエジェクタ40Gの模式図である。
【0046】
このように、塑性加工で製造されたノズル44Cをそのまま使った場合、流路に沿ってほぼ均一な板厚のノズル外形が形成されるため、吸引流路で、ノズル44Cの外形が大きくなっていくのに従って圧損が大きくなり(図8中のA3部)、エジェクタ性能が低下する。これに対して、ノズル41Dの駆動流流路部を塑性加工した金属の駆動流部インサート44Cをインサート成形すれば、この問題は解決される。
【0047】
なお、この駆動流部インサート44Cを塑性加工する方法として、管材にスエージング加工、プレス加工、スピニング加工およびへら絞り加工など(JIS B 0122参照)を施す方法がある。これによれば、高い加工精度を維持しながら、短時間にて駆動流路路部分を製造することができるので、エジェクタ40Fの製造原価の低減が可能となる。
【0048】
(第6実施形態)
図9は、本発明の第6実施形態におけるエジェクタ40Hの模式図である。上述した各実施形態と異なる特徴部分を説明する。本実施形態では、樹脂材で形成するボディ46Aの中に、金属製のノズル41をインサート成形したものである。これは、吸引部のテーパを無くして、樹脂製のボディ46Aを成形する際に従来と同様に金属で形成したノズル41をボディ46Aの中にインサート成形できるようにしたものである。
【0049】
図10の(a)は、図5〜7のエジェクタ40D〜Fの製造工程図であり、(b)は図9のエジェクタ40Hの製造工程図である。この工程図での比較から分かるように、圧入を前提としたエジェクタ40D〜Fでは、ボディのインサート成形(P1)、ノズル駆動流管部の切削(もしくは塑性)加工(P2)とインサート成形(P3)、最後にボディとノズルとの圧入組み付け(P4)と4つの製造工程が必要なる。これに対して、インサート成形を前提としたエジェクタ40Hでは、ノズル41の切削加工(P1)とインサート成形(P2)だけで、製造工程が大変簡素になることが分かる。
【0050】
これによれば、ノズル41は金属製となるが、ボディ46Aとノズル41以外の部材、例えば上記したインサート成形する駆動流部インサート44、ノズル外側インサート45、ボディ内側インサート47が不要となるうえ、インサート整形したボディ46とノズル41とを圧入結合させる工程も不要となって製造工程が簡単になることより、エジェクタ40の製造原価の低減が可能となる。
【0051】
(その他の実施形態)
上述の実施形態では、気液分離器50から流出する液相冷媒を蒸発器30で蒸発させてからエジェクタ40に吸引させる冷凍サイクルとなっているが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、放熱器20とエジェクタ40との間で冷媒流れを分岐して、この冷媒流れをエジェクタ40に吸引させるように導く図示しない分岐循環路とし、この分岐循環路に蒸発器30を配置したものであっても良い。
【0052】
また、エジェクタ40の冷媒吐出側に、冷媒を蒸発させて冷却能力を発揮する第2の蒸発器部を配設した冷凍サイクルであっても良い。また、上述の実施形態では、固定絞り開度のエジェクタ40であったが、図示しないニードルにてノズル41の絞り開度を可変制御する可変式エジェクタとして構成しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の実施形態に係るエジェクタ式冷凍サイクルの模式図である。
【図2】図1のエジェクタ式冷凍サイクルのp−h線図である。
【図3】本発明の第1実施形態におけるエジェクタ40Bの模式図である。
【図4】本発明の第2実施形態におけるエジェクタ40Cの模式図である。
【図5】本発明の第3実施形態におけるエジェクタ40Dの模式図である。
【図6】本発明の第4実施形態におけるエジェクタ40Eの模式図である。
【図7】本発明の第5実施形態におけるエジェクタ40Fの模式図である。
【図8】塑性加工しただけのノズル44Cを用いた場合の問題点を説明するエジェクタ40Gの模式図である。
【図9】本発明の第6実施形態におけるエジェクタ40Hの模式図である。
【図10】(a)は図5〜7のエジェクタ40D〜Fの製造工程図、(b)は図9のエジェクタ40Hの製造工程図である。
【図11】従来のエジェクタ構造にて樹脂化した場合の問題点を説明するエジェクタ40Aの模式図である。
【符号の説明】
【0054】
41…ノズル
44…駆動流部インサート(金属部材)
45…ノズル外側インサート(金属部材)
46…ボディ
47…ボディ内側インサート(金属部材)
48…凹部(ずれ防止形状)
【技術分野】
【0001】
本発明は、高速で噴出する作動流体の巻き込み作用によって流体輸送を行う運動量輸送式ポンプであるエジェクタ(JIS Z 8126 番号2.1.2.3等参照)に関するものであり、冷媒を循環させるポンプ手段としてエジェクタを採用した冷凍装置(以下、エジェクタ式冷凍サイクルという。)に適用して有効である。
【背景技術】
【0002】
エジェクタの製造原価低減を図った従来技術として、下記特許文献1がある。これは、ノズルを焼結金属製にするとともに、昇圧部(混合部およびディフューザ部)を金属製の管材に塑性加工を施すことによって製造している。
【特許文献1】特開2003−326196号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
エジェクタ性能に大きく影響する要因として混合部に対するノズルの同軸度があり、この同軸度を管理するには混合部を含む昇圧部とノズルを保持する吸引部とが一体で作れることが望ましい。しかしながら、上記した従来技術の場合、吸引部は吸引口が一方向に出て周方向に不均一な形状となるため、吸引部と昇圧部とを一体で塑性加工することができないという問題点がある。
【0004】
本発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目して成されたものであり、その目的は、製造原価を低減することのできる新規なエジェクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記目的を達成するために、下記の技術的手段を採用する。すなわち、請求項1に記載の発明では、ボディ(46)内に配置されたノズル(41)から高速で噴出する作動流体の巻き込み作用によって流体輸送を行う運動量輸送式ポンプであるエジェクタであり、ボディ(46)もしくはノズル(41)の主要構造部が樹脂材にて形成されていることを特徴としている。
【0006】
エジェクタ(40)のノズル(41)は、作動流体を減圧して流体を加速するものであり、作動流に晒される内壁形状は高い加工精度、つまり高い寸法精度および所定の面粗度を必要とする。また、エジェクタ式冷凍サイクル用のエジェクタ(40)では、昇圧部(42、43)においてノズル(41)から噴射する冷媒と蒸発器(30)から吸引した冷媒とを混合させながら速度エネルギーを圧力エネルギーに変換するので、昇圧部(42、43)の内壁形状もノズル(41)の内壁形状と同様に高い加工精度を必要とする。
【0007】
このため、従来一般的には、放電加工やワイヤーカットにてノズル(41)を製造し、切削加工にて昇圧部(42、43)を製造している。このような従来に比べて、ボディ(46)もしくはノズル(41)の主要構造部を樹脂で形成することにより、エジェクタ(40)の製造原価の低減が可能となる。
【0008】
また、請求項2に記載の発明では、請求項1に記載のエジェクタにおいて、ボディ(46)を樹脂材で形成しているとともに、ノズル(41)を保持する部分に金属部材(47)をインサート成形していることを特徴としている。図11は、従来のエジェクタ構造にてボディ(46A)もノズル(41A)も樹脂化した場合の問題点を説明するエジェクタ(40A)の模式図である。
【0009】
従来の金属製のエジェクタ(40)のように、樹脂製のボディ(46A)に樹脂製のノズル(41A)を圧入保持させようとすると、圧入部A1にて樹脂材がクリープを起こして保持力が弱くなり、軸方向の位置ずれ、同軸度の悪化、作動流体の洩れ、最悪の場合にはノズル(41A)がボディ(46A)から脱落するという問題が起こりうる。
【0010】
しかし、請求項2に記載の発明によれば、ボディ(46)を樹脂化した場合においてもノズル(41)を保持する部分に金属部材(47)をインサートすることによって圧入後の保持力を確保できるようになり、軸方向の位置ずれ、同軸度の悪化、作動流体の洩れ、ノズル(41A)がボディ(46A)から脱落するという問題を防ぐことができる。
【0011】
また、請求項3に記載の発明では、請求項1に記載のエジェクタにおいて、ノズル(41)を樹脂材で形成しているとともに、ボディ(46)に保持される部分に金属部材(45)をインサート成形していることを特徴としている。この請求項3に記載の発明によれば、ノズル(41)を樹脂化した場合においてもボディ(46)に保持される部分に金属部材(45)をインサートすることによって圧入後の保持力を確保できるようになり、軸方向の位置ずれ、同軸度の悪化、作動流体の洩れ、ノズル(41A)がボディ(46A)から脱落するという問題を防ぐことができる。
【0012】
また、請求項4に記載の発明では、請求項1に記載のエジェクタにおいて、ノズル(41)を樹脂材で形成しているとともに、駆動流の路路部分に金属部材(44)をインサート成形していることを特徴としている。ノズル(41)を樹脂化した場合、特に喉部(411)以降の部分(図11中のA2部)は流体が高速で流れるため、樹脂のように硬度の低い材料では流体摩擦によって磨耗を生じて最適形状からはずれ、性能低下を引き起こしてしまうという問題が起こりうる。しかし、請求項4に記載の発明によれば、駆動流路路部分の高い寸法精度および所定の面粗度を確保することができる。
【0013】
また、請求項5に記載の発明では、請求項4に記載のエジェクタにおいて、金属部材(44)を塑性加工にて形成していることを特徴としている。なお、駆動流路路部分の金属部材(44)を塑性加工する方法として、管材にスエージング加工、プレス加工、スピニング加工およびへら絞り加工など(JIS B 0122参照)を施す方法がある。この請求項5に記載の発明によれば、高い加工精度を維持しながら、短時間にて駆動流路路部分を製造することができるので、エジェクタ(40)の製造原価の低減が可能となる。
【0014】
また、請求項6に記載の発明では、請求項2ないし請求項5のうちいずれか1項に記載のエジェクタにおいて、金属部材(44、45、47)の樹脂材と接合する部分にずれ防止形状(48)を備えていることを特徴としている。この請求項6に記載の発明によれば、樹脂材で形成したボディ(46)やノズル(41)に対して金属部材(44、45、47)がずれるのを防ぐことができ、混合部(42)に対するノズル(41)の同軸度を確保することが容易となる。
【0015】
また、請求項7に記載の発明では、請求項1に記載のエジェクタにおいて、樹脂材で形成するボディ(46)の中に、金属製のノズル(41)をインサート成形していることを特徴としている。これは、吸引部のテーパを無くして、樹脂製のボディ(46)を成形する際に金属製のノズル(41)をボディ(46)の中にインサート成形できるようにしたものである。
【0016】
この請求項7に記載の発明によれば、ノズル(41)は金属製となるが、ボディ(46)とノズル(41)以外の部材、例えば上記したインサートするための金属部材(44、45、47)が不要となるうえ、インサート整形したボディ(46)とノズル(41)とを圧入結合させる工程も不要となって製造工程が簡単になることより、エジェクタ(40)の製造原価の低減が可能となる。
【0017】
なお、特許請求の範囲および上記各手段に記載の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態について添付した図1ないし図3を用いて詳細に説明する。図1は、本発明の実施形態に係るエジェクタ式冷凍サイクルの模式図であり、図2は、図1のエジェクタ式冷凍サイクルのp−h線図である。そして図3は、本発明の第1実施形態におけるエジェクタ40Bの模式図である。
【0019】
本実施形態は、本発明に係るエジェクタ40を車両用空調装置のエジェクタ式冷凍サイクルに適用したものであり、作動流体として本実施形態では二酸化炭素冷媒を用いている。圧縮機10は、図示しない車両走行用エンジンから動力を得て冷媒を吸入圧縮する周知の可変容量型などの圧縮機10である。
【0020】
放熱器20は、圧縮機10から吐出される冷媒と車外空気(外気)とを熱交換して冷媒を冷却する高圧側熱交換器である。また、蒸発器30は、車室内に吹き出す空気と気液二相冷媒とを熱交換させて気液二相冷媒を蒸発させることによって車室内に吹き出す空気を冷却する低圧側熱交換器である。また、エジェクタ40は、冷媒を減圧膨張させて蒸発器30にて蒸発した気相冷媒を吸引するとともに、膨張エネルギーを圧力エネルギーに変換して圧縮機10の吸入圧を上昇させるものである。
【0021】
そして、エジェクタ40は、図1に示すように、流入する高圧冷媒の圧力エネルギーを速度エネルギーに変換して冷媒を等エントロピ的に減圧膨張させるノズル41、ノズル41から噴射する高い速度の冷媒流により蒸発器30にて蒸発した気相冷媒を吸引しながら、ノズル41から噴射する冷媒流とを混合する混合部42、およびノズル41から噴射する冷媒と蒸発器30から吸引した冷媒とを混合させながら速度エネルギーを圧力エネルギーに変換して冷媒の圧力を昇圧させるディフューザ部43などからなるものである。
【0022】
このとき、混合部42においては、駆動流の運動量と吸引流の運動量との和が保存されるように駆動流と吸引流とが混合するので、混合部42においても冷媒の圧力が(静圧)が上昇する。一方、ディフューザ部43においては、通路断面積を徐々に拡大することにより、冷媒の速度エネルギ(動圧)を圧力エネルギ(静圧)に変換するので、エジェクタ40においては、混合部42およびディフューザ部43の両者にて冷媒圧力を昇圧する。
【0023】
そこで、以下、混合部42とディフューザ部43とを総称して昇圧部と呼ぶ。本実施形態では、ノズル41から噴出する冷媒の速度を音速以上まで加速するために、通路途中に通路面積が最も縮小した喉部411(図11参照)を有するラバールノズル(流体工学(東京大学出版会)参照)を採用しているが、勿論、先細ノズルを採用しても良いことは言うまでもない。
【0024】
また、図1中の気液分離器50は、エジェクタ40から流出した冷媒が流入するとともに、その流入した冷媒を気相冷媒と液相冷媒とに分離して液相冷媒を蓄える気液分離手段であり、気液分離器50の気相冷媒流出口は圧縮機10の吸引側に接続され、液相冷媒流出口は蒸発器30の流入側に接続される。絞り60は、気液分離器50から流出した液相冷媒を減圧する減圧手段である。
【0025】
そして、本実施形態では、図2に示すように、圧縮機10にてノズル41に流入する高圧の冷媒を冷媒の臨界圧力以上まで昇圧させている。図2に●で示される符号は、図1に●で示される符号位置における冷媒の状態を示すものである。次に、エジェクタ式冷凍サイクルの概略作動を述べる(図2参照)。
【0026】
圧縮機10から吐出される冷媒は、放熱器20側に循環される。これにより、放熱器20にて冷却された冷媒は、エジェクタ40のノズル41にて等エントロピ的に減圧膨張して、音速以上の速度で混合部42内に流入する。そして、混合部42に流入した高速冷媒の巻き込み作用に伴うポンプ作用により、蒸発器30内で蒸発した冷媒が混合部42内に吸引される。
【0027】
このため、低圧側の冷媒が気液分離器50→絞り60→蒸発器30→エジェクタ40(昇圧部)→気液分離器50の順に循環する。一方、蒸発器30から吸引された冷媒(吸引流)とノズル41から吹き出す冷媒(駆動流)とは、混合部42にて混合しながらディフューザ部43にてその動圧が静圧に変換されて気液分離器50に戻る。
【0028】
次に、図3を用いて、本実施形態のエジェクタ40Bの具体的な構造について説明する。本実施形態のエジェクタ40Bは、樹脂で形成したボディ46Bの中に、従来と同様に金属で形成したノズル41を圧入して構成したものである。ボディ46Bは、例えばフェノール樹脂を射出成形して形成するとともに、ノズル41を保持する部分には金属製のボディ内側インサート(本発明で言う金属部材)47をインサート成形している。
【0029】
ボディ内側インサート47の外周面の樹脂材と接合する部分には、樹脂材とのずれの発生を防止するための凹部(本発明で言うずれ防止形状)48を複数箇所形成している。なお、このずれ防止形状は、例えばインサートの外周面に施したローレット加工などでも良く、形状を限定するものではない。
【0030】
ノズル41は、ステンレスなどの金属部材を放電加工やワイヤーカットして製造したものであっても良いし、金属(例えば、ステンレス)製の粉体を金型内に充填してノズル41の形状を圧縮成形した後、高温や高圧で焼結したいわゆる焼結金属にてノズルを製造したものであっても良い。
【0031】
次に、本実施形態での特徴と、その効果について述べる。まず、ボディ46の主要構造部が樹脂材にて形成されている。エジェクタ式冷凍サイクル用のエジェクタ40では、ボディ46の昇圧部42、43においてノズル41から噴射する冷媒と蒸発器30から吸引した冷媒とを混合させながら速度エネルギーを圧力エネルギーに変換するので、昇圧部42、43の内壁形状はノズル41の内壁形状と同様に高い加工精度を必要とする。
【0032】
このため、従来一般的には、切削加工にて昇圧部42、43を製造している。このような従来に比べて、ボディ46Bとして主要構造部を樹脂で形成することにより、エジェクタ40Bの製造原価の低減が可能となる。また、エジェクタ40B全体を軽量化することができる。
【0033】
また、ボディ46Bを樹脂材で形成しているとともに、ノズル41を保持する部分にボディ内側インサート47をインサート成形している。これによれば、ボディ46Bを樹脂化した場合においてもノズル41を保持する部分にボディ内側インサート47をインサートすることによって圧入後の保持力を確保できるようになり、軸方向の位置ずれ、同軸度の悪化、作動流体の洩れ、ノズル41がボディ46Bから脱落するという問題を防ぐことができる。
【0034】
また、ボディ内側インサート47の樹脂材と接合する部分にずれ防止形状としての凹部48を備えている。これによれば、樹脂材で形成したボディ46Bに対してボディ内側インサート47がずれるのを防ぐことができ、混合部42に対するノズル41の同軸度を確保することが容易となる。
【0035】
(第2実施形態)
図4は、本発明の第2実施形態におけるエジェクタ40Cの模式図である。なお、以降の各実施形態では、上述した第1実施形態と同様の構成要素については同じ符号を付して説明を省略し、上述した実施形態と異なる特徴部分について説明する。本実施形態のエジェクタ40Cは、従来と同様に金属で形成したボディ46の中に、樹脂で形成したノズル41Bを圧入して構成したものである。
【0036】
ノズル41Bは、例えばフェノール樹脂を射出成形して形成するとともに、ボディ46に保持される部分には金属製のノズル外側インサート(本発明で言う金属部材)45をインサート成形し、駆動流の路路部分には駆動流部インサート(本発明で言う金属部材)44Aをインサート成形している。
【0037】
また、ノズル外側インサート45の内周面および駆動流部インサート44外周面の樹脂材と接合する部分には、第1実施形態と同様に樹脂材とのずれの発生を防止するための凹部48を複数箇所形成している。このずれ防止形状は、以降の各実施形態においても、樹脂材中にインサート成形する金属部材については同様に施すものである。ボディ46は、ステンレスなどの金属部材を切削加工して製造したものであっても良いし、金属(例えば、ステンレス)製の管材に塑性加工を施すことによって製造したものであっても良い。
【0038】
次に、本実施形態での特徴と、その効果について述べる。まず、ノズル41の主要構造部が樹脂材にて形成されている。エジェクタ40のノズル41は、作動流体を減圧して流体を加速するものであり、作動流に晒される内壁形状は高い加工精度、つまり高い寸法精度および所定の面粗度を必要とする。このため、従来一般的には、放電加工やワイヤーカットにてノズル41を製造している。
【0039】
このような従来に比べて、ノズル41Bの主要構造部を樹脂で形成することにより、エジェクタ40の製造原価の低減が可能となる。また、エジェクタ40C全体を軽量化することができる。
【0040】
また、ノズル41Bを樹脂材で形成しているとともに、ボディ46に保持される部分にノズル外側インサート45をインサート成形、および駆動流の路路部分に駆動流部インサート44をインサート成形している。これによれば、ノズル41Bを樹脂化した場合においてもボディ46に保持される部分にノズル外側インサート45をインサートすることによって圧入後の保持力を確保できるようになり、軸方向の位置ずれ、同軸度の悪化、作動流体の洩れ、ノズル41Bがボディ46から脱落するという問題を防ぐことができる。
【0041】
また、ノズル41Bを樹脂化した場合、特に喉部411以降の部分(図11中のA2部)は流体が高速で流れるため、樹脂のように硬度の低い材料では流体摩擦によって磨耗を生じて最適形状からはずれ、性能低下を引き起こしてしまうという問題が起こりうる。しかし、これによれば、駆動流路路部分の高い寸法精度および所定の面粗度を確保することができる。
【0042】
(第3実施形態)
図5は、本発明の第3実施形態におけるエジェクタ40Dの模式図である。本実施形態のエジェクタ40Dは、樹脂で形成したボディ46Bの中に、樹脂で形成したノズル41Bを圧入して構成したものである。ボディ46Bは、第1実施形態と同様に樹脂材で形成しているとともに、ノズル41Bを保持する部分には金属製のボディ内側インサート(本発明で言う金属部材)47をインサート成形している。
【0043】
また、ノズル41Bは、第2実施形態と同様に樹脂材で形成しているとともに、ボディ46Bに保持される部分には金属製のノズル外側インサート45をインサート成形し、駆動流の路路部分には駆動流部インサート44Aをインサート成形している。このように、ボディ46とノズル41との両方の主要構造部を樹脂材にて形成している。これにより、エジェクタ40D全体をさらに軽量化することができる。
【0044】
(第4実施形態)
図6は、本発明の第4実施形態におけるエジェクタ40Eの模式図である。上述した第3実施形態と異なる特徴部分を説明する。本実施形態では、樹脂で形成するノズル41Cにおいて、駆動流部インサート44Bを喉部411以降の部分だけにしたものである。これによれば、駆動流部インサート44Bの加工が少なくて済むことよりエジェクタ40Eの製造原価のさらなる低減が可能となる。また、エジェクタ40E全体をさらに軽量化することができる。
【0045】
(第5実施形態)
図7は、本発明の第5実施形態におけるエジェクタ40Fの模式図である。上述した各実施形態と異なる特徴部分を説明する。本実施形態では、樹脂で形成するノズル41Dにおいて、駆動流部インサート44Cを塑性加工にて形成している。図8は、塑性加工しただけのノズル44Cを用いた場合の問題点を説明するエジェクタ40Gの模式図である。
【0046】
このように、塑性加工で製造されたノズル44Cをそのまま使った場合、流路に沿ってほぼ均一な板厚のノズル外形が形成されるため、吸引流路で、ノズル44Cの外形が大きくなっていくのに従って圧損が大きくなり(図8中のA3部)、エジェクタ性能が低下する。これに対して、ノズル41Dの駆動流流路部を塑性加工した金属の駆動流部インサート44Cをインサート成形すれば、この問題は解決される。
【0047】
なお、この駆動流部インサート44Cを塑性加工する方法として、管材にスエージング加工、プレス加工、スピニング加工およびへら絞り加工など(JIS B 0122参照)を施す方法がある。これによれば、高い加工精度を維持しながら、短時間にて駆動流路路部分を製造することができるので、エジェクタ40Fの製造原価の低減が可能となる。
【0048】
(第6実施形態)
図9は、本発明の第6実施形態におけるエジェクタ40Hの模式図である。上述した各実施形態と異なる特徴部分を説明する。本実施形態では、樹脂材で形成するボディ46Aの中に、金属製のノズル41をインサート成形したものである。これは、吸引部のテーパを無くして、樹脂製のボディ46Aを成形する際に従来と同様に金属で形成したノズル41をボディ46Aの中にインサート成形できるようにしたものである。
【0049】
図10の(a)は、図5〜7のエジェクタ40D〜Fの製造工程図であり、(b)は図9のエジェクタ40Hの製造工程図である。この工程図での比較から分かるように、圧入を前提としたエジェクタ40D〜Fでは、ボディのインサート成形(P1)、ノズル駆動流管部の切削(もしくは塑性)加工(P2)とインサート成形(P3)、最後にボディとノズルとの圧入組み付け(P4)と4つの製造工程が必要なる。これに対して、インサート成形を前提としたエジェクタ40Hでは、ノズル41の切削加工(P1)とインサート成形(P2)だけで、製造工程が大変簡素になることが分かる。
【0050】
これによれば、ノズル41は金属製となるが、ボディ46Aとノズル41以外の部材、例えば上記したインサート成形する駆動流部インサート44、ノズル外側インサート45、ボディ内側インサート47が不要となるうえ、インサート整形したボディ46とノズル41とを圧入結合させる工程も不要となって製造工程が簡単になることより、エジェクタ40の製造原価の低減が可能となる。
【0051】
(その他の実施形態)
上述の実施形態では、気液分離器50から流出する液相冷媒を蒸発器30で蒸発させてからエジェクタ40に吸引させる冷凍サイクルとなっているが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、放熱器20とエジェクタ40との間で冷媒流れを分岐して、この冷媒流れをエジェクタ40に吸引させるように導く図示しない分岐循環路とし、この分岐循環路に蒸発器30を配置したものであっても良い。
【0052】
また、エジェクタ40の冷媒吐出側に、冷媒を蒸発させて冷却能力を発揮する第2の蒸発器部を配設した冷凍サイクルであっても良い。また、上述の実施形態では、固定絞り開度のエジェクタ40であったが、図示しないニードルにてノズル41の絞り開度を可変制御する可変式エジェクタとして構成しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の実施形態に係るエジェクタ式冷凍サイクルの模式図である。
【図2】図1のエジェクタ式冷凍サイクルのp−h線図である。
【図3】本発明の第1実施形態におけるエジェクタ40Bの模式図である。
【図4】本発明の第2実施形態におけるエジェクタ40Cの模式図である。
【図5】本発明の第3実施形態におけるエジェクタ40Dの模式図である。
【図6】本発明の第4実施形態におけるエジェクタ40Eの模式図である。
【図7】本発明の第5実施形態におけるエジェクタ40Fの模式図である。
【図8】塑性加工しただけのノズル44Cを用いた場合の問題点を説明するエジェクタ40Gの模式図である。
【図9】本発明の第6実施形態におけるエジェクタ40Hの模式図である。
【図10】(a)は図5〜7のエジェクタ40D〜Fの製造工程図、(b)は図9のエジェクタ40Hの製造工程図である。
【図11】従来のエジェクタ構造にて樹脂化した場合の問題点を説明するエジェクタ40Aの模式図である。
【符号の説明】
【0054】
41…ノズル
44…駆動流部インサート(金属部材)
45…ノズル外側インサート(金属部材)
46…ボディ
47…ボディ内側インサート(金属部材)
48…凹部(ずれ防止形状)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボディ(46)内に配置されたノズル(41)から高速で噴出する作動流体の巻き込み作用によって流体輸送を行う運動量輸送式ポンプであるエジェクタであり、
前記ボディ(46)もしくは前記ノズル(41)の主要構造部が樹脂材にて形成されていることを特徴とするエジェクタ。
【請求項2】
前記ボディ(46)を樹脂材で形成しているとともに、前記ノズル(41)を保持する部分に金属部材(47)をインサート成形していることを特徴とする請求項1に記載のエジェクタ。
【請求項3】
前記ノズル(41)を樹脂材で形成しているとともに、前記ボディ(46)に保持される部分に金属部材(45)をインサート成形していることを特徴とする請求項1に記載のエジェクタ。
【請求項4】
前記ノズル(41)を樹脂材で形成しているとともに、駆動流の路路部分に金属部材(44)をインサート成形していることを特徴とする請求項1に記載のエジェクタ。
【請求項5】
前記金属部材(44)を塑性加工にて形成していることを特徴とする請求項4に記載のエジェクタ。
【請求項6】
前記金属部材(44、45、47)の樹脂材と接合する部分にずれ防止形状(48)を備えていることを特徴とする請求項2ないし請求項5のうちいずれか1項に記載のエジェクタ。
【請求項7】
樹脂材で形成する前記ボディ(46)の中に、金属製の前記ノズル(41)をインサート成形していることを特徴とする請求項1に記載のエジェクタ。
【請求項1】
ボディ(46)内に配置されたノズル(41)から高速で噴出する作動流体の巻き込み作用によって流体輸送を行う運動量輸送式ポンプであるエジェクタであり、
前記ボディ(46)もしくは前記ノズル(41)の主要構造部が樹脂材にて形成されていることを特徴とするエジェクタ。
【請求項2】
前記ボディ(46)を樹脂材で形成しているとともに、前記ノズル(41)を保持する部分に金属部材(47)をインサート成形していることを特徴とする請求項1に記載のエジェクタ。
【請求項3】
前記ノズル(41)を樹脂材で形成しているとともに、前記ボディ(46)に保持される部分に金属部材(45)をインサート成形していることを特徴とする請求項1に記載のエジェクタ。
【請求項4】
前記ノズル(41)を樹脂材で形成しているとともに、駆動流の路路部分に金属部材(44)をインサート成形していることを特徴とする請求項1に記載のエジェクタ。
【請求項5】
前記金属部材(44)を塑性加工にて形成していることを特徴とする請求項4に記載のエジェクタ。
【請求項6】
前記金属部材(44、45、47)の樹脂材と接合する部分にずれ防止形状(48)を備えていることを特徴とする請求項2ないし請求項5のうちいずれか1項に記載のエジェクタ。
【請求項7】
樹脂材で形成する前記ボディ(46)の中に、金属製の前記ノズル(41)をインサート成形していることを特徴とする請求項1に記載のエジェクタ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2008−111376(P2008−111376A)
【公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−294661(P2006−294661)
【出願日】平成18年10月30日(2006.10.30)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年10月30日(2006.10.30)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
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