説明

エスカレータの予防保全支援システム

【課題】適切な時期にエスカレータの予防保全を行えるように支援することができるエスカレータの予防保全支援システムを提供すること。
【解決手段】エスカレータ100の予防保全支援システム1は、エスカレータ100を利用する利用者ごとに、利用者のエスカレータ100に対する3次元位置の時系列情報を取得する時系列情報取得装置2と、時系列情報に基づいて算出された利用者に関する利用者数情報に基づいて、エスカレータ100の予防保全時期に関する予防保全時期情報を設定する時期情報設定装置3と、予防保全時期情報を出力する出力装置(管理端末4、携帯端末5)とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エスカレータの予防保全を支援するエスカレータの予防保全支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来からエスカレータにおいては、高い安全性を確保するため、予防保全が行われている。従来のエスカレータの予防保全は、整備計画に基づいて定期的に行われていた。ここで、整備計画は、エスカレータを構成する部品、すなわち構成部品の劣化特性や、エスカレータの運転情報、過去の故障情報などから寿命を予知して、策定される。従って、従来のエスカレータの予防保全では、整備計画に基づいて定期点検を行い、定期点検に基づいて定期整備を行い、予知された寿命などに応じて部品が交換される。従来のエスカレータの予防保全は、整備計画によって設定された時期に定期的に行われるが、特許文献1,2に示すように、条件に応じて予防保全を行う時期を変更する技術が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1では、エスカレータの予防保全を目的としたものであり、積算時間を運転データとして、運転データと遠隔地において設定変更可能な限界値とを比較して、積算時間が限界値を超えると、予防保守を要求する技術が開示されている。また、特許文献2では、エスカレータの保全作業計画策定を目的としたものであり、エスカレータの保全作業計画において、エスカレータに使用されている機器毎の稼動年数、劣化特性などに基づいて、保全周期を変動する機能を備える技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平4−328699号公報
【特許文献2】特開2007−106525号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
エスカレータの予防保全は、構成部品の劣化による不具合を生じさせないために行うものである。ここで、構成部品の劣化状況は、エスカレータの利用状況に応じて変化するものである。例えば、エスカレータの利用者数の急激な増加や通常のエスカレータの利用方法とは異なる方法での利用などは、上記特許文献1,2に示すようなエスカレータの運転情報からは把握することができない。つまり、エスカレータの運転情報に応じた予防保全では、エスカレータの実際の利用状況が考慮されていないため、エスカレータの実際の利用状況に対応したものではない。従って、例えば、利用者数が不定期に増加し、構成部品の劣化が不定期に促進しているエスカレータでは、定期的な予防保全あるいはエスカレータの運転情報に応じた予防保全を行うと、予防保全が過小となる虞がある、また、例えば、運転していても利用者が少なく、構成部品の劣化が抑制されているエスカレータでは、定期的な予防保全あるいはエスカレータの運転情報に応じた予防保全を行うと、予防保全が過大となる虞があった。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、適切な時期にエスカレータの予防保全を行えるように支援することできるエスカレータの予防保全支援システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかるエスカレータの予防保全支援システムでは、エスカレータを利用する利用者ごとに、利用者の前記エスカレータに対する3次元位置の時系列情報を取得する時系列情報取得装置と、前記時系列情報に基づいて算出された利用者に関する利用者数情報に基づいて、前記エスカレータの予防保全時期に関する予防保全時期情報を設定する時期情報設定装置と、前記予防保全時期情報を出力する出力装置と、を備えることを特徴とする。
【0008】
また、上記エスカレータの予防保全支援システムにおいて、前記利用者数情報には、前記エスカレータに対する利用者ごとの位置に基づいた位置属性情報が含まれることが好ましい。
【0009】
また、上記エスカレータの予防保全支援システムにおいて、前記利用者数情報には、前記エスカレータに対する利用者ごとの移動状態に基づいた移動状態属性情報が含まれることが好ましい。
【0010】
また、上記エスカレータの予防保全支援システムにおいて、前記利用者数情報には、前記エスカレータに対する利用者ごとの利用形態に基づいた利用形態属性情報が含まれることが好ましい。
【0011】
また、上記エスカレータの予防保全支援システムにおいて、前記時期情報設定装置は、前記利用者数情報に基づいて、前記エスカレータの予防保全時期に関する判定指標値を算出し、前記判定指標値が閾値を超えると、前記予防保全時期情報を設定することが好ましい。
【0012】
また、上記エスカレータの予防保全支援システムにおいて、前記時期情報設定装置は、過去の前記予防保全時期情報を含む過去の予防保全情報、あるいは過去の前記利用者数情報の少なくとも一方に基づいて将来のエスカレータの利用者数予測情報を算出し、前記判定指標値は、前記利用者数情報および利用者数予測情報に基づいて算出されることが好ましい。
【0013】
また、上記エスカレータの予防保全支援システムにおいて、前記エスカレータの運転情報を検出する運転情報検出装置をさらに備え、前記判定指標値は、前記利用者数情報および前記運転情報に基づいて算出されることが好ましい。
【0014】
また、上記エスカレータの予防保全支援システムにおいて、前記時期情報設定装置は、前記判定指標値を複数算出し、各判定指標値が前記各判定指標値にそれぞれ対応する閾値を超えた判定指標値の数に基づいて、前記予防保全時期情報を設定することが好ましい。
【0015】
また、上記エスカレータの予防保全支援システムにおいて、前記時期情報設定装置は、設定された前記エスカレータの利用者数が変化するイベントのイベント情報に基づいて、前記判定指標値を補正することが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明にかかるエスカレータの予防保全支援システムでは、利用者数情報に基づいて設定された予防保全時期情報を出力するので、ユーザーが適切な予防保全時期を認識することができ、ユーザーに対して適切な時期にエスカレータの予防保全を行えるように支援することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、実施形態にかかる予防保全支援システムの概略構成例を示す図である。
【図2】図2は、画像処理装置の動作フローを示す図である。
【図3】図3は、3次元情報の一例を示す図である。
【図4】図4は、マッチング処理の一例を示す図である。
【図5】図5は、時系列情報の一例を示す図である。
【図6】図6は、予防保全時期情報の設定フローの一例を示す図である。
【図7】図7は、一日の利用者数を示す一例の図である。
【図8】図8は、前回の予防保全からの累積利用者数を示す一例の図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、下記の実施形態により、本発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるものあるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0019】
図1は、実施形態にかかる予防保全支援システムの概略構成例を示す図である。実施形態にかかる予防保全支援システム1は、1台のエスカレータ100に対する予防保全を支援するものである。具体的には、エスカレータ100の次回の予防保全時期をエスカレータ100の予防保全を行うユーザーに認識させるものである。
【0020】
エスカレータ100は、複数のステップ101と、一対の欄干パネル102,103と、手摺りベルト104,105とにより構成されている。
【0021】
各ステップ101は、エスカレータ100の利用対象である利用者Rが乗るものであり、図示しないトラスにより設定された傾斜角度を有して支持されており、図示しない駆動装置により乗降口106,107との間を階段状の乗り台として循環移動する。各ステップ101は、例えばアルミダイカストから形成されている。
【0022】
欄干パネル102,103は、複数のステップ101の両側(図1では、左右側)に、複数のステップ101を挟んで対向して設置されている、欄干パネル102,103は、例えば透明のガラスやアクリルなどによって形成されている。
【0023】
手摺りベルト104,105は、利用者Rが手をかけるものであり、欄干パネル102,103のそれぞれ周縁部に移動可能に巻き付けられ、図示しない駆動装置により各ステップ101の移動(移動方向も含む)に同期して移動する。手摺りベルト104,105は、ゴムなどで形成されている。
【0024】
予防保全支援システム1は、本実施形態では、時系列情報取得装置2と、時期情報設定装置3と、管理端末4と、携帯端末5と、制御装置6とを含んで構成されている。ここで、時期情報設定装置3と、管理端末4と、携帯端末5と、制御装置6とは、各種情報のやり取り可能に有線あるいは無線によってそれぞれ接続されている。また、管理端末4は、例えばエスカレータ100に対して遠隔地に設けられ、GUI(グラフィカルユーザーインターフェース)の機能を持ち、各種情報の入力や各種情報の出力(表示など)を行うことができる。また、携帯端末5は、例えばエスカレータ100の予防保全を行うユーザーが所持するものであり、管理端末4と同等の機能を持つものである。制御装置6は、エスカレータ100を構成する部品である構成部品のうち、モータなどの駆動制御を行うことで、エスカレータ100の運転制御を行うものである。また、制御装置6は、エスカレータ100の運転情報を検出する運転情報検出装置であり、エスカレータ100の運転速度Ve、運転方向De、運転時間Te、荷重Feなどのエスカレータ100の運転情報を検出し、時期情報設定装置3、管理端末4、携帯端末5に出力するものでもある。
【0025】
時系列情報取得装置2は、エスカレータ100を利用する利用者Rごとに、利用者Rのエスカレータ100に対する3次元位置の時系列情報U(以下、単に「時系列情報U」とも称する)を取得するものである。時系列情報取得装置2は、ステレオカメラユニット2aと、画像処理装置2bとを含んで構成されている。
【0026】
ステレオカメラユニット2aは、撮像範囲がエスカレータ100全体となるような場所(例えば、エスカレータ100の近傍の壁面や天井面など)に設定されている。ステレオカメラユニット2aは、2台のカメラを有し、各カメラが例えば人間の両眼視差を考慮した所定の間隔で配置されている。ステレオカメラユニット2aは、エスカレータ100を利用する利用者Rを含めてエスカレータ100全体をそれぞれ連続して撮像する。ステレオカメラユニット2aは、伝送ケーブルにより画像処理装置2bと接続されており、各カメラが撮像した画像に基づいた画像信号が画像処理装置2bに連続して出力される。
【0027】
画像処理装置2bは、上記ステレオカメラユニット2aからの画像信号に基づいて、利用者Rごとのエスカレータ100に対する3次元位置を検知し、利用者Rごとのエスカレータ100に対する3次元位置の時系列情報Uを取得するものである。画像処理装置2bは、CPU、ROM、RAMなどを備えるPC(パーソナルコンピュータ)や、画像を処理することを専用とする画像処理ボードなどで構成されている。
【0028】
次に、画像処理装置2bによる利用者Rごとの時系列位置情報の取得方法を画像処理装置2bの動作フローとして説明する。図2は、画像処理装置の動作フローを示す図である。図3は、3次元情報の一例を示す図である。図4は、マッチング処理の一例を示す図である。図5は、時系列情報の一例を示す図である。
【0029】
図2に示すように、画像処理装置2bは、まず、画像キャプチャ処理を行う(ステップST11)。ここでは、画像処理装置2bは、各カメラにそれぞれ対応して出力され画像信号に基づいて各カメラが同時期に撮像した画像をそれぞれ連続してキャプチャし、各カメラが撮像した画像に対応する単眼画像データをそれぞれ連続して生成する。つまり、画像処理装置2bは、両眼視差に基づいて同時期に撮像した2つの単眼画像データを時系列に連続して生成する。なお、画像処理装置2bは、生成した単眼画像データを図示しない記憶部に時間情報とともに記憶する。
【0030】
次に、画像処理装置2bは、3次元化処理を行う(ステップST12)。ここでは、画像処理装置2bは、上記時間情報から同時期に撮像された各カメラにそれぞれ対応する2つの単眼画像データに基づいて、ステレオカメラユニット2aの撮像範囲のX方向、Y方向、Z方向の3次元情報(x,y,z)を取得する。3次元情報は、図3に示すように、ステレオカメラユニット2aによる撮像ごと、すなわち同時期に撮像した2つの単眼画像データが生成されるごとに、X方向、Y方向、Z方向からなる3次元における点(図3では、黒い点)として取得される。なお、本実施形態では、X方向をエスカレータ100の幅方向、Y方向をエスカレータ100の長さ方向、Z方向をエスカレータ100の高さ方向とする。また、本実施形態では、エスカレータ100の運転方向Deを乗降口106から乗降口107に向かう方向とする。
【0031】
次に、画像処理装置2bは、図2に示すように、利用者Rの3次元位置検知処理を行う(ステップST13)。ここでは、画像処理装置2bは、上記取得された3次元情報の分布状態を解析し、単眼画像データ(例えば、一方のカメラに対応して生成された単眼画像データ)から利用者Rに対応する部分を抽出し、単眼画像データから利用者Rを抽出する。画像処理装置2bは、図3に示すように、3次元情報の分布状態から人物形状に近い固まりH(例えば、円柱形状)を利用者Rに対応する部分として抽出し、単眼画像データから抽出された利用者Rに基づいて利用者Rのエスカレータ100に対する3次元位置(x,y,z)を算出する。これにより、画像処理装置2bは、取得された3次元情報に基づいて利用者Rのエスカレータ100に対する3次元位置を検知する。なお、画像処理装置2bは、時系列に連続して生成される単眼画像データごとに、利用者Rに対応する部分を抽出し、利用者Rのエスカレータ100に対する3次元位置(x,y,z)を時系列に沿って検知する。また、画像処理装置2bは、各単眼画像データにおいて、利用者Rに対応する部分を複数抽出した場合、すなわちエスカレータ100を複数の利用者Rが利用している場合は、単眼画像データから抽出された各利用者Rにそれぞれ対応して、各利用者Rのエスカレータ100に対する3次元位置を検知する。つまり、画像処理装置2bは、各利用者Rを立体的に検知することで、単眼画像データの奥行き方向における各利用者Rの位置、すなわち実空間での位置をも把握することができる。また、利用者Rが増加して、エスカレータ100の混雑が激しくなっても、利用者Rごとの位置情報を検知することができる。
【0032】
次に、画像処理装置2bは、利用者Rの追跡処理(時系列処理)を行う(ステップST14)。ここでは、画像処理装置2bは、時系列に連続して生成された単眼画像データごとに、上記抽出された利用者Rを追跡する。画像処理装置2bは、任意の時間において撮像され生成された単眼画像データから抽出された利用者と、任意の時間に対応する単眼画像データの次に撮像され生成された単眼画像データから抽出された利用者とを両単眼画像データにおける各利用者に対応する部分の3次元情報などの特徴量を用いてマッチング処理し、相関度の高い組み合わせを同一人物として判断し、その利用者Rを追跡する。画像処理装置2bは、例えば図4に示すように、時間Taで撮像され生成された単眼画像データSaから利用者R1,R2が抽出され、時間Tb(>Ta)で撮像され生成された単眼画像データSbから利用者R3,R4が抽出された場合、単眼画像データSa,Sbにおける各利用者R1〜R4に対応する部分の3次元情報などの特徴量を用いて、単眼画像データSaにおける利用者R1と単眼画像データSbにおける利用者R3とが同一人物と判断し、単眼画像データSaにおける利用者R2と単眼画像データSbにおける利用者R4とが同一人物と判断し、利用者R1(R3)および利用者R2(R4)を時間Tbよりも時系列として後に生成された単眼画像データScにおいても追跡する。これにより、画像処理装置2bは、利用者Rごとのエスカレータ100に対する時間情報も含めた3次元位置T(x,y,z,t)を検知し、図5に示すように、各利用者Rのエスカレータ100に対する時間情報も含めた3次元位置T0(x0,y0,z0,t0),T1(x1,y1,z1,t1),…Tn-1(xn-1,yn-1,zn-1,tn-1),Tn(xn,yn,zn,tn)を各利用者Rの時系列情報Uとする。なお、画像処理装置2bは、時期情報設定装置3と接続されており、時系列情報取得装置2により取得された各利用者Rの時系列情報Uが時期情報設定装置3に出力される。
【0033】
時期情報設定装置3は、エスカレータ100の予防保全時期に関する予防保全時期情報Gを設定するものである。時期情報設定装置3は、本実施形態では、時系列情報取得装置2により取得された各利用者Rの時系列情報Uに基づいて利用者数に関する利用者数情報Pを算出する。そして、時期情報設定装置3は、算出された利用者数情報Pに基づいてエスカレータ100の予防保全時期に関する判定指標値Xfを算出し、算出された判定指標値Xfが閾値Xtを超える場合に、予防保全時期情報Gを設定する。時期情報設定装置3は、CPU、ROM、RAMなどを備えるPC(パーソナルコンピュータ)などで構成されており、各種の処理を行う処理部3aと、処理部3aに接続され、各種の処理に用いられる情報や、処理部3aの処理結果として設定された予防保全時期情報Gなどを適宜記憶する記憶部3bとにより構成されている。
【0034】
処理部3aは、図5に示すように、各利用者Rの時系列情報Uに基づいて、各利用者Rの運動状態に関する運動状態情報Q、例えば各利用者Rの速度Vr、加速度Ar、移動動線Lr、移動方向Dr、存在時間Trなどを算出する。例えば、利用者Rの速度Vrは、利用者Rの時系列情報Uにおける最初の時間情報t0から最後の時間情報tnまでの時間と、最初の3次元位置(x0,y0,z0)から最後の3次元座標位置(xn,yn,zn)までの距離とに基づいて算出することができる。また、加速度Arは、速度Vrの時間微分で算出することができる。また、移動動線Lrは、利用者Rの時系列情報Uを構成する各3次元位置を線で結んだものである。移動方向Drは、移動動線Lrに基づいて算出することができる。また、存在時間Trは、利用者Rの時系列情報Uにおける最初の時間情報t0から最後の時間情報tnまでの時間である。なお、各利用者Rの運動状態情報Qは、適宜記憶部3bに記憶される。また、各利用者Rの運動状態情報Qは、上記画像処理装置2bが各利用者Rの時系列情報Uに基づいて算出し、時期情報設定装置3に出力しても良い。
【0035】
処理部3aは、算出された運動状態情報Qに基づいて利用者数情報Pを算出する。ここで、利用者数情報Pは、条件ごとの利用者数P0、例えば単位時間当たりの利用者数Pa、累積利用者数Pb、同時利用者数Pcなどがある。また、利用者数情報Pには、位置属性情報Pd、移動状態属性情報Pe、利用形態属性情報Pfなども含まれる。なお、利用者数情報Pは、適宜記憶部3bに記憶される。以下に、利用者Rごとの時系列情報Uに基づいた利用者数情報Pの算出方法について説明する。
【0036】
ここで、利用者数P0とは、エスカレータ100を乗降した利用者Rの数である。ここで、利用者Rの乗降は、例えば、利用者Rの移動動線Lrと、予め設定され、記憶部3bに記憶されている乗り口ラインLinの3次元位置および降り口ラインLoutの3次元位置とに基づいて判断することができる。具体的には、利用者Rの移動動線Lrが乗り口ラインLinと交差する場合、利用者Rがエスカレータ100の乗り口である乗降口106を通過し、利用者Rがエスカレータ100に乗ったと判断し、利用者Rの移動動線Lrが降り口ラインLoutと交差する場合、利用者Rがエスカレータ100の降り口である乗降口107を通過し、利用者Rがエスカレータ100から降りたと判断する。
【0037】
単位時間当たりの利用者数Paは、任意の時間taから時間tb(>ta)までの間の利用者数P0である。単位時間当たりの利用者数Paは、利用者Rの乗り口通過時間および降り口通過時間、すなわち利用者Rの乗降時間に基づいて算出することができる。利用者Rの乗り口通過時間は、利用者Rの移動動線Lrが乗り口ラインLinと交差した後の利用者Rの時系列情報Uにおける時間情報(図5では、時間t1)から算出される。また、利用者Rの降り口通過時間は、利用者Rの移動動線Lrが降り口ラインLoutと交差した後の利用者Rの時系列情報Uにおける時間情報(図5では、時間tn)から算出される。従って、任意の時間taからtbの間に乗降時間(図5では、時間t1および時間tn)が含まれる利用者Rが単位時間当たりの利用者としてカウントされ、単位時間当たりの利用者数Paが算出される。
【0038】
累積利用者数Pbは、任意の時間からの利用者数P0である。累積利用者数Pbは、任意の時間以降に算出された単位時間当たりの利用者数Paを積算することで算出される。
【0039】
同時利用者数Pcは、エスカレータ100を同時に利用する利用者数P0である。同時利用者数Pcは、任意の時間tcにおける移動動線Lrの先端が乗り口ラインLinと降り口ラインLoutとの間にある利用者Rの数が同時利用者数Pcとして算出される。
【0040】
上記条件ごとの利用者数P0は、エスカレータ100を構成する機器である構成部品の劣化に大きな影響を与える。条件ごとの利用者数P0が多い場合は、条件ごとの利用者数P0が少ない場合と比較して、エスカレータ100に対する荷重が増加し、エスカレータ100への負荷が増大するので、条件ごとの利用者数P0に応じて構成部品の劣化が促進される。従って、利用者数情報Pに基づいて算出された判定指標値Xfを構成部品の劣化を正確に反映した値とすることができ、判定指標値Xfに基づいた判定により設定された予防保全時期情報Gを構成部品の劣化を正確に反映した情報とすることができる。特に、同時利用者数Pcは、エスカレータ100を構成する機器である構成部品の劣化に大きな影響を与える。同時利用者数Pcが多い場合は、同時利用者数Pcが少ない場合と比較して、エスカレータ100に対する一時的な荷重が増加し、エスカレータ100への一時的な負荷が増大するので、構成部品の劣化が不定期に促進される。従って、同時利用者数Pcを含めた利用者数情報Pに基づいて算出された判定指標値Xfを構成部品の劣化を正確に反映した値とすることができ、判定指標値Xfに基づいた判定により設定された予防保全時期情報Gを構成部品の劣化を正確に反映した情報とすることができる。
【0041】
位置属性情報Pdは、エスカレータ100に対する利用者Rごとの位置に基づいた情報であり、条件ごとの利用者数P0に位置属性を与えるものである。位置属性情報Pdは、利用者Rをエスカレータ100のステップ101に対する位置、例えば右側利用者Rdrと、左側利用者Rdlとに分けるものである。つまり、条件ごとの利用者数P0は、位置属性情報Pdにより右側利用者数Pdrと、左側利用者数Pdlとに分けることができる。位置属性情報Pdは、例えば利用者Rの移動動線Lrと、予め設定され、記憶部3bに記憶されているセンターラインLcとに基づいて判断することができる。具体的には、移動動線LrがセンターラインLcよりも運転方向Deに対して右側にある場合は、利用者Rをエスカレータ100のステップ101の右側に乗っている右側利用者Rdrと判断し、利用者Rを右側利用者数Pdrとしてカウントする。また、移動動線LrがセンターラインLcよりも運転方向Deに対して左側にある場合は、利用者Rをエスカレータ100のステップ101の左側に乗っている左側利用者Rdlと判断し、利用者Rを左側利用者数Pdlとしてカウントする。なお、移動動線LrがセンターラインLcと交差している場合は、移動動線Lrのうち、運転方向Deに対して右側にある部分と、運転方向Deに対して左側にある部分との比率に基づいて、右側利用者Rdrか左側利用者Rdlを判断すれば良い。例えば、移動動線Lrのうち、運転方向Deに対して左側にある部分が運転方向Deに対して右側にある部分よりも多い場合は、左側利用者Rdlと判断する。
【0042】
位置属性情報Pdは、エスカレータ100を構成する機器である構成部品の劣化に大きな影響を与える。例えば、条件ごとの利用者数P0に対して、左側利用者数Pdlよりも右側利用者数Pdrが多い場合は、エスカレータ100の運転方向Deに対して右側に対する荷重が左側に対する荷重よりも増加し、エスカレータ100への負荷が増大するので、構成部品のうち運転方向Deに対して右側の構成部品の劣化が運転方向Deに対して左側の構成部品の劣化よりも促進される。従って、利用者数情報Pとして、位置属性情報Pdを含めることで、利用者数情報Pに基づいて算出された判定指標値Xfをエスカレータ100に対する利用者Rの位置によって変化する構成部品の劣化を正確に反映した値とすることができ、判定指標値Xfに基づいた判定により設定された予防保全時期情報Gをエスカレータ100に対する利用者Rの位置によって変化する構成部品の劣化を正確に反映した情報とすることができる。
【0043】
移動状態属性情報Peは、エスカレータ100に対する利用者Rごとの移動状態に基づいた情報であり、条件ごとの利用者数P0に移動状態属性を与えるものである。移動状態属性情報Peは、利用者Rをエスカレータ100に対する移動状態、例えば静止利用者Resと、歩行利用者Rewと、走行利用者Rerと、逆走利用者Reiとに分けるものである。つまり、条件ごとの利用者数P0は、移動状態属性情報Peにより静止利用者数Pesと、歩行利用者数Pewと、走行利用者数Perと、逆走利用者数Peiとに分けることができる。移動状態属性情報Peは、例えば利用者Rの速度Vrと、移動方向Drと、エスカレータ100の運転速度Veと、運転方向Deとに基づいて判断することができる。具体的には、速度Vrが運転速度Veと同じ(Vr=Ve)場合は、利用者Rをエスカレータ100の利用時に静止状態である静止利用者Resとして判断し、利用者Rを静止利用者数Pesとしてカウントする。速度Vrが運転速度Veを超えるが、運転速度Veに予め設定され、記憶部3bに記憶されている走行速度Vs(利用者Rの走行速度に基づいた値)を加えた所定速度Vm未満(Ve<Vr<Vm)の場合は、利用者Rをエスカレータ100の利用時に歩行状態である歩行利用者Rewとして判断し、利用者Rを歩行利用者数Pewとしてカウントする。速度Vrが所定速度Vmを超える(Vr>Vm)場合は、利用者Rをエスカレータ100の利用時に走行状態である走行利用者Rerとして判断し、利用者Rを走行利用者数Perとしてカウントする。速度Vrが運転速度Ve未満(Vr<Ve)の場合は、利用者Rをエスカレータ100の利用時に逆走状態である逆走利用者Reiとして判断し、利用者Rを逆走利用者数Peiとしてカウントする。
【0044】
移動状態属性情報Peは、エスカレータ100を構成する機器である構成部品の劣化に大きな影響を与える。例えば、条件ごとの利用者数P0に対して歩行利用者数Pewや走行利用者数Perが多い場合は、静止利用者数Pesが多い場合と比較して、エスカレータ100に対する衝撃が増加し、エスカレータ100への負荷が増大するので、構成部品の劣化が促進される。従って、利用者数情報Pとして、移動状態属性情報Peを含めることで、利用者数情報Pに基づいて算出された判定指標値Xfをエスカレータ100に対する利用者Rの移動状態によって変化する構成部品の劣化を正確に反映した値とすることができ、判定指標値Xfに基づいた判定により設定された予防保全時期情報Gをエスカレータ100に対する利用者Rの移動状態によって変化する構成部品の劣化を正確に反映した情報とすることができる。
【0045】
利用形態属性情報Pfは、エスカレータ100に対する利用者Rごとの利用態様に基づいた情報であり、条件ごとの利用者数P0に利用態様属性を与えるものである。利用形態属性情報Pfは、利用者Rをエスカレータ100に対する利用態様、例えば単独利用者Rfnと、運搬利用者Rfcとに分けるものである。つまり、条件ごとの利用者数P0は、利用形態属性情報Pfにより単独利用者数Pfnと運搬利用者数Pfcとに分けることができる。利用形態属性情報Pfは、各利用者Rの時系列情報U、例えば3次元情報の分布状態から抽出された利用者Rに対応する部分の3次元形状に基づいて判断することができる。具体的には、3次元情報の分布状態から抽出された利用者Rに対応する部分の3次元形状が円柱形状である場合は、エスカレータ100を荷物のない単独利用者Rfnと判断し、利用者Rを単独利用者数Pfnとしてカウントする。また、3次元情報の分布状態から抽出された利用者Rに対応する部分の3次元形状が円柱形状と直方体(例えば、カート、ベビーカー、台車などに対応した形状)とがつながったものである場合は、エスカレータ100を荷物のある運搬利用者Rfcと判断し、利用者Rを運搬利用者数Pfcとしてカウントする。
【0046】
利用形態属性情報Pfは、エスカレータ100を構成する機器である構成部品の劣化に大きな影響を与える。例えば、条件ごとの利用者数P0に対して運搬利用者数Pfcが多い場合は、単独利用者数Pfnが多い場合と比較して、エスカレータ100に対する荷重が増加し、エスカレータ100への負荷が増大するので、構成部品の劣化が促進される。従って、利用者数情報Pとして、利用形態属性情報Pfを含めることで、利用者数情報Pに基づいて算出された判定指標値Xfをエスカレータ100に対する利用者Rの利用態様によって変化する構成部品の劣化を正確に反映した値とすることができ、判定指標値Xfに基づいた判定により設定された予防保全時期情報Gをエスカレータ100に対する利用者Rの利用態様によって変化する構成部品の劣化を正確に反映した情報とすることができる。
【0047】
処理部3aは、利用者数情報Pに基づいて、エスカレータ100の予防保全時期に関する判定指標値Xfを算出し、算出された判定指標値Xfが閾値Xtを超える場合に予防保全時期情報Gを設定する。ここで、予防保全時期情報Gには、エスカレータ100全体あるいは1以上の任意の構成部品の次回の予防保全時期が含まれる。また、次回の予防保全時期には、次回の点検時期、次回の整備時期、次回の交換時期などの少なくとも1以上の時期情報が含まれる。なお、処理部3aは、既に予防保全時期情報Gが設定され記憶部3bに記憶されている場合に、新たな予防保全時期情報Gを設定すると、既に設定された予防保全時期情報Gを新たな予防保全時期情報Gに置き換える、すなわち予防保全時期情報Gを更新する。
【0048】
処理部3aは、1つの利用者数情報Pに基づいて判定指標値Xfを算出する場合は、例えば、前回の予防保全からの単位時間当たりの利用者数Paの最大値Pam、前回の予防保全からの累積利用者数Pb、前回の予防保全からの同時利用者数Pcの最大値Pcmなどを判定指標値Xfとして算出し、判定指標値Xfが閾値Xtを超える場合に予防保全時期情報Gを設定する。ここで、閾値Xtは、エスカレータ100全体あるいは1以上の任意の構成部品の点検、エスカレータ100あるいは1以上の任意の構成部品の次回の整備、1以上の任意の構成部品の次回の交換の少なくとも1以上が要求される時期に対応する値である。1つの利用者数情報Pに基づいて算出された判定指標値Xfを用いる場合は、上記要求される時期に対応する値よりも大きい値を閾値Xtとしても良い。
【0049】
また、処理部3aは、1つの利用者数情報Pおよび利用者数予測情報Pgに基づいて判定指標値Xfを算出する場合は、例えば、前回の予防保全からの累積利用者数Pbに利用者数予測情報Pgを加えた値を判定指標値Xfとして算出し、判定指標値Xfが閾値Xtを超える場合に予防保全時期情報Gを設定する。つまり、処理部3aは、1つの利用者数情報Pおよび利用者数予測情報Pgに基づいて算出された判定指標値Xfに基づいて予防保全時期情報Gを設定するので、事前に予防保全時期情報Gを設定することができる。利用者数予測情報Pgは、将来のエスカレータ100の利用者数P0であり、過去の予防保全時期情報Gを含む過去の予防保全情報H、あるいは過去の利用者数情報Pの少なくとも一方に基づいて算出される。過去の予防保全情報Hおよび過去の利用者数情報Pは、記憶部3bに記憶されている。過去の予防保全情報Hには、過去の予防保全時期情報Gのほかに、過去の予防保全実施箇所、過去の予防保全実施内容などが含まれる。利用者数予測情報Pgは、過去の利用者数情報Pから算出される過去の任意の期間における一日当たりの利用者数Paの平均値Paa、過去の利用者数情報Pから予測される明日の一日当たりの利用者数Pabなどである。
【0050】
また、処理部3aは、複数の利用者数情報Pに基づいて判定指標値Xfを算出する場合は、例えば前回の予防保全からの累積利用者数Pb、前回の予防保全からの歩行利用者数Pew、前回の予防保全からの右側利用者数Pdrの合計値を判定指標値Xf(=Pb+Pew+Pdr)として算出し、判定指標値Xfが閾値Xtを超える場合に予防保全時期情報Gを設定する。これにより、処理部3aは、エスカレータ100の利用状況を考慮した判定指標値Xfに基づいて予防保全時期情報Gを正確に設定することができる。また、複数の利用者数情報Pに基づいて判定指標値Xfを算出する場合は、各利用者数情報Pの重み付き和を判定指標値Xfとして算出しても良い。処理部3aは、判定指標値Xfを重み付き和で算出する場合、例えば、前回の予防保全からの累積利用者数Pbに重みaを積算した値、前回の予防保全からの歩行利用者数Pewに重みbを積算した値、前回の予防保全からの右側利用者数Pdrに重みcを積算した値の合計値を判定指標値Xf(=a×Pb+b×Pew+c×Pdr、ここで、a+b+c=1)として算出する。構成部品の劣化の促進に与える影響が大きい利用者数情報Pと、構成部品の劣化の促進に与える影響が小さい利用者数情報Pとで重みを変えることができるので、エスカレータ100の利用状況を考慮した判定指標値Xfに基づいて予防保全時期情報Gをさらに正確に設定することができる。さらに、各利用者数情報Pの重み付き和を判定指標値Xfとして算出する場合は、任意の利用者数情報Pに対応する重みを任意の利用者数情報Pの変化に応じて変更しても良い。例えば、任意の利用者数情報Pが前回の予防保全からの同時利用者数Pcの最大値Pcmである場合は、最大値Pcmの増加に伴い重みを増加する。具体的には、最大値Pcmが1〜10の場合の重みを0.1とし、11〜15の場合の重みを0.2とし、16以上の場合の重みを0.5とする。また、任意の利用者数情報Pが前回の予防保全からの運搬利用者数Pfcである場合は、運搬利用者数Pfcの増加に伴い重みを増加する。具体的には、運搬利用者数Pfcが1〜1000の場合の重みを0.1とし、1001〜2000の場合の重みを0.2とし、2001以上の場合の重みを0.5とする。なお、任意の利用者数情報Pに対応する重みを変更した場合は、重みの合計が1となるように、他の利用者数情報Pに対応する重みを変更する。なお、処理部3aは、複数の利用者数情報Pおよび複数の利用者数予測情報Pgに基づいて判定指標値Xfを算出しても良い。
【0051】
ここで、判定指標値Xfは、1つではなく複数であっても良い。この場合、処理部3aは、利用者数情報Pに基づいて判定指標値Xf1〜Xfnをそれぞれ算出し、各判定指標値Xf1〜Xfnが各判定指標値Xf1〜Xfnにそれぞれ対応する閾値Xt1〜Xtnを超えた判定指標値Xfの数に基づいて予防保全時期情報Gを設定する。処理部3aは、例えば2つの判定指標値Xf1,Xf2に基づいて予防保全時期情報Gを設定する場合、2つの判定指標値Xf1,Xf2がともに判定指標値Xf1,Xf2にそれぞれ対応する閾値Xt1,Xt2を超えると予防保全時期情報Gを設定するようにしても良いし、2つの判定指標値Xf1,Xf2のいずれかが判定指標値Xf1,Xf2にそれぞれ対応する閾値Xt1,Xt2を超えると予防保全時期情報Gを設定するようにしても良い。これにより、処理部3aは、エスカレータ100の利用状況を考慮した複数の判定指標値Xf1〜Xfnに基づいて予防保全時期情報Gを正確に設定することができる。
【0052】
次に、本実施形態にかかる予防保全支援システム1による予防保全時期情報Gの設定フローの一例について説明する。図6は、予防保全時期情報の設定フローの一例を示す図である。図7は、一日の利用者数を示す一例の図である。図8は、前回の予防保全からの累積利用者数を示す一例の図である。なお、以下の設定フローでは、1つの利用者数情報Pおよび利用者数予測情報Pgに基づいて判定指標値Xfを算出する場合について具体的に説明する。
【0053】
図6に示すように、処理部3aは、まず、利用者Rごとの時系列情報Uを取得する(ステップST21)。
【0054】
次に、処理部3aは、単位時間当たりの利用者数Paを算出する(ステップST22)。ここでは、処理部3aは、一日当たりの利用者数Paを算出する。一日当たりの利用者数Paは、図7に示すように、午前00:00から24:00(次の日の午前00:00)までの間の利用者数P0である。
【0055】
次に、処理部3aは、図6に示すように、前回の予防保全からの累積利用者数Pbを算出する(ステップST23)。ここでは、処理部3aは、前回の予防保全からの累積利用者数Pbを前回の予防保全以降に算出された一日当たりの利用者数Paを積算することで算出する。前回の予防保全からの累積利用者数Pbは、図8に示すように、前回の予防保全日T0から今日Tnまでの利用者数P0である。
【0056】
次に、処理部3aは、図6に示すように、判定指標値Xfを算出する(ステップST24)。ここでは、処理部3aは、前回の予防保全からの累積利用者数Pbに、前回の予防保全日T0から今日Tnまでの一日当たりの利用者数Paの平均値Paaを加えた値を判定指標値Xfとして算出する。
【0057】
次に、処理部3aは、算出された判定指標値Xfが閾値Xtを超えるか否かを判定する(ステップST25)。
【0058】
次に、処理部3aは、算出された判定指標値Xfが閾値Xtを超えると判定する(ステップST25肯定)と、予防保全時期情報Gを設定する(ステップST26)。ここでは、処理部3aは、前回の予防保全から明日Tn+1までの累積利用者数Pbである判定指標値Xfが閾値Xtを超えると判定すると、明日Tn+1を例えば次回の予防保全日(時期情報)として設定する。処理部3aは、算出された判定指標値Xfが閾値Xt以下であると判定する(ステップST25否定)と、予防保全時期情報の設定処理を終了する。
【0059】
また、時期情報設定装置3は、設定された予防保全時期情報Gを管理端末4あるいは携帯端末5の少なくとも一方に出力する。管理端末4あるいは携帯端末5の少なくとも一方は、予防保全時期情報G出力する。予防保全時期情報Gを出力する、すなわち予防保全時期情報Gをユーザーに認識可能に出力するとは、例えば、次回の予防保全日、次回の予防保全時期に基づいて算出された現時点における予防保全の要求レベル(要求レベルごとに数字や色で表示)、次回の予防保全時期に基づいて算出された交換する機器部品の指定などを表示する。なお、これらは、予防保全支援システム1に対応するエスカレータ100が設置されている地図上に表示しても良い。
【0060】
以上のように、本実施形態にかかる予防保全支援システム1では、利用者数情報Pに基づいて、すなわちエスカレータ100の構成部品の劣化状況に基づいて設定された予防保全時期情報Gに基づいてユーザーが適切な予防保全時期を認識することができるので、ユーザーに対して適切な時期にエスカレータ100の予防保全を行えるように支援することができる。本実施形態にかかる予防保全支援システム1では、例えば累積利用者数Pbが少ないエスカレータ100に対する次回の予防保全内容として点検のみをユーザーに指示することができ、累積利用者数Pbが多いエスカレータ100に対する次回の予防保全内容として構成部品の交換をユーザーに指示することができる。本実施形態にかかる予防保全支援システム1では、例えば右側利用者数Pdrが多いエスカレータ100に対する次回の予防保全内容として右側の構成部品の交換をユーザーに指示することができ、左側利用者数Pdlが多いエスカレータ100に対する次回の予防保全内容として左側の構成部品の交換をユーザーに指示することができる。
【0061】
なお、本実施形態では、利用者数情報Pのみに基づいて判定指標値Xfを算出するがこれに限定されるものではなく、利用者数情報Pおよびエスカレータ100の運転情報Wに基づいて判定指標値Xfを算出しても良い。この場合は、例えば、利用者数情報Pおよびエスカレータ100の運転情報Wに基づいて1つの判定指標値Xfを算出して、判定指標値Xfが閾値Xtを超える場合に予防保全時期情報Gを設定してもよい。また、例えば、利用者数情報Pに基づいて判定指標値Xfp、運転情報Wに基づいて判定指標値Xfwをそれぞれ算出し、各判定指標値Xfp,Xfwが各判定指標値Xfp,Xfwにそれぞれ対応する閾値Xtp,Xtwを超えた判定指標値Xfの数に基づいて予防保全時期情報Gを設定しても良い。これにより、処理部3aは、エスカレータ100の利用状況およびエスカレータ100の運転状況を考慮した判定指標値Xfに基づいて予防保全時期情報Gを正確に設定することができる。
【0062】
また、本実施形態では、時期情報設定装置3は、エスカレータ100の利用者数P0が変化するイベントのイベント情報Eに基づいて、判定指標値Xfを補正しても良い。イベント情報Eは、記憶部3bに記憶されており、時節や一時的にエスカレータ100の利用者数P0が変化するイベントの情報であり、例えば長期休暇(ゴールデンウィーク、夏期連休、年末年始など)、クリスマス、特売会、コンサート、スポーツの試合、季節、天気などが該当する。例えば、梅雨の時期では、エスカレータ100が濡れ構成部品の劣化が促進されるので、処理部3aが梅雨時期において算出される判定指標値Xfを大きい値に補正して、次回の予防保全時期までの期間を短くする。また、長期休暇中では、エスカレータ100の利用者数P0が変化するので、例えば、長期休暇中利用者数P0が増加する場合には、長期休暇前に次回の予防保全時期が来るように、処理部3aが算出される判定指標値Xfを大きい値にして次回の予防保全時期までの期間を短くする。また、長期休暇中利用者数P0が減少する場合には、長期休暇中に次回の予防保全時期が来るように、処理部3aが算出される判定指標値Xfを大きい値にして次回の予防保全時期までの期間を短くする。従って、イベント情報Eに基づいて判定指標値Xfを補正することで、イベントによりエスカレータ100の利用者数P0が変化しても、ユーザーに対して適切な時期にエスカレータ100の予防保全を行えるように支援することができる。なお、イベント情報Eは、時期情報設定装置3が備えるカレンダー機能に基づいて設定されても良いし、管理端末4あるいは携帯端末5の少なくとも一方からユーザーが入力して設定しても良い。
【0063】
なお、本実施形態では、ステレオカメラユニット2aを用いたがこれに限定されるものではなく、利用者Rのエスカレータ100に対する3次元位置を検知することができれば、レーザーセンサ、赤外線センサ、利用者Rが所有するICカードなどの無線端末と、無線端末が発信する電波に基づいて利用者Rのエスカレータ100に対する3次元位置を取得するセンサとの組み合わせなどであっても良い。
【0064】
また、本実施形態にかかる予防保全支援システム1では、時期情報設定装置3と管理端末4とが別構成となっているが1つの装置としても良い。
【産業上の利用可能性】
【0065】
以上のように、本発明にかかるエスカレータの予防保全支援システムは、エスカレータの予防保全を支援するのに有用であり、特に、適切な時期にエスカレータの予防保全を行えるように支援するのに適している。
【符号の説明】
【0066】
1 予防保全支援システム
2 時系列情報取得装置
2a ステレオカメラユニット
2b 画像処理装置
3 時期情報設定装置
3a 処理部
3b 記憶部
4 管理端末
5 携帯端末
6 制御装置
100 エスカレータ
102,103 欄干パネル
104,105 手摺りベルト
106,107 乗降口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エスカレータを利用する利用者ごとに、利用者の前記エスカレータに対する3次元位置の時系列情報を取得する時系列情報取得装置と、
前記時系列情報に基づいて算出された利用者に関する利用者数情報に基づいて、前記エスカレータの予防保全時期に関する予防保全時期情報を設定する時期情報設定装置と、
前記予防保全時期情報を出力する出力装置と、
を備えることを特徴とするエスカレータの予防保全支援システム。
【請求項2】
前記利用者数情報には、前記エスカレータに対する利用者ごとの位置に基づいた位置属性情報が含まれることを特徴とする請求項1に記載のエスカレータの予防保全支援システム。
【請求項3】
前記利用者数情報には、前記エスカレータに対する利用者ごとの移動状態に基づいた移動状態属性情報が含まれることを特徴とする請求項1に記載のエスカレータの予防保全支援システム。
【請求項4】
前記利用者数情報には、前記エスカレータに対する利用者ごとの利用形態に基づいた利用形態属性情報が含まれることを特徴とする請求項1に記載のエスカレータの予防保全支援システム。
【請求項5】
前記時期情報設定装置は、前記利用者数情報に基づいて、前記エスカレータの予防保全時期に関する判定指標値を算出し、前記判定指標値が閾値を超えると、前記予防保全時期情報を設定することを特徴とする請求項1項に記載の予防保全支援システム。
【請求項6】
前記時期情報設定装置は、過去の前記予防保全時期情報を含む過去の予防保全情報、あるいは過去の前記利用者数情報の少なくとも一方に基づいて将来のエスカレータの利用者数予測情報を算出し、
前記判定指標値は、前記利用者数情報および利用者数予測情報に基づいて算出されることを特徴とする請求項5に記載の予防保全支援システム。
【請求項7】
前記エスカレータの運転情報を検出する運転情報検出装置をさらに備え、
前記判定指標値は、前記利用者数情報および前記運転情報に基づいて算出されることを特徴とする請求項5または6に記載の予防保全支援システム。
【請求項8】
前記時期情報設定装置は、前記判定指標値を複数算出し、各判定指標値が前記各判定指標値にそれぞれ対応する閾値を超えた判定指標値の数に基づいて、前記予防保全時期情報を設定することを特徴とする請求項5に記載の予防保全支援システム。
【請求項9】
前記時期情報設定装置は、設定された前記エスカレータの利用者数が変化するイベントのイベント情報に基づいて、前記判定指標値を補正することを特徴とする請求項5に記載の予防保全支援システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−57342(P2011−57342A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−207298(P2009−207298)
【出願日】平成21年9月8日(2009.9.8)
【出願人】(390025265)東芝エレベータ株式会社 (2,543)
【Fターム(参考)】