説明

エスカレータの設計システム、その設計方法およびプログラム

【課題】 建築側からの要求仕様からエスカレータの外形寸法等を即座に作成する。
【解決手段】 設計支援処理装置10単独又は設計支援処理装置10に通信回線20を介して端末装置30,…が接続された設計システムにおいて、設計支援処理装置10は、自身の入力手段11又は端末装置30からの仕様情報、予め定まるトラス幅及び規定トラス深さからエスカレータの1次的な外形寸法を算出する外形寸法算出手段101と、1次的な外形寸法と支持参照データとから中間支持の必要性を判断する判断手段103と、この判断手段で中間支持が必要と判断された時、入力手段又は端末装置からの中間支持設置概略寸法に予め定める前記複数のトラス縦梁位置寸法の中から最も近いトラス縦梁位置寸法を選択し、中間支持設置位置と決定する支持位置決定手段104とを設け、エスカレータの最終的な外形寸法を出力するエスカレータの設計システムである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エスカレータの設計を支援するエスカレータの設計システム、その設計方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
建築物にエスカレータを設置する場合、客先の要望等を採り入れながらエスカレータの設計を行う必要がある。一般には、傾斜角度と設置する建築物側の階高(高低差)とから一意にエスカレータの外形寸法を決定できるが、エスカレータに付加的仕様が入ってきた場合、例えばエスカレータ上端側の踏み段下部の機械室に必要なスペースを確保する必要がある場合、エスカレータを構成するトラスの長さ方向の寸法を延長しなければならない。また、エスカレータ設置高さである階高が高くなった場合、エスカレータ両端部の2点支持だけではエスカレータの重量を支えきれないので、エスカレータの中間部に支持点を設置する必要がある。
【0003】
そこで、従来、エスカレータを設計する場合、設計基準となる設計マニュアルを作成し、設計担当者が設計マニュアルを参考にし、エスカレータの外形寸法や支持点の追加有無等を決定する。設計マニュアルとしては、エスカレータの支持点間距離が例えば14mを越えた場合、当該エスカレータにたわみが発生する可能性があるので、エスカレータ中間部を支持するとか、中間部に支持点を設ける場合でも、エスカレータの分割部を避けて支持点を設ける必要がある。一般に、エスカレータにおいては、建築物に容易に搬入可能にするために、下トラス、中間トラス及び上トラスの3つに分割して製造し、建築物に搬入した段階で結合させることから、下トラスと中間トラス、中間トラスと上トラスとの結合部分が分割部となる。従って、当該分割部に支持点を設置する場合は特殊な設計が必要になる。
【0004】
よって、設計担当者は、設計マニュアルを参考にし、かつ自身の知識・経験等を生かし、マニュアル外の追加仕様が有れば、追加仕様に基づく重量、長さを考慮し、必要な計算を実施し、客先の要望に合ったエスカレータの外形寸法等を決定する。
【0005】
なお、このようなエスカレータの設計に関する先行技術文献は見当たらない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、以上のようなエスカレータの設計方法では、設計マニュアルにそったエスカレータの仕様であれば、比較的容易にエスカレータの外形寸法を決定できるが、設計マニュアルに規定されていない追加仕様に及ぶ場合,例えば客先に応じてエスカレータに支持点を入れては困るといった要求がある。かかる場合にはトラスの剛性を高める必要から、トラスの深さを深くする必要があるが、その判断が難しい。その結果、建築側に提示可能な十分なエスカレータの外形寸法等を決定するまでに相当な時間を必要とする。特に、エスカレータの外形寸法決定の遅れは、建築側の設計にも遅れを生じさせ、最悪の場合には建築側の建築物の寸法が決定した後、当該建築物の寸法に合わせてエスカレータの外形寸法等を決定しなければならない状況も出てくる。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、客先側ないし建築側から要求されるエスカレータの仕様に基づき、エスカレータの外形寸法等を即座に作成可能とするエスカレータの設計システム、その設計方法およびプログラムを提供することを目的とする。
【0008】
また、本発明は、付加仕様が追加された場合でも当該仕様を考慮しつつエスカレータの外形寸法ないし外形図を迅速に作成するエスカレータの設計システムおよびプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1) 上記課題を解決するために、本発明は、自身の設計要求情報入力手段または通信回線を介して接続される端末装置から入力されるエスカレータの設計に必要な受梁間寸法,傾斜角度,階高等の仕様情報に基づいて、設計支援処理装置がエスカレータを設計するエスカレータの設計システムにおいて、
前記設計支援処理装置は、自身の設計要求情報入力手段または端末装置から入力される仕様情報、何人乗りかに応じて定まるトラス幅及び規定トラス深さのデータからエスカレータの1次的な外形寸法を算出する外形寸法算出手段と、この1次的な外形寸法と予め定める支持参照データとから中間支持の必要性を判断する支持必要有無判断手段と、複数のトラス縦梁位置寸法が記憶され、前記判断手段によって中間支持が必要であると判断された場合、前記入力手段から入力される中間支持設置概略寸法に前記複数のトラス縦梁位置寸法の中から最も近いトラス縦梁位置寸法を選択し、中間支持設置位置と決定する支持位置決定手段とを設け、前記1次的な外形寸法及び前記中間支持位置寸法を、エスカレータの最終的な外形寸法として出力する構成である。
【0010】
この発明は以上のような構成とすることにより、受梁間寸法,傾斜角度,階高等の仕様情報を入力するだけでエスカレータの概略的な外形寸法を決定できるだけでなく、中間支持が必要な場合には設計担当者が過去の経験に基づいて中間支持設置概略寸法を入力すると、複数のトラス縦梁位置寸法の中から中間支持設置概略寸法に近いトラス縦梁位置寸法を選択し、中間支持位置を決定するので、迅速にエスカレータの外形寸法を出力することが可能である。このことは、エスカレータの製造メーカが建築業者に速やかにエスカレータの設置内容を提示でき、エスカレータの製造メーカと建築物建築業者との間の意思決定をスムーズに行うことができる。
【0011】
また、中間支持が必要であるが、支持台の設置が不可能な場合、トラスの剛性を増加させるために過去の実績データの中から最適なトラス深さを検索し、トラス深さを定めるトラス深さ決定手段を設ければ、客先の要求に応じてトラスの中間に支持台を設置することなく、過去の実績データを参照しながら十分に剛性を確保しつつ、エスカレータを設計することが可能となる。
【0012】
さらに、仕様情報の他に付加仕様情報が追加された場合、予め定める複数の付加仕様に応じたトラス延長に基づくデータの中から当該付加仕様情報に対応する付加仕様に応じたトラス延長データを取り出し、前記1次的な外形寸法の中から該当するトラス構成要素の寸法に前記トラス延長分を加算し、前記トラス外形寸法を修正するトラス修正処理手段を設ければ、修正されたトラスの外形寸法を考慮しつつ中間支持の有無を判断でき、付加仕様情報が追加された場合でも即座に建築業者にエスカレータの外形寸法を提示できる。
【0013】
さらに、エスカレータの外形寸法を決定した後、従来一般的に使用されている作図ソフトを用いて、エスカレータの外形図を作成し、建築業者に提供することも可能である。
【0014】
(2) また、本発明は、自身の設計要求情報入力手段または通信回線を介して接続される端末装置から入力されるエスカレータの設計に必要な受梁間寸法,傾斜角度,階高等の仕様情報に基づいて、設計支援処理装置がエスカレータを設計するエスカレータの設計システムにおいて、前記設計支援処理装置は、外部から入力される受梁間寸法,傾斜角度,階高等の仕様情報と予め定めるトラス幅及びトラス深さとからエスカレータの1次的な外形寸法を求めた後、付加仕様情報の入力有無を判断し、当該付加仕様情報の追加がある場合、追加の付加仕様情報に応じたトラス延長分に基づいて前記1次的な外形寸法を修正し、この修正された外形寸法から中間支持の必要有無を判断する方法である。
【0015】
このエスカレータの設計方法によれば、受梁間寸法,傾斜角度,階高等の仕様情報と予め定めるトラス幅及びトラス深さとからエスカレータの1次的な外形寸法を求めるとともに、この1次的な外形寸法に追加の付加仕様情報に応じたトラス延長分を修正するので、付加仕様情報を考慮しつつエスカレータの外形寸法を速やかに出力できる。
【0016】
また、本発明は、中間支持の必要性がある場合、中間支持設置の可否を判断し、中間支持の設置が可能である場合には外部から入力される中間支持設置概略寸法に基づき予め定める複数のトラス縦梁位置寸法の中から最も近いトラス縦梁位置寸法を選択し、中間支持設置位置と決定し、また、中間支持の設置が不可能である場合にはトラスの剛性を増加させるために過去の実績データの中から最適なトラス深さを検索してトラス深さを決定し、エスカレータの最終的な外形寸法を決定するので、中間支持が必要ありながら、中間支持を設置可能な場合と設置不可能な場合との両方について最終的な外形寸法を決定することができる。
【0017】
(3) なお、以上のようなエスカレータの設計についてはプログラムを用いて実現することも可能である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、客先側ないし建築側から要求されるエスカレータの仕様に基づき、エスカレータの外形寸法等を即座に作成可能でき、また付加仕様が追加された場合でも、その仕様を考慮しつつエスカレータの外形寸法ないし外形図を作成できるエスカレータの設計システム、その設計方法およびプログラムを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明に係るエスカレータの設計システムの実施形態について説明するに先立ち、エスカレータの基本構造について図1を参照して説明する。同図において、1はエスカレータの外枠を構成する所定深さのトラスであって、当該トラス1は多数の縦梁2,…によって支えられている。トラス1は、前述したように3分割構成となっている場合、上トラスと中トラス、中トラスと下トラスとの接合部となる分割部3u,3dを有している。さらに、トラス1の上端部及び下端部には当該トラス1を建築物4に支承させるための支承部5u,5dが取付けられている。6は支持点(中間支持台)、7は移動手すり、8は内側板である。また、WPは作業基準点(ワーキングポイント)、WLは作業基準線を意味する。さらに、エスカレータの外形寸法とは、図1に示すトラス平面全長L、階高相当高さ(=階高)H、トラス深さP及びトラス幅D(図示せず)によって表現される。
【0020】
図2は本発明に係るエスカレータの設計システムの一実施形態を示す全体構成図である。
このエスカレータの設計システムは、エスカレータの設計処理を実行する設計支援処理装置10が設けられている。この該設計支援処理装置10には構内情報通信網(LAN:Local Area Network)、広域ネットワーク(WAN:Wide Area Network)その他のインターネットなどの通信回線20を介して複数の端末装置30,…が接続されている。各端末装置30は、設計担当者や建築業者などが所有する端末であって、エスカレータの設計に必要な仕様情報を入力し、必要に応じて付加仕様情報(オプション情報)を入力し、その結果として該設計支援処理装置10からエスカレータ設計情報,つまりエスカレータの外形寸法ないし当該エスカレータの外形寸法に基づいて作成されるエスカレータの外形図の情報を受け取る機能をもっている。
【0021】
前記設計支援処理装置10は、端末装置30とは無関係に単独でエスカレータの設計に必要な仕様情報及び制御指示情報、さらには付加仕様情報を入力するキーボード,マウス等の設計要求情報入力手段11と、エスカレータの設計処理に必要な各種のデータを記憶する設計処理用データベース12と、エスカレータの設計に関する処理を実行する設計処理用プログラム及び作図処理用プログラムを記録するプログラムメモリ13と、この設計要求情報入力手段11または端末装置30側から送信されてくる仕様情報に基づき、プログラムメモリ13の所要とするプログラムに従って所定の処理を実行するCPUで構成された設計処理部14と、この設計処理部14によって得られる処理途中及び処理結果のデータを一時記憶するデータバッフアメモリ15と、表示部16によって構成されている。
【0022】
前記設計処理用データベース12は、一例として例えば図3〜図6に示すようなデータファイルが設けられている。図3は、設計基本ファイルであって、各傾斜角度(通常,30度)ごとに建築業者側から出てくるあらゆる要求に基づく複数の階高(mm)、予め設置地可能とする付加仕様に対応する複数のオプションOP1,OP2,…,OPn、トラス1に取り付け選択可能な支持台設置位置となる複数の縦梁位置寸法A1,A2,A3などのデータが規定されている。なお、階高とオプションOP1,OP2,…,OPnとの関係においては、オプション設置可能ないしオプション要求に対応できる場合には○、そうでない場合には×で表している。図4は、トラス用ファイルであって、規定トラス深さ、何人乗りエスカレータかに応じて選択可能な複数のトラス幅などのデータが規定されている。
【0023】
図5は、オプション用ファイルであって、オプション(付加仕様)OP1,OP2,…に応じて、何れの部分のトラスをどの程度延長するかのデータが規定されている。図6は、トラス深さ用ファイルであって、特に建築物その他の理由からトラス1に支持点を設置できない場合に剛性を増すためにトラス深さを大きくする必要があるが、支持点設置不可に対する過去の実績例データが規定されている。
【0024】
前記設計処理部14は、機能的には、外形寸法算出手段101、トラス修正処理手段102、支持必要有無判断手段103、支持位置決定手段104、トラス深さ決定手段105及び作図処理手段106が設けられている。
【0025】
外形寸法算出手段101は、設計要求情報入力手段11または端末装置30から入力される仕様情報に基づいてエスカレータの1次的な外形寸法を算出する機能を有する。トラス修正処理手段102は、付加仕様情報(以下、オプション情報と呼ぶ)に応じて、外形寸法算出手段101で算出された外形寸法のうち、必要なトラス構成要素(例えば上トラス等)のトラス長さを修正するものである。支持必要有無判断手段103は、トラス修正処理手段102によるトラス修正後のトラス全長から支持点が必要か、また何点の支持点が必要かを判断する機能を持っている。
【0026】
前記支持位置決定手段104は、支持必要有無判断手段103によって支持が必要であり、かつ支持台の支持が可能であると判断した場合にトラス1の支持位置を決定する。トラス深さ決定手段105は、建築物4その他の理由からトラス1の支持が不可能であると判断された場合に過去の実績データを参照しトラス深さを決定する。そして、支持位置決定後またはトラス深さ決定後、エスカレータの最終外形寸法を決定し出力する。作図処理手段106は、エスカレータの最終外形寸法に基づき従来周知の作図ソフトを用いてエスカレータの外形図を作成する機能をもっている。
【0027】
次に、以上のように構成されたシステムの動作ないし本発明に係るエスカレータの設計方法について図7及び図8を参照して説明する。なおプログラムメモリ13には設計処理用プログラムが記録されているので、設計処理部14にて当該設計処理用プログラムを読み取って図7及び図8に示す一連の処理を実行することも可能である。従って、プログラムによる処理の場合には区別する意味から「機能」という文字を用いるものとする。
【0028】
先ず、設計要求情報入力手段11または端末装置30のアクセスによる通信回線20の閉結後にエスカレータの設計に必要な仕様情報を設計処理部14に入力する。この仕様情報としては、例えば建築側から提示される仮建築図面等のもとに受梁間寸法、傾斜角度及び階高その他必要なデータ等である。設計処理部14は、動作が開始すると、外形寸法算出手段(外形寸法算出機能でもあるが、以下、外形寸法算出機能については省略する)101を実行する。すなわち、設計処理部14の外形寸法算出手段101は、受梁間寸法、傾斜角度及び階高等の仕様情報が入力されたか否かを判断する(S1)。ここで、入力されたと判断された場合、当該仕様情報である受梁間寸法、傾斜角度及び階高等のデータを取り込み、データバッフアメモリ15に記憶する(S2)。
【0029】
しかる後、外形寸法算出手段101は、何人乗り用のエスカレータであるかのメッセージを表示部16または端末装置30に表示し、設計担当者に問い合わせを行う(S3)。ここで、設計要求情報入力手段11または端末装置30から一人乗りとするデータが入力された場合には、設計処理用データベース12の図4に示すトラス用ファイルから1人乗り用のトラス幅寸法を取り込み(S4)、また2人乗りとするデータが入力された場合には、図4に示すトラス用ファイルから2人乗り用のトラス幅寸法を取り込み(S5)、データバッフアメモリ15に記憶する。
【0030】
そして、外形寸法算出手段101は、データバッフアメモリ15に記憶される各種のデータに基づいてエスカレータの1次的な外形寸法を算出する(S6)。すなわち、傾斜角度と階高(階高相当高さH)とから図1に示す中トラス寸法(例えば√3H相当長さ)を求めた後、受梁間寸法から中トラス寸法+予め定められる余裕度を減算し、得られた寸法を2分の1とすることにより、下トラス寸法及び上トラス寸法を算出し、データバッフアメモリ15に記憶する。さらに、図4に示すトラス用ファイルから規定トラス深さのデータを取り込んでデータバッフアメモリ15に記憶した後、このデータバッフアメモリ15からこれらエスカレータの1次的な外形寸法データ,つまり受梁間寸法,傾斜角度,階高,トラス幅,中トラス寸法,下トラス寸法,上トラス寸法,トラス深さ等の1次的な外形寸法データを読み出し、表示部16または端末装置30に表示する(S6)。なお、図3では、予め傾斜角度や階高が設定されているので、予め各傾斜角度及び階高ごとに、受梁間寸法,トラス幅等を除く他の各寸法データを書き込んでおき、該当寸法データを読み出すようにしてもよい。
【0031】
引き続き、設計処理制御部14はトラス修正処理手段(トラス修正処理機能でもあるが、以下、トラス修正処理機能については省略する)102を実行する。トラス修正処理手段102は、以上のようにしてエスカレータの1次的な外形寸法データを算出した後、設計要求情報入力手段11または端末装置30に対して付加仕様情報有りかのメッセージを表示し、何れの付加仕様情報であるオプションOP1,OP2,…が入力されたかを判断する(S71,S72,…,S7n)。例えば自動運転機能OP1を付加するとか、或いはインバータによる可変速度機能OP2を付加するなどの付加仕様情報が入力された場合、図3に示す該当傾斜角度及び階高と自動運転機能OP1との交点エリアに○フラグが設定されていれば、図5に示すオプション用ファイルからオプションOP1に対応するトラスの延長内容,例えば自動運転機能OP1を付加する場合にはエスカレータの上端踏み段下の機械室のスペースを大きくする必要があるので、上トラス××mm延長データを取り込み(S81)、入力される全部の付加仕様について設計基本ファイルを介してオプション用ファイルを参照し(S9)、必要に応じて各トラス寸法に延長データを取り込み、データバッフアメモリ15に記憶する。そして、全部の付加仕様情報に対する延長データを取り込んだ後、これら延長データを用いて各トラス寸法を修正する(S10)。
【0032】
なお、付加仕様情報が入力されない場合には、トラス修正処理手段102が何ら実行されずに次の処理に移行する。
【0033】
さらに、設計処理制御部14は支持必要有無判断手段(支持必要有無判断機能でもあるが、以下、省略する)103を実行する。この支持必要有無判断手段103は、トラス寸法の修正有無に拘らず、エスカレータの第1次外形寸法,特に図1に示すトラス平面全長Lに基づき、トラス1に中間支持が必要か否かを判断する(S11)。一般に、トラス平面全長Lが例えば14mを越える場合にはトラス1が撓む可能性があるので、1点の中間支持台6の支持が必要であり、さらに例えば20mを超えれば2点の中間支持台6の支持が必要となる。従って、予め適宜な記憶手段にトラス平面全長Lがある長さ(例えば14m)を越えれば中間1点支持、それよりも長い有る長さ(例えば20m)を越えれば中間2点支持が必要とする旨の支持参照データが記憶されている。従って、ステップS11において、中間支持が必要と判断された場合、トラス平面全長Lに基づいて支持点データを参照し、何点支持かを判断し、この判断結果に基づいて例えば1点支持か、2点支持か、或いはそれ以上のn点支持かを表示部16または要求元端末装置30に表示するとともに(S12〜S14)、データバッフアメモリ15に記憶する。
【0034】
引き続き、設計処理制御部14は支持位置決定手段(支持位置決定機能でもあるが、以下、省略する)104を実行する。この支持位置決定手段104は、表示部16または要求元端末装置30に支持点数を表示し、設計担当者に確認された後、設計担当者に建築物を含めて支持台設置が可能かを判断させる(S15)。ここで、設計担当者から支持台6の設置が可能であるとする指示を受けると、支持点数に拘らず、支持台6をトラス1の縦梁2のある位置に設置しなければならない。そこで、設計担当者は、建築物の構造から中間支持台6の設置位置の概略寸法A(図1参照)を入力すると、当該設置位置概略寸法Aを取り込み(S16)、データバッフアメモリ15に記憶する。そして、既に図3に示すように、設計処理用データベース12の設計基本ファイルに該当階高に対応するトラス1の幾つかの縦梁位置寸法A1,A2,A3(下トラスからの距離)が格納されているので、これらの中から設置位置概略寸法Aに最も近い縦梁2の位置を中間支持台6の設置位置として決定し(S17)、データバッフアメモリ15に記憶する。
【0035】
一方、建築物の構造や客先等の関係から支持台6の設置ができない場合があり、トラス1の重量自体を当該トラス1で補う必要があるので、剛性を増すためにトラス深さを増やす必要がある。
【0036】
そこで、設計処理制御部14はトラス深さ決定手段(トラス深さ決定機能でもあるが、以下、省略する)105を実行する。このトラス深さ決定手段105は、ステップS16において、支持台設置不可の指示を受けた場合、設計処理用データベース12の中の図6に示すトラス深さ用ファイルに指示無しの過去実績例が保存されているので、トラス深さ一覧表を表示部16または要求元端末装置30に表示し、建築物の階高,トラス全長、トラス材料その他を考慮しつつ、最適な1つのトラス深さを選択させることにより(S18、トラス深さ寸法を決定し(S19)、データバッフアメモリ15に記憶する。
【0037】
以上のようにして各寸法等が確保されたとき、エスカレータの設計に必要な最終的な外形寸法を決定し(S20)、表示部16または要求元端末装置30に表示し、必要に応じてプリントアウトする。
【0038】
さらに、作図を必要とする場合があるので、作図を必要するか否かを判断し(S21)、作図を必要とする場合には、設計処理制御部14は作図処理手段(作図処理機能でもあるが、以下、省略する)106を実行する。この作図処理手段106は、プログラムメモリ13に格納される従来周知の作図ソフトである作図処理用プログラムを起動し、エスカレータの概略外形図を作成し(S22)、さらに必要に応じて決定された各構成要素名の寸法一覧を同時に表示し、プリントアウトする。
【0039】
従って、以上のような実施の形態によれば、受梁間寸法,傾斜角度,階高等の仕様情報を入力するだけで、中トラス、上下トラスの寸法を算出し、さらに規定トラス深さ、トラス幅等のエスカレータの概略的な外形寸法を取り出すので、迅速にエスカレータの外形寸法を出力することが可能である。また、中間支持が必要な場合には設計担当者が過去の経験に基づいて中間支持設置概略寸法を入力すれば、複数のトラス縦梁位置寸法の中から中間支持設置概略寸法に近いトラス縦梁位置寸法を選択し、中間支持位置を決定するので、最適な中間支持設置を決定することができる。よって、エスカレータの外形寸法を建築業者に速やかに提示でき、エスカレータの製造メーカと建築物建築業者との間の意思決定をスムーズに行うことができ、また建築業者に迷惑をかけずに建築物の設計ないし施工をスムーズに進めることができる。
【0040】
また、トラス全長から中間支持が必要となるが、支持台の設置が不可能な場合、トラスの剛性を増加させるためにトラス深さを大きくする必要があるが、過去の実績データの中から最適なトラス深さを選択するので、エスカレータを最適な剛性を確保しつつ中間支持無しのエレベータを設置することができる。
【0041】
さらに、仕様情報の他に付加仕様情報が追加された場合、予め定める複数の付加仕様に応じたトラス延長に基づくデータの中から当該付加仕様情報に対応する付加仕様に応じたトラス延長データを取り出し、トラス外形寸法を修正するので、付加仕様情報が追加された場合でも即座に建築業者にエスカレータの外形寸法を提示できる。
【0042】
さらに、エスカレータの外形寸法を決定した後、従来一般的に使用されている作図ソフトを用いて、エスカレータの外形図を作成するので、設計担当者ひいてはエレベータ製造メーカが建築業者に説明し易くなり、また建築物にも有効に反映させることができる。
【0043】
また、設計支援支援設計装置10と複数の端末装置30,…とが通信回線20を挟んで接続する構成のエスカレータの設計システムでは、建築業者ないし建築設計担当者が所有する端末装置30からエスカレータの設計に必要な使用条件をエスカレータ製造メーカの設計支援支援設計装置10に送信すれば、即座に設計支援支援設計装置10が使用条件に見合うエスカレータの外形寸法を作成し、要求元である端末装置30に送信することが可能となる。その結果、建築業者ないし建築設計担当者は、建築物の設計の早い段階において、エスカレータ設置の条件を考慮しつつ建築物の設計を作成することができる。
【0044】
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されるものでなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施できる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明システムの設計対象の一例として示すエスカレータの基本構造図。
【図2】本発明に係るエスカレータの設計システムの一実施形態を示す系統構成図。
【図3】図2に示す設計処理用データベースに保存される設計基本ファイルの一例としてのデータ配列図。
【図4】図2に示す設計処理用データベースに保存されるトラス用ファイルの一例としてのデータ配列図。
【図5】図2に示す設計処理用データベースに保存されるオプション用ファイルの一例としてのデータ配列図。
【図6】図2に示す設計処理用データベースに保存されるトラス深さ用ファイルの一例としてのデータ配列図。
【図7】本発明に係るエスカレータの設計システムの動作、設計方法及びプログラムを説明するフローチャート。
【図8】本発明に係るエスカレータの設計システムの動作、設計方法及びプログラムを説明する図7に続くフローチャート。
【符号の説明】
【0046】
1…トラス、2…縦梁、3…分割部、4…建築物、5…中間支持台、10…設計支援処理装置、11…設計要求情報入力手段、12…設計処理用データベース、13…プログラムメモリ、14…設計処理部、15…データバッフアメモリ、16…表示部、20…通信回線、30…端末装置、101…外形寸法算出手段(外形寸法算出機能)、102…トラス修正処理手段(トラス修正処理機能)、103…支持必要有無判断手段(支持必要有無判断機能)、104…支持位置決定手段(支持位置決定機能)、105…トラス深さ決定手段(トラス深さ決定機能)、106…作図処理手段(作図処理機能)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自身の設計要求情報入力手段または通信回線を介して接続される端末装置から入力されるエスカレータの設計に必要な受梁間寸法,傾斜角度,階高等の仕様情報に基づいて、設計支援処理装置がエスカレータを設計するエスカレータの設計システムにおいて、
前記設計支援処理装置は、
前記自身の設計要求情報入力手段または前記端末装置から入力される前記仕様情報、何人乗りかに応じて定まるトラス幅及び規定トラス深さのデータからエスカレータの1次的な外形寸法を算出する外形寸法算出手段と、
この1次的な外形寸法と予め定める支持参照データとから中間支持の必要性を判断する支持必要有無判断手段と、
複数のトラス縦梁位置寸法が記憶され、前記判断手段によって中間支持が必要であると判断された場合、前記入力手段または前記端末装置から入力される中間支持設置概略寸法に前記複数のトラス縦梁位置寸法の中から最も近いトラス縦梁位置寸法を選択し、中間支持設置位置と決定する支持位置決定手段とを備え、
前記1次的な外形寸法及び前記中間支持位置寸法を、エスカレータの最終的な外形寸法として出力することを特徴とするエスカレータの設計システム。
【請求項2】
自身の設計要求情報入力手段または通信回線を介して接続される端末装置から入力されるエスカレータの設計に必要な受梁間寸法,傾斜角度,階高等の仕様情報に基づいて、設計支援処理装置がエスカレータを設計するエスカレータの設計システムにおいて、
前記設計支援処理装置は、
前記自身の設計要求情報入力手段または前記端末装置から入力される前記仕様情報、何人乗りかに応じて定まるトラス幅及び規定トラス深さのデータからエスカレータの1次的な外形寸法を算出する外形寸法算出手段と、
この1次的な外形寸法と予め定める支持参照データとから中間支持の必要性を判断する支持必要有無判断手段と、
この判断手段によって中間支持が必要であるが、支持台の設置が不可能な場合、トラスの剛性を増加させるために過去の実績データの中から最適なトラス深さを検索し、トラス深さを定めるトラス深さ決定手段とを備え、
前記1次的な外形寸法及び前記トラス深さを、エスカレータの最終的な外形寸法として出力することを特徴とするエスカレータの設計システム。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のエスカレータの設計システムにおいて、
前記設計支援処理装置は、前記仕様情報の他に付加仕様情報が入力された場合、予め定める複数の付加仕様に応じたトラス延長に基づくデータの中から当該付加仕様情報に対応する付加仕様に応じたトラス延長データを取り出し、前記1次的な外形寸法の中から該当するトラス構成要素の寸法に前記トラス延長分を加算し、前記トラス外形寸法を修正するトラス修正処理手段を設け、
この修正されたトラス外形寸法を前記支持必要有無判断手段による中間支持の判断に用いることを特徴とするエスカレータの設計システム。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3の何れか一項に記載のエスカレータの設計システムにおいて、
前記中間支持の必要性は、2点以上の支持を含むものであることを特徴とするエスカレータの設計システム。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4の何れか一項に記載のエスカレータの設計システムにおいて、
前記設計支援処理装置は、前記最終的に決定されたエスカレータの外形寸法に基づいて作図処理を実施し、当該エスカレータの概略外形図を作成する作図処理手段を設けたことを特徴とするエスカレータの設計システム。
【請求項6】
自身の設計要求情報入力手段または通信回線を介して接続される端末装置から入力されるエスカレータの設計に必要な受梁間寸法,傾斜角度,階高等の仕様情報に基づいて、設計支援処理装置がエスカレータを設計するエスカレータの設計システムにおいて、
前記設計支援処理装置は、自身の設計要求情報入力手段または端末装置から入力される受梁間寸法,傾斜角度,階高等の仕様情報と予め定めるトラス幅及びトラス深さとからエスカレータの1次的な外形寸法を求めた後、付加仕様情報の入力有無を判断し、当該付加仕様情報の追加がある場合、追加の付加仕様情報に応じたトラス延長分に基づいて前記1次的な外形寸法を修正し、この修正された外形寸法から中間支持の必要有無を判断することを特徴とするエスカレータの設計方法。
【請求項7】
請求項6に記載のエスカレータの設計方法において、
前記設計支援処理装置は、前記中間支持の必要性がある場合、中間支持設置の可否を判断し、中間支持の設置が可能である場合には外部から入力される中間支持設置概略寸法に基づき予め定める複数のトラス縦梁位置寸法の中から最も近いトラス縦梁位置寸法を選択し、中間支持設置位置と決定し、
また、中間支持の設置が不可能である場合にはトラスの剛性を増加させるために過去の実績データの中から最適なトラス深さを検索してトラス深さを決定し、エスカレータの最終的な外形寸法を決定することを特徴とするエスカレータの設計方法。
【請求項8】
何人乗りかで定まるトラス幅、規定トラス深さ、各付加仕様に応じたトラス構成要素の延長データ、中間支持不可能な場合の過去実績データ及び複数の中間支持の縦梁位置寸法データが記憶され、エスカレータの外形寸法を設計処理するコンピュータに、
外部から入力される受梁間寸法,傾斜角度,階高等の仕様情報と前記トラス幅及びトラス深さとに基づいてエスカレータの1次的な外形寸法を求める外形寸法算出機能と、付加仕様情報が入力された場合、前記複数の付加仕様に応じたトラス延長に基づくデータの中から当該付加仕様情報に対応する付加仕様に応じたトラス延長データを取り出し、前記1次的な外形寸法の中の該当するトラス構成要素の寸法を修正するトラス修正処理機能と、この修正された外形寸法と予め定める支持参照データとから中間支持の必要性を判断する支持必要有無判断機能と、中間支持が必要であると判断された場合、入力される中間支持設置概略寸法に前記複数のトラス縦梁位置寸法の中から最も近いトラス縦梁位置寸法を選択し、中間支持設置位置と決定する支持位置決定機能とを実現させることを特徴とするプログラム。
【請求項9】
請求項8に記載のプログラムにおいて、
中間支持が必要であると判断された場合、中間支持設置の可否を判断し、当該中間支持設置が不可能である場合、トラスの剛性を増加させるために前記過去の実績データの中から最適なトラス深さを検索し、トラス深さを決定するトラス深さ決定機能を実現させるように付加したことを特徴とするプログラム。
【請求項10】
請求項8又は請求項9に記載のプログラムにおいて、
最終的に決定されたエスカレータの外形寸法に基づいて作図処理し、当該エスカレータの概略外形図を作成する作図処理機能を実現させるように付加したことを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−188295(P2006−188295A)
【公開日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−381657(P2004−381657)
【出願日】平成16年12月28日(2004.12.28)
【出願人】(390025265)東芝エレベータ株式会社 (2,543)
【Fターム(参考)】