説明

エスカレーター診断装置

【課題】簡便な取付けでエスカレーターのステップまたは手摺の駆動装置を診断する。
【解決手段】回転軸1に巻き付けるように取り付けられたエスカレーター診断装置5は、加速度センサ6、信号記録装置7および判定装置8により構成される。加速度センサ6は周方向加速度9、遠心力方向加速度10、軸方向加速度11をそれぞれ測定し、それぞれのデータを出力する。判定装置8はこのデータを基に、回転軸1または軸受2またはスプロケット3またはチェーン4の異常の有無を、予め測定した正常時のデータと比較することによって判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エスカレーターのステップまたは手摺の駆動装置を診断するためのエスカレーター診断装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の診断装置は、通過検出器および回転検出器を駆動装置内部に固定設置し、通過検出器によりチェーンリンク間の通過時間間隔を測定すると同時に、駆動機に設けられた回転検出器により回転速度を測定し、この回転速度の測定値により速度係数を算出するとともに、この速度係数に基づき上述の通過時間間隔を補正し、上記通過時間間隔と速度係数の変化および判定値に基づき異常判定する(例えば特許文献1)。
【0003】
【特許文献1】特許第3570914号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような従来の診断装置は、診断を行うために通過検出器および回転検出器などをエスカレーター駆動装置内部に固定設置する必要があり、これらの検出器を取り付けるために多くの手間と時間を要するため、既設エスカレーターを短時間で診断することができないという問題点があった。
【0005】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであって、診断装置の設置を簡便にすることを可能とし、かつ、高精度に駆動装置の異常・正常を診断することを可能としたエスカレーター診断装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に関わるエスカレーター診断装置は、エスカレーターのステップまたは手摺の駆動装置の回転軸に巻き付ける、もしくは回転軸端のローラ上に取り付けるだけで、診断を可能とする。
【0007】
そのために本発明のエスカレーター診断装置は、エスカレーターのステップまたは手摺の駆動装置の回転軸にかかる周方向または遠心力方向の加速度信号を検出する加速度センサと、上記加速度信号から重力加速度成分を除去し周方向または遠心力方向の振動信号を算出する振動信号算出手段と、上記振動信号を正常時と点検時とで比較して差異が生じた場合には、上記駆動装置を異常と判定し、差異がない場合には、上記駆動装置を正常と判定する判定手段とを設ける構成としたものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、単にエスカレーターのステップまたは手摺の駆動装置の回転軸に巻き付ける、もしくは回転軸端のローラ側面上に取り付けるだけで、診断作業を可能とする。
また本発明によれば、エスカレーターのステップまたは手摺の駆動装置の回転軸に、単に取り付けた加速度センサの測定データだけで、該駆動装置の各軸方向振動・回転角・回転速度を測定することにより、これらの測定結果を用いて駆動装置の異常もしくは正常を判定するようにしたので、既設エスカレーターに対して簡便に診断装置を設置することが可能となるとともに、精度の高い診断を可能とするものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
実施の形態1.
図1(a)は、本発明の実施の形態1による診断装置を示す図である。エスカレーターの駆動装置は複数の回転軸1から構成されているが、その一例を示したものである。1つ以上の軸受2で支持された回転軸1には、1つ以上のスプロケット3が取り付けられており、1つ以上のチェーン4を介して、他の回転軸とつながっている。本図は、軸受2、スプロケット3およびチェーン4の配置についての一例を示したものに過ぎず、これらのうちの一つ以上の上記構成要素がなくてもよいし、上述の構成要素が回転軸1と接触された配置となっていれば、他の配置であってもよい。
診断装置5は、回転軸1に巻き付けるように取り付けられる。また診断装置5は、図1(b)に示すように加速度センサ6、信号記録装置7および判定装置8により構成される。なお、加速度センサ6は図1(b)に示すように、周方向加速度9、遠心力方向加速度10および、軸方向加速度11をそれぞれ測定し、それぞれのデータを出力する。
【0010】
図2は、診断装置5を示すブロック図である。加速度センサ6で測定された、周方向加速度9、遠心力方向加速度10および、軸方向加速度11は、信号記録装置7のデジタル変換部12において、一定時間間隔毎にA/D変換(アナログデジタル変換)され、メモリ13に記憶される。メモリ13に格納された信号をそれぞれ、周方向信号14、遠心力方向信号15および、軸方向振動信号16と呼ぶ。
【0011】
周方向信号14、遠心力方向信号15および、軸方向振動信号16の一例を図3に示す。図3より明らかなように周方向信号14または遠心力方向信号15は、回転軸1の振動成分に加え、回転軸1の1回転を1周期とする正弦波波形が重畳していることがわかる。この重畳された正弦波波形成分は重力加速度成分を表しており、回転軸1の回転角に応じて重力加速度方向に対する加速度センサ6の角度が変化することにより、周方向信号14または遠心力方向信号15に重畳する重力加速度成分もまた変化することは明らかである。
【0012】
判定装置8の回転角検出手段17は、周方向信号14および遠心力方向信号15から回転角の時系列信号18を検出する。図3を用いて回転角の時系列信号18の検出方法について以下、説明する。
まず回転角検出手段17は、周方向信号14および遠心力方向信号15に対して、回転軸1の回転周波数よりも大きいカットオフ周波数を有するローパスフィルタを適用し、重力加速度成分に相当する周方向重力加速度信号19および遠心力方向重力加速度信号20を検出または算出する。
【0013】
ここで加速度センサの傾きを、図1(b)の基準位置101を0度として反時計周りにプラスの角度であるとすると、サンプリング時刻tにおける加速度センサの傾きθ(度)は、下記の式(1)〜(4)により算出される。
ただし、サンプリング時刻tにおける周方向重力加速度信号をX(t)、遠心力方向重力加速度信号Y(t)とし、図中の9および10の矢印の方向をプラスとする。
【0014】
X(t−1)≧0、Y(t)≧0のとき、
θ(t)=tan-1(|Y(t)/X(t)|)/π×180(度)・・・(1)
X(t−1)>0、Y(t)≧0のとき、
θ(t)=180−tan-1(|Y(t)/X(t)|)/π×180(度)・・(2)
X(t−1)<0、Y(t)<0のとき、
θ(t)=180+tan-1(|Y(t)/X(t)|)/π×180(度)・・(3)
X(t−1)≧0、Y(t)<0のとき、
θ(t)=360−tan-1(|Y(t)/X(t)|)/π×180(度)・・(4)
【0015】
したがって、θ(t)および累積回転数Cを用いて、サンプリング時刻tにおける回転角R(t)は、下記の式(5)により求められる。
R(t)=θ(t)+C×360(度) ・・・(5)
ただし、
X(t−1)≧0かつY(t−1)<0かつ
X(t)≧0かつY(t)≧0のとき、C=C+1
X(t−1)≧0かつY(t−1)≧0かつ
X(t)≧0かつY(t)<0のとき、C=C−1
【0016】
なお上記では、周方向信号14および遠心力方向信号15が両方とも測定される場合における回転角の時系列信号18の検出方法について述べたが、回転角の時系列信号18の検出は周方向信号14または遠心力方向信号15のいずれかのみが測定される構成、すなわち周方向加速度9または遠心力方向加速度10のいずれかの加速度センサ6のみの構成においても可能である。
【0017】
以下は、周方向信号14のみが測定される構成について、図4を用いて回転角の時系列信号18の検出方法を説明する。
まず回転角検出手段17は、上述と同様にして、重力加速度成分に相当する周方向重力加速度信号19を得る。次に、周方向重力加速度信号19にヒルベルト変換を行った信号であるヒルベルト変換信号102を算出する。ヒルベルト変換信号102は、周方向重力加速度信号19の90度分位相を遅らせた信号となる。よって、サンプリング時刻tにおける周方向重力加速度信号をX(t)、ヒルベルト変換信号をY(t)とすると、上述の式(1)〜(5)と同様の方法で、サンプリング時刻tにおける回転角R(t)が得られる。
【0018】
またここで回転角検出手段17は、周方向重力加速度信号19を反転して微分した後、周方向重力加速度信号19の振幅と同一となるように振幅を正規化した信号である反転微分信号103を算出してもよい。この場合、反転微分信号103は、周方向重力加速度信号19の90度分位相を遅らせた信号となる。よって、サンプリング時刻tにおける周方向重力加速度信号をX(t)、反転微分信号をY(t)とすると、上述の式(1)〜(5)と同様の方法で、サンプリング時刻tにおける回転角R(t)が得られる。
【0019】
さらにまた本発明では、周方向重力加速度信号19のゼロクロス点104を用いて、回転角の時系列信号18を求めるように構成してもよい。すなわち、サンプリング時刻tにおける周方向重力加速度信号をX(t)とすると、X(p−1)<0かつX(p)≧0なるpをゼロクロス点104とする。サンプリング時刻tにおける回転角R(t)は、サンプリング時刻tを挟む直近のゼロクロス点m<t<nなるmとnを用いて、下記の式(6)により求められる。
【0020】
R(t)=(t−m)/(n−m)×360+C×360−90(度) ・・・(6)
ただし、
X(t−1)<0かつX(t)≧0のとき、C=C+1
【0021】
なおここで注意すべきことは、ゼロクロス点104については、上記では負から正へ変化する点を用いて説明したが、正から負へ変化する点を用いてもよいし、その両方を用いる構成としても良い。
【0022】
振動信号算出手段21は、周方向信号14および遠心力方向信号15から、重力加速度成分を除いた回転軸1の振動成分であるところの、周方向振動信号22および遠心力方向振動信号23を算出する。ここでは図3に示すように、周方向信号14から周方向重力加速度信号19を差し引いた信号を周方向振動信号22とする。同様に、ここでは遠心力方向信号15から周方向重力加速度信号19を差し引いた信号を遠心力方向振動信号23とする。
【0023】
加算平均手段24は、回転角の時系列信号18すなわち、回転角検出手段17で得られた各サンプリング時刻tにおける回転軸1の回転角R(t)を用いて、周方向振動信号22、遠心力方向振動信号23および軸方向振動信号16について、任意の回転角周期で信号の加算平均を行う。図5は、任意の回転角周期=360度とした場合における、周方向振動信号22の処理例を示す。図5に示したように加算平均手段24は、360度毎に周方向振動信号22を切り出し、各回転角毎に加算平均を行う。この例では、360度〜720度、720度〜1080度、1080度〜1440度、・・・の周方向振動信号22を切り出して、各回転角毎に加算平均することにより、周方向加算平均信号25を求めている。なおここでは加算平均手段24は、周方向振動信号22をそのまま加算平均したが、周方向振動信号22の包絡線を取った信号を加算平均してもよいし、周方向振動信号22の包絡線の絶対値を取った信号を加算平均してもよい。
同様に加算平均手段24は、遠心力方向振動信号23から遠心力方向加算平均信号26を、軸方向振動信号16から軸方向加算平均信号27を各々算出する。なおここでの加算平均手段24は、任意の回転角周期=360度として説明したが、いずれの回転角としてもよいことはいうまでもない。
【0024】
回転速度算出手段28は、回転角の時系列信号18から、回転速度の時系列信号29を求める。すなわち回転速度の時系列信号29は、任意の整数k(>0)を用いて、サンプリング時刻t+kにおける回転角R(t+k)と、サンプリング時刻tにおける回転角R(t)を用いて、回転速度V(t)を以下の式(7)により求める。なお回転速度は、回転角を微分することにより数学的に回転速度が求められることは周知の通りであり、この例示した方法のみによらず、ここでは回転角から回転速度を求める手法であればいずれであってもよいことはいうまでもない。
【0025】
V(t)=(R(t+k)−R(t))/(k×サンプリング間隔) ・・・(7)
【0026】
判定手段30は、点検時における回転速度の時系列信号29、周方向加算平均信号25、遠心力方向加算平均信号26または軸方向加算平均信号27について、予め求めておいた正常時の上記各信号と比較して、差異があれば異常発生として判定結果31を出力する。
差異の判定方法としては、各信号における統計特徴量を求め、正常時と点検時の差異が一定値未満ならば正常、一定値以上ならば異常発生と判定し出力するよう構成してもよい。この場合、統計特徴量としては、信号のピーク値、平均振幅、標準偏差、尖度、歪度などの一般的な特徴量を用いることができる。
さらにまた、他の差異の判定方法としては、各信号の特定周波数成分の大きさを求め、正常時と点検時の差異が一定値未満ならば正常、一定値以上ならば異常発生と判定し出力するよう構成してもよい。ここで特定周波数成分の大きさは、各信号にフーリエ変換を行って周波数スペクトルを求め、周波数スペクトルのうちの特定周波数成分の大きさを抜き出すことで求めてもよいし、各信号にバンドパスフィルタを施して特定周波数成分のみを抜き出すことで、その大きさを求めてもよい。
また判定手段30は、加算平均手段24を用いて任意の回転角周期で信号の加算平均を行った周方向加算平均信号25、遠心力方向加算平均信号26または軸方向加算平均信号27を用いて判定を行っているが、加算平均手段24を設けずに、周方向振動信号22、遠心力方向振動信号23または、軸方向振動信号16に対して、上述の判定を行うように構成してもよい。
【0027】
このように本発明のエスカレーター診断装置によれば、エスカレーターのステップまたは手摺の駆動装置の回転軸1に取り付けた加速度センサ6ひとつで各種のデータを取得し、回転速度の時系列信号29、周方向振動信号22、遠心力方向振動信号23、軸方向振動信号16、周方向加算平均信号25、遠心力方向加算平均信号26または軸方向加算平均信号27を求めて、該駆動装置の異常を判定するようにしたので、既設エスカレーターへ診断装置を簡便に設置することが可能となるとともに、回転軸1、軸受2、スプロケット3またはチェーン4などの各部位の異常の有無を高精度に判定することが可能となる。
【0028】
実施の形態2.
図6(a)は、本発明の実施の形態2によるエスカレーター診断装置を示す図である。実施の形態1と異なる点は、回転軸1上に診断装置5を巻き付けるスペースがない場合において、回転軸端のローラ201上に取り付けるように構成した点である。
すなわちこの実施の形態2では、実施の形態1と同様に、1つ以上の軸受2で支持された回転軸1には、1つ以上のスプロケット3が取り付けられており、1つ以上のチェーン4を介して他の回転軸とつながっている。また回転軸端には、ローラ201が取り付けられており、診断装置5はこのローラ201の側面に取り付けられる。
図6(a)は、軸受2およびスプロケット3およびチェーン4およびローラ201の配置についての一例を示したものに過ぎず、これらのうちの一つ以上の上述の構成要素がなくてもよいしまた、上述の構成要素が回転軸1と接触された配置となっていれば、他の配置であってもよいことは実施の形態1の場合と同様である。
加えてこの実施の形態2では、本発明のエスカレーター診断装置5はローラ201の側面に取り付けられるが、このローラ201はここでは回転軸1と回転中心軸が同一となるように取り付けられている。
またこの診断装置5は、図6(b)に示すように、実施の形態1と同じく、加速度センサ6、信号記録装置7および判定装置8により構成される。加速度センサ6は周方向加速度9、遠心力方向加速度10、軸方向加速度11をそれぞれ測定し、それぞれのデータを出力する。すなわち加速度センサ6は、すでに述べた実施の形態1と同様にここでは、上記回転軸1の回転に応じて、上述の各加速度を連続した時系列変化のアナログ信号データとして出力している。
その後のデータの処理、判定方法は実施の形態1の場合と同様であるので以下は省略する。
【0029】
このように本発明実施の形態2のエスカレーター診断装置5は、エスカレーターのステップまたは手摺の駆動装置の回転軸1に直接、巻付けるように取り付けなくとも、回転軸端のローラ201の側面に当該回転軸1と回転中心軸が同一となるように取り付けるよう構成しているので、この種装置の機能、性能を何ら損ねることなく、実施の形態1と同等の高精度の異常の有無判定を行うことができる。その結果、回転軸1上に診断装置5を取り付けるスペースがない場合においても設置が可能となる。
ここで、この実施の形態2ではローラ201の側面に本発明診断装置5を取り付けるよう構成した例を示したが、本発明診断装置5の取り付け部位は、エスカレーターのステップまたは手摺の駆動装置の回転軸1から、その回転および軸振動などの変化が比較的忠実に伝達される部位であれば、他の部位であってもよい。
【0030】
以上のように本発明のエスカレーター診断装置は、加速度センサを用いることにより小型軽量化を計ることによって既設の設備に対して簡便に取り付け可能としかつ、当該センサにより検出されたアナログ信号の「加速度値」を連続した時系列変化のデジタル信号(データ)に変換することによってコンピュータなどによる演算処理を可能とし、この種の被診断装置の回転軸1、軸受2、スプロケット3、チェーン4またはローラ201などの機械系部位の異常の有無の診断作業を、所定のアルゴリズムによるデジタル信号(データ)処理によって可能とする。その結果、診断作業はコンピュータなどの演算処理による高精度、高能率、高速で上述のような機械系部位の異常の有無判定結果を得ることが可能となる。
このことは、エスカレーターなどの装置が万一の故障の際においては、その復旧作業時間を著しく短縮し、かつ、一刻も早い復旧が望まれるこの種の迅速な作業において、多大な貢献を果たす効果を奏することを意味する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】(a)は本発明の実施の形態1によるエスカレーター診断装置を示す構成図である。(b)は(a)における診断装置の拡大断面図である。
【図2】本発明の実施の形態1によるエスカレーター診断装置を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施の形態1による回転角検出手段および振動信号検出手段を説明する図である。
【図4】本発明の実施の形態1による回転角検出手段を説明する図である。
【図5】本発明の実施の形態1による加算平均手段を説明する図である。
【図6】(a)は本発明の実施の形態2によるエスカレーター診断装置を示す構成図である。(b)は(a)における診断装置の拡大断面図である。
【符号の説明】
【0032】
1 回転軸、2 軸受、3 スプロケット、4 チェーン、5 診断装置、6 加速度センサ、7 信号記録装置、8 判定装置、9 周方向加速度、10 遠心力方向加速度、11 軸方向加速度、12 デジタル変換部、13 メモリ、14 周方向信号、15 遠心力方向信号、16 軸方向振動信号、17 回転角検出手段、18 回転角の時系列信号、19 周方向重力加速度信号、20 遠心力方向重力加速度信号、21 振動信号算出手段、22 周方向振動信号、23 遠心力方向振動信号、24 加算平均手段、25 周方向加算平均信号、26 遠心力方向加算平均信号、27 軸方向加算平均信号、28 回転速度算出手段、29 回転速度の時系列信号、30 判定手段、31 判定結果、101 基準位置、102 ヒルベルト変換信号、103 反転微分信号、104 ゼロクロス点、201 ローラ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エスカレーターのステップまたは手摺の駆動装置の回転軸にかかる周方向または遠心力方向の加速度信号を検出する加速度センサと、
前記加速度信号から重力加速度成分を除去し周方向または遠心力方向の振動信号を算出する振動信号算出手段と、
前記振動信号を正常時と点検時とで比較して差異が生じた場合には、前記駆動装置を異常と判定し、差異がない場合には、前記駆動装置を正常と判定する判定手段とを設けたことを特徴としたエスカレーター診断装置。
【請求項2】
前記周方向または遠心力方向の重力加速度信号を用いて、前記駆動装置の回転軸の回転角を算出し回転角の時系列信号を出力する回転角検出手段と、
前記回転角の時系列信号を用いて、前記周方向または遠心力方向の振動信号を任意の回転角周期で各回転角毎に加算平均し加算平均信号を出力する加算平均手段と、
前記判定手段は前記加算平均信号を正常時と点検時とで比較することにより、差異を生じた場合には前記駆動装置を異常と判定し、差異を生じない場合には正常と判定することを特徴とした請求項1記載のエスカレーター診断装置。
【請求項3】
前記回転角の時間変化から前記駆動装置の回転速度を算出する回転速度算出手段を設け、
前記判定手段は前記回転速度の時系列信号を正常時と点検時とで比較することにより、差異を生じた場合には前記駆動装置を異常と判定し、差異を生じない場合には正常と判定することを特徴とした請求項2記載のエスカレーター診断装置。
【請求項4】
前記エスカレーターのステップまたは手摺の駆動装置の前記回転軸にかかる軸方向の加速度を振動信号として出力する加速度センサを設け、
前記判定手段は軸方向の前記振動信号を正常時と点検時とで比較して差異が生じた場合には前記駆動装置を異常と判定し、差異がない場合には前記駆動装置を正常と判定することを特徴とした請求項1から請求項3のうちのいずれか1項記載のエスカレーター診断装置。
【請求項5】
前記エスカレーターのステップまたは手摺の駆動装置の前記回転軸にかかる軸方向の振動信号として出力する加速度センサと、
前記回転角の時系列信号を用いて、前記軸方向の振動信号を任意の回転角周期で各回転角毎に加算平均し加算平均信号を出力する加算平均手段と、
前記判定手段は前記軸方向の加算平均信号を正常時と点検時とで比較することにより、差異を生じた場合には前記駆動装置を異常と判定し、差異を生じない場合には正常と判定することを特徴とした請求項2または請求項3記載のエスカレーター診断装置。
【請求項6】
前記判定手段は、前記回転速度の時系列信号、周方向の振動信号、遠心力方向の振動信号、軸方向の振動信号、周方向の加算平均信号、遠心力方向の加算平均信号または軸方向の加算平均信号の少なくともいずれか一つにおける統計特徴量を求め、前記統計特徴量を比較し、正常時と点検時の差異が一定値未満ならば正常、一定値以上ならば異常発生と判定するように、予め設定した閾値を用いる構成としたことを特徴とする請求項5記載のエスカレーター診断装置。
【請求項7】
前記判定手段は、前記回転速度の時系列信号、周方向の振動信号、遠心力方向の振動信号、軸方向の振動信号、周方向の加算平均信号、遠心力方向の加算平均信号または軸方向の加算平均信号の少なくともいずれか一つにおける特定周波数成分の大きさを求め、前記特定周波数成分の大きさを比較し、正常時と点検時の差異が一定値未満ならば正常、一定値以上ならば異常発生との判定結果を出力する手段で構成したことを特徴とする請求項5記載のエスカレーター診断装置。
【請求項8】
前記エスカレーターのステップまたは手摺の駆動装置の回転軸または回転軸端のローラ上に、少なくとも前記加速度センサが取り付けられて成ることを特徴とした請求項1から請求項7のうちのいずれか1項記載のエスカレーター診断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−331860(P2007−331860A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−163693(P2006−163693)
【出願日】平成18年6月13日(2006.6.13)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【出願人】(000236056)三菱電機ビルテクノサービス株式会社 (1,792)
【Fターム(参考)】