説明

エスコートレールの表面処理装置

【課題】安全ベルトを案内するエスコートレールの表面を処理する表面処理装置を提供する。
【解決手段】本エスコートレール2の左板部2aと右板部2bを挟着する上車輪と下車輪82bと、エスコートレール2の中空部4内において、左側板2cと右側板2dを摺動回転する中空車輪84bを本体に備えていると共に、モータで回転する研磨体86によって、エスコートレール2の左板部2aと右板部2bの表面が研磨する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、安全ベルトを案内するエスコートレールの表面を処理する表面処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
送電線用の鉄塔等には、梯子に平行して、作業員が付設の安全ベルトを案内するエスコートレールが敷設されていて、作業員は、送電線用の鉄塔に登って保守・点検をする。
そこで、作業員が梯子を登るに当たって、前記エスコートレールには、例えば、特開平9−154963号公報に開示の墜落防止安全装置が取り付けられていて、作業員の安全ベルトは、その墜落防止安全装置に取り付けられている。
そのため、例え、作業員が梯子から落下しても、墜落防止安全装置がエスコートレールに支持され、作業員の落下が防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−154963号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記エスコートレールの表面が滑り易い状態になると、墜落防止安全装置が作動しても滑って、停止できず、落下するという懸念がある。
そこで、本願では、前記エスコートレールの表面を処理する表面処理装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願の請求項1の表面処理装置は、エスコートレールの左板部と右板部の表面を研磨するものであり、エスコートレールの左板部と右板部を挟着する上車輪と下車輪と、エスコートレールの中空部内において、左側板と右側板を摺動回転する中空車輪を本体に備えている。
そして、本体にはモータで回転する研磨体が付設してあり、この表面処理装置をエスコートレールで誘導することによって、モータで回転する研磨体によって、エスコートレールの左板部と右板部の表面が研磨できる。
【0006】
また、請求項2の表面処理装置は、本体に支柱が立設してあり、その支柱には調整杆を回動可能に取り付けるとともに、その調整杆には研磨体を回転するモータが付設してある。また、前記支柱には前記調整杆の上部に補助杆を回動可能に取り付けてあると共に、その補助杆には前記調整杆に当接可能な調節体が取り付けてある。また、前記支柱には操作レバーが回動可能に取り付けてあり、前記操作レバーには、縦方向の縦連結杆と、その縦連結杆に垂直の横連結杆がロック体に、それぞれ回動可能に取り付けてある。そして、前記ロック体は、前記支柱において補助杆に載置した状態に配置してある。
【0007】
研磨体の位置調整を行うには、操作レバーを半時計方向に回動して、補助杆のロックを外し、調節体の調節によって、調整杆の位置を決めることができる。即ち、この調整杆の位置はモータの位置、即ち、研磨体の位置である。この調整杆の位置が決められたら、操作レバーを時計方向に回動して、縦連結杆と横連結杆を立設状態にすると、ロック体を下方向に押圧するので、調整杆は支柱にロックされた状態になる。
【発明の効果】
【0008】
簡便な構成でエスコートレールを研磨することができするし、研磨体の位置調整を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本願の表面処理装置を鉄塔に使用するときの構成図である。
【図2】ワイヤーガイド装置を示す図である。
【図3】ワイヤー導入ガイドローラを示す図である。
【図4】ワイヤー接続台車を示す図である。
【図5】墜落防止安全装置を示す図である。
【図6】表面処理装置の正面を示す図である。
【図7】表面処理装置の側面を示す図である。
【図8】表面処理装置の研磨体の調整機構を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、送電線を施設の鉄塔1において使用している図である。鉄塔1には、プラットホーム(図示略)に昇るための梯子(図示略)が垂直方向に設置されており、この梯子に並行して鋼製のエスコートレール2が固定されている。このエスコートレール2は、作業員の安全ベルトを案内するためのものである。
尚、前記エスコートレール2の断面は、図7(B)に示すように、中空部4が形成してあり、板状の左板部2aと右板部2bが相対峙して中央に隙間3を形成し、前記左板部2aと右板部2b部にそれぞれ垂直に左側板2cと右側板2d及び底板2eとで中空部4を形成し、外観全体としては四角体状である。
また、エスコートレール2の表面処理をする個所は、前記隙間3に対峙する左板部2aと右板部2bの表面側Xである。
【0011】
図1は、前記エスコートレール2の表面を処理する機器であるが、必ずしも全てが必要な機器ではない。
地上には、ワイヤーYを巻き取るウインチ10が設置してあり、駆動体11でドラム12を回転してワイヤーYを巻く。このウインチ10によるワイヤーYで引き上げられる機器には、巻き上げ滑車15、ワイヤーガイド装置20、ワイヤー導入ガイドローラ30、ワイヤー接続台車50、墜落防止安全装置60、表面処理装置80である。また、前記表面処理装置80に給電する給電巻き装置100は地上に設置してある。
【0012】
前記ワイヤーガイド装置20は、ワイヤーYをエスコートレール2の外部から前記エスコートレール2に形成の中空部4を通すために設置してある。このワイヤーガイド装置20は、2本のボルトナット21でエスコートレール2に固定され、一対の上車輪22,22と下車輪23を備えていて、前記滑車15からのワイヤーYは、ワイヤーYが上車輪22から外れないように、一対の上車輪22と上車輪22の間を相通し、下車輪23に導かれる。
【0013】
次に、ワイヤー導入ガイドローラ30は、エスコートレール2が曲がっているときに、例えば、図1に示す鉄塔1は、中間点33で僅かに曲折しているので、上エスコートレール22aと下エスコートレール22bの接合部22cの角度は、鈍角に形成されている。このような接合部22cにワイヤー導入ガイドローラ30を設置することによって、ワイヤーYをエスコートレール2の中空部4を通すことができ、ワイヤー接続台車50を引っ張る。
そこで、ワイヤー導入ガイドローラ30は、2本のボルトナット31でエスコートレール2に固定され、車輪33を備えていて、その車輪33を介してワイヤーYを導く。
【0014】
次に、ワイヤー接続台車50について説明すると、このワイヤー接続台車50は、上流に接続するワイヤーYをエスコートレール2の中空部4に導くと共に、下流の墜落防止安全装置60を中空部4の外側で引っ張る。
このワイヤー接続台車50の本体51には、上左車輪52aと上右車輪53a、下左車輪52bと下右車輪53bが設けてあり、一対の上左車輪52aと下左車輪52b、及び、一対の上右車輪52aと下右車輪53bは、エスコートレール2の左板部2aと右板部2bの表面Xと裏面を挟着しながら上昇する。
尚、前記上左車輪52aと下左車輪52b、及び、一対の上右車輪52aと下右車輪53bはエスコートレール2を落下しない程度に挟着され、引っ張られると、回転可能である。
【0015】
また、前記エスコートレール2の中空部4内には、一対の左中空車輪54aと右中空輪54bが配置してあり、それらの車輪はエスコートレール2の左側板2cと右側板2dの内側に摺動回転することによって、横揺れ防止を図っている。
また、前記本体51には、L字状の突出体56が取り付けてあり、突出体56の下側に取り付けのフック57には、エスコートレール2の中空部4内をワイヤーYが通って、ワイヤー導入ガイドローラ30に導くワイヤーYが結んである。
一方、突出体56の上右側のフック58には、墜落防止安全装置60と結ぶワイヤーYが結んである。
【0016】
次に、前記ワイヤー接続台車50に引っ張られて上昇する墜落防止安全装置60について説明する。
この墜落防止安全装置60は、表面処理装置80に異常な落下力が作用したとき、支持機構として作用して表面処理装置80の落下を防止する。
この墜落防止安全装置60には、一対の左車輪61と一対の右車輪62が本体63に回転可能に取り付けてあると共に、前記車輪はエスコートレール2の中空部4内の左板部2aと右板部2bの裏面を摺動しながら上昇すると共に、前記エスコートレール2の中空部4内には、一対の左中空車輪64aと右中空輪64bが配置してあり、それらの車輪はエスコートレール2の左側板2cと右側板2dの内側に摺動回転することによって、横揺れ防止を図っている。
【0017】
前記本体63の右上部には、停止軸体65が設けてあり、作動体66に形成の長孔67に嵌挿してある。この作動体66の端部には、ワイヤーYが固定してあり、他端部は表面処理装置80に結束してある。また、本体63の左には固定軸68が設けてあると共に、前記作動体66にも固定軸が設けてあり、それらの固定軸68,69には連結体70が回動可能に連結してある。また、前記連結体70に設けてあるワイヤー軸71にはワイヤーYが結んであり、このワイヤーYの端部はワイヤー接続台車50に結束してある。
【0018】
この墜落防止安全装置60は、表面処理装置80をワイヤーYで引っ張るが、許容引張り力が作用している間は、作動体66の停止軸体65は、長穴67の右端部に位置する(図5(A))。
しかし、表面処理装置80の狭着力がなくなり、落下荷重がかかると、作動体66に設けてあるトルクリミッターが解除されて、固定軸68を中心に、作動体66は回動して、作動体66の停止軸体65は長穴67の左端部で停止する(図5(B))。
この作動体66の作用によって、一対の左車輪61と一対の右車輪62は、エスコートレール2の中空部4内の左板部2aと右板部2bの裏面を押圧してロック作用をなして、墜落防止安全装置60は停止し、表面処理装置80の落下防止を図る。
【0019】
次に、表面処理装置80について説明する。この表面処理装置80の左部に設けてあるフック84には、前記墜落防止安全装置60とワイヤーYで結合されており、墜落防止安全装置60の上昇に伴って上昇する。
この表面処理装置80に付設の上左車輪81aと下左車輪81bは、本体83に設けられている軸82で回転可能であり、上左車輪81aは左板部2aの表面側に、下左車輪81bは左板部2aの裏面側に設置されていて、左板部2aを挟着している。尚、前記右板部2bに対しても、上左車輪81aと下左車輪81bが左板部2aと同様に設置されている。即ち、4個の車輪が配置してあって、左板部2aと右板部2bを挟着している。
また、本体の下方には、前記上左車輪81aと下左車輪81bと同様に、上右車輪82aと下右車輪82bが、左板部2aと右板部2bを挟着して設けられていて、前記上左車輪81aと下左車輪81bと同様に、4個の車輪によって、左板部2aと右板部2bを挟着している。
尚、前記上左車輪81aと下左車輪81b、上右車輪82aと下右車輪82b等は、落下しない程度に挟着していて、引っ張ると回転可能である。
【0020】
また、前記エスコートレールの中空部内には、上中空車輪84aと下中空車輪84bが配置してあり、それらの車輪は左側板2cと右側板2dの内部で摺動回転することによって、横揺れ防止を図っている。
また、後述する調整杆91には、モータ85が付設してあり、このモータ軸には前記左板部2aと右板部2bの表面Xに接触して表面を処理する研磨体86が取り付けてある。また、研磨体86には、研磨された研磨くずが飛散しないようにカバー87が設けられていると共に、その研磨くずが排出される位置、即ち、研磨体86の回転する接線方向には集塵袋88が取り付けてある。
また、モータ85の反対側には、バランスウエイト85aが取り付けてあり、研磨体86で研磨するときの反発力等のバランスを取っている。また、前記モータ85の動力ケーブル100aは、地上に設置の給電巻き取り装置100を介して導かれる。
【0021】
また、前記本体83の上部には、前記研磨体86の位置調整機構が設けてあり、この研磨体86の位置調整機構は、研磨体86が磨耗したとき、エスコートレール2との接触調整を図るものであり図7,図8を参照して説明する。
本体83には支柱90が立設してあり、その支柱90には、回動軸91aを介して片持ち梁である調整杆91と、その上の回動軸92aに補助杆92がそれぞれ回動可能に取り付けてある。
なお、この調整杆91にはモータ85が取り付けてあり、前記補助杆92に取り付けの調節体95を介して研磨体の接触具合の調整をなす。また、前記調節体95は、バネ94が内装してあり、ネジの締め付け具合で、前記調整杆91の位置を決める。
また、支柱90には、前記調節体95で調節した後に、動かないようにロックするロック機構が付設してあり、支柱90には操作レバー96が回動軸96aで回動可能に取り付けてある。また、この操作レバー96には、縦方向の縦連結杆97が回動軸97aで、また、その縦連結杆97に垂直の横連結杆98には回動軸97bで回動可能に取り付けてある。また、前記横連結杆98の他端部は、ロック体99にもうけてある回動軸98aで回動可能に取り付けてある。そして、前記ロック体99は、前記支柱90において補助杆92に載置した状態に配置してある。
【0022】
そこで、操作レバー96を半時計方向に回動すると、前記ロック体99が補助杆92を押圧する力がなくなり、補助杆92のロックが外れるので、調節体95のネジを回転することによって、その先端の位置によって、調整杆91の位置を決めることができる。即ち、モータ85の位置を決定することができるので、研磨体86の位置が決まる。
この調整杆91の位置が決められたら、操作レバー96を時計方向に回動すると、縦連結杆97と横連結杆98がそれぞれ立設状態になり、ロック体99を下方向に押圧するので、調整杆91は支柱90にロックされた状態になり、研磨体86の位置調整を行うことができる。
【0023】
次に、前記表面処理装置80によって、エスコートレール2の左板部2aと右板部2bの表面を処理する操作について説明する。
ウインチ10は、前記表面処理装置80に付設の研磨体86がエスコートレール2の左板部2aと右板部2bの表面Xを研磨可能な速度でドラム12を回転させると、ワイヤーYは、滑車15、ワイヤーガイド装置20、エスコートレール2の中空部4内を通って、ワイヤー導入ガイドローラ30を介して、ワイヤー接続台車50を上昇させる。そして、このワイヤー接続台車50の上昇によって、墜落防止安全装置60及び表面処理装置80が上昇する。そして、表面処理装置80に付設の研磨体86は、エスコートレール2の左板部2aと右板部2bの表面Xを研磨しながら上昇する。
尚、この研磨体は、相当発熱するので、表面処理装置80の処理速度を考慮して、例えば、10cm進むごとに、1分の冷却時間を設ける等の処理を行う。
【0024】
また、前記ワイヤー接続台車50が、例えば、エスコートレール2に固定されているワイヤー導入ガイドローラ30に近づいたときには、上昇ができないので、作業を停止する。そして、エスコートレール2の更なる上部を研磨するために、前記、滑車15、ワイヤーガイド装置20、必要ならワイヤー導入ガイドローラ30のセット位置を変更して、前記と同様の操作を行うことによって、エスコートレール2の左板部2aと右板部2bの表面Xは、順次研磨される。
尚、図1に示すように、各所の機器を用いて表面処理装置80で研磨を行う構成であるが、それらの機器は適宜選択して構成することはいうまでもない。
【符号の説明】
【0025】
2 エスコートレール
2a 左板部
2b 右板部
3 隙間
4 中空部
10 ウインチ
15 滑車
20 ワイヤーガイド装置
30 ワイヤー導入ガイドローラ
50 ワイヤー接続台車
60 墜落防止安全装置
66 作動体
80 表面処理装置
86 研磨体
88 集塵袋
90 支柱
91 調整杆
92 補助杆
95 調節体
96 操作レバー


【特許請求の範囲】
【請求項1】
エスコートレールの左板部と右板部の表面を研磨する表面処理装置であって、
エスコートレールの左板部と右板部を挟着する上車輪と下車輪と、エスコートレールの中空部内において、左側部と右側部を摺動回転する中空車輪を本体に備え、
本体に備えるモータで回転する研磨体でエスコートレールの左板部と右板部の表面を研磨することを特徴とする表面処理装置。
【請求項2】
本体に支柱を立設し、その支柱に調整杆を回動可能に取り付け、その調整杆に研磨体を回転するモータを付設し、
前記支柱に前記調整杆の上部に補助杆を回動可能に取り付けると共に、その補助杆に前記調整杆に当接可能な調節体を取り付け、
前記支柱に操作レバーを回動可能に取り付け、
前記操作レバーには、縦方向の縦連結杆と、その縦連結杆に垂直の横連結杆がロック体に、それぞれ回動可能に取り付けてあり、
前記ロック体は、前記支柱において補助杆に載置した状態に配置してあることを特徴とする請求項1の表面処理装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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