説明

エステル系可塑剤

【課題】新規なエステル系可塑剤を提供する。
【解決手段】本発明のエステル系可塑剤は、多価アルコール、アルキレンオキシド、及び脂肪族カルボン酸又は芳香族カルボン酸のエステル化反応によって製造される。本発明に係る可塑剤を用いてポリ塩化ビニル樹脂組成物を製造すると、可塑化効率に優れた製品を得ることができるうえ、硬度、引張強度などの物性を向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多価アルコール、アルキレンオキシド、及び脂肪族カルボン酸又は芳香族カルボン酸をエステル化反応させて合成されたエステル系可塑剤及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリ塩化ビニル樹脂は、塩化ビニルの単独重合体または50%以上の塩化ビニルを含む混成重合体であって、押出成形や射出成形、カレンダ加工(calendering)などの加工法によって使用できる汎用樹脂であり、このような加工によって様々な製品、例えばパイプ、電線、電気機械製品、玩具、フィルム、シート、人造皮革、ターポリン(tarpaulin)、テープ、食品包装材、医療用品などの素材として広範囲にわたって用いられる。このようなポリ塩化ビニル樹脂は、可塑剤、安定剤、充填剤、顔料などの各種添加剤を適切に添加して多様な加工物性を与えることができる。
特に、前記可塑剤は、ポリ塩化ビニル樹脂に添加されて加工性、柔軟性、電気絶縁性、粘着性などの様々な物性および機能を与える必須添加剤である。
可塑剤の場合、低い揮発性は非常に重要な要素であり、これはプラスチック組成物内に混入する間、および成形製品を実際使用する間の両方ともにおいて重要である。また、食品分野、飲料分野および医療分野への適用のために提供される可塑剤は、健康に無害でなければならない。このような可塑剤の代表的な種類としてはフタレート系を挙げることができる。
【0003】
ところが、既に毒性物質を規制する法律の下で再生毒性に関する論難のため、フタレートを使用することはこれから顕著に減少するだろうと予想される。したがって、フタレートを含まないエステル系の物質を基本骨格としながらもフタレート系可塑剤と同等の可塑化効率を保有した可塑剤の開発が求められている。
特許文献1は、非フタレート系可塑剤であって、多価アルコールのアルキレンオキシド付加物とモノカルボン酸から得られたエステル系化合物であるが、アルキレンオキシド付加体(adduct)をまず作った後、カルボン酸と反応させたポリマーである。
特許文献2は、非フタレート系可塑剤であって、エチレングリコール及びカルボン酸から合成された可塑剤であるが、同調因子(entrainer)を必須構成として含まなければならず、アルキレンオキシドを使用しない。
出血(bleeding)を防止するために様々な試みもあった。例えば、特許文献3及び4には、多価アルコールのアルキレンオキシドに酢酸エステルを含有する可塑剤が開示されている。ところが、これらも樹脂の透明性又は柔軟性を存在させることなく耐出血を強化したものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−154623号公開
【特許文献2】特開2001−114729号公開
【特許文献3】特開2005−232403号公開
【特許文献4】特開2005−112933号公開
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、従来のフタレート系可塑剤と同等又は優れた物性を有する多様な多価アルコールにアルキレンオキシドを付加し、脂肪族カルボン酸又は芳香族カルボン酸から合成されたエステル系可塑剤化合物を提供することにある。
本発明の他の目的は、多価アルコール、アルキレンオキシド及びカルボン酸からエステル系可塑剤化合物を製造する方法を提供することにある。
本発明の別の目的は、前記可塑剤化合物を含むポリ塩化ビニル樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある観点によれば、多価アルコール、アルキレンオキシド、及び脂肪族カルボン酸又は芳香族カルボン酸化合物をエステル化反応させて従来のフタレート系可塑剤と同等又は優れた物性を持つエステル系可塑剤が提供される。
【0007】
本発明の他の観点によれば、多価アルコール、アルキレンオキシド、及び脂肪族カルボン酸又は芳香族カルボン酸化合物をエステル化反応させて新規なエステル系可塑剤が提供される。
本発明の別の観点によれば、ポリ塩化ビニル樹脂100重量部に対して本発明の可塑剤10〜150重量部を含むポリ塩化ビニル樹脂組成物が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る多様な多価アルコールにアルキレンオキシドを付加し、脂肪酸又は安息香酸を反応させたエステル系可塑剤を用いてポリ塩化ビニル樹脂を製造すると、可塑化効率の面で優れた製品を得ることができ、その他にも加熱減量などの物性が向上するという効果がある。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一実施態様に係るエステル系可塑剤は、多価アルコール、アルキレンオキシド、及び脂肪族カルボン酸又は芳香族カルボン酸化合物をエステル化反応させて合成される。
前記多価アルコールは、2つ以上のヒドロキシ基を含み、置換もしくは無置換の炭素数3〜15の化合物であって、グリセリン、シクロヘキサンジオール(Cyclohexanediol)、シクロヘキサンジエメタノール(Cyclohexanedimethanol)、シクロペンタンジオール(Cyclopentanediol)、1,4−ブタンジオール(1,4-Butanediol)、1,3−ブタンジオール(1,3-Butanediol)、ペンタエリトリトール(Pentaerythritol)、ソルビトール(Sorbitol)などを使用することができ、好ましくは炭素数3〜6の2価アルコールを使用する。
前記アルキレンオキシドは、特に限定はないが、エチレンオキシド(Ethylene Oxide)及び/又はプロピレンオキシド(Propylene Oxide)が好ましい。その含有量は多価アルコール中のヒドロキシ基1molに対して1〜5molの範囲である。前記含有量が5mol超過であれば、粘度が高くて作業性に問題があり、前記含有量が1mol未満であれば、使用する効果が現れない。好ましくは1〜3molの範囲である。
前記カルボン酸は、置換もしくは無置換の炭素数1〜12の脂肪族カルボン酸、又は置換もしくは無置換の炭素数5〜11の芳香族及び複素環カルボン酸を使用することができ、例えば、酢酸(acetic acid)、ヘキサン酸(hexanoic acid)、オクタン酸(octanoic acid)、2−エチルヘキサン酸(2-ethylhexanoic acid)、ノナン酸(nonanoic acid)、デカン酸(decanoic acid)、ドデカン酸(dodecanoic acid)、安息香酸(benzoic acid)、安息香酸メチル(methyl benzoic acid)であり、好ましくは、酢酸(acetic acid)、ヘキサン酸(hexanoic acid)、オクタン酸(octanoic acid)、安息香酸(benzoic acid)などがある。その含有量は多価アルコール1molに対して1.0〜5.0molの範囲である。前記含有量が5mol超過であれば、原料の経済性に問題があり、前記含有量が1mol未満であれば、−OH基が残って物性が良くなく、好ましくは1:1.0〜3.0の範囲である。
【0010】
本発明の可塑剤は、多価アルコール、アルキレンオキシド、及び脂肪族カルボン酸又は芳香族カルボン酸化合物をエステル化反応させて合成されるので、前記エステル化反応に使用される触媒は、エステル化反応に使用される一般な触媒として使用可能であり、好ましくは二硫酸ナトリウム、p−トルエンスルホン酸又は硫酸などの酸触媒であるが、これに限定されるものではない。反応混合物を基準として、前記触媒は0.2〜5重量%を使用することができる。
一方、本発明の可塑剤の合成に使用可能な溶媒は、ヘキサン、トルエン、キシレン、1,2,4−トリメチルベンゼンなどがあるが、これに限定されるものではない。
エステル化反応温度は100〜250℃が可能であるが、好ましくは160〜250℃である。
エステル化反応の後、未反応の酸と酸触媒は、アルカリ試薬を添加して中和することができ、好ましくは炭酸ナトリウム又は炭酸カルシウム水素溶液を使用する。
相分離の後に得られた粗エステルは、水洗及び脱水した後、濾過して目的物を得ることができる。
【0011】
本発明のエステル系可塑剤の一実施態様は下記の化学式1で表されるエステル系可塑剤を提供する。下記1,4−シクロヘキサンジメタノールに対するカルボン酸のモル比は1:1.0〜5.0であり、好ましくは1:1.0〜3.0である。
【0012】
【化1】

【0013】
式中、R1及びR2はそれぞれ独立に、炭素数1〜20の置換もしくは無置換の直鎖状アルキル基、炭素数2〜20の置換もしくは無置換のアルケニル基、炭素数3〜20の置換もしくは無置換のシクロアルキル基、炭素数5〜10の置換もしくは無置換のアリール基又はヘテロアリールであり、nは2〜4であり、mは1〜5である。
【0014】
【化2】

【0015】
式中、R3〜R5はそれぞれ独立に、炭素数1〜20の置換もしくは無置換の直鎖状アルキル基、炭素数2〜20の置換もしくは無置換のアルケニル基、炭素数3〜20の置換もしくは無置換のシクロアルキル基、炭素数5〜10の置換もしくは無置換のアリール基又はヘテロアリールであり、nは2〜4であり、mは1〜5である。
【0016】
本発明のエステル系可塑剤の別の一実施態様は、下記の化学式3で表されるエステル系可塑剤を提供する。
【0017】
【化3】

【0018】
式中、R6及びR7はそれぞれ独立に、炭素数1〜20の置換もしくは無置換の直鎖状アルキル基、炭素数2〜20の置換もしくは無置換のアルケニル基、炭素数3〜20の置換もしくは無置換のシクロアルキル基、炭素数5〜10の置換もしくは無置換のアリール基又はヘテロアリールであり、nは2〜4であり、mは1〜5である。
【0019】
本発明の他の観点によれば、塩化ビニル樹脂100重量部に対し、本発明のエステル系可塑剤組成物10〜150重量部を含む塩化ビニル樹脂組成物を提供する。前記可塑剤組成物の含有量が10重量部未満であれば、可塑化効率、粘着性などの性質を備えないという問題があり、前記可塑剤組成物の含有量が150重量部超過であれば、熱安定性、耐移行性に劣るという問題がある。
本発明に係るエステル系可塑剤は、ポリ塩化ビニルに限定せず、例えば塩素化ポリ塩化ビニルやポリ塩化ビニリデン、塩素化ポリエチレン、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−エチレン共重合体、塩化ビニル−プロピレン共重合体、塩化ビニル−スチレン共重合体、塩化ビニル−イソブチレン共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル−各種ビニルエーテル共重合体などの塩素含有樹脂;これらのブレンド品;並びに塩素含有樹脂と例えばアクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−スチレン−ブタジエン三元共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体およびポリエステルなどの塩素を含まない合成樹脂とのブレンド品、ブロック共重合体およびグラフト共重合体などにも適用することができる。
【0020】
本発明のポリ塩化ビニル樹脂組成物は、前記ポリ塩化ビニル樹脂100重量部に対して、本発明に係るエステル系可塑剤組成物を10〜150重量部の範囲で含むことができる。
本発明に係る可塑剤化合物又は前記可塑剤組成物は、樹脂組成物の用途に応じて適切に増減することができるが、上述した10重量部未満で添加される場合には、可塑剤によって発現できる柔軟性又は加工性を達成することができず、150重量部超過で添加される場合には、必要な機械的物性の確保が難しく、溶出する可能性もあって好ましくない。一方、前記ポリ塩化ビニル樹脂組成物を製造する方法は、特に限定されず、当業界における公知の方法で製造できる。
【0021】
本発明に係るエステル系可塑剤を含有する本発明のポリ塩化ビニル樹脂組成物は、壁仕上げ材、床材、窓枠、壁紙などの建材;電線被覆材;車両内外装材;ハウス、トンネルなどの農業用資材;ラップ(wrap)、トレイ(tray)など、例えば魚類などの食品の包装材;アンダーボディ(underbody)シラント、プラスチゾル、ペイント、インクなどの塗膜形成剤;合成皮革、コートされた織物、ホース、パイプ、シート、幼児用玩具、手袋などの雑貨などに使用できるが、これに限定されない。
【0022】
以下、具体的な実施例及び比較例によって本発明の構成及び効果をより詳細に説明するが、これらの実施例は本発明をより明確に理解させるためのものに過ぎず、本発明の範囲を限定するものではない。実施例及び比較例において、下記の方法で物性を評価した。
【0023】
硬度
ASTM D2240に準拠して、硬度試験器(Aタイプ)の針を試片の1箇所に完全に下ろして5秒後の硬度値を読み取った。それぞれの試片に対して3箇所を試験した後、その平均値を取った。それを可塑化効率を示す指標として使用される。
【0024】
引張強度、伸び率、100%伸長時のモジュラス
ASTM D412に準拠して、UTMを用いて測定した。亜鈴状の試片をクロスヘッドスピード200mm/minで引っ張った後、試片が切断される部位を測定した。100%伸長時のモジュラスは、100%伸長時の引張強度であって、可塑化効率との関連性が高い。
【0025】
加熱減量
試料を一定量採取して180℃のオブンに24時間放置した後、重量変化を測定した。
【実施例】
【0026】
[実施例1]
エチレンオキシド(EO)が1mol付加された1,4−シクロヘキサンジメタノールと安息香酸、n−ヘキサン酸を用いたエステル系可塑剤の製造
1段階として、攪拌器と凝縮器を備え付けた2Lの丸底フラスコに、EOが1mol付加された1,4−シクロヘキサンジメタノール1.0モル、安息香酸0.6モル、n−ヘキサン酸0.6モル、溶媒としてのトルエン200g、触媒としての二リン酸ナトリウム3.0gを投入した後、100℃まで昇温させて12時間反応を行った。
反応の後、未反応の酸は200℃で真空ポンプによって5mmHgまで減圧して除去し、10重量%の炭酸ナトリウム水溶液で中和させた後、水洗及び脱水過程を行い、しかる後に、吸着剤を入れて濾過して最終的な可塑剤組成物を得た。ここで得られる生成物は前記化学式1の化合物を主要成分とした混合物である。
【0027】
ポリ塩化ビニル樹脂組成物の製造
前記で得たエステル系可塑剤の性能を評価するために、試片を製造した。すなわち、ポリ塩化ビニル樹脂(LG化学、製品名:LS−100)100重量部に、可塑剤として、前記化学式1の化合物を主要成分とした可塑剤組成物を50重量部、安定剤としてKOREA DAEHYUP社のLFX−1100を1重量部配合し、プレス機を用いて185℃で予熱1分、加圧1.5分及び冷却2分間を行って2mmのシートを作り、様々な亜鈴状試片を製造した。
前記可塑剤と試片で前述のテストを行い、その結果を下記表1にまとめた。
【0028】
[実施例2]
EOが2mol付加された1,4−シクロヘキサンジメタノールと安息香酸、酢酸を用いたエステル系可塑剤の製造
原料として、EOが1mol付加された1,4−シクロヘキサンジメタノールの代わりにEOが2mol付加された1,4−シクロヘキサンジメタノールを使用し、n−ヘキサン酸の代わりに酢酸を使用する以外は、実施例1と同様にして可塑剤及びポリ塩化ビニル樹脂組成物を製造した。その実験結果は下記表1に示す。
【0029】
[実施例3]
EOが1mol付加されたグリセロールと安息香酸、ヘキサン酸、酢酸を用いたエステル系可塑剤の製造
原料として、EOが1mol付加された1,4−シクロヘキサンジメタノールの代わりにEOが1mol付加されたグリセロールを使用し、n−ヘキサン酸の他に酢酸をさらに使用する以外は、実施例1と同様にして可塑剤及びポリ塩化ビニル樹脂組成物を製造した。その実験結果は下記表1に示す。
【0030】
[実施例4]
EOが2mol付加されたグリセロールと安息香酸、酢酸を用いたエステル系可塑剤の製造
原料として、EOが2mol付加された1,4−シクロヘキサンジメタノールの代わりにEOが2mol付加されたグリセロールを使用し、n−ヘキサン酸の代わりに酢酸を2倍使用する以外は、実施例1と同様にして可塑剤及びポリ塩化ビニル樹脂組成物を製造した。その実験結果は下記表1に示す。
【0031】
[実施例5]
EOが1mol付加された1,4−ブタンジオールと安息香酸、n−オクタン酸を用いたエステル系可塑剤の製造
原料として、EOが1mol付加された1,4−シクロヘキサンジメタノールの代わりにEOが1mol付加された1,4−ブタンジオールを使用し、n−ヘキサン酸の代わりにn−オクタン酸を使用する以外は、実施例1と同様にして可塑剤及びポリ塩化ビニル樹脂組成物を製造した。その実験結果は下記表1に示す。
【0032】
[実施例6]
EOが2mol付加された1,4−ブタンジオールと安息香酸、酢酸を用いたエステル系可塑剤の製造
原料として、EOが1mol付加された1,4−シクロヘキサンジメタノールの代わりにEOが2mol付加された1,4−ブタンジオールを使用し、n−ヘキサン酸の代わりに酢酸を使用する以外は、実施例1と同様にして可塑剤及びポリ塩化ビニル樹脂組成物を製造した。その実験結果は下記表1に示す。
【0033】
[比較例1]
最も広範囲に使用されるジ−2−エチルヘキシルフタレートを可塑剤として用いて、実施例1の方法と同様にして試片を製造した。製造された試片を用いて、前記実施例1で実施したテストと同一のテストを行い、その結果を下記表1にまとめた。
【0034】
[比較例2]
ジ−2−エチルヘキシルフタレートの代替としてその使用が拡大しつつあるジイソノニルフタレートを可塑剤として用いて、実施例1の方法と同様にして試片を製造した。製造された試片を用いて、前記実施例1で実施したテストと同一のテストを行い、その結果を下記表1にまとめた。
【0035】
[比較例3]
原料として、EOが1mol付加された1,4−ブタンジオールの代わりに1,4−ブタンジオールを使用する以外は、実施例5と同様にして可塑剤及びポリ塩化ビニル樹脂組成物を製造した。その実験結果は下記表1に示す。
【0036】
【表1】

【0037】
前記表1の結果より分かるように、本発明の可塑剤である実施例1〜6は、最も一般な可塑剤である比較例1、2と比較して可塑剤効率が同等水準又はさらに優れるうえ、他の物性、例えば加熱減量などにおいても同等水準以上である。また、実施例5及び比較例3の結果より分かるように、EOが付加された実施例5は、EOが付加されていない比較例3に比べて分子量が高くなるにも拘らず硬度が大きく向上せず比較例1と類似しているが、加熱減量が向上した。
【0038】
硬度と可塑化効率との関連が深く、硬度が大きく向上していないというのは、樹脂との相溶性が維持されたことを意味するので重要である。また、工程上、高温処理が伴われるが、加熱減量が少なくなってヒューム(fume)の発生が少ないものと予想される。
したがって、本発明の新規な可塑剤は、可塑化効率に優れて各種用途による多様な成形にさらに適し、様々な活用を期待することができる。
以上、本発明の好適な実施例について詳細に開示したが、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者であれば、添付した請求の範囲に開示された本発明の精神と範囲から逸脱することなく、本発明に様々な変形を加え得ることを理解するであろう。よって、本発明はこれらの実施例に限定されない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多価アルコール、アルキレンオキシド、及び脂肪族カルボン酸又は芳香族カルボン酸をエステル化反応させて合成されたエステル系可塑剤。
【請求項2】
多価アルコールが、2つ以上のヒドロキシ基を含み、置換もしくは無置換の炭素数3〜15のアルコールであることを特徴とする、請求項1に記載のエステル系可塑剤。
【請求項3】
多価アルコールがグリセリン、1,4−シクロヘキサンジメタノール又は1,4−ブタンジオールであることを特徴とする、請求項1に記載のエステル系可塑剤。
【請求項4】
前記エステル系可塑剤が下記化学式1で表されることを特徴とする、請求項1に記載のエステル系可塑剤。
【化1】

(式中、R1及びR2はそれぞれ独立に、炭素数1〜20の置換もしくは無置換の直鎖状アルキル基、炭素数2〜20の置換もしくは無置換のアルケニル基、炭素数3〜20の置換もしくは無置換のシクロアルキル基、炭素数5〜10の置換もしくは無置換のアリール基又はヘテロアリールであり、nは2〜4であり、mは1〜5である。)
【請求項5】
前記エステル系可塑剤が下記化学式2で表されることを特徴とする、請求項1に記載のエステル系可塑剤。
【化2】

(式中、R3〜R5はそれぞれ独立に、炭素数1〜20の置換もしくは無置換の直鎖状アルキル基、炭素数2〜20の置換もしくは無置換のアルケニル基、炭素数3〜20の置換もしくは無置換のシクロアルキル基、炭素数5〜10の置換もしくは無置換のアリール基又はヘテロアリールであり、nは2〜4であり、mは1〜5である。)
【請求項6】
前記エステル系可塑剤が下記化学式3で表されるものであることを特徴とする、請求項1に記載のエステル系可塑剤。
【化3】

(式中、R6及びR7はそれぞれ独立に、炭素数1〜20の置換もしくは無置換の直鎖状アルキル基、炭素数2〜20の置換もしくは無置換のアルケニル基、炭素数3〜20の置換もしくは無置換のシクロアルキル基、炭素数5〜10の置換もしくは無置換のアリール基又はヘテロアリールであり、nは2〜4であり、mは1〜5である。)
【請求項7】
多価アルコール、アルキレンオキシド、及び脂肪族カルボン酸又は芳香族カルボン酸化合物をエステル化反応させてエステル系可塑剤を製造する方法。
【請求項8】
前記アルキレンオキシドが、モル比で、多価アルコールのヒドロキシ基1モルに対して1〜5molの含有量で使用されることを特徴とする、請求項7に記載のエステル系可塑剤製造方法。
【請求項9】
前記カルボン酸が多価アルコール1モルに対して1.0〜5.0モルで使用されることを特徴とする、請求項7に記載のエステル系可塑剤製造方法。
【請求項10】
塩化ビニル樹脂100重量部に対して請求項1〜6のいずれかに記載のエステル系可塑剤10〜150重量部を含むことを特徴とする、塩化ビニル樹脂組成物。

【公表番号】特表2012−533615(P2012−533615A)
【公表日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−521572(P2012−521572)
【出願日】平成22年7月13日(2010.7.13)
【国際出願番号】PCT/KR2010/004549
【国際公開番号】WO2011/010825
【国際公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【出願人】(507268341)エスケー イノベーション カンパニー リミテッド (57)
【出願人】(511061589)エスケー グローバル ケミカル カンパニー リミテッド (4)
【氏名又は名称原語表記】SK GLOBAL CHEMICAL CO.,LTD.
【Fターム(参考)】