説明

エストラジオール含有薬物の送達システム

本発明は、少量のエストラジオール、またはこの誘導体を含有する、水溶性フィルム(ウエハ)の形態での薬物送達システムに関する。本発明のウエハは、エストロゲンの不十分な内因性レベルによって生じる雌の哺乳類における健康状態の治療、緩和または予防に適当である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水溶性フィルム(ウエハ)(wafers)の形態での薬物送達システムに関するものであり、そしてこれらにはエストラジオール、またはこれらの誘導体が少量含まれる。本発明のウエハは、雌の哺乳類において、不十分なエストロゲンの内因性レベルによって生じる健康状態を治療、緩和または予防することに適当である。
【背景技術】
【0002】
薬物、例えばエストロゲン等は、正確で且つ安定した用量を提供するために、従来の標準的な経口錠剤またはカプセル製剤に含有されるかもしれないが、このような送達形態は薬物の投与及び調製どちらにおいても不都合を有する。例えば、人口の約50%が錠剤の嚥下の問題を抱えていると推定され(参照 Seager in J. Pharmacol. Pharm. 1998;50;375-382)、そして錠剤またはカプセルを嚥下しないまたは出来ない患者、例えば子供または高齢者によって、医薬品業界へ課題が示されている。医薬品業界は、口腔内速崩壊錠剤、経口摂取の前に液体で崩壊する錠剤、液体及びシロップ、ガムさらに経皮パッチも含む、多数の相違する薬物送達システムを開発することによって、この課題に対応しようとしてきた。しかしながら、これらの薬物送達システムの各々は、これらの独自の問題を生じる可能性がある。
【0003】
経皮パッチは、不都合及び不快のほかに生成が非常に高額となり得る。さらに、経皮的な薬物流動(flux)はまた非常に複雑な投薬問題を生じる可能性がある。液体は特に小児に対して有効である。しかしながら、液体は成人にとっては不都合となる可能性があり、そして製剤化、パッケージ及び輸送が比較的高価となり得る。経口摂取前に液体に可溶な錠剤はまた有効となり得る。しかしながら、これらはまた、提供するために液体及び飲用容器が必要であるという点において非常に不都合となり得る。さらに、発泡錠が使用される場合でさえ、崩壊及び/又は溶解のために時間が必要である。最終的には、これらの薬物送達システムは、大抵グラスに微粒子及び/又は膜が残るので、非常に面倒となる可能性がある。口腔内速崩壊錠剤、例えば咀嚼または自己崩壊の錠剤等によって、大きな便利性が得られる。しかしながら、咀嚼または自己崩壊錠剤は、咀嚼行為は保護被膜を破壊し得るので、多くの場合そのものの味のマスキング(masking)問題を提起する。さらに、咀嚼または自己崩壊の錠剤は多くの場合、不快な口内感触が付随する。さらに、固形状の物質等を嚥下する、咀嚼する、またはこれらでのどが詰まるという不安が、一定の集団内で依然として懸念される。さらに、これらの多孔質で且つ低圧成形の錠剤の脆弱性/破砕性により、運搬、貯蔵、取り扱い並びに患者、特に小児及び高齢者への投与が困難となる。
【0004】
従って、患者の改良されたコンプライアンスを有する、すなわち、投薬が容易であり、そしてどこでもいつでも必要な場合に患者が自身の薬剤を摂取できる、確実な送達システムが必要である。水溶性膜(ウエハ)は、これらの基準を満たす。通常、口腔内に存在する唾液中で、このようなウエハは迅速に溶解し、その結果活性成分が放出され、そして舌、舌下、頬及び/又は口蓋経路を介して順に吸収され得る。
【0005】
医薬品業界では、所定の薬物用量をより適切に利用するために、送達システムを改良することを絶えず目標としている。別の言い方をすれば、薬物負荷を低下できる一方で、同時に、血流で臨床的に意義のある薬物濃度を生じる送達システムの絶え間ない需要がある。これは特に、非常に強力な薬物、例えばステロイドホルモン等が投与できる場合に関係する。例えば、ステロイドホルモンの用量を低減し、一方で臨床的に意義のあるステロイドホルモンの血中濃度を得ることは、より少量の薬物が必要とされる場合に、医薬品産業に対して節減が可能なだけでなく、患者に投与するためのステロイドホルモンの総量の低減もまた可能である。明らかに、これは過剰投薬ケースの減少及び顕著な副作用の低減につながる可能性がある。ステロイドホルモン、例えばエストロゲン等の低用量投与の重要性はまた、FDAガイドラインで強調され、ここではスポンサーは最低レベルの暴露で有効性を達成することができる投薬スケジュール及び薬物送達システムを研究することが推奨される(Guidance for Industry: Estrogen and Estrogen / Progestin Drug Products to Treat Vasomotor Symptoms and Vulvar and Vaginal Atrophy Symptoms - Recommendations for Clinical Evaluation; U.S. Department of Health and Human Services; Food and Drug Administration; CDER; January 2003)。
【0006】
高活性薬物のための新剤形を形成する場合、さらにもう一つの目的は、薬物の同等の用量が異なる患者で同等の効果へつながることを保証するために、患者によって生じる、薬物の血清レベルに関する個人間の変動の低下を達成することである。生じるエストラジオールレベル及び生じるエストロゲン効果のそれぞれに関する個人間の変動の低下によって、多くの患者で同等の効果のある最少用量の投与が可能となる。
【0007】
本発明者は驚くことに、低用量のエストラジオールを含有する単位剤形(ウエハ形態)を口腔内経路を介して雌の哺乳類へ投与し、そしてさらに血流で臨床的に意義のある濃度を生じることができることが分かった。
【0008】
経鼻のエストラジオールの低用量投与は、ドーレン(Doren)等のMaturitas 2001;38;23-30 及びドーレイ(Dooley)等のDrugs 2001;61;2243- 2262に記載され、そしてエストラジオール(アエロジオール)(Aerodiol)(商標登録)を含有する鼻腔用スプレーは既に市販されている。300μg/日のエストラジオールの鼻腔内投与は、標準的な経口治療、すなわち、2mg/日のエストラジオールの経口投与と同様に有効であることが示され、同時に副作用の減少、すなわち、婦人科学的に耐容性がより良好であることが示されている。さらに詳細には、標準的な経口治療と比較して、乳房痛及び消退出血の低発生率が、鼻腔内投与でエストラジオールが(低用量)投与される患者で報告されている(参照Mattson, Climateric 2002;5(Suppl. 2);40-45)。さらに、脂質パラメータへの有益な効果、すなわちリポタンパク質(a)、アポリポタンパク質B、総コレステロール及び低密度リポタンパク質コレステロールの内因性レベル、並びに閉経後の女性における骨吸収、骨形成及び骨密度のマーカーへの好適な作用が記載される(Palacios, Climateric 2002;5(Suppl. 2);32-39)。さらに、標準的な経口治療と比較して、エストラジオールの鼻腔内投与は腫瘍誘導及び腫瘍増殖の顕著な低速度を示した(Mattson, Climateric 2002;5(Suppl. 2);40-45)。さらに、標準的な経口治療と比較して、エストラジオールの鼻腔内投与で乳房の圧痛の低発生率が確認された。
【0009】
鼻腔内で吸収されるエストラジオールの薬物動態は、経口で摂取されるエストラジオールとは異なり、取り込みが非常に急速である;最大の血漿レベルは10〜30分内に達成され、そしてこのレベルは投与後約2時間でピーク値の10%に戻り、そして投与後約12時間で治療前レベルに戻る(Al-Azzawi, Climateric 2002;5(Suppl. 2);27-31)。結果として、連日のエストラジオールの鼻腔内投与により、経口及び経皮投与後に確認される持続的な特性と顕著に異なる「パルス様(puls-like)」特性が生じる。この「パルス様」特性にもかかわらず、少量のエストラジオールの鼻腔内投与は標準的な経口治療と同様に有効であり、そして副作用が少なくさらに有利であることがわかっている。
【0010】
しかしながら、鼻腔内投与による主たる課題の1つは、非常に不都合な投与形態である。経鼻投与では、局所的副作用、例えば掻痒、鼻漏、くしゃみ及び鼻血等を生じる可能性があり、そしてこの投与形態により患者のコンプライアンスは一般的に低いと考えられる。
【0011】
本発明者は、本発明の単位剤形によりエストラジオールの「パルス様」吸収を達成することができることを発見した。従って、エストラジオールの経鼻投与によって得られる有益な特性、すなわち副作用の軽減はまた、本発明の単位剤形の投与によって得られる。さらに、経口投与と比較してエストラジオールの投与量を顕著に低減することができる。このような低用量のエストラジオールの投与によって子宮内膜は大幅には増殖しないので、逆療法(opposed treatment)(プロゲスチンの継続的なまたは周期的な補助投与)は必ずしも必要でなく、エストラジオールの低用量は特に有益である。
【0012】
従って、口腔へ投与する単位剤形を提供することが本発明の目的であり、これにより鼻腔内投与と同様に有益な治療特性が提供され、患者のコンプライアンスは高い。
本発明の他の目的は、口腔へ投与する単位剤形を提供することであり、これによりエストラジオールの「パルス様」薬物動態特性が生じる。本発明のさらにもう一つの目的は、鼻腔内投与と比較して生体内利用率の増加が得られる口腔へ投与する単位剤形を提供することである。
【0013】
本発明のさらにもう一つの目的は、標準的な経口治療と比較して低用量のエストラジオール(またはこれらの誘導体)を含有し、しかしながらさらに患者の血流で臨床的に意義のあるエストラジオール濃度を生じる単位剤形を提供することである。
さらに本発明の目的は、標準的な鼻腔内治療と比較して低用量のエストラジオール(またはこれらの誘導体)を含有し、しかしながらさらに患者の血流で臨床的に意義のあるエストラジオール濃度を生じる単位剤形を提供することである。
【0014】
本発明のさらなる目的は、標準的な経口治療と比較して副作用の低減を生じるが、さらに有効であり、エストロゲンの不十分な内因性レベルによって生じる雌の哺乳類の健康状態の治療、緩和または予防することにおいてさらに有効である口腔投与する単位剤形を提供することである。
本発明のさらなる目的は、標準的な経口治療と比較して婦人科学的に耐用性がより良好であるが、エストロゲンの不十分な内因性レベルによって生じる雌の哺乳類の健康状態を治療、緩和または予防することにおいてさらに有効である口腔に投与する単位剤形を提供することである。
【0015】
咀嚼可能な味のマスキングされた医薬的組成物が米国特許第4,800,087号に記載される。
味がマスキングされた経口崩壊する錠剤(ODT)が米国特許第2006/0105038号に記載される。
味をマスキングするコーティングシステムが国際公開第00/30617号に記載される。
欧州特許第0371466号にエストラジオールを含んでなるバッカル錠が開示される。
欧州特許第1 867 321号に経口の経粘膜性投与用の薬用ペーパー(Medicated papers)が記載される。
国際公開第03/030883号に味のマスキングされたウエハが記載される。
米国特許第2003/0068378号、米国特許第2007/0292479号及び米国特許第2006/0222708号に、ステロイド含有ウエハが記載される。
【発明の概要】
【0016】
第一の態様では、本発明は水溶性フィルムマトリックスを含んでなる単位剤形に関するものであり、
a) 上記フィルムマトリックスが少なくとも一つの水溶性マトリックスポリマーを含んでなり;
b) 上記フィルムマトリックスが10〜200μgのエストラジオール、または治療上等価量のエストラジオール水和物または治療上等価量のエストラジオールの医薬的に許容されるエステルを含んでなり;そして
c) 上記フィルムマトリックスは、300μm未満の厚さを有する。
他の態様では、本発明は医薬として使用するための単位剤形に関する。
【0017】
さらなる態様では、本発明はエストロゲンの不十分な内因性レベルによって生じる雌の哺乳類の健康状態を治療、緩和または予防するための単位剤形に関する。このような健康状態の例としては、骨粗しょう症、頭痛、吐き気、うつ、血管運動症状、泌尿生殖器萎縮症状、骨密度の減少、及び骨折のリスクまたは発生率の増加が含まれるが、これに限定されない。
本発明の他の態様は、以下の記載及び添付の請求項から明らかとなるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の詳細な説明
次の用語「エストラジオール」は、エストラジオールが17−α−エストラジオールまたは17−β−エストラジオールの形態であってよいということを意味することを目的とする。好ましくは、エストラジオールは、17−β−エストラジオールの形態である。用語「エストラジオール」はまたエストラジオールの水和物、特にエストラジオール半水和物形態を包含する。
【0019】
ここで使用する用語「エストラジオールの医薬的に許容されるエステル」は、製薬化学者にとって明らかであろう、すなわち実質的に無毒性であり、そして好適にはエストラジオールの薬物動態特性、例えば嗜好性、吸収性、分布、代謝及び排出等に影響するエストラジオールのエステルを示す。通常は、エストラジオールのエステルは、エストラジオールの3−位または17−位に存在する。エストラジオールの医薬的に許容されるエステルの具体例としては、吉草酸エストラジオール、酢酸エストラジオール、プロピオン酸エストラジオール、エナント酸エストラジオール、ウンデシレン酸エストラジオール、安息香酸エストラジオール、シピオン酸エストラジオール、硫酸エストラジオール及びスルファミン酸エストラジオールが含まれる。
【0020】
本発明の文脈では、用語「エストラジオール誘導体」及び「エストラジオールの誘導体」は、エストラジオールの水和物形態及びエストラジオールの医薬的に許容されるエステルを包含することを目的とする。様々なエストラジオール誘導体(例えば、半水和物及び医薬的に許容されるエステル等)は本発明の実施形態の各々に関連して明確に言及されないかもしれないが、この中で「エストラジオール」に関して記載される場合はいつでも、この記載はまたエストラジオールの半水和物形態やエストラジオールの医薬的に許容されるエステルに適用される、ということを理解されたい。
【0021】
ここで使用される用語「水溶性フィルムマトリックス」は、水溶性ポリマー及びエストラジオール、並びに水溶性ポリマー中に溶解または分散される他の補助成分を含んでなる、またはこれらからなる薄いフィルムを示す。好適な実施形態では、少なくともエストラジオールは水溶性ポリマー中に完全に溶解される。
【0022】
ここで使用される、用語「水溶性ポリマー」は、少なくとも部分的に水に可溶である、好ましくは完全にまたは大部分は水に可溶である、或いは水を吸収するポリマーを示す。水を吸収するポリマーは、大抵の場合「水膨潤性ポリマー」を示す。本発明に関する有効な物質は、室温(約20℃)及び他の温度、例えば室温を上回る温度等で水溶性または水膨潤性であってよい。さらに、当該物質は、大気圧未満の圧力で水溶性または水膨潤性であってよい。望ましくは、水溶性ポリマーは、少なくとも20重量%の水の取り込みを有し、水溶性、または水膨潤性である。25重量%以上の水の取り込みを有する水膨潤性ポリマーもまた、有効である。このような水溶性ポリマーから形成される本発明の単位剤形は、望ましくは十分に水溶性であり、体液、特に唾液に接触すると溶解されるものである。本発明の好適な実施形態では、水溶性ポリマーは粘膜付着性のポリマーである。これにより、エストラジオールの経粘膜的な送達が可能となり、そして初回通過代謝を回避することにより分子の有効な摂取が確実となるであろう。水溶性ポリマーは、通常は水溶性フィルムマトリックスの50〜99.9重量%、例えば75〜99重量%を構成する。
【0023】
(水溶性フィルムマトリックスの大部分を構成している)水溶性マトリックスポリマーは、セルロース物質、合成ポリマー、ガム、タンパク質、デンプン、グルカン及びこれらの混合物からなる群から選択することができる。
ここに記載される目的に関して適当なセルロース物質の例としては、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシメチルプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びこれらの組合せが含まれる。特に好適なセルロース物質は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びヒドロキシプロピルセルロース、特にヒドロキシプロピルメチルセルロースである。
【0024】
合成ポリマーの例としては、医薬用の即放性(IR)コーティングとして一般的に使用されるポリマー、例えばPVA−PEGコポリマーが含まれ、これらは商標登録コリコート(Kollicoat)IRで異なる等級で市販される。合成ポリマーのさらなる例としては、ポリアクリル酸及びポリアクリル酸誘導体が含まれる。
水溶性ガムの例としては、アラビアガム、キサンタンガム、トラガント、アカシア、カラギーナン、グァーガム、ローカストビーンガム、ペクチン、アルギン酸及びこれらの組合せが含まれる。有効な水溶性タンパク質ポリマーには、ゼラチン、ゼイン、グルテン、大豆タンパク質、大豆タンパク質分離物、ホエータンパク質、ホエータンパク質分離物、カゼイン、レビン(levin)、コラーゲン及びこれらの組合せが含まれる。
【0025】
有効なデンプンの例としては、ゼラチン化、調整または無調整デンプンが含まれる。デンプンの供給源は様々でありそしてプルラン、タピオカ、米、コーン、ポテト、コムギ及びこれらの組合せを含んでよい。
本発明に従って使用してよいさらなる水溶性ポリマーには、デキストリン、デキストラン及びこれらの組合せ、並びにキチン、キトサン及びこれらの組合せ、ポリデキストロール並びにフルクトースオリゴマーが含まれる。
【0026】
本発明の一実施形態では、エストラジオールは無水エストラジオールまたはエストラジオール半水和物、好ましくはエストラジオール半水和物である。
本発明の他の実施形態では、エストラジオールの医薬的に許容されるエステルは、フィルムマトリックスに取り込まれる。このようなエストラジオールの医薬的に許容されるエステルの具体例には、吉草酸エストラジオール、酢酸エストラジオール、プロピオン酸エストラジオール、エナント酸エストラジオール、ウンデシレン酸エストラジオール、安息香酸エストラジオール、シピオン酸エストラジオール、硫酸エストラジオール及びスルファミン酸エストラジオールが含まれる。本発明の注目すべき実施形態では、エストラジオールのエステルは吉草酸エストラジオールである。
【0027】
一定の実施形態における本発明の単位剤形は、範囲5〜1000μgのエストラジオール、例えば10〜750μgのエストラジオール、例えば25〜500μgのエストラジオール中の用量のエストラジオールを含んでよい。しかしながら、現在の開示から明らかなように、フィルムマトリックスは通常は、10〜200μgのエストラジオール、例えば10〜60μgのエストラジオールまたは>60〜200μgのエストラジオールを含んでなる。
【0028】
本発明の好適な実施形態では、フィルムマトリックスは、「超低」用量のエストラジオール、すなわち用量10〜60μgのエストラジオール、例えば25〜60μgのエストラジオール、好適には30〜50μgのエストラジオール、さらに好ましくは40〜50μgのエストラジオール、例えば40、45、46または50μgのエストラジオールを含んでなる。あるいは、「超低」用量のエストラジオールは、10〜60μgのエストラジオール、例えば10〜50μgのエストラジオール、好適には20〜40μgのエストラジオール、さらに好適には25〜35μgのエストラジオール、例えば約30μgのエストラジオールである。
【0029】
本発明の他の好適な実施形態では、フィルムマトリックスは、「超低」用量のエストラジオール、すなわち用量>60〜200μgのエストラジオール、例えば70〜160μgのエストラジオール、例えば70〜150μgのエストラジオール、好適には80〜150μgのエストラジオール、例えば80〜120μgまたは120〜150μgのエストラジオールを含んでなる。具体的で好ましいエストラジオール用量には、80、85、90、100、115、120、150及び160μgのエストラジオールが含まれる。
【0030】
本発明のさらに他の実施形態では、フィルムマトリックスは、「中低」用量のエストラジオール、すなわち用量>200〜500μgのエストラジオール、例えば250〜300μgのエストラジオール、例えば260〜280μgのエストラジオール、さらに好適には265〜275μgのエストラジオール、例えば約270μgのエストラジオールを含んでなる。
【0031】
本発明のさらに他の実施形態では、フィルムマトリックスは、「低」用量のエストラジオール、すなわち用量>500〜1000μgのエストラジオール、例えば>500〜750μgのエストラジオールを含んでなる。
【0032】
フィルムマトリックスに含まれてよいエストラジオールの用量の具体例としては、用量約10、12.5、15、20、30、40、45、46、50、60、70、80、85、90、100、115、120、150、160、180、200または270μgのエストラジオールが含まれる。
【0033】
上述の用量は好適には一日用量に相当する。上述の用量は無水エストラジオールに関して示されている、と理解されるべきである。もしエストラジオールの水和物、例えばエストラジオール半水和物等、またはエストラジオールの医薬的に許容されるエステル、例えば吉草酸エストラジオール等が使用されるなら、無水エストラジオールの記載の用量と治療上等価の用量が使用されるべきである、と理解されたい。無水エストラジオールの有効用量が分かる場合に、このような他の形態の薬理学上/治療上等価量を決定することは、当業者にとって通常のことである。別の言い方をすれば、エストラジオールの水和物、例えばエストラジオール半水和物等、またはエストラジオールの医薬的に許容されるエステル、例えば吉草酸エストラジオール等を使用する場合、もしエストラジオール及びこの誘導体の吸収性が同様であるなら、無水エストラジオールの記載用量と等モルである用量が使用されるべきである、と理解されるであろう(以下を参照)。従って、「エストラジオール誘導体Xの治療上等価量」は、次式:
用量無水エストラジオール × (MWエストラジオール誘導体X/MW無水エストラジオール
で算出することができ、MWは、当該エストラジオール化合物の分子量を示す。エストラジオールが無水形態で使用されないのであれば、(無水形態のエストラジオールに基づく)前述のエストラジオールの間隔及び用量の全ては、(上記の式を使用して)対応する間隔及び用量へ変換されるべきである、と理解されるであろう。例として、そして上記の式の利用によって、用量5〜1000μgの無水エストラジオールが、用量5.2〜1033μgのエストラジオール半水和物に相当する、ということを容易に算出することができる。しかしながら、無水エストラジオール及び当該誘導体に関して、生体内利用率及び濃度曲線下面積(AUC)が同一である場合にのみ、上記の式は適用することができる、と理解されたい。しかしながら、当該エストラジオール誘導体の吸収性が無水エストラジオールの吸収性と相違する場合は、無水エストラジオールの所定用量の血漿レベルを達成するためのエストラジオール誘導体の必要量は、治療上の等価量を決定するために重要である。
【0034】
また、ティンマー(Timmer)及びジャーツ(Geurts)の論文には、どのようにして等価量を決定することができるかのガイダンスが提供される(参照、「Bioequivalence assessment of three different estradiol formulations in postmenopausal women in an open, randomized, single-dose, 3- way cross-over」 in European Journal of Drug Metabolism and Pharmacokinetics, 24(1) :47-53,1999)。
【0035】
本発明の単位剤形は、主としてフィルムの大きい表面積によって速く溶解する、薄いフィルムの形態で最も好適であり、これは湿潤経口環境にさらされた場合に素早く湿る。通常ソフトで、脆弱及び/または不安定である速溶性の錠剤とは異なり、フィルムは固体で丈夫であるが、さらに弾力がある。上述の通り、フィルムは薄く、そして患者のポケット、財布またはハンドバック(pocket book)に入れて運ぶことができる。
【0036】
フィルムは、雌の哺乳類の舌の下部または上部、上部口蓋、内側の頬または他の口腔粘膜組織へ投与することができる。フィルムは長方形、楕円形、円形とすることができ、或いは必要に応じて舌、口蓋または内側の頬の形にカットされる特定の形を適用してよい。フィルムは急速に含水し、そして投与部分に付着するであろう。そして、急速に崩壊及び溶解し経口粘膜吸収用のエストラジオールを放出する。
【0037】
本発明の単位剤形の大きさに関して、マトリックスを形成する水溶性フィルムを300μm未満、特に250μm、好適には200μm、例えば150μm未満の厚さを有する乾燥フィルム中に形成させる。さらに好適には、厚さは125μm、例えば100μm未満である。別の言い方をすれば、厚さは通常は、10〜300μm、特に範囲15〜250μm、好適には範囲20〜200μm、例えば範囲25〜150μmである。さらに好適には、厚さは、範囲25〜125μm、例えば範囲25〜100μm、例えば範囲30〜90μm、特に範囲40〜80μmである。具体的で好ましい例としては、厚さ約30μm、約40μm、約50μm、約60μm、約70μm、約80μm、約90μmまたは約100μmが含まれる。具体的な、そして特に好適な例としては、厚さ約40μm、約50μm、約60μm、約70μmまたは約80μmが含まれる。
【0038】
フィルムマトリックスの表面の大きさ(表面積)は、通常は2〜10cmの範囲内、例えば3〜9cmの範囲内、例えば3〜8cmの範囲内、さらに好適には3〜7cmの範囲内、特に4〜6cmの範囲内である。表面積の具体的で好ましい例としては、約3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5または7cmの表面積が含まれる。最も好適には、表面積は約4、4.5、5、5.5または6cmである。
【0039】
フィルムマトリックスの総重量は、通常は5〜200mgの範囲内、例えば5〜150mgの範囲内、例えば10〜100mgの範囲内であろう。さらに好適には、フィルムマトリックスの総重量は、10〜75mgの範囲内、例えば10〜50mgの範囲内である。フィルムマトリックスの重量の具体的で好ましい例としては、重量約15mg、約20mg、約25mg、約30mg、約40mgまたは約50mgが含まれる。
【0040】
本発明の他の実施形態では、単位剤形はさらに吸収促進剤(enhancer)を含んでなる。吸収促進剤は、例えば高分子重量薬物、例えば通常低い頬吸収速度を示すペプチド等の送達に有効性を示す。例えば、吸収促進剤は多数のメカニズム、例えば細胞膜の流動性の増加、細胞間/細胞内脂質の抽出、細胞タンパク質の変性または表面ムチンの変質等によって作用し得る。最も一般的に使用される吸収促進剤には、アゾン、脂肪酸、胆汁酸塩及び界面活性物質、例えばドデシル硫酸ナトリウムが含まれる。吸収促進剤の具体例としては、2,3−ラウリルエーテル、アプロチニン、アゾン、塩化ベンザルコニウム、塩化セチルピリジニウム、セチルトリメチルアンモニウムブロミド、シクロデキストリン、デキストラン硫酸、グリコール、ラウリン酸、リゾフォスファチジルコリン、メントール、フォスファチジルコリン、ポリオキシエチレン、ポリソルベート80、ポリオキシエチレン、フォスファチジルコリン、ナトリウムEDTA、グリココール酸ナトリウム、グリコデオキシコール酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、サリチル酸ナトリウム、タウロコール酸ナトリウム及びタウロデオキシコール酸ナトリウム、スルホキシドが含まれるが、これらに限定されない。包含する場合、吸収促進剤は通常、フィルムマトリックスの0.1〜50重量%、例えばフィルムマトリックスの1〜20重量%、例えばフィルムマトリックスの1〜10重量%に相当する量でフィルムマトリックス中に存在する。吸収促進剤は、通常フィルムマトリックスに含まれる、すなわち吸収促進剤は通常フィルムマトリックスに溶解または分散される。しかしながら、本発明の好適な実施形態では、単位剤形には吸収促進剤は含まれない。
【0041】
さらに、エストラジオールは、シクロデキストリンまたはシクロデキストリン誘導体、例えば米国特許第2007/0292479号の段落0015に記載されるもの等と複合体を形成してよい。しかしながら、本発明の好適な実施形態では、エストラジオールは非複合形態の単位剤形中に存在する。
【0042】
水溶性マトリックスポリマー及びエストラジオールに加えて、本発明の単位剤形には、様々な個々の補助成分、例えば味のマスキングされた薬剤;感覚受容性薬剤、例えば甘味料及びフレーバ、消泡剤及び脱泡剤等;可塑剤;界面活性物質;乳化剤;増粘剤;結合剤;冷却剤;唾液-刺激剤、例えばメントール等;抗菌剤;着色剤;等が含まれてよい。このような様々な補助成分がフィルムマトリックスに含まれ、そして通常はフィルムマトリックス中に溶解または分散される。適当な甘味料には、天然及び人工のどちらの甘味料も含まれる。適当な甘味料の具体例としては、例えば、:
a)水溶性甘味剤、例えば糖アルコール、単糖、二糖、オリゴ糖及び多糖、例えばマルチトース、キシリトール、マンニトール、ソルビトール、キシロース、リボース、グルコース(ブドウ糖)、マンノース、ガラクトース、フルクトース(果糖)、スクロース(糖)、マルトース、転化糖(スクロース由来のフルクトース及びグルコースの混合物)、部分的に加水分解されたデンプン、コーンシロップ固体、ジヒドロカルコン、モネリン、ステビオシド、及びグリチルリジン等;
b)水溶性人工甘味料、例えば可溶性サッカリン塩、すなわち、ナトリウムまたはカルシウムサッカリン塩、シクラミン酸塩、3,4−ジヒドロ−6−メチル−l,2,3−オキサチアジン4−オン−2,2−ジオキシドのナトリウム、アンモニウムまたはカルシウム塩、3,4−ジヒドロ−6−メチル−1,2,3−オキサチアジン4−オン−2,2−ジオキシド(アセスルファムK)のカリウム塩、サッカリンの遊離酸形態、等;
c)ジペプチドベースの甘味料、例えばL−アスパラギン酸由来の甘味料、例えばL−アスパルチル−L−フェニルアラニンメチルエステル(アスパルテ−ム)、L−アルファ−アスパルチル−N−(2,2,4,4 5テトラメチル−3−チエタニル−D−アラニンアミド水和物、L−アスパルチル−Lフェニルグリセリン及びL−アスパルチル−L−2,5,ジヒドロフェニルグリシンのメチルエステル、L−アスパルチル−2,5−ジヒドロ−Lフェニルアラニン、L−アスパルチル−L−(l−シクロヘキシエン)−アラニン、等;
d)例えば、スクラロース(商標登録)の製品記載で知られる一般的な糖(スクロース)の塩素化誘導体等の天然に存在する水溶性甘味料由来の、水溶性甘味料;並びに、
e)タンパク質ベースの甘味料、例えばタウアナトコウスダニエリ(thaurnatoccous danielli)(タウアナチン(Thaurnatin)I及びII)、
が含まれる。
【0043】
一般的に、特定の組成物に関して目的する甘味レベルを供給するために甘味料の有効量は利用され、そしてこの量は選択される甘味料によって変化するであろう。この量は、標準的にはフィルムマトリックスの約0.01〜約20重量%、好適には約0.05〜約10重量%であろう。使用される任意のフレーバ油から得られるフレーバレベルから独立して、目的とする甘味レベルを達成するために、これらの量を使用してよい。有効なフレーバ(またはフレーバ剤)には、天然及び人工のフレーバが含まれる。これらのフレーバは、合成フレーバ油及びフレーバ芳香植物、並びに/又は芳香油、オレオレジン、並びに植物、葉、花、フルーツ等由来の抽出物、並びにこれらの組合せから選択してよい。フレーバ油の例としては、スペアミント油、シナモン油、ペッパーミント油、丁子油、ベイ油、タイム油、ニオイヒバ油、ナツメグ油、セージ油、及びビターアーモンド油が含まれるがこれに限定されない。また、人工、天然または合成フルーツフレーバ、例えばバニラ、チョコレート、コーヒー、ココア、並びにレモン、オレンジ、グレープ、ライム及びグレープフルーツを含む柑橘油、並びにリンゴ、西洋ナシ、ピーチ、ストロベリー、ラズベリー、チェリー、プラム、パイナップル、アプリコット等を含むフルーツエッセンスが有効である。これらのフレーバは、単独でまたは組合せで使用することができる。一般的に使用されるフレーバには、単独でまたは組合せで使用する、ミント、例えばペッパーミント等、人工のバニラ、シナモン誘導体、及び様々なフルーツフレーバが含まれる。例えば酢酸シンナミル、シンナムアルデヒド、シトラル、ジエチルアセタール、ジヒドロカルビル酢酸、オイゲニルホルメイト、p−メチルアニソール等を含むアルデヒド及びエステル等のフレーバを使用してよい。アルデヒドフレーバのさらなる例としては、アセトアルデヒド(リンゴ);ベンズアルデヒド(チェリー、アーモンド);桂皮アルデヒド(シナモン);シトラル、すなわちアルファシトラル(レモン、ライム);ネラール、すなわちベータシトラル(レモン、ライム);デカナール(オレンジ、レモン);エチルバニリン(バニラ、クリーム);ヘリオトロピン、すなわちピペロナール(バニラ、クリーム);バニリン(バニラ、クリーム);アルファ−アミルシンナムアルデヒド(薬味の効いたフルーツのようなフレーバ);ブチルアルデヒド(バター、チーズ);バレルアルデヒド(バター、チーズ);シトロネラル(調整された、多くのタイプ);デカナール(柑橘フルーツ);アルデヒドC−8(柑橘フルーツ);アルデヒドC−9(柑橘フルーツ);アルデヒドC−12(柑橘フルーツ);2−エチルブチルアルデヒド(液果類);ヘキセナル、すなわちトランス−2(液果類);トリルアルデヒド(チェリー、アーモンド);ベラトルアルデヒド(バニラ);12,6−ジメチル−5−ヘプテナール、すなわちメロナール(メロン);2−ジメチルオクタナール(グリーンフルーツ(greenfruit));及び2−ドデセナール(柑橘類、マンダリン);チェリー;グレープ;メントール等のエッセンシャルオイル;これらの混合物;等が含まれるがこれに限定されない。
【0044】
使用されるフレーバの量は通常、フレーバタイプ、個々のフレーバ、及び目的とする強さ等のファクターに従った好みの問題である。この量は、最終生成物で目的とする結果を得るために変更してよい。このような変更は、過度の実験の必要性はなく当業者の能力の範囲内である。一般的に、フィルムマトリックスの約0.01重量%〜約10重量%の量を使用する。
上述のように、単位剤形はまた、例えばポリメチルシロキサン及びシリコンジオキシドの組合せであるシメチコン等の、消泡剤及び/又は脱泡剤を含んでよい。シメチコンは、フィルム組成物から空気を減少または除去する消泡剤または脱泡剤として作用する。消泡剤は空気の組成物への導入を予防することに役立ち、一方で脱泡剤は組成物から空気を除去するのに役立つであろう。
【0045】
単位剤形は、調製し、使用の前に、すなわち口腔内へ導入する前に除去される第二層、すなわち支持層またはバッキング層(ライナー)へ付着させてよい。好適には、支持またはバッキング物質は水溶性ではなく、そして好適にはポリエチレン−テレフタレート、または当業者に周知の他の適当な物質から構成してよい。接着剤を使用するなら、好適には体内に摂取されずそして活性成分特性を変化させない食品等級接着剤である。
本発明の他の実施形態では、本発明の単位剤形はさらなる活性薬物、例えばプロゲスチンを含んでなる。このさらなる活性薬物は、通常はフィルムマトリックス中に含まれる。
【0046】
しかしながら、本発明の注目すべき実施形態においては、本発明の単位剤形にプロゲスチンは含有されない、と理解されたい。従って、本発明の他の注目すべき実施形態において、エストラジオール(またはエストラジオールの水和物またはエストラジオールの医薬的に許容されるエステル)は、単位剤形中の唯一の治療上の活性薬物である。
【0047】
本開示は主としてエストラジオール、またはこの誘導体を含むウエハに関するものであるが、本発明はまたエストロゲン活性を示す他の化合物、例えばエチニルエストラジオール、エストロン、メストラノール、エストリオール、コハク酸エストリオール、結合型ウマエストロゲンを含む結合型エストロゲン、及びフィトエストロゲンで実行することができる、と考えられる。
【0048】
従って、さらに一般的な態様では、本発明はまた、水溶性フィルムマトリックスを含んでなる単位剤形であって、
a)上記フィルムマトリックスが、少なくとも1つの水溶性マトリックスポリマーを含んでなり;
b)上記フィルムマトリックスが、エストロゲン活性を示す混合物を、エストラジオールの10〜200μgと治療上等価量に相当する量で含んでなり;そして
c)上記フィルムマトリックスが、300μm未満の厚さを有する、
単位剤形に関する。
従って、エストラジオール、賦形剤等の好適な量に関するここで行う全記載はまた、上記、及びさらに一般的な本発明の態様に適用する。
【0049】
製造
本発明の単位剤形は、医薬技術者に知られる標準的な方法によって調製することができる。
通常は、エストラジオール、またはこの誘導体、例えばエストラジオール半水和物または吉草酸エストラジオールを、適当な溶媒に溶解することによって薬液を調製する。溶媒は好適には、比較的揮発性のある溶媒、例えばアルコール、特にエタノールである。そして、水溶性マトリックスポリマーを適当な溶媒、例えばアルコール、水またはアルコール及び水の混合物に添加することによって、マトリックスポリマー溶液を調製する。好適には溶媒は、エタノール/水混合物である。当然のことながら、水溶性マトリックスポリマーを溶解するために必要な時間及び条件は、使用するポリマー及び溶媒次第であろう。
【0050】
従って、場合によっては、水溶性マトリックスポリマーを室温及び穏やかな攪拌のみで容易に溶解することができ、一方他の場合には、当該システムへ熱を加え勢いよく攪拌することが必要となるであろう。典型的な実施形態では、混合物を1〜4時間、好適には約2時間、または溶液が得られるまで攪拌する。溶液を通常は、60〜80℃、例えば約70℃の温度で攪拌する。室温まで冷却後、薬液をマトリックスポリマー溶液へ注ぎそして十分に混合する。生じる溶液(コーティング溶液)を、コーティングのために即座にまたは数日以内に使用することができる。約5〜50重量%、好適には10〜40重量%、特に20〜35重量%のコーティング溶液の固形成分含有量を達成するために、溶媒、マトリックスポリマー等の様々な量を、調整する。
【0051】
別の実施形態では、コーティング溶液をエストラジオール、またはこの誘導体、例えばエストラジオール半水和物または吉草酸エストラジオールを、適当な溶媒、好適にはアルコール、特にエタノールへ添加し、続いて水の添加並びに続くマトリックスポリマーの添加によって直接調製することができる。そして、溶液が得られるまで、混合物を上記のように処理する。生じる溶液(コーティング溶液)をコーティングのために即座にまたは数日以内に使用することができる。約5〜50重量%、好適には10〜40重量%、特に20〜35重量%のコーティング溶液の固形成分含有量を達成するために、溶媒、マトリックスポリマー等の様々な量を、調整する。
【0052】
上述のステップ中に、他の賦形剤、補助成分及び/又は活性薬物を添加してもよい。
適当な支持層またはバッキング層(ライナー)に展開する(展開され)前に、必要に応じて、コーティング溶液を脱泡する。適当なライナーの例としては、ポリエチレン−テレフタレート(PET)ライナー、例えばパーラシック(Perlasic)(商標登録)LF75(Perlen Converting から入手可能)、ロパレックス(Loparex)(商標登録)LF2000(Loparex BVから入手可能)及びスコッチパック(Scotchpack)(商標登録)9742(3M Drug delivery Systemsから入手可能)が含まれる。本発明の一実施形態では、拡散ボックス(spreading box)を活用して適当なライナー上にコーティング溶液を展開し、そして12〜24時間室温で乾燥させる。そして薄い透明のフィルムを生成し、続いて目的とするサイズ及び形の断片にカットする。あるいは、自動コーティング及び乾燥装置を使用して(例えば、Coatema Coating Machinery GmbH, Dormagen, Germanyによって)、薄いフィルムとしてコーティング溶液を適当なライナー上にコーティングし、そして40〜125℃、例えば40〜100℃の乾燥温度を使用してインライン(in-line)乾燥する。そして、薄い透明のフィルムが生成され、続いて目的とするサイズ及び形の断片にカットする。
【0053】
治療上の使用及び投与
本発明の単位剤形は口腔内に投与される、すなわち、単位剤形は口腔へ投与されそして活性薬物は続いて1または複数の口腔粘膜を介して吸収される、と理解されるであろう。従って、当該活性薬物は、舌投与、舌下投与、頬投与及び口蓋投与に適当である。口蓋または舌投与、特に舌投与が好適である。この好適な実施形態に従って、本発明の単位剤形は舌へ簡単に投与され、素早く溶解され、通常は30秒以内に、好適には15秒以内に溶解される。
従って、他の態様では、本発明は医薬として使用のための単位剤形に関する。
【0054】
さらに他の態様では、本発明は、エストロゲンの不十分な内因性レベルによって生じる雌の哺乳類における健康状態、例えば骨粗しょう症、頭痛、吐き気、うつ、血管運動症状、泌尿生殖器萎縮症状、骨密度の減少或いは骨折リスクまたは発生率の増加の治療、緩和または予防のための単位剤形に関する。
エストロゲンの欠乏レベルは、様々な理由のため生じ得る。例えば、エストロゲンの欠乏レベルは、例えば自然閉経、閉経周辺期、閉経後、性腺機能低下症、性腺摘除または原発性卵巣機能不全によって生じるかもしれない。エストロゲンの低レベルは、原因に関係なく、女性の生活の全体的な質の低下につながる。症状、疾患及び状態は、単に不都合であることから重篤であることまで及ぶ。ここに記載される単位剤形によって、エストロゲン欠乏の生理的及び精神的徴候の有効な軽減が提供される。一過性症状、例えば血管運動性の徴候及び精神症状は、治療の範囲で確実に具現化する。
【0055】
血管運動症状には、ほてり、発汗発作、例えば寝汗、及び動悸が含まれるが、これに限定されない。血管運動症状は、(上記の)FDAガイドラインによって定義される通り、「軽度」、「中度」または「重度」である。エストロゲン欠乏の精神症状には、不眠症及び他の睡眠状態、記憶力の低下、自信喪失、気分変動、不安、性欲減退、集中力の欠如、決断力の欠如、エネルギー及び意欲の減少、易刺激性及び発作的な泣きが含まれるがこれに限定されない。上述の症状の治療または軽減は、女性の生涯の閉経期前後の段階またはこの後、場合によっては閉経後しばらく伴うこととなる。閉経期前後の段階、閉経または閉経後の段階に、ここに記載する単位剤形を、これら及び他の一過性症状に適用できることが予想される。さらに、エストロゲン欠乏の原因が性腺機能低下症、性腺摘除または原発性卵巣機能不全であるなら、上述の症状を軽減することができる。本発明の他の実施形態では、ここに記載される単位剤形は、エストロゲン欠乏の持続的な影響を治療または軽減するために使用される。持続的な影響には、身体的変化、例えば泌尿生殖器萎縮、乳房萎縮、循環器疾患、毛髪分布の変化、毛髪の濃さ、皮膚状態の変化及び骨粗しょう症が含まれる。泌尿生殖器萎縮、及びこれが付随する状態、例えば膣乾燥、膣pHの増加及びそれに続く細菌叢の変化、または例えば萎縮、例えば血管増生、弾性線維の分裂、コラーゲン線維の融合の減少、或いは細胞容積の減少につながる現象は、ここに記載の単位剤形で治療または減少することに特に適すると考えられる症状である。さらに、ここに記載の単位剤形は、エストロゲン欠乏、粘液産生の減少、細胞集団の変化、グリコーゲン産生の減少、乳酸菌増殖の減少または連鎖球菌、ブドウ球菌、または大腸菌の増殖の増加に付随する他の泌尿生殖器の変化に適すると考えられる。ここに記載の単位剤形の投与によって回避可能と考えられる他の付随する変化は、膣が損傷または感染症、例えば滲出性分泌、膣炎、及び性交疼痛症等となりやすい状態にする変化である。さらに、泌尿器の感染及び失禁は、エストロゲンレベルの低下に付随する他の一般的な症状である。本発明の他の実施形態には、エストロゲン欠乏に付随する身体的変化、例えば皮膚の変化、毛髪分布の変化、毛髪の濃さ、乳房萎縮、または骨粗しょう症の予防または軽減が含まれる。骨粗しょう症、特に閉経後の骨粗しょう症の予防及び管理は、本発明の特に注目すべき実施形態である。さらに、骨の脱ミネラル化、骨量及び骨密度の減少、骨梁の菲薄化及び障害、並びに/或いは骨折または骨変形の発生の増加に、特に適すると考えられる。骨粗しょう症の予防治療は、本発明の組成物の注目すべき治療上の利用である。本発明の特に注目すべき実施形態は、ほてり、発汗発作、動悸、睡眠状態、気分変動、神経過敏、不安、記憶力の低下、自信喪失、性欲減退、集中力の低下、エネルギーの減少、意欲低下、易刺激性、泌尿生殖器萎縮、乳房萎縮、循環器疾患、毛髪分布の変化、毛髪の濃さ、皮膚状態の変化及び骨粗しょう症(骨粗しょう症の予防を含む)、中でもほてり、発汗発作、動悸、睡眠状態、気分変動、神経過敏、不安、泌尿生殖器萎縮、乳房萎縮の頻度、残留感覚、持続期間及び/又は重症度の減少、並びに骨粗しょう症の予防または管理を対象とする。本発明の他の注目すべき実施形態は、ほてり、発汗発作、動悸、睡眠状態、気分変動、神経過敏、不安、記憶力の低下、自信喪失、性欲減退、集中力の低下、エネルギーの減少、意欲の低下、易刺激性、泌尿生殖器萎縮、乳房萎縮、循環器疾患、毛髪分布の変化、毛髪の濃さ、皮膚状態の変化及び骨粗しょう症(骨粗しょう症の予防を含む)、中でもほてり、発汗発作、動悸、睡眠状態、気分変動、神経過敏、不安、泌尿生殖器萎縮、乳房萎縮の治療または減少、並びに骨粗しょう症の予防または管理を対象とする。
【0056】
本発明の好適な実施形態では、本発明に従って治療を受ける雌の哺乳類は、女性、特に閉経後の女性である。
用語「閉経前」、「閉経周辺期」、「閉経」及び「閉経後」は、それぞれの慣習的な意味で、例えば「The Controversial Climateric」;P. A. van Keep等. Ed., MTP Press (1981)の9ページに定義するように使用する。さらに詳細には、用語「閉経」は、最終の自然(卵巣誘発の)月経として理解される。これは、卵胞の年齢依存性機能障害の単独の現象及び結果である。閉経は、性ホルモンエストロゲン及びプロゲステロンの産生の減少した卵巣に起因する。卵胞の数が一定の閾値以下に減少する場合には、卵巣はもはや成熟卵胞及び性ホルモンを産生することができない。産生能力は閉経で終了する。閉経期前後の段階には更年期障害が発症し、この時周期は不規則となりそして閉経後一年で終了する。閉経期前後段階の終了は、出血のない長期間の後に確認される。閉経後とは、閉経時から開始しそして死まで継続する段階である。
【0057】
本発明のさらに、そして特に好適な実施形態では、本発明に従って治療を受ける閉経後の女性は、子宮摘出された閉経後の女性である。
子宮摘出は、子宮の外科的切除である。全子宮摘出は、子宮及び子宮頚部の切除である。部分的な子宮摘出は、子宮頚部(子宮膣上部とも呼ばれる)の断端を残した子宮の切除である。子宮摘出は、卵巣の外科的切除(卵巣摘出)を伴う可能性がある。女性生殖腺、卵巣の切除は、女性の性腺摘除である。両側卵管−卵巣摘出術(両方の卵巣の切除、すなわち性腺摘除)で子宮全摘出を受ける女性は、多くのエストロゲン及びプロゲスチンを含むこれらのホルモン産生を喪失する。自然閉経を経験している女性は、完全及び機能性のある雌性器官を有し、一方子宮摘出され避妊手術を受けた女性はこれらを保有しない。従って、本文脈で用語「子宮摘出された女性」とは、子宮の全または一部摘出を受けた女性を意味する。
【0058】
外因性のエストロゲンによって子宮内膜の増殖が刺激されることが、証明されている。エストロゲン単剤治療において、増殖を終了させるプロゲステロンの拮抗作用は、存在しない。子宮内膜の最上層が剥落する落屑段階は生じず、そして子宮内膜の増殖は閉経前段階までの段階及び閉経前段階よりも大いに生じる。この結果は肥厚、子宮内膜ガンのリスク因子である。逆療法もまた意味する併用療法は、子宮内膜を肥厚から保護するためにプロゲスチンを追加する治療である。従って、本発明の他の実施形態では、子宮摘出を受けていない女性(「非子宮摘出の女性」)におけるエストロゲンの内因性レベルの欠乏に付随する疾患、状態または症状の治療、軽減または予防と特に関連して、子宮内膜を外因性のエストロゲンによって生じる副作用から保護するために、本発明の単位剤形中にプロゲスチンを包含してよい。あるいは、別々の単位剤形、例えば経口錠剤等でプロゲスチンを投与してよい。しかしながら、上記に説明するように、ここに開示するエストラジオールの用量の投与によって、特に「超低」用量または「非常に低い」用量のエストラジオールの投与によっては子宮内膜は大幅に増大せず、従ってプロゲスチンの同時投与は必ずしも必要ではない、と考えられる。
【0059】
さらに、本発明の他の実施形態では、子宮摘出を受けた女性(「子宮摘出された女性」)のエストロゲンの内因性レベルの欠乏に付随する疾患、状態または症状の治療、軽減または予防と特に関連して、単位剤形にプロゲスチンを含有しないことが望ましい。従って、この実施形態によれば、本発明の単位剤形には、最適な治療上の活性薬物として、エストラジオール、またはエストラジオール水和物或いはエストラジオールの医薬的に許容されるエステル、を含有することが好適である。
【0060】
2mgのエストラジオールの経口投与後のエストラジオールの平均的な血清レベルは、通常は80〜100pg/mlの範囲内であることが、証明されている。この血清レベルは、血管運動症状、例えばほてり等を軽減することに適当であると一般的に考えられている。さらに、経口投与後、エストラジオールは吸収の間に広範に代謝され、そしてエストラジオールの約5%のみが生体内利用可能となることが証明されている(Kuhnz 等. Drug Res. 1993;43;966-973)。
【0061】
実施例で提供する実験データからわかるように、本発明の単位剤形は、経口投与される錠剤よりも相当高い生体内利用率を有する。従って、生体内利用率10%以上、例えば20%以上、例えば、30%以上が通常達成されるであろう。さらに詳細には、10〜90%、例えば20〜80%、例えば30〜80%の範囲内の生体内利用率が通常達成されるであろう。特に、治療上の活性物質がエストラジオールまたはエストラジオール半水和物である場合、50〜80%、通常60〜80%の範囲内の生体内利用率が達成される。同様に、このことは、経口投与と比較して顕著に低用量のエストラジオールを投与するにもかかわらず、エストラジオールの治療上有効である血清レベルを達成することができる、という結果となる。さらに、治療上の活性成分がエストラジオールエステル、例えば吉草酸エストラジオールである場合には、30〜60%、通常30〜50%の範囲内の生体内利用率が達成される。従って、この場合もまた、経口投与と比較して低用量で、エストラジオールの治療上有効である血清レベルを達成することが可能である。従って、ここに記載の単位剤形の連日投与によって、範囲100〜1500pg/ml、例えば150〜1500pg/ml内のエストラジオールの最大血清レベル(Cmax)を達成することができると考えられる。さらに詳細には、90μgのエストラジオールの投与によって範囲500〜800pg/ml内のCmax値を達成することができ、そして投与118μgの吉草酸エストラジオールの投与によって範囲100〜250pg/ml、好適には150〜250pg/ml内のCmax値を達成することができる。
さらに、150μgのエストラジオールの投与は、範囲1000〜1500pg/ml内のCmax値を生じる、と考えられる。
【0062】
最後に、血清エストラジオール値が適用される実験アッセイに幾分左右されるということは、本発明者の経験から得たことである。従って、一定の血清エストラジオール濃度について言及する場合はいつでも、エストラジオールの濃度を実施例4に記載するアッセイによって測定する、と理解されたい。
本発明を、次の非制限的な実施例によってさらに説明する。
【実施例】
【0063】
実験
実施例1−ウエハの調製
コーティング溶液の調製−オプションA
0.558gのエストラジオール半水和物を含有する薬液を、攪拌のもと、当該薬物を50gのエタノール(96%)中に溶解することによって調製する。ポリマー溶液を、149.442gのHPMCを100gのエタノール(96%)及び150gの水の混合物上に撒くことによって調製する。70℃で2時間の攪拌後に、HPMCは溶解した。室温へ冷却後に、薬液をポリマー溶液中に注ぎ、そして十分に混合した。生じる溶液(コーティング溶液)を即座にまたは数日以内にコーティングのために使用することができる。
【0064】
コーティング溶液の調製−オプションB
コーティング溶液を、0.558gのエストラジオール半水和物を200gのエタノール(96%)に攪拌で溶解することによって調製する。100gの水と混合後に、149.442gのHPMCを添加しそして70℃で2時間の攪拌後に溶解した。生じる溶液(コーティング溶液)をコーティングのために即座にまたは数日以内に使用することができる。
【0065】
ウエハの調製−オプション1
コーティング溶液を脱泡し、そして拡散ボックス(spreading box)を活用してポリエチレン−テレフタレート(PET)ライナー(パーラシック(Perlasic)(商標登録)LF75)上に展開し、室温で24時間乾燥させた。約40μm厚である薄い透明フィルムを生成する。5cmサイズのサンプルを切り取ることによりウエハを得た。
【0066】
ウエハの調製−オプション2
コーティング溶液を脱泡し、そして自動コーティング及び乾燥装置(Coatema Coating Machinery GmbH, Dormagen, Germany)を使用して、薄いフィルムとしてポリエチレン−テレフタレート(PET)ライナー(パーラシック(Perlasic)(商標登録)LF75)上にコーティングしインライン(in-line)乾燥する。乾燥温度70℃を適用する。約40μm厚である薄い透明のフィルムが生成される。5cmサイズのサンプルを切り取ることにより、ウエハが得られる。
上述の製造方法を使用しながら、次の組成を有するウエハを調製した:
【0067】
エストラジオール半水和物ウエハ、30μg(製剤A)
【表1】

*製造中、蒸発させる。
【0068】
エストラジオール半水和物ウエハ、90μg(製剤B)
【表2】

*製造中、蒸発させる。
【0069】
エストラジオール半水和物ウエハ、270μg(製剤C)
【表3】

*製造中、蒸発させる。
【0070】
吉草酸エストラジオールウエハ、30μg(製剤D)
【表4】

*製造中、蒸発させる。
【0071】
吉草酸エストラジオールウエハ、90μg(製剤E)
【表5】

*製造中、蒸発させる。
【0072】
吉草酸エストラジオールウエハ、270μg(製剤F)
【表6】

*製造中、蒸発させる。
【0073】
エストラジオール半水和物ウエハ、40μg(製剤G)
【表7】

*製造中、蒸発させる。
【0074】
エストラジオール半水和物ウエハ、45μg(製剤H)
【表8】

*製造中、蒸発させる。
【0075】
エストラジオール半水和物ウエハ、50μg(製剤I)
【表9】

*製造中、蒸発させる。
【0076】
エストラジオール半水和物ウエハ、80μg(製剤J)
【表10】

*製造中、蒸発させる。
【0077】
エストラジオール半水和物ウエハ、120μg(製剤K)
【表11】

*製造中、蒸発させる。
【0078】
エストラジオール半水和物ウエハ、150μg(製剤L)
【表12】

*製造中、蒸発させる。
【0079】
当然のことながら、ここに記載の方法を使用して、エストラジオールの異なる量を含有及び/又はエストラジオール誘導体を含有する類似のウエハを容易に製造することができる。好適な実施形態では、甘味料及び/又はフレーバを製剤へ添加する。
【0080】
実施例2−臨床試験(PK試験)
試験概略
【0081】
【表13】

結果
次の非用量規準化のデータが得られ、全パラメータを各々アエロジオール(商標登録)値のパーセンテージで示す:
【表14】

エストラジオールの対応数量として算出した。
【0082】
上記のデータは、「パルス様」薬物動態特性が得られ、そして本発明の剤形、特にエストラジオール半水和物を含有する剤形の生体内利用率(及びCmax)は、経口投与された錠剤の生体内利用率(及びCmax)よりも顕著に高いことを示す。
さらに、当該アエロジオール(商標登録)のたった30%の用量を含んでなる本発明の剤形はさらに、当該アエロジオール(商標登録)値の60%である生体内利用率を生じた。従って、エストラジオールは、本発明に従って製剤化される場合に、鼻腔内投与されるよりも実に高い生体内利用率を有するようである。さらに詳細には、本発明の剤形は、鼻腔内投与の製剤の生体内利用率の2倍の生体内利用率を有する。従って、本発明に準ずる製剤では、鼻腔内投与の場合の必要用量と比較してたった半分の用量が必要である。
【0083】
実施例3−臨床試験
【0084】
【表15】

【0085】
新たな医薬調製物の有効性及び安全性を、第三相臨床試験で一般調査する。閉経後の女性における適応血管運動症状(ほてり)のための試験をどのように計画するかについての、US及びEU当局の推奨((上述の)FDAガイドライン、及び閉経後女性におけるエストロゲン欠乏症状のホルモン補充療法のための、医薬生成物の臨床試験に関するガイドライン;EMEA;欧州医薬品庁;2005年10月)には、例えば以下が含まれる:
【0086】
試験は、治療期間12週間に、ランダムの、二重盲検プラセボ対照デザインで実施されるべきである。前提として、患者は試験の治療段階(ベースライン)に入る前に、予め確定される一日のほてりの最小数を示すべきである。中度〜重度のほてりのみ治療が必要と分類する。
【0087】
患者は、特にほてりの証拠書類提出のために計画された予定表を受け取り、これは治療段階前及び治療段階中の試験期間の原始データとして役立つ。女性は、経験するほてりの数及びこれらの重症度を毎日記録することができる:
軽度:発汗のない熱感覚
中度:発汗を伴う熱感覚;活動の継続が可能
重度:発汗を伴う熱感覚;活動の中断が生じる
【0088】
試験調製物の有効性は、12週の中度〜重度のほてりの頻度及び重症度の減少によって示されるであろう。プラセボに対する試験調整物の、ベースラインから12週までのほてりの平均的変化、及び12週目における平均的変化は、統計的優位性を示すはずである。プラセボに関しては25%のレスポンダー(レスポンダー:12週目において、中度〜重度のほてりがベースラインから少なくとも75%減少する、と定義する)の割合が想定されるので、ほてりの治療において、エストラジオールの最少有効用量によって約45%のレスポンダーの割合が示される場合は、エストラジオール含有ウエハの投与は有効であるとみなす;約90%のレスポンダーの割合は、市場で使用される標準的な用量(例えば経口の1mgエストラジオールと等価)の有効性を示し、従って>90%のレスポンダーの割合は、高用量を反映するものであろう;中度の有効用量は、最少有効用量及び標準的な用量の間のレスポンダーの割合という結果になるであろう。プラセボに関するレスポンダー割合が(上で想定する)パーセンテージより低いまたは高いという結果になるなら、当該試験調製物に想定される割合を適宜調整しなければならないであろう。
【0089】
実施例4−エストラジオールアッセイ
エストラジオールを2つの相違するアッセイによって測定してよい:
GC/MS/MS
ボンドエルトサーティファイ(BondElut Certify)(商標登録)固相カートリッジを使用し、1.00mlのヒト血清から分析物及びこれらの重水素化内部標準を抽出する。エストラジオール及びエストロンを酢酸エチルで固相カートリッジから溶出する。分析物に3つの別個の誘導体化ステップを実施する:(1)ペンタフルオロベンゾイルクロリドでの反応、(2)O−(2,3,4,5,6−ペンタフルオロベンジル)−ヒドロキシルアミン塩酸塩での反応、及び(3)MSTFAでの反応。そして、誘導体化分析物を、DB−17溶融石英毛管カラムを使用してガスクロマトグラフィによって分離し、そして負イオン化学イオン化を使用したタンデム質量分析によって検出する。l/(濃度)加重最小二乗回帰方法を使用し、較正データへ一次関数を当てはめる。
【0090】
LC/MS/MS
500μlのサンプル一定分量を、25μlの内部標準の希釈標準溶液で補強する(fortified)。5.0mlの10:90(v/v)酢酸エチル/ヘキサンでの液液抽出を通して、分析物を分離する。窒素を流しながら、40〜50℃で溶媒を蒸発させ、そして生じる残渣を誘導体化する。誘導体化分析物を3.0mの10:90(v/v)酢酸エチル/ヘキサン中に抽出し、溶媒を蒸発させ、そして生じる残渣を150μlのアセトニトリル及び200μlの水で戻す。最終抽出物を、タンデム質量分析による検出を使用して高速液体クロマトグラフィを介して分析する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄い水溶性フィルムマトリックスを含んでなる単位剤形であって、
a)上記フィルムマトリックスが、少なくとも1つの水溶性マトリックスポリマーを含んでなり;
b)上記フィルムマトリックスが、10〜200μgのエストラジオール、或いは治療上等価量のエストラジオールの水和物または治療上等価量のエストラジオールの医薬的に許容されるエステルを含んでなり;そして
c)上記フィルムマトリックスが、300μm未満の厚さを有する、単位剤形。
【請求項2】
前記水溶性マトリックスポリマーが、セルロース物質、合成ポリマー、ガム、タンパク質、デンプン、グルカン及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1記載の剤形。
【請求項3】
前記セルロース物質が、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシメチルプロピルセルロース及びヒドロキシプロピルメチルセルロースからなる群から選択される、請求項2記載の剤形。
【請求項4】
前記セルロース物質が、ヒドロキシプロピルメチルセルロースまたはヒドロキシプロピルセルロースである、請求項3記載の剤形。
【請求項5】
前記セルロース物質が、ヒドロキシプロピルメチルセルロースである、請求項4記載の剤形。
【請求項6】
前記エストラジオールの水和物が、エストラジオール半水和物である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の剤形。
【請求項7】
前記エストラジオールの医薬的に許容されるエステルが、吉草酸エストラジオール、酢酸エストラジオール、プロピオン酸エストラジオール、エナント酸エストラジオール、ウンデシレン酸エストラジオール、安息香酸エストラジオール、シピオン酸エストラジオール、硫酸エストラジオール及びスルファミン酸エストラジオールからなる群から選択される、請求項1〜5のいずれか1項に記載の剤形。
【請求項8】
前記エストラジオールの医薬的に許容されるエステルが、吉草酸エストラジオールである、請求項7記載の剤形。
【請求項9】
前記フィルムマトリックスが、10〜60μgのエストラジオール、或いは治療上等価量のエストラジオールの水和物または治療上等価量のエストラジオールの医薬的に許容されるエステルを含んでなる、請求項1〜8のいずれか1項に記載の剤形。
【請求項10】
前記フィルムマトリックスが、60〜200μg超のエストラジオール、或いは治療上等価量のエストラジオールの水和物または治療上等価量のエストラジオールの医薬的に許容されるエステルを含んでなる、請求項1〜8のいずれか1項に記載の剤形。
【請求項11】
前記フィルムマトリックスが、200μm未満の厚さを有する、請求項1〜10のいずれか1項に記載の剤形。
【請求項12】
前記フィルムマトリックスが、100μm未満の厚さを有する、請求項11に記載の剤形。
【請求項13】
前記フィルムマトリックスが、表面積2〜10cmを有する、請求項1〜12のいずれか1項に記載の剤形。
【請求項14】
前記フィルムマトリックスが、表面積3〜7cmを有する、請求項13に記載の剤形。
【請求項15】
前記フィルムマトリックスが、表面積4〜6cmを有する、請求項14に記載の剤形。
【請求項16】
前記フィルムマトリックスが、範囲5〜200mgに重量を有する、請求項1〜15のいずれか1項に記載の剤形。
【請求項17】
前記フィルムマトリックスが、範囲10〜100mgに重量を有する、請求項16に記載の剤形。
【請求項18】
前記フィルムマトリックスが、範囲10〜50mgに重量を有する、請求項17に記載の剤形。
【請求項19】
前記エストラジオール、或いはエストラジオールの水和物またはエストラジオールの医薬的に許容されるエステルが、前記単位剤形に存在する唯一の治療上の活性薬物である、請求項1〜18のいずれか1項に記載の剤形。
【請求項20】
前記単位剤形が、プロゲスチンを含有しない、請求項1〜19のいずれか1項に記載の剤形。
【請求項21】
前記フィルムマトリックスが、さらにプロゲスチンを含んでなる、請求項1〜19のいずれか1項に記載の剤形。
【請求項22】
医薬としての使用のための、請求項1〜21のいずれか1項に記載の単位剤形。
【請求項23】
エストロゲンの不十分な内因性レベルによって生じる雌の哺乳類における健康状態を治療、緩和または予防するための、請求項1〜21のいずれか1項に記載の単位剤形。
【請求項24】
前記健康状態が、骨粗しょう症、頭痛、吐き気、うつ、血管運動症状、泌尿生殖器萎縮の症状、骨密度の減少、及び骨折のリスクまたは発生率の増加からなる群から選択される、請求項23に記載の剤形。
【請求項25】
前記血管運動症状が、ほてり、寝汗を含む発汗発作、及び動悸からなる群から選択される、請求項24に記載の剤形。
【請求項26】
前記雌の哺乳類が、閉経後の女性である、請求項23〜25のいずれか1項に記載の単位剤形。
【請求項27】
エストロゲンの不十分な内因性レベルによって生じる、子宮摘出された閉経後の女性の健康状態を治療、緩和または予防するための、請求項1〜20のいずれか1項に記載の剤形。
【請求項28】
エストロゲンの不十分な内因性レベルによって生じる、子宮摘出されていない閉経後の女性の健康状態を治療、緩和または予防するための、請求項21に記載の剤形。
【請求項29】
エストロゲンの不十分な内因性レベルによって生じる雌の哺乳類における健康状態を治療、緩和または予防するための方法であって、該方法が請求項1〜21のいずれか1項に記載の単位剤形を、それを必要としている雌の哺乳類へ投与することを含んでなる、方法。
【請求項30】
前記健康状態が、骨粗しょう症、頭痛、吐き気、うつ、血管運動症状、泌尿生殖器の萎縮症状、骨密度の減少、及び骨折のリスクまたは発生率の増加からなる群から選択される、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記血管運動症状が、ほてり、寝汗を含む発汗発作、及び動悸からなる群から選択される、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記雌の哺乳類が、閉経後の女性である、請求項29〜31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
子宮摘出された閉経後の女性において、エストロゲンの不十分な内因性レベルによって生じる健康状態を治療、緩和または予防するための方法であって、該方法が請求項1〜20のいずれか1項に記載の単位剤形を、それを必要としている子宮摘出された閉経後の女性へ投与することを含んでなる、方法。
【請求項34】
子宮摘出されていない閉経後の女性において、エストロゲンの不十分な内因性レベルによって生じる健康状態を治療、緩和または予防するための方法であって、該方法が請求項21に記載の単位剤形を、それを必要としている子宮摘出されていない閉経後の女性へ投与することを含んでなる、方法。

【公表番号】特表2011−511823(P2011−511823A)
【公表日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−546291(P2010−546291)
【出願日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際出願番号】PCT/EP2009/051303
【国際公開番号】WO2009/101021
【国際公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【出願人】(300049958)バイエル・シエーリング・ファーマ アクチエンゲゼルシャフト (357)
【Fターム(参考)】