説明

エゼクタ装置およびエゼクタ装置を用いた燃料電池システム

【課題】低温下でもノズル部の開口量を調整できるエゼクタ装置およびこれを用いた燃料電池システム。
【解決手段】流通路内12を流れる第1流体14がノズル部16を通過する吸引力で、第2流体18を取り込み供給するエゼクタ装置10であって、エゼクタ装置は感圧室20、開口調整部26、第1流体流量を調整する流量調整弁30を備え、第1流体の圧力が無圧時には他方側がノズル部に当接ニードル28と、感圧室内および感圧室外の少なくとも一方に配設された付勢部材34を有し、第1流体が流れる際、第1流体の流量による圧力と感圧室内の圧力との差によって生ずる伸縮作用によりニードルを変位させ、開口を形成するよう構成されており、第1流体の圧力が低く変化した場合、ニードルの端部とノズル部との間の開口量を減少してノズル部を通過する第1流体の流速を増加させ、流通路内に取り込まれる第2流体の流量が増加するように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1流体が流通路内を流れることで生じた負圧による吸引力で、流通路内に第2流体を取り込み、第1流体と第2流体とを合流させ、流通路下流側へ流体を供給するエゼクタ装置およびこのエゼクタ装置を用いた燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、流通路内を流れる第1流体が流通路の一部に設けられたノズル部を通過することで生じた負圧による吸引力で、ノズル部よりも下流側の流通路内に第2流体を取り込み、第1流体と第2流体とを合流させるようにしたエゼクタ装置が知られている。
【0003】
このようなエゼクタ装置は、通常、ノズル部の開口部分が一定の開口量となっており、流通路内を流れる第1流体の最大流量時にあわせてこの開口量が設定されている。
ところで、第1流体が小流量時には、最大流量時に比べてノズル部の出口部分における流速が得られないため、第1流体がノズル部の開口部分を通過しても吸引力が小さく、第2流体を取り込み難くなる場合があった。
【0004】
そこで、第2流体の流通路内にポンプを設けることで、第1流体が小流量時であっても、強制的に第2流体を流通路内へ送り込むことのできるエゼクタ装置が開発されている。
しかしながら、このような第2流体の流通路内にポンプを設けたエゼクタ装置は、装置構成が複雑となり、またコスト高を招いてしまうものであった。
【0005】
このため、特許文献1に開示されたエゼクタ装置100では、図7に示したように、ニードル104の後端部分を、作動室110の一部を構成するダイヤフラム112に接続し、不活性ガスが封入された作動室110と高圧側冷媒である第1流体106が流れ込む駆動室114との圧力を調整することで、ニードル104を前後に移動させてノズル部102とニードル104との間の開口量が調整されるようになっている。
【0006】
このようなエゼクタ装置100は、第1流体106の流量にあわせてノズル部102とニードル104との開口量が調整され、これにより蒸発器側より取り込まれる第2流体108の流量を制御可能であるとともに装置構成を簡素化することができるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−279177号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載されているようなエゼクタ装置100を燃料電池システムに用いた場合、装置停止時にニードル104とノズル部102との間が開放状態であるため、装置停止時にスタック側より取り込まれる水分を含んだ第2流体108は、このニードル104とノズル部102の間にも流入してしまうこととなる。
【0009】
このため、このような従来のエゼクタ装置100を寒冷地などの低温下で使用した場合には、ニードル104とノズル部102との間に流入した第2流体108が凍結してニードル104が動作できなくなり、これにより装置を再び作動させた際に作動不具合を生ずる場合があった。
【0010】
本発明はこのような現状に鑑み、低温下においてもノズル部の開口量を調整することができるエゼクタ装置およびこのエゼクタ装置を用いた燃料電池システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、前述したような従来技術における課題および目的を達成するために発明されたものであって、
本発明のエゼクタ装置は、
流通路内を流れる第1流体が前記流通路の一部に設けられたノズル部を通過することで生じた負圧による吸引力で、前記ノズル部よりも下流側の流通路内に第2流体を取り込み、前記第1流体と第2流体とを合流させ、前記流通路下流側へ流体を供給するエゼクタ装置であって、
前記エゼクタ装置は、
前記流通路のノズル部よりも上流側に配設され、一定圧力の空間を構成する感圧室と、
前記第1流体が前記感圧室の外側を流れる際の圧力と前記感圧室内の圧力との差により生ずる前記感圧室の伸縮作用により、前記ノズル部の開口量を変化させる開口調整部と、
前記感圧室よりも上流側に、前記流通路を流れる第1流体の流量を調整する流量調整弁と、
を備え、
前記開口調整部は、
一方側が前記感圧室の下流側に接続されるとともに、前記第1流体の圧力が無圧時には他方側が前記ノズル部に当接するように構成されたニードルと、
前記感圧室内および前記感圧室外の少なくとも一方に配設された付勢部材と、
を有し、
前記第1流体が流れる際、この第1流体の流量による圧力と前記感圧室内の圧力との差によって生ずる、前記付勢部材の伸縮作用によりニードルを変位させ、前記ニードルの端部とノズル部との間で開口を形成するよう構成されており、
前記流通路を流れる第1流体の圧力が低く変化した場合、前記ニードルの端部と前記ノズル部との間の開口量を減少して前記ノズル部を通過する第1流体の流速を増加させ、前記流通路内に取り込まれる前記第2流体の流量が増加するように構成されていることを特徴とする。
【0012】
このように構成すれば、第1流体の流量(圧力)のみ調整することにより、第2流体の流量も調整することができ、簡素な構成で確実にエゼクタ装置を作動させることができる。
【0013】
また、第2流体をノズル部の開口量の調整に用いていないため、例えば低温時においても開口調整部の凍結を防止して不具合の発生を抑制することができる。
さらに感圧室よりも上流側に流量調整弁を配設すれば、流量調整弁からの第1流体の流量(圧力)に応じ、第2流体を所定量取り込むことができ、エゼクタ装置の制御を容易に行うことができる。
【0014】
また、ノズル部に当接するようにニードルが配設され、ニードルが上流側へ後退することで、ノズル部に開口が生ずるように構成されていれば、開口量の調整を容易に行うことができる。
【0015】
さらに、第1流体が流されていない時はノズル部の開口がニードルにより全閉されているので、システム停止時に(水分を含んだ)第2流体がノズル部より上流(感圧室側)に流入することがない。
【0016】
また、本発明のエゼクタ装置は、
前記感圧室は、内部を真空とし密閉されていることを特徴とする。
このように構成すれば、第1流体の圧力に対する基準圧力となる感圧室内の圧力を、他から引いてくる必要がなく、システムの簡素化が計れ、エゼクタ装置のコストを抑えることができる。
【0017】
また、本発明のエゼクタ装置は、
前記感圧室の上流側に、前記第1流体の流体圧力に対する前記ノズル部の開口量が調整可能な調整部を有することを特徴とする。
【0018】
このように第1流体の圧力に対するノズル部の開口量を調整すれば、感圧室および感圧室内の付勢部材の圧縮荷重特性バラツキによる影響を無くし、第1流体が所定の圧力に達した際に、ノズル部の開口が生ずるようにすることができる。
【0019】
また、本発明のエゼクタ装置は、
前記感圧室が、感圧素子から成ることを特徴とする。
このように感圧室が感圧素子であれば、第1流体の流量(圧力)の違いに合わせて感圧室を確実に伸縮させることができる。
【0020】
また、本発明のエゼクタ装置は、
前記感圧素子が、ベローズであることを特徴とする。
このように感圧素子がベローズであれば、第1流体の流量により収縮する際に、蛇腹形の部分により一方と他方の方向にのみ移動することとなるため、この移動方向にニードルが接続されていれば、第1流体の流量により開口調整部をノズル部の開口に対して一方と他方に移動させることができ、また第1流体をベローズの外側に流せるので、第1流体を流入させる第1流体の流通路とノズル部の下流側の流通路とを直線状に配置でき、エゼクタ装置の小型化が計れ好ましい。
【0021】
また、本発明のエゼクタ装置は、
前記開口調整部の摺動部分に、ダンパー部材が設けられていることを特徴とする。
このようにダンパー部材が設けられていれば、第1流体の流量が急に変化しても、ノズル部と開口調整部との間で構成される開口の急激な開閉を抑止することができ、徐々に開口量を変化させることができる。
【0022】
また、本発明のエゼクタ装置は、
前記感圧室と前記開口調整部とが、ボールジョイントにより接続されていることを特徴とする。
【0023】
このように感圧室と開口調整部とがボールジョイントで接続されていれば、例えば感圧素子がベローズの場合に、多少傾いてベローズが伸縮しても、ベローズのばね力が偏荷重として作用することを回避し、その動作を開口調整部に伝えて確実にノズル部の開口量を調整することができる。
【0024】
また、本発明のエゼクタ装置は、
前記感圧室の空間内または前記感圧室の外側に、前記感圧室の第1流体の圧力による伸縮量特性を設定する付勢部材が配設されていることを特徴とする。
【0025】
このように感圧室の空間内または感圧室の外側に付勢部材が配設されていれば、第1流体の流量にあわせた付勢力を有する付勢部材を選択することで、第1流体が所定の圧力変化をした際、任意のノズル部の開口量変化が生ずるようにすることができる。
【0026】
また、本発明の燃料電池システムは、
上記いずれかに記載のエゼクタ装置を備え、第1流体である水素を燃料電池スタック内に供給し、前記燃料電池スタック内で水素を空気中の酸素と化学反応させて発電を行うことを特徴とする。
【0027】
このように本エゼクタ装置を燃料電池システムに用いれば、例えば低温下でエゼクタ装置を使用しても、水分を含んだ第2流体がノズル部より上流(感圧室側)に流入することがないため、開口調整部が凍結して作動不具合を生ずることがなく、どのような環境下においても確実に作動させることができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、上記した構成を有することによって、低温下においてもノズル部の開口量を調整することができるエゼクタ装置およびこのエゼクタ装置を用いた燃料電池システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】図1は、本発明のエゼクタ装置を用いた燃料電池システムの概略を説明するための概略図である。
【図2】図2は、本発明のエゼクタ装置の構成を説明するための断面図ある。
【図3】図3は、本発明のエゼクタ装置において、付勢部材を感圧室の外側に配設した状態を説明するための要部拡大図である。
【図4】図4は、本発明のエゼクタ装置の感圧室とニードルとの接続部分について説明するための要部拡大断面図である。
【図5】図5は、本発明のエゼクタ装置の作動状況を説明するための要部拡大断面図であり、図5(a)は停止時における断面図、図5(a1)は図5(a)の部分拡大図、図5(b)は大流量時における断面図、図5(b1)は図5(b)の部分拡大図、図5(c)は小流量時における断面図、図5(c1)は図5(c)の部分拡大図である。
【図6】図6は、本発明の他の実施例におけるエゼクタ装置の構成を説明するための断面図ある。
【図7】図7は、従来のエゼクタ装置の構成を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づいてより詳細に説明する。
図1は、本発明のエゼクタ装置を用いた燃料電池システムの概略を説明するための概略図、図2は、本発明のエゼクタ装置の構成を説明するための断面図、図3は、本発明のエゼクタ装置において、付勢部材を感圧室の外側に配設した状態を説明するための要部拡大図、図4は、本発明のエゼクタ装置の感圧室とニードルとの接続部分について説明するための要部拡大断面図、図5は、本発明のエゼクタ装置の作動状況を説明するための要部拡大断面図であり、図5(a)は停止時における断面図、図5(a1)は図5(a)の部分拡大図、図5(b)は大流量時における断面図、図5(b1)は図5(b)の部分拡大図、図5(c)は小流量時における断面図、図5(c1)は図5(c)の部分拡大図である。
【0031】
本発明のエゼクタ装置は、第1流体が流通路のノズル部を流れることで生じた負圧による吸引力で、第2流体を流通路内に取り込み、第1流体と第2流体とを合流させ、流通路下流側へ流体を供給するものであり、燃料電池システムは、このエゼクタ装置を用いて水素ガス(第1流体)を燃料電池スタック内に送り、水素ガスを空気中の酸素と化学反応させて発電を行い、燃料電池スタック内で反応しきれなかった水素ガス(第2流体)をエゼクタ装置へ戻し、再び燃料電池スタック内へ供給するようにしたものである。
【0032】
以下、本発明のエゼクタ装置を用いた燃料電池システムについて説明する。
<燃料電池システム50>
本発明のエゼクタ装置10を用いた燃料電池システム50は、図1に示したように、まず水素タンク32内の第1流体14である水素ガスが流量調整弁30で所定流量に調整されてエゼクタ装置10内に流入し、これをさらに燃料電池スタック52内に供給するようになっている。
【0033】
なお燃料電池スタック52は、高分子電解質膜とセパレータとの間を電極で挟んだセル(図示せず)を複数並べて成るものである。
この燃料電池スタック52には、上記したように一方(図1では左側)から第1流体14として水素ガスが供給され、他方(図1では右側)からは空気54が供給されるようになっており、燃料電池スタック52内において、供給された水素ガスと空気54中の酸素とを化学反応させることにより、発電を行うようになっている。
【0034】
この化学反応のときに生ずる排出物は水であることから、燃料電池システム50はクリーンなエネルギーシステムとして好適である。
なお、燃料電池スタック52中に供給された水素ガス(第1流体14)は、一部については化学反応がなされず、この残りの水素ガス(第2流体18)は循環路44を通ってエゼクタ装置10内に再び供給されるようになっている。
【0035】
なお、エゼクタ装置10は、第1流体14がノズル部(図示せず)を通過する際に生ずる負圧により、燃料電池スタック52内で残った水素ガス(第2流体18)を吸引し、これを第1流体14である水素ガスとともに再び燃料電池スタック52へ供給するものであり、これにより水素ガスを無駄なくエネルギーに変換することができるようになっている。
【0036】
なお、本発明においてはこのような燃料電池システム50に用いられているエゼクタ装置10が特徴的な構成を有している。
以下、このエゼクタ装置10について詳細に説明する。
【0037】
<エゼクタ装置10>
本発明のエゼクタ装置10は、図2に示したように、流通路12内を流れる第1流体14が流通路12の一部に設けられたノズル部16の開口24を通過することで生じた負圧による吸引力で、第2流体18をノズル部16よりも下流側の流通路12内に取り込み、第1流体14と第2流体18とを合流させ、流通路下流側へ流体を供給するようにしたものである。
【0038】
このようなエゼクタ装置10は、まず流通路12のノズル部16よりも上流側に、少なくとも第1流体14が流れる際の圧力とは異なる一定圧力の空間22を感圧素子で構成する感圧室20が配設されている。
【0039】
そして、感圧室20とノズル部16との間に感圧室20に一端が接続され、第1流体14が無圧(システム停止)時には、他方がノズル部16と当接して開口24を塞ぐニードル28が配設され、第1流体14が流れる際、この第1流体14の流量による圧力と感圧室20内の圧力との差によって生ずる感圧室20および感圧室20内に配設された付勢部材34の伸縮作用により、ノズル部16の開口量を変化させる開口調整部26を構成している。
【0040】
また、ノズル部16の下流側には、第2流体18を流通路12内に取り込むための循環路44が接続されている。
そして、感圧室20の外側の流通路12内を流れる第1流体14の圧力と、感圧室20の空間22内の圧力との圧力差によって感圧室20および感圧室20内に配設された付勢部材34の伸縮作用を生じさせ、これにより開口調整部26でノズル部16の開口量を変化させて第1流体14のノズル部16における流速を変化させることで、流通路12内に取り込まれる第2流体18の流量を調整できるようになっている。
【0041】
なお、感圧室20を構成する感圧素子としては、圧力により伸縮するものであれば如何なるものでもかまわないが、本実施例においてはベローズを用いている。
ベローズは蛇腹形であるため、これにより第1流体14の流量が変化した際には、ベローズは蛇腹の形成されている方向(図1では左右の方向)に伸縮し、圧力の変化を変位に変えることができる。
【0042】
図2に示した本実施例におけるベローズは、一方側の端部(図2では左側)が、後述する調整部40に接合されており、これにより、ベローズの動作は、ベローズの左側端部を基準として伸縮するようになっている。
【0043】
ベローズと調整部40との固定方法は、特に限定されるものではなく、例えば溶接,半田付けなどを用いて固定することができる。
また、ベローズからなる感圧室20内部の空間22の圧力は、第1流体14の流れる際の圧力と異なる一定圧力に設定されていれば良く、空気が第1流体14に入らないよう気密分離を行い、感圧室20内に大気圧を導入しても良いものである。
【0044】
しかしながら、感圧室20内に大気圧を導入する場合、その流通路を設ける必要が生じ、また第1流体14(水素)に空気が入らないよう気密分離を行う必要があるので、空間22内は真空状態とすることが特に好ましい。
【0045】
また、この空間22内には付勢部材34が配設されており、これによりベローズからなる感圧室20を所定の付勢力で伸びた状態とし保持している。なお、本実施例では感圧室20内に付勢部材34を配設しているが、図3に示したように、付勢部材34を感圧室20の外側に配設しても良い。
【0046】
また、この付勢部材34は、両端部がそれぞれに保持部材66,68にて保持されており、保持部材66と保持部材68との間は隙間70が形成されている。そして、この隙間量がベローズの収縮量の最大幅となっている。
【0047】
さらに、このような感圧室20の上流側には調整部40が設けられている。
この調整部40には、複数の第1流体流通孔42が形成されており、エゼクタ装置10の各部を形成する筐体46に取り外し自在に固定されているが、例えば螺合するように構成されていれば、交換も容易であるため好ましい。
【0048】
また、調整部40は、筐体46への追い込み量を追い込み幅48内において調整することにより、ベローズおよび感圧室20内の付勢部材34の圧縮量(荷重)を調整し、第1流体14が所定の圧力に達した際に、ノズル部16の開口24が生ずるように調整することができる。
【0049】
また、この第1流体流通孔42の上流側には、さらに流量調整弁30が設けられており、第1流体流通孔42と流量調整弁30により、水素タンク32内に貯留された第1流体14が所定の流量でエゼクタ装置10内に送られるようになっている。
【0050】
なおこのようなエゼクタ装置10は、図4に示したように、感圧室20とニードル28との接続において、ボールジョイント36が用いられており、これにより感圧室20を構成するベローズの配置姿勢に傾きがあっても、ベローズのばね力が偏荷重として作用することを回避し、その伸縮をニードル28側に伝えて開口量を調整できるようになっている。ここでニードル28は、付勢部材38によって常に感圧室20側へ付勢され、これにより両者の接続が維持されるようになっている。
【0051】
このような構成を有するエゼクタ装置10は、まず水素タンク32より供給された第1流体14が、流量調整弁30で所定の流量に調整された後、調整部40を通過する。
そして、この第1流体14が感圧室20の外側を通過し、第1流体14の流量による圧力と感圧室20内の圧力との差によって、感圧室20および感圧室20内に配設された付勢部材34の伸縮作用が生ずる。
【0052】
この感圧室20および感圧室20内に配設された付勢部材34の伸縮作用により、感圧室20に接続されたニードル28も上流側へ後退し、これによりニードル28の先端で閉じられていたノズル部16の開口24が生ずる。
【0053】
これにより、第1流体14はこのノズル部16の開口24を通過し、ノズル部16を通過する際に生ずる負圧により、ノズル部16の下流側に接続された循環路44より第2流体18を流通路12内に吸入し、第1流体14とともに第2流体18を流通路12内に流入させることができる。
【0054】
なお、エゼクタ装置10内に第1流体14を流入させていないときには、図5(a)および図5(a1)に示したように感圧室20を構成するベローズが収縮していない状態であるため、感圧室20に接続されたニードル28はその先端部分でノズル部16の開口24を塞いだ状態となっている。
【0055】
なおこの時、感圧室20の空間22内の付勢部材34を保持する保持部材66と保持部材68との間には、所定幅の隙間70が設けられている。
また、図5(b)および図5(b1)に示したように、感圧室20の外側を流れる第1流体14の流量が多く、第1流体14の圧力が高い場合には、感圧室20を構成するベローズの収縮量が大きくなり、ノズル部16とニードル28の先端とで構成された開口24の開口量が大きくなる。
【0056】
これにより、開口24を大流量の第1流体14が通過する。ここで、開口24の開口量が大きくなったことにより、生ずる吸引力も小さくなるが、元々大流量により大吸引力が得られているので、循環路44内から流通路12内へ取り込まれる第2流体18の取り込み量が不足することはない。
【0057】
なお、ここで第1流体14の圧力が使用圧力の最大となった時には、保持部材66と保持部材68はぴったりと当接した状態となり、これによりベローズはこれ以上収縮しないようになる。
【0058】
このため、ベローズの最大収縮量を規定できると同時に必要以上に開口24の量が大きくならないようになっている。
保持部材66と保持部材68との間の隙間70は、ベローズの規定収縮量(設計値)に従って調整することが好ましい。
【0059】
一方、図5(C)および図5(C1)に示したように、感圧室20の外側を流れる第1流体14の流量が少なく、第1流体14の圧力が低い場合には、感圧室20を構成するベローズの収縮量が小さくなり、このベローズの収縮により、保持部材66と保持部材68との隙間70の幅は、図5(b)の状態よりも大きくなる。
【0060】
したがって、ノズル部16とニードル28の先端とで形成された開口24の開口量は小さくなる。このため、開口24を通過する第1流体14の流速が速くなり、これにより生ずる吸引力が増加し、循環路44内から流通路12内へ取り込まれる第2流体18の取り込み量が増加する。
【0061】
このように本発明のエゼクタ装置10は、上記したように第1流体14の流量(圧力)によって、第2流体18の取り込み流量を調整する仕組みであるため、第1流体14が低流量から大流量域まで充分に第2流体18を取り込み、第1流体14と合わせ循環路44から流通路12内に流体を循環させることができ、構造をコンパクト化してコストを抑えることもできる。
【0062】
また、このようなエゼクタ装置10を用いて燃料電池システム50を構成すれば、例えば自動車に燃料電池システム50を用いた場合、感圧室20内に送られる第1流体14が水素タンク32から供給された水分を含まないドライ水素ガスであり、また停止時にはニードル28をノズル部16に当接させ、水分を含んだ第2流体18がノズル部16より上流側(感圧室20側)に流入することを防ぐことができる。
【0063】
このため、低温下などの過酷な環境下であっても作動部が凍結することがなく、ノズル部16の開口量を確実に調整することができるので、作動不良を生ずることがなく、確実に走行させることができる。
【0064】
<エゼクタ装置10の他の実施例>
図6は本発明のエゼクタ装置10の他の実施例を示したものであり、構成を説明するための断面図ある。
【0065】
なお、図6に示したエゼクタ装置10は、基本的には、図1から図5に示した実施例のエゼクタ装置10と同じ構成であるので、同じ構成部材には、同じ参照番号を付してその詳細な説明を省略する。
【0066】
図6に示したエゼクタ装置10は、開口調整部26のニードル28の摺動部分に、ダンパー部材60が設けられている点で上記した実施例とは異なっている。
なおダンパー部材60は、パッキン62と付勢部材64とから構成されており、付勢部材64によってパッキン62に所定の締め付け力を与えるようになっている。
【0067】
そして、パッキン62とニードル28とが摺接することで、ニードル28が急激に移動することがないようになっている。
このようにダンパー部材60が設けられていれば、第1流体14の流量が急に変化しても、ノズル部16と開口調整部26との間で構成される開口24の急激な開閉を抑止することができ、徐々に開口量を変化させることができる。
【0068】
以上、本発明の好ましい形態について説明したが、本発明は上記の形態に限定されるものではなく、例えばエゼクタ装置は燃料電池システム以外にも用いることができ、本発明の目的を逸脱しない範囲での種々の変更が可能なものである。
【符号の説明】
【0069】
10・・・エゼクタ装置
12・・・流通路
14・・・第1流体
16・・・ノズル部
18・・・第2流体
20・・・感圧室
22・・・空間
24・・・開口
26・・・開口調整部
28・・・ニードル
30・・・流量調整弁
32・・・水素タンク
34・・・付勢部材
36・・・ボールジョイント
38・・・付勢部材
40・・・調整部
42・・・第1流体流通孔
44・・・循環路
46・・・筐体
48・・・追い込み幅
50・・・燃料電池システム
52・・・燃料電池スタック
54・・・空気
60・・・ダンパー部材
62・・・パッキン
64・・・付勢部材
66・・・保持部材
68・・・保持部材
70・・・隙間
100・・・エゼクタ装置
102・・・ノズル部
104・・・ニードル
106・・・第1流体
108・・・第2流体
110・・・作動室
112・・・ダイヤフラム
114・・・駆動室
116・・・第1流体流通路
118・・・流通路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流通路内を流れる第1流体が前記流通路の一部に設けられたノズル部を通過することで生じた負圧による吸引力で、前記ノズル部よりも下流側の流通路内に第2流体を取り込み、前記第1流体と第2流体とを合流させ、前記流通路下流側へ流体を供給するエゼクタ装置であって、
前記エゼクタ装置は、
前記流通路のノズル部よりも上流側に配設され、一定圧力の空間を構成する感圧室と、
前記第1流体が前記感圧室の外側を流れる際の圧力と前記感圧室内の圧力との差により生ずる前記感圧室の伸縮作用により、前記ノズル部の開口量を変化させる開口調整部と、
前記感圧室よりも上流側に、前記流通路を流れる第1流体の流量を調整する流量調整弁と、
を備え、
前記開口調整部は、
一方側が前記感圧室の下流側に接続されるとともに、前記第1流体の圧力が無圧時には他方側が前記ノズル部に当接するように構成されたニードルと、
前記感圧室内および前記感圧室外の少なくとも一方に配設された付勢部材と、
を有し、
前記第1流体が流れる際、この第1流体の流量による圧力と前記感圧室内の圧力との差によって生ずる、前記付勢部材の伸縮作用によりニードルを変位させ、前記ニードルの端部とノズル部との間で開口を形成するよう構成されており、
前記流通路を流れる第1流体の圧力が低く変化した場合、前記ニードルの端部と前記ノズル部との間の開口量を減少して前記ノズル部を通過する第1流体の流速を増加させ、前記流通路内に取り込まれる前記第2流体の流量が増加するように構成されていることを特徴とするエゼクタ装置。
【請求項2】
前記感圧室は、内部を真空とし密閉されていることを特徴とする請求項1に記載のエゼクタ装置。
【請求項3】
前記感圧室の上流側に、前記第1流体の流体圧力に対する前記ノズル部の開口量が調整可能な調整部を有することを特徴とする請求項1または2に記載のエゼクタ装置。
【請求項4】
前記感圧室が、感圧素子から成ることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のエゼクタ装置。
【請求項5】
前記感圧素子が、ベローズであることを特徴とする請求項4に記載のエゼクタ装置。
【請求項6】
前記開口調整部の摺動部分に、ダンパー部材が設けられていることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のエゼクタ装置。
【請求項7】
前記感圧室と前記開口調整部とが、ボールジョイントにより接続されていることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載のエゼクタ装置。
【請求項8】
前記感圧室の空間内または前記感圧室の外側に、前記感圧室の第1流体の圧力による伸縮量特性を設定する付勢部材が配設されていることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載のエゼクタ装置。
【請求項9】
請求項1から8のいずれかに記載のエゼクタ装置を備え、第1流体である水素を燃料電池スタック内に供給し、前記燃料電池スタック内で水素を空気中の酸素と化学反応させて発電を行うことを特徴とする燃料電池システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−242508(P2010−242508A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−88990(P2009−88990)
【出願日】平成21年4月1日(2009.4.1)
【出願人】(000143949)株式会社鷺宮製作所 (253)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】