説明

エタノールの精製方法

一態様においては、本発明は、酢酸を水素化して粗エタノール生成物を形成し、粗エタノール生成物の少なくとも一部を、複数のカラムの少なくとも1つのカラム内において、エタノールを含む留出物、及び水流を含む残渣に分離する工程を含む水流の製造方法に関する。水流は、好ましくは酢酸及びエタノール以外の有機不純物を実質的に含まない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本出願は、2010年2月2日出願の米国仮出願61/300,815;それぞれ2010年5月7日出願の米国仮出願61/332,696、米国仮出願61/332,699、及び米国仮出願61/332,728;2010年5月19日出願の米国仮出願61/346,344;及び2010年8月6日出願の米国出願12/852,297(これらの全部は参照として本明細書中に包含する)に対する優先権を主張する。
【0002】
[0002]本発明は、概してエタノールの製造から水流を製造する方法に関し、特に粗エタノール生成物から有機不純物を実質的に含まない水流を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
[0003]工業用途用のエタノールは、通常は、石油、天然ガス、又は石炭のような石油化学供給材料から、合成ガスのような供給材料中間体から、或いはトウモロコシ及びサトウキビのようなデンプン材料又はセルロース材料から製造されている。石油化学供給材料及びセルロース材料からエタノールを製造するための通常の方法としては、エチレンの酸接触水和、メタノールホモロゲーション、直接アルコール合成、及びフィッシャー・トロプシュ合成が挙げられる。石油化学供給材料の価格の不安定さによって通常製造されているエタノールのコストが変動し、これによって供給材料の価格が上昇している場合には、エタノール製造の別の源に対する必要性がなお更に大きくなる。デンプン材料及びセルロース材料は、しばしば発酵によってエタノールに転化する。しかしながら、発酵は通常はエタノールの消費者製造のために用いられる。更に、デンプン又はセルロース材料の発酵は食物源と競合し、工業用途のために製造することができるエタノールの量に対しては制約が加えられる。
【0004】
[0004]アルカン酸及び/又は他のカルボニル基含有化合物の還元によるエタノールの製造は広範囲に研究されており、触媒、担体、及び運転条件の種々の組合せが文献において言及されている。アルカン酸、例えば酢酸の還元中においては、他の化合物がエタノールと共に形成されるか、或いは副反応で形成される。更に、酢酸の水素化中においては水がエタノールと等モル比で形成される可能性がある。これらの不純物によって、エタノールの製造及びかかる反応混合物からのエタノールの回収が制限される。更に、1以上のパージ流中に不純物が存在する可能性がある。水パージ流中に不純物が存在する場合には、水パージ流は化学的か又は生物学的のいずれかで処理して不純物を除去しなければならず、その後に廃棄することができる。この更なる処理はコストを増加させ、エタノール製造の全体的な効率を低下させる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
[0005]したがって、プロセスの分離部分によって、形成された状態で存在していても少量の不純物しか含まない精製水流が生成するエタノール製造方法に関する必要性が未だ存在する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[0006]一態様においては、本発明は水流の製造方法に関する。この方法は、酢酸供給流を水素化して粗エタノール生成物を形成する工程を含む。粗エタノール生成物は、好ましくはエタノール、水、酢酸エチル、及び酢酸を含む。この方法は、粗エタノール生成物の少なくとも一部を、複数のカラムの少なくとも1つのカラム内において、エタノールを含む留出物及び水流を含む残渣に分離する工程を更に含む。
【0007】
[0007]他の態様においては、本発明は水流の製造方法に関する。この方法は、エタノール、水、酢酸エチル、及び酢酸を含む粗エタノール生成物を与える工程を含む。この方法は、粗エタノール生成物の少なくとも一部を、複数のカラムの少なくとも1つのカラム内において、エタノールを含む留出物、及び水流を含む残渣に分離する工程を更に含む。
【0008】
[0008]分離工程は、幾つかの態様においては、粗エタノール生成物の少なくとも一部を、複数のカラムの第1のカラム内において、エタノール、水、及び酢酸エチルを含む第1の留出物、及び酢酸を含む第1の残渣に分離し;第1の留出物の少なくとも一部を、複数のカラムの第2のカラム内において、酢酸エチルを含む第2の留出物、並びにエタノール及び水を含む第2の残渣に分離し;そして第2の残渣の少なくとも一部を、複数のカラムの第3のカラム内において、エタノールを含む第3の留出物、及び水流を含む第3の残渣に分離する;工程を更に含む。
【0009】
[0009]好ましい態様においては、少なくとも1つのカラムは70〜110℃の範囲の基準温度を有する。他の態様においては、少なくとも1つのカラムの基準温度は少なくとも102℃である。
【0010】
[0010]好ましくは、得られる水流は、酢酸及びエタノール以外の有機不純物を実質的に含まない。一態様においては、得られる水流は、少なくとも97重量%の水;0.5重量%未満の酢酸;0.005重量%未満のエタノール;及び0.001重量%未満の酢酸エチル;を含む。他の態様においては、水流は2.99〜3.35の範囲のpHを有する。
【0011】
[0011]以下において添付の図面を参照して本発明を詳細に記載する。同様の数値は同様の部品を示す。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】[0012]図1は、本発明の一態様によるエタノールを製造するための水素化システムの概要図である。
【図2】[0013]図2は、本発明の一態様によるエタノールを製造するための水素化システムの概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[0014]本発明は、概して、粗エタノール生成物を分離して、酢酸及びエタノール以外の有機不純物を実質的に含まない水流を形成することに関する。本発明の目的のためには、有機不純物としては、酢酸エチル、アセトアルデヒド、アセトン、アセタール、及びこれらの混合物を挙げることができる。一態様においては、酢酸及びエタノール以外の有機不純物の量は、10wppm未満、例えば5wppm未満、又は1wppm未満であってよい。
【0014】
[0015]粗エタノール生成物は、好ましくは酢酸供給流中の酢酸の水素化によって形成される。水素化は、好ましくは触媒の存在下で行う。エタノール及び水を形成する酢酸の水素化は、以下の反応によって表すことができる。
【0015】
【化1】

【0016】
[0016]エタノール及び水が水素化反応の唯一の生成物である理論的な態様においては、粗エタノール生成物は71.9重量%のエタノール及び28.1重量%の水を含む。しかしながら、通常は水素化反応器に供給される酢酸の全部がエタノールには転化しない。エステル化のようなエタノールのその後の反応によって、酢酸エチルのような他の副生成物が形成される可能性がある。粗エタノール生成物を下表1及び2に示す。
【0017】
[0017]本発明は、一態様においては、上記で議論した不純物を含む粗エタノール混合物から水流を製造する方法に関する。一態様においては、粗エタノール生成物は、複数のカラムの少なくとも1つ、例えば少なくとも2つ又は少なくとも3つのカラムを用いて分離することができる。好ましくは、粗エタノール生成物又はその誘導体流を蒸留カラムに供給して、エタノールを含む留出物及び水流を含む残渣を得る。
【0018】
[0018]一例として、水流は少なくとも97重量%、例えば少なくとも98重量%、又は少なくとも99重量%の水を含む。水流は、0.5重量%未満、例えば0.1重量%未満、又は0.05重量%未満の酢酸を更に含んでいてよい。水流はまた、0.005重量%未満、例えば0.002重量%未満、又は0.001重量%未満のエタノールを含んでいてもよい。好ましくは、水流は2.99〜3.35、例えば3.05〜3.29、又は3.10〜3.23の範囲のpHを有する。
【0019】
[0019]好適な水素化触媒としては、場合によっては触媒担体上に、第1の金属、及び場合によっては第2の金属、第3の金属、又は更なる金属の1以上を含む触媒が挙げられる。第1並びに場合によって用いる第2及び第3の金属は、第IB族、第IIB族、第IIIB族、第IVB族、第VB族、第VIB族、第VIIB族、第VIII族遷移金属、ランタニド金属、アクチニド金属、或いは第IIIA族、第IVA族、第VA族、及び第VIA族のいずれかから選択される金属から選択することができる。幾つかの代表的な触媒組成物のために好ましい金属の組合せとしては、白金/スズ、白金/ルテニウム、白金/レニウム、パラジウム/ルテニウム、パラジウム/レニウム、コバルト/パラジウム、コバルト/白金、コバルト/クロム、コバルト/ルテニウム、銀/パラジウム、銅/パラジウム、ニッケル/パラジウム、金/パラジウム、ルテニウム/レニウム、及びルテニウム/鉄が挙げられる。代表的な触媒は、米国特許7,608,744及び7,863,489、及び米国公開2010/0197485(その全部を参照として本明細書中に包含する)に更に記載されている。
【0020】
[0020]1つの代表的な態様においては、触媒は、銅、鉄、コバルト、ニッケル、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、白金、チタン、亜鉛、クロム、レニウム、モリブデン、及びタングステンからなる群から選択される第1の金属を含む。好ましくは、第1の金属は、白金、パラジウム、コバルト、ニッケル、及びルテニウムからなる群から選択される。より好ましくは、第1の金属は白金及びパラジウムから選択される。第1の金属が白金を含む場合には、触媒は、白金の高い需要のために、5重量%未満、例えば3重量%未満、又は1重量%未満の量の白金を含むことが好ましい。
【0021】
[0021]上記に示すように、触媒は、場合によっては、通常は促進剤として機能する第2の金属を更に含む。存在する場合には、第2の金属は、好ましくは、銅、モリブデン、スズ、クロム、鉄、コバルト、バナジウム、タングステン、パラジウム、白金、ランタン、セリウム、マンガン、ルテニウム、レニウム、金、及びニッケルからなる群から選択される。より好ましくは、第2の金属は、銅、スズ、コバルト、レニウム、及びニッケルからなる群から選択される。より好ましくは、第2の金属はスズ及びレニウムから選択される。
【0022】
[0022]触媒が2種類以上の金属、例えば第1の金属及び第2の金属を含む場合には、第1の金属は、場合によっては、0.1〜10重量%、例えば0.1〜5重量%、又は0.1〜3重量%の量で触媒中に存在する。第2の金属は、好ましくは、0.1〜20重量%、例えば0.1〜10重量%、又は0.1〜5重量%の量で存在する。2種類以上の金属を含む触媒に関しては、2種類以上の金属は互いと合金化することができ、或いは非合金化金属溶液又は混合物を構成することができる。
【0023】
[0023]好ましい金属比は、触媒において用いる金属によって変化させることができる。幾つかの代表的な態様においては、第1の金属と第2の金属とのモル比は、10:1〜1:10、例えば4:1〜1:4、2:1〜1:2、1.5:1〜1:1.5、又は1.1:1〜1:1.1である。
【0024】
[0024]触媒にはまた、第3の金属が第1及び第2の金属と異なる限りにおいて、第1又は第2の金属に関連して上記に列記した任意の金属から選択される第3の金属を含ませることもできる。好ましい形態においては、第3の金属は、コバルト、パラジウム、ルテニウム、銅、亜鉛、白金、スズ、及びレニウムからなる群から選択される。より好ましくは、第3の金属は、コバルト、パラジウム、及びルテニウムから選択される。存在する場合には、第3の金属の全重量は、好ましくは0.05〜4重量%、例えば0.1〜3重量%、又は0.1〜2重量%である。
【0025】
[0025]1種類以上の金属に加えて、代表的な触媒は、担体又は変性担体(担体材料、及び担体材料の酸性度を調節する担体変性剤を含む担体を意味する)を更に含む。触媒の全重量を基準とする担体又は変性担体の全重量は、好ましくは75重量%〜99.9重量%、例えば78重量%〜97重量%、又は80重量%〜95重量%である。変性担体を用いる好ましい態様においては、担体変性剤は、触媒の全重量を基準として0.1重量%〜50重量%、例えば0.2重量%〜25重量%、0.5重量%〜15重量%、又は1重量%〜8重量%の量で存在する。
【0026】
[0026]好適な担体材料としては、例えば安定な金属酸化物ベースの担体、又はセラミックベースの担体を挙げることができる。好ましい担体としては、シリカ、シリカ/アルミナ、カルシウムメタシリケートのような第IIA族シリケート、焼成シリカ、高純度シリカ、及びこれらの混合物のようなシリカ質担体が挙げられる。他の担体としては、酸化鉄、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化マグネシウム、炭素、グラファイト、高表面積グラファイト化炭素、活性炭、及びこれらの混合物を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0027】
[0027]エタノールの製造においては、触媒担体は担体変性剤によって変性することができる。好ましくは、担体変性剤は、低い揮発性を有するか又は揮発性を有しない塩基性変性剤である。かかる塩基性変性剤は、例えば、(i)アルカリ土類酸化物、(ii)アルカリ金属酸化物、(iii)アルカリ土類金属メタシリケート、(iv)アルカリ金属メタシリケート、(v)第IIB族金属酸化物、(vi)第IIB族金属メタシリケート、(vii)第IIIB族金属酸化物、(viii)第IIIB族金属メタシリケート、及びこれらの混合物からなる群から選択することができる。酸化物及びメタシリケートに加えて、硝酸塩、亜硝酸塩、酢酸塩、及び乳酸塩などの他のタイプの変性剤を用いることができる。好ましくは、担体変性剤は、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、スカンジウム、イットリウム、及び亜鉛のいずれかの酸化物及びメタシリケート、並びに上記のいずれかの混合物からなる群から選択される。好ましくは、担体変性剤はケイ酸カルシウム、より好ましくはカルシウムメタシリケート(CaSiO)である。担体変性剤がカルシウムメタシリケートを含む場合には、カルシウムメタシリケートの少なくとも一部は結晶形態であることが好ましい。
【0028】
[0028]好ましいシリカ担体材料は、Saint-Gobain NorProからのSS61138高表面積(HSA)シリカ触媒担体である。Saint-Gobain NorPro SS61138シリカは、約250m/gの表面積;約12nmの中央細孔径;水銀侵入ポロシメトリーによって測定して約1.0cm/gの平均細孔容積;及び約0.352g/cm(22 lb/ft)の充填密度;の約95重量%の高表面積シリカを含む。
【0029】
[0029]好ましいシリカ/アルミナ担体材料は、約5mmの見かけ直径、約0.562g/mLの密度、約0.583g−HO/g−担体の吸水度、約160〜175m/gの表面積、及び約0.68mL/gの細孔容積を有するKA-160(Sud Chemie)シリカ球状体である。
【0030】
[0030]当業者に認められるように、担体材料は、触媒系がエタノールを形成するために用いるプロセス条件下において好適に活性で、選択性で、且つ強靱であるように選択する。
【0031】
[0031]触媒の金属は、担体全体に分散させるか、担体の外表面上に被覆するか(卵殻型)、又は担体の表面上に装飾状に施すことができる。
[0032]本発明において用いるのに好適な触媒組成物は、好ましくは変性担体の金属含侵によって形成するが、化学蒸着のような他のプロセスを用いることもできる。かかる含侵法は、米国特許7,608,744及び7,863,489、並びに米国公開2010/0197485(これらの全部を参照として本明細書中に包含する)に記載されている。
【0032】
[0033]本発明の一態様にしたがって酢酸を水素化してエタノールを形成する方法の幾つかの態様には、当業者に容易に認められるように、固定床反応器又は流動床反応器を用いる種々の構成を含ませることができる。本発明の多くの態様においては、「断熱」反応器を用いることがき、即ち、熱を加えるか又は除去するために反応区域を通る内部配管を用いる必要性は少しかないか又は全くない。他の態様においては、1つ又は複数の放射流反応器を用いることができ、或いは一連の複数の反応器を、熱交換、クエンチ、又は更なる供給材料の導入を行うか又は行わないで用いることができる。或いは、熱伝達媒体を備えたシェルアンドチューブ反応器を用いることができる。多くの場合においては、反応区域は、単一の容器内か、或いはその間に熱交換器を有する一連の複数の容器内に収容することができる。
【0033】
[0034]好ましい態様においては、触媒は、例えば、通常は蒸気形態の反応物質が触媒の上又は触媒を通して通過するパイプ又はチューブの形状の固定床反応器内で用いる。流動床又は沸騰床反応器のような他の反応器を用いることができる。幾つかの場合においては、水素化触媒を不活性材料と組み合わせて用いて、触媒床を通る反応物質流の圧力降下、及び反応物質化合物と触媒粒子との接触時間を調節することができる。
【0034】
[0035]水素化反応は液相又は蒸気相のいずれかで行うことができる。好ましくは、反応は次の条件下において蒸気相で行う。反応温度は、125℃〜350℃、例えば200℃〜325℃、225℃〜300℃、又は250℃〜300℃の範囲であってよい。圧力は、10KPa〜3000KPa(約1.5〜435psi)、例えば50KPa〜2300KPa、又は100KPa〜1500KPaの範囲であってよい。反応物質は、500hr−1より高く、例えば1000hr−1より高く、2500hr−1より高く、又は更には5000hr−1より高い気体空間速度(GHSV)で反応器に供給することができる。範囲に関しては、GHSVは50hr−1〜50,000hr−1、例えば500hr−1〜30,000hr−1、1000hr−1〜10,000hr−1、又は1000hr−1〜6500hr−1の範囲であってよい。
【0035】
[0036]水素化は、場合によっては選択されるGHSVにおいて触媒床を横切る圧力降下を克服するのに丁度十分な圧力において行うが、より高い圧力を使用することに対する制約はなく、例えば5000hr−1又は6,500hr−1の高い空間速度においては反応器床を通る相当な圧力降下に遭遇する可能性があると理解される。
【0036】
[0037]反応は、1モルのエタノールを製造するために酢酸1モルあたり2モルの水素を消費するが、供給流中の水素と酢酸との実際のモル比は、約100:1〜1:100、例えば50:1〜1:50、20:1〜1:2、又は12:1〜1:1で変化させることができる。最も好ましくは、水素と酢酸とのモル比は2:1より大きく、例えば4:1より大きく、又は8:1より大きい。
【0037】
[0038]接触又は滞留時間も、酢酸の量、触媒、反応器、温度、及び圧力のような変数によって広範囲に変化させることができる。通常の接触時間は、固定床以外の触媒系を用いる場合には1秒以下乃至数時間超の範囲であり、好ましい接触時間は、少なくとも蒸気相反応に関しては0.1〜100秒、例えば0.3〜80秒、又は0.4〜30秒である。
【0038】
[0039]本発明方法に関連して用いる原材料である酢酸及び水素は、天然ガス、石油、石炭、バイオマスなどをはじめとする任意の好適な源から誘導することができる。例として、酢酸は、メタノールカルボニル化、アセトアルデヒドの酸化、エチレンの酸化、酸化発酵、及び嫌気発酵によって製造することができる。石油及び天然ガスの価格は変動してより高価か又はより安価になるので、代替の炭素源から酢酸並びにメタノール及び一酸化炭素のような中間体を製造する方法に益々興味が持たれている。特に、石油が天然ガスと比べて比較的高価である場合には、任意の利用できる炭素源から誘導される合成ガス(シンガス)から酢酸を製造することが有利になる可能性がある。例えば、米国特許6,232,352(その開示事項は参照として本明細書中に包含する)においては、酢酸を製造するためにメタノールプラントを改造する方法が教示されている。メタノールプラントを改造することによって、新しい酢酸プラントのためのCO製造に関連する大きな設備コストが大きく減少するか又は大きく排除される。シンガスの全部又は一部をメタノール合成ループから迂回させ、分離器ユニットに供給してCO及び水素を回収し、これを次に酢酸を製造するために用いる。酢酸に加えて、このようなプロセスを用いて本発明に関して用いることができる水素を製造することもできる。
【0039】
[0040]酢酸を製造するために好適なメタノールカルボニル化プロセスは、米国特許7,208,624;7,115,772;7,005,541;6,657,078;6,627,770;6,143,930;5,599,976;5,144,068;5,026,908;5,001,259;及び4,994,608(これらの開示事項はその全部を参照として本明細書中に包含する)に記載されている。場合によっては、エタノールの製造をかかるメタノールカルボニル化プロセスと統合することができる。
【0040】
[0041]米国特許RE35,377(これもその全部を参照として本明細書中に包含する)においては、石油、石炭、天然ガス、及びバイオマス材料のような炭素質材料を転化させることによってメタノールを製造する方法が与えられている。このプロセスは、固体及び/又は液体の炭素質材料を水素添加ガス化してプロセスガスを得て、これを追加の天然ガスで蒸気熱分解して合成ガスを形成することを含む。シンガスをメタノールに転化させ、これを酢酸にカルボニル化することができる。この方法では更に、上述のように本発明に関して用いることができる水素が生成する。米国特許5,821,111(ガス化によって廃バイオマスを合成ガスに転化させる方法が開示されている)、及び米国特許6,685,754(これらの開示事項はその全部を参照として本明細書中に包含する)。
【0041】
[0042]1つの随意的な態様においては、水素化反応に供給する酢酸は、他のカルボン酸及び無水物、並びにアセトアルデヒド及びアセトンを含んでいてもよい。好ましくは、好適な酢酸供給流は、酢酸、無水酢酸、アセトアルデヒド、及びこれらの混合物からなる群から選択される1種類以上の化合物を含む。これらの他の化合物も本発明方法において水素化することができる。幾つかの態様においては、プロパン酸のようなカルボン酸又はその無水物の存在はプロパノールの製造において有益である可能性がある。
【0042】
[0043]或いは、米国特許6,657,078(その全部を参照として本明細書中に包含する)に記載されている種類のメタノールカルボニル化ユニットのフラッシュ容器からの粗生成物として、蒸気形態の酢酸を直接回収することができる。粗蒸気生成物は、例えば、酢酸及び軽質留分を凝縮するか又は水を除去する必要なしに本発明のエタノール合成反応区域に直接供給することができ、これによって全体の処理コストが節約される。
【0043】
[0044]酢酸は反応温度において気化させることができ、次に気化した酢酸を、非希釈状態か、或いは窒素、アルゴン、ヘリウム、二酸化炭素などのような比較的不活性のキャリアガスによって希釈した状態で、水素と一緒に供給することができる。蒸気相での反応運転のためには、温度は酢酸の露点より低くならないように系内で制御しなければならない。一態様においては、酢酸を特定の圧力で酢酸の沸点において気化させることができ、次に気化した酢酸を反応器入口温度に更に加熱することができる。他の態様においては、水素、再循環気体、他の好適な気体、又はこれらの混合物を、酢酸の沸点より低い温度において酢酸に通すことによって酢酸を蒸気状態に変化させて、それによってキャリアガスを酢酸蒸気で湿らせ、次に混合蒸気を反応器入口温度に加熱する。好ましくは、水素及び/又は再循環気体を125℃又はそれより低い温度において酢酸に通すことによって酢酸を蒸気に変化させ、次に混合気体流を反応器入口温度に加熱する。
【0044】
[0045]特に、酢酸の水素化によって、酢酸の有利な転化率、並びにエタノールへの有利な選択率及び生産性を達成することができる。本発明の目的のためには、「転化率」という用語は、酢酸以外の化合物に転化する供給流中の酢酸の量を指す。転化率は、供給流中の酢酸を基準とするモル%として表す。転化率は、少なくとも10%、例えば少なくとも20%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、又は少なくとも80%にすることができる。少なくとも80%、又は少なくとも90%のような高い転化率を有する触媒が望ましいが、幾つかの態様においては、エタノールに関する高い選択率において低い転化率を許容することができる。勿論、多くの場合においては、適当な再循環流又はより大きな反応器の使用によって転化率を補償することができるが、劣った選択率を補償することはより困難であることがよく理解されている。
【0045】
[0046]選択率は、転化した酢酸を基準とするモル%として表す。酢酸から転化するそれぞれの化合物は独立した選択率を有し、選択率は転化率とは独立していることを理解すべきである。例えば、転化した酢酸の50モル%がエタノールに転化する場合には、エタノール選択率を50%と言う。好ましくは、触媒のエトキシレートへの選択率は少なくとも60%、例えば少なくとも70%、又は少なくとも80%である。ここで用いる「エトキシレート」という用語は、具体的には、エタノール、アセトアルデヒド、及び酢酸エチルの化合物を指す。好ましくは、エタノールへの選択率は少なくとも80%、例えば少なくとも85%、又は少なくとも88%である。水素化方法の好ましい態様はまた、メタン、エタン、及び二酸化炭素のような望ましくない生成物への低い選択率も有する。これらの望ましくない生成物への選択率は、好ましくは4%未満、例えば2%未満、又は1%未満である。より好ましくは、これらの望ましくない生成物は不検出である。アルカンの形成は低くすることができ、理想的には触媒上を通過する酢酸の2%未満、1%未満、又は0.5%未満が、燃料として以外の価値を少ししか有しないアルカンに転化する。
【0046】
[0047]本明細書において用いる「生産性」という用語は、1時間あたり、用いた触媒1kgを基準とする水素化中に形成される具体的な生成物、例えばエタノールのグラム数を指す。触媒1kgあたり1時間あたり少なくとも200g、例えば少なくとも400g、又は少なくとも600gのエタノールの生産性が好ましい。範囲に関しては、生産性は、好ましくは触媒1kgあたり1時間あたり200〜3,000、例えば400〜2,500、又は600〜2,000gのエタノールである。
【0047】
[0048]種々の態様においては、水素化方法によって製造される粗エタノール生成物は、精製及び分離のような任意の引き続く処理の前においては、通常は未反応の酢酸、エタノール、及び水を含む。本明細書において用いる「粗エタノール生成物」という用語は、5〜70重量%のエタノール及び5〜35重量%の水を含む任意の組成物を指す。幾つかの代表的な態様においては、粗エタノール生成物は、粗エタノール生成物の全重量を基準として5重量%〜70重量%、例えば10重量%〜60重量%、又は15重量%〜50重量%の量のエタノールを含む。好ましくは、粗エタノール生成物は、少なくとも10重量%のエタノール、少なくとも15重量%のエタノール、又は少なくとも20重量%のエタノールを含む。粗エタノール生成物は、通常は、転化率によって、例えば、90重量%未満、例えば80重量%未満、又は70重量%未満の量の未反応の酢酸を更に含んでいてよい。範囲に関しては、未反応の酢酸は、好ましくは0〜90重量%、例えば5〜80重量%、15〜70重量%、20〜70重量%、又は25〜65重量%である。反応プロセス中に水が形成されるので、一般的に水が、例えば、5〜35重量%、例えば10〜30重量%、又は10〜26重量%の範囲の量で粗エタノール生成物中に存在する。また酢酸エチルも酢酸の水素化中か又は副反応によって生成する可能性があり、例えば、0〜20重量%、例えば0〜15重量%、1〜12重量%、又は3〜10重量%の範囲の量で存在してよい。またアセトアルデヒドも副反応によって生成する可能性があり、例えば、0〜10重量%、例えば0〜3重量%、0.1〜3重量%、又は0.2〜2重量%の範囲の量で存在してよい。例えばエステル、エーテル、アルデヒド、ケトン、アルカン、及び二酸化炭素のような他の成分は、検出できる場合には合計で10重量%未満、例えば6重量%未満、又は4重量%未満の量で存在してよい。範囲に関しては、他の成分は、0.1〜10重量%、例えば0.1〜6重量%、又は0.1〜4重量%の量で存在してよい。代表的な態様の粗エタノールの組成範囲を表1に与える。
【0048】
【表1】

【0049】
[0049]図1及び2は、本発明の幾つかの態様にしたがって、酢酸を水素化し、粗反応混合物からエタノールを分離するのに好適な水素化システム100を示す。図1において、システム100は反応区域101及び蒸留区域102を含む。反応区域101は、反応器103、水素供給ライン104、及び酢酸供給ライン105を含む。蒸留区域102は、フラッシャー106、第1のカラム107、第2のカラム108、及び第3のカラム109を含む。図2は、更に第2のカラム108からの塔頂流のための第4のカラム123を蒸留区域102内に更に含む。
【0050】
[0050]図1及び2において、水素及び酢酸を、それぞれライン104及び105を通して気化器110に供給して、ライン111内に蒸気供給流を生成させ、これを反応器103に送る。一態様(図示せず)においては、ライン104と105を組み合わせて、例えば水素及び酢酸の両方を含む1つの流れで気化器110に一緒に供給することができる。ライン111内の蒸気供給流の温度は、好ましくは100℃〜350℃、例えば120℃〜310℃、又は150℃〜300℃である。気化していない全ての供給流は、図1に示すように気化器110から取り出し、それに再循環することができる。更に、図1はライン111を反応器103の頂部に送ることを示しているが、ライン111は、反応器103の側部、上部、又は底部に送ることができる。反応区域101に対する更なる変更及び更なる構成要素は下記に記載する。
【0051】
[0051]反応器103は、酢酸の水素化において用いる触媒を含む。一態様においては、1つ以上の保護床(図示せず)を用いて、供給流又は戻り/再循環流中に含まれる阻害物質又は望ましくない不純物から触媒を保護することができる。保護床は蒸気又は液体流中で用いることができる。好適な保護床材料は当該技術において公知であり、例えば炭素、シリカ、アルミナ、セラミック、及び/又は樹脂が挙げられる。一形態においては、保護床媒体を官能化してイオウ又はハロゲンのような特定の種を捕捉する。水素化プロセス中においては、粗エタノール生成物を、反応器103からライン112を通して好ましくは連続的に排出する。粗エタノール生成物を凝縮してフラッシャー106に供給し、次に蒸気流及び液体流を与えることができる。フラッシャー106は、一態様においては、好ましくは、50℃〜500℃、例えば70℃〜400℃、又は100℃〜350℃の温度で運転する。一態様においては、フラッシャー106の圧力は、好ましくは50KPa〜2000KPa、例えば75KPa〜1500KPa、又は100〜1000KPaである。1つの好ましい態様においては、フラッシャーの温度及び圧力は反応器103の温度及び圧力と同等である。
【0052】
[0052]フラッシャー106から排出される蒸気流は水素及び炭化水素を含む可能性があり、これはパージするか及び/又はライン113を通して反応区域101に戻すことができる。図1に示すように、蒸気流の戻される部分は圧縮機114に通して、水素供給流104と混合して気化器110に一緒に供給する。
【0053】
[0053]フラッシャー106からの液体は、排出して供給組成物としてライン115を通して、酸分離カラムとも呼ぶ第1のカラム107の側部にポンプ移送する。ライン115の内容物は、通常は反応器から直接得られる生成物と実質的に同様であり、実際には粗エタノール生成物として特徴付けることもできる。しかしながら、ライン115内の供給組成物は、好ましくは、フラッシャー106によって除去される水素、二酸化炭素、メタン、又はエタンを実質的に有しない。ライン115の代表的な成分を表2に与える。液体ライン115は、供給流中の成分のような列記していない他の成分を含む可能性があることを理解すべきである。
【0054】
【表2】

【0055】
[0054]本出願全体にわたって表において未満(<)と示されている量は好ましくは存在せず、存在する場合には微量又は0.0001重量%以下の量で存在することができる。
[0055]表2における「他のエステル」としては、プロピオン酸エチル、酢酸メチル、酢酸イソプロピル、酢酸n−プロピル、酢酸n−ブチル、又はこれらの混合物を挙げることができるが、これらに限定されない。表2における「他のエーテル」としては、ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル、イソブチルエチルエーテル、又はこれらの混合物を挙げることができるが、これらに限定されない。表2における「他のアルコール」としては、メタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、n−ブタノール、又はこれらの混合物を挙げることができるが、これらに限定されない。一態様においては、供給組成物、例えばライン115は、0.001〜0.1重量%、0.001〜0.05重量%、又は0.001〜0.03重量%の量のプロパノール、例えばイソプロパノール及び/又はn−プロパノールを含む可能性がある。これらの他の成分は、他に示さない限りにおいては、本明細書において記載する留出物流又は残渣流のいずれかの中で運ばれる可能性があることを理解すべきであり、ここでは更には記載しない。
【0056】
[0056]ライン115における酢酸の含量が5重量%未満である場合には、酸分離カラム107を省略して、ライン115を本明細書において軽質留分カラムとも呼ぶ第2のカラム108に直接導入することができる。
【0057】
[0057]図1に示す態様においては、ライン115を、第1のカラム107の下部、例えば下半分又は下三分の一に導入する。第1のカラム107においては、存在する場合には未反応の酢酸、水の一部、及び他の重質成分をライン115内の組成物から取り出して、残渣として好ましくは連続的に排出する。好ましくは、第1のカラム107からの残渣は、第1のカラムに供給される粗エタノール生成物又は液体供給流からの酢酸の実質的に全部を含む。残渣の一部又は全部を、ライン116を通して反応区域101に戻すか及び/又は再循環して戻すことができる。ライン116内の酢酸を気化器110に再循環することによって、気化器110からパージする必要がある重質分の量を減少させることができる。パージする重質分の量を減少させることによって、副生成物を減少させながらプロセスの効率を向上させることができる。
【0058】
[0058]第1のカラム107においてはまた塔頂留出物も形成され、これはライン117内に排出する。一態様においては、留出物は凝縮して、例えば、10:1〜1:10、例えば3:1〜1:3、又は1:2〜2:1の比で還流することができる。
【0059】
[0059]カラム107、108、109、又は123のいずれにも、分離及び/又は精製をすることができる任意の蒸留カラムを含ませることができる。カラムは、好ましくは1〜150段、例えば10〜100段、20〜95段、又は30〜75段を有するトレイカラムを含む。トレイは、篩トレイ、固定バルブトレイ、可動バルブトレイ、又は当該技術において公知の任意の他の好適なデザインのものであってよい。他の態様においては、充填カラムを用いることができる。充填カラムについては、構造化充填又はランダム充填を用いることができる。トレイ又は充填材は1つの連続カラム内に配置することができ、或いは第1セクションからの蒸気を第2セクションに導入し、一方、第2セクションからの液体を第1セクションに導入するなどのようにした2以上のカラム内に配置することができる。
【0060】
[0060]蒸留カラムのそれぞれと共に用いることができる関連する凝縮器及び液体分離容器は任意の通常のデザインのものであってよく、図1及び2において簡略化している。図1及び2に示すように、熱を、熱交換器又はリボイラーによってそれぞれのカラムの底部又は循環塔底流に供給することができる。幾つかの態様においては、内部リボイラーのような他のタイプのリボイラーを用いることもできる。リボイラーに供給する熱は、リボイラーと統合したプロセス中に発生する任意の熱、又は他の熱発生化学プロセス又はボイラーのような外部源から誘導することができる。図1及び2においては1つの反応器及びフラッシャーを示しているが、本発明の幾つかの態様においては、更なる反応器、フラッシャー、凝縮器、加熱部材、及び他の構成部品を用いることができる。
【0061】
[0061]当業者に認められるように、化学プロセスを実施するのに通常用いられる種々の凝縮器、ポンプ、圧縮機、リボイラー、ドラム、バルブ、連結器具、分離容器等を、組み合わせて本発明方法において用いることもできる。
【0062】
[0062]任意のカラムにおいて用いられる温度及び圧力は変化させることができる。実際問題としては、これらの区域においては10KPa〜3000KPaの圧力が一般に用いられるが、幾つかの態様においては大気圧以下の圧力及び大気圧以上の圧力を用いることができる。種々の区域内の温度は、通常は留出物として取り出される組成物と、残渣として取り出される組成物の沸点の間の範囲である。当業者であれば、運転している蒸留カラム内の所定の位置における温度は、その位置における材料の組成及びカラムの圧力によって定まることを認識するであろう。更に、供給速度は製造プロセスの寸法によって変化させることができ、記載する場合には供給重量比の観点で包括的に示すことができる。
【0063】
[0063]カラム107を標準大気圧下で運転する場合には、カラム107からライン116内に排出される残渣の温度は、好ましくは95℃〜120℃、例えば105℃〜117℃、又は110℃〜115℃である。カラム107からライン117内に排出される留出物の温度は、好ましくは70℃〜110℃、例えば75℃〜95℃、又は80℃〜90℃である。カラム107は大気圧で運転することができる。他の態様においては、第1のカラム107の圧力は、0.1KPa〜510KPa、例えば1KPa〜475KPa、又は1KPa〜375KPaの範囲であってよい。第1のカラム107に関する留出物及び残渣組成物の代表的な成分を下表3に与える。留出物及び残渣は、供給流中の成分のような列記していない他の成分も含む可能性があることも理解すべきである。便宜上のために、第1のカラムの留出物及び残渣は「第1の留出物」又は「第1の残渣」と呼ぶこともできる。他のカラムの留出物及び残渣も、これらを互いから区別するために同様の数値の修飾語(第2、第3等)を用いて呼ぶことができるが、かかる修飾語はいかなる特定の分離の順番を必要とするようにも解釈すべきではない。
【0064】
【表3】

【0065】
[0064]理論には縛られないが、表3に示すように、驚くべきことに且つ予期しなかったことに、酸分離カラム(第1のカラム107)へ導入される供給流中に多量のアセタールが検出される場合には、アセタールはカラム内で分解して、留出物及び/又は残渣中にはより少ない量が存在するか又は更には検出できる量が存在しないと思われることが見出された。
【0066】
[0065]反応条件によって、反応器103からライン112内に排出される粗エタノール生成物は、エタノール、酢酸(未転化)、酢酸エチル、及び水を含む可能性がある。反応器103から排出された後、フラッシャー106及び/又は第1のカラム107に加えられるまでに、粗エタノール生成物中に含まれる複数の成分の間に非接触平衡反応が起こる可能性がある。この平衡反応は、下記に示すように、粗エタノール生成物をエタノール/酢酸及び酢酸エチル/水の間の平衡に推進する傾向がある。
【0067】
【化2】

【0068】
[0066]粗エタノール生成物を、蒸留区域102に送る前に例えば貯蔵タンク内に一時的に貯蔵する場合には、延長した滞留時間に遭遇する可能性がある。一般に、反応区域101と蒸留区域102との間の滞留時間がより長いと、酢酸エチルの形成がより多くなる。例えば、反応区域101と蒸留区域102との間の滞留時間が5日間より長いと、非常により多い酢酸エチルがエタノールを消費して形成される可能性がある。而して、形成されるエタノールの量を最大にするためには、反応区域101と蒸留区域102との間のより短い滞留時間が一般に好ましい。一態様においては、ライン115からの液体成分を5日間以下、例えば1日間以下、又は1時間以下一時的に貯蔵するために、反応区域101と蒸留区域102との間に貯蔵タンク(図示せず)を含ませる。好ましい態様においては、タンクは含ませず、凝縮液を第1の蒸留カラム107に直接供給する。更に、非接触反応が起こる速度は、例えばライン115内の粗エタノール生成物の温度が上昇するにつれて増加する可能性がある。これらの反応速度は、30℃より高く、例えば40℃より高く、又は50℃より高い温度において特に問題となる可能性がある。而して、一態様においては、ライン115内又は場合によって用いる貯蔵タンク内の液体成分の温度は、40℃未満、例えば30℃未満、又は20℃未満の温度に維持する。ライン115内の液体の温度を低下させるために1以上の冷却装置を用いることができる。
【0069】
[0067]上記で議論したように、ライン115からの液体成分を例えば1〜24時間、場合によっては約21℃の温度において一時的に貯蔵(対応してそれぞれ0.01重量%〜1.0重量%の酢酸エチルが形成する)するために、反応区域101と蒸留区域102との間に貯蔵タンク(図示せず)を含ませることができる。更に、非接触反応が起こる速度は、粗エタノール生成物の温度が上昇するにつれて増加する可能性がある。例えば、ライン115内の粗エタノール生成物の温度が4℃から21℃に上昇すると、酢酸エチル形成の速度は約0.01重量%/時から約0.005重量%/時に増加する可能性がある。而して、一態様においては、ライン115内又は場合によって用いる貯蔵タンク内の液体成分の温度は、21℃未満、例えば4℃未満、又は−10℃未満の温度に維持する。
【0070】
[0068]更に、上記に記載の平衡反応はまた第1のカラム107の頂部領域内においてエタノール形成に有利に働く可能性があることがここで見出された。
[0069]カラム107の留出物、例えば塔頂流は、図1に示すように場合によっては凝縮して好ましくは5:1〜10:1の還流比で還流する。ライン117内の留出物は、好ましくはエタノール、酢酸エチル、及び水を、他の不純物と共に含み、これらは二元又は三元共沸混合物の形成のために分離するのが困難な可能性がある。
【0071】
[0070]ライン117内の第1の留出物は、「軽質留分カラム(light ends column)」とも呼ぶ第2のカラム108の、好ましくはカラム108の中央部、例えば中央の半分又は中央の三分の一に導入する。一例として、水抽出を用いずにカラム内において25段のトレイカラムを用いる場合には、ライン117は17段目のトレイに導入する。一態様においては、第2のカラム108は抽出蒸留カラムであってよい。かかる態様においては、水のような抽出剤を第2のカラム108に加えることができる。抽出剤が水を含む場合には、これは外部源からか、又は1以上の他のカラムからの内部戻り/再循環ラインから得ることができる。例えば、抽出剤は第3のカラムからの精製水流の少なくとも一部であってよい。一態様においては、ライン121内の精製水の少なくとも一部を、ライン121’によって示されるように第2のカラム108に再循環する。抽出剤中の水と第2のカラムへの供給流中のエタノールとのモル比は、好ましくは少なくとも0.5:1、例えば少なくとも1:1、又は少なくとも3:1である。範囲に関しては、好ましいモル比は、0.5:1〜8:1、例えば1:1〜7:1、又は2:1〜6.5:1の範囲であってよい。より高いモル比を用いることができるが、第2の留出物中の更なる酢酸エチルに関する戻りが減少し、第2のカラムの留出物中のエタノールの濃度が減少する。
【0072】
[0071]第2のカラム108はトレイカラム又は充填カラムであってよい。一態様においては、第2のカラム108は、5〜70段、例えば15〜50段、又は20〜45段を有するトレイカラムである。
【0073】
[0072]第2のカラム108の温度及び圧力は変化させることができるが、大気圧においては、第2のカラム108からライン118内に排出される第2の残渣の温度は、好ましくは60℃〜90℃、例えば70℃〜90℃、又は80℃〜90℃である。第2のカラム108からライン120内に排出される第2の留出物の温度は、好ましくは50℃〜90℃、例えば60℃〜80℃、又は60℃〜70℃である。カラム108は大気圧で運転することができる。他の態様においては、第2のカラム108の圧力は、0.1KPa〜510KPa、例えば1KPa〜475KPa、又は1KPa〜375KPaであってよい。第2のカラム108についての第2の留出物及び残渣組成物に関する代表的な成分を下表4に与える。留出物及び残渣は、供給流中の成分のような列記されていない他の成分も含む可能性があることも理解すべきである。
【0074】
【表4】

【0075】
[0073]第2の残渣中のエタノールと第2の留出物中のエタノールとの重量比は、好ましくは少なくとも3:1、例えば少なくとも6:1、少なくとも8:1、少なくとも10:1、又は少なくとも15:1である。第2の残渣中の酢酸エチルと第2の留出物中の酢酸エチルとの重量比は、好ましくは0.4:1未満、例えば0.2:1未満、又は0.1:1未満である。抽出剤として水を用いる抽出カラムを第2のカラム108として用いる態様においては、第2の残渣中の酢酸エチルと第2の留出物中の酢酸エチルとの重量比は0に近い。
【0076】
[0074]示されているように、エタノール及び水を含む第2のカラム108の底部からの第2の残渣は、ライン118を通して第3のカラム109に供給する。カラム109は「生成物カラム」と呼ぶこともできる。より好ましくは、ライン118内の第2の残渣は、第3のカラム109の下部、例えば下半分又は下三分の一の中に導入する。第3のカラム109は、好ましくは共沸性の水含量以外は実質的に純粋であるエタノールを、留出物としてライン119内に回収する。第3のカラム109の留出物は、好ましくは図1に示すように、例えば、1:10〜10:1、例えば1:3〜3:1、又は1:2〜2:1の還流比で還流する。
【0077】
[0075]第3のカラム109は、好ましくは上記に記載のトレイカラムであり、好ましくは大気圧で運転する。第3のカラム109からライン119内に排出される第3の留出物の温度は、好ましくは60℃〜110℃、例えば70℃〜100℃、又は75℃〜95℃である。第3のカラム109から排出される第3の残渣、例えば水流の温度は、カラムを大気圧で運転する場合には、好ましくは70℃〜115℃、例えば95℃〜110℃、又は100℃〜105℃である。範囲に関しては、第3のカラム109から排出される第3の残渣の温度は、少なくとも102℃、例えば少なくとも105℃、又は少なくとも110℃である。
【0078】
[0076]理論には縛られないが、本発明の水流は存在する場合でも少量の不純物しか含まず、水流は更なる処理の必要なしに廃棄することができる。而して、従来の不純物を除去する更なる処理の必要性が有利に最小化又は排除される。有益には、この不純物の欠如によって水流を最小のコストで廃棄又は再使用することができる。
【0079】
[0077]本発明の水流は多くの用途のために好適である可能性がある。幾つかの場合においては、水流に関する用途は、水流を製造する施設の場所、並びにそれに適用される可能性がある国家又は地方自治体の規制によって定まる可能性がある。例えば、本発明の水流は工業用途において用いるのに好適である可能性がある。一例として、水流はプロセスに再循環して、水流を必要とする反応区域又は分離区域の部分において用いることができる。一態様においては、水流は、上記で議論したように、蒸留カラム、例えば第2のカラムにおいて抽出剤として用いることができる。他の態様においては、水流は、加水分解反応又は反応蒸留カラムにおいて用いることができる。水流はまた、例えば排気スクラバー用のスクラバー溶媒として用いることもできる。好ましくは、水流は本発明方法において用いることができる。他の態様においては、水流は別のプロセスにおいて用いることができる。他のオプションとして、水流はプロセス装置を保守するため、例えばタンク及びタワーを洗浄又は清浄化するために用いることができる。好ましい態様においては、水流は冷却水として用いる。この場合には、水流を(生物学的に)処理して藻類の成長を阻止することができる。他の態様においては、水流を農業用途において用いることができる。これらの用途は単に例示の用途であり、この列記は排他的なものではない。
【0080】
[0078]第3のカラム109に関する留出物組成物及び水流の代表的な成分を下表5に与える。留出物は、供給流中の成分のような列記されていない他の成分も含む可能性があることも理解すべきである。
【0081】
【表5】

【0082】
[0079]一般に、供給流又は粗反応生成物から蒸留プロセスを通って運ばれる任意の化合物が、第3の留出物組成物の全重量を基準として0.1重量%未満、例えば0.05重量%未満、又は0.02重量%未満の量で第3の留出物中に残留する。一態様においては、1以上の側流によって、システム100内のカラム107、108、及び/又は109のいずれかから不純物を取り出すことができる。好ましくは、少なくとも1つの側流を用いて第3のカラム109から不純物を取り出す。不純物はパージするか及び/又はシステム100内に留めることができる。
【0083】
[0080]ライン119内の第3の留出物は、例えば、蒸留カラム(例えば仕上げカラム)又はモルシーブのような1以上の更なる分離システムを用いて更に精製して、無水エタノール生成物流、即ち「最終無水エタノール」を形成することができる。
【0084】
[0081]第2のカラム108に戻り、第2の留出物は、好ましくは、図1に示すように、例えば、1:10〜10:1、例えば1:5〜5:1、又は1:3〜3:1の還流比で還流する。一態様においては、エステル供給流はライン120内の第2の留出物の全部又は一部を含む。
【0085】
[0082]他の態様においては、図2に示すように、第2の留出物は、ライン120を通して「アセトアルデヒド除去カラム」とも呼ぶ第4のカラム123に供給する。第4のカラム123においては、第2の留出物を、ライン124内のアセトアルデヒドを含む第4の留出物に分離する。第4の留出物は、好ましくは、1:20〜20:1、例えば1:15〜15:1、又は1:10〜10:1の還流比で還流し、第4の留出物の一部を反応区域101に戻す。例えば、第4の留出物は酢酸供給流と混合して、気化器110に加えるか、又は反応器103に直接加えることができる。示されているように、第4の留出物は、供給ライン105内の酢酸と共に気化器110に供給する。理論には縛られないが、アセトアルデヒドは水素化してエタノールを形成することができるので、アセトアルデヒドを含む流れを反応区域に再循環することによって、エタノールの収率を増加させ、副生成物及び廃棄物の生成を減少させることができる。他の態様(図には示さない)においては、アセトアルデヒドを回収し、更なる精製を行うか又は行わないで、n−ブタノール、1,3−ブタンジオール、及び/又はクロトンアルデヒド、並びに誘導体など(しかしながらこれらに限定されない)の有用な生成物を製造するために用いることができる。
【0086】
[0083]ライン125内の第4のカラム123の第4の残渣は、主として酢酸エチル及び水を含み、エステル供給流として用いるのに非常に好適である。1つの好ましい態様においては、アセトアルデヒドは第4のカラム123内で第2の留出物から取り出して、カラム123の残渣中に検出できる量のアセトアルデヒドが存在しないようにする。
【0087】
[0084]第4のカラム123は好ましくは上記に記載したトレイカラムであり、好ましくは大気圧以上の圧力で運転する。一態様においては、圧力は120KPa〜5,000KPa、例えば200KPa〜4,500KPa、又は400KPa〜3,000KPaである。好ましい態様においては、第4のカラム123は、他のカラムの圧力よりも高い圧力で運転することができる。
【0088】
[0085]第4のカラム123からライン124内に排出される第4の留出物の温度は、好ましくは60℃〜110℃、例えば70℃〜100℃、又は75℃〜95℃である。第4のカラムから排出される残渣125の温度は、好ましくは70℃〜115℃、例えば80℃〜110℃、又は85℃〜110℃である。第4のカラム109に関する留出物及び残渣組成物の代表的な成分を下表6に与える。留出物及び残渣は供給流中の成分のような列記されていない他の成分も含む可能性があることも理解すべきである。
【0089】
【表6】

【0090】
[0086]本発明方法によって得られる最終エタノール組成物は、好ましくは、最終エタノール組成物の全重量を基準として75〜96重量%のエタノール、例えば80〜96重量%、又は85〜96重量%のエタノールを含む。代表的な最終エタノールの組成範囲を下表7に与える。
【0091】
【表7】

【0092】
[0087]本発明の最終エタノール組成物は、好ましくは、非常に低い量、例えば0.5重量%未満の、メタノール、ブタノール、イソブタノール、イソアミルアルコール、及び他のC〜C20アルコールのような他のアルコールを含む。一態様においては、最終エタノール中のイソプロパノールの量は、95〜1,000wppm、例えば100〜700wppm、又は150〜500wppmである。一態様においては、最終エタノール組成物は、好ましくはアセトアルデヒドを実質的に含まず、8wppm未満、例えば5wppm未満、又は1wppm未満のアセトアルデヒドを含んでいてよい。
【0093】
[0088]本発明の幾つかの態様によって製造される最終エタノール組成物は、燃料、溶媒、化学供給材料、医薬品、洗浄剤、殺菌剤、水素化輸送又は消費などの種々の用途において用いることができる。燃料用途においては、最終エタノール組成物を、自動車、船舶、及び小型ピストンエンジン航空機のような原動機付きの乗物のためのガソリンとブレンドすることができる。非燃料用途においては、最終エタノール組成物を、洗面及び化粧製剤、洗浄剤、殺菌剤、コーティング、インク、及び医薬のための溶媒として用いることができる。最終エタノール組成物はまた、医薬品、食料品、染料、光化学物質に関する製造プロセス、及びラテックス処理における処理溶媒として用いることもできる。
【0094】
[0089]最終エタノール組成物はまた、食用酢、エチルアクリレート、酢酸エチル、エチレン、グリコールエーテル、エチルアミン、アルデヒド、及び高級アルコール、特にブタノールのような他の化学物質を製造するための化学供給材料として用いることもできる。酢酸エチルの製造においては、最終エタノール組成物を酢酸とエステル化するか、或いはポリ酢酸ビニルと反応させることができる。最終エタノール組成物を脱水してエチレンを製造することができる。エタノールを脱水するために、共に係属中の米国公開2010/0030001及び2010/0030002(これらの全ての内容及び開示事項は参照として本明細書中に包含する)に記載されているもののような任意の公知の脱水触媒を用いることができる。例えば、脱水触媒としてゼオライト触媒を用いることができる。好ましくは、ゼオライトは少なくとも約0.6nmの細孔径を有し、好ましいゼオライトとしては、モルデナイト、ZSM−5、ゼオライトX、及びゼオライトYからなる群から選択される脱水触媒が挙げられる。例えば、ゼオライトXは米国特許2,882,244に、ゼオライトYは米国特許3,130,007(これらの全部を参照として本明細書中に包含する)に記載されている。
【0095】
[0090]本明細書に開示する発明をより効率的に理解するために、下記において実施例を与える。以下の実施例は本発明の種々の蒸留プロセスを示す。
【実施例】
【0096】
実施例1
[0091]95.2重量%の酢酸及び4.6重量%の水を含む気化供給流を、1/8インチのケイ酸カルシウム変性シリカ押出物上に担持されている1.6重量%の白金及び1重量%のスズを含む触媒の存在下において、291℃の平均温度、2,063KPaの出口圧力で水素と反応させることによって、エタノール、酢酸、水、及び酢酸エチルを含む粗エタノール生成物を製造した。未反応の水素を反応器の入口に再循環して戻して、全H/酢酸のモル比が3,893hr−1のGHSVにおいて5.8になるようにした。これらの条件下においては、42.8%の酢酸が転化し、エタノールへの選択率は87.1%であり、酢酸エチルへの選択率は8.4%であり、アセトアルデヒドへの選択率は3.5%であった。図1に示す蒸留カラムを有する分離スキームを用いて粗エタノール生成物を精製した。
【0097】
[0092]粗エタノール生成物を、第1のカラムに20g/分の供給速度で供給した。液体供給流の組成を表8に与える。第1のカラムは50段を有する直径2インチのOldershawであった。カラムは、115℃の温度において大気圧で運転した。他に示さない限りにおいて、カラムの運転温度はリボイラー中の液体の温度であり、カラムの頂部における圧力は大気圧(約1気圧)である。第1のカラム内のトレイ間のカラム差圧は7.4KPaであった。第1の残渣を12.4g/分の流速で排出し、水素化反応器に戻した。
【0098】
[0093]第1の留出物を凝縮し、1:1の比で第1のカラムの頂部に還流し、留出物の一部を7.6g/分の供給速度で第2のカラムに導入した。第2のカラムは、25段を備えた直径2インチのOldershawデザインのものである。第2のカラムは、82℃の温度において大気圧で運転した。第2のカラム内のトレイ間のカラム差圧は2.6KPaであった。第2の残渣を5.8g/分の流速で排出した。第2の留出物を4.5:0.5の比で還流し、残りの留出物は分析のためのエステル供給流として回収した。
【0099】
【表8】

【0100】
実施例2
[0094]実施例1からの第2のカラムからの残渣と同様の組成を有する供給流を幾つかの運転から回収し、第3のカラムである60段を含む2インチのOldershawの25段の上方に10g/分の速度で導入した。第3のカラムは、103℃の温度において標準圧力で運転した。第3のカラム内のトレイ間のカラム差圧は6.2kPaであった。第3の残渣、例えば水流を2.7g/分の流速で排出した。第3の留出物を凝縮し、3:1の比で第3のカラムの頂部に還流した。表9に示すエタノール組成物が回収された。エタノール組成物はまた、10ppmのn−ブチルアセテートも含んでいた。
【0101】
【表9】

【0102】
[0095]表9に示すように、第3のカラムの残渣、例えば水流は、驚くべきことに且つ予期しなかったことに、酢酸及びエタノール以外の有機不純物を含まない。したがって、水流は更なる処理なしに容易に廃棄することができる。
【0103】
実施例3
[0096]96.3重量%の酢酸及び4.3重量%の水を含む気化供給流を、1/8インチのケイ酸カルシウム変性シリカ押出物上に担持されている1.6重量%の白金及び1重量%のスズを含む触媒の存在下において、290℃の平均温度、2,049KPaの出口圧力で水素と反応させることによって、エタノール、酢酸、水、及び酢酸エチルを含む粗エタノール生成物を製造した。未反応の水素を反応器の入口に再循環して戻して、全H/酢酸のモル比が1,997hr−1のGHSVにおいて10.2になるようにした。これらの条件下においては、74.5%の酢酸が転化し、エタノールへの選択率は87.9%であり、酢酸エチルへの選択率は9.5%であり、アセトアルデヒドへの選択率は1.8%であった。図1に示す蒸留カラムを有する分離スキームを用いて粗エタノール生成物を精製した。
【0104】
[0097]粗エタノール生成物を、第1のカラムに20g/分の供給速度で供給した。液体供給流の組成を表10に与える。第1のカラムは50段を有する直径2インチのOldershawである。カラムは、116℃の温度において大気圧で運転した。第1のカラム内のトレイ間のカラム差圧は8.1KPaであった。第1の残渣を10.7g/分の流速で排出し、水素化反応器に戻した。
【0105】
[0098]第1の留出物を凝縮し、1:1の比で第1のカラムの頂部に還流し、留出物の一部を9.2g/分の供給速度で第2のカラムに導入した。第2のカラムは、25段を備えた直径2インチのOldershawデザインのものであった。第2のカラムは、82℃の温度において大気圧で運転した。第2のカラム内のトレイ間のカラム差圧は2.4KPaであった。第2の残渣を7.1g/分の流速で排出した。第2の留出物を4.5:0.5の比で還流し、残りの留出物は分析のためのエステル供給流として回収した。
【0106】
【表10】

【0107】
実施例4
[0099]実施例3からの第2のカラムからの残渣と同様の組成を有する供給流を幾つかの運転から回収し、第3のカラムである60段を含む2インチのOldershawの25段の上方に20g/分の速度で導入した。第3のカラムは、103℃の温度において標準圧力で運転した。第3のカラム内のトレイ間のカラム差圧は6.5kPaであった。第3の残渣、例えば水流を13.8g/分の流速で排出した。第3の留出物を凝縮し、3:2の比で第3のカラムの頂部に還流した。表11に示すエタノール組成物が回収された。エタノール組成物はまた、118ppmのイソプロパノール及び122ppmのn−プロパノールも含んでいた。
【0108】
【表11】

【0109】
[0100]表11に示すように、第3のカラムの残渣、例えば水流は、驚くべきことに且つ予期しなかったことに、酢酸及びエタノール以外の有機不純物を含まない。したがって、水流は更なる処理なしに容易に廃棄することができる。
【0110】
[0101]本発明を詳細に記載したが、発明の精神及び範囲内の修正は当業者に容易に明らかであろう。上記の議論、当該技術における関連する知識、並びに背景及び詳細な説明に関連して上記で議論した参照文献(それらの開示事項は全て参照として本明細書中に包含する)を考慮すると。更に、下記及び/又は特許請求の範囲において示す本発明の複数の形態並びに種々の態様及び種々の特徴の複数の部分を、完全か又は部分的に結合又は交換することができると理解すべきである。当業者に認められるように、種々の態様の上記の記載においては他の態様を示すこれらの態様を他の態様と適当に組み合わせることができる。更に、当業者であれば、上記の記載は例示のみの目的であり、本発明を限定することは意図しないことを認識するであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酢酸供給流を水素化して粗エタノール生成物を形成し;そして
粗エタノール生成物の少なくとも一部を、複数のカラムの少なくとも1つのカラム内において、エタノールを含む留出物及び水流を含む残渣に分離する;
ことを含み、水流が酢酸及びエタノール以外の有機不純物を実質的に含まない、水流の製造方法。
【請求項2】
水素化を、白金/スズ、白金/ルテニウム、白金/レニウム、パラジウム/ルテニウム、パラジウム/レニウム、コバルト/パラジウム、コバルト/白金、コバルト/クロム、コバルト/ルテニウム、銀/パラジウム、銅/パラジウム、ニッケル/パラジウム、金/パラジウム、ルテニウム/レニウム、及びルテニウム/鉄からなる群から選択される複数の金属の組合せを含む触媒上で行う、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
エタノール、水、酢酸エチル、及び酢酸を含む粗エタノール生成物を与え;そして
粗エタノール生成物の少なくとも一部を、複数のカラムの少なくとも1つのカラム内において、エタノールを含む留出物及び水流を含む残渣に分離する;
ことを含み、水流が酢酸及びエタノール以外の有機不純物を実質的に含まない、水流の製造方法。
【請求項4】
粗エタノール生成物が、5〜70重量%の量のエタノール、5〜35重量%の量の水、0〜90重量%の量の酢酸、及び0〜20重量%の量の酢酸エチルを含む、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
水流が、
少なくとも97重量%の水;
0.5重量%未満の酢酸;
0.005重量%未満のエタノール;及び
0.001重量%未満の酢酸エチル;
を含む、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
水流が2.99〜3.35の範囲のpHを有する、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
有機不純物が、酢酸エチル、アセトアルデヒド、アセトン、アセタール、及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
少なくとも1つのカラムが70〜110℃の基準温度を有する、請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
少なくとも1つのカラムが少なくとも102℃の基準温度を有する、請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
分離が、
粗エタノール生成物の少なくとも一部を、複数のカラムの第1のカラム内において、エタノール、水、及び酢酸エチルを含む第1の留出物、及び酢酸を含む第1の残渣に分離し;
第1の留出物の少なくとも一部を、複数のカラムの第2のカラム内において、酢酸エチルを含む第2の留出物、並びにエタノール及び水を含む第2の残渣に分離し;そして
第2の残渣の少なくとも一部を、複数のカラムの第3のカラム内において、エタノールを含む第3の留出物、及び水流を含む第3の残渣に分離する;
ことを更に含む、請求項1〜9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
第2のカラムが抽出剤を用いる抽出蒸留カラムである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
水流の少なくとも一部を第2のカラムに送る、請求項1〜11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
複数のカラムの1つがスクラバーである、請求項1〜12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
水流をスクラバーに送る、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
酢酸を水素化して粗エタノール生成物を形成し;そして
粗エタノール生成物の少なくとも一部を、複数のカラムの少なくとも1つのカラム内において、エタノールを含む留出物、及び水流を含む残渣に分離する;
ことを含み、水流が
少なくとも97重量%の水;
0.5重量%未満の酢酸;
0.005重量%未満のエタノール;及び
0.001重量%未満の酢酸エチル;
を含む、水流の製造方法。
【請求項16】
エタノール、水、酢酸エチル、及び酢酸を含む粗エタノール生成物を与え;そして
粗エタノール生成物の少なくとも一部を、複数のカラムの少なくとも1つのカラム内において、エタノールを含む留出物、及び水流を含む残渣に分離する;
ことを含み、水流が
少なくとも97重量%の水;
0.5重量%未満の酢酸;
0.005重量%未満のエタノール;及び
0.001重量%未満の酢酸エチル;
を含む、水流の製造方法。
【請求項17】
粗エタノール生成物が、5〜70重量%の量のエタノール、5〜35重量%の量の水、0〜90重量%の量の酢酸、及び0〜20重量%の量の酢酸エチルを含む、請求項15及び16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
水流が2.99〜3.35の範囲のpHを有する、請求項15〜17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
有機不純物が、酢酸エチル、アセトアルデヒド、アセトン、アセタール、及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項15〜18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
少なくとも1つのカラムが70〜110℃の基準温度を有する、請求項15〜19のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
少なくとも1つのカラムが少なくとも102℃の基準温度を有する、請求項15〜20のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
分離が、
粗エタノール生成物の少なくとも一部を、複数のカラムの第1のカラム内において、エタノール、水、及び酢酸エチルを含む第1の留出物、及び酢酸を含む第1の残渣に分離し;
第1の留出物の少なくとも一部を、複数のカラムの第2のカラム内において、酢酸エチルを含む第2の留出物、並びにエタノール及び水を含む第2の残渣に分離し;そして
第2の残渣の少なくとも一部を、複数のカラムの第3のカラム内において、エタノールを含む第3の留出物、及び水流を含む第3の残渣に分離する;
ことを更に含む、請求項15〜21のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
粗エタノール生成物が、5〜70重量%の量のエタノール、5〜35重量%の量の水、0〜90重量%の量の酢酸、及び0〜20重量%の量の酢酸エチルを含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
水流が2.99〜3.35の範囲のpHを有する、請求項22及び23のいずれかに記載の方法。
【請求項25】
有機不純物が、酢酸エチル、アセトアルデヒド、アセトン、アセタール、及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項22〜24のいずれかに記載の方法。
【請求項26】
少なくとも1つのカラムが70〜110℃の基準温度を有する、請求項22〜25のいずれかに記載の方法。
【請求項27】
少なくとも1つのカラムが少なくとも102℃の基準温度を有する、請求項22〜26のいずれかに記載の方法。
【請求項28】
分離が、
粗エタノール生成物の少なくとも一部を、複数のカラムの第1のカラム内において、エタノール、水、及び酢酸エチルを含む第1の留出物、及び酢酸を含む第1の残渣に分離し;
第1の留出物の少なくとも一部を、複数のカラムの第2のカラム内において、酢酸エチルを含む第2の留出物、並びにエタノール及び水を含む第2の残渣に分離し;そして
第2の残渣の少なくとも一部を、複数のカラムの第3のカラム内において、エタノールを含む第3の留出物、及び水流を含む第3の残渣に分離する;
ことを更に含む、請求項22〜27のいずれかに記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2013−518818(P2013−518818A)
【公表日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−551382(P2012−551382)
【出願日】平成23年2月1日(2011.2.1)
【国際出願番号】PCT/US2011/023308
【国際公開番号】WO2011/097211
【国際公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【出願人】(500175107)セラニーズ・インターナショナル・コーポレーション (77)
【Fターム(参考)】