説明

エタノールを生産するシアノバクテリアに関する方法及び組成物

本発明は、シアノバクテリアによるエタノール生産のための方法及びシステムに関する。より詳細には、当該方法は、遺伝子操作された光応答性シアノバクテリアを使用してエタノールを生産するのに使用され得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本願は、2006年1月13日に出願された米国仮出願第60/758,683号(その開示内容全体が参照により援用される)の利益を主張する。
【背景技術】
【0002】
エネルギーの増加及び排出削減目標に合わせるために、再生可能エネルギーの開発が社会及び産業によって急速に受け入れられている。産業革命以来、世界経済はエネルギー源としての化石燃料に強く依存してきた。これらのエネルギー源への依存によって、化石燃料資源の供給減、環境汚染、及び結果として生じる地球温暖化効果等、幾つかの困難な問題が生み出された。化石燃料の1つの代替物がエタノールである。現在の世界のエタノール生産は糖料作物由来が60%、他の作物由来が33%、化学合成由来が7%である。従来のバイオマスエタノール生産プロセスでは、供給原料の増加に対して、莫大な量の耕地及びエネルギーの必要投入量が求められる。さらに、従来の発酵法はかなりの量のCO2を発酵プロセスの副産物として放出する。例えば、40MMGY (百万ガロン/年) のバイオマスエタノール工場は毎年121000トンのCO2を環境中に放出し得る(BBI, 2003)。この温室効果ガスが地球温暖化効果を悪化させる。
【0003】
バイオエタノールは近年、再生可能燃料技術の最先端へと急成長した。石油系燃料の実行可能な代替物を提供し、生産プロセス及び消費プロセスの両方に対する制御を提示する。また、生産産業及び燃料産業の両方を考慮すれば、多数の既存インフラに容易に組み込まれ得るので、生体システム由来のエタノールが特に魅力的である。生物によるエタノール生産のための各種方法が検討されている。微生物によるエタノールの生産は主に酵母であるSaccharomyces cerevisiae及び偏性エタノール生成細菌であるZymomonas mobilisを使用して検討されている。これらの微生物の両方が、解糖系の産物であるピルビン酸からエタノールを生産するのに使用される、酵素であるピルビン酸(pruvate)デカルボキシラーゼ(pdc)及びアルコールデヒドロゲナーゼ(adh)を生産するための遺伝子情報を含有する。Woods他(米国特許第6,306,639号及び同6,699,696号、Deng and Coleman著「シアノバクテリアにおける遺伝子操作によるエタノール合成(Ethanol Synthesis by Genetic Engineering in Cyanobacteria)」 Applied and Environmental Microbiology (1999) 65(2):523-428も参照されたい)には、エタノールの生産に有用な遺伝子組換えシアノバクテリアが開示されている。Woods他により、30日間の培養後で5mMのエタノール生産レベルが報告されている。
【0004】
したがって、相当量のエタノールを生産するための簡単、効率的で費用対効果の高い生体システムを見出すことが望ましい。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した技術は各種の欠点に悩まされている。例えば、Woods他により開示されたシステムはエタノール生産レベルの低さ、発酵時間の長さ及び不安定性に悩まされている。
【0006】
幾つかの実施の形態において、必要とされるのは、相当量のエタノールを生産するための簡単、効率的で費用対効果の高いシステムである。本発明は、エタノール生産及び宿主細胞の経済的に適合する(economically relevant)エタノール濃度への耐容性を最適化するための方法、組成物、宿主細胞、及びベクターに関する。
【0007】
核酸構築物は本発明の幾つかの実施の形態により開示される。核酸配列は、光応答性プロモータ、ピルビン酸デカルボキシラーゼ(pdc)酵素をコードする配列、及びアルコールデヒドロゲナーゼ(adh)酵素をコードする配列を含む。
【0008】
発現ベクターは本発明の幾つかの実施の形態により開示される。発現ベクターは、光応答性プロモータ、ピルビン酸デカルボキシラーゼ(pdc)酵素をコードする配列、及びアルコールデヒドロゲナーゼ(adh)酵素をコードする配列を含む核酸を含む。
【0009】
宿主細胞は本発明の幾つかの実施の形態により開示される。宿主細胞は、光応答性プロモータ、ピルビン酸デカルボキシラーゼ(pdc)酵素をコードする配列、及びアルコールデヒドロゲナーゼ(adh)酵素をコードする配列を含む核酸を含む発現ベクターを含む。
【0010】
遺伝子操作されたシアノバクテリアは本発明の幾つかの実施の形態により開示される。シアノバクテリアは、ピルビン酸デカルボキシラーゼ(pdc)酵素及びアルコールデヒドロゲナーゼ(adh)酵素をコードする核酸配列を含む構築物を含み、5日間の発酵後に約10mMのエタノールよりも多い回収可能な量でエタノールを生産可能である。
【0011】
エタノールの生産方法は本発明の幾つかの実施の形態により開示される。当該方法は、Zymomonas mobilisのpL0I295プラスミドから得られるpdc酵素及びadh酵素をコードするDNA断片を含む構築物を含有するシアノバクテリアを培養培地中で培養すること、及び5日間の発酵後に約10mMのエタノールよりも多い量で培養培地中にエタノールを蓄積することを含む。
【0012】
ここで本願の主題を図面を参照して詳細に説明するが、例示的な実施形態に関してそのように為される。添付の特許請求の範囲により一部規定される本発明の真の範囲及び精神を逸脱しない限り、記載の実施形態には変更及び変更形態が実施され得ることが意図される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
I.序論
シアノバクテリアによって高レベルのエタノールを生産するための核酸配列、ベクター、宿主細胞、及び方法は、本発明の好ましい実施形態により開示される。
【0014】
日光、CO2及び無機栄養素(おそらく排水流から転用される)を使用するシアノバクテリア由来のエタノール生産は、再生可能燃料を得るための魅力的な経路である。炭素固定とエタノール生成経路の両方を単一の生物体に組み合わせることにより、植物の成長/収穫/加工に関連するコストが回避されて、合計の入力エネルギーが減少し、正味のエネルギー利得が増加する。バイオマスエタノール生産プロセスとは対照的に、開示の方法は、大量のCO2を燃料生産のための炭素源として直接利用するため、大気中からこの温室効果ガスを削減するのに役立つ。
【0015】
Synechocystis等の光合成微生物を使用してエタノールを生産することによる多くの利点があり、バイオ燃料生産、プラスの環境影響、地球温暖化の低減、及び食の安全性の向上に関するビジネスチャンスが含まれる。シアノバクテリアを使用して太陽エネルギー及びCO2からエタノールを生産するための本方法により、バイオマス系エタノール生産施設と比較して、資本コスト及び運転コストの両方の顕著な節減が提示される。経費の削減は、簡素化された生産プロセス、農作物及び農業廃棄物が存在しないこと、処理すべき固形廃棄物が何もないこと、酵素を何も必要としないこと等の因子によって達
成される。シアノバクテリア発酵は処理が困難な硬いセルロース及びヘミセルロースを全く含まない。結果として、シアノバクテリアのエタノール生産工場からは有害大気汚染物質及び揮発性有機化合物が全く排出されない。
【0016】
バイオマスエタノール生産のための従来法と比較して、開示の方法及び開示のシステムは食糧生産のための農業空間の保存に役立つ。さらに、シアノバクテリアのエタノール生産工場は、或る特定の場所への穀物輸送又は原材料の前処理を必要としないので、地理的制限なく高度に分布され得る。現在開示されているシステムを使用するエタノール生産に必要なインフラ及び設備は、現在の酵母発酵技術に必要なインフラ及び設備よりも有意に少ないと推定され、燃料輸送及び流通基盤を円滑に組み込むことが可能である。
【0017】
光合成による二酸化炭素固定の初期産物は3−ホスホグリセリン酸である。3−ホスホグリセリン酸はカルビン回路で使用されて、二酸化炭素のアクセプタであるリブロース−1,5−二リン酸を再生する。カルビン回路の中間体が他の代謝経路と接続される2つの主な分岐点がある。1つの点では、フルクトース−6−リン酸が、ペントースリン酸経路、セルロース(細胞壁の主成分)合成、及びグリコーゲン(炭水化物貯蔵の主形態)合成の基質である、グルコース−6−リン酸及びグルコースリン酸に変換される。他の分岐点では、3−ホスホグリセリン酸が、ホスホグリセリン酸ムターゼ、エノラーゼ及びピルビン酸キナーゼによってそれぞれ触媒される一連の反応において、2−ホスホグリセリン酸、ホスホエノールピルビン酸及びピルビン酸に変換される。ピルビン酸は好気性条件においてアミノ酸、ヌクレオチド等を合成するためのTCA回路の一部に誘導される。ピルビン酸はエタノール合成の基質でもある。
【0018】
貯蔵炭水化物をエタノールに変換するために、貯蔵炭水化物を解糖系に回す必要がある。シアノバクテリアにおける貯蔵炭水化物代謝についての推定上の経路は解糖系及びホスホグルコン酸経路の両方を通過するものである。エタノール生成の目的では、解糖系が最も重要である。シアノバクテリアにおいてはそれほど特性化されていないが、グリコーゲンは、グリコーゲンホスホリラーゼ及び1,6−グリコシダーゼの組合せによってグルコース−1−リン酸に代謝されると推定される。ホスホグルコムターゼ、ホスホグルコイソメラーゼ及びホスホフルクトキナーゼにより、グルコース−1−リン酸はフルクトース−1,6−二リン酸分子に変換される。この化合物は、アルドラーゼ及びトリオースリン酸イソメラーゼの作用によって2分子のグリセルアルデヒド三リン酸に切断される。この化合物は、グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ、ホスホグリセリン酸キナーゼ、ホスホグリセリン酸ムターゼ、エノラーゼ及びピルビン酸キナーゼによってそれぞれ触媒される逐次的な一連の反応を通じてピルビン酸に変換される。
【0019】
幾つかの藻類及びシアノバクテリア株において、少量のエタノールが嫌気暗条件下、発酵産物として合成される(Van der Oost他著「好熱性単細胞シアノバクテリアSynechococcus PCC 6716の可溶性ヒドロゲナーゼの小サブユニットをコードすると提唱される遺伝子のヌクレオチド配列(Nucleotide sequence of the gene proposed to encode the small subunit of the soluble hydrogenase of the thermophilic unicellular cyanobacterium Synechococcus PCC 6716)」 Nucleic Acids Res. 1989 Dec 11;17(23):10098(その全体が参照により本明細書中に援用される))。しかしながら、概して、嫌気暗条件下での発酵プロセスは、かかるストレス条件下でただ生物が生存するのに十分なだけの非常に低いレベルで作動している。上記のように、嫌気暗条件下でのエタノール合成は貯蔵グリコーゲンの分解に依存している。さらに、嫌気性条件下でのエタノール合成は全体的に光によって阻害されることが分かっている。したがって、光合成微生物においては、エタノール合成は光合成と連動せず、実際は光合成によって阻害され得る。
【0020】
したがって、シアノバクテリアは二酸化炭素を利用せずにエタノールを生産することが観察されている。さらに、遺伝子操作された光合成微生物を含めて、比較的相当量のエタノールを生産する光合成微生物は何も知られていない。さらに複雑なことに、幾つかの光合成生物は、エタノールを培養培地に添加すると光合成に関与する遺伝子の発現が阻害されるように、エタノールによって阻害されることが示されている。
【0021】
本発明において、嫌気暗条件で為される貯蔵グリコーゲンの利用とは対照的に、シアノバクテリアが成功裏に遺伝子操作されて、定量化可能量のエタノールを生産し得ることが分かった。無機炭素は同化され、2つの上述した酵素、pdc及びadhから成る、エタノールを生成する代謝経路の挿入を介して細胞増殖及びエタノール生産の両方に使用される。
【0022】
II.定義
別段に規定しない限り、本明細書中で使用されるすべての技術用語及び科学用語は、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者(当業者)によって共通に理解される意味を有する。本明細書において、別段の定めがない限り、以下の用語はそれらに基づく意味を有する。
【0023】
「ピルビン酸デカルボキシラーゼ」及び「pdc」とは、ピルビン酸のアセトアルデヒド及び二酸化炭素への脱炭酸を触媒する酵素を指す。「pdc遺伝子」とは、ピルビン酸のアセトアルデヒド及び二酸化炭素への脱炭酸を触媒する酵素をコードする遺伝子を指す。「アルコールデヒドロゲナーゼ」及び「adh」とは、アルコール及びアルデヒド又はケトンの間での相互変換を容易にする酵素を指す。「adh遺伝子」とは、アルコール及びアルデヒド又はケトンの間での相互変換を容易にする酵素をコードする遺伝子を指す。「pdc/adh」とは、pdc酵素及びadh酵素を総称的に指す。「pdc/adhカセット」とは、pdc酵素及びadh酵素をコードする核酸配列を指す。
【0024】
「プロモータ」とは、非相同又は天然のポリヌクレオチドであり得る、関連したポリヌクレオチドの転写を導く核酸制御配列のアレイである。プロモータはポリメラーゼ結合部位等、転写開始部位近くの核酸配列を含む。プロモータはまた任意選択で、転写開始部位から数千塩基対ほど離れて位置し得る遠位のエンハンサ要素又はリプレッサ要素を含む。
【0025】
「光応答性プロモータ」とは、光に応答するプロモータを指す。
【0026】
「ポリヌクレオチド」及び「核酸」とは、リン酸ジエステル結合を介して連結したヌクレオチド単位(リボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチド、関連した天然の構造変異種、及びそれらの合成非天然アナログ)、関連した天然の構造変異種、並びにそれらの合成非天然アナログから構成されるポリマーを指す。したがって、当該用語は、ヌクレオチド及びそれらの間の連結が非天然合成アナログを含むヌクレオチドポリマーを含む。文脈によって必要な場合には、ヌクレオチド配列がDNA配列(即ち、A、T、G、C)によって表される際に、これが「U」が「T」に置換されたRNA配列(即ち、A、U、G、C)も含むことが理解されるだろう。
【0027】
「組換え」とは、合成された又はそうでなければin vitroで操作されたポリヌクレオチド(「組換えポリヌクレオチド」)、及び、細胞又は他の生体システムにおいて、それらのポリヌクレオチドによってコードされる遺伝子産物を生産するための組換えポリヌクレオチドの使用法を指す。例えば、クローニングされたポリヌクレオチドは、細菌のプラスミド等、好適な発現ベクター内に挿入され得るし、プラスミドは、好適な宿主細胞を形質転換するのに使用され得る。組換えポリヌクレオチドを含む宿主細胞は、「組換え宿主細胞」又は「組換え細菌」と称される。そして、遺伝子は組換え宿主細胞内で発現
して、例えば、「組換えタンパク質」を生産する。組換えポリヌクレオチドは非コード機能(例えば、プロモータ、複製起点、リボソーム結合部位等)も果たし得る。
【0028】
「相同組換え」という用語は、核酸配列の類似性に基づく2つの核酸分子間の組換えプロセスを指す。当該用語は、相互組換え及び非相互組換えの両方を包含する(遺伝子変換とも称される)。また、組換えは等価又は非等価な交差イベントの結果であり得る。等価な交差は2つの等価な配列又は染色体領域で起こる一方、非等価な交差は非等価な配列又は染色体領域の同一の(又は実質的に同一の)区域の間で起こる。不等交差は典型的には遺伝子重複及び遺伝子欠失を生じる。相同組換えに関与する酵素及び機構の説明については、Watson他著「遺伝子の分子生物学(Molecular Biology of the Gene)」第313〜327頁、The Benjamin/Cummings Publishing Co. 第4版(1987)を参照されたい。
【0029】
「非相同組込み又はランダム組込み」という用語は、相同組換えを含まないゲノムにDNAが組み込まれる任意のプロセスを指す。取込みが多数のゲノム位置のいずれかで起こり得るランダムプロセスのように見える。
【0030】
「非相同ポリヌクレオチド配列」又は「非相同核酸」とは、2つのポリヌクレオチド配列が天然と同様の相互関係では配置されない、プロモータ配列等、別のポリヌクレオチドと機能的に関連するポリヌクレオチドに関する相対語である。非相同ポリヌクレオチド配列としては、例えば、非相同核酸と操作可能に連結したプロモータ、及び組換え宿主細胞へ形質転換するための非相同ベクターに挿入される天然のプロモータを含むポリヌクレオチドが挙げられる。形質転換技法によって宿主細胞に導入されるので、非相同ポリヌクレオチド配列は「外因性」と考えられる。しかしながら、非相同ポリヌクレオチドは外部の供給源又は同一の供給源に由来し得る。非相同ポリヌクレオチド配列の変更形態は、例えば、ポリヌクレオチドを制限酵素で処理して、調節要素と操作可能に連結し得るポリヌクレオチド配列を生成することによって生じ得る。変更形態は部位特異的突然変異誘発法等の技法によっても生じ得る。
【0031】
「内因的に発現される」という用語は、宿主細胞由来であり、且つ宿主細胞内で自然と発現されるポリヌクレオチドを指す。
【0032】
「発現カセット」又は「構築物」とは、宿主細胞における遺伝子の転写を可能にする一連のポリヌクレオチド要素を指す。典型的には、発現カセットとしては、プロモータ、及び転写される非相同又は天然のポリヌクレオチド配列が挙げられる。また、発現カセット又は構築物としては、例えば、転写終結シグナル、ポリアデニル化シグナル及びエンハンサ要素が挙げられ得る。
【0033】
「操作可能に連結される」という用語は、1つの部分の活性(例えば、転写を調節できること)が他の部分に対する作用(例えば、配列の転写)を生じる2つの部分間の機能的な関係を指す。したがって、ポリヌクレオチド発現制御配列(プロモータ又は他の転写調節配列等)と第2のポリヌクレオチド配列(例えば、天然ポリヌクレオチド又は非相同ポリヌクレオチド)との間に機能的な連結がある場合に、ポリヌクレオチドは「プロモータと操作可能に連結され」て、ここで発現制御配列がポリヌクレオチドの転写を導く。
【0034】
「発現する能力がある」とは、内因性ポリヌクレオチド及び/又は外因性ポリヌクレオチドの発現に十分な細胞環境を提供する宿主細胞を指す。
【0035】
本明細書及び特許請求の範囲において使用される、成分、反応条件等の量を表現するすべての数字は、「約」という用語によってすべての例において変更されるものと理解されるべきである。したがって、逆のことを示唆しない限り、本明細書及び添付の特許請求の
範囲に記載される数値パラメータは、本発明によって得られるように求められる所望の性質に応じて変化し得る近似値である。最低でも、特許請求の範囲の均等物である原理の適用が制限されないように、各数値パラメータは、有効桁及び通常の四捨五入手法の数字を考慮して解釈されるべきである。
【0036】
III.実施形態の説明
エタノール生産の最適化のための核酸及び組換え発現ベクターを、本発明の幾つかの実施形態により開示する。図1は、多様な方法又は手順を実施するのに使用され得る、下記実施例1においてより完全に説明される、システムの1つの実施形態を示す図である。エタノール生産の最適化のためのpMota組換え発現ベクターの配列を配列番号1に示す。pMotaベクターは、500塩基対の相同的な上流領域核酸配列におけるSynechocystisのpsbAIIプロモータに関する配列(配列番号2)、PLOI295由来のZymomonas mobilisのpdcをコードする核酸配列(配列番号3)、及びPLOI295由来のZymomonas mobilisのadhIIをコードする核酸配列(配列番号4)を含有する。PLOI295(図1b)からpPSBAIIKSプラスミド(図1a)へpdc/adhカセットをサブクローニングすることによってpMotaベクターを作製した。pMotaベクターは、シアノバクテリアのゲノムにおけるpsbAII光応答性プロモータの制御下、これらの遺伝子を組み込むのに使用され得る。
【0037】
宿主細胞の形質転換及び引き続く対象とする遺伝子(複数可)の組込みのための組換え発現ベクターは、本明細書中で議論される構成ポリヌクレオチド配列を最初に単離することによって調製される。幾つかの実施形態において、対象とする遺伝子(複数可)は宿主細胞のゲノムに相同的に組み込まれる。他の実施形態において、遺伝子は宿主細胞のゲノムに非相同的に組み込まれる。好ましくは、対象とする遺伝子(複数可)はSynechocystisのゲノムに相同的に組み込まれる。幾つかの実施形態において、pMotaベクターは二重の相同組換えによってpsbAII遺伝子座に組み込まれる。その後、ポリヌクレオチド配列(例えば、プロモータによって駆動されるpdc/adh酵素をコードする配列)は組換え発現ベクターを作製するためにライゲーションされ、宿主細胞の形質転換に好適な「pdc/adh構築物」とも称される。組換えポリヌクレオチドを単離、調製する方法は当業者に既知である。Sambrook他著「分子クローニング 研究室マニュアル(Molecular Cloning. A Laboratory Manual)」(第2版 1989)、Ausubel他著「分子生物学における現在のプロトコル(Current Protocols in Molecular Biology)」(1995)により、多くのクローニング演習を通じて熟練者を導くのに十分な情報が提供される。
【0038】
特異的なポリヌクレオチドを得るための1つの好ましい方法は、合成オリゴヌクレオチドプライマーの使用を、mRNA又はDNAの鋳型上でのポリメラーゼ伸長又はライゲーションと組み合わせることである。かかる方法(例えば、RT、PCR又はLCR)は所望のヌクレオチド配列を増幅させる(米国特許第4,683,195号及び同4,683,202号を参照)。制限エンドヌクレアーゼ部位はプライマーに取り込まれ得る。増幅されたポリヌクレオチドを精製及びライゲーションして、発現カセットを形成する。天然の遺伝子配列における改変を、in vitroの突然変異誘発法及び適切な変異を取り込むように設計されたプライマーを使用するPCR等の技法によって導入し得る。別の好ましいポリヌクレオチド配列の単離法では、既知の制限エンドヌクレアーゼ部位を使用して、核酸断片をプラスミドから単離する。対象とする遺伝子も既知の遺伝子配列に基づくプライマーを使用して当業者によって単離し得る。
【0039】
本発明に好適なプロモータとしては、例えば、psbAIIプロモータ及びnirAプロモータ等、任意の好適な光応答性プロモータが挙げられる。幾つかの実施形態において
、プロモータは、野生型Synechocystis sp. PCC 6803細胞において、光システムIIのDIサブユニットをコードするpsbAII遺伝子の転写を媒介するin situの天然psbAIIプロモータである。psbAII光応答性プロモータは、Synechocystis sp. PCC 6803において、内因性psbAII遺伝子のすぐ上流に位置している。幾つかの実施形態において、プロモータはnirAプロモータであり、これは、Synechocystis sp. PCC 6803に対する誘導可能な発現ベクターを開発中のQi他(2005)によって記載された166塩基対のSynechococcus sp.株PCC 7942のプロモータ配列である。
【0040】
幾つかの実施形態において、プロモータは、psbAIIプロモータを含む配列番号2で示される核酸配列を含む。幾つかの実施形態において、プロモータは配列番号5で示される核酸配列を含む。他の実施形態において、プロモータは、配列番号6で示されるSynechococcusのnirAプロモータ配列を含む。配列番号6において、プロモータ/オープンリーディングフレーム(ORF)構築物の空間の完全性を維持しながら、開始コドンにNdeI制限部位を生成するために、野生型nirAプロモータの3’末端のTCCを配列CATで置換した。これにより、対象とする遺伝子(複数可)が培養培地に硝酸塩を添加することによる誘導によって発現され得るシステムの作製が可能となる。アンモニアは誘導に先立つ増殖のための窒素源として使用され得る(Qi他、2005)。幾つかの実施形態において、配列番号2で示される配列を有するpsbAIIプロモータを含有する500塩基対の相同的な上流領域は、組換え発現ベクターを構築する際に使用され得る。500塩基対の相同領域は、二重の相同組換えによってpsbAII遺伝子座に組み込むためのベクターを標的とする。
【0041】
発現可能な任意のpdc遺伝子が本発明において使用され得る。幾つかの実施形態において、pdc遺伝子はZymomonas mobilisのpdc遺伝子である。幾つかの実施形態において、pdc遺伝子はZymomonas mobilisのプラスミドpLOI295から得られる。幾つかの実施形態において、pdc遺伝子は配列番号3で示される核酸配列を含む。幾つかの実施形態において、pdc遺伝子は配列番号7で示されるタンパク質をコードする核酸配列である。他の実施形態においてpdc遺伝子はZymobacter palmaeから得られるpdc酵素をコードする核酸である。Zymobacter palmae由来の完全なpdcタンパク質配列に対するNCBIアクセッション番号はAF474145である(配列番号8)。幾つかの実施形態において、pdc遺伝子は配列番号8で示されるアミノ酸配列をコードする核酸配列である。pdc酵素及びadh酵素には他の供給源があり、Saccharomyces cerevisciaeが含まれる。
【0042】
発現可能な任意のadh遺伝子が本発明において使用され得る。幾つかの実施形態において、adh遺伝子はZymomonas mobilisのadhII遺伝子である。幾つかの実施形態において、adh遺伝子はZymomonas mobilisのプラスミドpLOI295から得られる。幾つかの実施形態において、adh遺伝子は配列番号4で示される核酸配列を含む。幾つかの実施形態において、pdc遺伝子は配列番号9で示されるアミノ酸配列をコードする核酸配列である。
【0043】
単離される最適なポリヌクレオチド配列(例えば、上述したプロモータ配列によって駆動されるpdc/adh遺伝子)は、「発現ベクター」、「クローニングベクター」 又は「ベクター」(各用語は通常、選択される宿主細胞において複製可能なプラスミド又は他の核酸分子を指す)に挿入される。発現ベクターは自己複製可能であるか、宿主細胞のゲノムに挿入されることによって複製可能である。
【0044】
ベクターは2以上の宿主細胞(例えば、クローニング及び構築のためのE.coli並びに、例えば発現のためのSynechocystis)において使用可能であることが望ましいことが多い。さらなるベクターの要素としては、例えば、所望のポリヌクレオチド配列で形質転換されたそれらの細胞の検出及び/又は選別を可能にする選択マーカー(例えば、カナマイシン耐性又はアンピシリン耐性)が挙げられる。
【0045】
また、遺伝情報を細胞に運搬するのに使用される特別なベクターは特に重要なわけではない。組換えタンパク質の発現に使用される任意の好適なベクターが使用され得る。好ましい実施形態において、宿主細胞のゲノムへの挿入が可能なベクターを使用する。幾つかの実施形態において、ベクターはLagarde他(2000)によって作製、記載されたpSBAIIKSである。発現ベクターは、典型的には、宿主細胞における最適なポリヌクレオチドの発現に必要なすべての要素を含有する発現カセットを有する。典型的な発現カセットは最適なポリヌクレオチド配列と操作可能に連結されたプロモータを含有する。pdc/adhの発現を導くために使用されるプロモータは上記の通りであり、pdc/adhタンパク質をコードする配列と操作可能に連結される。プロモータは好ましくは、非相同的な転写開始部位からの距離が、自然環境における転写開始部位からの距離とほぼ同じとなるように位置付けされる。しかしながら、当該技術分野において既知であるように、本距離における幾つかの変形形態がプロモータ機能を失うことなく適応され得る。
【0046】
pdc/adh遺伝子の他、エタノール生産の最適化のための発現ベクターとしては、宿主細胞の経済的に適合するエタノール濃度への耐容のための遺伝子が挙げられ得る。例えば、発現ベクターでは、omrA、lmrA、及びlmrCD等の遺伝子が挙げられ得る。ワイン乳酸菌Oenococcus oeni由来のOmrA及びその相同体であるLactococcus lactis由来のLmrAが、tolC(−) E.Coliの相対耐性を100〜10000倍増大させることが示されている(Bourdineaud他、2004)。したがって、宿主細胞のエタノール耐容性を増大させるために、omrA、lmrA及び他の相同体を組み込むことが有益であり得る。幾つかの実施形態において、pdc/adh遺伝子を含む発現ベクターはomrA遺伝子をさらに含む。他の実施形態において、pdc/adh遺伝子を含む発現ベクターはlmrA遺伝子をさらに含む。他の実施形態において、pdc/adh遺伝子を含む発現ベクターはlmrCD遺伝子をさらに含む。宿主細胞における非相同遺伝子の発現を駆動するのに好適な任意のプロモータが、宿主細胞の耐容のための遺伝子を駆動するのに使用される。典型的には標準的な発現カセットにおいて使用されるものが含まれる。
【0047】
組換え発現ベクターの構築及び単離の後、それは、エタノール生産のための宿主細胞の形質転換に使用される。タンパク質発現のための宿主細胞への遺伝子材料の導入に使用される特別な手順は特に重要なわけではない。外部のポリヌクレオチド配列を宿主細胞に導入するための既知の手順のいずれかが使用され得る。幾つかの実施形態において、宿主細胞をWilliams(1988)によって記載されたプロトコルによって逐次的に形質転換、スクリーニングし得る。本方法は、Synechocystis sp. PCC 6803シアノバクテリアの天然の形質転換能力を活用する。ここでの形質転換は、精製されたプラスミド構築物を対数増殖期細胞と簡易にインキュベートすることにより可能である。
【0048】
上記組換え発現ベクターによる形質転換のための宿主細胞としては、エタノールを生産する能力のある任意の好適なシアノバクテリア、特にSynechocystisの一員が挙げられる。本発明における使用に好適な宿主細胞としては、例えば、野生型Synechocystis sp. PCC 6803、及び機能的なNDH2型デヒドロゲナーゼ(NDH−2(−))を欠損した、Howitt他(1999)によって作製された変異型Synechocystisが挙げられる。2型デヒドロゲナーゼはNADHからのNAD+の再生に特異的である。エタノール経路を通過する流量は変異体で増加し得る。特に好ま
しい実施形態において、宿主細胞はSynechocystisである。pdc/adh構築物で形質転換される宿主細胞はエタノール生産のための有用な組換えシアノバクテリアである。好ましいSynechocystisの亜種としては、例えば、Synechocystis PCC 6803が挙げられる。好ましい株はSynechocystis sp. PCC 6803 NDH−2(−)変異体である。
【0049】
宿主細胞をpdc/adh構築物で形質転換した後、宿主細胞をエタノールの生産に好適な条件下でインキュベートする。典型的には、宿主細胞をBG−11培地における光独立栄養性液体培養で増殖させる。空気スパージ速度1L/分、pH設定値8.5(CO2をスパージすることによって制御する)とし、温度を30℃に維持する。シアノバクテリアを増殖させるための各種培地が当該技術分野において既知である。幾つかの実施形態において、Synechocystis sp. PCC 6803を、5mMグルコース、5%スクロース及び/又は5μg・ml-1、25μg・ml-1若しくは50μg・ml-1のいずれかのカナマイシンを(最終濃度で)添加した又は添加しない標準的なBG−11培地プレート上で培養する。Synechocystis sp. PCC 6803を含有するプレートを30℃、約100マイクロアインシュタイン・m-2・s-1下でインキュベートした。すべてのSynechocystisの液体培養物を、適切な場合に50μg・ml-1のカナマイシンを添加した標準的なBG−11において増殖させた。
【0050】
エタノールを生産する能力のある宿主細胞をpdc/adh構築物で形質転換し、細胞を上記好適な条件下で培養した後に、エタノールの分泌の増大が観察される。エタノール分泌の増大は、下記実施例においてより完全に説明する、当業者に既知の標準的な方法によって観察され得る。幾つかの実施形態において、宿主細胞を回分培養を使用して増殖させる。幾つかの実施形態において、宿主細胞をフォトバイオリアクタ発酵を使用して増殖させる。幾つかの実施形態において、宿主細胞をBIOFLO(登録商標)リアクタ内で増殖させる。幾つかの実施形態において、宿主細胞を増殖させる増殖培地を変更することにより、エタノール生産のレベルの増大が可能となる。培地変更の回数は変化し得る。エタノール濃度レベルは約2〜約5日間の発酵後に、約5mM〜約15mMに到達し得る。培地を変更する場合、エタノール濃度レベルは5日間の発酵後に約25〜約100mMに到達し得る。幾つかの実施形態において、エタノール生産レベルは、約5日間の発酵後に、約5.0mM、5.1mM、5.2mM、5.3mM、5.4mM、5.5mM、5.6mM、5.7mM、5.8mM、5.9mM、6.0mM、6.1mM、6.2mM、6.3mM、6.4mM、6.5mM、6.6mM、6.7mM、6.8mM、6.9mM、7.0mM、7.1mM、7.2mM、7.3mM、7.4mM、7.5mM、7.6mM、7.7mM、7.8mM、7.9mM、8.0mM、8.1mM、8.2mM、8.3mM、8.4mM、8.5mM、8.6mM、8.7mM、8.8mM、8.9mM、9.0mM、9.1mM、9.2mM、9.3mM、9.4mM、9.5mM、9.6mM、9.7mM、9.8mM、9.9mM、10.0mM、10.1mM、10.2mM、10.3mM、10.4mM、10.5mM、10.6mM、10.7mM、10.8mM、10.9mM、11.0mM、11.1mM、11.2mM、11.3mM、11.4mM、11.5mM、11.6mM、11.7mM、11.8mM、11.9mM、12.0mM、12.1mM、12.2mM、12.3mM、12.4mM、12.5mM、12.6mM、12.7mM、12.8mM、12.9mM、13.0mM、13.1mM、13.2mM、13.3mM、13.4mM、13.5mM、13.6mM、13.7mM、13.8mM、13.9mM、14.0mM、14.1mM、14.2mM、14.3mM、14.4mM、14.5mM、14.6mM、14.7mM、14.8mM、14.9mM又は15.0mMである。培地を変更する場合、幾つかの実施形態において、エタノール生産レベルは、約5日間の発酵後に、約25.0mM、25.1mM、25.2mM、25.3mM、25.4mM、25.5mM、25.6mM、25.7mM、25.8mM、25.9mM、26.0mM、26.1mM、26.2mM、
26.3mM、26.5mM、26.6mM、26.7mM、26.8mM、26.9mM、27.0mM、27.1mM、27.2mM、27.3mM、27.5mM、27.6mM、27.7mM、27.8mM、27.9mM、28.2mM、28.2mM、28.3mM、28.5mM、28.6mM、28.7mM、28.8mM、28.9mM、29.0mM、29.1mM、29.2mM、29.3mM、29.5mM、29.6mM、29.7mM、29.8mM、29.9mM、30.0mM、30.1mM、30.2mM、30.3mM、30.4mM、30.5mM、30.6mM、30.7mM、30.8mM、30.9mM、31.0mM、31.1mM、31.2.31.3mM、31.4mM、31.5mM、31.6mM、31.7mM、31.8mM、31.9mM、32.0mM、32.1mM、32.2mM、32.3mM、32.4mM、32.5mM、32.6mM、32.7mM、32.8mM、32.9mM、33.0mM、33.1mM、33.2mM、33.3mM、33.4mM、33.5mM、33.6mM、33.7mM、33.8mM、33.9mM、34.0mM、34.1mM、34.2mM、34.3mM、34.4mM、34.5mM、34.6mM、34.7mM、34.8mM、34.9mM、35.0mM、35.1mM、35.2mM、35.3mM、35.4mM、35.5mM、35.6mM、35.7mM、35.8mM、35.9mM、36.0mM、36.1mM、36.2mM、36.3mM、36.5mM、36.6mM、36.7mM、36.8mM、36.9mM、37.0mM、37.1mM、37.2mM、37.3mM、37.5mM、37.6mM、37.7mM、37.8mM、37.9mM、38.2mM、38.2mM、38.3mM、38.5mM、38.6mM、38.7mM、38.8mM、38.9mM、39.0mM、39.1mM、39.2mM、39.3mM、39.5mM、39.6mM、39.7mM、39.8mM、39.9mM、40.0mM、40.1mM、40.2mM、40.3mM、40.4mM、40.5mM、40.6mM、40.7mM、40.8mM、40.9mM、41.0mM、41.1mM、41.2mM、41.3mM、41.4mM、41.5mM、41.6mM、41.7mM、41.8mM、41.9mM、42.0mM、42.1mM、42.2mM、42.3mM、42.4mM、42.5mM、42.6mM、42.7mM、42.8mM、42.9mM、43.0mM、43.1mM、43.2mM、43.3mM、43.4mM、43.5mM、43.6mM、43.7mM、43.8mM、43.9mM、44.0mM、44.1mM、44.2mM、44.3mM、44.4mM、44.5mM、44.6mM、44.7mM、44.8mM、44.9mM、45.0mM、45.1mM、45.2mM、45.3mM、45.4mM、45.5mM、45.6mM、45.7mM、45.8mM、45.9mM、46.0mM、46.1mM、46.2mM、46.3mM、46.5mM、46.6mM、46.7mM、46.8mM、46.9mM、47.0mM、47.1mM、47.2mM、47.3mM、47.5mM、47.6mM、47.7mM、47.8mM、47.9mM、48.2mM、48.2mM、48.3mM、48.5mM、48.6mM、48.7mM、48.8mM、48.9mM、49.0mM、49.1mM、49.2mM、49.3mM、49.5mM、49.6mM、49.7mM、49.8mM、49.9mM又は50.0mMである。発酵期間は、約2日間の発酵から約30日間の発酵まで変化し得る。幾つかの実施形態において、発酵期間は、約2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、14日、15日、16日、17日、18日、19日、20日、21日、22日、23日、24日又は25日である。
【0051】
宿主細胞増殖の間の空気スパージ速度は、0.1L/分〜3.0L/分であり得る。幾つかの実施形態において、宿主細胞増殖の間の空気スパージ速度は、約0.1L/分、0.2L/分、0.3L/分、0.4L/分、0.5L/分、0.6L/分、0.7L/分、0.8L/分、0.9L/分、1.0L/分、1.1L/分、1.2L/分、1.3L/分、1.4L/分、1.5L/分、1.6L/分、1.7L/分、1.8L/分、1.9L/分、2.0L/分、2.1L/分、2.2L/分、2.3L/分、2.4L/分、
2.5L/分、2.6L/分、2.7L/分、2.8L/分、2.9L/分又は3.0L/分である。空気スパージ速度は好ましくは、1L/分である。宿主細胞増殖に対するpH設定値は、7.0〜9.5であり得る。幾つかの実施形態において、pH設定値は、約7.0、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、7.7、7.8、7.9、8.0、8.1、8.2、8.3、8.4、8.5、8.6、8.7、8.8、8.9、9.0、9.1、9.2、9.3、9.4、又は9.5である。宿主細胞増殖の間の温度は、約25℃〜35℃であり得る。幾つかの実施形態において、温度は、約25.0℃、25.1℃、25.2℃、25.3℃、25.4℃、25.5℃、25.6℃、25.7℃、25.8℃、25.9℃、26.0℃、26.1℃、26.2℃、26.3℃、26.5℃、26.6℃、26.7℃、26.8℃、26.9℃、27.0℃、27.1℃、27.2℃、27.3℃、27.5℃、27.6℃、27.7℃、27.8℃、27.9℃、28.2℃、28.2℃、28.3℃、28.5℃、28.6℃、28.7℃、28.8℃、28.9℃、29.0℃、29.1℃、29.2℃、29.3℃、29.5℃、29.6℃、29.7℃、29.8℃、29.9℃、30.0℃、30.1℃、30.2℃、30.3℃、30.4℃、30.5℃、30.6℃、30.7℃、30.8℃、30.9℃、31.0℃、31.1℃、31.2℃、31.3℃、31.4℃、31.5℃、31.6℃、31.7℃、31.8℃、31.9℃、32.0℃、32.1℃、32.2℃、32.3℃、32.4℃、32.5℃、32.6℃、32.7℃、32.8℃、32.9℃、33.0℃、33.1℃、33.2℃、33.3℃、33.4℃、33.5℃、33.6℃、33.7℃、33.8℃、33.9℃、34.0℃、34.1℃、34.2℃、34.3℃、34.4℃、34.5℃、34.6℃、34.7℃、34.8℃、34.9℃又は35.0℃である。
【0052】
以下の実施例は例示目的であって、限定目的ではない。
【実施例】
【0053】
(実施例1)
形質転換ベクターpMotaの作製
本実施例により、形質転換ベクターpMotaの調製について説明する。
【0054】
pLOI295由来のpdc/adhIIカセットを増幅するため、並びに5’末端及び3’末端においてそれぞれNdeI部位及びBamHI部位を同時導入するためにPCRを使用した。そして、これらの部位によって、NdeI/BamHIの二重分解によるaphX/sacB選別カセットの除去から生じる、pPSBAIIKSプラスミド骨格へのpdc/adhIIのサブクローニングが可能となり、pMotaが得られる。以下のプライマーを上記PCR反応に使用した(制限部位を下線で示し、誘導された変異を太字で示す:上流:5’−ggAgTAAgCATATgAgTTATACTg−3’(配列番号10) 下流:5’−ggATCTCgACTCTAgAggATCC−3’(配列番号11)。PCRは以下の通り実施した:合計反応容量50μl、鋳型としてのpLOI295 0.36μg、VentR(登録商標)ポリメラーゼ4単位、最終濃度0.5μMの各プライマー、300μMの各dNTP。反応をEppendorf(登録商標)Mastercycler(登録商標)の以下のプログラムで実施した:初期変性(94℃、2分間)、その後の35サイクルの変性(94℃、10秒間)、アニーリング(47℃、1分間)、及び伸長(68℃、3.7分間)を行い、最終的に4℃で保持した。
【0055】
すべてのプラスミド/PCR産物クリーンアップキット及びTaq DNAポリメラーゼはQiagen(登録商標)から入手した。すべての制限酵素、VentR(登録商標)ポリメラーゼ及びT4 DNAリガーゼはNew England Biolabs(登録商標)から入手した。プラスミドPSBAIIKSはアリゾナ州立大学のWim F. J. Varmaasから入手した。Z.mobilisのpdc遺伝子及びadhII遺伝子を含有するプラスミドLOI29
5はフロリダ大学のLonnie O. Ingramから入手した。
【0056】
(実施例2)
安定なエタノール生産のための形質転換及びスクリーニング
本実施例により、エタノール生産のための安定なシアノバクテリア株の構築について説明する。
【0057】
pMota(上記実施例1を参照)の作製後、Synechocystis sp. PCC 6803の野生型及びNDH−2(−)変異株の両方を、Williams(1988)により記載されたプロトコルによって、pPSBAIIKS及びpMotaで逐次的に形質転換及びスクリーニングした。pPSBAIIKSによる形質転換後、カナマイシン濃度を増加させた連続的な再平板培養により、PCR系アッセイによって立証されるように、aphX/sacB選別カセットに関して完全に分離された、WT[r]株及びNDH−2(−)[r]株の単離が可能となる。これらを順に、50μg・ml-1のカナマイシン存在下、液体種培養で増殖させ、引き続きpMotaで形質転換した。
【0058】
5%スクロースを含有するBG−11プレート上で形質転換体をスクリーニングした。スクリーニングは、psbAII遺伝子座のプロービングに使用される初期のPCR系アッセイ、及び最終的に選択圧が存在しない場合のエタノール生成の安定性決定のための種リアクタ系アッセイの両方と結び付く、単一のコロニーの連続した線条接種によって実施された。PCRアッセイは、(1)野生型(WT)psbAII遺伝子、(2)aphX/sacB選別カセット、及び(3)pdc/adhIIエタノール経路カセットの存在をプロービングする、1サンプル当たり3つのPCR反応から成る。PCRアッセイを含む3つの反応のそれぞれは、psbAII遺伝子座の外側に存在する共通の上流プライマーを共有した一方、各反応は3つの考えられる遺伝子構築物それぞれに特異的な下流プライマーによって規定される。3つの反応すべてにおいて使用される上流プライマーは、psbAII開始コドンの48bp上流を始めとする単位複製配列を有する、5’−gTCAgTTCCAATCTgAACATCGA−3’(配列番号12)であった。野生型(WT)psbAII遺伝子をプロービングするための下流プライマーは、5’−AATTTgTAACCgTAgTTCTgggAT−3’(配列番号13)であり、得られる単位複製配列は749bpである。aphX/sacB選別カセットをプロービングするために、下流プライマー:5’−TTggTgATTTTgAACTTTTgCTTgC−3’(配列番号14)を使用して、3.1kbの単位複製配列を生じさせた。pdc/adhIIカセットをプロービングするための下流プライマー:5’−TTgCAAgCgATTTCgAgATAAA−3’(配列番号15)を使用して、554bpの単位複製配列を生じさせた。すべてのPCR反応は、Qiagen(登録商標)のTaqポリメラーゼハンドブックの長いPCR産物(long PCR products)の項に記載の通り設定され、任意の信頼性の高いポリメラーゼを除外することによってのみ変更された。PCRアッセイは以下のサイクルプログラムを利用した:初期変性(94℃、3分間)、その後の35サイクルの変性(94℃、10秒間)、アニーリング(48℃、1分間)、及び伸長(68℃、3.5分間)を行い、最後に伸長(68℃、3分間)し、4℃で保持した。
【0059】
所定のシアノバクテリアサンプルに対してPCRアッセイを実施するために、Whatman(登録商標)ブランドのFTA(登録商標)カードを、上記PCR反応における鋳型として使用するためのゲノムDNAの迅速な調製に使用した。液体培養物を試験するために、5μlをFTA(登録商標)カード上にスポットした。固体培地上に線条接種された培養物を試験するために、複数のコロニーをプレートから取り出し、1.5mlチューブの内側に線条接種し、BG−11 10μl中、ボルテクスによって再懸濁した。その後5μlを上記のようにFTA(登録商標)カード上にスポットした。細菌源由来の保存DNAを調製するためのFTA(登録商標)プロトコルはPCRアッセイのための鋳型調
製に従った。
【0060】
第1の種リアクタ系アッセイを使用して、安定なエタノール生産のためのエタノールカセットに対して完全に分離されることが示されたコロニーをスクリーニングした。種リアクタに、所定の分離株プレート由来の複数のコロニーを接種した。細胞をOD730が0.1よりも大きくなるまで増殖させ、室温で3220×g、6分間遠心し、初期OD730=0.025の新たな種リアクタ内で再懸濁した。これにより、一連の5回の稼動における最初の実験のリアクタが構成された。リアクタを5日間稼動した時点で細胞を遠心によって再度回収し、上記OD730=0.025のリアクタと連続する第2の実験のリアクタに接種するために使用した。もちろん、合計の細胞バイオマスのサブセットのみを本連続接種に使用した一方、残りは廃棄するか、グリセロールをストックした。特別な稼動をする日ごとに、OD730を記録し、550μlずつエタノール濃度アッセイ用に採取した(「前」分取)。その後、細胞を(上記のような)遠心による回収によって洗浄し、上清を廃棄した。新たなBG−11 25ml中でペレット全体をボルテクスすることによって再懸濁し、種リアクタに戻した。OD730を再度記録し、別の一部をエタノール濃度アッセイ用に採取した(いわゆる「後」分取)。安定なエタノール生産分離株を分離した後、最後に完全に確認するためにPCR系アッセイを適用した。
【0061】
野生型(WT)Synechocystis sp.株PCC 6803及び任意の機能的なNADH酸化II型デヒドロゲナーゼを欠損するNDH−2(−)変異体はアリゾナ州立大学Wim F. J. Vermaasから入手した。C600 E.coliはハワイ大学マノア校在籍中にMonto Kumagai研究室から入手した。
【0062】
E.coliを液体培地及び固体培地の両方において標準的なLB処方で培養した。アンピシリン及びカナマイシンをそれぞれ100μg・ml-1及び50μg・ml-1の濃度でLB培地プレートに補充した。
【0063】
すべてのSynechocystis sp. PCC 6803を、5mMグルコース、5%スクロース及び/又は5μg・ml-1、25μg・ml-1若しくは50μg・ml-1のいずれかのカナマイシンを(最終濃度で)添加した又は添加しない標準的なBG−11培地プレート上で培養した。Synechocystis sp. PCC 6803を含有するプレートを30℃、約100マイクロアインシュタイン・m-2・s-1下でインキュベートした。すべてのSynechocystisの液体培養物を、適切な場合に50μg・ml-1のカナマイシンを添加した標準的なBG−11において増殖させた。
【0064】
(実施例3)
回分増殖実験
本実施例により、生産性及び安定性を検討するための回分増殖実験について説明する。
【0065】
平行回分培養システム(6つの100mLバイオリアクタ)を確立して、開発されたエタノールを生産するSynechocystisを増殖させた。標準的なBG−11液体培地をすべての実験に使用した。攪拌を400rpmに設定した。照度はバイオリアクタの殆どの側面に対して200マイクロアインシュタインであった。圧縮空気をスパージして、CO2を提供すると共に、Synechocystisにより生産される酸素を除去した。半回分作動モード(Semi batch operation mode)をエタノール生産の試験に使用した。合計の細胞増殖期間は20日であった。種培養はプレートから開始した。種培養由来の対数増殖期の細胞をOD730=0.025のリアクタ内に接種した。回分培養を約4日間実施した後、終結した。細胞を遠心によって遠心沈殿させ、換算容積で再懸濁し、新たな培地を有するバイオリアクタに接種するために一部を使用した。
【0066】
(実施例4)
エタノール濃度アッセイ
本実施例により、液体培養物中のエタノール濃度の決定について説明する。
【0067】
液体培養物のエタノール濃度の決定では、培養物を550μlずつ採取し、12100×gで5分間遠心沈殿させ、上清500μl(又は他の適切な容量)を新たな1.5mlチューブに入れ、アッセイを実施するまで−20℃で保存した。分光光度計の直線範囲及びエタノールアッセイの感度を考慮して、サンプルの希釈(20倍まで)が必要となることもあった。この場合、適切な容量のBG−11を最初に新たな1.5mlチューブに添加し、このチューブに必要な容量の清澄な上清を添加した。本溶液をエタノールアッセイにおいて直接使用した。−20℃から取り出してアッセイを実施する直前に、サンプルを再度12100×gで5分間遠心沈殿させるが、これはサンプルの解凍にも役立つ。
【0068】
Boehringer Mannheim/r−biopharm(登録商標)の酵素によるエタノール検出キットをエタノール濃度決定に使用した。簡単には、本アッセイは、エタノールの添加時にNAD+からNADHへの変換を引き起こす、NAD+補因子のリン酸緩衝溶液におけるアルコールデヒドロゲナーゼ(ADH)及びアセトアルデヒドデヒドロゲナーゼの作用を活用する。NADHの濃度を340nmでの吸光度(A340)によって求め、その後エタノール濃度を求めるのに使用する。アッセイを指示書で定められた通りに実施したが、以下の変更形態を用いた。指示書の項目4で定められたように、感度を最大化するために、最大サンプル容量(v=0.5ml)をアッセイに使用した。最終的に、アッセイにおけるすべての容量(上記v=0.5mlを含む)を4等分した。これにより、繰返しが必要な場合に、試薬の保存、及びサンプル分取量の大部分を保管することが可能となった。したがって、反応混合物2;0.75ml中、使用されるサンプル容量は実際は、v=0.125mlであり、(ADH)懸濁液3;12.5μlが後に添加された。この減少した容量の保存比率は、実施されるアッセイに対しての効果を全く有しないように求められた。BG−11をブランクとして使用した。
【0069】
(実施例5)
独立栄養性フォトバイオリアクタ発酵
本実施例により、独立栄養性フォトバイオリアクタ発酵を使用するエタノールの生産について説明する。
【0070】
液体種培養物を、振とう培養機(Innova 4230卓上型、New Brunswick)内で、種リアクタ側面上で最大表面光束約200マイクロアインシュタイン・m-2・s-1を保有する光を用いて、24℃で増殖させ、磁気攪拌子によって攪拌し、約0.5L/分の速度で圧縮空気をスパージした。第1の種培養は、スパージチューブ及び排気チューブとして機能する2本のパスツールピペットを備えた、標準的な100mlのPyrex(商標)メディウム瓶における合計容量25mlから成った。スパージチューブの上流はWhatman(登録商標)PFTE 0.1μmフィルタであり、排気チューブはアルミニウム箔で軽く蓋された。フォトバイオリアクタ接種に使用される第2の種培養は、標準的な1LのPyrex(商標)メディウム瓶で増殖される培養容量が300mlであること、スパージピペットをレベルC孔度の拡散体(孔径25〜50μm、Ace Glass Inc.製)で置換したこと以外は第1の種培養と同一であった。使用された光は40Wの白色蛍光灯であった。液体培養における細胞増殖をThermoSpectronic(登録商標)Genesys(登録商標)10−S分光光度計を使用して730nmでの吸光度(OD730)を求めることによってチェックした。Plastibrand(登録商標)Ultra Vette(登録商標)1.5ml使い捨てキュベットを使用した。
【0071】
第1の種リアクタ由来の対数増殖期の種培養物を使用して第2の種リアクタを接種し、
その後OD73O>0.31まで増殖させ、独立栄養性フォトバイオリアクタの接種にすぐに使用した。接種では、OD730を計測し、初期のバイオリアクタOD73O=0.02に必要な種培養容量の決定に使用した(合計発酵容量は3.1Lであった)。この決定された容量の種培養由来の細胞を遠心によって回収し、新たなBG−11 50ml中でボルテクスによって再懸濁した。バイオリアクタにこの種50mlを接種した後、さらなる50mlのBG−11を接種チューブの洗い流しに使用した。
【0072】
7.5LのBIOFLO(登録商標)110バイオリアクタシステム(New Brunswick Scientific, Edison, NJ)を実験に使用した。7.5LのBIOFLO(登録商標)110バイオリアクタシステムは、温度、pH及び溶存酸素濃度(DO)調整用の制御器を含む。Synechocystisの培養プロセスを、インタフェースボードPCI−MIO−16E−10(National Instruments Corp., Austin, TX)を搭載したPentium(登録商標)II(233MHz、Windows 98)コンピュータによって自動的に監視、制御した。データ収集プログラムはLabVIEW7.1(National Instruments Corp., Austin, TX)で記述された。pH、攪拌、温度及びDOを含む、BIOFLO(登録商標)110バイオリアクタシステムからのデータを、コンピュータのインタフェースボードを通じて収集した。6個のGeneral Electric(登録商標)26W、F26DBX/SPX41/4P電球を、リアクタ側面上に最大表面光束約1000マイクロアインシュタイン・m-2・s-1を与えるようにリアクタ周辺に配置した。リアクタを照明装置周辺の外部ファンの循環空気によって発酵期間中27〜29℃に維持した。リアクタに1L/分の速度で空気をスパージし、CO2を投入することによってpHを設定値8.5に制御し、攪拌タービンを300rpmに設定した。排気ポート上のコンデンサを熱循環水浴(thermo circulating water bath)(C10−K20, Haake, Berlin, Germany)によって8℃に冷却した。発酵を8時間ごとにサンプリングしながら8日間維持した。サンプリングでは、約15mlをリアクタからサンプリングポートを介して抜き取り(回収する下チューブを掃除するため)、廃棄し、再度約15mlずつサンプルを抜き取った。サンプルごとにOD730を記録し、一部をエタノール濃度アッセイ用に採取した。112時間の発酵後にエタノール濃度は12mMであった(図2)。5日間の発酵後に、エタノール濃度は13mMに到達した(図2)。
【0073】
ここで、本明細書中に記載の方法、手順、及び装置は好ましい実施形態の代表であり、例示であって、本発明の範囲に対する限定を意図するものではない。本発明の精神に包含され、開示の範囲によって規定される、そこでの変更及び他の用途が当業者には思い浮かぶだろう。本明細書及び特許請求の範囲において使用される、成分、反応条件等の量を表現するすべての数字は、「約」という用語によってすべての例において変更されるものと理解されるべきである。したがって、逆のことを示唆しない限り、本明細書及び添付の特許請求の範囲に記載される数値パラメータは、本発明によって得られるように求められる所望の性質に応じて変化し得る近似値である。最低でも、特許請求の範囲の均等物である原理の適用が制限されないように、各数値パラメータは、有効桁及び通常の四捨五入手法の数字を考慮して解釈されるべきである。
【0074】
本発明の範囲及び精神を逸脱しない限り、本明細書中に開示された本発明には各種置換形態及び変更形態が作製され得ることが当業者には明らかであろう。
【0075】
当業者には、本明細書中に記載の本発明の態様及び実施形態が互いに別個に、又は互いに関連して実施され得ることが認識される。したがって、別個の実施形態の組合せは本明細書中に開示される本発明の範囲内である。
【0076】
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【0089】
Howitt他(1999)著「シアノバクテリアSynechocystis sp.株PCC
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【0090】
すべての特許及び出版物は、各個々の出版物が参照により援用されることが具体的に且つ個別に示唆されたのと同程度、その全体が参照により本明細書中に援用される。
【0091】
本明細書中に例示的に記載された本発明は、本明細書中に具体的には開示されていない任意の要素(複数可)、限定(複数可)の非存在下、好適に実施され得る。採用された用語及び表現は、説明の用語として使用され、限定の用語としては使用されない。かかる用語及び表現の使用においては、示され、記載された特徴又はそれらの部分の等価物の除外を示唆する意図は全くない。各種変更形態が開示された本発明の範囲内で可能なことが認識される。したがって、本発明は好ましい実施形態及び最適な特徴によって具体的に開示されているが、本明細書中に開示された概念の変更形態及び変形形態が当業者によって頼りにされ得ること、及びかかる変更形態及び変形形態が開示によって規定される本発明の範囲内であると考えられることは理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】pMotaの作製に使用される、プラスミド構築物(a)pPSBAIIKS及び(b)pLOI295を示す遺伝子地図である。
【図2】BIOFLO(登録商標)リアクタにおけるエタノールの濃度対時間を示す図である。5日間の発酵後にエタノール濃度は13mMに到達した。対照は非形質転換(野生型)Synechocystisである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光応答性プロモーター、ピルビン酸デカルボキシラーゼ(pdc)酵素をコードする配列、及びアルコールデヒドロゲナーゼ(adh)酵素をコードする配列を含む核酸構築物。
【請求項2】
前記光応答性プロモータが前記psbAIIプロモータである、請求項1に記載の核酸構築物。
【請求項3】
pdc酵素及びadh酵素をコードする配列がZymomonas mobilisのプラスミドpLOI295から得られる、請求項1に記載の核酸構築物。
【請求項4】
pdc酵素をコードする配列がZymobacter palmaeから得られる、請求項1に記載の核酸構築物。
【請求項5】
pdc酵素をコードする配列がZymobacter palmaeから得られる、adh酵素をコードする配列がZymomonas mobilisから得られる、請求項1に記載の核酸構築物。
【請求項6】
adh酵素をコードする配列がZymomonas mobilisのプラスミドpLOI295から得られる、請求項1に記載の核酸構築物。
【請求項7】
pdc酵素をコードする配列が配列番号3、又はpdcをコードし、シアノバクテリアにおいて発現可能な遺伝子配列を含む、請求項1に記載の核酸構築物。
【請求項8】
adh酵素をコードする配列が配列番号4、又はadhをコードし、シアノバクテリアにおいて発現可能な遺伝子配列を含む、請求項1に記載の核酸構築物。
【請求項9】
pdc酵素をコードする配列が配列番号8で示されるアミノ酸配列をコードする核酸配列を含む、請求項1に記載の核酸構築物。
【請求項10】
請求項1に記載の核酸構築物を含む発現ベクター。
【請求項11】
請求項10に記載の発現ベクターを含む宿主細胞。
【請求項12】
前記発現ベクターが宿主細胞の染色体に組み込まれた、請求項11に記載の宿主細胞。
【請求項13】
前記発現ベクターがpMotaである、請求項11に記載の宿主細胞。
【請求項14】
前記細胞がシアノバクテリアである、請求項11に記載の宿主細胞。
【請求項15】
前記シアノバクテリアがSynechocystisである、請求項14に記載の宿主細胞。
【請求項16】
前記シアノバクテリアがSynechocystis sp. PCC 6803又は他の形質転換可能なSynechocystisの株である、請求項15に記載の宿主細胞。
【請求項17】
前記シアノバクテリアがSynechocystis sp. PCC 6803の野生型又はNDH−2(−)変異株である、請求項16に記載の宿主細胞。
【請求項18】
前記シアノバクテリアがSynechococcus PCC 7942又は他の形質転換可能なSynechococcusの株である、請求項14に記載の宿主細胞。
【請求項19】
前記宿主細胞がエタノールを生産することが可能であり、エタノールが露光期間後、比較的定量化可能な量で生産される、請求項14に記載の宿主細胞。
【請求項20】
前記宿主細胞が、5日間の発酵後に約10mMよりも多い回収可能な量でエタノールを生産可能である、請求項19に記載の宿主細胞。
【請求項21】
前記宿主細胞が、5日間の発酵後に約13mMよりも多い回収可能な量でエタノールを生産可能である、請求項19に記載の宿主細胞。
【請求項22】
ピルビン酸デカルボキシラーゼ(pdc)酵素及びアルコールデヒドロゲナーゼ(adh)酵素をコードする核酸配列を含む構築物を含む遺伝子操作されたシアノバクテリアであって、5日間の発酵後に約10mMよりも多い回収可能な量でエタノールを生産可能である、遺伝子操作されたシアノバクテリア。
【請求項23】
pdc酵素及びadh酵素をコードする核酸配列がZymomonas mobilisのプラスミドpLOI295から得られる、請求項22に記載のシアノバクテリア。
【請求項24】
pdc酵素をコードする核酸配列がZymobacter palmaeから得られる、請求項22に記載のシアノバクテリア。
【請求項25】
pdc酵素をコードする核酸配列がZymobacter palmaeから得られ、adh酵素をコードする核酸配列がZymomonas mobilisから得られる、請求項22に記載のシアノバクテリア。
【請求項26】
adh酵素をコードする核酸配列がZymomonas mobilisのプラスミドpLOI295から得られる、請求項25に記載のシアノバクテリア。
【請求項27】
前記シアノバクテリアがSynechocystisである、請求項22に記載のシアノバクテリア。
【請求項28】
前記シアノバクテリアがSynechocystis sp. PCC 6803又は他の形質転換可能なSynechocystisの株である、請求項27に記載のシアノバクテリア。
【請求項29】
前記Synechocystis sp. PCC 6803が野生型又はNDH−2(−)変異Synechocystis sp. PCC 6803株である、請求項28に記載のシアノバクテリア。
【請求項30】
前記pdc酵素をコードする核酸配列が配列番号3、又はpdcをコードし、シアノバクテリアにおいて発現可能な遺伝子配列を含む、請求項22に記載のシアノバクテリア。
【請求項31】
前記核酸配列が配列番号8を含むpdc酵素をコードする配列である、請求項22に記載のシアノバクテリア。
【請求項32】
前記adh酵素をコードする核酸配列が配列番号4を含む、請求項22に記載のシアノバクテリア。
【請求項33】
前記構築物が光誘導性遺伝子を含有する、請求項22に記載のシアノバクテリア。
【請求項34】
前記構築物がpsbAIIプロモータを含有する、請求項22に記載のシアノバクテリア。
【請求項35】
前記構築物がpMotaである、請求項22に記載のシアノバクテリア。
【請求項36】
エタノールを生産する方法であって、Zymomonas mobilisのpL0I295プラスミドから得られるpdc酵素及びadh酵素をコードするDNA断片を含む構築物を含有するシアノバクテリアを培養培地中で培養すること、並びに5日間の発酵後に約10mMよりも多い量で培養培地中にエタノールを蓄積することを含む方法。
【請求項37】
前記シアノバクテリアが5日間の発酵後に約13mMの回収可能な量でエタノールを生産可能である、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記培養培地の前記エタノール濃度が約5日間の培養後に少なくとも約5mMである、請求項36に記載の方法。
【請求項39】
前記培養培地の前記エタノール濃度が約5日間の培養後に少なくとも約13mMである、請求項36に記載の方法。
【請求項40】
前記シアノバクテリアがSynechocystisであり、前記構築物がpMotaである、請求項36に記載の方法。
【請求項41】
前記構築物が光応答性遺伝子を含むDNA断片をさらに含む、請求項36に記載の方法。
【請求項42】
前記構築物が前記シアノバクテリアの染色体に組み込まれた、請求項36に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2009−523424(P2009−523424A)
【公表日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−550460(P2008−550460)
【出願日】平成19年1月16日(2007.1.16)
【国際出願番号】PCT/US2007/001071
【国際公開番号】WO2007/084477
【国際公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.WINDOWS
【出願人】(508158355)ユニバーシティ オブ ハワイ (3)
【Fターム(参考)】