説明

エタノール配合ガソリンの製造方法

【課題】相溶剤を使用せずに、ガソリンの性状を調整することでガソリン層と水層への相分離を抑制でき、また、相分離した場合でも、ガソリン車の適正な運転性が確保できるエタノール配合ガソリンを提供する。
【解決手段】 エタノール含有量が10容量%以上15容量%以下、芳香族含有量が15容量%以上40容量%以下、オレフィン含有量が5容量%以上30容量%以下、水分量が0.01容量%以上0.9容量%以下、50容量%留出温度が84〜110℃であり、かつ、リサーチ法オクタン価が89以上97未満、曇り点が0℃以下で、式(I)
T=1.6×103×(Wa)0.33×(Et)-0.46×(Ar)-0.07×(Ol)-0.07・・・・(I)
[式中、Waは水分量、Etはエタノール含有量、Arは芳香族含有量、Olはオレフィン含有量を示し、いずれも該エタノール配合ガソリン全量に対する量(容量%)である]で表される相分離指数Tが273以下であることを特徴とするエタノール配合ガソリンの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエタノール配合ガソリンの製造方法に関し、詳しくは、ガソリン層と水層との相分離を抑制でき、相分離した場合でもガソリン車の運転性能を適切に保つことができるエタノール配合ガソリンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の性能を高めながら、その環境負荷を軽減することは社会的要請であり、近年のガソリンエンジン用燃料油には、排気ガスの低減や優れた運転特性を発揮するための性状が求められている。例えば、軽質で高オクタン価の含酸素基材であるメチルターシャリーブチルエーテル(MTBE)を配合することにより、排気ガス中の一酸化炭素(CO)、炭化水素(THC)が低減でき、低温運転性にも優れたガソリンの生産・販売が行われていた(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、MTBEの環境面への影響が懸念され、現在は日本国内でのMTBEを配合したガソリンの生産・販売が自制されている。MTBEはオクタン価が高い基材であるために、MTBEの配合を中止する場合には、それに代わる高いオクタン価基材が必要とされている。その中で、ガソリンのオクタン価低下を補い、また環境負荷が低いと考えられる、MTBE以外の含酸素有機化合物が新しいガソリン基材として注目されている。中でも、エタノールは、オクタン価も高く、芳香族分やオレフィン分を含まず、バイオマスとして考える場合には再生可能燃料としてとらえることが出来るといった利点を有している。
【0003】
しかし、エタノールは親水性が高いため、エタノールを含有したガソリンは周囲の水分を取り込み易く、含水量が所定量以上になると、条件によってはガソリン層と水層とに分離してエタノールが水層に取り込まれてしまう。その結果、ガソリンの性状がエタノールを含有することを前提として期待されたものと異なるようになり、ガソリン車の適切な運転性能が得られなくなるおそれがある。このようなガソリン層と水層との相分離を改良するために、特定の含酸素化合物を相溶剤として用いることが知られている(例えば、特許文献2及び3参照)。しかし、これらの効果は十分ではなく、更なる改善が望まれている。
【0004】
また、ガソリン層と水層とに相分離する温度は、エタノール含有量、水分量、ガソリン中の芳香族含有量に影響されることが報告されている(例えば、非特許文献1参照)。しかし、この報告に記載されている因子を用いても、相分離を引き起こす原因が十分に解析されていないため、エタノール配合ガソリンが相分離する温度を十分に予測することが困難であり、有効性の確保には更なる改善が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公平5-53197号公報
【特許文献2】米国特許第4207076号明細書
【特許文献3】特表2003−520891号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】K. Owen and T. Coley, Automotive Fuels Reference Book, 2nd Ed., p.277 (1995)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような状況下で、相溶剤を使用せずに、ガソリンの性状を調整することでガソリン層と水層との相分離を抑制でき、また、相分離した場合でも、ガソリン車の適正な運転性が確保できるエタノール配合ガソリンの製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、エタノール配合ガソリンについて鋭意検討した結果、エタノール配合ガソリン中のエタノール量、水分量、芳香族量、オレフィン量が特定の範囲にあり、特定の関数で表される相分離指数を満足し、且つ、曇り点試験機により求める曇り点が特定の範囲に存在する場合に、相溶剤を使用せずに、ガソリン層と水層との相分離を抑制でき、また相分離した場合でもガソリン車の適正な運転性が確保できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、上記目的を達成するために、次のエタノール配合ガソリンの製造方法を提供するものである。
エタノール含有量が10容量%以上15容量%以下、芳香族含有量が15容量%以上40容量%以下、オレフィン含有量が5容量%以上30容量%以下、水分量が0.01容量%以上0.9容量%以下、50容量%留出温度が84〜110℃であり、かつ、リサーチ法オクタン価が89以上97未満、曇り点が0℃以下で、式(I)
T=1.6×103×(Wa)0.33×(Et)-0.46×(Ar)-0.07×(Ol)-0.07・・・・(I)
[式中、Waは水分量、Etはエタノール含有量、Arは芳香族含有量、Olはオレフィン含有量を示し、いずれも該エタノール配合ガソリン全量に対する量(容量%)である]で表される相分離指数Tが273以下であることを特徴とするエタノール配合ガソリンの製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明の製造方法により製造されるエタノール配合ガソリン(以下、本発明のエタノール配合ガソリンともいう)によれば、ガソリン層と水層との相分離を抑制でき、また、相分離した場合であっても、ガソリン車の適正な運転性が確保できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の内容を更に詳しく説明する。尚、本明細書において、各成分の含有量は、エタノール配合ガソリン全量に対する値である。
【0012】
本発明のエタノール配合ガソリンに用いられるエタノールは、純度が92.0容量%以上であって、好ましくは95.0容量%以上、更に好ましくは99.5容量%以上である。
エタノールの製造方法は特に限定されるものではなく、一般的に製造される全てのエタノールが使用可能である。
エタノールの含有量は、エタノール配合ガソリン全量に対し1容量%以上15容量%以下の範囲にあり、好ましくは2容量%以上12容量%以下、更に好ましくは3容量%以上10容量%以下である。1容量%以上であれば、エタノール配合によるオクタン価向上の利点が得られ、15容量%以下とすることで他のガソリン基材との共沸現象により蒸発特性が著しく変化することがなく、ガソリン自動車の適正な運転性が確保できる。
【0013】
本発明のエタノール配合ガソリンにおいて、水分量は0.01容量以上0.9容量%以下、好ましくは0.01容量%以上0.7容量%以下である。水分量の下限はガソリン基材の飽和水分量やエタノール中の水分量に依存するものであるが、実質的に0.01容量%程度である。上限は0.9容量%以下であれば、相分離を防止することができ、相分離した場合であっても、ガソリン層によってガソリンエンジンの適正な運転が可能となる。
水分量は、JIS K2275に記載の“原油及び石油製品−水分試験方法”により測定することができ、例えばカールフィッシャー式電量滴定法を用いることができる。
【0014】
本発明のエタノール配合ガソリンにおいて、芳香族含有量は15容量%以上40容量%以下、好ましくは15容量%以上35容量%以下である。芳香族含有量が15容量%以上ならば、相分離を防止することができ、相分離した場合であっても、ガソリン層によってガソリンエンジンの適正な運転が可能となる。芳香族含有量が40容量%以下であれば、ガソリンエンジン排出ガスの増加を防止することができる。
【0015】
本発明のエタノール配合ガソリンにおいて、オレフィン含有量は5容量%以上30容量%以下、好ましくは10以上28以下である。オレフィン含有量が5容量%以上ならば、相分離を防止でき、相分離した場合であっても、ガソリン層によってガソリンエンジンの適正な運転が可能となる。オレフィン含有量が30容量%以下ならば、ガソリンエンジン排出ガスの増加を防止することができると共に安定性を維持することができる。
【0016】
芳香族含有量及びオレフィン含有量は、JIS K 2536-2 石油製品−成分試験方法 第2部:ガスクロマトグラフによる全成分の求め方により測定できる。
【0017】
また、本発明のエタノール配合ガソリンは、リサーチ法オクタン価が89以上97未満、好ましくは89〜96である。リサーチ法オクタン価は、JIS K 2280の石油製品 燃料油 オクタン価及びセタン価試験方法並びにセタン指数算出方法により測定できる。
【0018】
本発明のエタノール配合ガソリンは、曇り点が0℃以下、好ましくは−2℃以下である。曇り点が0℃以下ならば相分離を防止でき、相分離した場合であっても、ガソリン層によってガソリンエンジンの適正な運転が可能となる。曇り点は、JIS K 2269の原油及び石油製品の流動点並びに石油製品曇り点試験方法により測定できる。
【0019】
更に、本発明のエタノール配合ガソリンは、以下の式(I)で表される相分離指数Tが273以下、好ましくは270以下である。
T=1.6×103×(Wa)0.33×(Et)-0.46×(Ar)-0.07×(Ol)-0.07 ・・・・・(I)
尚、式中、Waは水分量、Etはエタノール含有量、Arは芳香族含有量、Olはオレフィン含有量である。
相分離指数Tが273以下であれば、相分離を防止でき、相分離した場合であっても、ガソリン層によってガソリンエンジンの適正な運転が可能となる。式(1)から理解されるように、エタノール含有量、芳香族含有量及びオレフィン含有量が多く、かつ水分量が少ない場合には相分離指数Tが小さくなり、相分離しにくいエタノール配合ガソリンとなる。
【0020】
本発明のエタノール配合ガソリンにおけるその他の成分については、硫黄分が10ppm以下、好ましくは9ppm以下であることが望ましい。硫黄分が10ppm以下であれば、排ガス後処理装置の性能を十分発揮でき、排出ガスを低減できるため好ましい。ガソリン中の硫黄分は、JIS K 2541「原油及び石油製品−硫黄分試験法」により測定できる。
【0021】
また、本発明のエタノール配合ガソリンは、密度が0.680〜0.783g/cm3、好ましくは0.690〜0.783g/cm3であることが望ましい。ガソリンの密度が0.680g/cm3以上ならば良好な燃費を確保でき好ましく、0.783g/cm3以下であれば排出ガスを低減でき好ましい。ガソリンの密度は、JIS K 2249「原油及び石油製品の密度試験方法並びに密度・質量・容量換算表」により測定できる。
【0022】
本発明のエタノール配合ガソリンの蒸留性状は、50容量%留出温度(T50)が75〜110℃、好ましくは80〜105℃、90容量%留出温度(T90)が180℃以下、好ましくは175℃以下、終点が220℃以下、好ましくは210℃以下であることが望ましい。T50が75℃以上ならば良好な燃費を確保でき好ましく、110℃以下ならば良好な常温運転性が可能であり好ましい。T90が180℃以下ならば排出ガス悪化の防止ができ好ましい。終点が220℃以下ならばエンジン内部のデポジットを抑制でき好ましい。ガソリンの蒸留性状は、JIS K 2254「石油製品−蒸留試験方法」により測定できる。
【0023】
本発明のエタノール配合ガソリンは、リード蒸気圧(RVP)が44〜93kPaであり、好ましくは50〜85kPaであることが望ましい。RVPがこの範囲にあれば蒸発ガスの抑制や適切な運転が可能であり好ましい。ガソリンのRVPは、ASTM D4953に記載されている方法〔Standard Test Method for Vapor Pressure of Gasoline and Gasoline-Oxygenate Blends(Dry Method)〕により測定できる。なお、この試験法による測定結果とJIS Z 8402の規定により有意差がないと確認できる場合、自動蒸気圧試験器を用いることもできる。
【0024】
本発明のエタノール配合ガソリンは、エタノールを必須とするほか、最終的に得られるエタノール配合ガソリンが本発明で規定する組成及び性状を有するように、一種又は二種以上の従来から使用されているガソリン基材を混合して調製できる。
本発明で用いるガソリン基材としては、原油を常圧蒸留して得られる軽質ナフサ、好ましくはそれを脱硫した脱硫軽質ナフサ、重質ナフサを脱硫後、接触改質して得られる接触改質ガソリン、及びそれを脱ベンゼン処理した脱ベンゼン接触改質ガソリン、脱ベンゼン軽質接触改質ガソリン、脱ベンゼン重質接触改質ガソリン、及びそれらを混合したもの、接触分解や水素化分解法などで得られる分解ガソリン、軽質分解ガソリン、重質分解ガソリン、及びそれらを混合したもの、軽質ナフサを異性化して得られる異性化ガソリン、イソブタンなどの炭化水素に低級オレフィンを付加することにより得られるアルキレート、原油の常圧蒸留時、改質ガソリン製造時、又は分解ガソリン製造時等に蒸留して得られるブタン、ブテン類を主成分としたC4留分、ラフィネート、メタノールやプロパノール、ブタノールなどのアルコール類、MTBEやETBEなどのエーテル類などがあり、通常使用されるガソリン基材を任意に用いることができ、特に限定されない。
【0025】
また、本発明のエタノール配合ガソリンには、必要に応じて、各種の添加剤を適宜配合することができる。このような添加剤としては、チオアミド化合物などの金属不活性剤、有機リン系化合物などの表面着火防止剤、コハク酸イミド、ポリアルキルアミン、ポリイソブチレンアミン、ポリエーテルアミン、ポリイソブチレンアミンなどの清浄分散剤、多価アルコール及びそのエーテルなどの氷結防止剤、有機酸のアルカリ金属やアルカリ土類金属塩、高級アルコールの硫酸エステルなどの助燃剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性界面活性剤などの帯電防止剤、アルケニルコハク酸エステルなどの錆止め剤、及びアゾ染料などの着色剤など、公知の燃料添加剤が挙げられる。これらを一種又は複数種組み合わせて添加することができる。
【実施例】
【0026】
以下に本発明の内容を実施例及び比較例により更に詳しく説明するが、本発明はこれらによって制限されるものではない。
実施例及び比較例に示すエタノール配合ガソリンを調製するために使用したガソリン基材の性状を表1に示す。
【0027】
【表1】

【0028】
参考例1
脱硫軽質ナフサを15容量%、脱ベンゼン接触改質ガソリンを30容量%、流動接触分解ガソリンを45容量%、アルキレートを2容量%、C4留分を8容量%配合したレギュラーガソリン相当のベースガソリンに対し、純度99.5%以上の脱水エタノールを5容量%配合したエタノール配合ガソリンに、イオン交換水を0.14容量%添加し、サンプルを調製した。
【0029】
実施例2
脱硫軽質ナフサを15容量%、脱ベンゼン接触改質ガソリンを30容量%、流動接触分解ガソリンを45容量%、アルキレートを2容量%、C4留分を8容量%配合したレギュラーガソリン相当のベースガソリンに対し、純度99.5%以上の脱水エタノールを10容量%配合したエタノール配合ガソリンに、イオン交換水を0.35容量%添加し、サンプルを調製した。
【0030】
実施例3
脱硫軽質ナフサを15容量%、脱ベンゼン軽質接触改質ガソリンを1容量%、脱ベンゼン重質接触改質ガソリンAを24容量%、流動接触分解ガソリンを50容量%、純度99.5%以上の脱水エタノールを10容量%の割合で配合したエタノール配合ガソリンに、イオン交換水を0.40容量%添加し、サンプルを調製した。
【0031】
比較例1
脱硫軽質ナフサを15容量%、脱ベンゼン接触改質ガソリンを30容量%、流動接触分解ガソリンを45容量%、アルキレートを2容量%、C4留分を8容量%配合したレギュラーガソリン相当のベースガソリンに対し、純度99.5%以上の脱水エタノールを7容量%配合したエタノール配合ガソリンに、イオン交換水を0.27容量%添加し、サンプルを調製した。
【0032】
比較例2
脱硫軽質ナフサを15容量%、脱ベンゼン軽質接触改質ガソリンを1容量%、脱ベンゼン重質接触改質ガソリンAを24容量%、流動接触分解ガソリンを50容量%、純度99.5%以上の脱水エタノールを10容量%の割合で配合したエタノール配合ガソリンに、イオン交換水を0.45容量%添加し、サンプルを調製した。
【0033】
比較例3
脱硫軽質ナフサを15容量%、脱ベンゼン軽質接触改質ガソリンを1容量%、脱ベンゼン重質接触改質ガソリンAを24容量%、流動接触分解ガソリンを50容量%、純度99.5%以上の脱水エタノールを10容量%の割合で配合したエタノール配合ガソリンに、イオン交換水を1.0容量%添加し、サンプルを調製した。
【0034】
比較例4
脱硫軽質ナフサを10容量%、アルキレートを25容量%、流動接触分解ガソリンを55容量%、純度99.5%以上の脱水エタノールを10容量%の割合で配合したエタノール配合ガソリンに、イオン交換水を0.8容量%添加し、サンプルを調製した。
【0035】
比較例5
脱硫軽質ナフサを25容量%、アルキレートを10容量%、軽質流動接触分解ガソリンを5容量%、脱ベンゼン重質接触改質ガソリンBを50容量%、純度99.5%以上の脱水エタノールを10容量%の割合で配合したエタノール配合ガソリンに、イオン交換水を0.8容量%添加し、サンプルを調製した。
【0036】
参考例1、実施例2、実施例3および比較例1〜5におけるガソリン基材の使用割合を表2にまとめて示す。
【0037】
【表2】

【0038】
参考例1、実施例2、実施例3および比較例1〜5の各エタノール配合ガソリンについて、組成分析、オクタン価測定、曇り点測定を行った。更に、100ml遠心分離管に100mlサンプリングし、−10℃まで冷却して相分離の有無を確認した。相分離した場合については、水層量を計測した。結果を表3に示す。
また、それぞれのサンプルを100Lドラム管に充填し、−30℃まで冷却した。一晩放置した後、上澄みであるガソリン層をガソリン車に給油し以下の要領で運転性試験を実施した。
【0039】
運転性試験要領
試験車輌には、トヨタ カローラDX(エンジン:5E−FE、排気量1,496cc)を用いた。車輌をシャシダイナモ上に設置し、温度20±3℃、湿度50±5%の条件下で10時間放置したのち、エンジンを始動した。エンジン始動後、アクセル開度50%の条件で0−40km/hの加速を冷機条件から20回繰り返した。運転性の評価については、石油学会“2003年度運転性調査結果報告書”に記載の方法に準拠し、アイドリング期間中や加速中の運転性についてデメリット点数を評価した。ここで、デメリット点数は、20回の加減速時において発生した不具合について、以下に記す不具合の係数とデメリット評点の積の総和として求め、その現象の程度から運転性の優劣を決定した。デメリット現象としてはアイドル安定性、走行中における前後の振動、加速のもたつき、息つき、バックファイヤ、アイドル時エンジンストール、走行時エンジンストールを対象とし、その係数をそれぞれ1、4、6、6、6、8、32とした。また、現象の程度をテストドライバーでないと判別できない場合をデメリット評点1、平均的ドライバーが判別できる程度をデメリット評点2、どのドライバーでも指摘する程度をデメリット評点4とした。評価については、不具合が全く発生せずデメリット点数が0の場合を◎、デメリット点数が1〜20の場合を△、デメリット点数が21以上の場合を×として実施した。結果を表3に示す。
【0040】
表3から、エタノール含有量、水分量、芳香族含有量及びオレフィン含有量を本発明で規定する範囲とし、曇り点及び相分離指数Tを273以下とすることにより、相分離を抑制しやすく、かつ相分離したとしても水層量が少なく、適切なガソリン車の運転性を確保できることが分かる。
【0041】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
エタノール含有量が10容量%以上15容量%以下、芳香族含有量が15容量%以上40容量%以下、オレフィン含有量が5容量%以上30容量%以下、水分量が0.01容量%以上0.9容量%以下、50容量%留出温度が84〜110℃であり、かつ、リサーチ法オクタン価が89以上97未満、曇り点が0℃以下で、式(I)
T=1.6×103×(Wa)0.33×(Et)-0.46×(Ar)-0.07×(Ol)-0.07・・・・(I)
[式中、Waは水分量、Etはエタノール含有量、Arは芳香族含有量、Olはオレフィン含有量を示し、いずれも該エタノール配合ガソリン全量に対する量(容量%)である]で表される相分離指数Tが273以下であることを特徴とするエタノール配合ガソリンの製造方法。


【公開番号】特開2011−6699(P2011−6699A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−202922(P2010−202922)
【出願日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【分割の表示】特願2005−69051(P2005−69051)の分割
【原出願日】平成17年3月11日(2005.3.11)
【出願人】(000105567)コスモ石油株式会社 (443)
【Fターム(参考)】