説明

エチレン系樹脂被覆金属線及びその製造方法

【課題】金属芯線とエチレン系樹脂の強い接着性と共に、高度な耐環境応力亀裂性を有するエチレン系樹脂被覆金属線及びその製造方法を提供する。
【解決手段】金属芯線、接着剤層及びエチレン系樹脂層からなるエチレン系樹脂被覆金属線において、エチレン系樹脂(A)は、MFRが3〜35g/10分及び密度が0.95〜0.97g/cmの高密度ポリエチレン(A1)30〜55質量%、並びに多分散度(Mw/Mn)が3〜10、MFRが0.1〜35g/10分、密度が0.88〜0.94g/cm及びα−オレフィンの炭素数が6〜12の直鎖状低密度エチレン−α−オレフィン共重合体(A2)70〜45質量%からなり、かつ接着剤層を構成する接着剤(B)及びエチレン系樹脂(A)は、共押出成形法により金属芯線(C)上に形成被覆されていることを特徴とするエチレン系樹脂被覆金属線及びその製造方法等を提供した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属芯線とエチレン系樹脂の接着性と共に耐環境応力亀裂性を有するエチレン系樹脂被覆金属線及びその製造方法に関し、更に詳しくは、優れた接着性及び耐環境応力亀裂性を有し、同時に良好な耐摩耗性及び共押出成形性を備えたエチレン系樹脂被覆金属線及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、フェンス金網、生簀用金網、落石防護網等には、塩化ビニル被覆金属線が使用されていたが、環境付加や廃棄物処理の問題が指摘され、オレフィン系樹脂への置換が試みられている。しかしながら、オレフィン系樹脂は、接着性が金属芯線とは不十分で、亀裂や剥離が起こり、金属芯線に錆等の原因となり、問題であった。
【0003】
このため、例えば、特許文献1では、鉄芯線のメッキ層とその外側の樹脂層の間に、カルボキシル基を導入したポリオレフィンエマルジョンから形成された接着剤層の使用が提案されているが、これによるとこの接着剤層形成のために、一工程が必要となり、かつエマルジョンに配合されている溶媒の留去も行わねばならず、生産効率が低下し、これに加えて、これを採用しても鉄芯線と樹脂層の接着性は、充分なものではなかった。
【0004】
これを解決するために、特許文献2では、接着剤と外層オレフィン系樹脂層を共押出成形法により形成被覆し、強い接着性を持つオレフィン系樹脂被覆鉄線、及び効率良く製造できるその製造方法が開示されている。
オレフィン系樹脂に耐摩耗性を持たすためには、エチレン系樹脂においては、従来から密度が0.94g/cm以上のいわゆる高密度ポリエチレンが使用されてきた。しかしながら、高密度ポリエチレンは、耐環境応力亀裂性が非常に悪く、これを被覆した被覆金属線を例えばフェンス等に使用すると、容易に短時間に亀裂、割れやクラックが生じ問題である。
【0005】
特許文献3には、高密度ポリエチレンに、プロピレン−エチレン共重合体10〜45重量%、及び特定のメルトインデックス及び0.910〜0.945g/cmの密度を持つ直鎖状低密度ポリエチレン5〜30重量%を配合した、耐環境応力亀裂性に優れた成形品を与える射出成形用ポリエチレン系樹脂組成物が開示されている。
また、上記特許文献2にも、耐摩耗性と耐環境応力亀裂性の両方の特性を被覆金属線に付与するには、例えば、高密度ポリエチレン95〜60重量%と直鎖状エチレン−α−オレフィン共重合体5〜40重量%からなる混合樹脂を用いればよいと、記載されているので、直鎖状エチレン−α−オレフィン共重合体を配合することにより、耐環境応力亀裂性が改善されることは知られている。
【0006】
直鎖状エチレン−α−オレフィン共重合体、特に直鎖状低密度エチレン−α−オレフィン共重合を配合すると、耐環境応力亀裂性が改善されることは、本願発明者も追試して確認したが、その改善の程度は、従来の塩化ビニル樹脂被覆金属線と比較すると、不十分であり、逆に耐摩耗性に影響が出たり、共押出成形性が大きく影響を受け、表面が平滑な被覆層の形成が困難となり、表面が均質でないと、耐環境応力亀裂性も劣化する悪循環が認められた。
また、フェンス等の加工を行う場合は、被覆金属線を編み込まねばならず、この際の歪みは、耐環境応力亀裂性に影響し、従来より更に、高い耐環境応力亀裂性が必要である。
【0007】
【特許文献1】特開平11−277678号公報
【特許文献2】特開2004−9369号公報
【特許文献3】特開昭63−89551号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、上記の問題点に鑑み、塩化ビニル被覆金属線に相当する高度な耐環境応力亀裂性を持ち、同時に良好な耐摩耗性及び共押出成形性を有するエチレン系樹脂組成物を探求し、それを用いて共押出成形法によって得られる金属芯線とエチレン系樹脂の強い接着性と共に耐環境応力亀裂性を有するエチレン系樹脂被覆金属線及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究し、共押出成形法を採用することと、特定の高密度ポリエチレンと特定の直鎖状低密度エチレン−α−オレフィン共重合体とを特定割合で用いたエチレン系樹脂を用いることにより、耐摩耗性を持ち、また共押出成形性も遜色がなく、かつ非常に優れた接着性と共に耐環境応力亀裂性を有するエチレン系樹脂被覆金属線が得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0010】
すなわち、本発明の第1の発明によれば、金属芯線、接着剤層及びエチレン系樹脂層からなるエチレン系樹脂被覆金属線において、エチレン系樹脂(A)は、メルトマスフローレートが3〜35g/10分及び密度が0.95〜0.97g/cmの高密度ポリエチレン(A1)30〜55質量%、並びに数平均分子量(Mn)に対する重量平均分子量(Mw)の比で表される多分散度(Mw/Mn)が3〜10、メルトマスフローレートが0.1〜35g/10分、密度が0.88〜0.94g/cm及びα−オレフィンの炭素数が6〜12の直鎖状低密度エチレン−α−オレフィン共重合体(A2)70〜45質量%からなり、かつ、接着剤層を構成する接着剤(B)及びエチレン系樹脂(A)は、共押出成形法により金属芯線(C)上に形成被覆されていることを特徴とする金属芯線とエチレン系樹脂の接着性と共に耐環境応力亀裂性を有するエチレン系樹脂被覆金属線が提供される。
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、エチレン系樹脂(A)は、メルトマスフローレートが0.3〜20g/10分であることを特徴とするエチレン系樹脂被覆金属線が提供される。
さらに、本発明の第3の発明によれば、第1又は2の発明において、直鎖状低密度エチレン−α−オレフィン共重合体(A2)がエチレン−ヘキセン−1共重合体であることを特徴とするエチレン系樹脂被覆金属線が提供される。
【0011】
また、本発明の第4の発明によれば、第1〜3のいずれかの発明において、エチレン系樹脂(A)は、更にフロロカーボンエラストマー(D)を0.05〜3質量%含むことを特徴とするエチレン系樹脂被覆金属線が提供される。
さらに、本発明の第5の発明によれば、第1〜4のいずれかの発明において、接着剤(B)が無水マレイン酸グラフト付加エチレン系樹脂であることを特徴とするエチレン系樹脂被覆金属線が提供される。
【0012】
一方、本発明の第6の発明によれば、金属芯線、接着剤層及びエチレン系樹脂層からなるエチレン系樹脂被覆鉄線の製造方法において、エチレン系樹脂(A)は、メルトマスフローレートが3〜35g/10分及び密度が0.95〜0.97g/cmの高密度ポリエチレン(A1)30〜55質量%、並びに数平均分子量(Mn)に対する重量平均分子量(Mw)の比で表される多分散度(Mw/Mn)が3〜10、メルトマスフローレートが0.1〜35g/10分、密度が0.88〜0.94g/cm及びα−オレフィンの炭素数が6〜12の直鎖状低密度エチレン−α−オレフィン共重合体(A2)70〜45質量%を溶融混練すること、かつ、接着剤層を構成する接着剤(B)及びエチレン系樹脂(A)は、共押出成形法により金属芯線(C)上に形成被覆されていることを特徴とする金属芯線とエチレン系樹脂の接着性と共に耐環境応力亀裂性を有するエチレン系樹脂被覆金属線の製造方法が提供される。
また、本発明の第7の発明によれば、第6の発明において、エチレン系樹脂(A)は、更にフロロカーボンエラストマー(D)を0.05〜3質量%含み溶融混練することを特徴とするエチレン系樹脂被覆金属線の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、金属芯線、接着剤層及びエチレン系樹脂層からなるエチレン系樹脂被覆金属線において、エチレン系樹脂(A)は、メルトマスフローレートが3〜35g/10分及び密度が0.95〜0.97g/cmの高密度ポリエチレン(A1)30〜55質量%、並びに数平均分子量(Mn)に対する重量平均分子量(Mw)の比で表される多分散度(Mw/Mn)が3〜10、メルトマスフローレートが0.1〜35g/10分、密度が0.88〜0.94g/cm及びα−オレフィンの炭素数が6〜12の直鎖状低密度エチレン−α−オレフィン共重合体(A2)70〜45質量%からなり、更に好ましい形態としては、特定量のフロロカーボンエラストマー(D)を配合することができ、かつ接着剤層を構成する接着剤(B)及びエチレン系樹脂(A)は、共押出成形法により金属芯線(C)上に形成被覆されていることを特徴とするエチレン系樹脂被覆金属線であるので、共押出成形法により、金属芯線とエチレン系樹脂の優れた接着性を有すると共に、エチレン系樹脂(A)の特定の組成配合から、優れた耐環境応力亀裂性を有し、更に耐摩耗性及び共押出成形性にも優れているエチレン系樹脂被覆電線、及びその製造方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の接着性と共に耐環境応力亀裂性を有するエチレン系樹脂被覆金属線及びその製造方法について、各項目毎に詳細に説明する。
【0015】
1.エチレン系樹脂(A)
本発明で使用されるエチレン系樹脂(A)は、以下に詳細に説明する高密度ポリエチレン(A1)及びα−オレフィンの炭素数が6〜12の直鎖状低密度エチレン−α−オレフィン共重合体(A2)から構成される。
【0016】
[1−1]高密度ポリエチレン(A1)
本発明で使用される高密度ポリエチレンは、一般に高密度ポリエチレンとして市販されているものが使用でき、エチレンの単独重合体もしくはエチレンを主成分とするエチレンとα−オレフィンとの共重合体、例えばプロピレン、ブテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1、4−メチルペンテン−1等の1以上との共重合体を挙げることができる。
【0017】
前記高密度ポリエチレン(A1)の密度は、0.95〜0.97g/cm、好ましくは0.955〜0.97g/cm、更に好ましくは0.96〜0.97g/cmである。密度が0.95g/cm未満であると、耐摩耗性を満たすエチレン系樹脂(A)が得られない。一方、密度が0.97g/cmを超える高密度ポリエチレンは、入手が困難である。
前記高密度ポリエチレン(A1)のメルトマスフローレートは、3〜35g/10分、好ましくは3〜20g/10分、更に好ましくは5〜15g/10分である。メルトマスフローレートが3g/10分未満であると、流動性が低下し、良好な共押出成形ができない。一方、メルトマスフローレートが35g/10分を超えると、耐摩耗性が低下し、かつ共押出成形自体が困難となり、本発明のエチレン系樹脂被覆金属線の調製が困難となる。
【0018】
本発明で使用される高密度ポリエチレン(A1)は、ノバテック HJ560(日本ポリケム)、サンテック J241(旭化成)、ハイゼックス(三井化学)等として入手することができる。
高密度ポリエチレン(A1)は、使用目的に応じて1種あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0019】
[1−2]α−オレフィンの炭素数が6〜12の直鎖状低密度エチレン−α−オレフィン共重合体(A2)
本発明で使用される直鎖状低密度エチレン−α−オレフィン共重合体は、エチレンと炭素数6〜12のα−オレフィンとの共重合体である。エチレンと共重合されるα−オレフィンとしては、ヘキセン−1、オクテン−1、デセン−1、ドデセン−1、4−メチルペンテン−1等が例示され、へキセン−1、オクテン−1は、入手が容易で好ましく、特に耐環境応力亀裂性から、ヘキセン−1が好ましい。
【0020】
本発明で使用される直鎖状低密度エチレン−α−オレフィン共重合体(A2)の数平均分子量(Mn)に対する重量平均分子量(Mw)の比で表される多分散度(Mw/Mn)は、3〜10、好ましくは3〜8、更に好ましくは3〜6である。多分散度(Mw/Mn)が3未満であると、共押出成形性が低下し、共押出が困難になる。一方、多分散度(Mw/Mn)が10を超えると、耐環境応力亀裂性が不十分となる。
【0021】
本発明で使用される直鎖状低密度エチレン−α−オレフィン共重合体(A2)のメルトマスフローレートは、0.1〜35g/10分、好ましくは0.5〜20g/10分、更に好ましくは0.5〜10g/10分である。メルトマスフローレートが0.1g/10分未満であると、流動性が低下し、良好な共押出成形ができない。一方、メルトマスフローレートが35g/10分を超えると、耐摩耗性が低下し、かつ押出成形自体が困難となり、本発明のエチレン系樹脂被覆金属線の調製が困難となる。
本発明で使用される直鎖状低密度エチレン−α−オレフィン共重合体(A2)の密度は、0.88〜0.94g/cm、好ましくは0.89〜0.94、更に好ましくは0.90〜0.93である。密度が0.88g/cm未満のもので、多分散度(Mn/Mw)が3〜10のものは、製造が困難である。一方、密度が0.94g/cmを超えると、耐環境応力亀裂性に対する効果が得られない。
【0022】
本発明で使用される直鎖状低密度エチレン−α−オレフィン共重合体(A2)は、例えば従来から使用されているフィリップス系触媒等を用いて製造することができ、具体的には、TUF2022(日本ユニカー)、エボリュー SP2520(三井化学)、IDEMITSU V−0398(出光石油化学)等として入手できる。
直鎖状低密度エチレン−α−オレフィン共重合体(A2)は、使用目的に応じて1種あるいは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0023】
本発明に係るエチレン系樹脂(A)は、上記の高密度ポリエチレン(A1)30〜55質量%、好ましくは35〜55質量%、更に好ましくは35〜50質量%、及び上記のα−オレフィンの炭素数が6〜12の直鎖状低密度エチレン−α−オレフィン共重合体(A2)70〜45質量%、好ましくは65〜45質量%、更に好ましくは65〜50質量%からなる。
高密度ポリエチレン(A1)の割合が55質量%を超えると、即ち直鎖状低密度エチレン−α−オレフィン共重合体(A2)が45質量%未満であると、耐環境応力亀裂性が不合格となる。一方、高密度ポリエチレン(A1)の割合が30質量%を未満であると、即ち直鎖状低密度エチレン−α−オレフィン共重合体(A2)が70質量%を超えると、耐摩耗性が満たされない。
本発明で使用されるエチレン系樹脂(A)のメルトマスフローレートは、好ましくは0.3〜20g/10分、更に好ましくは0.5〜10g/10分であることが、良好な共押出性の観点から望ましい。
【0024】
2.接着剤(B)
本発明において使用される接着剤(B)は、押出成形法を適用できる樹脂からなり、エチレン系樹脂にカルボン酸基含有化合物、カルボン酸エステル含有化合物あるいは酸無水物をグラフト付加した樹脂;アイオノマー;エチレン−無水マレイン酸共重合体;エチレン−α、β−カルボン酸エステル−無水マレイン酸共重合体から選ばれた1種あるいは2種以上からなる。
【0025】
ここでエチレン系樹脂とは、高圧ラジカル法で製造されるエチレン単独重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、並びにフィリップス法、スタンダード法、チグラー法、もしくはメタロセン触媒系などのシングルサイト触媒を用いる重合法によって製造されるエチレン単独重合体あるいはエチレンと炭素数3〜12のプロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1、デセン−1、ドデセン−1、4−メチルペンテン−1等のα−オレフィンとの共重合体を意味する。
【0026】
グラフト付加に用いるカルボン酸基含有化合物としては、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、アクリル酸、メタクリル酸、ソルビン酸、クロトン酸、シトラコン酸等の不飽和カルボン酸が例示できる。
グラフト付加に用いるカルボン酸エステル含有化合物としては、上記カルボン酸基含有化合物のメチル、エチル、プロピル、ブチルエステルが例示できる。
グラフト付加に用いる酸無水物としては、無水マレイン酸、イタコン酸無水物、シトラコン酸無水物、無水ハイミック酸、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物、4−メチルシクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物等が例示できる。
【0027】
アイオノマーは、エチレンとα,β−不飽和カルボン酸との共重合体を金属イオンで部分的あるいは完全に中和した樹脂であり、α,β−不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸等が例示でき、金属イオンとしては、亜鉛、ナトリウム等が例示できる。
【0028】
これらに加えて、本発明では接着剤(B)として、エチレン−無水マレイン酸共重合体、エチレン−アクリル酸エチル−無水マレイン酸共重合体等も使用することができる。
【0029】
これらの中では無水マレイン酸グラフト付加エチレン系樹脂、アイオノマーを好適に使用することができる。
本発明で使用される接着剤(B)は、共押出成形により成形されるので、そのメルトマスフローレートは、0.1〜35g/10分、好ましくは0.5〜10g/10分であることが望ましい。
【0030】
3.その他の成分
本発明で使用されるエチレン系樹脂(A)及び接着剤(B)には、その他の各種添加剤や補助資材を配合することができる。この各種添加剤や補助資材としては、難燃剤、安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、帯電防止剤、核剤、滑剤、充填剤、分散剤、金属不活性剤、中和剤、加工助剤、離型剤、発泡剤、気泡防止剤、着色剤、殺菌剤、防カビ剤等を挙げることができる。
【0031】
本発明で使用されるエチレン系樹脂(A)及び接着剤(B)には、酸化防止剤を配合することが好ましい。酸化防止剤としては、フェノール系、リン系、アミン系、イオウ系等を挙げることができ、単独でも2種以上を混合して使用してもよく、その配合量は、エチレン系樹脂(A)あるいは接着剤(B)中で、0.001〜5質量%程度である。
【0032】
また、本発明で使用されるエチレン系樹脂(A)には、本発明のエチレン系樹脂被覆金属線がフェンス等として戸外で使用されるので、安定化剤を配合することが好ましい。
安定化剤としては、光安定剤や紫外線吸収剤等が具体的に挙げられる。
【0033】
本発明において使用できる光安定剤としては、例えばヒンダードアミン光安定剤が例示され、これには、低分子量タイプとして、デカン二酸ビス(2,2,6,6−テトラメチル−1(オクチルオキシ)−4−ピペリジニル)エステル、1,1−ジメチルエチルヒドロパーオキシド及びオクタンの反応生成物(分子量737)70重量%とポリプロピレン30重量%からなるもの;ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ブチルマロネート(分子量685);ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート及びメチル−1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルセバケート混合物(分子量509);ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート(分子量481);テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート(分子量791);テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート(分子量847);2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレートとトリデシル−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレートの混合物(分子量900);1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレートとトリデシル−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレートの混合物(分子量900)等が例示できる。
【0034】
ヒンダードアミン光安定剤の高分子量タイプとしては、ポリ[{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}](分子量2000〜3100);コハク酸ジメチルと4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンエタノールの重合物(分子量3100〜4000);N,N’,N”,N”’−テトラキス−(4,6−ビス−(ブチル−(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)アミノ)−トリアジン−2−イル)−4,7−ジアザデカン−1,10−ジアミン(分子量2286)と上記コハク酸ジメチルと4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンエタノールの重合物の混合物;ジブチルアミン・1,3,5−トリアジン・N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル−1,6−ヘキサメチレンジアミンとN−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブチルアミンの重縮合物(分子量2600〜3400)等が例示できる。
【0035】
ヒンダードアミン光安定剤は、上記の様に低分子量タイプと高分子量タイプとがあるが、ベース樹脂との相溶性がよい、したがってブリードしにくい特徴を持つ高分子量タイプ(分子量が1900以上のもの)のものを、好適に使用することができる。
【0036】
ヒンダードアミン光安定剤の配合量は、その有効量を用いればよいが、一般にエチレン系樹脂(A)中で、0.05〜3質量%、好ましくは0.2〜2質量%程度である。
【0037】
本発明において使用できる紫外線吸収剤としては、サルチル酸系、ベンゾフェノン系、べンゾトリアゾール系、その他の紫外線吸収剤等を挙げることができ、具体的には、サルチル酸系紫外線吸収剤としては、フェニルサリシレート;4−t−ブチルフェニルサリシレート等が例示できる。
また、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン;2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン;2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−硫酸3水和物;2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシベンゾフェノン;4−ドデシルオキシ−2−ヒドロキシベンゾフェノン;4−ベンジルオキシ−2−ヒドロキシベンゾフェノン;2,2’,4’,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン;2,2’−ジメトキシベンゾフェノン;オクタベンゾン等を例示できる。
【0038】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−p−クレゾール;2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール;2−[5−クロロ(2H)−ベンゾトリアゾール−2−イル]−4−メチル−6−(t−ブチル)フェノール;2,4−ジ−t−ブチル−6−(5−クロロベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール;2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ジ−t−ペンチルフェノール等が例示できる。
【0039】
その他の紫外線吸収剤としては、蓚酸アニリド誘導体;2,4−ジ−t−ブチルフェニル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−4−ヒドロキシべンゾエート;2−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート;1,3−ビス(4−ベンゾイル−3−ヒドロキシフェノキシ)−2−プロピルメタクリレート;o−ベンゾイル安息香酸メチル;エチル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート;2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]フェノール等が例示できる。
紫外線吸収剤の配合量は、その有効量を用いればよいが、一般にエチレン系樹脂(A)中で、0.05〜3質量%、好ましくは0.2〜2質量%程度である。
【0040】
4.フロロカーボンエラストマー(D)
本発明においては、得られるエチレン系樹脂被覆金属線の表面をより平滑にすることにより、更に耐環境応力亀裂性を増強するため、本発明で使用される前記エチレン系樹脂(A)に、フロロカーボンエラストマー(D)を配合することができる。
本発明で使用されるフロロカーボンエラストマー(D)は、フッ素ゴムとも呼ばれるもので、フッ化ビニリデンを単量体とする共重合体であり、具体的には、フッ化ビニリデン−ヘキサフロロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−ヘキサフロロプロピレン−テトラフロロエチレン共重合体、及びこれらの架橋点含有モノマーを共重合したポリマー等が挙げられる。これらの中ではフッ化ビニリデン−ヘキサフロロプロピレン共重合体が、好適に使用される。最も好ましいフロロカーボンエラストマー(D)は、バイトンフリーフロー(昭和電工・デュポン社製)として市販されている。
【0041】
フロロカーボンエラストマー(D)の配合量は、エチレン系樹脂(A)中で、0.05〜3質量%、好ましくは0.1〜2質量%、更に好ましくは0.3〜1.8質量%である。
フロロカーボンエラストマー(D)の配合量が上記下限値未満であると、更なる表面平滑性の付与効果が有意とならなくなる。一方、これが上記上限値を超えると、耐摩耗性に悪影響がでることがあるので望ましくない。
なお、フロロカーボンエラストマー(D)は、1種あるいは2種以上を混合して使用することができる。
【0042】
5.エチレン系樹脂(A)の調製方法
本発明で使用されるエチレン系樹脂(A)は、所定量の上記高密度ポリエチレン(A1)、及び直鎖状低密度エチレン−α−オレフィン共重合体(A2)に、使用目的や必要に応じてその他の成分及び/又はフロロカーボンエラストマー(D)を、各々所定量配合して、一般的な方法、例えば、ニーダー、バンバリーミキサー、コンティニュアスミキサー、ロールミルあるいは押出機を用いて均一に、例えば140〜180℃で溶融混錬することにより調製することができる。
溶融混錬して得られたエチレン系樹脂(A)は、次いで平均粒径3.0〜7.0mm程度のペレットに造粒し、これを成形に用いることが好ましい。
【0043】
6.金属芯線(C)
本発明において使用される金属芯線としては、鉄線、銅線、アルミ線、クロム線、ニッケル線等公知のものであれば良く、特に限定されない。
従来から塩化ビニル被覆鉄線に使用されている鉄線は、用途も広く好適に使用される。この鉄線の直径は0.35mm〜5.00mmで、その表面は一般に亜鉛メッキされている。
なお、本発明では、金属芯線(C)とエチレン系樹脂(A)とは、従来品に比べて強く接着しているので、上記メッキ層は不可欠のものではない。しかしながら、長期の防錆効果のためには、上記メッキ層があることが望ましい。
【0044】
7.エチレン系樹脂被覆金属線の製造方法
本発明のエチレン系樹脂被覆金属線は、2台の押出機を用いて中央に金属芯線(C)を貫通させた一つの共通のダイ(金型)に樹脂を導き、金属芯線(C)を引きながらダイ内部あるいはダイ開口部において接着剤(B)とエチレン系樹脂(A)の樹脂同志を接触させつつ共押出成形して接着剤層とエチレン系樹脂層を形成させ、金属芯線(C)を被覆させることにより得られる。ダイとしては、ブラックボックスダイ、マルチマニホールドダイ、マルチスロットダイ等を使用することができる。
【0045】
この際、本発明では、接着剤(B)及びエチレン系樹脂(A)は、それぞれ190〜250℃、好ましくは200〜240℃に加熱して押出せばよい。
強い接着性は、特許文献2に記載されているように、共押出成形法を採用した場合のみに得られる。
また、本発明においては接着剤層とエチレン系樹脂層の間に、中間層を共押出成形し、樹脂層を3層構造としてもよい。例えば、接着剤層とエチレン系樹脂層の間に、耐衝撃樹脂層を、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体等を使用して形成することができる。この際は、押出機を1台追加して3台使用して、1つの共押出ダイを用いて、同様にしてエチレン系樹脂被覆金属線を製造することができる。
得られるエチレン系脂被覆金属線は、従来の塩化ビニル樹脂被覆金属線程度の被覆層厚に合わせたものであることが、塩化ビニル樹脂被覆鉄線をたやすく代替できるので望ましい。
【0046】
本発明のエチレン系樹脂被覆金属線において、共押出成形法の適応から、実際的に接着剤層の厚みは、30〜250μm程度が例示されるので、接着剤層(あるいは接着剤層と中間層の合計)厚さとエチレン系樹脂樹脂層の厚さは、良好な耐摩耗性、及び耐環境応力亀裂性を持たすために、好ましくは50/50〜5/95、より好ましくは30/70〜5/95であることが望ましい。
【実施例】
【0047】
次に実施例に基づいて、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。なお、本明細書中で用いられた評価は、それぞれ以下の方法によるものである。
【0048】
[評価]
I.メルトマスフローレート
JIS K6922−1に準拠して行い、温度190℃、荷重2.16kgの試験条件で測定した。
【0049】
II.密度
JIS K6922−2に準拠して測定した。
【0050】
III.接着性
III−1.金属芯線との接着性
得られたエチレン系樹脂被覆金属線を切断し、金属芯線の接線にそって平行に2箇所ナイフで樹脂層に切り込みを入れ、これを両手で引き剥がして接着性を評価した。その評価基準として、引き剥がせない場合を○と評価して、合格とし、そうでない場合を×と評価して、不合格とした。
【0051】
III−2.接着剤層とエチレン系樹脂層との接着性
接着剤層とエチレン系樹脂層との間に切り込みを入れ、これを両手で引き剥がして接着性を評価した。その評価基準として、引き剥がせない場合を○と評価して、合格とし、そうでない場合を×と評価して、不合格とした。
【0052】
IV.耐環境応力亀裂性
得られたエチレン系樹脂被覆金属線から2倍の自己径(6.4mm)で6回巻きの試料を10個作成し、これについて、ポリエチレン試験法JIS K−6922−2に準拠して、試験し評価した。被覆層に割れが発生するまでの時間を測定した。いずれの試料にも割れが生じない時間が、600時間以上のものを合格とした。
【0053】
V.耐摩耗性
得られたエチレン系樹脂被覆金属線を水平板上に固定し、その上に2kg重の荷重をかけたピアノ線を該金属線と直角方向になるように水平に乗せ、ピアノ線を幅1cmで往復運動させることにより、被覆層をすり削り、金属芯線が露出するまでの往復運動の回数を測定した。同条件で測定した従来の塩化ビニル被覆金属線は、150回で露出するので、150回で露出しないものを合格とした。
【0054】
VI.共押出加工性
得られたエチレン系樹脂被覆金属線の被覆表面を目視で観察し、メルトフラクチャー等により表面荒れの有無を評価し、表面荒れが認められず、平滑なものを○と評価し、合格とし、そうでないものを×と評価し、不合格とした。
【0055】
[実施例1〜3、比較例1、2]
エチレン系樹脂(A)を構成する高密度ポリエチレン(A1)として、ノバテック HJ560(HDPE−1、メルトマスフローレート7g/10分、密度0.964g/cm、日本ポリケム社製)、及び直鎖状低密度エチレン−α−オレフィン共重合体(A2)として、エチレン−ヘキセン−1共重合体であるTUF 2022[LLDPE−1、メルトマスフローレート0.8g/10分、密度0.929g/cm、多分散度(Mw/Mn)5.5、日本ユニカー社製]を用いた。
高密度ポリエチレン(A1)、及び直鎖状低密度エチレン−α−オレフィン共重合体(A2)を、表1に示した組成配合で混合し、これをバンバリーミキサーに入れ150℃で10分間溶融混練し、次いで直径約4mmに造粒してこれをエチレン系樹脂(A)として用いた。
【0056】
接着剤(B)として、メルトマスフローレートが1.63g/10分の無水マレイン酸グラフト付加エチレン−アクリル酸エチル共重合体(GA−004、日本ユニカー製)を用いた。
金属芯線(C)として、鉄芯線[直径2.3mm、表面亜鉛メッキ鉄線(JIS G3547 SWMGS品)]を用い、口径3.2mmのマルチマニホールドダイからなる共通のダイ及びエチレン系樹脂(A)用と接着剤(B)用の2台の押出機を使用して、エチレン系樹脂(A)は240℃、接着剤(B)は220℃で、接着剤(B)層及びエチレン系樹脂(A)層の厚みがそれぞれ200μmになるように、引張速度30mで、共押出成形をし、実施例1〜3、及び比較例1、2のエチレン系樹脂被覆金属線を得た。
【0057】
得られたエチレン系樹脂被覆金属線につき、それぞれ接着性、耐環境応力亀裂性、耐摩耗性、及び共押出加工性を上記の基準で評価した。
結果を表1に示したが、実施例1〜3のいずれのエチレン系樹脂被覆金属線は、それぞれ良好な接着性、耐環境応力破壊性、耐摩耗性、及び共押出成形性を有していたが、高密度ポリエチレン(A1)の配合量が請求の範囲を超える比較例1では、耐環境応力破壊性が不十分であり、一方、直鎖状低密度エチレン−α−オレフィン共重合体が請求の範囲を超える比較例2では、耐摩耗性が不十分であった。
【0058】
【表1】

【0059】
[実施例4]
実施例2で使用した直鎖状低密度エチレン−α−オレフィン共重合体(A2)を、多分散度が小さいエチレン−ヘキセン−1共重合体であるTUF 2032(LLDPE−2、メルトマスフローレート0.85g/10分、密度0.923g/cm、多分散度(Mw/Mn)3.8、日本ユニカー社製)に換えた以外は、実施例2と同様にして、実施例4のエチレン系樹脂被覆金属線を得、次いで、接着性、耐環境応力亀裂性、耐摩耗性、及び共押出加工性を評価した。
結果を表2に示したが、実施例4のエチレン系樹脂被覆金属線は、良好な接着性、耐環境応力破壊性、耐摩耗性、及び共押出成形性を有していた。
【0060】
[実施例5]
実施例2で使用した直鎖状低密度エチレン−α−オレフィン共重合体(A2)を、エチレン−オクテン−1共重合体であるIDEMITSU V−0398[LLDPE−3、メルトマスフローレート3.0g/10分、密度0.907g/cm、多分散度(Mw/Mn)3.9、出光石油化学社製]に換えた以外は、実施例2と同様にして、実施例5のエチレン系樹脂被覆金属線を得、次いで、接着性、耐環境応力亀裂性、耐摩耗性、及び共押出加工性を評価した。
結果を表2に示したが、実施例5のエチレン系樹脂被覆金属線は、良好な接着性、耐環境応力破壊性、耐摩耗性、及び共押出成形性を有していた。
【0061】
【表2】

【0062】
[実施例6〜8]
実施例2と同様の試験を、フロロカーボンエラストマー(D)を追加配合して、実施例2同様にして、実施例6〜8のエチレン系樹脂被覆金属線を得、次いで、接着性、耐環境応力亀裂性、耐摩耗性、及び共押出加工性を評価した。
表3にエチレン系樹脂(A)の組成配合と結果を示したが、実施例6〜8のエチレン系樹脂被覆金属線は、それぞれ良好な接着性、耐環境応力破壊性、及び耐摩耗性を有し、同時に更に良好な共押出成形性を有していた。
【0063】
[実施例9]
実施例7で使用した接着剤(B)を、アイオノマー(1652、三井デユポンポリケミカル社製)に換えた以外は、実施例7と同様にして、実施例9のエチレン系樹脂被覆金属線を得、次いで、接着性、耐環境応力亀裂性、耐摩耗性、及び共押出加工性を評価した。
表3にエチレン系樹脂(A)の組成配合と結果を示したが、実施例9のエチレン系樹脂被覆金属線は、良好な接着性、耐環境応力破壊性、及び耐摩耗性を有し、同時に更に良好な共押出成形性を有していた。
【0064】
【表3】

【0065】
[比較例3〜6]
比較例3では、直鎖状エチレン−α−オレフィン共重合体を、密度及び多分散度(Mw/Mn)が請求の範囲を超えるエチレン−ヘキセン−1共重合体であるNUCG9140[LLDPE−4、メルトマスフローレート0.8g/10分、密度0.945g/cm、多分散度(Mw/Mn)12、日本ユニカー社製]、及び比較例4では、炭素数4で多分散度(Mw/Mn)が請求の範囲を超えるエチレン−ブテン−1共重合体であるNUCG9301[LLDPE−5、メルトマスフローレート0.8g/10分、密度0.921g/cm、多分散度(Mw/Mn)11、日本ユニカー社製]に換えた以外は、実施例7と同様にして、比較例3、4のエチレン系樹脂被覆金属線を得た。
【0066】
比較例5、6では、高密度ポリエチレンを、メルトマスフローレートが請求の範囲未満の高密度ポリエチレンであるノバテック HY560(HDPE−2、メルトマスフローレート1g/10分、密度0.960g/cm、日本ポリケム社製)、及び高密度ポリエチレンであるノバテック HY430(HDPE−3、メルトマスフローレート0.8g/10分、密度0.954g/cm、日本ポリケム社製)にそれぞれ換え、直鎖状低密度エチレン−α−オレフィン共重合体として、実施例4で用いたエチレン−ヘキセン−1共重合体であるTUF 2032[LLDPE−2、メルトマスフローレート0.85g/10分、密度0.923g/cm、多分散度(Mw/Mn)3.8、日本ユニカー社製]に換えた以外は、実施例7と同様にして、比較例5、6のエチレン系樹脂被覆金属線を得た。
表4にエチレン系樹脂(A)の組成配合と結果を示したが、比較例3、4では、共押出成形性は優れていたが、耐環境応力亀裂性が不良となり、比較例5、6では、共押出成形性が不十分なものであった。
【0067】
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明のエチレン系樹脂被覆金属線は、優れた接着性、耐摩耗性及び共押出加工性を持つと同時に、耐環境応力亀裂性にも優れているので、フェンス金網、生簀用金網、落石防護網等に用いる被覆金属線として使用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属芯線、接着剤層及びエチレン系樹脂層からなるエチレン系樹脂被覆金属線において、
エチレン系樹脂(A)は、メルトマスフローレートが3〜35g/10分及び密度が0.95〜0.97g/cmの高密度ポリエチレン(A1)30〜55質量%、並びに数平均分子量(Mn)に対する重量平均分子量(Mw)の比で表される多分散度(Mw/Mn)が3〜10、メルトマスフローレートが0.1〜35g/10分、密度が0.88〜0.94g/cm及びα−オレフィンの炭素数が6〜12の直鎖状低密度エチレン−α−オレフィン共重合体(A2)70〜45質量%からなり、かつ、
接着剤層を構成する接着剤(B)及びエチレン系樹脂(A)は、共押出成形法により金属芯線(C)上に形成被覆されていることを特徴とする金属芯線とエチレン系樹脂の接着性と共に耐環境応力亀裂性を有するエチレン系樹脂被覆金属線。
【請求項2】
エチレン系樹脂(A)は、メルトマスフローレートが0.3〜20g/10分であることを特徴とする請求項1に記載のエチレン系樹脂被覆金属線。
【請求項3】
直鎖状低密度エチレン−α−オレフィン共重合体(A2)がエチレン−ヘキセン−1共重合体であることを特徴とする請求項1又は2に記載のエチレン系樹脂被覆金属線。
【請求項4】
エチレン系樹脂(A)は、更にフロロカーボンエラストマー(D)を0.05〜3質量%含むことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のエチレン系樹脂被覆金属線。
【請求項5】
接着剤(B)が無水マレイン酸グラフト付加エチレン系樹脂であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のエチレン系樹脂被覆金属線。
【請求項6】
金属芯線、接着剤層及びエチレン系樹脂層からなるエチレン系樹脂被覆鉄線の製造方法において、
エチレン系樹脂(A)は、メルトマスフローレートが3〜35g/10分及び密度が0.95〜0.97g/cmの高密度ポリエチレン(A1)30〜55質量%、並びに数平均分子量(Mn)に対する重量平均分子量(Mw)の比で表される多分散度(Mw/Mn)が3〜10、メルトマスフローレートが0.1〜35g/10分、密度が0.88〜0.94g/cm及びα−オレフィンの炭素数が6〜12の直鎖状低密度エチレン−α−オレフィン共重合体(A2)70〜45質量%を溶融混練すること、かつ、
接着剤層を構成する接着剤(B)及びエチレン系樹脂(A)は、共押出成形法により金属芯線(C)上に形成被覆されていることを特徴とする金属芯線とエチレン系樹脂の接着性と共に耐環境応力亀裂性を有するエチレン系樹脂被覆金属線の製造方法。
【請求項7】
エチレン系樹脂(A)は、更にフロロカーボンエラストマー(D)を0.05〜3質量%含み溶融混練することを特徴とする請求項6に記載のエチレン系樹脂被覆金属線の製造方法。

【公開番号】特開2006−116702(P2006−116702A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−303716(P2004−303716)
【出願日】平成16年10月19日(2004.10.19)
【出願人】(000230331)日本ユニカー株式会社 (20)
【Fターム(参考)】