説明

エッジドロップ制御方法および装置

【課題】パラメータの調整が簡単でかつ高いエッジドロップ量推定精度を有するエッジドロップ制御方法および装置を提供することを目的とする。
【解決手段】入力項目および出力項目の実績データをデータベースとして蓄えるデータベース作成工程と、これから圧延される被圧延材の前記入力項目のデータを要求点データとして入力する要求点データ入力工程と、前記データベース内の全データと前記要求点データとの距離計算を行い、この計算した距離が短い順にデータを近傍データとして1つまたは複数選択する近傍データ選択工程と、選択された近傍データに基づいて、これから圧延される被圧延材のワークロールシフト位置を決定するワークロールシフト位置決定工程と、圧延を実施するごとに新たな実績データを、前記データベースに追加または更新するデータベース更新工程とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属板のタンデム冷間圧延におけるエッジドロップ制御方法および装置に係り、特に金属板の冷間圧延に際して用いるのに好適な片側端部に先細り形状を有するワークロールを板幅方向にシフトさせて、被圧延帯板のエッジドロップ量を制御するエッジドロップ制御方法および装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鋼板等の被圧延帯板は圧延機で圧延され、所望寸法のものが製造される。圧延機のワークロールで被圧延帯板を圧延すると、被圧延帯板の長手方向、即ち圧延時の被圧延帯板の進行方向に直交する幅方向の断面形状(クラウン形状と称する)は、通常、両エッジ部が中央部に比べて薄くなる(これが、いわゆるエッジドロップと称する現象である)。
【0003】
そして、この薄くなる量(エッジドロップ量)は、例えばエッジから帯板幅中央方向に100mm位置と、同じく中央方向に15mm位置の板厚差で表すことが多いが、この他の部位での測定による場合もある。
【0004】
圧延された被圧延帯板は、所望の板厚精度が要求されているが、特に現在では圧延製品の高品質化、高寸法精度化の要求がますます高くなっている。板厚精度に対する高精度化の要求は、長手方向の板厚変動を厳しく制限するのみならず、板幅方向の板厚分布についても厳しく制限する傾向にある。このため、従来から、圧延後の被圧延帯板における板幅方向両端のエッジドロップ量をより精度良く制御するための様々な技術が開示されている。
【0005】
例えば、特許文献1では、被圧延帯板を介して1対対向配設され、軸線方向に対して互いに反対方向の片側端部に先細り形状(テーパー形状)を有すると共に、それぞれ軸線方向に移動自在のワークロールを備えた圧延スタンド(以降、先細り形状のワークロールの圧延スタンドと称する)を用い、入側の板幅方向端部の板厚分布から出側の板幅方向端部の板厚分布を推定し、この推定値と目標板厚分布とを照合して、両者の差が最小となる位置に当該スタンドのワークロールを移動させるという技術が開示されている。
【0006】
また、特許文献2では、やはり前述のような先細り形状のワークロールの圧延スタンドを用い、少なくとも2個以上のパラメータで表される圧延材の圧延後のエッジドロップ量を示す数式モデルを用い、圧延スタンド出側エッジドロップ量を予測して、該エッジドロップ量が目標値に一致するように前述のワークロールを移動させるという技術が開示されている。
【0007】
また、特許文献3も、前述のような先細り形状のワークロールの圧延スタンドを用いるものであり、入側の板厚分布を実測し、板幅方向両端のエッジドロップ領域の開始点を求め、該開始点に、ワークロールの中央部と先細り形状部の境界を一致させるよう、該ワークロールを移動させるという技術が開示されている。これらはいずれについても、入側の板幅方向板厚分布から出側の板幅方向板厚分布を推定するモデル式を作成し、そのモデル式にワークサイド、ドライブサイド各々の入側エッジドロップ量を代入してワークサイド、ドライブサイド各々の出側エッジドロップ量を推定するものである。
【0008】
さらに、特許文献4および特許文献5では、圧延機の経時的な圧延特性の変化による制御誤差を考慮して、モデル式の係数(モデルパラメータ)を更新する方法が開示されている。
【特許文献1】特開昭61−222619号公報
【特許文献2】特開平3−243204号公報
【特許文献3】特開平4−294809号公報
【特許文献4】特開平5−253609号公報
【特許文献5】特開平5−285515号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記で挙げた特許文献で開示された技術は、いくつかのパラメータを含む物理モデル式を用いて、エッジドロップ制御を行うものであり、物理モデルを厳密にする為にパラメータの数を増やすと、エッジドロップ量を精度よく推定するモデルをえるにはパラメータの調整が難しいという問題がある。
【0010】
また逆に、パラメータの数を少なくする、もしくは単純な線形モデルとした場合には、モデルの非線形的な部分が表現できず、それがモデル誤差となり、エッジドロップ量推定精度が悪くなるという問題もある。
【0011】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、パラメータの調整が簡単でかつ高いエッジドロップ量推定精度を有するエッジドロップ制御方法および装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の請求項1に係る発明は、先細り形状で、対向配設された1対のワークロールを備えた圧延スタンドを1スタンド以上有するタンデム圧延機による圧延を行う際の被圧延材のエッジドロップ量の制御を行うエッジドロップ制御方法において、入力項目および出力項目の実績データをデータベースとして蓄えるデータベース作成工程と、これから圧延される被圧延材の前記入力項目のデータを要求点データとして入力する要求点データ入力工程と、前記データベース内の全データと前記要求点データとの距離計算を行い、この計算した距離が短い順にデータを近傍データとして1つまたは複数選択する近傍データ選択工程と、選択された近傍データに基づいて、これから圧延される被圧延材のワークロールシフト位置を決定するワークロールシフト位置決定工程と、圧延を実施するごとに新たな実績データを、前記データベースに追加または更新するデータベース更新工程とを有することを特徴とするエッジドロップ制御方法である。
【0013】
また本発明の請求項2に係る発明は、請求項1に記載のエッジドロップ制御方法において、前記データベース作成工程では、入力項目の実績データは、圧延前の被圧延材のエッジドロップ量測定値もしくはクラウン量測定値、ベンダー圧、中間ロールシフト位置、圧延荷重、圧下率、母板厚、タンデム出側仕上げ板厚、設定板幅、および圧延後被圧延材のタンデム圧延機出側エッジドロップ量のいずれか、またはそれらの組合わせであり、
出力項目の実績データは、ワークロールシフト位置であることを特徴とするエッジドロップ制御方法である。
【0014】
また本発明の請求項3に係る発明は、請求項1または請求項2に記載のエッジドロップ制御方法において、前記ワークロールシフト位置決定工程では、選択された近傍データから重回帰モデルを作成し、作成した重回帰モデルに前記要求点データを代入することにより、これから圧延される被圧延材のワークロールシフト位置を決定することを特徴とするエッジドロップ制御方法である。
【0015】
また本発明の請求項4に係る発明は、請求項1または請求項2に記載のエッジドロップ制御方法において、前記ワークロールシフト位置決定工程では、選択された近傍データの出力項目であるワークロールシフト位置の実績値を平均することにより、これから圧延される被圧延材のワークロールシフト位置を決定することを特徴とするエッジドロップ制御方法である。
【0016】
また本発明の請求項5に係る発明は、請求項2ないし請求項4のいずれか1項に記載のエッジドロップ制御方法において、入力項目の実績データに、ワークロールクロス量を加えることを特徴とするエッジドロップ制御方法である。
【0017】
さらに本発明の請求項6に係る発明は、先細り形状で、対向配設された1対のワークロールを備えた圧延スタンドを1スタンド以上有するタンデム圧延機において、出側エッジドロップ収束判定、入力項目および出力項目の実績データを蓄えるデータベース、これから圧延される被圧延材の前記入力項目のデータに近い近傍データ選択、およびシフト位置決定の機能を有するエッジドロップ制御装置と、決定したシフト位置に基づいて前記ワークロールのシフト量を制御するワークロールシフト量制御装置とを備えることを特徴とするエッジドロップ制御装置である。
【発明の効果】
【0018】
本発明では、各種の圧延実績データを入力項目とし、ワークロールシフト位置を出力項目としてデータベースとして蓄えておき、これから圧延する材料に対して、その要求点の近傍を選択し、選択した近傍データを用いて局所モデルを作成する、または近傍データの平均値をとるか、最も類似性の高い実績データを選択するようにしたので、モデルの非線形性による誤差が小さくなり、高いエッジドロップ量推定精度を有するエッジドロップ制御が実現できる。また、要求点が発生する度に、その要求点に対する近傍を選択し直すため、パラメータの調整も必要ないという効果もある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明を実施するための最良の形態について、数式および図を用いて以下に具体的に説明を行う。図1は、本発明を適用するタンデム圧延機および制御装置の構成概要を示す図である。図中、1は被圧延材、2はプロフィル計、3はエッジドロップ計、4はタンデム圧延機第1スタンド、5は片テーパ付上ワークロール、6は片テーパ付下ワークロール、7はエッジドロップ制御装置、8はワークロールシフト量制御装置、および9はプロセスコンピュータをそれぞれ表す。
【0020】
本発明を適用するタンデム圧延機は、被圧延材を介して1対対向配設され、該被圧延材の幅方向に互いに反対側の片側端部に先細り形状(テーパー形状)を有すると共に、それぞれを軸線方向に移動自在のワークロールを備えた圧延スタンドを1スタンド以上有する。また、先の1対対向配設されたワークロールは、互いにクロスさせるタイプのものでもよい。
【0021】
被圧延材1を圧延するタンデム圧延機の入側にはプロフィル計2が設置され、入側エッジドロップ、及びクラウン量が測定できるようになっている。さらに、タンデム圧延機出側にはエッジドロップ計3が設置されており、出側エッジドロップ量を測定できるようになっている。タンデム圧延機第1スタンド4(先頭のスタンド)は、片テーパ付上ワークロール5および片テーパ付下ワークロール6をそれぞれ有し、これらはエッジドロップ制御装置7でのシフト位置決定を受けたワークロールシフト量制御装置8の指令によってワークロールがシフトする機能を備えている。エッジドロップ制御装置7は、出側エッジドロップ収束判定、後述するデータベース、近傍データ選択、およびシフト位置決定などの機能を有する。なお、シフト位置決定以外の機能は、エッジドロップ制御装置7に図示のように内蔵するものであっても、それぞれの別個の装置で実現してエッジドロップ制御装置7に集約するものであってもよい。
【0022】
プロセスコンピュータ9からは、設定情報として入側板厚、仕上げ板厚、トータル圧下率、ベンダー圧設定値、IMRシフト設定値、および設定板幅などの情報が、またタンデム圧延機第1スタンド4からは、ミル実績情報としてベンダー圧、中間ロールシフト位置(IMRシフト位置)、およびワークロールシフト位置などの情報が、エッジドロップ制御装置7にもたらされる。
【0023】
図2は、予測要求点とデータベース内の要求点近傍データ(要求点と類似度の高い過去のデータ)の関係を示す概念図である。この図は、予測要求点すなわちこれから圧延する圧延材のデータとデータベース内のデータを、例えばワークロールシフト位置量、入側エッジドロップ量、および仕上げ板厚の3次元でプロットしたものであり、要求点に近い選択されたデータとそれ以外のデータを模式的に表している。
【0024】
図3は、本発明の処理手順の例を示すフローチャートである。図に従って、手順を説明していく。
【0025】
(1)データベース作成工程(Step01)
図2の概念図では、出力項目をワークロールシフト位置とし、入力項目をタンデム圧延機入側で測定した被圧延帯板のエッジドロップ量(入側エッジドロップ量)、及び仕上げ板厚の2項目でしか表現していないが、入力項目としてより多くの項目を選ぶようにすればよい。例えば、[入側エッジドロップ量、ベンダー圧、IMRシフト位置、トータル圧下率、母板厚、仕上げ板厚、設定板幅、出側エッジドロップ量]などを選択する。また、前述のワークロールを互いにクロスさせるタイプのものにあっては、入力項目としてワークロールクロス量を加えるものとする。
【0026】
なお、入側エッジドロップ量は、ここではエッジから15mm位置のエッジドロップ量としておくが、他の部位でのエッジドロップ量を用いてもよい。以下の説明では、入力項目および出力項目は、便宜上次に示すX=[EDin15、F、IMR、γ、H、h、B、EDout15]、およびY=WR(ワークロールシフト位置)と表現する。
【0027】
X=[EDin15、F、IMR、γ、H、h、B、EDout15]=[x1 x2 x3 x4 x5 x6 x7 x8 ]
ここで、
・EDin15:入側プロフィル計で実測したエッジ15mm位置の入側エッジドロップ量
・F :第1スタンドベンダー圧実績値
・IMR:第1スタンドIMRシフト位置実績値
・γ :入側設定板厚と設定仕上げ板厚から計算したトータル圧下率
・H :入側設定板厚(もしくは入側板厚測定値)
・h :設定仕上げ板厚(もしくは仕上げ板厚測定値)
・B :設定板幅
・EDout15:タンデム圧延機出側で実測したエッジ15mm位置の出側エッジドロップ量
図1で示したエッジドロップ制御装置7には、入力項目Xと出力項目Yに対する過去の実績データをデータサイズN点のデータベースとして蓄えておく。ただし、ここではデータベースとして蓄えるデータは、FB制御によってタンデム圧延機出側で測定したエッジ15mm位置のエッジドロップ量が目標値(-1〜0μm)に収束している時の実績値とする。
【0028】
上記各入力項目に対して、あるED15に対して測定点が第1スタンド直下に来たタイミングのF、IMRの実績データを収集する。さらに、ED15測定点をエッジドロップ計3までトラッキングし、その点でのタンデム出側のエッジ15mm位置のエッジドロップ測定値が目標値(-1〜0μm)に収束していれば、ED15、及びED15測定点が第1スタンド直下に来たタイミングのF,IMR実績データ、及び上記残りの入力項目をデータベースに蓄えるデータとして採用する。
【0029】
次に、これから圧延する材料の先端部がタンデムミル入側に近づいたタイミングで、その材料の出側エッジドロップ量を目標値に収束させるためのワークロールシフト位置を、エッジドロップ制御装置内7で計算する。
【0030】
(2)要求点データ入力工程(Step02)
要求点(これから圧延する材料の入力)データを採取する。要求点Qを下記のとおりに表す。
【0031】
Q=[EDin15、F、IMR、γ、H、h、B、EDout15]=[ q1 q2 q3 q4 q5 q6 q7 q8]
ここで、
・ED15:入側プロフィル計で実測したエッジ15mm位置の入側エッジドロップ量
・F :これから圧延する材料の先頭位置が第1スタンド直下に来たタイミングで設定されるP/Cで計算されたベンダー圧設定値
・IMR:これから圧延する材料の先頭位置が第1スタンド直下に来たタイミングで設定されるP/Cで計算されたIMRシフト位置設定値
・γ :入側設定板厚と設定仕上げ板厚から計算したトータル圧下率
・H :入側設定板厚(もしくは入側板厚測定値)
・h :設定仕上げ板厚(もしくは仕上げ板厚測定値)
・B :設定板幅
(3)近傍データ選択工程(Step03)
a)データベース内のデータ編集
データベース内の全点にする入力変数ベクトルX=[ x1 x2 x3 x4 x5 x6 x7 x8 ]を正規化する。
【0032】
【数1】

【0033】
データベース全点数N点について入力変数ベクトルXの各成分を正規化したものをxp'とすると下記のように表せる。
【0034】
【数2】

【0035】
b)要求点Qとの距離計算
入力変数ベクトルXに対して、出力Yへの影響度に見合った入力変数間重み付けを実施する。入力変数間重みWを、以下のように表す。
【0036】
【数3】

【0037】
要求点Qとデータベース内の各入力変数X間の重み付き距離Dは、下記のように表せる。
【0038】
【数4】

【0039】
なお、ここでは距離計算の例として、ユークリッド距離を示したが、他の距離計算で行っても良い。
【0040】
c)近傍データの選択
上記b)で求めた距離が小さい順に並べ、小さい順にk個のデータを選択する。
【0041】
(4)ワークロールシフト位置決定工程(Step04)
a)重回帰モデルによる決定
近傍データを、下記のようにおく。
【0042】
【数5】

【0043】
すると、重回帰式および係数ベクトルは、以下のように求まる。
【0044】
【数6】

【0045】
このように求めた重回帰式に要求点データを代入することにより求めた値が、要求点Qに対するワークロールシフト位置である。
【0046】
b)重み付き平均による決定
近傍の出力データを下記のように置く。
【0047】
【数7】

【0048】
そして、重み係数および要求点からの距離に応じた重み付き平均は、下記のように表せる。
【0049】
【数8】

【0050】
このように求めた重み付き平均値が、要求点Qに対するワークロールシフト位置である。
【0051】
c)最近傍データによる決定
前述(3)c)で求めたk個のデータの内、一番先頭すなわち一番距離が小さいデータのワークロールシフト位置を用いるものである。これは、前述(3)c)で、k=1としても同じである。
【0052】
(5)データベース更新工程(Step05)
圧延を実施するごとに上記(1)の方法で、データベースを追加または更新する。このようにすると、更に精度の良いワークロール位置設定値を求めることができる。
【実施例】
【0053】
実施例として、従来の物理モデルを用いてワークロールシフト位置をプリセットした場合と、本発明を適用してプリセットした場合とのエッジドロップ制御結果の一例を、図4および図5に示す。
【0054】
図4および図5は、それぞれワークサイドおよびドライブサイドのエッジドロップ率をヒストグラムの形で示したものである。なお、エッジドロップ率とは、以下の式で定義した値をとっている。
エッジドロップ率(%)=タンデム圧延機出側エッジドロップ量/タンデム圧延機出側板厚×100
本発明を適用したエッジドロップ制御は、従来の物理モデルを用いたエッジドロップ制御と比べて、エッジドロップ率0からの偏りを示すオフセット、さらにデータのバラツキもともに小さいことが分り、制御性能の良さが確認できる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明を適用するタンデム圧延機および制御装置の構成概要を示す図である。
【図2】予測要求点とデータベース内の要求点近傍データの関係を示す概念図である。
【図3】本発明の処理手順の例を示すフローチャートである。
【図4】実施例(ワークサイドのエッジドロップ率)を示す図である。
【図5】実施例(ドライブサイドのエッジドロップ率)を示す図である。
【符号の説明】
【0056】
1 被圧延材
2 プロフィル計
3 エッジドロップ計
4 タンデム圧延機第1スタンド
5 片テーパ付上ワークロール
6 片テーパ付下ワークロール
7 エッジドロップ制御装置
8 ワークロールシフト量制御装置
9 プロセスコンピュータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先細り形状で、対向配設された1対のワークロールを備えた圧延スタンドを1スタンド以上有するタンデム圧延機による圧延を行う際の被圧延材のエッジドロップ量の制御を行うエッジドロップ制御方法において、
入力項目および出力項目の実績データをデータベースとして蓄えるデータベース作成工程と、
これから圧延される被圧延材の前記入力項目のデータを要求点データとして入力する要求点データ入力工程と、
前記データベース内の全データと前記要求点データとの距離計算を行い、この計算した距離が短い順にデータを近傍データとして1つまたは複数選択する近傍データ選択工程と、
選択された近傍データに基づいて、これから圧延される被圧延材のワークロールシフト位置を決定するワークロールシフト位置決定工程と、
圧延を実施するごとに新たな実績データを、前記データベースに追加または更新するデータベース更新工程とを有することを特徴とするエッジドロップ制御方法。
【請求項2】
請求項1に記載のエッジドロップ制御方法において、
前記データベース作成工程では、
入力項目の実績データは、圧延前の被圧延材のエッジドロップ量測定値もしくはクラウン量測定値、ベンダー圧、中間ロールシフト位置、圧延荷重、圧下率、母板厚、タンデム出側仕上げ板厚、設定板幅、および圧延後被圧延材のタンデム圧延機出側エッジドロップ量のいずれか、またはそれらの組合わせであり、
出力項目の実績データは、ワークロールシフト位置であることを特徴とするエッジドロップ制御方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のエッジドロップ制御方法において、
前記ワークロールシフト位置決定工程では、
選択された近傍データから重回帰モデルを作成し、作成した重回帰モデルに前記要求点データを代入することにより、これから圧延される被圧延材のワークロールシフト位置を決定することを特徴とするエッジドロップ制御方法。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載のエッジドロップ制御方法において、
前記ワークロールシフト位置決定工程では、
選択された近傍データの出力項目であるワークロールシフト位置の実績値を平均することにより、これから圧延される被圧延材のワークロールシフト位置を決定することを特徴とするエッジドロップ制御方法。
【請求項5】
請求項2ないし請求項4のいずれか1項に記載のエッジドロップ制御方法において、
入力項目の実績データに、ワークロールクロス量を加えることを特徴とするエッジドロップ制御方法。
【請求項6】
先細り形状で、対向配設された1対のワークロールを備えた圧延スタンドを1スタンド以上有するタンデム圧延機において、
出側エッジドロップ収束判定、入力項目および出力項目の実績データを蓄えるデータベース、これから圧延される被圧延材の前記入力項目のデータに近い近傍データ選択、およびシフト位置決定の機能を有するエッジドロップ制御装置と、
決定したシフト位置に基づいて前記ワークロールのシフト量を制御するワークロールシフト量制御装置とを備えることを特徴とするエッジドロップ制御装置。

【図1】
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【図3】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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