説明

エッジワイズコイル製造装置

【課題】絶縁被覆自己融着電線を編んだ編組線であって且つ断面が偏平形状の編組線(W2)を用いてエッジワイズコイルを製造する。
【解決手段】扁平形状編組線送出機構(10)から送り出された断面が偏平形状の編組線(W2)を、巻芯(70)にソレノイド状に巻き取る。この時、巻線ローラー(30,40,50,60)で編組線(W2)の扁平面を平面部(71)に押し付けた状態にすると共に巻芯(70)に巻き取られた扁平形状の編組線(W2)を巻芯(70)の平面部(71)と巻線ローラー(30,40,50,60)の間に常に挟むことでエッジワイズコイルとしての形状を整える。
【効果】高周波での損失が少ないエッジワイズコイルを製造できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エッジワイズコイル製造装置に関し、さらに詳しくは、絶縁被覆自己融着電線を編んだ編組線であって且つ断面が偏平形状の編組線を用いてエッジワイズコイルを製造するためのエッジワイズコイル製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数本の丸線、箔又は平角線の線材を配列して板状線材群とし、その板状線材群をエッジワイズ巻きしたエッジワイズコイルが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
他方、編組線をボビンに巻回した電子部品が知られている(例えば、特許文献2参照。)。但し、これはエッジワイズコイルではない。
【特許文献1】特開平4−75303号公報
【特許文献2】特開2002−141232号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
エッジワイズコイルでは、板状線材群を構成する素線本数を増やすほど渦電流が細分化され高周波損失を低減させうるが、上記従来のエッジワイズコイルでは素線が平行である構造上、素線本数を増やすのに限界があり、高周波損失を十分に低減させるのにも限界がある。また、各素線が平行であると、外側から内側までの素線間で電流の不均一を生じる問題点がある。
これに対して、絶縁被覆自己融着電線を編んだ編組線であって且つ断面が扁平形状の編組線を用いてエッジワイズコイルを製造すれば上記問題点を改善することが出来る。
しかし、従来、このようなエッジワイズコイルを製造するための装置は知られていない。
そこで、本発明の目的は、絶縁被覆自己融着電線を編んだ編組線であって且つ断面が偏平形状の編組線を用いてエッジワイズコイルを製造するためのエッジワイズコイル製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
第1の観点では、本発明は、絶縁被覆自己融着電線を編んだ編組線であって且つ断面が偏平形状の編組線(W2)を送り出す扁平形状編組線送出手段と、前記扁平形状の編組線(W2)の扁平面を押し付けうる平面部(71)を有し且つ軸回転しつつ前記扁平形状の編組線(W2)をソレノイド状に巻き取るための巻芯(70)と、前記扁平形状の編組線(W2)が前記巻芯(70)に巻き取られるのを軸回転しつつ補助し且つ前記巻芯(70)に巻き取られた前記扁平形状の編組線(W2)のターン数に応じて前記巻芯(70)の回転軸(73)方向に前記巻芯(70)に対して相対移動する巻線ローラー(30,40,50,60)とを具備したことを特徴とするエッジワイズコイル製造装置(100)を提供する。
上記構成において、絶縁被覆自己融着電線を断面円形状または楕円状に編んだ編組線(W1)を圧縮して断面が偏平形状の編組線(W2)としてもよいし、初めから板状に編んだ編組線(平編み電線)を用いてもよい。
また、上記構成において、巻芯(70)に巻き取られた扁平形状の編組線(W2)のターン数に応じて巻線ローラー(30,40,50,60)を移動してもよいし、巻芯(70)を移動してもよい。
また、巻線ローラー(30,40,50,60)は、コイル形状精度を安定にするために、巻芯(70)の外周面に90゜の角度間隔で4個を設けるのが実用的であるが、均等または不均等な角度間隔で5個以上設けてもよい。
上記第1の観点によるエッジワイズコイル製造装置(100)では、扁平形状編組線送出手段から送り出された断面が偏平形状の編組線(W2)を、巻芯(70)にソレノイド状に巻き取るが、この時、巻線ローラー(30,40,50,60)で編組線(W2)の扁平面を平面部(71)に押し付けた状態にすると共に巻芯(70)に巻き取られた扁平形状の編組線(W2)を巻芯(70)の平面部(71)と巻線ローラー(30,40,50,60)の間に常に挟むことでエッジワイズコイルとしての形状を整える。これにより、絶縁被覆自己融着電線を編んだ編組線であって且つ断面が偏平形状の編組線(W2)を用いてエッジワイズコイルを好適に製造することが出来る。
なお、所定のターン数だけソレノイド状に巻き終わると、編組線(W2)の巻き初め側の端部と巻き終わり側の端部の絶縁被覆を除去しそれら端部に通電加熱装置を接続し通電加熱するか、又は、温風発生装置で温風を吹き付けて加熱し、自己融着させた後、冷却する。これにより、巻芯(70)から取り外しても、コイル形状を保つことが出来る。
【0005】
第2の観点では、本発明は、前記第1の観点によるエッジワイズコイル製造装置(100)において、前記扁平形状編組線送出手段が、断面円形状または楕円状に絶縁被覆自己融着電線を編んだ編組線(W1)を圧縮して偏平形状として送り出す圧縮送りローラー(11,12)を含むことを特徴とするエッジワイズコイル製造装置(100)を提供する。
上記第2の観点によるエッジワイズコイル製造装置(100)では、圧縮送りローラー(11,12)により、絶縁被覆自己融着電線を断面円形状または楕円状に編んだ編組線(W1)を圧縮して断面が偏平形状の編組線(W2)としうる。このため、入手が容易な、絶縁被覆自己融着電線を断面円形状または楕円状に編んだ編組線(W1)を用いることが出来る。
【0006】
第3の観点では、本発明は、前記第1または前記第2の観点によるエッジワイズコイル製造装置(100)において、前記巻線ローラー(30,40,50,60)は、前記巻芯(70)に巻き取られた前記扁平形状の編組線(W2)の外周面の位置を規制するための外周面規制部(32,42,52,62)を有することを特徴とするエッジワイズコイル製造装置(100)を提供する。
上記第3の観点によるエッジワイズコイル製造装置(100)では、エッジワイズコイルの外周面に凹凸が生じるのを抑制することが出来る。
【0007】
第4の観点では、本発明は、前記第1から前記第3のいずれかの観点によるエッジワイズコイル製造装置(100)において、前記巻線ローラー(30,40,50,60)は、前記巻芯(70)の断面形状に応じて前記巻芯(70)の回転軸(73)から放射方向に移動可能であることを特徴とするエッジワイズコイル製造装置(100)を提供する。
上記第4の観点によるエッジワイズコイル製造装置(100)では、巻芯(70)の断面形状が円形であって且つその半径が変わる場合や巻芯(70)の断面形状が非円形である場合にも対応できる。
【0008】
第5の観点では、本発明は、前記第1から前記第4のいずれかの観点によるエッジワイズコイル製造装置(100)と、前記エッジワイズコイル製造装置(100)により製造した前記エッジワイズコイル(E)を分割金型(210)に挟み入れた状態で加熱加圧して整形する加熱加圧整形装置(200)とを具備したことを特徴とするエッジワイズコイル製造装置を提供する。
上記構成において、分割金型(210)に挟み入れたエッジワイズコイル(E)の加熱は、分割金型(210)を加熱して間接的にエッジワイズコイル(E)を加熱してもよいし、エッジワイズコイル(E)のリードを分割金型(210)から導出し、そのリードからエッジワイズコイル(E)に通電して直接的にエッジワイズコイル(E)を加熱してもよい。
上記第5の観点によるエッジワイズコイル製造装置では、所望の形状に精度高く整形したエッジワイズコイルを製造することが出来る。
【発明の効果】
【0009】
本発明のエッジワイズコイル製造装置によれば、絶縁被覆自己融着電線を編んだ編組線であって且つ断面が偏平形状の編組線を用いてエッジワイズコイルを好適に製造することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図に示す実施の形態により本発明をさらに詳細に説明する。なお、これにより本発明が限定されるものではない。
【実施例1】
【0011】
図1は、実施例1に係るエッジワイズコイル製造装置100を示す模式的側面図である。また、図2は、同正面図である。
このエッジワイズコイル製造装置100は、主要な駆動部を内蔵した駆動機構部1と、絶縁被覆自己融着電線を編んだ編組線であって且つ断面が偏平形状の編組線W2を送り出す扁平形状編組線送出機構10と、編組線W2の扁平面を押し付けうる平面部71を有し且つ軸回転しつつ編組線W2をソレノイド状に巻き取るための巻芯70と、編組線W2が巻芯70に巻き取られるのを軸回転しつつ補助し且つ巻芯70に巻き取られた編組線W2のターン数に応じて巻芯70の回転軸73の方向(以下、縦方向という)に移動する巻線ローラー30,40,50,60とを具備している。
【0012】
扁平形状編組線送出機構10は、絶縁被覆自己融着電線を断面円形状または楕円状に編んだ編組線W1を圧縮して偏平形状の編組線W2として送り出す圧縮送りローラー11,12と、圧縮送りローラー12を回転駆動する送りモーター13と、圧縮送りローラー11,12および送りモーター13を支持し縦方向および水平面内で縦方向に直交する方向(以下、横方向という)に移動可能な可動フレーム14と、可動フレーム14を縦方向に移動させるための縦移動モーター15と、可動フレーム14を横方向に移動させるための横移動モーター16とを含んでいる。
【0013】
可動フレーム14を縦方向に移動させることにより、編組線W2の中心線が巻線ローラー30の回転軸および巻芯70の回転軸73を含む平面に対して成す角度θ(以下、入線角度という)を調整することが出来る。この入線角度θを90度よりも小さくすれば、入線した編組線W2と既に巻芯70に巻き取られた編組線W2とが擦れるのを抑制することが出来る。
【0014】
また、可動フレーム14を横方向に移動させることにより、巻芯70の断面形状が円形であって且つその半径が変わる場合や巻芯70の断面形状が非円形である場合に対応することが出来る。
【0015】
巻芯70は、巻取りモーター72により、回転軸73で軸回転する。
巻芯70の平面部71は、製造するエッジワイズコイルの外周形状と同一の外周形状を持つ鍔状部材であり、編組線W2の巻き初めの端部である巻端末W3を通すスリットとそれを留める巻端末止め具74と最初の半ターンが嵌る傾斜状窪みを有している。
【0016】
巻線ローラー40は、編組線W2との摩擦により軸回転可能である。また、巻芯70の回転軸73から放射方向に移動可能であり、巻芯70の外周面に当接するように線幅バネ41によって付勢されている。
また、巻線ローラー40は、巻芯70に巻き取られた編組線W2の外周面の位置を規制するための外周面規制部42を有している。この外周面規制部42は、巻線ローラー40と一体であるが、巻線ローラー40に対して位置調整可能であり、巻芯70に巻き取られた編組線W2の最大外周面に当接するように位置調整されている。
【0017】
さらに、巻線ローラー40は、縦移動アーム44のスリット47に嵌合して支持されているが、縦移動アーム44を固定した状態でもスリット47の長さだけ縦方向に移動可能であり、巻芯70の平面部71に向かって巻線押えバネ45によって付勢されている。
縦移動モーター46は、巻芯70に巻き取られた編組線W2のターン数に応じて縦方向に縦移動アーム44を移動する。
【0018】
巻芯70に巻き取られた編組線W2を、巻芯70の平面部71に、巻線ローラー40で押える力は、巻線押えバネ45および縦移動アーム44の位置により調整することが出来る。
【0019】
巻線ローラー30,50,60も、巻線ローラー40と同じ構成である。
【0020】
図3は、断面形状が非円形の巻芯70を用いて、断面形状が非円形のエッジワイズコイルを製造する状態を示す正面図である。
巻芯70の回転に同期して可動フレーム14を横方向に往復移動させ、巻線ローラー30に入線する編組線W2に有害なストレスがかからないようにする。
【0021】
図4に示すように、所定のターン数だけソレノイド状に巻き終わると、巻端末W3と編組線W2の巻き終わり側の端部の絶縁被覆を除去し、それら端部に通電加熱装置80を接続し、通電加熱し、自己融着させた後、冷却する。これにより、巻芯70から取り外しても、コイル形状を保つことが出来る。
【0022】
実施例1のエッジワイズコイル製造装置100によれば、絶縁被覆自己融着電線を編んだ編組線であって且つ断面が偏平形状の編組線W2を用いてエッジワイズコイルを好適に製造することが出来る。また、巻線ローラー30,40,50,60の外周面規制部32,42,52,62が編組線W2を巻芯70に押し付けているので、直線部分がある断面形状のエッジワイズでも好適に製造することが出来る。
【実施例2】
【0023】
実施例2に係るエッジワイズコイル製造装置は、実施例1のエッジワイズコイル製造装置100と図5に示す加圧整形装置200の組合せにより構成される。
【0024】
図5に示すように、加圧整形装置200は、分割金型210と、通電加熱装置220とを具備してなる。
【0025】
分割金型210は、エッジワイズコイルEの空芯に嵌る芯体およびエッジワイズコイルEの底面を押さえる壁面を有する底金型211と、エッジワイズコイルEの外周面を押さえる壁面を有する右金型212および左金型213と、エッジワイズコイルEの上面を押さえる壁面を有する上金型214とからなる。
【0026】
通電加熱装置220は、分割金型210に挟み入れた状態でエッジワイズコイルEに通電加熱する電源である。
【0027】
エッジワイズコイルEは、絶縁被覆自己融着電線による編組線W2を用いてエッジワイズコイル製造装置100により製造した物である。
【0028】
図6に示すように、エッジワイズコイルEを分割金型210に挟み入れた状態で加圧用アクチュエータ(図示省略)で各金型211〜214を加圧し、且つ、分割金型210から導出したエッジワイズコイルEのリードから通電加熱装置220により通電してエッジワイズコイルEを加熱する。
【0029】
実施例2の観点によるエッジワイズコイル製造装置では、所望の形状に精度高く整形したエッジワイズコイルを製造することが出来る。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明のエッジワイズコイル製造装置は、高周波での損失が少ないエッジワイズコイルの製造に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】実施例1に係るエッジワイズコイル製造装置(断面形状が円形の巻芯を用いた場合)を示す模式的側面図である。
【図2】実施例1に係るエッジワイズコイル製造装置(断面形状が円形の巻芯を用いた場合)を示す模式的正面図である。
【図3】実施例1に係るエッジワイズコイル製造装置(断面形状が非円形の巻芯を用いた場合)を示す模式的正面図である。
【図4】実施例1に係るエッジワイズコイル製造装置で製造されたエッジワイズコイルに通電加熱する状態を示す模式的側面図である。
【図5】実施例2に係る加圧整形装置(分解時)を示す斜視図である。
【図6】実施例2に係る加圧整形装置(加圧整形時)を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0032】
1 駆動機構部
10 扁平形状編組線送出機構
11,12 圧縮送りローラー
30,40,50,60 巻線ローラー
70 巻芯
100 エッジワイズコイル製造装置
200 加圧整形装置
210 分割金型
220 通電加熱装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁被覆自己融着電線を編んだ編組線であって且つ断面が偏平形状の編組線(W2)を送り出す扁平形状編組線送出手段と、
前記扁平形状の編組線(W2)の扁平面を押し付けうる平面部(71)を有し且つ軸回転しつつ前記扁平形状の編組線(W2)をソレノイド状に巻き取るための巻芯(70)と、
前記扁平形状の編組線(W2)が前記巻芯(70)に巻き取られるのを軸回転しつつ補助し且つ前記巻芯(70)に巻き取られた前記扁平形状の編組線(W2)のターン数に応じて前記巻芯(70)の回転軸(73)方向に前記巻芯(70)に対して相対移動する巻線ローラー(30,40,50,60)と
を具備したことを特徴とするエッジワイズコイル製造装置(100)。
【請求項2】
請求項1に記載のエッジワイズコイル製造装置(100)において、前記扁平形状編組線送出手段が、断面円形状または楕円状に絶縁被覆自己融着電線を編んだ編組線(W1)を圧縮して偏平形状として送り出す圧縮送りローラー(11,12)を含むことを特徴とするエッジワイズコイル製造装置(100)。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のエッジワイズコイル製造装置(100)において、前記巻線ローラー(30,40,50,60)は、前記巻芯(70)に巻き取られた前記扁平形状の編組線(W2)の外周面の位置を規制するための外周面規制部(32,42,52,62)を有することを特徴とするエッジワイズコイル製造装置(100)。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載のエッジワイズコイル製造装置(100)において、前記巻線ローラー(30,40,50,60)は、前記巻芯(70)の断面形状に応じて前記巻芯(70)の回転軸(73)から放射方向に移動可能であることを特徴とするエッジワイズコイル製造装置(100)。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載のエッジワイズコイル製造装置(100)と、前記エッジワイズコイル製造装置(100)により製造した前記エッジワイズコイル(E)を分割金型(210)に挟み入れた状態で加熱加圧して整形する加熱加圧整形装置(200)とを具備したことを特徴とするエッジワイズコイル製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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