説明

エッジ検出方法、エッジ検出装置、及び検査装置

【課題】安定してエッジを検出することが可能なエッジ検出方法を提供すること。
【解決手段】処理部12は、補間画像データに含まれる画素の輝度値に基づいて、同一輝度値の複数の画素について画素の振れ幅を算出し、振れ幅が最も小さい画素の輝度値を算出する。そして、処理部12は、算出した輝度値をエッジ判定値とし、補間画像データに含まれる画素のうち、エッジ判定値と等しい値の画素をエッジとして検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
エッジ検出方法、エッジ検出装置、及び検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント基板を検査する検査装置は、CCD(Charge Coupled Device )等の撮像装置でプリント基板を撮像して得られた画像データを用いて、プリント基板を検査する。その検査のうちの1つは、プリント基板に形成された配線に関する検査である。検査装置は、画像データを画像処理してエッジを検出し(例えば、特許文献1参照)、エッジ間を配線として認識する。そして、配線の配線幅を計測し、その配線幅が規定範囲内か否かに基づいて、プリント基板の良否を判定する。
【0003】
近年、例えばフリップチップが搭載されるプリント基板は、配線の高精細化が進んでいる。このような配線を計測する場合、CCD等の撮像素子における分解能が不足する場合がある。このため、撮像装置で得られた画像データについて、画素値(例えば輝度)を補間することにより、CCD等の撮像素子のピッチより細かいピッチの画像データを作成する。この方法では、見かけ上の分解能を上げることができるため、高精細な配線の検証を行うことが可能となる。
【0004】
しかし、補間により得られた画像データでは、しきい値とするレベルの設定によって判定するエッジの位置が異なり、測定結果、即ち線幅が大きく変化する。このような変化を抑えるため、レベルを設定する方法として、平均値を用いる方法、輝度の傾きを用いる方法、等がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−242596号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、平均値を用いる方法では、配線が含まれるように平均値を求める領域を設定しなければならない。また、平均値を求める領域の大きさが、配線の影響がない程度に広く設定しなければならない。しかし、領域が広すぎると、平均値が照明むら等の影響を受けやすくなる。
【0007】
また、輝度の傾きを用いる方法では、微少区間(補間により作成した画素間)での傾き(輝度値の差)を用いてエッジを判定するため、画像データにノイズがある場合には、誤った傾きを算出してしまう。また、照明の具合によって光量が変化すると、傾きが変わるため、エッジを検出し難くなる。
【0008】
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、安定してエッジを検出することが可能なエッジ検出方法、エッジ検出装置、及び検査装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一観点によれば、画像を構成する画素の値に基づいて、同一輝度値の複数の画素について画素の振れ幅を算出し、前記振れ幅が最も小さい画素の輝度値を算出する輝度算出処理と、算出した輝度値をエッジ判定値とし、前記画像に含まれる画素のうち、前記エッジ判定値と等しい値の画素をエッジとして検出するパターンエッジ検出処理と、を含む。
【0010】
補間画像データに含まれる画素の配列方向とエッジがなす角度に応じて、同一輝度値の画素が並ぶ方向に対して、その方向と直交する方向に画素が振れた状態となる。この振れ幅は、エッジから離れるに従って大きくなる。従って、振れ幅の最も小さな画素の輝度値を算出することにより、エッジを示す輝度値を得て、エッジを検出する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一観点によれば、安定してエッジを検出することが可能なエッジ検出方法、エッジ検出装置、及び検査装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】一実施形態の検査装置の概略構成図。
【図2】エッジ検出処理のフローチャート。
【図3】画像分割の説明図。
【図4】(a)は検査対象物の一部拡大図、(b)は画像データの説明図。
【図5】補間処理の説明図。
【図6】補間処理後の画像データを示す説明図。
【図7】エッジ検出処理の説明図。
【図8】エッジ検出処理の説明図。
【図9】別のエッジ検出処理の説明図。
【図10】別のエッジ検出処理の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、一実施の形態を添付図面に従って説明する。
図1に示すように、検査装置は、撮像部11、処理部12、出力部13を含む。撮像部11は、例えばCCD(Charge Coupled Device )を含む一次元の撮像装置(所謂ラインCCD)である。なお、撮像部11として、CMOS構造の撮像素子を用いたものとしてもよい。また、二次元の撮像素子を用いたものとしてもよい。
【0014】
撮像部11は、検査対象物21を撮影するように配置されている。検査対象物21は、例えばプリント配線板であり、搬送装置14(例えば、ベルトコンベア)により搬送方向(図に示す矢印方向)に搬送される。
【0015】
撮像部11は、検査対象物21の全体を撮像するように配置されている。例えば、一次元の撮像部11は、水平面において搬送方向と直交する方向に沿って素子が配列されるように配置される。そして、撮像部11は、1ライン分の画像データを出力する。検査対象物21が搬送される。従って、撮像部11から出力される画像データは、検査対象物21を、その搬送方向に一定の間隔で分割したライン毎のデータとなる。
【0016】
処理部12は、画像メモリを有し、その画像メモリに撮像部11から出力される画像データを順次記憶する。これにより、画像メモリには、検査対象物21全体の画像データが記憶される。
【0017】
処理部12は、画像メモリに記憶した画像データを補間処理して補間画像データを生成する。補間処理は、画像データの画素間に、画素値に基づいて生成した補間画素を挿入することにより、画素間隔、つまり画素のピッチを見かけ上小さくして分解能を高くする処理である。処理部12は、補間画素の画素値を、例えば双三次補間(バイキュービック(Bicubic )補間)により生成する。
【0018】
次いで、処理部12は、補間画像データに基づいて、検査対象物21に含まれる測定対象物(例えば、基板上に形成された配線)のエッジを検出する。次いで、処理部12は、検出したエッジ間の距離を算出する。このエッジ間の距離は、配線の幅(パターン幅)に対応する。つまり、処理部12は、補間画像データから配線のエッジを抽出し、配線幅を算出する。
【0019】
次いで、処理部12は、算出した配線幅を設定値と比較する。設定値は、検査対象物21の合否を判定するための判定値であり、配線幅の許容範囲を示す値、つまり最小配線幅と最大配線幅を含む。従って、処理部12は、配線幅と設定値(最小配線幅、最大配線幅)と比較し、配線幅が許容範囲に入っている場合に、その配線幅の配線を合格(OK)と判定し、配線幅が許容範囲を超えている場合にその配線を不合格(NG)と判定する。処理部12は、検査対象物21全体において、全ての配線が合格の場合に、その検査対象物21を合格と判定し、少なくとも1つの不合格な配線が含まれる検査対象物21を不合格と判定する。従って、処理部12は、補間処理部、エッジ検出部、判定部を含む。
【0020】
処理部12は、処理における各種のデータを、出力部13に表示する。出力部13は、例えばLCD等の表示装置である。例えば、処理部12は、画像データに基づく画像、補間画像データに基づく画像、処理中のブロックの画像、各ブロックの判定結果、検査対象物21に対する判定結果、等を出力部13に表示する。尚、出力部13を、印刷装置(プリンタ等)としてもよい。また、表示装置と印刷装置を出力部13として備える構成としてもよい。なお、処理部12に対して設定値や処理に対する指示を入力する装置として、キーボードやマウスを備える構成としてもよい。
【0021】
次に、処理部12における処理を説明する。
先ず、補間処理を説明する。
図4(a)に示すように、検査対象物21には、絶縁体22上に所定幅の配線23が形成されている。絶縁体22は、例えばエポキシ樹脂系、フェノール樹脂系、ポリイミド樹脂系、不飽和ポリエステル樹脂系、ポリフェニレンエーテル樹脂系等の単独、変性物、混合物である。絶縁体22と配線23は、互いに反射率が異なる。例えば、配線23の反射率は、絶縁体22のそれと比べて高い。従って、配線23を撮像した画素から出力される画像データ(輝度値)は、絶縁体22に対する輝度値よりも値が大きい。
【0022】
更に、撮像部11の各画素は、所定の大きさを有している。従って、配線23のエッジ23aを撮像した画素から出力される画像データ(輝度値)は、画素により撮像する領域に含まれる配線23の部分と絶縁体22の部分との反射光に基づく。従って、図4(b)に示すように、画像データは、絶縁体22のみを撮影した画素に対応する領域31と、配線23のみを撮影した画素に対応する領域32と、1つの画素にて絶縁体22と配線23とを撮影した領域33を含む。図4(b)に示す点線は、図4(a)に示す配線23のエッジ23aを示す。領域31,32の境界線、即ち絶縁体22に対する輝度値の境界線と、配線23に対する輝度値の境界線は、エッジ23aを挟む両側において、それぞれ階段状の形状を示す。つまり、輝度値の境界は、階段状に変化する。
【0023】
そして、2つの領域31,32の間の領域33は、画素の領域内における配線23と絶縁体22からの反射光の光量に応じた輝度値のデータとなる。なお、図4(b)の左上に、1つの画素により撮像される領域34を示している。なお、上記の領域31,32における輝度値は、原理的に一定の値であるが、実際の画像データの画素値(輝度値)は、配線23、絶縁体22の表面の状態(例えば凹凸)に基づく反射率の変化、等により変化する。
【0024】
処理部12は、上記のようにして得られた画像データに対し、補間処理を行う。補間処理は、上記したように、三次補間(バイキュービック(Bicubic )補間)により、補間画素の画素値を算出する。処理部12は、画像データにおいて、隣接する2つの画素間を10分割する。つまり、処理部12は、4つの画素を矩形の頂点とする領域を、100個の補助領域に分割し、各補助領域の頂点を補助画素の座標値とする。そして、処理部12は、元の画像データに含まれる画素、及び補間画素の画素値を、その周辺の複数の画素値に基づいて算出する。画像データの画素値(輝度値)と、補間処理により得られた画素値(輝度値)を図5に示す。この図5において、黒四角は撮像部11から出力される画像データの画素値(計測点)を示し、一点鎖線は、補間画像データに含まれる画素値を結ぶ線分を示す。
【0025】
上記の補間処理により生成された補間画像データを図6に示す。尚、図6は、補間画像データに含まれる画素の画素値(輝度値)の分布を領域41〜45として示している。図中の実線は、画素値を所定の値(例えば20)毎の範囲に区分した領域の境界線を示している。例えば、領域41は、輝度値が[40]〜[60]の画素が含まれる領域であり、領域42は、輝度値が[60]〜[80]の画素が含まれる領域である。
【0026】
同じ画素値(輝度値)の画素が含まれる領域の境界は、例えば、その領域に含まれる画素のうち、隣接する画素の画素値が異なる(例えば小さい)画素を結ぶ線分として得られる。この境界線は、輝度値に応じて、配線が延びる方向と略直交する方向に波打つ。つまり、同一値の補間画素を結ぶラインにおいて、所定の輝度値に対するラインは波打ち、別の輝度値に対するラインは波打たない。この波打ち現象は、画像データを構成する画素の配列方向(X軸及びY軸)に対して、配線23(エッジ23a)が傾き、その傾きに応じて撮像部11の画素に入射する光量の変化(強弱)により発生する。
【0027】
エッジ部分からの反射光は、明るい側(反射光量が相対的に多い側であって、配線23の部分)と暗い部分(反射光量が相対的に少ない側であって、絶縁体22の部分)の双方にボケを生じさせる。その量は、ガウシアン分布にて変化する。従って、輝度値が同じ補間画素を結ぶ線分の振幅は、配線23の中心部分からエッジ23aに向って徐々に小さくなる。また、絶縁体22から配線23に向って、即ちエッジ23aに向って徐々に小さくなる。従って、同じ輝度値の画素を結ぶ線分のうち、波打ちが最も小さい、即ち振幅が最も小さい線分が、配線23のエッジに対応する位置となる。
【0028】
次に、エッジ検出処理の一例を説明する。
処理部12は、図2に示すフローチャートに従って各処理を実行し、エッジを検出する。
【0029】
即ち、ステップ51において、処理部12は、補間画像データを入力し(ステップ51:画像入力処理)、その画像を複数の矩形領域(ブロック)に分割する(ステップ52:ブロック分割処理)。例えば、処理部12は、図3に示すように、補間画像データ60を、縦横をそれぞれ3分割して9個のブロック61を生成する。なお、分割数は、1以上の値に適宜変更されてもよい。また、検査対象物21の大きさ、検査対象物21に対する照明の状態等に応じて設定されてもよい。また、画像データの状態、例えば輝度の状態に応じて分割数を変更するようにしてもよい。
【0030】
次いで、処理部12は、画素値に基づいて、斜めに延びるパターン(配線)を抽出する(ステップ53:斜めパターン抽出処理)。画像データの配列方向(画素の配列方向であって、X軸及びY軸)に対して斜めに延びる配線は、図4〜図6において説明したように、同じ輝度値の画素を結び波打つ線分を生じさせる。従って、処理部12は、所定の画素値(輝度値)について、その輝度値が同じ画素を結ぶ線分を検出し、その線分が波打つか否かにより、斜めに延びる線分を検出する。なお、画素を結ぶ線分の波打ちは、画素の座標値の増加量(又は減少量)が周期的に変化することにより検出可能である。波打っていない線分つまり直線は、画素の座標値(例えばX軸の座標値)の増加量(減少量)は一定である。
【0031】
そして、処理部12は、抽出したパターン(配線)の延びる方向を算出する。この方向は、例えば、近似直線により得られる。即ち、処理部12は、同一輝度値の画素の位置(座標値)に基づいて、各座標値をパラメータとする近似直線の一次方程式(y=ax+b)の係数(a,b)を算出する。その係数(a)が配線の延びる方向(傾き)を示す。
【0032】
次いで、処理部12は、(ステップ54:輝度算出処理)。処理部12は、エッジとする輝度を求める。
配線の平行な2つのエッジにおいて発生する波打ち線分は、図7に示すように、配線の中心に対して線対称に発生する。図中、矢印は配線の延びる方向を示す。同じ輝度値を結ぶ2つの波打ち線分71a.71b(図中、一点鎖線で示す)は、この方向に対して直交する方向に延びる線分と交差する。処理部12は、上記のステップ53において検出したパターンの方向に沿って所定個の画素により線分を形成する。このとき線分を判定するために利用する画素の個数は、画素を結ぶ線分の波打ち、つまり線分の振幅が判定可能な個数であればよく、例えば、波打ちの1周期分に相当する個数(例えば、50個)とする。処理部12は、それらの交点72a,72bの間隔(交点間距離)を算出する。
【0033】
図8に示すように、交点間距離を示す線分71は、配線の延びる方向の位置(例えば、X軸の座標値を配線の延びる方向に座標変換したときの値)に対して、増減を繰り返す。この増減が最も小さい線分が、波打ち量(振幅)が最も小さい線分となる。図7に示す線分では、線分73a,73b(図8では線分73)が、波打ちが最も小さな線分となる。そして、処理部12は、この線分の輝度を得る。尚、図7,8に示す線分は、所定値(例えば20)毎の線分を示す。このため、算出により最も波打ちが少ないとして得られる線分を示していない場合がある。
【0034】
次いで、処理部12は、(ステップ55:パターンエッジ検出処理)。処理部は、求めた輝度値をエッジ判定値とし、そのエッジ判定値に基づいて、処理中のブロック61に含まれるパターンのエッジを検出する。このときに検出されるエッジは、ステップ53において検出した斜めパターン全体のエッジ、他のパターンのエッジ(例えば、図4(a)において左上と右下のエッジ23aを含む。更に、検出されるエッジは、画素の配列方向と平行なエッジを含む。このように、画素の配列方向と平行なエッジにおいても、光学的に生じるボケによりエッジが検出し難くなっている。このため、上記のように算出した輝度値によりエッジを検出することで、画素の配列方向のエッジにおいても安定して検出することができる。
【0035】
次いで、処理部12は、全ブロック61でエッジを検出したか否かを判定する(ステップ56:終了判定処理)。処理部12は、全てのブロック61におけるエッジを検出した場合、この処理を終了する。一方、処理部12は、未検出のブロック61が存在する場合、ステップ53に移行する。
【0036】
以上のように、処理部12は、矩形領域(ブロック)61毎に、ステップ53〜55の処理を実行する。従って、処理部12は、ブロック61毎に、波打ちが最も小さな線分を表す輝度値を算出し、その輝度値に基づいてエッジを検出する。
【0037】
つまり、各ブロック61においてエッジを検出するための輝度値は、ブロック61に含まれる画像の画素値に応じて設定される。従って、検査対象物21に対して、照明等による輝度ムラが生じた場合でも、その輝度ムラに応じた輝度値を算出するため、輝度ムラの影響を低減することができる。
【0038】
なお、輝度ムラの発生は、試験的な検査(試験用基板を用いた検査)により、予め判定することができる。このため、検査対象物21に発生する輝度ムラに応じて、補間画像データ60をブロック61(図3参照)に分割する際の分割数を設定するとよい。このように設定することで、輝度ムラの影響がないエッジ検出及び配線23の幅測定を行うことができ、検査に対する誤判定を低減することが可能となる。
【0039】
なお、上記の説明では、画素を結ぶ線分として説明したが、これは、同一輝度値の画素の位置関係を判りやすくするためのものであり、実際の処理として線分を必ずしも用いるものではない。例えば、処理部12は、ブロック61に含まれる画素の輝度値の最大値(又は最小値)から順に着目し、着目した輝度値の画素を抽出する。そして、直線的に配列されていな非直線状態の画素について、抽出した画素の座標値に基づいて、波打ち量(振幅)を算出するようにしてもよい。
【0040】
以上記述したように、本実施の形態によれば、以下の効果を奏する。
(1)処理部12は、補間画像データに含まれる画素の輝度値に基づいて、同一輝度値の複数の画素について画素の振れ幅を算出し、振れ幅が最も小さい画素の輝度値を算出する。そして、処理部12は、算出した輝度値をエッジ判定値とし、補間画像データに含まれる画素のうち、エッジ判定値と等しい値の画素をエッジとして検出する。
【0041】
補間画像データに含まれる画素の配列方向(X軸及びY軸)と、配線23のエッジ23aがなす角度に応じて、同一輝度値の画素を結ぶ線分に波打ち現象が発生する。つまり、同一輝度値の画素の位置が、直線状態と異なる状態、つまり、同一輝度値の画素が並ぶ方向に対して、その方向と直交する方向に画素が振れた状態となる。この振れ幅(線分の振幅)は、エッジ23aから離れるに従って大きくなる。従って、振れ幅の最も小さな画素の輝度値を算出することにより、エッジを示す輝度値を得ることができる。そして、この輝度値によりブロック61内のエッジを安定して検出することができる。
【0042】
(2)線分の波打ち(画素の振れ幅)は、画素の輝度値が変化しても同様に発生する。従って、画素の輝度値の変化、即ち光の当り具合などに影響されることなく、安定してエッジを検出することができる。
【0043】
(3)処理部12は、補間画像データ60を複数のブロック61に分割し、ブロック61毎に、線分の振幅が最も小さな画素の輝度値を算出するようにした。これにより、ブロック61毎の輝度の変化、例えば輝度ムラが発生しても、それに影響されることなく、安定してエッジを検出することができる。
【0044】
(4)処理部12は、撮像部11にて検査対象物21を撮像した画像データに対して、補間処理を行って撮像素子のピッチよりも小さなピッチの補間画素を生成する。そして、処理部12は、補間画素を含む補間画像データに基づいて、エッジを判定するようにした。これにより、見かけ上の分解能を上げ、かつエッジ23aを安定して検出することで、高精細な配線23の幅を測定することができる。
【0045】
(5)処理部12は、補間画像データから斜めパターンを検出し、その斜めパターンにより発生する波打ち現象の線分に基づいて、エッジを判定する輝度値を算出するようにした。従って、補間画像データ全体、又は平均値を算出するために必要な画素数と比べ、少ない個数の画素によりエッジを検出することができる。このため、エッジ検出処理に要する時間を短縮することができる。また、少ない画素数にてエッジを検出することができるため、処理能力が低い処理部12でもエッジを検出することができる。
【0046】
尚、上記実施の形態は、以下の態様で実施してもよい。
・上記実施形態では、配線23における平行な2つのエッジ23aにより発生する波打ち線分間の距離により、波打ちの少ない線分を検出して輝度値を算出するようにした。波打ちの少ない線分を表す輝度値が算出できれば、上記方法に限定されない。例えば、図9に示すように、1つのエッジにおいて発生する波打ち線分81〜84について、波打ちの少ない線分を検出するようにしてもよい。
【0047】
例えば、図9に示す各線分を、画像データの1つの軸(例えばX軸)に対して図10に示すように回転変換し、その変換後の各線分81a〜84aについて、Y軸の座標値の変化が少ない線分を、波打ちが少ない線分として検出するようにしてもよい。
【0048】
また、配線の延びる方向(図9において矢印が示す方向)に仮想的に直線85を生成し、その直線85と、各線分81〜84との間の距離を算出し、その距離の変化が少ない線分を、波打ちが少ない線分として検出するようにしてもよい。
【0049】
また、配線が延びる方向に沿って延びる直線は、画像データの座標系(X軸及びY軸)において、画素間の座標値の差が均一である。従って、線分を形成する画素の座標値に基づいて、X軸及びY軸の少なくとも一方において、画素間の座標値の差の増減が少ない線分を、波打ちが少ない線分として検出するようにしてもよい。
【0050】
また、振幅が同じ2つの線分を検出し、それら線分の輝度値の中間値(平均値)の線分を、波打ちが少ない線分として検出するようにしてもよい。振幅が同じ2つの線分は、エッジを中心として線対称に現れる。
【0051】
・上記実施形態における検査対象物21を、高精細プリント基板、リードフレーム、半導体ウェハー、および、それらのフォトマスク等としてもよく、それらに形成されたパターンのエッジを検出するようにしてもよい。
【0052】
・上記実施の形態に対し、補間画素値を算出する方法として、直線補間、最近傍補間(ニアレストテイバー)、双一次補間(バイリニア補間)、等の方法を用いても良い。
・上記実施の形態では、直線状のエッジ23aに対して発生する画素値(輝度値)の変化に基づいて、波打ちの少ない輝度値を算出してエッジ23aを検出するようにした。これに対し、任意の曲線に形成されたエッジを検出するようにしてもよい。任意の曲線において、例えばその曲線の接線方向と画像データを構成する画素の配列方向とが角度をなす部分において、上記直線状のエッジ23aと同様に波打ち現象が発生する。この波打ち現象が発生する部分においてエッジとする輝度値を算出し、その輝度値に基づいて画像全体(又はブロック内の画像)のエッジを検出するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0053】
11 撮像部
12 処理部
21 検査対象物
23 配線
23a エッジ
60 補間画像データ
61 ブロック
71a,71b 線分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像中のエッジを検出するエッジ検出方法であって、
前記画像を構成する画素の値に基づいて、同一輝度値の複数の画素について画素の振れ幅を算出し、前記振れ幅が最も小さい画素の輝度値を算出する輝度算出処理と、
算出した輝度値をエッジ判定値とし、前記画像に含まれる画素のうち、前記エッジ判定値と等しい値の画素をエッジとして検出するパターンエッジ検出処理と、
を含むことを特徴とするエッジ検出方法。
【請求項2】
前記画素の振れ幅は、同一輝度値の複数の画素を結ぶ線分の振幅である、ことを特徴とする請求項1記載のエッジ検出方法。
【請求項3】
画像データを複数のブロックに分割するブロック分割処理を含み、
前記輝度算出処理において、ブロック毎に前記エッジ判定値を算出することを特徴とする請求項1又は2記載のエッジ検出方法。
【請求項4】
前記画像を構成する画素は、撮像素子にて得られた複数の画素の輝度値に基づき生成した各画素間の補間画素を含むことを特徴とする請求項1〜3のうちの何れか一項に記載のエッジ検出方法。
【請求項5】
画素の配列方向と異なる方向に沿って延びる斜めパターンを検出する斜めパターン検出処理を含み、
前記輝度算出処理において、同一輝度値の複数の画素を結ぶ2つの線分を検出し、前記2つの線分と前記斜めパターンと直交する方向に延びる線分とが交差する2つの交点間の距離を算出し、前記距離の変動が最も少ない線分の輝度値を算出する、ことを特徴とする請求項1〜4のうちの何れか一項に記載のエッジ検出方法。
【請求項6】
画像中のエッジを検出する処理部を含むエッジ検出装置であって、
前記処理部は、前記画像を構成する画素の値に基づいて、同一輝度値の複数の画素について画素の振れ幅を算出し、前記振れ幅が最も小さい画素の輝度値を算出し、算出した輝度値をエッジ判定値とし、前記画像に含まれる画素のうち、前記エッジ判定値と等しい値の画素をエッジとして検出する、
ことを特徴とするエッジ検出装置。
【請求項7】
検査対象物を撮像する撮像部と、
前記撮像部から出力される画像データに基づいて、前記検査対象物に形成されたパターン幅を検査する処理部と、
を含み、
前記処理部は、
前記画像データに含まれる画素の値に基づいて、同一輝度値の複数の画素について画素の振れ幅を算出し、前記振れ幅が最も小さい画素の輝度値を算出し、算出した輝度値をエッジ判定値とし、前記画像に含まれる画素のうち、前記エッジ判定値と等しい値の画素をエッジとして検出し、2つのエッジ間の距離を前記パターン幅として算出し、前記パターン幅と設定値と比較して前記パターン幅を検査する、
ことを特徴とする検査装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−8619(P2012−8619A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−141314(P2010−141314)
【出願日】平成22年6月22日(2010.6.22)
【出願人】(000190688)新光電気工業株式会社 (1,516)
【Fターム(参考)】