説明

エッチングされた多層スタックにおける残留形成の低減

構造体のナノファブリケーション、特に、多層スタックの製作における残留物形成の低減に関する技術を提供する。インプリントリソグラフィのための多層スタックは、第1の重合性組成物を基板に付加し、第1の重合性組成物を重合させて第1の重合層を形成し、第2の重合性組成物を第1の重合層に付加し、かつ第2の重合性組成物を重合させて第1の重合層上に第2の重合層を形成することによって形成される。第1の重合性組成物は、約25℃未満のガラス転移温度を有する重合性成分を含み、第1の重合層は、第2の重合性組成物に対して実質的に非浸透性である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野は、一般的に、構造体のナノファブリケーションに関し、より具体的には、多層スタックの製作における残留物形成の低減に関する。
【0002】
関連出願への相互参照
本出願は、本明細書においてその全内容が引用により組み込まれている2007年8月24日出願の米国特許仮出願第60/957、891号の「35 U.S.C.§119(e)(1)」の下での恩典を請求するものである。
【0003】
連邦補助研究又は開発に関する説明
米国政府は、本発明における支払い済みライセンスと、限定された状況において「米国標準技術局(NIST)」ATP賞を授与された70NANB4H3012の条項に規定されているような合理的な条項で特許所有者が他の者にライセンスを供与することを要求する権利とを有する。
【背景技術】
【0004】
ナノファブリケーションは、例えば、ナノメートル又はそれよりも小さな桁の特徴部を有する非常に小さな構造体の製作を伴っている。ナノファブリケーションがかなり大きな影響を有していた1つの領域は、集積回路の処理におけるものである。半導体処理産業が、基板上に形成された単位面積当たりの回路を増加させながらより大きな生産収率を得ようと努力し続けるので、ナノファブリケーションは益々重要になる。ナノファブリケーションは、形成された構造体の最小特徴寸法の縮小を増大させながら、より大きな工程管理を提供する。ナノファブリケーションが使用されている開発の他の領域は、バイオ技術、光技術、及び機械システムなどを含む。
【0005】
例示的なナノファブリケーション技術は、インプリントリソグラフィと呼ばれる。例示的なインプリントリソグラフィ工程は、「基板上に特徴部を配列して最小寸法変動性を有する特徴部を複製する方法及びモールド」という名称の米国特許第6、980、259号、「計量標準の製作を容易にするように基板上に層を形成する方法」という名称の米国特許出願出願番号第10/264、926号として出願された米国特許出願公開第2004/0065252号、及び「インプリントリソグラフィ工程のための機能的パターン形成材料」という名称の米国特許第6、936、194号のような多数の文献に詳細に説明されており、これらの特許の全ては、本発明の出願人に譲渡され、本明細書において引用により組み込まれている。
【0006】
上述の米国特許出願公報及び米国特許の各々に開示されたインプリントリソグラフィ技術は、重合可能層におけるレリーフパターンの形成、及びレリーフパターンに対応するパターンを下に重なる基板内へ転写することを含む。基板は、運動台に位置決めされ、そのパターン形成を容易にする望ましい位置を得ることができる。その目的のために、テンプレートが基板から離間して使用され、成形可能な液体が、テンプレートと基板の間に存在する。液体は、固化されて、液体に接触したテンプレートの表面の形状に適合するパターンが記録された固化層を形成する。テンプレートは、次に、テンプレート及び基板が離間するように固化層から分離される。基板及び固化層は、次に、固化層のパターンに対応するレリーフ像を基板へ転写する工程を受ける。
【0007】
多層インプリントリソグラフィ工程では、第1のポリマー層を基板の上に形成することができ、基板とポリマー層の間に1つ又はそれよりも多くの中間層(例えば、接着層など)がある。その後、第2のポリマー層を第1のポリマー層上に形成することができる(例えば、第1のポリマー層を覆うか又は平坦化するために)。第2のポリマー層は、例えば、低粘性の重合性組成物を刷り込むか、又はより大きな粘性の重合性組成物でスピン−オンすることによって形成することができる。刷り込み平坦化の場合には、低粘性の第2の重合性組成物(例えば、室温で約2−20cPの粘性)は、溶剤のように挙動することができる。スピン−オン平坦化の場合には、第2の重合性組成物は、熱焼成段階中に架橋する前にリフローすることになる。いずれの場合も、第1のポリマー層が未反応の第1の重合性組成物の区域又はポケット(例えば、孔隙)を含む場合、第2の重合性組成物は、その区域を浸透し、下の第1のポリマー層における未反応の第1の重合性組成物と混ざることができる。場合によっては、第2の重合性組成物の第1のポリマー層へのこの貫通又は浸透は、不都合なほどに第1のポリマー層の特性を変える可能性がある。例えば、その後の処理段階において、第2の重合性組成物は、反応性イオンエッチ(RIE)処理中にミクロマスキングを引き起こす可能性がある。
【0008】
ミクロマスキングは、以下のように理解することができる。ポリマーは、そのガラス転移温度(Tg)未満の温度ではガラス状材料のように挙動し、分子運動性は、少なくとも幾分抑制される。周囲温度、例えば、約15℃から約25℃で刷り込むためには、室温を超えるTgを有する重合性液体中の成分のポリマー鎖運動性が抑制される。この抑制されたポリマー運動性は、刷り込み中にガラス状ポリマー成分間で未反応(液体)重合性組成物の捕捉をもたらす。ガラス状ポリマー成分は、鳥かごのように挙動し、これらの不動性は、第1のポリマー層に未反応重合性成分を捕捉する。
【0009】
図1は、基板102とテンプレート104の間の第1の重合性組成物100の断面図を示している。重合(例えば、UV露出)に続いて、第1の重合性組成物100は、固化し、テンプレート104は、重合層106から分離される。重合が、例えば、重合中のガラス化により不完全である場合(すなわち、重合性組成物の一部が、組成物中の少なくとも1つの他の成分に結合することなく未反応の液体形態で残る場合)、未反応の第1の重合性組成物100の区域108は、重合層106に残る。図1では、区域108は、重合層106の突起110の中に及びその周囲に示されている。しかし、区域108は、重合層106にわたって位置し、示した領域に限定されないことは理解されるものとする。
【0010】
一例においては、イソボルニルアクリレート(サートマー・カンパニー(米国ペンシルベニア州のエクストン)から「SR 506」として入手可能なIBOA)は、インプリントリソグラフィの重合性組成物に用いる単官能重合性成分である。
【0011】
【化1】

【0012】
ポリイソボルニルアクリレートは、約88℃のTgを有する。約88℃未満のポリイソボルニルアクリレートは、分子運動性を抑制した状態でガラス状材料のように挙動する。約15℃から約25℃の刷り込み温度において、ポリイソボルニルアクリレートのポリマー鎖運動性は抑制される。IBOAのような高Tgを有する単官能重合性成分が優位である重合性組成物は、バルク重合中にポリマー運動性の抑制により室温においてガラス化を受ける。残りの未反応の高Tg成分は、化学反応が起こるのに必要である時に反応性ポリマーラジカルと接触するほど十分に移動/回転することができない。未反応の重合性組成物の区域は、従って、重合中にガラス化を受ける組成物によって形成された重合層に残る。それらの区域は、その後経路をもたらすか又は別の液体を重合層により容易に浸透又は透過させる空洞、開口部、孔隙などと考えることができる。
【0013】
図2は、未反応のポリマー組成物100の区域108を有する第1の重合層106を示している。第2の重合性組成物200が、第1の重合層106に付加された後に、第2の重合性組成物は、第1の重合層の区域108を浸透又は透過して、その区域において第1の重合性組成物100と混ざる。第2の重合性組成物200の重合は、区域108において第2の重合性組成物を硬化させ、その区域において第2の重合材料202を形成させ、かつ第1の重合層106上に第2の重合層204を形成させる。
【0014】
図3は、多層スタック300の形成後のエッチング(反応性イオンエッチング又はRIE)処理を示している。第1の段階では、第2の重合層204の一部分は、ハロゲン系RIEによって除去される。このエッチバック段階は、ハロゲン含有ガス化学反応(例えば、フッ素含有ガス)の使用を含み、第1の重合層106の突起110を露出するのに十分な第2の重合層を除去することができる。重合層106の区域108における第2の重合材料202もこのエッチング段階によって除去され、実質的に残留物を残さないガス状生成物を形成することができる。
【0015】
次の段階では、酸素系ガス混合物を転写エッチ段階で用いて、第1の重合材料106の一部分を除去する(例えば、突起110を除去する)ことができる。第2の重合材料202及び第2の重合層204は、転写エッチ段階によって除去されない。場合によっては、酸素は、硬化された区域108において第2の重合材料202の成分と反応し、残留物302を形成することになる。残留物302の存在は、その後の付加又は処理段階において望ましくないものになる可能性がある。
【0016】
第1の重合性組成物が基本的にシリコンを含まず、かつ第2の重合性組成物がシリコン含有のものである時に、残留物302は、例えば、更なる酸素エッチングに対して耐性を示すシリコンの酸化物を含むことができる。この場合には、第2の重合(シリコン含有)材料202は、ハードマスクのように挙動し、残留物302は、転写エッチ段階で形成された凹部304に残る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】米国特許第6、980、259号
【特許文献2】米国特許出願公開第2004/0065252号
【特許文献3】米国特許第6、936、194号
【特許文献4】米国特許第6、873、087号
【特許文献5】米国特許第6、932、934号
【特許文献6】米国特許第7、077、992号
【特許文献7】米国特許第7、179、396号
【特許文献8】米国特許第7、396、475号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0018】
1つの態様では、インプリントリソグラフィのための重合性組成物は、約25℃未満のガラス転移温度を有する単官能重合性成分、多官能重合性成分、及び光開始剤を含む。この組成物は、第2の重合性組成物に対して実質的に非浸透性の固化層を形成するように重合可能である。
【0019】
別の態様では、インプリントリソグラフィのための多層スタックは、第1の重合性組成物を基板に付加し、第1の重合性組成物を重合させて第1の重合層を形成し、第2の重合性組成物を第1の重合層に付加し、かつ第2の重合性組成物を重合させて第1の重合層上に第2の重合層を形成することによって形成される。第1の重合性組成物は、約25℃未満のガラス転移温度を有する重合性成分を含み、第1の重合層は、第2の重合性組成物に対して実質的に非浸透性である。
【0020】
一部の実施においては、第1の重合性組成物は、約1重量%未満のシリコンを含み、第2の重合性組成物は、シリコン含有のものである。他の実施においては、第1の重合性組成物は、実質的にシリコンを含まず、第2の重合性組成物は、シリコン含有のものである。第2のシリコン含有重合性組成物は、例えば、少なくとも約5重量%のシリコン、又は少なくとも約10重量%のシリコンを含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】インプリントリソグラフィ工程の第1の重合層の形成を示す図である。
【図2】インプリントリソグラフィ工程の第2の重合層の形成を示す図である。
【図3】多層スタックの反応性イオンエッチングを示す図である。
【図4】インプリントリソグラフィシステムを示す図である。
【図5】インプリントリソグラフィ工程で形成されたインプリントを示す図である。
【図6】多層スタックの断面図である。
【図7A】第1の重合層が第2の重合性組成物に対して浸透性である転写エッチング後の多層スタックの画像(上面図)を示す図である。
【図7B】第1の重合層が第2の重合性組成物に対して浸透性である転写エッチング後の多層スタックの画像(上面図)を示す図である。
【図7C】第1の重合層が第2の重合性組成物に対して浸透性である転写エッチング後の多層スタックの画像(上面図)を示す図である。
【図8A】第1の重合層が第2の重合性組成物に対して実質的に非浸透性である転写エッチング後の多層スタックの画像(上面図)を示す図である。
【図8B】第1の重合層が第2の重合性組成物に対して実質的に非浸透性である転写エッチング後の多層スタックの画像(上面図)を示す図である。
【図8C】第1の重合層が第2の重合性組成物に対して実質的に非浸透性である転写エッチング後の多層スタックの画像(上面図)を示す図である。
【図9A】エッチング中に形成された残留物の存在を示す転写エッチング後の多層スタックの画像(断面図)を示す図である。
【図9B】エッチング中に形成された残留物の欠如を示す転写エッチング後の多層スタックの画像(断面図)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図4を参照すると、基板12上にレリーフパターンを形成するためのシステム10が示されている。基板12は、基板チャック14に結合することができる。図示のように、基板チャック14は、真空チャックであるが、基板チャック14は、本明細書において引用により組み込まれている「インプリントリソグラフィ工程のための高精度配向アラインメント及び間隙制御台」という名称の米国特許第6、873、087号に記載されているように、以下に限定されるものではないが、真空式、ピンタイプ、溝タイプ、又は電磁式を含むあらゆるチャックとすることができる。基板12及び基板チャック14は、台16上に支持することができる。更に、台16、基板12、及び基板チャック14は、基部(図示せず)上に位置決めすることができる。台16は、x及びy軸周りの運動をもたらすことができる。
【0023】
基板12から離間しているのは、パターン形成装置17である。パターン形成装置17は、メサ20を有するテンプレート18を含み、メサは、そこからパターン形成表面22を有する基板12に向けて延びている。更に、メサ20は、モールド20と呼ばれる場合がある。メサ20はまた、ナノインプリントモールド20と呼ばれる場合もある。更に別の実施形態では、テンプレート18は、実質的にモールド20がない場合がある。テンプレート18及び/又はモールド20は、以下に限定されるものではないが、石英ガラス、石英、シリコン、有機ポリマー、シロキサンポリマー、ホウケイ酸ガラス、フッ化炭素ポリマー、金属、及び硬化サファイアを含む材料から形成することができる。図示のように、パターン形成表面22は、複数の離間した凹部24及び突起26によって形成された特徴部を含む。しかし、更に別の実施形態では、パターン形成表面22は、実質的に滑らかであり、及び/又は平面とすることができる。パターン形成表面22は、基板12上に形成されるパターンの基礎を形成するオリジナルパターンを定めることができる。テンプレート18は、「インプリントリソグラフィ工程のための高精度配向アラインメント及び間隙制御台」という名称の米国特許第6、873、087号に記載されているように、以下に限定されるものではないが、真空式、ピンタイプ、溝タイプ、又は電磁式を含むあらゆるチャックであるテンプレートチャック28に結合することができる。更に、テンプレートチャック28をインプリントヘッド30に結合して、テンプレート18及び従ってモールド20の移動を容易にすることができる。
【0024】
システム10は、流体分注システム32を更に含む。流体分注システム32は、重合性材料34を堆積させるために基板12と流体連通することができる。システム10は、どのような数の流体分注器も含むことができ、流体分注システム32は、そこに複数の分注ユニットを含むことができる。重合性材料34は、あらゆる公知の技術、例えば、液滴分注、スピン−コーティング、浸漬コーティング、化学気相蒸着(CVD)、物理気相蒸着(PVD)、薄膜堆積、及び厚膜堆積などを用いて基板12上に位置決めすることができる。重合性材料34は、望ましい容積がモールド20と基板12の間に形成される前に基板12上に配置することができる。しかし、重合性材料34は、望ましい容積が得られた後に容積を満たすことができる。
【0025】
図4及び5を参照すると、システム10は、経路42に沿ってエネルギ40を誘導するように結合されたエネルギ40の供給源38を更に含む。インプリントヘッド30及び台16は、モールド20及び基板12をそれぞれ重ね合わせて経路42に配置するように配列するように構成される。インプリントヘッド30、台16のいずれか又は両方は、モールド20と基板12の間の距離を変更し、それらの間に重合性材料34によって満たされる望ましい容積を形成する。望ましい容積が重合性材料34で満たされた後に、供給源38は、エネルギ40、例えば、広帯域紫外線放射を生成し、これは、重合性材料34を固化及び/又は架橋させて、基板12の表面44及びパターン形成表面22の形状に適合させ、かつ基板12上にパターン層46を形成させる。パターン層46は、残留層48、並びに突起50及び凹部52として示した複数の特徴部を含むことができる。システム10は、台16、インプリントヘッド30、流体分注システム32、及び供給源38とデータ通信し、メモリ56に記憶されたコンピュータ可読プログラム上で作動するプロセッサ54によって制御することができる。
【0026】
上述したものは、「インプリントリソグラフィ工程中の不連続膜の形成」という名称の米国特許第6、932、934号、「ステップアンドリピートのインプリントリソグラフィ工程」という名称の米国特許第7、077、992号、「ポジティブトーンの2層インプリントリソグラフィ法」という名称の米国特許第7、179、396号、及び「インプリントリソグラフィを使用して段付き構造を形成する方法」という名称の米国特許第7、396、475号で言及されたインプリントリソグラフィ工程及びシステムで更に使用することができ、これらの特許の全ては、本明細書において引用により組み込まれている。更に別の実施形態では、上述したものは、あらゆる公知の技術、例えば、フォトリソグラフィ(G線、I線、248nm、193nm、157nm、及び13.2−13.4nmを含む様々な波長)、接触リソグラフィ、電子ビームリソグラフィ、X線リソグラフィ、イオンビームリソグラフィ、及び原子ビームリソグラフィに使用することができる。
【0027】
多層インプリントリソグラフィに対して、エッチング処理中に形成された残留物の量は、第1の層の重合中のガラス化を低減することによって減少し、又は実質的に排除することができる。第1の層の重合中のガラス化の減少は、重合層の未反応の重合性組成物の区域を低減し、又は実質的に排除することができ、それによって多層スタックの製作中のその後の材料の混合を低減する。例えば、シリコン含有重合性材料が、非シリコン含有重合層に浸透することができない時に、ミクロマスキングによる酸化珪素エッチ残留物の形成は減少し、又は実質的に排除される。シリコン含有重合性材料は、例えば、少なくとも約5重量%のシリコン、又は少なくとも約10重量%のシリコンを含むことができる。場合によっては、第1の重合性材料は、例えば、添加剤又は離型剤の形態で少量のシリコン(例えば、約5重量%未満、約1重量%未満、又は約0.1重量%未満のシリコン)を含むことが望ましいであろう。この場合には、残留物形成は、高Tg成分を有する同様のシリコン含有重合性組成物に対して依然として減少すると考えられる。
【0028】
重合中のガラス化の減少又は排除は、実質的に完全な重合を受けて(例えば、実質的に完全に反応して)、第2の重合性組成物に対して実質的に非浸透性である第1の重合層を形成する第1の重合性組成物を選択することによって達成することができる。この場合には、第1の重合層に付加された第2の重合性組成物は、第1の重合層の開口部又は開口区域に浸透する(かつその後固化する)ことができない。
【0029】
第1の重合性組成物は、例えば、重合性成分が重合中に十分な運動性を有してガラス化の影響を回避するように選択された1つ又はそれよりも多くの添加剤(例えば、離型剤)と共に、1つ又はそれよりも多くの単官能重合性成分、多官能重合性成分(例えば、架橋剤)、及び開始剤を含むことができる。重合性成分はまた、成分の相対反応性が、過剰な未反応の成分を残すことなく各成分の少なくとも1つの官能基の別の成分への結合を促進するように有利に選択される。第2の重合性組成物は、当業技術で公知のあらゆる重合性組成物(例えば、保護膜又は平坦化組成物)を含むことができる。
【0030】
重合中にガラス化を低減し又は実質的に排除するために、単官能重合性成分は、その成分のホモポリマーのTgが、刷り込みが起こることになる温度未満(例えば、ほぼ室温未満、又は約25℃未満、約15℃未満、約10℃未満、約5℃未満、又は約0℃未満)であるように選択される。2つ又はそれよりも多くの単官能成分が存在する時に、単官能成分は、大部分は低Tgになるように選択される。すなわち、高Tg(室温よりも高い)重合性成分は、重合性組成物が、製作工程中に実質的なガラス化又は不完全な重合を示さない範囲で、必要に応じて重合性組成物に含めることができる。
【0031】
ほぼ室温未満のポリマーTgを有する単官能重合性成分は、大阪有機化学工業株式会社(日本)から「MEDOL 10」として入手可能な以下に示す−7℃のTgを有する例えば(2−エチル−2−メチル−1、3−ジオキソラン−4−イル)メチルアクリレートを含むことができる。室温において、「MEDOL 10」ホモポリマーは、ゴム状材料のように挙動し、「MEDOL 10」ポリマー鎖は、十分な運動性を有して、重合中のガラス化の影響を回避する。
【0032】
【化2】

【0033】
多官能重合性成分又は架橋剤は、刷り込み中に実質的に完全な重合(例えば、分子当たり少なくとも1つの官能基の結合)を促進し、機械的強度を刷り込み層に加えるように選択することができる。多官能重合性成分(例えば、1つよりも多くのアクリレート基を有する架橋剤)は、単官能重合性成分よりも刷り込み工程中に重合する可能性が高い。例示的な架橋剤は、サートマー・カンパニーからSR247として入手可能な以下に示すネオペンチル・グリコール・ジアクリレートである。
【0034】
【化3】

【0035】
別の例示的な架橋剤は、サイテック・インダストリーズ・インコーポレーテッド(米国ニュージャージー州のウエストパターソン)から入手可能な以下に示す1、6−ヘキサンジオールジアクリレート(HDODA)である。
【0036】
【化4】

【0037】
重合性成分は、組成物の単官能重合性成分が、組成物の多官能成分のそれに対して望ましい反応性を有する時に、インプリントリソグラフィ工程中に実質的に完全に反応することになる。単官能重合性成分が、多官能重合性成分に対してあまりにゆっくり反応する場合、単官能重合性成分の量は、多官能重合性成分が実質的に消費された時に依然として存在する場合がある。これは、未反応の単官能重合性成分の捕捉をもたらす場合がある。例えば、「MEDOL 10」のジオキソラン環は、アクリル基をSR247のような架橋剤の存在下で比較的急速に反応させるのに十分な極性をもたらす。それに比較して、室温未満のTgを有するが「MEDOL 10」よりも遥かに非極性であるn−デシルアクリレートは、SR247のような架橋剤に比較してゆっくり反応する。架橋剤が実質的に消費されて、未反応の単官能重合性成分が残る時に、未反応のモノマーは捕捉され、固化層の未反応の重合性組成物の区域を残す。
【0038】
重合性組成物は、1つ又はそれよりも多くの波長範囲の電磁放射線を吸収するように選択された1つ又はそれよりも多くの光開始剤を含むことができる。光開始剤の一例は、チバ(スイス)から「IRGACURE 907」として入手可能な以下に示す2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オンである。
【0039】
【化5】

【0040】
光開始剤の別の例は、BASF(ドイツ)から入手可能な以下に示す2、4、6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド(TPO)である。
【0041】
【化6】

【0042】
チバから入手可能な光開始剤混合物である「DAROCUR 4265」は、TPO及び以下に示す2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オンの1:1の混合物である。
【0043】
【化7】

【0044】
以下の例は、本発明の一部の実施形態をより完全に示すように提供するものである。以下の例に開示する技術は、本発明の実施に際して十分に機能することが本発明者によって見出された技術を表し、従って、その実施のための例示的なモードを構成すると考えることができることを当業者は認めるべきである。しかし、当業者は、本発明の開示に鑑みて、開示する特定的な実施形態において多くの変更を行うことができ、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく同じか又は同様の結果を依然として得ることができることを認めるべきである。
【0045】
比較例
図6は、基板602、接着層604、第1の重合(非シリコン含有)層606、及び第2の重合(シリコン含有)層608を有する多層スタック600を示している。多層スタックは、第1の重合層600として重合性組成物1(高Tg単官能重合性成分)によって調製されたものである。多層スタックはまた、第1の重合層として重合性組成物2(低Tg単官能成分)によって調製されたものである。
【0046】
【表1】

【0047】
シリコン含有層608は、フッ素及び搬送ガスでエッチバックされ、酸化が、ハードマスクを保護するために実施され、転写層エッチが、酸素及び搬送ガスで実施されてエッチングされた多層スタックに凹部を形成した。以下の表2に示す処理パラメータは、組成物1及び2で形成された多層スタックをエッチングするのに用いられたものである。
【0048】
【表2】

【0049】
図7A−Cは、第1の重合(非シリコン含有)層606としての組成物1によって上述のように形成されたエッチングされた多層スタック700(上面図)の走査型電子顕微鏡(SEM)画像(x100、000)である。凹部610は、離間しており、第2の重合(シリコン含有)層608を凹部間に見ることができる。残留物612は、凹部610の底部で基板602上に容易に明らかである。
【0050】
図8A−Cは、第1の重合(非シリコン含有)層606としての組成物2によって上述のように形成されたエッチングされた多層スタック800(上面図)のSEM画像(x100、000)である。凹部610は、離間しており、第2の重合(シリコン含有)層608を凹部間に見ることができる。残留物は、凹部610からは実質的に欠如している。
【0051】
図9Aは、第1の重合性組成物としての組成物1によって形成されたエッチングされた多層スタック700の断面のSEM画像(x100、000)であり、残留物612(円筒形、直径約40nm)を凹部610に見ることができる。図9Bは、第1の重合性組成物としての組成物2によって形成されたエッチングされた多層スタック800の断面のSEM画像(x100、000)である。図9Bは、実質的に残留物を含まない凹部610を示し、重合性組成物2から形成された重合層が、第2の(シリコン含有)重合性組成物に対して実質的に非浸透性であったことを示している。
【0052】
本発明のいくつかの実施形態を説明した。それにも関わらず、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく様々な修正を行うことができることは理解されるであろう。従って、他の実施形態も以下に示す特許請求の範囲に入るものである。
【符号の説明】
【0053】
100 第1の重合性組成物; 102 基板; 104 テンプレート;
106 重合層; 110 突起。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インプリントリソグラフィのための多層スタックを形成する方法であって、
(i)第1の重合性組成物を基板に付加する段階、
(ii)前記第1の重合性組成物を重合させて第1の重合層を形成する段階、
(iii)前記第1の重合層に第2の重合性組成物を付加する段階、及び
(iv)前記第2の重合性組成物を重合させて前記第1の重合層上に第2の重合層を形成する段階、
を含み、
前記第1の重合性組成物は、約25℃未満のガラス転移温度を有する重合性成分を含み、
前記第1の重合層は、前記第2の重合性組成物に対して実質的に非浸透性である、
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記多層スタックをエッチングして凹部を形成する段階、
を更に含み、
前記第1の重合性組成物は、実質的にシリコンを含まず、前記第2の重合性組成物は、シリコン含有のものであり、前記凹部は、形成された時にシリコン含有残留物を実質的に含まない、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記多層スタックをエッチングして凹部を形成する段階、
を更に含み、
前記凹部は、実質的に残留物を含まない、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の重合性組成物は、実質的にシリコンを含まないことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の重合性組成物は、約1重量%未満のシリコンを含むことを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記第1の重合性組成物は、約0.1重量%未満のシリコンを含むことを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記第2の重合性組成物は、シリコン含有のものであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記第1の重合性組成物は、単官能重合性成分、多官能重合性成分、及び光開始剤を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記単官能重合性成分は、約25℃未満のガラス転移温度を有することを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記単官能重合性成分は、約0℃未満のガラス転移温度を有することを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
インプリントリソグラフィのための多層スタックを形成する方法であって、
(i)約1重量%未満のシリコンを含む第1の重合性組成物を基板に付加する段階、
(ii)前記第1の重合性組成物を重合させてインプリント層を形成する段階、
(iii)前記インプリント層に第2のシリコン含有重合性組成物を付加する段階、及び
(iv)前記第2の重合性組成物を重合させて前記第1の重合層上に第2の重合層を形成する段階、
を含み、
前記第1の重合性組成物は、約25℃未満のガラス転移温度を有する重合性成分を含み、
前記第1の重合層は、前記第2の重合性組成物に対して実質的に非浸透性である、
ことを特徴とする方法。
【請求項12】
前記第1の重合性組成物は、約0.1重量%未満のシリコンを含むことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記第1の重合性組成物は、実質的にシリコンを含まないことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記第2の重合性組成物は、少なくとも約5重量%のシリコンを含むことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記第2の重合性組成物は、少なくとも約10重量%のシリコンを含むことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記多層スタックをエッチングして凹部を形成する段階、
を更に含み、
前記凹部は、形成された時にシリコン含有残留物を実質的に含まない、
ことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項17】
前記第1の重合性組成物は、単官能重合性成分、多官能重合性成分、及び光開始剤を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記単官能重合性成分は、約25℃未満のガラス転移温度を有することを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記単官能重合性成分は、約0℃未満のガラス転移温度を有することを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項20】
インプリントリソグラフィのための多層スタックであって、
(i)第1の重合性組成物を基板に付加する段階、
(ii)前記第1の重合性組成物を重合させて第1の重合層を形成する段階、
(iii)前記第1の重合層に第2の重合性組成物を付加する段階、及び
(iv)前記第2の重合性組成物を重合させて前記第1の重合層上に第2の重合層を形成する段階、
を含む方法によって形成され、
前記第1の重合性組成物は、約25℃未満のガラス転移温度を有する重合性成分を含み、
前記第1の重合層は、シリコン含有重合性組成物に対して実質的に非浸透性である、
ことを特徴とする多層スタック。
【請求項21】
前記方法は、多層スタックをエッチバック及び転写エッチングする段階を更に含むことを特徴とする請求項20に記載の多層スタック。
【請求項22】
前記多層スタックを転写エッチングする段階は、実質的に残留物を含まない凹部を形成することを特徴とする請求項21に記載の多層スタック。
【請求項23】
前記第1の重合性組成物は、実質的にシリコンを含まないことを特徴とする請求項20に記載の多層スタック。
【請求項24】
前記第1の重合性組成物は、単官能重合性成分及び多官能重合性成分を含み、該単官能成分及び該多官能成分の相対反応性が、該第1の重合性組成物の実質的に完全な重合を可能にすることを特徴とする請求項20に記載の多層スタック。
【請求項25】
インプリントリソグラフィのための重合性組成物であって、
約25℃未満のガラス転移温度を有する単官能重合性成分と、
多官能重合性成分と、
光開始剤と、
を含み、
シリコン含有重合性組成物に対して実質的に非浸透性の固化層を形成するために重合可能である、
ことを特徴とする組成物。
【請求項26】
実質的な非浸透性は、多層インプリントリソグラフィエッチング処理におけるシリコン含有残留物形成の実質的な欠如を含むことを特徴とする請求項25に記載の重合性組成物。
【請求項27】
前記単官能重合性成分は、約0℃未満のガラス転移温度を有することを特徴とする請求項25に記載の重合性組成物。
【請求項28】
前記単官能重合性成分は、(2−エチル−2−メチル−1、3−ジオキソラン−4−イル)メチルアクリレートを含むことを特徴とする請求項25に記載の重合性組成物。
【請求項29】
前記多官能重合性成分は、ネオペンチル・グリコール・ジアクリレートを含むことを特徴とする請求項25に記載の重合性組成物。
【請求項30】
前記第1の重合性組成物は、実質的にシリコンを含まないことを特徴とする請求項25に記載の重合性組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図9A】
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【図9B】
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【公表番号】特表2010−541193(P2010−541193A)
【公表日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−522918(P2010−522918)
【出願日】平成20年8月25日(2008.8.25)
【国際出願番号】PCT/US2008/010063
【国際公開番号】WO2009/029246
【国際公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【出願人】(503193362)モレキュラー・インプリンツ・インコーポレーテッド (94)
【Fターム(参考)】