エッチングノズル及びエッチング装置
【課題】被加工物表面をより少ない回数の走査で所望のプロファイルに効率良く加工するエッチングノズル及びエッチング装置を提供する。
【解決手段】エッチングノズル41は、被加工物に対して相対的に移動させながら、エッチング液を内側管42の内側開口44から被加工物表面に供給し、かつ外側管43の外側開口45から吸引回収することによりエッチング加工を行う。外側開口45の外周縁形状は、エッチングノズルの移動方向に沿った第1方向の寸法と該移動方向に直交する第2方向の寸法とを有し、第1方向の寸法を第2方向に沿って、被加工物の加工前における断面プロファイルと目的の断面プロファイルとの差である加工プロファイルに対応するように変化させる。
【解決手段】エッチングノズル41は、被加工物に対して相対的に移動させながら、エッチング液を内側管42の内側開口44から被加工物表面に供給し、かつ外側管43の外側開口45から吸引回収することによりエッチング加工を行う。外側開口45の外周縁形状は、エッチングノズルの移動方向に沿った第1方向の寸法と該移動方向に直交する第2方向の寸法とを有し、第1方向の寸法を第2方向に沿って、被加工物の加工前における断面プロファイルと目的の断面プロファイルとの差である加工プロファイルに対応するように変化させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加工物の表面に向けてエッチング剤を供給することにより該表面をエッチングするためのエッチングノズル及びエッチング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水晶のような圧電材料やシリコンのような半導体材料のウエハ、ガラス材料の基板等の被加工物の表面を加工するために、ラッピングやポリッシング等の機械加工法が広く採用されている。しかしながら、一般に機械加工法は、被加工物の表面形状や厚さ、平面度を数μm以下、場合によっては数μm以下の高精度に加工することが困難である。
【0003】
機械加工以外の表面加工方法の1つとして、反応性ガス、プラズマにより発生するラジカル等の励起活性種、イオンビーム等を用いるドライエッチングがある。一般にドライエッチングは、反応性の強いガスを取り扱ったりプラズマやイオンを発生させるために高価で複雑な装置又は設備を必要とし、高コストである。特にプラズマエッチング法は、プラズマの発生による高熱で被加工物の温度が変化するので、エッチング速度が一定せず、加工精度が低下する虞がある。また、イオンビームエッチング法は、被加工物の表面がイオンの衝撃により変質する虞があり、そのような変質層を除去するために後処理が必要になる場合がある。
【0004】
更に別の表面加工方法として、エッチング液をエッチング剤として用いるウエットエッチングがある。一般的なウエットエッチングは、被加工物をエッチング液に浸漬してその表面を加工するので、作業が容易かつ低コストであり、エッチング速度が速いという利点を有する。この場合、被加工面全体が一様にエッチングされるので、元の表面の凹凸が実質的にそのまま加工後の表面に転写される。そのため、μmオーダーからサブμmオーダー、更にnmオーダーの高い形状精度や平面度が要求されたり、部分的に高精度の表面加工が必要な場合には、これを実現することが困難になる虞がある。
【0005】
ウエットエッチングにより半導体基板の平坦度の向上を図ると共に、加工後のダメージを発生しない半導体基板の平坦化方法が知られている(例えば、特許文献1を参照)。この方法は、不活性のエッチャントに浸漬した半導体基板の主面の一部にノズルから活性のエッチャントを当て、該ノズルと同心の排出用パイプで反応後のエッチャントを直ちに排出しつつ、半導体基板とノズルとを相対移動させて、予め測定しておいた基板の厚さの大きい部分を所定量だけ局所的にエッチングする。
【0006】
また、エッチング等のウエット処理方法のために、ウエット処理液の導入通路と排出通路とをそれらの端部で交差させ、この交差部に開口部を基板に向けて設けたノズル構成体を有する液体供給ノズルが提案されている(例えば、特許文献2を参照)。このノズルを用いたウエット処理では、供給したウエット処理液が開口部を介して基板に接触しかつ該基板上から外部に漏れることなく、減圧ポンプによって排出通路から排出されるので、従来より少ない使用量のウエット処理液で高い清浄度を得ることができる。
【0007】
半導体ウエハ等の部分エッチングを簡単かつ容易に行うことができる別のエッチング装置が知られている(例えば、特許文献3を参照)。このエッチング装置は、ウエハを保持しかつ所定位置に移動させるウエハ支持部と、ウエハの下方に位置してその下面に開口端を対向させる薬液管とを備え、該薬液管に薬液をその開口端に液面が表面張力で上方に凸の曲面を形成するように供給し、ウエハの所定エッチング部位を接触させてエッチング加工する。薬液に浸されたエッチング部位は、エッチング加工後に切り替えて薬液管に純水を供給し、その開口端から漏れ出させることによって洗浄される。
【0008】
また、半導体基板の大面積を効率良くエッチング加工し、所望の箇所を局所的にエッチング加工することもできるウエットエッチング装置及び方法が知られている(例えば、特許文献4を参照)。このエッチング装置は、半導体基板の被加工面と平行に対向させる加工面に少なくとも1つの開口を設け、かつその開口面積を被加工面の面積に対して0.1%〜85%としたエッチングヘッドを備える。このエッチングヘッドは、加工面の開口からエッチング液を供給して毛細管効果により加工面と被加工面との間に浸透させ、表面張力によりエッチングヘッド又は半導体基板の端部でエッチング液の浸透を終端させかつこれを保持することによって、半導体基板をエッチング加工する。エッチング処理後の被加工面は、エッチングヘッドの加工面の開口から水を切替えて供給することにより、洗浄される。また、被加工面に供給したエッチング液は、別個の回収機構を設けることにより、エッチング処理後に回収することができる。
【0009】
既に本願発明者は、二重パイプ構造のノズルによりエッチング剤の供給と回収とを同時に行うことにより、マスクを用いることなく局所的なエッチング加工を可能にするローカルウエットエッチング法を提案している(例えば、非特許文献1、特許文献5を参照)。この方法は、エッチング剤の供給手段を被加工物の表面に沿って相対的に移動させつつ、被加工物表面の各点について予め測定した加工前のプロファイルと目的のプロファイルとの差から求めた加工深さに応じてエッチング剤を供給して被加工物表面をエッチングし、かつ該表面付近の液体及び気体を吸引除去する。
【0010】
この方法の第1の態様では、エッチング剤の供給手段を複数並べた供給手段集合体を所定の速度で被加工物の表面に沿って移動させ、各供給手段毎にエッチング剤の温度及び/又は流量を制御して被加工物表面に供給する。この方法の第2の態様では、被加工物表面上の各点の加工深さにより定まる速度でエッチング剤の供給手段を移動させつつエッチング剤を所定の流量で供給し、該エッチング剤の流量以上の吸引量で、被加工物表面表面付近の液体及び気体を吸引除去する。いずれの態様によっても、様々な被加工物の表面を数nm〜数μmの精度で所望の形状(プロファイル)に加工又は仕上げしたり被加工物の厚さを均一化することができる。
【0011】
また、特許文献5によれば、所定の成分及び濃度のエッチング剤を所定の流量で供給する場合に、被加工物のエッチング量即ち加工深さは、その表面がエッチング剤に晒される時間に比例する。供給手段の移動中に被加工物表面上の1点がエッチング剤に晒される時間は、その点における供給手段の速度に逆比例するから、供給手段の速度は、各点における加工深さに応じて決定されることが開示されている。
【0012】
図10(A)(B)は、前記ローカルウエットエッチング法においてエッチング剤の供給手段として使用するのに適したエッチングノズルの基本的構成を示している。同図において、エッチングノズル1は、同軸に配置した内側管2と外側管3とを有し、内側管2の内側開口4及び該内側管と外側管3との間に画定される外側開口5を被加工物6の表面6aに向けて配置する。エッチング液7は、前記内側管の供給通路8を介して内側開口4から被加工物表面6aに供給され、該表面付近の気体や固体と共に外側開口5から前記外側管の回収通路9を介して吸引除去される。これにより、エッチング液を被加工物表面から十分に除去して、該表面及びその周辺部分を余分にエッチングする虞を解消している。
【0013】
図10(C)は、ノズル1を被加工物6に対して静止させた状態でその表面6aを単位時間加工した場合に形成される単位加工痕10を示している。単位加工痕10は、外側開口5の外径により画定される円柱形状を有し、その大きさによって加工の空間分解能が決定される。また、単位加工痕とエッチングノズルの滞在時間とのコンボリューションによって加工量が決まり、目的加工量と単位加工痕とのデコンボリューションによってエッチングノズルの走査速度分布が求められる。単位加工痕の面積を小さくすれば、空間分解能が高くなり、大きくすれば加工の能率が高くなる。
【0014】
更に本願発明者は、前記ローカルウエットエッチング法に適した別の様々なノズル構造を提案している(例えば、特許文献5を参照)。図11(A)に示すエッチングノズル11は、図10(A)(B)と同じ構造のノズル単体12を複数横一列に連続して配置したノズル集合体からなる。ノズル単体12は、それぞれ同軸に配置した内側管13と外側管14とを有する。エッチング液は、各内側管13の内側開口15から被加工物の表面に供給されて該表面を横方向に細長くエッチングし、該内側管と外側管14との間に画定される外側開口16から吸引回収される。
【0015】
図11(B)は、図11(A)のエッチングノズルの変形例を示している。このノズル17は、横一列に連続して配置した複数の内側管18と、それらを囲繞するように配置した1つの外側管19とを備える。エッチング液は、各内側管18の内側開口20から被加工物の表面に供給されて該表面を横方向に細長くエッチングし、該内側管と外側管19との間に画定される外側開口21から吸引回収される。図11(A)及び(B)のノズル11,17は、ノズル単体12又は内側管18の配列方向を幅方向としてこれと直交する向きに移動させることによって、1回の走査で被加工物表面の広幅な領域を一度に加工することができる。
【0016】
図11(C)は、図11(A)のエッチングノズルの別の変形例を示している。このノズル22は、図10(A)(B)と同じ構造のノズル単体23を複数束ねて概ね正六角形に配置したノズル集合体からなる。ノズル単体23は、それぞれ同軸に配置した内側管24と外側管25とを有する。エッチング液は、各内側管24の内側開口26から被加工物の表面に供給されて該表面をエッチングし、該内側管と外側管25との間に画定される外側開口27から吸引回収される。このようにノズル22全体に複数の外側管25を分散して配置することによって、被加工物表面からエッチング液及び気体を効率良く吸引することができる。
【0017】
図12(A)は、前記ローカルウエットエッチング法に適したエッチングノズルの更に別の構成を示している。このノズル28は、横方向に細長い概ね矩形の内側管29とその外側に配置された外側管30とを有する。内側管29は、横方向に延長する直線状の内側開口31を有し、外側管30との間には、横方向に細長い矩形環状の外側開口32が画定されている。エッチング液は、内側開口31から被加工物の表面に供給されて該表面を横方向に細長い矩形状にエッチングし、外側開口32から吸引回収される。ノズル28は、その横方向と直交する向きに移動させることによって、1回の走査で被加工物の広幅な表面を加工することができる。
【0018】
ノズル28は、図12(B)に示すように、外側開口32の横幅を被加工物33の横幅よりも幾分広く構成することができる。この場合、同図に矢印で示すように、ノズル28をその幅方向と直交する向きに移動させることによって、1回の走査で被加工物33の表面を全幅に亘って一様に加工することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】特開平11−45872号公報
【特許文献2】特開平10−163153号公報
【特許文献3】特開2004−6518号公報
【特許文献4】特開2008−21920号公報
【特許文献5】特開2007−200954号公報
【非特許文献】
【0020】
【非特許文献1】高井宏之,「数値制御ローカルウェットエッチング法による高精度光学素子の作成」,2008年度精密工学会春季学術講演会講演論文集,社団法人精密工学会,2008年3月,N36,p.1081−1082
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
上述したように前記ローカルウエットエッチング法は、使用するエッチングノズルにより形成される単位加工痕の大きさによって空間分解能が決定され、単位加工痕の面積は、加工ノズルの外側開口によって決定される。また、エッチング加工量は、エッチング剤が被加工物の表面に滞在する時間即ち該表面がエッチング剤に晒される時間の積算量に比例する。従って、被加工物の加工深さがエッチングノズルの移動方向に沿って変化する場合は、該ノズルの移動方向の送りピッチを調整・制御することによって、被加工物表面を所望のプロファイルに加工することができる。
【0022】
被加工物の加工深さは、エッチングノズルの移動方向と直交する向き即ち該ノズルの幅方向に沿って変化する場合もある。例えば厚さ勾配を有するウエハのように、被加工物の表面がノズルの幅方向に傾斜している場合、この傾斜面を水平に加工することを要求されることがある。また、ポリッシング加工したウエハは、周縁部が内側の部分よりも厚くなり易く、そのような場合には、周縁部をより多く削除して全体を均一な厚さに加工することが必要である。
【0023】
このような場合、エッチングノズルの空間分解能、特に幅方向の分解能を十分に高くすれば、同様に被加工物表面を所望のプロファイルに加工することができる。そのために、例えば図10のエッチングノズル1は、外側管3の内径即ち外側開口5の外径を十分に小さくすれば良い。しかしながら、幅方向の分解能を高くすると、それだけノズルの幅方向の送りピッチが小さくなり、走査回数が多くなるので、工数が増えて作業効率及び生産性が低下する。
【0024】
図11(B)及び図12のエッチングノズル17,28は、外側開口21,32の横幅が大きく、その全幅に亘って加工痕の深さが一定である。このようなノズルで傾斜面を水平に加工しようとすると、その傾斜に応じてノズルの幅方向の送りピッチを小さくし、走査を繰り返し重ねて行わなければならない。そのため、ノズルの走査回数が非常に多くなり、工数が増えて作業効率及び生産性が低下するだけでなく、ノズルの走査を高精度に正確に制御するための高度な技術及び制御装置が必要になる。
【0025】
図11(A)及び(C)のエッチングノズル11,22は、幅方向に沿って各ノズル単体に供給するエッチング剤の流量及び/又は温度を調整することによって、該エッチングノズルの横幅の範囲内で加工深さを変化させることが可能である。しかしながら、加工精度を上げるためには、ノズル単体の管径をより細くしなければならず、より大きな面積を加工するためには、ノズル単体の本数をより多くしなければならない。このようなエッチングノズルは、構造が複雑化し、高コストになるという問題を生じる。更に、エッチングノズル全体を移動させながら、個々のノズル単体のエッチング剤流量及びその温度を高精度に調整するためには、非常に高度な制御技術が要求される。
【0026】
また、一般に水晶デバイスに使用される水晶ウエハは、半導体ウエハに比して板厚が薄く、より高い平面度を要求されることが多い。特に最近は、水晶デバイスの高周波化に伴って、水晶ウエハがより大型化、薄肉化する傾向がある。そのため、水晶ウエハのエッチング加工は、その取扱いが難しいだけでなく、従来技術に関連して上述したような半導体基板の加工技術をそのまま適用することは困難であり、水晶ウエハ固有の要求に対応し得る加工技術が求められている。
【0027】
そこで本発明は、上述した従来の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、特に前記ローカルウエットエッチング法のように、被加工物の表面に対するエッチング剤の供給と回収とを同時に行うウェットエッチングに使用するのに適した二重パイプ構造を有し、様々なプロファイルを有する被加工物の表面を、できる限り少ない回数の、好ましくは1回の走査で所望のプロファイルに効率良く加工し得るエッチングノズルを提供することにある。
【0028】
本発明の別の目的は、そのようなエッチングノズルを備えることによって、被加工物の表面をウェットエッチングで所望のプロファイルに効率良く加工し得るエッチング装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0029】
本発明は、上記目的を達成するために、内側開口を有する内側管と、該内側管の外側に配置されて内側管との間に外側開口を画定する外側管とを備え、内側開口及び外側開口を被加工物の表面に対向させて該被加工物に対して相対的に移動させながら、エッチング剤を内側開口から被加工物表面に供給しつつ、外側開口から吸引回収することにより、該被加工物表面を、被加工物の加工前における断面プロファイルと目的の断面プロファイルとの差である加工プロファイルに従ってエッチングするためのエッチングノズルであって、
外側開口の外周縁形状が、ノズルの移動方向に沿った第1方向の寸法と、ノズルの移動方向に直交する第2方向の寸法とを有し、該第2方向の寸法の範囲内で変化する前記加工プロファイルの変化に対応するように、第1方向の寸法を第2方向に沿って変化させたことを特徴とする。
【0030】
このようなエッチングノズルでは、被加工物の加工断面形状が外側開口の外周縁形状によって決定される。従って、被加工物の加工プロファイルの変化に対応させて、外側開口の外周縁形状の第1方向の寸法を第2方向に沿って変化させることによって、好ましくはエッチングノズルの1回の走査で又はより少ない回数の走査で、様々な断面プロファイルを有する被加工物の表面を、所望のプロファイルに効率良く加工することができる。
【0031】
或る実施例では、エッチングノズルの外側開口の第1方向の寸法を第2方向に沿って線形的に変化させることにより、被加工物の加工プロファイルが第2方向に沿って一様に傾斜している場合に、被加工物表面をより少ない回数の走査で所望のプロファイルに効率良く加工することができる。
【0032】
別の実施例では、エッチングノズルの外側開口の第1方向の寸法を第2方向に沿って部分的に変化させることにより、被加工物の加工プロファイルがエッチングノズルの外側開口の横幅の範囲内で部分的に変化している場合に、その変化に対応して被加工物表面をより少ない回数の走査で所望のプロファイルに効率良く加工することができる。
【0033】
特にポリッシング加工後のウエハのように、被加工物の周縁部の厚さがその内側の部分よりも厚い場合には、エッチングノズルの外側開口の第2方向の少なくとも一方の端部付近において、該外側開口の第1方向の寸法を第2方向に沿って変化させることにより、同様に被加工物表面をより少ない回数の走査で所望のプロファイルに効率良く加工することができる。
【0034】
本発明の別の側面によれば、上述した本発明のエッチングノズルと、該ノズルの内側管にエッチング剤を供給するための供給手段と、エッチングノズルの外側管からエッチング剤を回収するための回収手段と、エッチングノズルを被加工物に対して相対的に移動させるための移動手段とを備えるエッチング装置が提供される。これにより、様々なプロファイルを有する被加工物の表面をウェットエッチングによって所望のプロファイルに効率良く加工することができる。
【0035】
或る実施例では、エッチングノズルの内側管に供給されかつ外側管から回収されるエッチング剤を貯留するためのリザーバーと、該リザーバーのエッチング剤を内側管に循環させる手段とを更に備えることにより、エッチング剤の使用量を少なくしかつ加工コストを低減すると共に、エッチング剤が環境に及ぼし得る影響を抑制することができる。
【0036】
別の実施例では、リザーバーのエッチング剤を所望の温度に設定しかつ/又は維持するための手段を更に備えることにより、被加工物の表面に供給されるエッチング剤の温度を調整制御することができる。
【0037】
別の実施例では、移動手段によってエッチングノズルを被加工物に対して相対的に直線的に移動させることができ、それによって例えば厚さ勾配を有する矩形ウエハのような被加工物をその辺縁方向に沿って効率良く加工することができる。
【0038】
更に別の実施例によれば、移動手段によってエッチングノズルを被加工物に対して相対的に回転させて円周方向に移動させることができ、それによって例えば円形ウエハのような被加工物をその円周方向に沿って効率良く加工することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】(A)図は本発明によるエッチングノズルの第1実施例の縦断面図、(B)図は該ノズルの開口部を示す端面図。
【図2】第1実施例のノズルを用いたエッチング装置の概略構成図。
【図3】第1実施例のノズルにより被加工物に形成される加工痕の断面図。
【図4】(A)図は第1実施例のノズルにより加工されるウエハの断面図、(B)図は該ノズルの走査要領を説明する平面図。
【図5】(A)図は本発明によるエッチングノズルの第2実施例の縦断面図、(B)図は該ノズルの開口部を示す端面図。
【図6】第2実施例のノズルにより被加工物に形成される加工痕の断面図。
【図7】(A)図は第2実施例のノズルにより加工されるウエハの断面図、(B)図は該ノズルの走査要領を説明する平面図。
【図8】(A)図は円形ウエハを加工するための基本的構成を有するエッチングノズルの縦断面図、(B)図は該ノズルの端面図。
【図9】(A)図は本発明によるエッチングノズルの第3実施例の縦断面図、(B)図は該ノズルの外側開口の外周縁形状を示す図。
【図10】(A)図は従来のエッチングノズルの構成を示す縦断面図、(B)図は該ノズルの開口部を示す端面図、(B)図はその単位加工痕を示す縦断面図。
【図11】(A)図は従来のエッチングノズルの別の構成を示す端面図、(B)図はその変形例を示す端面図、(C)図は別の変形例を示す端面図。
【図12】(A)図は従来のエッチングノズルの別の構成を示す端面図、(B)図は該ノズルの走査要領を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下に、添付図面を参照しつつ、本発明の好適な実施例を詳細に説明する。
図1(A)(B)は、本発明によるエッチングノズルの第1実施例の構成を概略的に示している。本実施例のエッチングノズル41は、内側管42とその外側に配置した外側管43とからなる2重パイプ構造を備える。内側管42はその先端に内側開口44が設けられ、外側管43は前記内側管との間に外側開口45を画定している。内側開口44は、前記内側管内部の供給通路46を介してエッチング剤の供給源に接続され、外側開口45は、前記外側管内部の回収通路47を介してエッチング剤の回収装置に接続される。
【0041】
外側開口45は、左右方向の中心線に関して対称であり、互いに平行をなす左側の長辺及び右側の短辺と上側及び下側の斜辺とからなる等脚台形の外周縁形状を有する。内側開口44も、前記外側開口に概ね相似する等脚台形の外周縁形状を有する。本実施例の内側管42及び外側管43は、同様に前記外側開口に概ね相似する等脚台形の断面外形形状を有する。しかし、別の実施例では、その断面外形形状を等脚台形以外の様々な形状にすることができる。
【0042】
本実施例では、エッチングノズル41の移動方向Aに沿った向きを第1方向とし、それに直交する向きを第2方向とする。外側開口45は、その左右方向即ち第2方向に細長く形成され、その全幅に亘って第1方向の寸法Lが第2方向に沿って線形に変化している。エッチングノズル41は、内側開口44及び外側開口45を被加工物48の表面に対向させ、かつ前記外側開口の左右方向の中心線と直交する向きを移動方向A即ち第1方向に一致させるように配置する。
【0043】
エッチング液は、前記ノズルを移動方向Aに沿って移動させつつ、供給通路46を介して内側開口44から被加工物48の表面に供給され、該表面をエッチングする。その後エッチング液は、前記表面付近の気体や固体と共に外側開口45から回収通路47を介して吸引除去される。
【0044】
図2は、本発明によるエッチング装置の実施例の構成を概略的に示している。本実施例のエッチング装置51は、図1(A)(B)のエッチングノズル41と、エッチング液52を貯留するためのリザーバー53とを備える。リザーバー53は、管路54によりエッチングノズル41の回収通路47と接続されている。吸引ポンプ54によりリザーバー53内を減圧することによって、被加工物表面48aを処理した後のエッチング液を外側開口45から回収通路47を通して吸引し、前記リザーバーに回収することができる。
【0045】
リザーバー53は更に、管路56によってエッチングノズル41の供給通路47と接続されている。管路56には、送液ポンプ57、流量調節バルブ58及び流量計59が設けられており、リザーバー53のエッチング液を供給通路47に流量を制御して供給する。このようにして、エッチング剤をエッチングノズル41に供給し、被加工物48の処理後に回収して再度前記エッチングノズルに供給する循環システムが構成される。別の実施例では、前記リザーバーとは別個にエッチング液の供給源を設けることができる。
【0046】
また、リザーバー53には、温度センサー付きヒーター60が設けられ、該ヒーターに接続された温度コントローラ61によって前記リザーバー内のエッチング液を所望の温度に設定しかつ/又は維持する。このような温度制御機構により、被加工物表面48aに供給されるエッチング液の温度を、エッチングノズル41の移動速度も考慮しつつ、加工深さに応じて調整制御することができる。
【0047】
エッチング装置51は、エッチングノズル41を被加工物48に対して相対的に移動させるための移動手段(図示せず)を備える。或る実施例では、前記移動手段が、エッチングノズル41を直線的に若しくは円周方向に移動させることができ、又は広い面積を加工するために互いに直交するXY方向に移動させることができる。別の実施例では、前記移動手段が、被加工物48を直線的に移動させ若しくは回転させることができ、又はXYテーブル等に固定して直交するXY方向に移動させることができる。また別の実施例では、エッチングノズル41をX方向に移動させ、それと直交するY方向に被加工物48を移動させることができる。
【0048】
図3は、第1実施例のエッチングノズル41を被加工物48に対して相対的に一定の速度で移動させつつ、その表面48aをエッチングしたときに、該被加工物表面に形成される加工溝62の断面形状を示している。加工溝62は、底面62aが、前記第2方向に沿って一定の角度で傾斜した断面形状に形成される。
【0049】
被加工物表面48aの各点は、該点が平面上前記ノズルの外側開口45外周縁の範囲内に含まれている間、エッチング剤に晒される。外側開口45の外周縁は、上述したように等脚台形状を有し、その全幅に亘って第1方向の寸法Lが第2方向に沿って線形に変化している。エッチング加工量は、被加工物の表面がエッチング剤に晒される時間の積算量に比例するから、被加工物表面の各点は、第1方向の寸法Lに比例してエッチング剤に晒される時間が長くなり、エッチング加工量が多くなる。従って、加工溝底面62aの傾斜は、前記外側開口の第1方向の寸法Lの変化の傾きによって決定される。
【0050】
第1実施例のエッチングノズル41は、例えば傾斜面を水平にエッチング加工するのに適している。図4(A)(B)は、厚さ勾配を有するウエハ63の表面63aを水平面に加工する要領を示している。ここで、図4(A)に示すように、加工前の傾斜した表面63aの断面プロファイルと、想像線64で示す水平面である目的の断面プロファイルとの差が加工プロファイルとなる。本実施例では、加工プロファイルが、図中左側から右側に緩やかに傾斜する楔形状をなしている。
【0051】
図4(B)は、水平に配置したウエハ63の表面63aを下方から見た図である。同図において、ウエハ表面63aの傾斜方向と直交する向きをエッチングノズル41の主走査方向Xとし、前記傾斜方向を副走査方向Yとする。
【0052】
エッチングノズル41は、ウエハ63の図中下側の端部から上側の端部に向けて直線的に一定の速度で移動させつつ、エッチング液を供給してウエハ表面63aのエッチングを行う。エッチングノズル41の1回の走査によって、ウエハ63の表面63aには直線状の加工溝65が形成される。加工溝65は、図4(A)に示すように、目的の断面プロファイル64と同じ深さで水平な底面を有する。
【0053】
エッチングノズル41の移動速度は、前記加工プロファイルに基づいて加工深さとエッチングレートとから決定される。エッチングレートは、必要な場合に、使用するエッチング液の種類、濃度、流量、温度等を調整して制御することができる。1回の走査で十分な加工量を得られない場合には、前記ノズルを繰り返し重ねて走査することによって、所望の深さの加工溝65を形成することができる。
【0054】
前記ウエハの上側の端部に到達すると、エッチングノズル41をY方向に図中右側へ移動させる。Y方向の送り量は、前記ノズルの外側開口43の最大幅Wにより決定される。更に前記ノズルをウエハ63の上端から下端に向けて直線的に加工溝65と平行に一定の速度で移動させ、該ウエハの下端に到達すると、同じ送り量でY方向に図中右側へ移動させ、再び前記ウエハの下端から上端に向けて直線的に一定の速度で移動させる。このようにウエハ表面63aの加工したい領域全面をエッチングノズル41で走査しつつ、エッチング液を供給して前記表面をエッチングすることにより、ウエハ63に目的の断面プロファイル64を形成することができる。
【0055】
図5(A)(B)は、本発明によるエッチングノズルの第2実施例の構成を概略的に示している。本実施例のエッチングノズル71は、同様に内側管72とその外側に配置した外側管73とからなる2重パイプ構造を備える。内側管72はその先端に内側開口74が設けられ、外側管73は前記内側管との間に外側開口75を画定している。内側開口74は、前記内側管内部の供給通路76を介してエッチング剤の供給源に接続され、外側開口75は、前記外側管内部の回収通路77を介してエッチング剤の回収装置に接続される。
【0056】
外側開口75は、上下方向及び左右方向の中心線に関して対称であり、直線状の左右両辺が互いに平行をなし、上下各辺が中央部分では互いに平行で、それから左右両端に向けて線形に拡がる向きに傾斜した概ね鼓形の外周縁形状を有する。内側開口74も、前記外側開口に概ね相似する鼓形の外周縁形状を有する。本実施例の内側管72及び外側管73は、その断面外形形状が同様に前記外側開口に概ね相似する鼓形をなしているが、それ以外の様々な形状にすることができる。
【0057】
本実施例も、エッチングノズル71の移動方向Aに沿った向きを第1方向とし、それに直交する向きを第2方向とする。外側開口75は、その左右方向即ち第2方向に細長く形成され、第1方向の寸法Lが第2方向に沿ってその中央部分において一定で、該中央部分から左右両端に向けて線形に大きくなる向きに変化している。エッチングノズル71は、内側開口74及び外側開口75を被加工物78の表面に対向させ、かつ前記外側開口の上下方向の中心線を移動方向A即ち第1方向に一致させるように配置する。
【0058】
エッチング液は、前記ノズルを移動方向Aに沿って移動させつつ、供給通路76を介して内側開口74から被加工物78の表面に供給され、該表面をエッチングする。その後エッチング液は、前記表面付近の気体や固体と共に外側開口75から回収通路77を介して吸引除去される。
【0059】
第2実施例のエッチングノズル71は、第1実施例のエッチングノズル41に置き換えて図2のエッチング装置に用いることができる。図6は、第2実施例のエッチングノズル71を被加工物78に対して相対的に一定の速度で移動させつつ、その表面78aをエッチングしたときに、該被加工物表面に形成される加工溝79の断面形状を示している。加工溝79は、底面79aが、前記第2方向に沿って中央部分が一定の深さで、該中央部分から左右両端に向けて一定の角度で深くなるように傾斜した断面形状に形成される。
【0060】
第1実施例において上述したように、被加工物表面78aの各点は、該点が平面上前記ノズルの外側開口75外周縁の範囲内に含まれている間、エッチング剤に晒され、エッチング加工量は、エッチング剤が被加工物の表面がエッチング剤に晒される時間の積算量に比例する。外側開口75の外周縁が上述した鼓形状を有するので、加工溝底面79aは、その左右両端付近の傾斜が、外側開口75の第1方向の寸法Lの変化の傾きによって決定される。
【0061】
第2実施例のエッチングノズル71は、例えば幅方向に沿って中央部分が平坦でかつ左右両側が傾斜して高くなった面の全体を平坦にエッチング加工するのに適している。上述したように、ポリッシング加工した後の水晶ウエハは、その辺縁付近の板厚が内側の部分よりも厚い。図7(A)(B)は、そのように内側部分が平坦でかつ左右辺縁付近が傾斜して高くなった断面形状のウエハ80を、その表面80a全面を平坦にかつ該ウエハ全体の板厚を均一にするように加工する要領を示している。ここで、図7(A)に示すように、加工前の表面80aの断面プロファイルと、想像線81で示す平坦面である目的の断面プロファイルとの差が加工プロファイルとなる。本実施例では、加工プロファイルが、図6に示す加工溝79の断面形状を上下反転させた形状をなす。
【0062】
図7(B)は、水平に配置したウエハ80の表面80aを下方から見た図である。同図から分かるように、エッチングノズル71は、外側開口75の幅即ち第2方向の寸法がウエハ80の幅よりも僅かに大きく、かつ該外側開口の幅の範囲内に前記ウエハの全幅が収まるように配置する。エッチングノズル71をウエハ80の図中下側の端部から上側の端部に向けて直線的に一定の速度で移動させつつ、エッチング液を供給してウエハ表面80aのエッチングを行う。
【0063】
前記ノズルの外側開口75は、第1方向の寸法Lが一定である前記中央部分の位置及び幅をウエハ80の平坦な前記内側部分と一致させ、かつ前記中央部分から左右両端に向けて第1方向の寸法Lの変化の傾きを前記ウエハの左右辺縁付近の傾斜に対応させた外周縁形状を有する。これにより、エッチングノズル71の1回の走査によって、ウエハ80の表面80aを目的の平坦面に加工することができる。
【0064】
エッチングノズル41の移動速度は、前記加工プロファイルに基づいて加工深さとエッチングレートとから決定される。エッチングレートは、必要な場合に、使用するエッチング液の種類、濃度、流量、温度等を調整して制御することができる。また、1回の走査で十分なエッチング加工量を得られない場合には、前記ノズルを繰り返し重ねて走査することによって、ウエハ80を所望の深さの平坦面に加工することができる。
【0065】
上記各実施例では、エッチングノズルを被加工物の表面に沿って直線的に移動させる場合を説明した。しかしながら、本発明のエッチングノズルは、被加工物に対して相対的に回転させ、或る点を中心として円周方向に移動させながら、該被加工物の表面をエッチング加工することができる。例えば、円形ウエハの表面をエッチング加工する場合には、エッチングノズルを円周方向に移動させることが好ましい。
【0066】
図8(A)及び(B)は、円形ウエハ90の表面90aをエッチングするための基本的構成を有するエッチングノズルを概略的に示している。同図において、エッチングノズル91は、同様に内側管92とその外側に配置した外側管93とからなる2重パイプ構造を備える。内側管92はその先端に内側開口94が設けられ、外側管93は前記内側管との間に外側開口95を画定している。内側開口94は、前記内側管内部の供給通路96を介してエッチング剤の供給源に接続され、外側開口75は、前記外側管内部の回収通路97を介してエッチング剤の回収装置に接続される。
【0067】
図8(B)に示すように、外側開口95は、図中右側の点Oを中心に所定の角度θ(ラジアン)で開いた上側及び下側の半径部95a,95bとそれらを連結する円弧部とからなる概ね扇形の外周縁形状を有する。内側開口94も、前記外側開口に概ね相似する扇形の外周縁形状を有する。同図において、内側管92及び外側管93は、その断面外形形状が同様に前記外側開口に概ね相似する扇形をなしているが、それ以外の様々な形状にすることができる。
【0068】
エッチングノズル91は、外側開口95の前記扇形の中心点Oを中心として回転させて円周方向Aに沿って移動させる。この場合、前記ノズルの移動方向即ち円周方向Aを第1方向とし、それに直交する半径方向を第2方向とする。外側開口75の外周縁形状は、第2方向の寸法を中心点Oからの距離即ち半径で表し、第1方向の寸法を中心点Oを中心とする円弧長さで表すことができる。即ち、中心点Oからの距離Rの位置にある下側半径部95b上の点における外側開口75の第1方向の寸法Lは、常にL=R・θとなる。
【0069】
エッチングノズル91は、中心点Oを円形ウエハ90の中心位置に整合させ、内側開口94及び外側開口95をウエハ表面90aに対向させて配置する。外側開口95は、前記円弧部が円形ウエハ90の外周縁より僅かに外側に位置する大きさを有する。従って、前記ノズルを360°回転させると、円形ウエハ90の表面90a全面を走査することができる。エッチング液は、前記ノズルを円周方向Aに沿って移動させつつ、供給通路96を介して内側開口94からウエハ表面90aに供給され、該表面をエッチングする。その後エッチング液は、前記表面付近の気体や固体と共に外側開口95から回収通路97を介して吸引除去される。
【0070】
ウエハ表面90a上の或る点Pにおけるエッチングノズル91の移動速度Vは、その回転角速度をωとすると、該点Pの中心点Oからの距離即ち半径をrとして、V=r・ωとなる。点Pがエッチング液に晒される時間は、該点Pを通過する前記ノズルの外側開口の第1方向の寸法Lを前記ノズルの移動速度Vで割ることによって算出される。このとき、R=rであるから、点Pがウエハ表面90aの如何なる位置にあっても、エッチング液に晒される時間tは、t=R・θ/r・ω=θ/ωとなり、一定である。
【0071】
上述したように、エッチング加工量は、被加工物の表面がエッチング剤に晒される時間の積算量に比例する。従って、ウエハ90の表面90aは均一な深さに加工される。これにより得られる断面プロファイル96と元の表面90aの断面プロファイルとの差が、加工プロファイルとなる。上述したように、前記ウエハ表面がエッチング液に晒される時間tは、エッチングノズル91の外側開口95の開き角θの関数であるから、前記加工ファイルに対応してθを決定することにより、前記ノズルの1回の走査でウエハ表面90aを目的の断面プロファイルに加工することができる。
【0072】
本発明によれば、このような基本的構成に基づいて、半径方向に断面形状が変化する被加工物の表面を所望の断面プロファイルに加工することができる。図9(A)(B)は、ポリッシング加工後のように板厚が半径方向に変化する円形ウエハ100の表面100aを平坦で均一な厚さに加工するのに適した、本発明によるエッチングノズルの第3実施例の構成を概略的に示している。
【0073】
本実施例のエッチングノズル101は、同様に内側管102とその外側に配置した外側管103とからなる2重パイプ構造を備える。内側管102はその先端に内側開口1044が設けられ、外側管103は前記内側管との間に外側開口105を画定している。内側開口104は、前記内側管内部の供給通路106を介してエッチング剤の供給源に接続され、外側開口105は、前記外側管内部の回収通路107を介してエッチング剤の回収装置に接続される。
【0074】
図9(A)に示すように、ウエハ表面100aは、全周に亘って半径方向の中央位置付近から中心に向けて隆起しかつ外周縁に向けて傾斜した断面プロファイルを有する。同図に想像線106で示す平坦面が目的の断面プロファイルであり、これと元の表面100aの断面プロファイルとの差が加工プロファイルとなる。
【0075】
図9(B)に示すように、外側開口105は、図中右側の点Oを中心に開いた上側及び下側の半径部105a,105bとそれらを連結する円弧部とからなる概ね扇形の外周縁形状を有する。下側半径部105bが点Oから真直ぐに延長しているのに対し、上側半径部105は、点Oから前記円弧部まで湾曲した曲線状に延長している。上側半径部105の湾曲形状は、ウエハ100の前記加工プロファイルに対応して決定される。
【0076】
また、外側管103の断面外形形状は、図8の場合と同様に、上側及び下側の半径部分が真直ぐに延長する扇形をなしているが、それ以外の様々な形状にすることができる。図示しないが、内側管102の断面外形形状及び内側開口104の外周縁形状は、前記外側開口に概ね相似する扇形に形成することができ、又はそれ以外の様々な形状にすることができる。
【0077】
図8のエッチングノズル91と同様に、エッチングノズル101は、外側開口105の前記扇形の中心点Oを中心として回転させて円周方向Aに沿って移動させる。前記ノズルの移動方向即ち円周方向Aを第1方向とし、それに直交する半径方向を第2方向とする。外側開口105の外周縁形状は、第2方向の寸法を中心点Oからの距離即ち半径で表し、第1方向の寸法を中心点Oを中心とする円弧長さで表すことができる。
【0078】
エッチングノズル101は、中心点Oを円形ウエハ100の中心位置に整合させ、内側開口104及び外側開口105をウエハ表面100aに対向させて配置する。外側開口105は、前記円弧部が前記ウエハの外周縁より僅かに外側に位置する大きさを有する。従って、前記ノズルを360°回転させると、ウエハ表面100aの全面を走査することができる。エッチング液は、前記ノズルを円周方向Aに沿って移動させつつ、供給通路106を介して内側開口104からウエハ表面100aに供給されて、該表面をエッチングする。その後エッチング液は、前記表面付近の気体や固体と共に外側開口105から回収通路107を介して吸引除去される。
【0079】
図8のエッチングノズル91に関連して上述したように、そのエッチング加工量は、外側開口95の扇形の開き角θによって決定される。本実施例では、図9(A)に示すように、ウエハ100の板厚が最も薄い半径r0 の位置における加工深さをdmin とすると、この位置に対応するエッチングノズル101の外側開口105の第2方向の位置において、該外側開口の点Oを中心とした開き角は最小値θmin となり、従って該位置における第1方向の寸法は最小値Lmin =r0 ・θmin となる。開き角の最小値θmin は、加工深さの最小値dmin 及びエッチングレートによって決定される。
【0080】
本実施例の場合、ウエハ表面100a上の任意の点Pにおけるエッチング加工量は、その点に対応する外側開口105の第1方向の寸法によって変化する。
【0081】
ウエハ表面10a上の任意の点Pにおける加工深さdは、該ウエハの板厚の変動に対応する加工深さの変動量をΔdとすると、d=dmin +Δdで表される。点Pに対応するエッチングノズル101の外側開口105の第2方向の位置において、第1方向の寸法はL=Lmin +ΔLで表される。ここで、ΔLは、加工深さの変動量Δdに対応する第1方向の寸法の変動量である。第1方向の寸法の変動量ΔLは、加工深さの最小値dmin に対する第1方向の寸法の最小値Lmin の比率から、Δdに基づいて算出することができる。
【0082】
外側開口105の第2方向の任意の位置における第1方向の寸法Lは、その位置における第2方向の寸法即ち半径Rと、点Oを中心とした開き角θとによって、L=R・θで表される。この第2方向の任意の位置における開き角θは、第1方向の寸法の変動量ΔLに対応する開き角の変動量をΔθとすると、θ=θmin +Δθで表される。従って、開き角の変動量は、Δθ=ΔL/Rで表される。この関係式に基づいて、上側半径部105aの湾曲形状は、容易に形成することができる。このように外側開口105の外周縁形状を決定することによって、エッチングノズル101の1回の走査でウエハ表面100aを目的の断面プロファイル106に加工することができる。
【0083】
別の実施例では、外側開口105の下側半径部105bを上記実施例の上側半径部105aと同じ湾曲形状とし、かつ上側半径部105aを直線状に形成することができる。また別の実施例では、外側開口105の上側及び下側半径部105a,105bの両方を湾曲形状にすることができる。この場合にも、外側開口105の第1方向の寸法Lを第2方向に沿って上記実施例と同様に設定することによって、目的の加工形状を得ることができる。
【0084】
第3実施例のエッチングノズル101も、第1及び第2実施例と同様に、図2に示すエッチング装置51に装着することができる。この場合、エッチングノズル101の移動手段は、被加工物に対して相対的に回転させて円周方向に移動させるように構成する。この移動手段は、被加工物を固定してエッチングノズル101を移動させ、又は前記エッチングノズルを固定して被加工物を移動させたり、両方とも移動させるようにすることができる。
【0085】
本発明は、上記実施例に限定されるものでなく、その技術的範囲内で様々な変形又は変更を加えて実施することができる。例えば、第1及び第2実施例のエッチングノズルは、いずれも被加工物の加工プロファイルに対応して、外側開口の第1方向の寸法が第2方向に沿って線形に変化している。しかしながら、被加工物の加工プロファイルが湾曲している場合には、その湾曲に対応して外側開口の第1方向の寸法を第2方向に沿って湾曲するように変化させることによって、同様に所望の加工形状を得ることができる。また、本発明は、水晶ウエハだけでなく、それ以外の圧電材料、シリコン等の半導体材料又はガラス材料のウエハ、様々な形態の被加工物について同様に適用することができる。
【符号の説明】
【0086】
1,11,17,22,28,41,71,91,101…エッチングノズル、2,13,18,24,29,42,72,92,102…内側管、3,14,19,25,30,43,73,93,103…外側管、4,15,20,26,31,44,73,93,103…内側開口、5,16,21,27,32,45,75,95,105…外側開口、6,33,48,78…被加工物、6a,48a,63a,78a,80a,90a,10a…表面、7,52…エッチング液、8,46,76…供給通路、9,47,77…回収通路、10…単位加工痕、12,23…ノズル単体、51…エッチング装置、62,79…加工溝、62a,79a…底面、63,80,90,100…ウエハ、64,81,96,106…断面プロファイル、95a,95b,105a,105b…半径部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加工物の表面に向けてエッチング剤を供給することにより該表面をエッチングするためのエッチングノズル及びエッチング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水晶のような圧電材料やシリコンのような半導体材料のウエハ、ガラス材料の基板等の被加工物の表面を加工するために、ラッピングやポリッシング等の機械加工法が広く採用されている。しかしながら、一般に機械加工法は、被加工物の表面形状や厚さ、平面度を数μm以下、場合によっては数μm以下の高精度に加工することが困難である。
【0003】
機械加工以外の表面加工方法の1つとして、反応性ガス、プラズマにより発生するラジカル等の励起活性種、イオンビーム等を用いるドライエッチングがある。一般にドライエッチングは、反応性の強いガスを取り扱ったりプラズマやイオンを発生させるために高価で複雑な装置又は設備を必要とし、高コストである。特にプラズマエッチング法は、プラズマの発生による高熱で被加工物の温度が変化するので、エッチング速度が一定せず、加工精度が低下する虞がある。また、イオンビームエッチング法は、被加工物の表面がイオンの衝撃により変質する虞があり、そのような変質層を除去するために後処理が必要になる場合がある。
【0004】
更に別の表面加工方法として、エッチング液をエッチング剤として用いるウエットエッチングがある。一般的なウエットエッチングは、被加工物をエッチング液に浸漬してその表面を加工するので、作業が容易かつ低コストであり、エッチング速度が速いという利点を有する。この場合、被加工面全体が一様にエッチングされるので、元の表面の凹凸が実質的にそのまま加工後の表面に転写される。そのため、μmオーダーからサブμmオーダー、更にnmオーダーの高い形状精度や平面度が要求されたり、部分的に高精度の表面加工が必要な場合には、これを実現することが困難になる虞がある。
【0005】
ウエットエッチングにより半導体基板の平坦度の向上を図ると共に、加工後のダメージを発生しない半導体基板の平坦化方法が知られている(例えば、特許文献1を参照)。この方法は、不活性のエッチャントに浸漬した半導体基板の主面の一部にノズルから活性のエッチャントを当て、該ノズルと同心の排出用パイプで反応後のエッチャントを直ちに排出しつつ、半導体基板とノズルとを相対移動させて、予め測定しておいた基板の厚さの大きい部分を所定量だけ局所的にエッチングする。
【0006】
また、エッチング等のウエット処理方法のために、ウエット処理液の導入通路と排出通路とをそれらの端部で交差させ、この交差部に開口部を基板に向けて設けたノズル構成体を有する液体供給ノズルが提案されている(例えば、特許文献2を参照)。このノズルを用いたウエット処理では、供給したウエット処理液が開口部を介して基板に接触しかつ該基板上から外部に漏れることなく、減圧ポンプによって排出通路から排出されるので、従来より少ない使用量のウエット処理液で高い清浄度を得ることができる。
【0007】
半導体ウエハ等の部分エッチングを簡単かつ容易に行うことができる別のエッチング装置が知られている(例えば、特許文献3を参照)。このエッチング装置は、ウエハを保持しかつ所定位置に移動させるウエハ支持部と、ウエハの下方に位置してその下面に開口端を対向させる薬液管とを備え、該薬液管に薬液をその開口端に液面が表面張力で上方に凸の曲面を形成するように供給し、ウエハの所定エッチング部位を接触させてエッチング加工する。薬液に浸されたエッチング部位は、エッチング加工後に切り替えて薬液管に純水を供給し、その開口端から漏れ出させることによって洗浄される。
【0008】
また、半導体基板の大面積を効率良くエッチング加工し、所望の箇所を局所的にエッチング加工することもできるウエットエッチング装置及び方法が知られている(例えば、特許文献4を参照)。このエッチング装置は、半導体基板の被加工面と平行に対向させる加工面に少なくとも1つの開口を設け、かつその開口面積を被加工面の面積に対して0.1%〜85%としたエッチングヘッドを備える。このエッチングヘッドは、加工面の開口からエッチング液を供給して毛細管効果により加工面と被加工面との間に浸透させ、表面張力によりエッチングヘッド又は半導体基板の端部でエッチング液の浸透を終端させかつこれを保持することによって、半導体基板をエッチング加工する。エッチング処理後の被加工面は、エッチングヘッドの加工面の開口から水を切替えて供給することにより、洗浄される。また、被加工面に供給したエッチング液は、別個の回収機構を設けることにより、エッチング処理後に回収することができる。
【0009】
既に本願発明者は、二重パイプ構造のノズルによりエッチング剤の供給と回収とを同時に行うことにより、マスクを用いることなく局所的なエッチング加工を可能にするローカルウエットエッチング法を提案している(例えば、非特許文献1、特許文献5を参照)。この方法は、エッチング剤の供給手段を被加工物の表面に沿って相対的に移動させつつ、被加工物表面の各点について予め測定した加工前のプロファイルと目的のプロファイルとの差から求めた加工深さに応じてエッチング剤を供給して被加工物表面をエッチングし、かつ該表面付近の液体及び気体を吸引除去する。
【0010】
この方法の第1の態様では、エッチング剤の供給手段を複数並べた供給手段集合体を所定の速度で被加工物の表面に沿って移動させ、各供給手段毎にエッチング剤の温度及び/又は流量を制御して被加工物表面に供給する。この方法の第2の態様では、被加工物表面上の各点の加工深さにより定まる速度でエッチング剤の供給手段を移動させつつエッチング剤を所定の流量で供給し、該エッチング剤の流量以上の吸引量で、被加工物表面表面付近の液体及び気体を吸引除去する。いずれの態様によっても、様々な被加工物の表面を数nm〜数μmの精度で所望の形状(プロファイル)に加工又は仕上げしたり被加工物の厚さを均一化することができる。
【0011】
また、特許文献5によれば、所定の成分及び濃度のエッチング剤を所定の流量で供給する場合に、被加工物のエッチング量即ち加工深さは、その表面がエッチング剤に晒される時間に比例する。供給手段の移動中に被加工物表面上の1点がエッチング剤に晒される時間は、その点における供給手段の速度に逆比例するから、供給手段の速度は、各点における加工深さに応じて決定されることが開示されている。
【0012】
図10(A)(B)は、前記ローカルウエットエッチング法においてエッチング剤の供給手段として使用するのに適したエッチングノズルの基本的構成を示している。同図において、エッチングノズル1は、同軸に配置した内側管2と外側管3とを有し、内側管2の内側開口4及び該内側管と外側管3との間に画定される外側開口5を被加工物6の表面6aに向けて配置する。エッチング液7は、前記内側管の供給通路8を介して内側開口4から被加工物表面6aに供給され、該表面付近の気体や固体と共に外側開口5から前記外側管の回収通路9を介して吸引除去される。これにより、エッチング液を被加工物表面から十分に除去して、該表面及びその周辺部分を余分にエッチングする虞を解消している。
【0013】
図10(C)は、ノズル1を被加工物6に対して静止させた状態でその表面6aを単位時間加工した場合に形成される単位加工痕10を示している。単位加工痕10は、外側開口5の外径により画定される円柱形状を有し、その大きさによって加工の空間分解能が決定される。また、単位加工痕とエッチングノズルの滞在時間とのコンボリューションによって加工量が決まり、目的加工量と単位加工痕とのデコンボリューションによってエッチングノズルの走査速度分布が求められる。単位加工痕の面積を小さくすれば、空間分解能が高くなり、大きくすれば加工の能率が高くなる。
【0014】
更に本願発明者は、前記ローカルウエットエッチング法に適した別の様々なノズル構造を提案している(例えば、特許文献5を参照)。図11(A)に示すエッチングノズル11は、図10(A)(B)と同じ構造のノズル単体12を複数横一列に連続して配置したノズル集合体からなる。ノズル単体12は、それぞれ同軸に配置した内側管13と外側管14とを有する。エッチング液は、各内側管13の内側開口15から被加工物の表面に供給されて該表面を横方向に細長くエッチングし、該内側管と外側管14との間に画定される外側開口16から吸引回収される。
【0015】
図11(B)は、図11(A)のエッチングノズルの変形例を示している。このノズル17は、横一列に連続して配置した複数の内側管18と、それらを囲繞するように配置した1つの外側管19とを備える。エッチング液は、各内側管18の内側開口20から被加工物の表面に供給されて該表面を横方向に細長くエッチングし、該内側管と外側管19との間に画定される外側開口21から吸引回収される。図11(A)及び(B)のノズル11,17は、ノズル単体12又は内側管18の配列方向を幅方向としてこれと直交する向きに移動させることによって、1回の走査で被加工物表面の広幅な領域を一度に加工することができる。
【0016】
図11(C)は、図11(A)のエッチングノズルの別の変形例を示している。このノズル22は、図10(A)(B)と同じ構造のノズル単体23を複数束ねて概ね正六角形に配置したノズル集合体からなる。ノズル単体23は、それぞれ同軸に配置した内側管24と外側管25とを有する。エッチング液は、各内側管24の内側開口26から被加工物の表面に供給されて該表面をエッチングし、該内側管と外側管25との間に画定される外側開口27から吸引回収される。このようにノズル22全体に複数の外側管25を分散して配置することによって、被加工物表面からエッチング液及び気体を効率良く吸引することができる。
【0017】
図12(A)は、前記ローカルウエットエッチング法に適したエッチングノズルの更に別の構成を示している。このノズル28は、横方向に細長い概ね矩形の内側管29とその外側に配置された外側管30とを有する。内側管29は、横方向に延長する直線状の内側開口31を有し、外側管30との間には、横方向に細長い矩形環状の外側開口32が画定されている。エッチング液は、内側開口31から被加工物の表面に供給されて該表面を横方向に細長い矩形状にエッチングし、外側開口32から吸引回収される。ノズル28は、その横方向と直交する向きに移動させることによって、1回の走査で被加工物の広幅な表面を加工することができる。
【0018】
ノズル28は、図12(B)に示すように、外側開口32の横幅を被加工物33の横幅よりも幾分広く構成することができる。この場合、同図に矢印で示すように、ノズル28をその幅方向と直交する向きに移動させることによって、1回の走査で被加工物33の表面を全幅に亘って一様に加工することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】特開平11−45872号公報
【特許文献2】特開平10−163153号公報
【特許文献3】特開2004−6518号公報
【特許文献4】特開2008−21920号公報
【特許文献5】特開2007−200954号公報
【非特許文献】
【0020】
【非特許文献1】高井宏之,「数値制御ローカルウェットエッチング法による高精度光学素子の作成」,2008年度精密工学会春季学術講演会講演論文集,社団法人精密工学会,2008年3月,N36,p.1081−1082
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
上述したように前記ローカルウエットエッチング法は、使用するエッチングノズルにより形成される単位加工痕の大きさによって空間分解能が決定され、単位加工痕の面積は、加工ノズルの外側開口によって決定される。また、エッチング加工量は、エッチング剤が被加工物の表面に滞在する時間即ち該表面がエッチング剤に晒される時間の積算量に比例する。従って、被加工物の加工深さがエッチングノズルの移動方向に沿って変化する場合は、該ノズルの移動方向の送りピッチを調整・制御することによって、被加工物表面を所望のプロファイルに加工することができる。
【0022】
被加工物の加工深さは、エッチングノズルの移動方向と直交する向き即ち該ノズルの幅方向に沿って変化する場合もある。例えば厚さ勾配を有するウエハのように、被加工物の表面がノズルの幅方向に傾斜している場合、この傾斜面を水平に加工することを要求されることがある。また、ポリッシング加工したウエハは、周縁部が内側の部分よりも厚くなり易く、そのような場合には、周縁部をより多く削除して全体を均一な厚さに加工することが必要である。
【0023】
このような場合、エッチングノズルの空間分解能、特に幅方向の分解能を十分に高くすれば、同様に被加工物表面を所望のプロファイルに加工することができる。そのために、例えば図10のエッチングノズル1は、外側管3の内径即ち外側開口5の外径を十分に小さくすれば良い。しかしながら、幅方向の分解能を高くすると、それだけノズルの幅方向の送りピッチが小さくなり、走査回数が多くなるので、工数が増えて作業効率及び生産性が低下する。
【0024】
図11(B)及び図12のエッチングノズル17,28は、外側開口21,32の横幅が大きく、その全幅に亘って加工痕の深さが一定である。このようなノズルで傾斜面を水平に加工しようとすると、その傾斜に応じてノズルの幅方向の送りピッチを小さくし、走査を繰り返し重ねて行わなければならない。そのため、ノズルの走査回数が非常に多くなり、工数が増えて作業効率及び生産性が低下するだけでなく、ノズルの走査を高精度に正確に制御するための高度な技術及び制御装置が必要になる。
【0025】
図11(A)及び(C)のエッチングノズル11,22は、幅方向に沿って各ノズル単体に供給するエッチング剤の流量及び/又は温度を調整することによって、該エッチングノズルの横幅の範囲内で加工深さを変化させることが可能である。しかしながら、加工精度を上げるためには、ノズル単体の管径をより細くしなければならず、より大きな面積を加工するためには、ノズル単体の本数をより多くしなければならない。このようなエッチングノズルは、構造が複雑化し、高コストになるという問題を生じる。更に、エッチングノズル全体を移動させながら、個々のノズル単体のエッチング剤流量及びその温度を高精度に調整するためには、非常に高度な制御技術が要求される。
【0026】
また、一般に水晶デバイスに使用される水晶ウエハは、半導体ウエハに比して板厚が薄く、より高い平面度を要求されることが多い。特に最近は、水晶デバイスの高周波化に伴って、水晶ウエハがより大型化、薄肉化する傾向がある。そのため、水晶ウエハのエッチング加工は、その取扱いが難しいだけでなく、従来技術に関連して上述したような半導体基板の加工技術をそのまま適用することは困難であり、水晶ウエハ固有の要求に対応し得る加工技術が求められている。
【0027】
そこで本発明は、上述した従来の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、特に前記ローカルウエットエッチング法のように、被加工物の表面に対するエッチング剤の供給と回収とを同時に行うウェットエッチングに使用するのに適した二重パイプ構造を有し、様々なプロファイルを有する被加工物の表面を、できる限り少ない回数の、好ましくは1回の走査で所望のプロファイルに効率良く加工し得るエッチングノズルを提供することにある。
【0028】
本発明の別の目的は、そのようなエッチングノズルを備えることによって、被加工物の表面をウェットエッチングで所望のプロファイルに効率良く加工し得るエッチング装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0029】
本発明は、上記目的を達成するために、内側開口を有する内側管と、該内側管の外側に配置されて内側管との間に外側開口を画定する外側管とを備え、内側開口及び外側開口を被加工物の表面に対向させて該被加工物に対して相対的に移動させながら、エッチング剤を内側開口から被加工物表面に供給しつつ、外側開口から吸引回収することにより、該被加工物表面を、被加工物の加工前における断面プロファイルと目的の断面プロファイルとの差である加工プロファイルに従ってエッチングするためのエッチングノズルであって、
外側開口の外周縁形状が、ノズルの移動方向に沿った第1方向の寸法と、ノズルの移動方向に直交する第2方向の寸法とを有し、該第2方向の寸法の範囲内で変化する前記加工プロファイルの変化に対応するように、第1方向の寸法を第2方向に沿って変化させたことを特徴とする。
【0030】
このようなエッチングノズルでは、被加工物の加工断面形状が外側開口の外周縁形状によって決定される。従って、被加工物の加工プロファイルの変化に対応させて、外側開口の外周縁形状の第1方向の寸法を第2方向に沿って変化させることによって、好ましくはエッチングノズルの1回の走査で又はより少ない回数の走査で、様々な断面プロファイルを有する被加工物の表面を、所望のプロファイルに効率良く加工することができる。
【0031】
或る実施例では、エッチングノズルの外側開口の第1方向の寸法を第2方向に沿って線形的に変化させることにより、被加工物の加工プロファイルが第2方向に沿って一様に傾斜している場合に、被加工物表面をより少ない回数の走査で所望のプロファイルに効率良く加工することができる。
【0032】
別の実施例では、エッチングノズルの外側開口の第1方向の寸法を第2方向に沿って部分的に変化させることにより、被加工物の加工プロファイルがエッチングノズルの外側開口の横幅の範囲内で部分的に変化している場合に、その変化に対応して被加工物表面をより少ない回数の走査で所望のプロファイルに効率良く加工することができる。
【0033】
特にポリッシング加工後のウエハのように、被加工物の周縁部の厚さがその内側の部分よりも厚い場合には、エッチングノズルの外側開口の第2方向の少なくとも一方の端部付近において、該外側開口の第1方向の寸法を第2方向に沿って変化させることにより、同様に被加工物表面をより少ない回数の走査で所望のプロファイルに効率良く加工することができる。
【0034】
本発明の別の側面によれば、上述した本発明のエッチングノズルと、該ノズルの内側管にエッチング剤を供給するための供給手段と、エッチングノズルの外側管からエッチング剤を回収するための回収手段と、エッチングノズルを被加工物に対して相対的に移動させるための移動手段とを備えるエッチング装置が提供される。これにより、様々なプロファイルを有する被加工物の表面をウェットエッチングによって所望のプロファイルに効率良く加工することができる。
【0035】
或る実施例では、エッチングノズルの内側管に供給されかつ外側管から回収されるエッチング剤を貯留するためのリザーバーと、該リザーバーのエッチング剤を内側管に循環させる手段とを更に備えることにより、エッチング剤の使用量を少なくしかつ加工コストを低減すると共に、エッチング剤が環境に及ぼし得る影響を抑制することができる。
【0036】
別の実施例では、リザーバーのエッチング剤を所望の温度に設定しかつ/又は維持するための手段を更に備えることにより、被加工物の表面に供給されるエッチング剤の温度を調整制御することができる。
【0037】
別の実施例では、移動手段によってエッチングノズルを被加工物に対して相対的に直線的に移動させることができ、それによって例えば厚さ勾配を有する矩形ウエハのような被加工物をその辺縁方向に沿って効率良く加工することができる。
【0038】
更に別の実施例によれば、移動手段によってエッチングノズルを被加工物に対して相対的に回転させて円周方向に移動させることができ、それによって例えば円形ウエハのような被加工物をその円周方向に沿って効率良く加工することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】(A)図は本発明によるエッチングノズルの第1実施例の縦断面図、(B)図は該ノズルの開口部を示す端面図。
【図2】第1実施例のノズルを用いたエッチング装置の概略構成図。
【図3】第1実施例のノズルにより被加工物に形成される加工痕の断面図。
【図4】(A)図は第1実施例のノズルにより加工されるウエハの断面図、(B)図は該ノズルの走査要領を説明する平面図。
【図5】(A)図は本発明によるエッチングノズルの第2実施例の縦断面図、(B)図は該ノズルの開口部を示す端面図。
【図6】第2実施例のノズルにより被加工物に形成される加工痕の断面図。
【図7】(A)図は第2実施例のノズルにより加工されるウエハの断面図、(B)図は該ノズルの走査要領を説明する平面図。
【図8】(A)図は円形ウエハを加工するための基本的構成を有するエッチングノズルの縦断面図、(B)図は該ノズルの端面図。
【図9】(A)図は本発明によるエッチングノズルの第3実施例の縦断面図、(B)図は該ノズルの外側開口の外周縁形状を示す図。
【図10】(A)図は従来のエッチングノズルの構成を示す縦断面図、(B)図は該ノズルの開口部を示す端面図、(B)図はその単位加工痕を示す縦断面図。
【図11】(A)図は従来のエッチングノズルの別の構成を示す端面図、(B)図はその変形例を示す端面図、(C)図は別の変形例を示す端面図。
【図12】(A)図は従来のエッチングノズルの別の構成を示す端面図、(B)図は該ノズルの走査要領を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下に、添付図面を参照しつつ、本発明の好適な実施例を詳細に説明する。
図1(A)(B)は、本発明によるエッチングノズルの第1実施例の構成を概略的に示している。本実施例のエッチングノズル41は、内側管42とその外側に配置した外側管43とからなる2重パイプ構造を備える。内側管42はその先端に内側開口44が設けられ、外側管43は前記内側管との間に外側開口45を画定している。内側開口44は、前記内側管内部の供給通路46を介してエッチング剤の供給源に接続され、外側開口45は、前記外側管内部の回収通路47を介してエッチング剤の回収装置に接続される。
【0041】
外側開口45は、左右方向の中心線に関して対称であり、互いに平行をなす左側の長辺及び右側の短辺と上側及び下側の斜辺とからなる等脚台形の外周縁形状を有する。内側開口44も、前記外側開口に概ね相似する等脚台形の外周縁形状を有する。本実施例の内側管42及び外側管43は、同様に前記外側開口に概ね相似する等脚台形の断面外形形状を有する。しかし、別の実施例では、その断面外形形状を等脚台形以外の様々な形状にすることができる。
【0042】
本実施例では、エッチングノズル41の移動方向Aに沿った向きを第1方向とし、それに直交する向きを第2方向とする。外側開口45は、その左右方向即ち第2方向に細長く形成され、その全幅に亘って第1方向の寸法Lが第2方向に沿って線形に変化している。エッチングノズル41は、内側開口44及び外側開口45を被加工物48の表面に対向させ、かつ前記外側開口の左右方向の中心線と直交する向きを移動方向A即ち第1方向に一致させるように配置する。
【0043】
エッチング液は、前記ノズルを移動方向Aに沿って移動させつつ、供給通路46を介して内側開口44から被加工物48の表面に供給され、該表面をエッチングする。その後エッチング液は、前記表面付近の気体や固体と共に外側開口45から回収通路47を介して吸引除去される。
【0044】
図2は、本発明によるエッチング装置の実施例の構成を概略的に示している。本実施例のエッチング装置51は、図1(A)(B)のエッチングノズル41と、エッチング液52を貯留するためのリザーバー53とを備える。リザーバー53は、管路54によりエッチングノズル41の回収通路47と接続されている。吸引ポンプ54によりリザーバー53内を減圧することによって、被加工物表面48aを処理した後のエッチング液を外側開口45から回収通路47を通して吸引し、前記リザーバーに回収することができる。
【0045】
リザーバー53は更に、管路56によってエッチングノズル41の供給通路47と接続されている。管路56には、送液ポンプ57、流量調節バルブ58及び流量計59が設けられており、リザーバー53のエッチング液を供給通路47に流量を制御して供給する。このようにして、エッチング剤をエッチングノズル41に供給し、被加工物48の処理後に回収して再度前記エッチングノズルに供給する循環システムが構成される。別の実施例では、前記リザーバーとは別個にエッチング液の供給源を設けることができる。
【0046】
また、リザーバー53には、温度センサー付きヒーター60が設けられ、該ヒーターに接続された温度コントローラ61によって前記リザーバー内のエッチング液を所望の温度に設定しかつ/又は維持する。このような温度制御機構により、被加工物表面48aに供給されるエッチング液の温度を、エッチングノズル41の移動速度も考慮しつつ、加工深さに応じて調整制御することができる。
【0047】
エッチング装置51は、エッチングノズル41を被加工物48に対して相対的に移動させるための移動手段(図示せず)を備える。或る実施例では、前記移動手段が、エッチングノズル41を直線的に若しくは円周方向に移動させることができ、又は広い面積を加工するために互いに直交するXY方向に移動させることができる。別の実施例では、前記移動手段が、被加工物48を直線的に移動させ若しくは回転させることができ、又はXYテーブル等に固定して直交するXY方向に移動させることができる。また別の実施例では、エッチングノズル41をX方向に移動させ、それと直交するY方向に被加工物48を移動させることができる。
【0048】
図3は、第1実施例のエッチングノズル41を被加工物48に対して相対的に一定の速度で移動させつつ、その表面48aをエッチングしたときに、該被加工物表面に形成される加工溝62の断面形状を示している。加工溝62は、底面62aが、前記第2方向に沿って一定の角度で傾斜した断面形状に形成される。
【0049】
被加工物表面48aの各点は、該点が平面上前記ノズルの外側開口45外周縁の範囲内に含まれている間、エッチング剤に晒される。外側開口45の外周縁は、上述したように等脚台形状を有し、その全幅に亘って第1方向の寸法Lが第2方向に沿って線形に変化している。エッチング加工量は、被加工物の表面がエッチング剤に晒される時間の積算量に比例するから、被加工物表面の各点は、第1方向の寸法Lに比例してエッチング剤に晒される時間が長くなり、エッチング加工量が多くなる。従って、加工溝底面62aの傾斜は、前記外側開口の第1方向の寸法Lの変化の傾きによって決定される。
【0050】
第1実施例のエッチングノズル41は、例えば傾斜面を水平にエッチング加工するのに適している。図4(A)(B)は、厚さ勾配を有するウエハ63の表面63aを水平面に加工する要領を示している。ここで、図4(A)に示すように、加工前の傾斜した表面63aの断面プロファイルと、想像線64で示す水平面である目的の断面プロファイルとの差が加工プロファイルとなる。本実施例では、加工プロファイルが、図中左側から右側に緩やかに傾斜する楔形状をなしている。
【0051】
図4(B)は、水平に配置したウエハ63の表面63aを下方から見た図である。同図において、ウエハ表面63aの傾斜方向と直交する向きをエッチングノズル41の主走査方向Xとし、前記傾斜方向を副走査方向Yとする。
【0052】
エッチングノズル41は、ウエハ63の図中下側の端部から上側の端部に向けて直線的に一定の速度で移動させつつ、エッチング液を供給してウエハ表面63aのエッチングを行う。エッチングノズル41の1回の走査によって、ウエハ63の表面63aには直線状の加工溝65が形成される。加工溝65は、図4(A)に示すように、目的の断面プロファイル64と同じ深さで水平な底面を有する。
【0053】
エッチングノズル41の移動速度は、前記加工プロファイルに基づいて加工深さとエッチングレートとから決定される。エッチングレートは、必要な場合に、使用するエッチング液の種類、濃度、流量、温度等を調整して制御することができる。1回の走査で十分な加工量を得られない場合には、前記ノズルを繰り返し重ねて走査することによって、所望の深さの加工溝65を形成することができる。
【0054】
前記ウエハの上側の端部に到達すると、エッチングノズル41をY方向に図中右側へ移動させる。Y方向の送り量は、前記ノズルの外側開口43の最大幅Wにより決定される。更に前記ノズルをウエハ63の上端から下端に向けて直線的に加工溝65と平行に一定の速度で移動させ、該ウエハの下端に到達すると、同じ送り量でY方向に図中右側へ移動させ、再び前記ウエハの下端から上端に向けて直線的に一定の速度で移動させる。このようにウエハ表面63aの加工したい領域全面をエッチングノズル41で走査しつつ、エッチング液を供給して前記表面をエッチングすることにより、ウエハ63に目的の断面プロファイル64を形成することができる。
【0055】
図5(A)(B)は、本発明によるエッチングノズルの第2実施例の構成を概略的に示している。本実施例のエッチングノズル71は、同様に内側管72とその外側に配置した外側管73とからなる2重パイプ構造を備える。内側管72はその先端に内側開口74が設けられ、外側管73は前記内側管との間に外側開口75を画定している。内側開口74は、前記内側管内部の供給通路76を介してエッチング剤の供給源に接続され、外側開口75は、前記外側管内部の回収通路77を介してエッチング剤の回収装置に接続される。
【0056】
外側開口75は、上下方向及び左右方向の中心線に関して対称であり、直線状の左右両辺が互いに平行をなし、上下各辺が中央部分では互いに平行で、それから左右両端に向けて線形に拡がる向きに傾斜した概ね鼓形の外周縁形状を有する。内側開口74も、前記外側開口に概ね相似する鼓形の外周縁形状を有する。本実施例の内側管72及び外側管73は、その断面外形形状が同様に前記外側開口に概ね相似する鼓形をなしているが、それ以外の様々な形状にすることができる。
【0057】
本実施例も、エッチングノズル71の移動方向Aに沿った向きを第1方向とし、それに直交する向きを第2方向とする。外側開口75は、その左右方向即ち第2方向に細長く形成され、第1方向の寸法Lが第2方向に沿ってその中央部分において一定で、該中央部分から左右両端に向けて線形に大きくなる向きに変化している。エッチングノズル71は、内側開口74及び外側開口75を被加工物78の表面に対向させ、かつ前記外側開口の上下方向の中心線を移動方向A即ち第1方向に一致させるように配置する。
【0058】
エッチング液は、前記ノズルを移動方向Aに沿って移動させつつ、供給通路76を介して内側開口74から被加工物78の表面に供給され、該表面をエッチングする。その後エッチング液は、前記表面付近の気体や固体と共に外側開口75から回収通路77を介して吸引除去される。
【0059】
第2実施例のエッチングノズル71は、第1実施例のエッチングノズル41に置き換えて図2のエッチング装置に用いることができる。図6は、第2実施例のエッチングノズル71を被加工物78に対して相対的に一定の速度で移動させつつ、その表面78aをエッチングしたときに、該被加工物表面に形成される加工溝79の断面形状を示している。加工溝79は、底面79aが、前記第2方向に沿って中央部分が一定の深さで、該中央部分から左右両端に向けて一定の角度で深くなるように傾斜した断面形状に形成される。
【0060】
第1実施例において上述したように、被加工物表面78aの各点は、該点が平面上前記ノズルの外側開口75外周縁の範囲内に含まれている間、エッチング剤に晒され、エッチング加工量は、エッチング剤が被加工物の表面がエッチング剤に晒される時間の積算量に比例する。外側開口75の外周縁が上述した鼓形状を有するので、加工溝底面79aは、その左右両端付近の傾斜が、外側開口75の第1方向の寸法Lの変化の傾きによって決定される。
【0061】
第2実施例のエッチングノズル71は、例えば幅方向に沿って中央部分が平坦でかつ左右両側が傾斜して高くなった面の全体を平坦にエッチング加工するのに適している。上述したように、ポリッシング加工した後の水晶ウエハは、その辺縁付近の板厚が内側の部分よりも厚い。図7(A)(B)は、そのように内側部分が平坦でかつ左右辺縁付近が傾斜して高くなった断面形状のウエハ80を、その表面80a全面を平坦にかつ該ウエハ全体の板厚を均一にするように加工する要領を示している。ここで、図7(A)に示すように、加工前の表面80aの断面プロファイルと、想像線81で示す平坦面である目的の断面プロファイルとの差が加工プロファイルとなる。本実施例では、加工プロファイルが、図6に示す加工溝79の断面形状を上下反転させた形状をなす。
【0062】
図7(B)は、水平に配置したウエハ80の表面80aを下方から見た図である。同図から分かるように、エッチングノズル71は、外側開口75の幅即ち第2方向の寸法がウエハ80の幅よりも僅かに大きく、かつ該外側開口の幅の範囲内に前記ウエハの全幅が収まるように配置する。エッチングノズル71をウエハ80の図中下側の端部から上側の端部に向けて直線的に一定の速度で移動させつつ、エッチング液を供給してウエハ表面80aのエッチングを行う。
【0063】
前記ノズルの外側開口75は、第1方向の寸法Lが一定である前記中央部分の位置及び幅をウエハ80の平坦な前記内側部分と一致させ、かつ前記中央部分から左右両端に向けて第1方向の寸法Lの変化の傾きを前記ウエハの左右辺縁付近の傾斜に対応させた外周縁形状を有する。これにより、エッチングノズル71の1回の走査によって、ウエハ80の表面80aを目的の平坦面に加工することができる。
【0064】
エッチングノズル41の移動速度は、前記加工プロファイルに基づいて加工深さとエッチングレートとから決定される。エッチングレートは、必要な場合に、使用するエッチング液の種類、濃度、流量、温度等を調整して制御することができる。また、1回の走査で十分なエッチング加工量を得られない場合には、前記ノズルを繰り返し重ねて走査することによって、ウエハ80を所望の深さの平坦面に加工することができる。
【0065】
上記各実施例では、エッチングノズルを被加工物の表面に沿って直線的に移動させる場合を説明した。しかしながら、本発明のエッチングノズルは、被加工物に対して相対的に回転させ、或る点を中心として円周方向に移動させながら、該被加工物の表面をエッチング加工することができる。例えば、円形ウエハの表面をエッチング加工する場合には、エッチングノズルを円周方向に移動させることが好ましい。
【0066】
図8(A)及び(B)は、円形ウエハ90の表面90aをエッチングするための基本的構成を有するエッチングノズルを概略的に示している。同図において、エッチングノズル91は、同様に内側管92とその外側に配置した外側管93とからなる2重パイプ構造を備える。内側管92はその先端に内側開口94が設けられ、外側管93は前記内側管との間に外側開口95を画定している。内側開口94は、前記内側管内部の供給通路96を介してエッチング剤の供給源に接続され、外側開口75は、前記外側管内部の回収通路97を介してエッチング剤の回収装置に接続される。
【0067】
図8(B)に示すように、外側開口95は、図中右側の点Oを中心に所定の角度θ(ラジアン)で開いた上側及び下側の半径部95a,95bとそれらを連結する円弧部とからなる概ね扇形の外周縁形状を有する。内側開口94も、前記外側開口に概ね相似する扇形の外周縁形状を有する。同図において、内側管92及び外側管93は、その断面外形形状が同様に前記外側開口に概ね相似する扇形をなしているが、それ以外の様々な形状にすることができる。
【0068】
エッチングノズル91は、外側開口95の前記扇形の中心点Oを中心として回転させて円周方向Aに沿って移動させる。この場合、前記ノズルの移動方向即ち円周方向Aを第1方向とし、それに直交する半径方向を第2方向とする。外側開口75の外周縁形状は、第2方向の寸法を中心点Oからの距離即ち半径で表し、第1方向の寸法を中心点Oを中心とする円弧長さで表すことができる。即ち、中心点Oからの距離Rの位置にある下側半径部95b上の点における外側開口75の第1方向の寸法Lは、常にL=R・θとなる。
【0069】
エッチングノズル91は、中心点Oを円形ウエハ90の中心位置に整合させ、内側開口94及び外側開口95をウエハ表面90aに対向させて配置する。外側開口95は、前記円弧部が円形ウエハ90の外周縁より僅かに外側に位置する大きさを有する。従って、前記ノズルを360°回転させると、円形ウエハ90の表面90a全面を走査することができる。エッチング液は、前記ノズルを円周方向Aに沿って移動させつつ、供給通路96を介して内側開口94からウエハ表面90aに供給され、該表面をエッチングする。その後エッチング液は、前記表面付近の気体や固体と共に外側開口95から回収通路97を介して吸引除去される。
【0070】
ウエハ表面90a上の或る点Pにおけるエッチングノズル91の移動速度Vは、その回転角速度をωとすると、該点Pの中心点Oからの距離即ち半径をrとして、V=r・ωとなる。点Pがエッチング液に晒される時間は、該点Pを通過する前記ノズルの外側開口の第1方向の寸法Lを前記ノズルの移動速度Vで割ることによって算出される。このとき、R=rであるから、点Pがウエハ表面90aの如何なる位置にあっても、エッチング液に晒される時間tは、t=R・θ/r・ω=θ/ωとなり、一定である。
【0071】
上述したように、エッチング加工量は、被加工物の表面がエッチング剤に晒される時間の積算量に比例する。従って、ウエハ90の表面90aは均一な深さに加工される。これにより得られる断面プロファイル96と元の表面90aの断面プロファイルとの差が、加工プロファイルとなる。上述したように、前記ウエハ表面がエッチング液に晒される時間tは、エッチングノズル91の外側開口95の開き角θの関数であるから、前記加工ファイルに対応してθを決定することにより、前記ノズルの1回の走査でウエハ表面90aを目的の断面プロファイルに加工することができる。
【0072】
本発明によれば、このような基本的構成に基づいて、半径方向に断面形状が変化する被加工物の表面を所望の断面プロファイルに加工することができる。図9(A)(B)は、ポリッシング加工後のように板厚が半径方向に変化する円形ウエハ100の表面100aを平坦で均一な厚さに加工するのに適した、本発明によるエッチングノズルの第3実施例の構成を概略的に示している。
【0073】
本実施例のエッチングノズル101は、同様に内側管102とその外側に配置した外側管103とからなる2重パイプ構造を備える。内側管102はその先端に内側開口1044が設けられ、外側管103は前記内側管との間に外側開口105を画定している。内側開口104は、前記内側管内部の供給通路106を介してエッチング剤の供給源に接続され、外側開口105は、前記外側管内部の回収通路107を介してエッチング剤の回収装置に接続される。
【0074】
図9(A)に示すように、ウエハ表面100aは、全周に亘って半径方向の中央位置付近から中心に向けて隆起しかつ外周縁に向けて傾斜した断面プロファイルを有する。同図に想像線106で示す平坦面が目的の断面プロファイルであり、これと元の表面100aの断面プロファイルとの差が加工プロファイルとなる。
【0075】
図9(B)に示すように、外側開口105は、図中右側の点Oを中心に開いた上側及び下側の半径部105a,105bとそれらを連結する円弧部とからなる概ね扇形の外周縁形状を有する。下側半径部105bが点Oから真直ぐに延長しているのに対し、上側半径部105は、点Oから前記円弧部まで湾曲した曲線状に延長している。上側半径部105の湾曲形状は、ウエハ100の前記加工プロファイルに対応して決定される。
【0076】
また、外側管103の断面外形形状は、図8の場合と同様に、上側及び下側の半径部分が真直ぐに延長する扇形をなしているが、それ以外の様々な形状にすることができる。図示しないが、内側管102の断面外形形状及び内側開口104の外周縁形状は、前記外側開口に概ね相似する扇形に形成することができ、又はそれ以外の様々な形状にすることができる。
【0077】
図8のエッチングノズル91と同様に、エッチングノズル101は、外側開口105の前記扇形の中心点Oを中心として回転させて円周方向Aに沿って移動させる。前記ノズルの移動方向即ち円周方向Aを第1方向とし、それに直交する半径方向を第2方向とする。外側開口105の外周縁形状は、第2方向の寸法を中心点Oからの距離即ち半径で表し、第1方向の寸法を中心点Oを中心とする円弧長さで表すことができる。
【0078】
エッチングノズル101は、中心点Oを円形ウエハ100の中心位置に整合させ、内側開口104及び外側開口105をウエハ表面100aに対向させて配置する。外側開口105は、前記円弧部が前記ウエハの外周縁より僅かに外側に位置する大きさを有する。従って、前記ノズルを360°回転させると、ウエハ表面100aの全面を走査することができる。エッチング液は、前記ノズルを円周方向Aに沿って移動させつつ、供給通路106を介して内側開口104からウエハ表面100aに供給されて、該表面をエッチングする。その後エッチング液は、前記表面付近の気体や固体と共に外側開口105から回収通路107を介して吸引除去される。
【0079】
図8のエッチングノズル91に関連して上述したように、そのエッチング加工量は、外側開口95の扇形の開き角θによって決定される。本実施例では、図9(A)に示すように、ウエハ100の板厚が最も薄い半径r0 の位置における加工深さをdmin とすると、この位置に対応するエッチングノズル101の外側開口105の第2方向の位置において、該外側開口の点Oを中心とした開き角は最小値θmin となり、従って該位置における第1方向の寸法は最小値Lmin =r0 ・θmin となる。開き角の最小値θmin は、加工深さの最小値dmin 及びエッチングレートによって決定される。
【0080】
本実施例の場合、ウエハ表面100a上の任意の点Pにおけるエッチング加工量は、その点に対応する外側開口105の第1方向の寸法によって変化する。
【0081】
ウエハ表面10a上の任意の点Pにおける加工深さdは、該ウエハの板厚の変動に対応する加工深さの変動量をΔdとすると、d=dmin +Δdで表される。点Pに対応するエッチングノズル101の外側開口105の第2方向の位置において、第1方向の寸法はL=Lmin +ΔLで表される。ここで、ΔLは、加工深さの変動量Δdに対応する第1方向の寸法の変動量である。第1方向の寸法の変動量ΔLは、加工深さの最小値dmin に対する第1方向の寸法の最小値Lmin の比率から、Δdに基づいて算出することができる。
【0082】
外側開口105の第2方向の任意の位置における第1方向の寸法Lは、その位置における第2方向の寸法即ち半径Rと、点Oを中心とした開き角θとによって、L=R・θで表される。この第2方向の任意の位置における開き角θは、第1方向の寸法の変動量ΔLに対応する開き角の変動量をΔθとすると、θ=θmin +Δθで表される。従って、開き角の変動量は、Δθ=ΔL/Rで表される。この関係式に基づいて、上側半径部105aの湾曲形状は、容易に形成することができる。このように外側開口105の外周縁形状を決定することによって、エッチングノズル101の1回の走査でウエハ表面100aを目的の断面プロファイル106に加工することができる。
【0083】
別の実施例では、外側開口105の下側半径部105bを上記実施例の上側半径部105aと同じ湾曲形状とし、かつ上側半径部105aを直線状に形成することができる。また別の実施例では、外側開口105の上側及び下側半径部105a,105bの両方を湾曲形状にすることができる。この場合にも、外側開口105の第1方向の寸法Lを第2方向に沿って上記実施例と同様に設定することによって、目的の加工形状を得ることができる。
【0084】
第3実施例のエッチングノズル101も、第1及び第2実施例と同様に、図2に示すエッチング装置51に装着することができる。この場合、エッチングノズル101の移動手段は、被加工物に対して相対的に回転させて円周方向に移動させるように構成する。この移動手段は、被加工物を固定してエッチングノズル101を移動させ、又は前記エッチングノズルを固定して被加工物を移動させたり、両方とも移動させるようにすることができる。
【0085】
本発明は、上記実施例に限定されるものでなく、その技術的範囲内で様々な変形又は変更を加えて実施することができる。例えば、第1及び第2実施例のエッチングノズルは、いずれも被加工物の加工プロファイルに対応して、外側開口の第1方向の寸法が第2方向に沿って線形に変化している。しかしながら、被加工物の加工プロファイルが湾曲している場合には、その湾曲に対応して外側開口の第1方向の寸法を第2方向に沿って湾曲するように変化させることによって、同様に所望の加工形状を得ることができる。また、本発明は、水晶ウエハだけでなく、それ以外の圧電材料、シリコン等の半導体材料又はガラス材料のウエハ、様々な形態の被加工物について同様に適用することができる。
【符号の説明】
【0086】
1,11,17,22,28,41,71,91,101…エッチングノズル、2,13,18,24,29,42,72,92,102…内側管、3,14,19,25,30,43,73,93,103…外側管、4,15,20,26,31,44,73,93,103…内側開口、5,16,21,27,32,45,75,95,105…外側開口、6,33,48,78…被加工物、6a,48a,63a,78a,80a,90a,10a…表面、7,52…エッチング液、8,46,76…供給通路、9,47,77…回収通路、10…単位加工痕、12,23…ノズル単体、51…エッチング装置、62,79…加工溝、62a,79a…底面、63,80,90,100…ウエハ、64,81,96,106…断面プロファイル、95a,95b,105a,105b…半径部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内側開口を有する内側管と、前記内側管の外側に配置されて前記内側管との間に外側開口を画定する外側管とを備え、前記内側開口及び前記外側開口を被加工物の表面に対向させて該被加工物に対して相対的に移動させながら、エッチング剤を前記内側開口から前記被加工物表面に供給しつつ前記外側開口から吸引回収することにより、前記被加工物表面を、前記被加工物の加工前における断面プロファイルと目的の断面プロファイルとの差である加工プロファイルに従ってエッチングするためのエッチングノズルであって、
前記外側開口の外周縁形状が、前記エッチングノズルの移動方向に沿った第1方向の寸法と、前記エッチングノズルの移動方向に直交する第2方向の寸法とを有し、前記第2方向の寸法の範囲内で変化する前記加工プロファイルの変化に対応させて、前記第1方向の寸法を前記第2方向に沿って変化させたことを特徴とするエッチングノズル。
【請求項2】
前記外側開口の前記第1方向の寸法を前記第2方向に沿って線形的に変化させたことを特徴とする請求項1記載のエッチングノズル。
【請求項3】
前記外側開口の前記第1方向の寸法を前記第2方向に沿って部分的に変化させたことを特徴とする請求項1記載のエッチングノズル。
【請求項4】
前記外側開口の前記第2方向の少なくとも一方の端部付近において、該外側開口の前記第1方向の寸法を前記第2方向に沿って変化させたことを特徴とする請求項3記載のエッチングノズル。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか記載のエッチングノズルと、前記エッチングノズルの前記内側管にエッチング剤を供給するための供給手段と、前記エッチングノズルの前記外側管からエッチング剤を回収するための回収手段と、前記エッチングノズルを被加工物に対して相対的に移動させるための移動手段とを備えることを特徴とするエッチング装置。
【請求項6】
前記エッチングノズルの前記内側管に供給されかつ前記外側管から回収される前記エッチング剤を貯留するためのリザーバーと、前記リザーバーの前記エッチング剤を前記内側管に循環させる手段とを更に備えることを特徴とする請求項5記載のエッチング装置。
【請求項7】
前記リザーバーのエッチング剤を所望の温度に設定しかつ/又は維持するための手段を更に備えることを特徴とする請求項6記載のエッチング装置。
【請求項8】
前記移動手段が、前記エッチングノズルを前記被加工物に対して直線的に移動させることを特徴とする請求項4又は5記載のエッチング装置。
【請求項9】
前記移動手段が、前記エッチングノズルを前記被加工物に対して円周方向に移動させることを特徴とする請求項4又は5記載のエッチング装置。
【請求項1】
内側開口を有する内側管と、前記内側管の外側に配置されて前記内側管との間に外側開口を画定する外側管とを備え、前記内側開口及び前記外側開口を被加工物の表面に対向させて該被加工物に対して相対的に移動させながら、エッチング剤を前記内側開口から前記被加工物表面に供給しつつ前記外側開口から吸引回収することにより、前記被加工物表面を、前記被加工物の加工前における断面プロファイルと目的の断面プロファイルとの差である加工プロファイルに従ってエッチングするためのエッチングノズルであって、
前記外側開口の外周縁形状が、前記エッチングノズルの移動方向に沿った第1方向の寸法と、前記エッチングノズルの移動方向に直交する第2方向の寸法とを有し、前記第2方向の寸法の範囲内で変化する前記加工プロファイルの変化に対応させて、前記第1方向の寸法を前記第2方向に沿って変化させたことを特徴とするエッチングノズル。
【請求項2】
前記外側開口の前記第1方向の寸法を前記第2方向に沿って線形的に変化させたことを特徴とする請求項1記載のエッチングノズル。
【請求項3】
前記外側開口の前記第1方向の寸法を前記第2方向に沿って部分的に変化させたことを特徴とする請求項1記載のエッチングノズル。
【請求項4】
前記外側開口の前記第2方向の少なくとも一方の端部付近において、該外側開口の前記第1方向の寸法を前記第2方向に沿って変化させたことを特徴とする請求項3記載のエッチングノズル。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか記載のエッチングノズルと、前記エッチングノズルの前記内側管にエッチング剤を供給するための供給手段と、前記エッチングノズルの前記外側管からエッチング剤を回収するための回収手段と、前記エッチングノズルを被加工物に対して相対的に移動させるための移動手段とを備えることを特徴とするエッチング装置。
【請求項6】
前記エッチングノズルの前記内側管に供給されかつ前記外側管から回収される前記エッチング剤を貯留するためのリザーバーと、前記リザーバーの前記エッチング剤を前記内側管に循環させる手段とを更に備えることを特徴とする請求項5記載のエッチング装置。
【請求項7】
前記リザーバーのエッチング剤を所望の温度に設定しかつ/又は維持するための手段を更に備えることを特徴とする請求項6記載のエッチング装置。
【請求項8】
前記移動手段が、前記エッチングノズルを前記被加工物に対して直線的に移動させることを特徴とする請求項4又は5記載のエッチング装置。
【請求項9】
前記移動手段が、前記エッチングノズルを前記被加工物に対して円周方向に移動させることを特徴とする請求項4又は5記載のエッチング装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−232498(P2010−232498A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−79617(P2009−79617)
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【出願人】(000003104)エプソントヨコム株式会社 (1,528)
【出願人】(504176911)国立大学法人大阪大学 (1,536)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【出願人】(000003104)エプソントヨコム株式会社 (1,528)
【出願人】(504176911)国立大学法人大阪大学 (1,536)
【Fターム(参考)】
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