説明

エネルギの貯蔵/輸送

エネルギを蓄積及び/又は運搬する装置は、蓄熱ステーションと、放熱ステーションと、反応器部分1とを含む。反応器部分は、ケミカル・ヒート・ポンプの一部であるように構成され、活性物質を含む。反応器部分は、蓄熱するため、すなわち活性物質を蓄熱状態へ変化させるために蓄熱ステーションに連結し、放熱するため、すなわち活性物質を放熱状態へ変化させるために放熱ステーションに連結することができる。一実施例において、固体状態及び液体状態の両方の活性物質が母材によって保持又は担持又は結合されるように、反応器部分には活性物質のための母材が備えられる。母材は、酸化アルミニウムなどの非活性材料であり、細孔を有することが有利である。また、この装置は、浄化された形態の揮発性液体の生産に使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2007年11月29日出願のスウェーデン国特許出願第0702649−5号の優先権及び利益を主張するものであり、その文献の教示全体が参照により本明細書に援用される。また、本出願は、国際公開第WO2007/139476号と共通部分がある。
【0002】
本発明は、エネルギを貯蔵及び/又は輸送する装置並びに方法に関するものである。また、同時に揮発性液体を浄化する装置並びに方法に関するものである。
【背景技術】
【0003】
温室効果ガスの排出量の増加を考慮すると、COの排出を招かないように、全てのエネルギ生産を全体的にできる限り変化させることが重要である。排出物質を低減するために明らかな方法は、主に産業、とりわけ加工産業及び同様の活動からの廃熱を使用することである。スウェーデンでは、使わなければ無駄になるエネルギを利用して、部屋及び建物に温熱又は冷熱を供給することによって、このようなエネルギの全使用量が排出量の半分を超えるほどになっている。
【0004】
しかしながら、例えば産業プロセスで生成される大量の廃熱を収集することに、技術的及び経済的な難題が存在することが一般に知られている。技術的には、このようなエネルギを収集する装置は、高い温度及びエネルギ供給量の変化に対処できなければならない。
【0005】
さらに、経済的に許容できるようにこのようなエネルギを使用するためには、このエネルギを貯蔵媒体へと移すことが可能でなければならず、貯蔵媒体の単位重量当たりのエネルギ密度及び単位体積当たりエネルギ密度の両方が十分に大きい状態で、このエネルギを貯蔵媒体に貯蔵可能でなければならない。例えばWO00/37864及びWO2005/054757には、ケミカル・ヒート・ポンプが記載されている。このケミカル・ヒート・ポンプのアキュムレータには、エネルギが、蓄熱状態において、ある意味で貯蔵され、その後、放熱状態において、温熱又は冷熱として送出される。
【0006】
ケミカル・ヒート・ポンプの機能の原理はよく知られている。例えば、米国特許第5,440,889号、第5,056,591号、第4,993,239号、第4,754,805号、並びに国際公開WO94/21973、WO00/31206、WO00/37864、及びWO2005/054757を参照されたい。ケミカル・ヒート・ポンプには、活性物質が備えられる。活性物質は、ヒート・ポンプそのものの工程を行い、揮発性媒体、すなわち吸収剤とともに作用する。揮発性媒体は、通常は双極性の液体、多くの場合は水である。従来技術によれば、作用する活性物質として、固体物質、液体物質、又は「ハイブリッド物質(hybrid substance)」が使用可能である。「固体」の活性物質とは、物質が、全工程及び全サイクルの間、常に固体状態のままであること、すなわち、揮発性媒体が中に吸収されていても、吸収されていなくても、固体状態のままであることを意味する。「液体」の活性物質とは、物質が、全工程及び全サイクルの間、常に液体状態のままであること、すなわち、揮発性媒体が中に吸収されていても、吸収されていなくても、液体状態のままであることを意味する。「ハイブリッド」物質とは、ヒート・ポンプの工程中、活性物質が固体状態と液体状態との間を変化することを意味する。
【0007】
固体の活性物質の場合には、放熱工程全体にわたってヒート・ポンプが組み込まれたシステムの冷却温度が一定のままであることや、比較的大きい貯蔵容量が得られるという利点が得られる。吸収剤として水を使用した固体物質の貯蔵容量の典型的な値は、冷却エネルギとして利用した場合、物質1リットルにつき約0.3kWhである。固体物質の使用に関連する別の利点は、システム内に可動式の構成要素が必要とされないことである。物質と均一に接触している層板状の熱交換器又はプレート状の熱変換器を介して、熱は物質に供給されたり、物質から取り出されたりする。したがって、引用されるWO00/31206に記載されたケミカル・ヒート・ポンプでは、工程側に可動式の構成要素は設けられない。固体物質に関連する不利な点は、固体物質が一般に熱伝導率が低いので、獲得できる出力が制限されることである。同じ特許出願には、とりわけ、固体物質の熱伝導率が低いことや、それに起因して出力/効率が低くなることに関連する問題を解決する方法が記載されている。その方法には、収着質中で固体物質を泥状にし、熱交換器の周囲又は中に容易に満たすことができるような固さのスラリーを形成することが含まれる。スラリー中の収着質の量は、後にヒート・ポンプが放熱した状態において存在する収着質の濃度を超えるべきである。その後、物質が蓄熱されると、最終的な焼結された形状、いわゆる母材(matrix)が得られる。母材は、ヒート・ポンプの作動中、収着質の通常の吸収においては溶解されない。
【0008】
液体物質を使用する場合には、蓄熱工程および放熱工程の両方において、物質を熱交換器に噴霧可能であり、したがって、それぞれ効率的に冷却及び加熱することができるので、高出力の利点が得られる。固体物質に関する不利な点は、吸収剤が希釈されるにつれて冷却能力が低下することである。実際、そのことにより、物質を使用することが可能な操作間隔がかなり制限される。順に、このことにより、物質1リットルについての冷却エネルギとして表わされる上述の貯蔵容量が低減される。ケミカル・ヒート・ポンプに用いられる液体物質の多くは、吸湿性の強い無機塩を入れた溶液、好ましくは水溶液であり、同様に水は吸収剤として使用される。これにより、溶解された物質が結晶化することができないので、別の制限が与えられる。結晶化は、スプレー・ノズル及びポンプに問題を引き起こす。
【0009】
いわゆるハイブリッド物質を使用することにより、固体及び液体のシステムに関連する複数の利点を組み合わせることができる。上述に引用されたWO00/37864を参照されたい。この特許出願に記載されたケミカル・ヒート・ポンプは、ハイブリッド原理、ハイブリッド法、又はハイブリッド工程と呼ぶことができる特別な手順に従って作動する。この工程では、工程中に物質が固体状態及び液体状態の両方で存在する。固相は、エネルギを蓄熱するために使用され、固体のシステムと同じくらい大きいエネルギ密度を有する。一方、物質への熱交換、及び物質からの熱交換は、物質の液相においてのみ行われ、一般的な液体のシステムと同じくらい良い効率で行われる。液相のみが、周囲への熱交換に使用される。この状態は、工程中、固相及び液相が分離された状態に保持できるということである。適切な種類の分離手段を使用してろ過することによって、又は他の何らかのやり方で、分離をすることができる。分離手段には、網若しくはフィルタなどがある。液相は、ポンプで送られ、熱交換器の上に噴霧される。液相は、「溶液」と呼ばれることが多い。溶液のみを使用するシステム、すなわち常に液体である物質を用いるシステムの場合、ハイブリッド・システムのポンプ、弁、及びスプレー・ノズルが、循環経路内の結晶によってふさがれないということは重要である。
【0010】
したがって、一般に、固体システムは、ポンプ、弁、及びスプレー・ノズルを全く必要としないため、この点に関しては明らかな利点を有する。
【0011】
図1aは、ケミカル・ヒート・ポンプ全体を概略的に示す。このヒート・ポンプは、冷熱又は温熱を生成し、引用されたWO00/37864に記載されたハイブリッド工程に従って作動するように設計されている。ヒート・ポンプは、ある程度溶解された物質2を含む第1のコンテナ1又はアキュムレータを含む。物質2は、収着質を、発熱を伴って吸収し、吸熱を伴って脱着することができる。第1のコンテナ1は、管4を介して、第2のコンテナ3に連結される。第2のコンテナ3は、凝縮器/蒸発器とも呼ばれる。第2のコンテナは、第1のコンテナ1内の物質2の吸熱を伴う脱着において、気体収着質6を凝縮し、液体収着質5を形成させる凝縮器として働き、第1のコンテナ内の物質2の発熱を伴う収着質の吸収において、液体収着質5を蒸発させて、気体収着質6を形成させる蒸発器として働く。アキュムレータ1内の物質2は、アキュムレータ1内に配置された第1の熱交換器7と熱伝導するように接触している。この第1の熱交換器7は、液体の流れ8を介して、周囲から熱を供給され、または周囲に熱を送出することができる。蒸発器/凝縮器部分3内の液体5は、同様に、蒸発器/凝縮器部分3内に配置された第2の熱交換器9と熱伝導するように接触している。この第2の熱交換器9は、液体の流れ10を介して、それぞれ、周囲から熱を供給され、又は周囲に熱を送出することができる。ヒート・ポンプがハイブリッド原理に従って作動するためには、第1の熱交換器7が、固体状態の物質2とともに、細かいメッシュの網又はフィルタ11で囲まれる。物質が液体状態である溶液は、アキュムレータ1の下側部分に存在し、第1の熱交換器7の下に位置する自由空間12内に集められる。その空間から、導管13及びポンプ14を介して、溶液を第1の熱交換器7に噴霧することができる。
【0012】
要約すれば、以下のことが言える。
固体物質を用いて作動するシステムでは、物質の2つの相状態の間で反応が起こるので、一定の冷却温度が得られる。これらの2つの相の両方は固体であり、一方の状態から他方の状態へ変化する際に、吸収剤の反応圧力を一定に保持する。物質が第1の状態から第2の状態へ全て変化するまで、反応圧力は一定のままである。このシステムの不利な点は、熱伝導率が非常に低いこと、及びそれに起因して出力が低いことである。利点には、このシステムが可動部品なしで作動すること、貯蔵容量が高いこと、及び反応圧力が一定であることが含まれる。
ハイブリッド物質を用いて作動するシステムでは、吸収剤が物質によって吸収されるとき、すなわち放熱工程では、第1の相は固体であり、一方、第2の相は液体である。そして、上述と同じように、吸収剤の反応圧力が一定に保持される。こうして、物質は、一定の冷却温度が得られるのと同時に、固体の状態から液体の状態へと引き続き連続的に変化する。物質が固体状態から液体状態へ全て変化するまで、工程は一定の反応圧力を継続する。同様に、蓄熱工程において、液体状態から固体状態へ物質が変化するとき、反応圧力は一定である。貯蔵容量及び反応圧力は、固体物質のものと同等である。高出力を得るためにハイブリッド物質を用いて作動するシステムで使用される方法は、液体物質を用いて作動するシステムの場合と同じように溶液を用いて作動させることである。液体が、結晶を分離するシステムを介して、物質のコンテナからスプレー・システムへポンプで送られる。スプレー・システムによって、反応器内で別個のユニットを形成する熱交換器に溶液が散布される。
【0013】
例えばシリカゲルを収容する熱化学ユニットに熱エネルギを貯蔵することが、ドイツ国特許出願公開第10395583号に提案されている。スウェーデン国特許公開第441457号には、熱アキュムレータが開示されている。そのアキュムレータの中には、水和塩、アンモニア化物又はゼオライトなどの乾燥剤が繊維状の担持体材料に固定されている。そのアキュムレータは、エネルギの制御された受け取り、貯蔵及び送出に使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】スウェーデン国特許出願第0702649−5号
【特許文献2】国際公開第2007/139476号
【特許文献3】国際公開第00/37864号
【特許文献4】国際公開第2005/054757号
【特許文献5】米国特許第5,440,889号明細書
【特許文献6】米国特許第5,056,591号明細書
【特許文献7】米国特許第4,993,239号明細書
【特許文献8】米国特許第4,754,805号明細書
【特許文献9】国際公開第94/21973号
【特許文献10】国際公開第00/31206号
【特許文献11】国際公開第00/37864号
【特許文献12】国際公開第2005/054757号
【特許文献13】ドイツ国特許出願公開第10395583号明細書
【特許文献14】スウェーデン国特許公開第441457号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の目的は、エネルギの効率的な貯蔵及び/又は輸送のための装置又はシステムを提供することである。
【0016】
本発明の別の目的は、エネルギを効率的に貯蔵及び/又は輸送するとともに、清浄な若しくは純粋な形態の揮発性液体を同時に生産する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
例えば、国際公開WO00/37864及びWO2005/054757に、ケミカル・ヒート・ポンプが開示されている。このポンプは、エネルギを化学的に貯蔵し、その後、貯蔵されたエネルギを加熱又は冷却に使用することができる。化学物質を貯蔵することのみによって、400kWh/トンのエネルギ密度が得られると考えられる。これは、他のエネルギを貯蔵/輸送する方法、例えば約40kwh/トンの遠隔加熱などと対照されるべきである。通常、ケミカル・ヒート・ポンプを使用すると、例えば産業プロセスに存在する、消散される大量の廃熱を使用することができ、例えば、経済的な方法で、その廃熱を、エネルギが使用価値を有する場所へ輸送することが可能である。
【0018】
上述のように、固体物質を用いて作動するケミカル・ヒート・ポンプは、熱伝導率が非常に低く、したがって出力又は効率が低いことに関連する不利な点を有する。また、可動部品なしで作動することができ、貯蔵容量が大きく、及び反応圧力が一定であるという利点を有する。ハイブリッド物質を用いて作動するケミカル・ヒート・ポンプは、熱伝導率がより高いので出力又は効率が高いという利点を有し、さらに、実際、可動部品なしで作動でき、貯蔵容量が大きく、及び反応圧力が一定である。
【0019】
ハイブリッド物質を用いて作動するケミカル・ヒート・ポンプでは、活性物質の溶液を使用して、アキュムレータ内の活性物質と熱交換器との間の熱伝導を高めるときには、いわゆる「固体」のハイブリッド物質を有するケミカル・ヒート・ポンプを実施することができる。これは、例えば、ケミカル・ヒート・ポンプの全工程の間、活性物質を移動させないことによって、すなわち、活性物質が常に静止しているか、又は活性物質を静止させるように配置することによって実現することができる。これを達成するために、ここでは母材又は担持体と呼ばれる非活性物質(passive substance)に、活性物質の溶液が、吸い込まれる及び/又は結合される。この非活性物質は、一般的に、アキュムレータの熱交換器と良好に熱伝導するように接触するべきであり、互いにしっかりと一体化され得る1つ又は複数の本体(body)として構成することができる。物質が非活性であるということは、この物質が、活性物質による揮発性媒体の吸収及び放出に協働しないことを意味する。したがって、母材の機能は、活性物質の溶液をその位置に保持し、それによって、活性物質が、蓄熱工程において液体状態から固体状態へ、放熱工程中に固体状態から液体状態へ変化するときに、熱交換器と活性物質との間の熱伝導を高めることである。こうして、溶液の熱伝導率が固体物質よりも一般的に高いという事実を活用することができる。母材は、ヒート・ポンプの工程に対して非活性である物質から形成される。また、母材は、概して、溶液相の活性物質を母材自体に結合する能力を有し、同時に、活性物質が揮発性媒体と相互作用することを可能にする。とりわけ、母材を形成する本体が、毛管現象的な方法で溶液相の活性物質を効率的に吸収及び/又は結合できることが望ましいこともある。母材は、例えば粒サイズが異なり粒の形状が異なる粉末など、ある程度分離された粒子を含んでもよい。及び/又は、母材は、例えば直径が異なり繊維の長さが異なる繊維を含んでもよい。及び/又は、母材は、適切な多孔度を有する焼結体を含んでもよい。その多孔度は、一様である必要はなく、形成された母材本体内で変化させてもよい。粒子のサイズ及び形状、すなわち特別な場合では粒子のサイズ、直径及び多孔度、並びに固体母材の場合では多孔度、並びに母材本体の材料の選択が、それぞれの場合において、完成したアキュムレータの貯蔵容量、出力、及び効率に影響を及ぼす。母材が熱交換器の表面に層として施される場合には、また、層の厚みがアキュムレータの出力又は効率に影響を及ぼすことがある。
【0020】
したがって、ヒート・ポンプの工程は、繊維又は粉末の本体又は芯(wick)に、活性物質が吸い込まれることで行われ、結果として高い出力又は効率になると言うことができる。出力又は効率は、この本体又は芯における熱伝導とはほとんど関係がなく、液相における反応に依存する。すなわち、出力又は効率は、細かく分割された状態の活性物質が溶液に変化し、細かく分割された固体材料よりも熱をよく伝導するという事実にとりわけ依存する。
【0021】
母材は、吸い込み材料又は吸収材料であると言うことができ、複数の異なる材料の中から選択可能である。例えば、母材として二酸化ケイ素の布を使用し、異なる比率の砂及びガラスの粉末を含む母材を使用して試験を行い、好結果を得た。熱が液相において伝導され、同時に母材の構造が十分に透過性を有し、揮発性媒体の蒸気相を輸送することができるという事実によって、ヒート・ポンプは作動する。また、より固い構造体を形成するために、粉末又は繊維を焼結させることによって母材を製作することも可能である。
【0022】
上述の説明に従って、このようなアキュムレータを、例えば、エネルギを貯蔵及び/又は輸送する際に有利に使用することができる。アキュムレータは、ここでは反応器又は反応器部分とも呼ばれ、母材を含む。上述のような母材を備えるアキュムレータは、大量のエネルギを受け入れ、受け入れられたエネルギを、同等の物質と比較して高い密度で貯蔵することができる。また、その後に、貯蔵されたエネルギを含むアキュムレータを、混合動作、振動及び圧力などの機械的応力にさらした輸送をすることが、このアキュムレータにより可能となる。したがって、アキュムレータ、すなわちエネルギが貯蔵される反応器部分を、ヒート・ポンプの凝縮器及び蒸発器のそれぞれとは別に保管及び輸送することができる。そして、これらの装置を、それぞれ、蓄熱ステーション又は放熱ステーションに定置して配置することができる。
【0023】
ケミカル・ヒート・ポンプにおける凝縮器/蒸発器ユニットに等しく適用して、母材がその中に液体を吸い込み、その液体が熱を伝える媒体を形成するようにさせること、及び、依然として母材を通って気体を運ぶようにすることができる。ケミカル・ヒート・ポンプを蓄熱するとき、気体が、母材を通って輸送され、熱交換器の表面において凝縮され、母材に吸収される。その後、吸収された液体により母材の熱伝導率が向上し、より多くの気体が、冷却、凝縮、及び吸収される。ケミカル・ヒート・ポンプを放熱するとき、母材が水蒸気を放出する。このことにより、吸収された揮発性液体が冷却される。この揮発性液体は熱伝導率が良いので、蒸発のための熱が、熱交換器の表面から蒸発領域へ液体を介して輸送される。
【0024】
概ね、エネルギを貯蔵及び/又は輸送する装置は、蓄熱ステーションと、放熱ステーションと、貯蔵体とを含む。蓄熱ステーション及び貯蔵体は、貯蔵体が蓄熱ステーションに連結されたとき、その内部空間を互いに連結するように適切に構成された連結装置を備える。同様に、放熱ステーション及び貯蔵体は、貯蔵体が放熱ステーションに連結されたとき、その内部空間を互いに連結するための連結装置を備える。貯蔵体は、その内部に活性物質を含み、前記活性物質は、吸収及び脱着によって揮発性液体と相互作用するようになっている。
【0025】
上述の説明に従って、貯蔵体は、ハイブリッド物質及び母材を用いて作動するケミカル・ヒート・ポンプの反応器部分として構成されることが有利である。これは、揮発性液体が、第1の温度において活性物質によって吸収され、より高い第2の温度において活性物質によって脱着されるように、反応器部分内の活性物質、及び揮発性液体が選択されることを意味する。活性物質は、第1の温度において固体状態であり、活性物質は、揮発性液体及び蒸気相の揮発性液体を吸収すると、直ちに部分的に、固体状態から液体状態又は溶液相へと変化する。活性物質は、第2の温度において液体状態であるか又は溶液相で存在しており、活性物質は、揮発性液体、とりわけ、蒸気相の揮発性液体を放出すると、直ちに部分的に、液体状態又は溶液相から固体状態へ変化する。さらに、反応器部分は、活性物質のための母材を含み、固体状態及び液相又は溶液相の両方の活性物質が母材に保持及び/又は結合されるようになっている。
【0026】
蓄熱ステーションは、適切なポンプ、とりわけ、真空ポンプの形式のポンプなどの凝縮器又は同様の装置を含む。凝縮器又は同様の装置は、貯蔵体が蓄熱ステーションに連結され、反応器部分の内部空間が、凝縮器又は同様の装置の内部空間と連通されるとき、気相の揮発性液体を反応器部分から受け入れる及び/又は除去するようになっている。こうして、反応器部分がケミカル・ヒート・ポンプの場合と同じように「蓄熱」させられ、活性物質が、揮発性液体の脱着によって「蓄熱」状態へ変化するようになっている。
【0027】
放熱ステーションは蒸発器を含み、蒸発器は、ある量の凝縮された形態の揮発性液体を内部空間に収容する。貯蔵体が前記放熱ステーションに連結され、反応器部分の内部空間が、蒸発器の内部空間と連通されると、気相の揮発性液体を反応器部分へ移動させるようになっており、反応器部分がケミカル・ヒート・ポンプの場合と同じように「放熱」させられ、活性物質が、揮発性液体の吸収によって「放熱」状態へ変化させられるようになっている。
【0028】
上述の説明に従って、エネルギは、輸送可能なように貯蔵される。水を揮発性液体として使用する場合、エネルギを貯蔵体へ移動させる際に、同時に、移動操作の副産物として、純粋な蒸留水を得ることが、このエネルギの貯蔵により可能である。これに対応して、貯蔵されたエネルギが使用された場所において水の補充が必要である。
【0029】
したがって、「放熱」の前に、すなわち放熱ステーションでのエネルギの使用の前に、蒸発器に水を満たすというやり方で純粋な水の生産を行うことができる。この水は、純粋な水でも良いし、純粋でない水でも良く、例えば塩水又は汚染された水でも良い。貯蔵されたエネルギを使用するとき、この水は、蒸発器から水蒸気として放出/蒸発される。その後、水蒸気は、凝縮し、反応器部分の活性物質に結合する。後に、反応器部分が蓄熱ステーションにおいて「蓄熱」されるとき、水が反応器部分から蒸発し、凝縮器又は同様の装置の中で純粋な水として凝縮される。この純粋な又は清潔な水は、放熱ステーションにおいて抽出され、水の用途として考えられる全ての用途に、例えば産業用水又は飲料水として使用することができる。これは、上述の説明の通り、エネルギ輸送に関連する利点である。放熱ステーションにおいて、すなわちエネルギが使用される場所において、塩水及び他の汚染された水などの清潔でない水を使用することができ、その水が、蓄熱ステーションでの「蓄熱」操作において、清潔な蒸留水として戻される。
【0030】
不純な水(例えば塩水)を浄化することによって、このように清潔な水を生産することは、ハイブリッド物質及び母材を使用しない場合にも実現できることは明らかである。この水の浄化は、エネルギを追加して供給することもなく、作動のためにコストをかけることもなく、行うことができる。純粋な水が、生活必需品として、ますます供給不足になるにつれて、水を生産することができるということは、環境上の観点から、健康上の観点から、及び経済上の観点から重要な利点となり得る。蓄熱ステーションから、異なる地理的位置に配置された放熱ステーションへエネルギを輸送する代わりに、上述の説明によるエネルギ移動を定置式の方法で利用し、このエネルギ移動を、単にエネルギを貯蔵するためだけに利用し、後に必要なときに同じ場所でエネルギを使用する場合にも、塩水及び汚染された水などの清潔でない水から清潔な水を得ることができる。例えば、毎日、太陽放射により受けるエネルギを、太陽放射熱レシーバから貯蔵体に熱エネルギとして貯蔵するという方法によって、個人住宅の使用者は、加熱及び冷却調節のための全ての熱エネルギを得ることができる。エネルギの貯蔵及びエネルギの送出を含む各サイクルにおいて、貯蔵体に蓄熱するときに、塩水又は他の汚染された水から使用者のための清潔な水を製造することができる。貯蔵体の容量は、使用者のエネルギ必要量に応じたものとし、また同時に、使用者の必要とする清潔な水を供給できるものとすることができる。したがって、例えば、個人住宅の使用者は、加熱及び冷却のためのエネルギとして年に約25000kWhを要求することができる。それは、十分なサイズを有する太陽放射熱収集器に、蓄熱ステーションを連結することによって実現可能である。このような装置では、毎年、約42mの塩水又は他の汚染された水を浄化することが可能であり、清潔な水に対する使用者の要求量の全てを十分満足に満たす。
【0031】
本発明の追加の目的及び利点は、以下の説明に記載され、この説明から部分的に明らかになるか、又は、本発明の実施によって習得することができる。本発明の目的及び利点は、とりわけ、添付の特許請求の範囲に示される方法、工程、手段及び組み合わせによって実現及び獲得することができる。
【0032】
本発明の新規な特徴は、とりわけ、添付の特許請求の範囲に記載されており、添付の図面を参照して以下に示される非限定的な実施形態の詳細な説明を考慮することで、構成及び内容の両方に関して、本発明、並びに、本発明の上述及び他の特徴の完全な理解を得ることができ、本発明をより良く理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1a】ハイブリッド原理に従って作動する従来技術によるケミカル・ヒート・ポンプの概略図である。
【図1b】ケミカル・ヒート・ポンプの原理を全体的に示す概略図である。
【図1c】図1bと同様の図であるが、ケミカル・ヒート・ポンプの反応器がどのように蓄熱されるかを概略的に示す図である。
【図1d】図1bと同様の図であるが、ケミカル・ヒート・ポンプの反応器がどのように放熱されるかを概略的に示す図である。
【図2a】図1aと同様の図であるが、活性物質が担持体に吸収されるケミカル・ヒート・ポンプの概略図である。
【図2b】図2aと同様の図であるが、ケミカル・ヒート・ポンプの代替実施例の概略図である。
【図3】活性物質としてLiClを使用する、図2によるケミカル・ヒート・ポンプの蓄熱工程のグラフである。
【図4】図3と同様であるが、放熱工程のグラフである。
【図5】図2に示されたケミカル・ヒート・ポンプのアキュムレータタンクの概略図である。
【図6a】熱交換器の表面に配置される母材材料の断面の詳細図である。
【図6b】熱交換器の表面に配置される母材材料の断面の詳細図である。
【図6c】熱交換器の表面に配置される母材材料の断面の詳細図である。
【図6d】表面からフランジが突出する、熱交換器の表面にある母材材料の断面の詳細図である。
【図7】ケミカル・ヒート・ポンプの反応器部分が収容されているコンテナの概略図である。
【図8】反応器部分が中に収容されたコンテナが、蓄熱ステーションにおいてどのように連結されるかを示す概略図である。
【図9a】図8と同様の図であるが、反応器部分が中に収容されたコンテナが、温熱を送出するためにどのように放熱ステーションにおいて連結されるかを示す概略図である。
【図9b】図9aと同様の図であるが、冷熱を送出するようにコンテナが連結されていることを示す概略図である。
【図10】エネルギを移動し、同時に清潔な水を生産する装置の概略図である。
【図11a】図10の装置のエネルギが輸送される場所における構成要素の概略図である。
【図11b】図11aと同様の図であるが、清潔な水が生産される場所の構成要素を示す概略図である。
【図12】図11a及び図11bと同様の図であるが、エネルギを貯蔵し、同時に清潔な水を生産する装置の構成要素を示す概略図である。
【実施例】
【0034】
ここで、エネルギを貯蔵及び/又は輸送するシステムを説明する。このシステムにおいて、「活性」物質を含むケミカル・ヒート・ポンプの部分が、それぞれ保管又は輸送される。図1bに概略的に示されるケミカル・ヒート・ポンプでは、2つの容器又はコンテナが設けられている。反応器1は活性物質を含み、活性物質は、気体収着質を、発熱を伴って吸収し、吸熱を伴って脱着することができる。反応器1は、管又は流路4を介して凝縮器/蒸発器3に連結されている。第2の容器3は、気体収着質を液体収着質へと凝縮する凝縮器として、及び、液体収着質を気体収着質にする蒸発器として働く。アキュムレータ1内の活性物質は、矢印31によって図示される通り、何らかのやり方で、1つ又は複数の外部媒体と熱交換するように接触し、熱を供給又は除去する。同様に、蒸発器/凝縮器3内の液体は、矢印32によって図示される通り、1つ又は複数の他の媒体と熱交換するように接触し、熱を供給又は除去する。
【0035】
ハイブリッド原理に従って、活性物質は、固体状態と溶解状態との間を変化する。ケミカル・ヒート・ポンプがハイブリッド原理に従って作動できるようにするためには、活性物質が反応器1内に常に留まっていなければならない。これを達成する方法として、図1aに示すように、網11を使用して、固体状態にある活性物質の移動を制限している。別の方法が以下に説明される。常に固体状態にある活性物質を用いて作動するケミカル・ヒート・ポンプにおいては、これは問題ではない。
【0036】
エネルギを輸送するときは、活性物質が適切な活性状態にある状態で、反応器1が物理的に輸送される。輸送時には、反応器1は、遮断弁(図示していない)などによって、物理的に及び真空気密の状態で気体流路4から分離される。反応器1を「蓄熱」する、すなわち、反応器内の活性物質を「蓄熱された」又は「活性化された」状態に変換しようとする場所には、蒸発器/凝縮器ユニット3’が適切に設けられている。そして、図1cの矢印31’に図示される通り、加工産業からの廃熱が利用される。蒸発器/凝縮器ユニットは、凝縮器としてのみ作動すればよいので、非常に単純な構造とすることができる。反応器と凝縮器との間には、物理的な連結装置が配置され、参照番号33で図示されている。図1dに示される通り、反応機内の活性物質に貯蔵されたエネルギを使用して、加熱(矢印31”にて図示)、又は冷却、すなわち反応器から「放熱」する、すなわち活性物質を「放熱」状態に変換し(矢印32”にて図示)、例えば、村、町又は複数の建物へエネルギを供給しようとする場所には、別の蒸発器/凝縮器ユニットが設けられている。ここでは、このユニットは蒸発器3”としてのみ働く。反応器1は、これらのユニット3’、3”が配置されている各場所の間を輸送される。そして、それぞれ蓄熱又は放熱するために、接合部(interface)33において、これらのユニットに連結される。
【0037】
エネルギを貯蔵する際には、反応器1は、同様に、物理的に及び真空気密の状態で気体流路4から遮断され、適切な場所に保管される。このとき、活性物質は蓄熱状態である。貯蔵されたエネルギを使用する際には、反応器1が取り出され、気体流路に連結されて、反応器と蒸発器/凝縮器3との間を気体収着質が自由に通れるようにする。したがって、この場合、蒸発器3”と凝縮器3’とは、同じユニットとしてもよい。
【0038】
場合によっては、ある種の貨物コンテナのような外部保持構造体の中に、1つ又は複数の反応器ユニット1を配置することが適切である。その場合、個々の反応器ユニットを、細長い形状としてもよく、例えば、互いに平行に配置された管として設計してもよい。このような平行な管の熱交換は、例えば、管の壁を介して行うことができるので、図1aの場合のような内側の熱交換コイルは必要ない。
【0039】
ここで、図2aを参照して、改良されたケミカル・ヒート・ポンプを説明する。その反応器又はアキュムレータは、上述の通り、エネルギを貯蔵及び/又は輸送するのに適している。そして、改良されたケミカル・ヒート・ポンプは、活性物質を保持及び/又は担持するための母材を使用して、ハイブリッド工程を利用する。
【0040】
改良されたケミカル・ヒート・ポンプは、従来の様式で、第1のコンテナ1を含む。この第1のコンテナは、アキュムレータ又は反応器とも呼ばれる。この第1のコンテナは、活性物質2を含む。本明細書においては、活性物質は、単に「物質」とだけ呼ばれることもある。この物質は、収着質を、発熱を伴って吸収又は吸熱を伴って脱着することができ、吸収剤とも呼ばれる。本明細書においては、液体の形態の収着質は「揮発性液体」と呼ばれ、通常は水である。本明細書においては、「揮発性液体」及び「水」という用語は、液体の形態の収着質を示すために使用される。したがって、単に水についてだけ述べられていても、他の液体も使用可能であることを理解されたい。本明細書においては、物質2は、母材すなわち担持体13によって保持又は担持されるか、或いは、それに吸い込まれるように示されている。母材すなわち担持体13は、少なくとも1つの多孔体であるか、又は概ねそれを形成している。この多孔体は、開孔された細孔を有し、適切な非活性物質から作製される。母材は、典型的には、細かく分割された粉末、例えば、酸化アルミニウムの粉末によって構成される。その粉末は、適切な厚みを有する層に施される。その層は、例えば、比較的薄い層であり、5〜10mmの厚みを有する層である。この実施例では、第1のコンテナ2内の母材は、第1の熱交換器7に位置する、このコンテナの内表面にのみ施される。図では、とりわけ、第1のコンテナの鉛直方向の内表面にのみ施されていることが示されている。第1のコンテナ1は、固定された又は定置された気体連結部4を介して、凝縮器/蒸発器とも呼ばれる別のコンテナ3に連結されている。気体連結部4は、管の形状であり、端部がコンテナ1、3の上部に連結されている。第2のコンテナは、第1のコンテナ1内の物質2の吸熱を伴う脱着において、気体収着質6を凝縮し、液体収着質5を形成させる凝縮器として働き、第1のコンテナ内の物質の発熱を伴う収着質の吸収において、液体収着質5を蒸発させて、気体収着質6を形成させる蒸発器として働く。第2のコンテナ3は、第2の熱交換器9と接触している内表面の半分が、毛管現象的に吸い込む材料14によって被覆され、同じ内表面の半分が被覆されずに示されている。図による実施例では、第2のコンテナ3の鉛直方向の内表面の半分が、毛管現象の吸い込み機能を有する材料で被覆され、残りの内表面は被覆されていないことが示されている。気体収着質6の凝縮は、第2のコンテナ3内の被覆されていない熱交換器9の表面において起こり、蒸発は、第2のコンテナの内表面の毛管現象的に吸い込む材料14から起こる。
【0041】
システムとも呼ばれるケミカル・ヒート・ポンプの様々な構成要素、すなわち、互いに流体連結された第1のコンテナ1及び第2のコンテナ3、並びに気体導管4の内部空間は、完全に気密であり、気体6以外の全ての気体から隔離されている。気体6は、化学工程に関係し、揮発性媒体又は吸収剤とも呼ばれ、通常は水蒸気である。アキュムレータ1内の活性物質2は、第1の熱交換器7の表面と直接的に熱伝導するように接触している。この実施形態においては、第1の熱交換器7は、アキュムレータ1を囲む鉛直方向の内表面に位置し、したがってアキュムレータを囲むと言うことができ、第1の液体の流れ8を介して周囲から熱を供給されるか、又は周囲に熱を送出することができる。蒸発器/凝縮器部分3内の液体5は、同様に、第2の熱交換器9の表面と直接的に熱伝導するように接触している。この実施形態においては、第2の熱交換器9は、蒸発器/凝縮器部分の鉛直方向の内表面に配置され、したがって、蒸発器/凝縮器部分を囲むと言うことができ、第2の液体の流れ11を介して、第2の熱交換器9に周囲から熱を供給することができるか、又は第2の熱交換器9から周囲へ熱を輸送することができる。
【0042】
ケミカル・ヒート・ポンプ内の活性物質2は、ヒート・ポンプが対象とする温度において動作し、ヒート・ポンプの放熱工程及び蓄熱工程において固体状態と液状状態との間を変化するように選択される。したがって、アキュムレータ1内の反応は、活性物質の2つの相の間、すなわち、固相状態と液相状態との間で起こる。吸収剤が物質によって吸収される放熱工程においては、第1の相が固体であり、第2の相が液体であり、吸収剤について一定の反応圧力が維持される。引き続いて、物質は、固体状態から液体状態へ変化し、同時に、一定の冷却温度が得られる。実質的に全ての活性物質が固体状態から液体状態へと変化するまで、その工程は一定の反応圧力で続く。それに対応するように、蓄熱工程の反応圧力は、物質が液体状態から固体状態へ変化する間、一定である。
【0043】
通常のハイブリッド物質(上述のWO00/37864を参照)を有利に使用することができる。ハイブリッド物質は、収着質の溶液中で所望の濃度に希釈され、その後、非活性粉末、すなわちケミカル・ヒート・ポンプの作動中に実質的に変化しない材料の粉末を含む母材に吸い込まれる。したがって、その材料は、ヒート・ポンプの状態が変化する間は固体状態であるべきである。そして、その材料は、ヒート・ポンプの作動中に集合状態が変化するいかなる物質又は媒体とも化学的に相互作用するべきではなく、すなわち、化学的に影響を及ぼしたり、及ぼされたりするべきでない。実施した試験では、この粉末は、例えば酸化アルミニウムであり、活性物質はLiClであった。活性物質は、他にはSrBrなどでもよく、上述のWO00/37864も参照されたい。ここでは、粉末の粒のサイズが重要であり、また、毛管現象的に吸い込む又は吸収する能力も重要である。母材の適切な本体を形成するために、まず、このような粉末を、熱交換器の1つ又は複数の表面に層として施すことができる。層は、適切な厚みを有し、例えば5〜10mmの厚みを有する。したがって、ほとんどの場合、粉末から本体を形成するために、何らかの種類の網構造体(図示していない)を熱交換器に取り付けて、それぞれの層を保持しなければならない。例えば、管の外側、管の内側、及びコンテナの底部に施された厚み10mmの層を使用して、試験を行った。収着質とも呼ばれる溶液は、液体状態で層中の粉末へ吸い込まれ、残りの溶液の全てが層中の粉末に毛管現象的に結合されるまで、使い果たされる。溶液は、すなわち、活性物質が揮発性媒体によって希釈されたものである。その後、固体物質用の反応器を使用するのと同様に、その反応器を使用することができる(例えば、上述のWO00/31206を参照)。
【0044】
この場合、その中に物質を保持する母材は、ヒート・ポンプの放熱状態においては、固形物ではなく、濡れた砂に似た緩んだ塊である。しかしながら、ヒート・ポンプの蓄熱状態では、母材は固い。活性物質の溶液は、その固体状態の物質よりも熱伝導性が非常に良い。したがって、第1熱交換器7からの熱を、活性物質へ又は活性物質から効率的に輸送することができる。例えば、酸化アルミニウムを含む母材が3モルのLiCl溶液で満たされると、約1モルの溶液になるまで、そのシステムの蓄熱が、非常に速く効率的に行われる。その後、活性物質はもはや溶液を全く含まなくなり、すなわち、液相又は溶液相がどの部分にも存在しなくなるので、出力が減少する。しかしながら、濃度が0モルになるまで工程を進めることに問題はない。放熱工程では、溶液が2.7から2.8モルの状態になるまでは、工程は非常にうまく進み、その後減速する。これは、母材が3モルの濃度に達すると、気体に対する透過性をもはや有さなくなるためである。この状態では、母材が満たされており、すなわち、母材が実質的に可能な限りの溶液を吸収している。
【0045】
母材に吸い込まれる溶液を使用するハイブリッド・システムの機能及び出力は、典型的に、固体のシステムの機能及び出力よりもかなり良い。しかしながら、ハイブリッド物質及び自由溶液(free solution)のみを使用するシステムよりも大きい熱交換器の表面が必要である。試験によると、「結合された」溶液相を使用するハイブリッド・システムでは、自由溶液のみを使用するハイブリッド・システムと同じ出力に達するために、熱交換器の面積を2倍から3倍大きくする必要がある。しかしながら、熱交換器表面の有効面積を増加させたシステムの表面においては、出力密度が非常に小さくなるので、熱交換器は、必ずしも直接作用する必要はなく、拡大することも有利である。直接作用する熱交換器、又は熱交換器と活性物質/溶液との間で直接作用する熱交換という用語は、物質/溶液が、熱交換器の滑らかで単純な壁の外表面に存在し、熱交換器内の熱担持媒体/冷却媒体、または流体は、同じ壁の内表面において循環していることを意味する。すなわち、物質/溶液が、熱交換器の比較的薄く平坦な壁のみを介して、熱交換器の媒体と実質的に直接接触することを意味する。拡大された表面を有する熱交換器、又は拡大された表面との熱交換という用語は、例えば、波形をつけ、及び/又は、フランジなどの何らかの適切な種類の突起部分を設けることによって、有効熱交換面積を拡大させた熱交換器の表面に、物質/流体が存在することを意味する。母材に吸い込まれる溶液を使用するハイブリッド・システムでは、また、母材が熱交換器のこのような表面に位置することを意味する。
【0046】
実験室規模で行われ、その後、実物規模に再計算された試験によって、蓄熱及び放熱のデータがそれぞれ提供され、図3及び図4のグラフに示されている。これらの試験は、直径100mm、高さ130mmの1リットルの円筒形容器の形状を有するアキュムレータ1を使用して行われた。アキュムレータ1の中には、層13が、容器の円筒形の内表面、すなわちその囲いの表面の内側に配置されている。層13は、厚みが10mmであり、物質が中に含まれた非活性材料でできている。図5に示す通り、この実施形態では、母材材料及び物質は、網15を含む網構造体によって、その場所に保持される。網15は、綿布16又は細かいメッシュの網など、より細かいメッシュの構造体でできた外側のカバーを有する。非活性の担体及び物質を含む層の構造又は機能の変化は、試験の実施中には観察されなかった。
【0047】
母材の全体的な構造を図6aに概略的に示す。多孔質の母材材料の層又は本体13が、熱交換器の壁23の一方に施されており、細孔24を有する。それらの細孔の断面は、概して、気体収着質の輸送及び吸収を可能にするようになっている。母材は、細孔の壁に活性物質2を担持することができる。その活性物質2は、残りのチャネル25にある気体収着質と相互作用できる。チャネル25は、ヒート・ポンプの作動のいくつかの段階において存在する。また、参照番号26で示す位置に、溶液又は凝縮物によってそれぞれ完全に細孔を満たすこともできる。母材材料は、その表面において活性物質/溶液/凝縮物を結合することができ、ゆえに、システム内の流体として水が使用される場合には、適切に親水性であるか、又は、少なくとも親水性の表面を有することができるように選択される。しかしながら、このような母材を有するケミカル・ヒート・ポンプがしばしばヒート・ポンプの作動のいくつかのサイクルでしか満足に働かないとしても、活性物質が、熱交換器の壁に施される前に、母材とともに混合又は攪拌することなどによって母材に導入される場合には、親水性の表面を有さない材料、又は、溶液相の活性物質によって濡らされた表面を通常有さない材料、又は、溶液相の活性物質があまり結合されない材料を使用することも可能である。細孔のサイズは、例えば、吸収しようとする液相を、細孔が毛管現象的に吸い込むように選択することができ、とりわけ、凝縮器/蒸発器に配置される母材に適するように選択することができる。細孔24の典型的な断面寸法は、10〜60μmの範囲とすることができる。あまりに細孔が細すぎると、揮発性媒体が活性物質の全ての部分と相互作用するのがより困難になるので、不利となることがある。細孔の体積は、母材の全体体積の、例えば少なくとも20%、好ましくは少なくとも40%、さらには少なくとも50%とすることができる。代替として、母材は、上述の通り、焼結材料又は同等の材料とすることができ、すなわち、実質的に固体の結合された本体を形成することができる。また、異なる形状の粒子から母材を形成することができる。例えば、ほぼ球状の粒子(図6b参照)から形成することができる。又は、細長い粒子、例えば長さと厚みの比が例えば1:2から1:10の範囲の比較的短い繊維片(図6c参照)から形成することができる。熱交換器の壁23は、図6dに示す通りように、フランジ27を備えることができる。
【0048】
(母材材料の実施例1)
母材材料として適切な材料は、Alの粉末から生成される。粉末の粒子の密度は2.8kg/cmであり、その直径は2〜4μmである。粉末は、上述の説明に従って、活性物質の溶液をその中に含んだ状態で層状に施される。層中の乾燥した母材材料のかさ密度は、約0.46kg/cmである。これにより、完成した母材材料の平均充填率又は平均充填度は0.45であり、すなわち、体積のほぼ半分が粉末粒子によって占められている。生成された層の各粉末粒子の間のチャネルは、直径が60μm程度である。
【0049】
(母材材料の実施例2)
母材材料として適切な材料は、ポルトランド・セメントの部分が1(重量)であり、実施例1のようなAlの粉末の部分が5(重量)である混合物を成形することによって生成される。この材料は、「焼結された」ものであると大体考えることができる。
【0050】
(母材材料の実施例3)
母材材料として適切な繊維材料は、SiO54%及びAl47%を含み、約1700℃の融点を有する繊維から生成される。繊維の密度は2.56kg/cmであり、直径は2〜4μmである。それらの繊維は、充填密度を増すために湿らせた状態で圧縮される。圧縮された材料を乾燥させた後のかさ密度は約0.46kg/cmである。これにより、完成した母材材料の平均充填率は0.17になる。圧縮された材料の各繊維の間のチャネルは、直径が約5〜10μmである。
【0051】
上述の実施形態では、母材層13は、可能な限り最も単純な方法で、熱交換器の実質的に滑らかな内表面などに施される。加熱構造体及びそれに施される母材層の様々な形状を考えることができる。上述のWO00/31206を対照されたい。このような母材及び熱交換器の考えられる追加の異なる構成の実施例が、以下に挙げられる。これらの実施例は、上述の母材技術が使用される装置に適している。したがって、通常の静止した装置においては、母材層を、例えば、熱交換器の媒体又は熱伝達媒体が中を循環している複数の管のうちの1つの外面側に施すことができる。例えば、厚み10mmの母材層が周囲に施された直径22mmの管に関して試験を行った。
【0052】
また、凝縮器内の全ての流体、すなわち、典型的には全ての水を、毛管現象的に吸い込むことができ、それによって、ケミカル・ヒート・ポンプ内の自由液体として完全に除去することができる(図2bの装置を参照)。ここでは、上部の内表面以外の蒸発器/凝縮器3の全ての内表面に、毛管現象的に吸い込む母材材料が設けられている。したがって、熱交換媒体は、コンテナの底部においても循環していなければならない。
【0053】
上述の通り、複数の反応容器1が互いに並べて置かれ、互いに連結され、貯蔵体を形成することができる。貯蔵体は、反応器部分又は反応器パッケージとも呼ばれ、とりわけ、エネルギを貯蔵及び輸送するのに適している。図7に示す通り、貯蔵体は、外側容器、すなわちコンテナ41を含むことができる。コンテナ41の中には、その反応器パッケージが入れられている。反応器の容器は、例えば、図2a及び図2bに示される種類のものとすることができる。
【0054】
このようなコンテナ41は、品物の国際輸送用の通常の貨物コンテナと同様の適切な鋼鉄製容器を含むことができる。そして、コンテナ41は反応器容器1を含む。反応容器1は、複数の実質的に同一の管状又はプレート形のユニットとすることができ、互いに並列して配置することができる。個々の反応器容器は、収集管42によって相互連結されている。収集管42は、気体流路4の延長として捉えることができ、反応器容器から外部の連結部分43まで延在する。この連結部分に、遮断弁44が連結されている。反応器を蓄熱及び放熱する際、上述された通り、気体流路が連結部分43に連結されると、水蒸気などの気体収着質が、収集管、及び(この図には示されていない)気体流路4を通ることができる。反応器容器1は、外部媒体と熱交換するように設計されている。外部媒体は、コンテナ41内及び個々の反応器容器の周囲を循環している。外部媒体は、遮断弁47、48が連結される2つの連結管45、46を介して供給及び除去される。反応器ユニットと外部媒体との間で十分な熱交換が行われることを考慮して、反応器ユニットは、できるだけ密集してコンテナ41内に適切に配置されている。外部媒体は、反応器ユニットの周囲に配置され、反応器ユニットの周囲のコンテナ内の空間を循環している。
【0055】
コンテナ41内に配置される反応器ユニット1は、例えば、互いに並列に配置された長い鋼管とすることができる。また、反応器ユニット1は、エナメル加工(enamelled)することができ、上述の説明に従って、母材に結合される活性物質を含む。鋼管の一端には、収集管への連結部が、適切に配置されている。
【0056】
コンテナ41内の反応器ユニット1を蓄熱するとき、コンテナを、例えば、特別に構成された蓄熱ステーションに連結することができる。蓄熱ステーションは、例えば産業プラントに配置されている。コンテナは、3つの連結部分43、45及び46によって、蓄熱ステーションに連結される。したがって、収集管42の連結部分43を、上述の説明に従って凝縮器に連結する必要はなく、代わりに真空ポンプなどのより単純な装置に連結することができる。弁44、47及び48が開かれ、加工産業などのプラントからの余剰熱が、例えば熱水の形態で反応器ユニット1の周囲に導かれる。こうして、活性物質を「蓄熱」状態にする。すなわち、実際的には、上述の説明による熱ヒート・ポンプの母材中の塩が「乾燥」させられる。こうして形成された水蒸気が、収集管42及び蒸気流路(4)を通り抜け、反応器ユニットからポンプで送り出される。また、水蒸気は、例えば、プラントで行われる工程のいくつかにおいて、冷却剤として働くことができる。水蒸気が凝縮して得られる水は、蒸留された液体である。したがって、その水は純水であり、塩及び汚染物質の含有は全くない。その水は、適切に利用することができる。例えば、蒸留水が必要とされる繊細な工程に利用することができ、又は飲料水の生産に利用することができる。蓄熱が完了し、反応器ユニット1内の真空が確認された後、コンテナ41内の反応器ユニットの周囲の熱交換用外部媒体が、ポンプで送り出され、弁44、47及び48が閉じられ、コンテナ41が、保管場所又は放熱ステーションに輸送される。
【0057】
放熱工程においては、同様に、コンテナ41を放熱ステーションに連結することができる。放熱ステーションは、例えば特別に構成されており、そこで、コンテナから温熱又は冷熱がとられる。コンテナは、3つの連結部分43、45及び46を用いて連結される。冷却のためにエネルギを使用することを望む場合、気体連結部分43は、真空下で蒸発器(3”)に連結される。蒸発器(3”)は、いくらかの量の液体収着質を収容しており、さらに、冷却したいシステムと熱交換する関係にある。コンテナ41内の反応器ユニット1の周囲の空間は、冷却媒体として働く何らかのもの、例えば地域の水の流れ(local water stream)に連結される。代わりに、加熱のためにエネルギを使用することを望む場合、反応器ユニットの周囲の空間内の液体が、加熱したいものに連結される。そして、熱交換するために、蒸発器が、何らかの形態の加熱媒体、例えば地域の水の流れ又は貯水所(water pool)に連結される。放熱操作が完了した後、弁44、47及び48が閉じられ、コンテナ41を蓄熱ステーションへと戻すことができる。
【0058】
放熱ステーションの蒸発器(3”)は母材を含む必要はない。蒸発器(3”)は、凝縮された収着質を中に収容する真空気密容器、完全に従来式の熱交換器、及び熱交換器に水を散布するポンプのみを含めばよい。このステーションの工程は一方向のみに進む、すなわち、収着質は蒸発器から反応器1へ蒸気として運ばれるので、蒸発器は、図1、図2a及び図2bの実施形態のように腐食に対して均一に十分に保護される必要はない。したがって、例えば一般的なアルミニウム製の熱交換器を使用することができる。同じ理由により、凝縮された収着質を、すなわち通常は水を、均一な間隔で蒸発器の中へ満たし、したがって、さらに蒸発器をポンプで真空にしなければならない。
【0059】
したがって、上述の説明による1つ又は複数の反応器容器1によって形成される貯蔵体などのエネルギ貯蔵装置と、適切な蓄熱ステーション及び放熱ステーションとを用いて、エネルギを移動するときに、副産物として清潔な水を得ることができる。このとき、放熱の前に、すなわちエネルギの送出の前に、塩水又は他の汚染された水などの清潔でない水を放熱ステーションの蒸発器(3)に満たすことによって、水の生産を行うことができる。この水は、エネルギの送出の際には、純粋な水蒸気として蒸発器から放出/蒸発される。そして、蒸気は凝縮され、反応器1の活性物質と結合する。後に、反応器が放熱ステーションにおいて蓄熱されるとき、水が反応器から水蒸気として放出され、凝縮器(3)に清潔な水として凝縮される。この清潔な水を抽出し、水の用途として考えられる全ての用途に、例えば産業用水又は飲料水として使用することができる。実際には、このような水は、エネルギ貯蔵体を用いて2つの方法によって生産することができる。一つの方法は、エネルギを輸送するために、ある場所でエネルギを貯蔵し、別の場所で使用する方法である。もう一つは、エネルギを、後に使用する場所と同じ場所に貯蔵するという方法である。
1.エネルギが、ある場所でエネルギ貯蔵装置に貯蔵され、その後に輸送され、別の場所で使用される。必要に応じて、エネルギの貯蔵が行われる場所に清潔な水が送られる。すなわち、エネルギの生産者は、エネルギを供給し、清潔な水を得る。他方の場所にいるエネルギの受取者は、水をシステムに供給し、この水でシステムを満たす。この水は、清潔でなくてもよく、塩水又は汚染された水であってもよい。
2.清潔な水を得る別の工程では、エネルギの貯蔵及びエネルギの使用が、同じ場所で、すなわち固定された状態で行われる。その場所は、例えばその両方が必要とされる家又は商業ビルなどである。典型的なそのような装置は、太陽熱放射収集器からそのエネルギをとることができ、そのエネルギは、使用されるまで貯蔵される。そして、そのような装置は、海から又はいくらか汚染された何らかの水源から、浄化されるべき水をとる。水の生産を行うためには、エネルギ貯蔵体から熱エネルギを送出する前に、その送出が加熱のためであっても、冷却のためであっても、この用途に使われる蒸発器に、例えば汚染された水を満たす。このとき、凝縮器と蒸発器とは、貯蔵体に連結される別々の装置である。したがって、凝縮器は蓄熱工程で使用され、蒸発器は放熱工程で使用され、例えば図1bに示されるような共通の凝縮器/蒸発器3を、満たされる水で汚染しないようにする。エネルギがエネルギ貯蔵体から送出されるとき、汚染された水が蒸発し、形成された水蒸気が反応器1へと移動し、そこで、水蒸気は純粋な蒸留水として吸収される。エネルギを送出した後、エネルギ貯蔵体は再び蓄熱され、反応器内で結合している清潔な水が、水蒸気として放出され、別に配置された凝縮器の中で凝縮する。蓄熱工程が完了した後、凝縮器内に収集された水は、例えば飲料水として取り出し、使用することができる。
【0060】
ここで、1つ又は複数の反応器ユニットを収容するコンテナ105を蓄熱する手順を、図8を参照して説明する。
【0061】
蓄熱ステーション50において、コンテナ41が、連結管45、46によって産業ユニット又は工場51に連結される。連結管45、46は、弁47、48を含み、連結装置52、53に連結される。連結装置52、53は、遮断弁54、55を含む。また、コンテナは、凝縮器3’又は同様の装置に、接合部33において連結される。凝縮器3’又は同様の装置は、気体連結管43を備える。気体連結管43は、弁44を含み、連結装置57に連結される。連結装置57は、遮断弁58を含む。産業ユニット又は工場51は、廃熱などの熱としてエネルギをコンテナ41の反応器ユニット1に供給する(矢印59参照)。熱エネルギは、例えば水を使用して液圧システムに移されるか、又は、例えば空気を使用して空気圧システムに移される。熱交換媒体又は熱伝達媒体は、ここではエネルギ伝達体と呼ばれる。より低い温度を有するエネルギ伝達体は、廃熱としてのエネルギを収集するために、産業ユニット又は工場に戻される(矢印60参照)。同時に、凝縮器3’は、参照番号63で示される熱源によって冷却される(矢印61、62参照)。熱源63は、一定の温度を有し、その温度は、産業ユニット又は工場51を出るときのエネルギの温度よりも低い。また、ここで、凝縮器は、最も単純な場合では、真空ポンプであってもよい。
【0062】
反応器ユニット1内の物質と凝縮器3’との間にΔTが存在するので、その間に圧力差が形成される。この圧力差により、反応器内の活性物質に吸収された水が蒸発し、凝縮器に迅速に移動し(矢印64を参照)、そこで水蒸気が凝縮される。ΔTの定義は、上述のWO00/37864に説明されている。
【0063】
蓄熱操作が完了した後、すなわち、十分な量の水が凝縮器3’に入った後、コンテナの反応器ユニット1の周囲の空間からエネルギ伝達体が排出され、全ての弁が閉じられる。そして、コンテナ41が、物理的接合部33、65及び66において蓄熱ステーション50から切り離される。その後、コンテナは保管されるか、又は別の場所へ運ばれる。
【0064】
ここで、1つ又は複数の蓄熱された反応器ユニット1を収容するコンテナ41から放熱する手順を、図9a及び図9bを参照して説明する。
【0065】
コンテナ41は蓄熱されたその反応器ユニットとともに、放熱ステーション70に連結される。放熱ステーション70は、エネルギを貯蔵するなどの特別な場合には、蓄熱ステーション50と同じであることもある。しかし、その他の場合では、蓄熱ステーション50とは別になっており、例えば、蓄熱ステーションから地理的距離の離れたところに配置されることもある。コンテナは、3つの物理的接合部33、64、65において連結される。連結管45、46は、弁47、48を含み、放熱ステーションの連結装置71、72に連結される。連結装置71、72は、遮断弁73、74を含む。また、コンテナは、気体連結管43により、蒸発器3”に連結される。気体連結管43は、弁44を含み、連結装置75に連結される。連結装置75は遮断弁76を含む。全ての連結装置が連結された後、これら全ての弁47、48、73、74、44、76が開かれ、放熱工程を開始させる。
【0066】
反応器ユニット1の内部空間と蒸発器3”との間にΔTが存在するので、その間に圧力差が形成される。この圧力差により、蒸発器の中の水が沸騰し始め、形成された水蒸気がコンテナ41の反応器ユニットへ迅速に移動し(矢印77を参照)、そこで反応器ユニットの塩に水が凝縮する。
【0067】
反応器に貯蔵されたエネルギを、例えば村又は町において温熱として使用することを望む場合、コンテナ41内の反応器ユニット1の周囲の空間は、弁79、80を開き、弁81、82を閉じることによって、村又は町の地域暖房システムに連結される。地域暖房システムは、図9aにおいて、貯蔵部78として図示されている。同時に、的確な(correct)温度を受け取るために、蒸発器3”は、弁84、85を開き、弁86、87を閉じることによって、その熱交換表面を使用して、参照番号83により示される熱源に連結される。熱源83は、一定の温度を有し、その温度は、得たいと望まれる温度よりもかなり低い。それによって、コンテナ41のエネルギ伝達体は、ポンプで送られ、反応器ユニット1の周囲の空間と、村又は町の地域暖房システム78との間を循環する(矢印88、89参照)。反応器ユニット1の周囲の空間は、反応器ユニットに貯蔵されたエネルギによって加熱される。村又は町の地域暖房システム78には、加熱の必要性が存在する。蒸発器3”のエネルギ伝達体は、蒸発器の熱交換表面と熱源83との間をポンプで送られている(矢印90、91参照)。蒸発器の熱交換表面において、エネルギ伝達体は冷却される。
【0068】
代わりに、コンテナ41の反応器ユニット1に貯蔵されたエネルギを冷却の目的に使用することを望む場合には、蒸発器3”の熱交換表面が、弁93、94を開き、同時に弁95、96を閉じることによって、村又は町の冷却システムに連結される。冷却システムは、図9bにおいて、貯蔵部92として図示されている。同時に、的確な温度を受け取るために、反応器ユニットの熱交換表面は、弁98、99を開き、弁100、101を閉じることによって、媒体を介して冷熱源に連結される。冷熱源は、参照番号97により示される冷熱源97は、一定の温度を有し、その温度は、望む温度よりかなり高い。それによって、蒸発器3”のエネルギ伝達体は、蒸発器と、村又は町の冷却システム92との間をポンプで送られる(矢印102、103参照)。蒸発器において、エネルギ伝達体は冷却される。冷却システム92には、冷却の必要性が存在する。反応器ユニットのエネルギ伝達体は、コンテナ41の反応器ユニットの周囲の空間と、低温の場所97との間をポンプで送られる(矢印104、105参照)。反応器ユニットの周囲の空間において、エネルギ伝達体は加熱される。
【0069】
貯蔵された全エネルギが、コンテナ41の反応器ユニット1から集められた後、接合部33、65及び66の周囲の弁が閉じられる。その後、放熱された反応器は、蓄熱ステーション50へと運ばれ、蓄熱ステーション50に連結される。
【0070】
図10は、エネルギの輸送及び清潔な水の生産が、どのように同時に行われるかを概略的に示す。エネルギを輸送する場合、蓄熱された反応器部分1を、場所Bから場所Aへ移動させる。清潔な水を輸送する場合、放熱された反応器部分を、場所Aから場所Bへ移動させる。
【0071】
図11aに示す通り、場所Aでは、例えば、大まかにろ過された水が、弁113を開くことによって、充填容器111から定置式の蒸発器3”へ満たされる。充填弁が閉じられ、蒸発器は真空ポンプ115によって真空が達成される。中が真空の蓄熱された反応器部分1(図10のG)が、場所Aに運ばれる。そして、場所Aにおいて、反応器部分1は、定置式の蒸発器3”に連結される。そして、反応器部分と蒸発器との間の弁が開かれる。この弁は、参照番号117で図示され、図9a及び図9bの弁44、76に対応する。蒸発器3”と反応器部分1とが相互連結された後、放熱工程が開始する。放熱工程の間、蒸発器内の水が蒸発し、蒸気として反応器部分に移動する。この工程が完了した後、反応器部分1と蒸発器3”との間の弁117が閉じられ、たった今放熱された反応器部分が、蒸発器から切り離される。その後、必要に応じて、水が蒸発器に再び満たされ、新たに蓄熱された反応器部分が蒸発器に連結され、場所Aでの工程が再開される。水が満たされる蒸発器3”のチャンバは、定期的にすすぎ、塩又は汚染が蓄積しないようにすべきである。
【0072】
その後、放熱された反応器部分1(図10のH)が、場所Bに到着し、そこで、中が真空の定置式の凝縮器3’に連結される。反応器部分と凝縮器との間の弁が開かれ、その後、蓄熱工程が開始される。この弁は、参照番号119で図示され、図9a及び図9bの弁44、76に対応する。蓄熱工程では、反応器部分内の水が蒸発し、蒸気として定置式の凝縮器へ移動し、その中で水蒸気が凝縮される。凝縮工程において得られた水は、凝縮器3’のチャンバに集められる。蓄熱工程が完了した後、反応器部分1と凝縮器との間の弁119が閉じられ、その後、反応器部分が凝縮器から切り離される。その後、凝縮器から水を取り出すための弁121が開かれ、清潔で飲用に適する水が、おそらく送水ポンプ123を使用して、取り出される。水が取り出された後、取り出し弁が閉じられ、凝縮器3’が、真空ポンプ125を用いて真空にされる。そして、新たに放熱された反応器部分1が場所Bに到着し、凝縮器に連結される。反応器部分1と凝縮器3’との間の弁119が開かれると、新たな蓄熱工程が開始される。
【0073】
図12では、反応器部分を移動させることなく静止した工程で、どのようにエネルギの貯蔵と、同時に清潔な水の生産とが行われるかを示している。図10、図11a、及び図11bを特に参照して上述したものと同じ基本工程が使用される。しかし、ここでは、少なくとも2つの定置式の反応器又は反応器部分1.1、1.2が使用される。これらは、弁117.1、117.2、119.1、119.2を開いたり、閉じたりすることによって、それぞれ、蒸発器3”及び凝縮器3’に交互に連結される。これらの弁は、それぞれの反応器部分の連結部分において、凝縮器及び蒸発器にそれぞれ連結されている。蒸発器と凝縮器は、別個のものであり、すなわち別々のユニットであり、汚れた水と清潔な水の混合を避けるようになっている。蒸発器3”は、上述の通り充填装置を含む。そして、凝縮器からは、弁121を開けることによって、清潔な水が取り出される。その後、必要に応じて、例えばピストン・ポンプなどのポンプ123を使用して、清潔な水を送り出すことができる。反応器部分の連結弁は、三方弁として構成してもよい。したがって、図に示す通り、2つの反応器部分が使用される場合、例えば蒸発器3”への連結弁117.1及び117.2を三方弁(図示していない)によって置き換え、凝縮器3’への連結弁119.1及び119.2を別の三方弁(図示していない)によって置き換えることができる。
【0074】
本発明の特定の実施形態を本明細書に図示し説明してきたが、他の多数の実施形態を想定することができ、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、多数の追加の利点、修正形態及び変更形態が、当業者に容易に想到されることが認識される。したがって、本発明は、より広範な態様では、本明細書で示し説明した特定の詳細、代表的な装置、及び図示の実施例に限定されない。したがって、添付の特許請求の範囲及びそれらの均等物によって定義される全体的な発明の概念の精神又は範囲から逸脱することなく、様々な修正を加えることができる。したがって、添付の特許請求の範囲は、本発明の真の精神及び範囲内に包含されるこのような全ての修正形態及び変更形態に及ぶことが理解されよう。本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、他の多数の実施形態を想定することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エネルギを貯蔵及び/又は輸送する装置であって、前記装置は、蓄熱ステーションと、放熱ステーションと、貯蔵体とを含み、
前記蓄熱ステーション及び前記貯蔵体は、その内部空間を互いに連結するための連結装置を備えており、
前記放熱ステーション及び前記貯蔵体は、その内部空間を互いに連結するための連結装置を備えており、
前記貯蔵体は、その内部に活性物質を含み、前記活性物質は、吸収及び脱着によって揮発性液体と相互作用するようになっている、前記装置において、
前記貯蔵体は、ケミカル・ヒート・ポンプの反応器部分として作製されており、前記揮発性液体が、第1の温度において前記活性物質によって吸収され、より高い第2の温度において前記活性物質によって脱着されるように、前記反応器部分内の前記活性物質、及び前記揮発性液体が選択されており、前記活性物質は、前記第1の温度において固体状態であり、前記活性物質は、前記揮発性液体及び蒸気相の前記揮発性液体を吸収すると、直ちに又は直接的で部分的に、固体状態から液体状態又は溶液相へ変化し、前記活性物質は、前記第2の温度において液体状態であるか又は溶液相で存在しており、前記活性物質は、前記揮発性液体、とりわけ、蒸気相の前記揮発性液体を放出すると、直接的で部分的に、液体状態又は溶液相から固体状態へ変化し、前記反応器部分は、前記活性物質のための母材を含み、固体状態及び液相又は溶液相の両方の前記活性物質が母材に保持及び/又は結合されるようになっており、
前記蓄熱ステーションは、凝縮器又は同様の装置を含み、前記凝縮器又は同様の装置は、前記貯蔵体が前記蓄熱ステーションに連結され、前記反応器部分の内部空間が、前記凝縮器又は同様の装置の内部空間と連通されるとき、気相の前記揮発性液体を前記反応器部分から受け入れる及び/又は除去するようになっており、前記反応器部分がケミカル・ヒート・ポンプの場合と同じように蓄熱させられ、前記活性物質が、前記揮発性液体の脱着によって蓄熱状態へ変化するようになっており、
前記放熱ステーションは蒸発器を含み、前記蒸発器は、ある量の凝縮された形態の前記揮発性液体を内部空間に収容し、前記貯蔵体が前記放熱ステーションに連結され、前記反応器部分の内部空間が、前記蒸発器の内部空間と連通されると、気相の前記揮発性液体を前記反応器部分へ移動させるようになっており、前記反応器部分がケミカル・ヒート・ポンプの場合と同じように放熱させられ、前記活性物質が、前記揮発性液体の吸収によって放熱状態へ変化させられるようになっている、ことを特徴とする、エネルギを貯蔵及び/又は輸送する装置。
【請求項2】
前記母材が、非活性材料であり、とりわけ、少なくとも酸化アルミニウムを含むことを特徴とする、請求項1に記載された、エネルギを貯蔵及び/又は輸送する装置。
【請求項3】
前記母材が、細孔を含む材料から作製され、前記材料は、前記揮発性液体に対して透過性があり、前記活性物質が施されていることを特徴とする、請求項1から請求項2までのいずれか一項に記載された、エネルギを貯蔵及び/又は輸送する装置。
【請求項4】
前記母材が、液体状態の前記活性物質を結合することができる表面を有する材料、とりわけ、液体状態の前記活性物質及び/又は液体状態の前記揮発性液体によって濡らされた表面を有する材料から作製されることを特徴とする、請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載された、エネルギを貯蔵及び/又は輸送する装置。
【請求項5】
前記母材が、分離された粒子、とりわけ、粉末又は圧縮された繊維材料を含む材料から作製されることを特徴とする、請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載された、エネルギを貯蔵及び/又は輸送する装置。
【請求項6】
前記母材は、層の形状を有し、材料を前記第1の熱交換器の表面に施して構成されていることを特徴とする、請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載された、エネルギを貯蔵及び/又は輸送する装置。
【請求項7】
前記母材が、前記母材中に保持される前記活性物質とともに、制限する構造体、とりわけ、繊維材料の網又は布を少なくとも含む網装置に囲まれていることを特徴とする、請求項1から請求項6までのいずれか一項に記載された、エネルギを貯蔵及び/又は輸送する装置。
【請求項8】
前記凝縮器又は同様の装置が、真空ポンプを含むことを特徴とする、請求項1から請求項7までのいずれか一項に記載された、エネルギを貯蔵及び/又は輸送する装置。
【請求項9】
前記貯蔵体が、少なくとも1つの反応器容器を中に設置したコンテナを含むことを特徴とする、請求項1から請求項8までのいずれか一項に記載された、エネルギを貯蔵及び/又は輸送する装置。
【請求項10】
前記貯蔵体は、コンテナを含み、前記コンテナの中では、複数の反応器容器が設置され、相互連結されていることを特徴とする、請求項1から請求項8までのいずれか一項に記載された、エネルギを貯蔵及び/又は輸送する装置。
【請求項11】
複数の前記反応器容器が、一端が収集管によって相互連結された実質的に同一の管状のユニットを含むことを特徴とする、請求項10に記載された、エネルギを貯蔵及び/又は輸送する装置。
【請求項12】
複数の前記反応器容器が、一端が収集管によって相互連結された実質的に同一のプレート形のユニットを含むことを特徴とする、請求項10に記載された、エネルギを貯蔵及び/又は輸送する装置。
【請求項13】
少なくとも1つの前記反応器容器又は複数の前記反応器容器が、外部媒体と熱交換するように配置され、前記貯蔵体が蓄熱ステーション又は放熱ステーションに連結されたとき、前記コンテナ内の個々の前記反応器容器の周囲を前記外部媒体が循環できることを特徴とする、請求項9から請求項12までのいずれか一項に記載された、エネルギを貯蔵及び/又は輸送する装置。
【請求項14】
前記コンテナが2つの連結管を含み、前記貯蔵体が蓄熱ステーション又は放熱ステーションに連結されたとき、2つの前記連結管は、それぞれ、複数の前記反応器容器と熱交換する外部媒体を、前記コンテナ内において複数の前記反応器容器の周囲の空間に供給するように、及び、前記空間から前記外部媒体を除去するように配置されていることを特徴とする、請求項13に記載された、エネルギを貯蔵及び/又は輸送する装置。
【請求項15】
前記蓄熱ステーション及び前記放熱ステーションが、同じステーションであることを特徴とする、請求項1から請求項14までのいずれか一項に記載された、エネルギを貯蔵及び/又は輸送する装置。
【請求項16】
エネルギを貯蔵及び/又は輸送し、清潔な揮発性液体、とりわけ、水を生産する装置であって、
前記装置が、蓄熱ステーションと、放熱ステーションと、貯蔵体とを含み、
前記蓄熱ステーション及び前記貯蔵体は、その内部空間を互いに連結するための連結装置を備えており、
前記放熱ステーション及び前記貯蔵体は、その内部空間を互いに連結するための連結装置を備えており、
前記貯蔵体は、その内部に活性物質を含み、前記活性物質は、吸収及び脱着によって揮発性液体と相互作用するようになっている、前記装置において、
前記放熱ステーションは蒸発器を含み、前記蒸発器は、ある量の凝縮された形態の前記揮発性液体を内部空間に収容し、前記貯蔵体が前記放熱ステーションに連結され、前記反応器部分の内部空間が、前記蒸発器の内部空間と連通されるとき、気相の前記揮発性液体を前記反応器部分へ移動させるようになっており、前記反応器部分がケミカル・ヒート・ポンプの場合と同じように放熱させられ、前記活性物質が、前記揮発性液体の吸収によって放熱状態へ変化させられるようになっており、
前記蓄熱ステーションは、凝縮器又は同様の装置を含み、前記凝縮器又は同様の装置は、前記貯蔵体が前記蓄熱ステーションに連結され、前記反応器部分の内部空間が、前記凝縮器又は同様の装置の内部空間と連通されると、気相の前記揮発性液体を前記反応器部分から受け入れる及び/又は除去するようになっており、前記反応器部分がケミカル・ヒート・ポンプの場合と同じように蓄熱させられ、前記活性物質が、前記揮発性液体の脱着によって蓄熱状態へ変化するようになっており、
前記蒸発器の前記内部空間が、前記凝縮器の前記内部空間から分離されており、
前記蒸発器の前記内部空間は、前記放熱ステーションを前記貯蔵体に連結する前に、ある量の液相の前記揮発性液体、とりわけ、ある量の清潔でない形態の前記揮発性液体を受け入れるように構成されており、
ある量の前記液体を使用し又は扱うために、ある量の前記液体を取り出す取り出し装置であって、前記液体は、液相の状態であり、前記活性物質を蓄熱するために前記蓄熱ステーションが前記貯蔵体に連結された後、前記凝縮器の前記内部空間に存在している、前記取り出し装置をさらに含むことを特徴とする、エネルギを貯蔵及び/又は輸送する装置。
【請求項17】
前記貯蔵体は、ケミカル・ヒート・ポンプの反応器部分として作製されており、前記揮発性液体が、第1の温度において前記活性物質によって吸収され、より高い第2の温度において前記活性物質によって脱着されるように、前記反応器部分内の前記活性物質、及び前記揮発性液体は選択されており、前記活性物質は、前記第1の温度において固体状態であり、前記活性物質は、前記揮発性液体及び蒸気相の前記揮発性液体を吸収すると、直ちに又は直接的で部分的に、固体状態から液体状態又は溶液相へと変化し、前記活性物質は、前記第2の温度において液体状態であるか又は溶液相で存在しており、前記活性物質は、前記揮発性液体、とりわけ、蒸気相の前記揮発性液体を放出すると、直接的で部分的に、液体状態又は溶液相から固体状態へ変化し、前記反応器部分は、前記活性物質のための母材を含み、固体状態及び液相又は溶液相の両方の前記活性物質が母材に保持及び/又は結合されるようになっていることを特徴とする、請求項16に記載された、エネルギを貯蔵及び/又は輸送する装置。
【請求項18】
エネルギを貯蔵及び/又は輸送し、清潔な揮発性液体、とりわけ、水を生産する方法であって、前記方法は、
揮発性液体の吸収されていない蓄熱状態へ前記活性物質を変化させるために、エネルギを貯蔵体へ供給するステップであって、前記貯蔵体は、その内部に活性物質を含み、前記活性物質は、吸収及び脱着によって揮発性液体と相互作用するようになっている、ステップと、
揮発性液体の吸収された放熱状態へ前記活性物質を変化させるために、貯蔵された前記エネルギを使用して、前記貯蔵体を放熱させるステップとを含む方法において、
揮発性液体の吸収された前記蓄熱状態へ前記活性物質を変化させる際に、吸収された前記揮発性液体を気相に変化させ、前記揮発性液体を凝縮させた後、ある量の清潔な揮発性液体を得ることを特徴とする、前記方法。
【請求項19】
前記活性物質を前記放熱状態へ変化させるために、前記貯蔵体を放熱させるとき、温熱又は冷熱を送出するために、前記貯蔵体に貯蔵された前記エネルギを使用することを特徴とする、請求項18に記載された方法。
【請求項20】
前記活性物質を前記蓄熱状態へ変化させるために、前記貯蔵体にエネルギを供給した後、前記貯蔵体を、エネルギの供給が行われた場所とは別に、若しくはエネルギの供給が行われた場所から離れたところに保管する、及び/又は、前記場所から離れるように輸送することを特徴とする、請求項18または請求項19に記載された方法。
【請求項21】
前記活性物質の放熱の際、前記貯蔵体を放熱ステーションに連結し、前記放熱ステーションは蒸発器を含み、前記蒸発器は、ある量の凝縮された状態の前記揮発性液体、とりわけ、ある量の清潔でない状態の前記揮発性液体を内部空間に収容し、前記貯蔵体の内部空間を前記蒸発器の内部空間と連通させて、純粋な気相の前記揮発性液体を前記貯蔵体へ移動させ、前記貯蔵体内の前記活性物質を、ケミカル・ヒート・ポンプの場合と同じように放熱させることを特徴とする、請求項18から請求項20までのいずれか一項に記載された方法。
【請求項22】
前記活性物質の蓄熱の際、前記貯蔵体を蓄熱ステーションに連結し、前記蓄熱ステーションは凝縮器を含み、前記凝縮器は、前記貯蔵体の内部空間を前記凝縮器の内部空間と連通させると、気相の前記揮発性液体を前記貯蔵体から受け入れ、液相へと凝縮し、前記貯蔵体内の前記活性物質を、ケミカル・ヒート・ポンプの場合と同じように蓄熱させ、前記活性物質を前記揮発性液体の脱着によって蓄熱状態へ変化させ、その後、凝縮器の内部空間に、ある量の純粋な形態の前記揮発性液体を収容させることを特徴とする、請求項18から請求項21までのいずれか一項に記載された方法。

【図1a】
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【図1b】
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【図1c】
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【図1d】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6a】
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【図6b】
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【図6c】
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【図6d】
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【図7】
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【図8】
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【図9a】
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【図9b】
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【図10】
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【図11a】
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【図11b】
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【図12】
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【図2a】
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【図2b】
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【公表番号】特表2011−506892(P2011−506892A)
【公表日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−535912(P2010−535912)
【出願日】平成20年11月28日(2008.11.28)
【国際出願番号】PCT/SE2008/000676
【国際公開番号】WO2009/070091
【国際公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【出願人】(508353400)クライメイトウエル エービー(パブル) (5)
【Fターム(参考)】