説明

エネルギー代謝を向上させる方法

本発明は、エネルギー代謝を向上すること、健康なエネルギー代謝を促進すること、健康なエネルギー代謝を維持すること、エネルギー代謝の低下又は不足を引き起こす状態を予防すること、エネルギー代謝の低下又は不足を引き起こす状態を治療すること、及び動物によるエネルギー摂取量を減少させることなく動物の過剰な体脂肪の蓄積を予防することのうち1つ又は複数のための方法を提供する。この方法は、イソフラボンを、好ましくは約0.001〜約10g/kg/日の量で動物に投与することを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0002]本発明は、全般には、エネルギー代謝を向上させる方法、特に、エネルギー代謝を向上させるためにイソフラボンを使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
[関連出願の相互参照]
[0001]本出願は、2008年8月15日出願の米国特許仮出願第61/189036号の優先権を主張するものであり、この開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0003】
[0003]イソフラボンは、マメ及びマメ科の植物、特に大豆などの植物において見出される、天然に存在する化学化合物である。その作用機序ははっきりしないが、イソフラボンは、エストロゲンの作用によく似ており、エストロゲン代謝を調節する。結果として、イソフラボンは、腫瘍細胞の増殖を抑え、腫瘍細胞のアポトーシスを誘導し、ホルモンバランスを調節し、乳癌及び前立腺癌、心疾患、骨粗鬆症、並びにいくつかの他の疾患及び状態のリスクを低下させることが公知である。しかし、イソフラボンが、エネルギー代謝に影響を及ぼすことは知られていない。
【0004】
[0004]エネルギー代謝は、体内での生化学反応に伴って起こるエネルギーの変換である。エネルギー代謝は、動物、特に高齢の動物、更年期の動物、又は、エネルギー代謝の低下を引き起こす健康上又は他の問題を抱えている動物において低下又は悪化することが多い。Robertsら、Nutrition and Aging:Changes in the Regulation of Energy Metabolism With Aging、Physiol.Rev.86、651〜667、2006を参照のこと。そのような動物においては、身体活動及び基礎代謝率に関連するエネルギー消費は、一般に減少する。エネルギー代謝のそうした低下又は悪化は、脂肪沈着の増加及び筋肉量の減少を引き起こすことが多い。これは、食物及びエネルギーの摂取量が同じままであっても生じる。この結果は、II型糖尿病、高脂血症、動脈硬化症及び高血圧症などの多くの慢性疾患のリスクを増加させ、動物の生活の質を低下させ、動物の寿命を短縮化する。
【0005】
[0005]エネルギー代謝に影響を及ぼす方法は公知である。米国特許出願公開第20080057584号では、エネルギー代謝を向上させるための因子をコードする核酸を真核生物中に導入することによりエネルギー代謝を向上させる方法が開示されている。国際公開第05107779号パンフレットでは、ガルシニア・カンボジア抽出物、ギムネマ・シルベストルの葉の抽出物及び緑茶の葉の抽出物を含む、エネルギー代謝を向上させる組成物が開示されている。国際公開第05041949号パンフレットでは、L−カルニチン、アセチル−L−カルニチン、パントテネート及びナイアシンアミドの組合せを含む、エネルギー代謝機能不全に影響を及ぼすための組成物が開示されている。米国特許第5889055号及び米国特許第5973004号では、エネルギー代謝の疾患に関する症候群の予防及び治療のために、L−カルニチン及びアセチル−L−カルニチンを組み合わせての使用が開示されている。国際公開第08066250号パンフレットでは、肝細胞におけるエネルギー代謝を向上させるための、キトオリゴ糖を含む組成物が開示されている。国際公開第0195915号パンフレットでは、筋細胞におけるエネルギー代謝を向上させるための、アルカノイルカルニチンとリボースとを含む組成物が開示されている。国際公開第07043933号パンフレットでは、中でも、エネルギー代謝を向上させるためのプロバイオティクスの使用が開示されている。米国特許第6333421号では、エネルギー代謝の活性を向上させるためのカプサイシノイド様化合物の使用が開示されている。しかし、動物、特に高齢の動物のエネルギー代謝の低下の有害作用に対抗する有効な栄養的解決法はこれまでに存在しなかった。したがって、動物のエネルギー代謝を有効に向上させる新規の栄養的解決法が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
[0006]したがって、本発明の目的は、動物のエネルギー代謝を向上させる方法を提供することである。
【0007】
[0007]本発明の別の目的は、動物の健康なエネルギー代謝を促進及び維持する方法を提供することである。
【0008】
[0008]本発明の更なる目的は、動物のエネルギー代謝の低下又は不足を引き起こす状態を予防又は治療する方法を提供することである。
【0009】
[0009]本発明の別の目的は、動物によるエネルギー摂取量を減少させることなく、動物の過剰な体脂肪の蓄積を予防する方法を提供することである。
【0010】
[0010]本発明の別の目的は、動物の健康又はウェルネスを促進する方法を提供することである。
【0011】
[0011]本発明の別の目的は、動物の生涯の全盛期(prime years)を延長する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
[0012]多様な目的の1つ又は複数は、動物にイソフラボンを、エネルギー代謝を向上させ、健康なエネルギー代謝を促進及び維持し、エネルギー代謝の低下若しくは不足を引き起こす状態を予防若しくは治療し、又は、動物によるエネルギー摂取量を減少させることなく動物の過剰な体脂肪の蓄積を予防するのに十分な量で投与することにより達成される。一般的な実施形態では、イソフラボンは、1日当たり体重1キログラム当たり約0.001〜約10グラム(g/kg/日)の量で、エネルギー代謝を向上させる、健康なエネルギー代謝を促進及び維持する、エネルギー代謝の低下又は不足を引き起こす状態を予防若しくは治療する、又は動物によるエネルギー摂取量を減少させることなく動物の過剰な体脂肪の蓄積を予防するのに必要な長さの期間にわたり、動物に投与される。
【0013】
[0013]本発明の他の、又、更なる目的、特徴及び利点は、当業者には容易に明らかとなろう。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[0014]定義
用語「イソフラボン」は、本発明において有用なイソフラボン、並びに、1つ又は複数のリグナン又はクメスタン、例えば、ピノレジノール、ラリシレジノール、セコイソラリシレジノール、マタイレジノール、ヒドロキシマタイレジノール、シリンガレジノール、セサミン、エンテロジオール、エンテロラクトン及びクメストロールで置換されたイソフラボンを非限定的に含む、その天然又は合成の類似体、誘導体、前駆体及び代謝産物を意味する。
【0015】
[0015]用語「動物」は、エネルギー代謝を向上させ、健康なエネルギー代謝を促進及び維持し、エネルギー代謝の低下若しくは不足を引き起こす状態を予防若しくは治療し、又は、動物によるエネルギー摂取量を減少させることなく動物の過剰な体脂肪の蓄積を予防する必要のある任意の動物を意味し、それには、ヒト、トリ、ウシ科、イヌ科、ウマ科、ネコ科、ヤギ科、オオカミ、ネズミ科、ヒツジ科又はブタ科の動物が挙げられる。
【0016】
[0016]用語「高齢の」は、動物が、その特定の種、及び/又は、種内の血統にとっての平均寿命の50%を超過しているような高齢であることを意味する。例えば、所与の血統の犬の平均寿命が10年である場合、5歳を超える当該血統内のイヌは、「高齢の」イヌとみなされることになる。
【0017】
[0017]用語「伴侶動物」は、ネコ、イヌ、ウサギ、モルモット、フェレット、ハムスター、マウス、スナネズミ、ウマ、ウシ、ヤギ、ヒツジ、ロバ、ブタなど、飼い馴らされた動物を意味する。
【0018】
[0018]用語「食品組成物」は、動物による摂取を意図した製品又は組成物を意味する。
【0019】
[0019]用語「栄養補助食品」は、通常の動物食に追加して摂取されることを意図した製品を意味する。栄養補助食品は、任意の形態、例えば、固形、液体、ゲル、錠剤、カプセル、粉末などであってもよい。好ましくは、栄養補助食品は、便利な剤形、例えばサシェに入った状態で提供される。栄養補助食品は、大量の粉末、液体、ゲル又は油など消費者用のバルクパッケージに入った形で提供できる。同様に、そのような補助食品は、スナック、トリート、サプリメントバー、飲料など、他の食品アイテム中に含められるようにバルク量で提供できる。
【0020】
[0020]用語「規則的」は、本発明のイソフラボンが、動物に、規則的及び定期的に長期間投与されることを意味する。例えば、イソフラボンは、当該動物にとって必要に応じ、毎月、毎週又は毎日投与できる。特定の実施形態では、1日2回又は3回など、より頻回な投与が好ましい。
【0021】
[0021]用語「健康なエネルギー代謝」は、エネルギー代謝が、健康な若齢の成体動物のエネルギー代謝状態によく似ているか、又は、動物の良好な健康を促進するかいずれかの速度及び様式(カロリーを利用し不健康な体重変化を回避する速度及び様式など)で動物において生じることを意味する。
【0022】
[0022]用語「動物の健康及び/又はウェルネス」は、その動物が身体的、精神的及び社会的に完全に良好な状態であることを意味し、単に疾患又は病弱でないことを意味するのではない。
【0023】
[0023]用語「全盛期を延長する」は、動物が健康な生涯を送る年数を延ばすことを意味し、動物が生きる年数を単に延ばすことを意味するのではない、例えば、動物が比較的長い時間にわたりその生涯の全盛期において健康であると考えられる年数を延ばすことを意味する。
【0024】
[0024]用語「〜と共に、〜と併せて」は、本発明の1つ又は複数のイソフラボン又は他の化合物又は他の組成物を、動物に、(1)食品組成物中で一緒に、又は(2)同じ若しくは異なる投与経路を用いて、ほぼ同時若しくは定期的に、同じ若しくは異なる頻度で別々に投与することを意味する。「定期的に」は、イソフラボン又は他の化合物又は他の組成物が特定の化合物又は組成物にふさわしいスケジュールで投与されることを意味する。「ほぼ同時」は、一般には、イソフラボン又は他の化合物若しくは組成物が、同時に、又は互いに約72時間以内に投与されることを意味する。
【0025】
[0025]用語「単一パッケージ」は、キットの構成要素が、1つ又は複数の容器の中に、又はそれと一緒に物理的に付随しており、製造、配送、販売又は使用のための単位とみなされることを意味する。容器としては以下が挙げられるが、これらに限定されない:袋、箱、ボール箱、瓶、シュリンクラップパッケージ、ホチキス留め若しくは他の方法により添付された構成要素などのパッケージ、又はそれらの組合せ。単一パッケージは、個々のイソフラボンと、製造、配送、販売又は使用のための単位とみなされるように物理的に付随している食品組成物とが入っている容器であってもよい。
【0026】
[0026]用語「仮想パッケージ」は、キットの構成要素に、他の構成要素(例えば、1つの構成要素と、キットの使用方法、又は、キットの1つ若しくは複数の構成要素についての安全性若しくは技術情報についての説明書を入手するための、ウェブサイトへのアクセスの仕方、録音メッセージの聴き方若しくはファックス受信サービスの受け方、視覚メッセージの見方、又は、介護者若しくは指導者への連絡のとり方を使用者に指導する案内が袋又は他の容器に入っている)の入手の仕方を使用者に指導する1つ又は複数の物理的又は仮想的なキット構成要素についての案内が付随していることを意味する。
【0027】
[0027]本明細書においては、当該範囲内のありとあらゆる値を列挙し説明する必要を回避するために、範囲を略号として使用する。必要に応じ、上限値、下限値、又は当該範囲の末端として、当該範囲内の任意の適切な値を選択できる。
【0028】
[0028]本明細書において使用する場合、そうでないことが文脈により明らかに指示される場合を除き、単語の単数形には複数形が包含され、逆も又同様である。したがって、「a」、「an」及び「the」と言う場合には、それぞれの用語の複数形が一般に包含される。例えば、「補助食品(a supplement)」、「方法(a method)」又は「食品(a food)」と言う場合には、複数の当該「補助食品(supplements)」、「方法(methods)」又は「食品(foods)」が包含される。同様に、単語「〜を含む(comprise)」、「〜を含む(comprises)」及び「〜を含む(こと)(comprising)」は、排他的にではなく包含的に解釈されたい。同様に、用語「〜を包含する(include)」、「〜を包含する、〜など(including)」及び「若しくは、又は、或いは(or)」は、そのような構造が文脈から明らかに禁止される場合を除き、全て包含的なものと解釈されるべきである。同様に、用語「例」、特に用語の一覧が後に続く場合は、単に例示的且つ例証的であり、排他的又は網羅的なものではないとみなされるべきである。
【0029】
[0029]本明細書で開示される方法及び組成物及び他の利点は、特定の方法論、プロトコール及び試薬に限定されないが、その理由は、当業者には理解されるであろうが、そうしたものは変化する可能性があるからである。更に、本明細書において使用する用語は、特定の実施形態のみを説明するためのものであって、開示又は特許請求されている実施形態の範囲を制限することを意図したものではなく、それを実際に制限するものでもない。
【0030】
[0030]別に定義しない限り、本明細書において使用する全ての技術用語及び科学用語、専門用語及び頭字語は、本発明の1つ若しくは複数の技術分野、又はそうした用語が使用される1つ若しくは複数の技術分野の当業者により普通に理解される意味を有する。本発明の実行においては、本明細書に記載のものと同様又は同等の任意の組成物、方法、製品、又は他の手段若しくは材料を使用できるが、本明細書には、好ましい組成物、方法、製品、又は他の手段若しくは材料を記載してある。
【0031】
[0031]本明細書において引用又は参照する全ての特許、特許出願、刊行物、技術論文及び/又は学術論文並びに他の参考文献は、法により認められる範囲で、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。そうした参考文献の検討は、その中で為される主張を単に要約することを意図したものである。そのような一切の特許、特許出願、刊行物若しくは参考文献又はその任意の部分が、関連のある、有形の、又は先行する技術であることを認めるものではない。関連のある、有形の、又は先行する技術としてのそのような特許、特許出願、刊行物及び他の参考文献の一切の主張の正確性及び妥当性に異議を申し立てる権利は、明確に保護される。
【0032】
[0032]本発明
一態様では、本発明は、動物のエネルギー代謝を向上させる方法を提供する。この方法は、エネルギー代謝を向上させる量の1つ又は複数のイソフラボンを動物に投与することを含む。
【0033】
[0033]別の態様では、本発明は、動物の健康なエネルギー代謝を促進又は維持する方法を提供する。この方法は、健康なエネルギー代謝を促進又は維持する量の1つ又は複数のイソフラボンを動物に投与することを含む。
【0034】
[0034]別の態様では、本発明は、動物のエネルギー代謝の低下又は不足を引き起こす状態を予防又は治療する方法を提供する。この方法は、状態を予防又は治療する量の1つ又は複数のイソフラボンを動物に投与することを含む。動物のエネルギー代謝の低下又は不足を引き起こす状態は、当業者に公知の任意の状態、例えば、甲状腺機能低下症などの疾患であってもよい。多様な実施形態では、この状態は、動物の状況の変化、例えば、高齢化、更年期(postmenopausal)、ポストアンドロポーズ(postandropausal)、卵巣摘出又は去勢により引き起こされる。他の実施形態では、この状態は、エネルギー代謝を低下させる薬物又は他の化合物、典型的には、疾患の治療のために患者に投与される薬物により引き起こされる状態である。更なる実施形態では、この状態は、エネルギー代謝の低下を引き起こす遺伝性の代謝障害である。
【0035】
[0035]本発明は、イソフラボンがエネルギー代謝に影響を及ぼすという、特に、イソフラボンは、動物のエネルギー代謝を向上させ、動物の健康なエネルギー代謝を促進又は維持し、エネルギー代謝の低下又は不足を引き起こす状態を予防又は治療するために有用であるという発見に基づく。
【0036】
[0036]別の態様では、本発明は、動物によるエネルギー摂取量を減少させることなく動物の過剰な体脂肪の蓄積を予防する方法であって、動物に、(1)動物の健康の維持に適した一貫したエネルギー摂取量、及び(2)動物によるエネルギー摂取量を減少させることなく動物の過剰な体脂肪の蓄積を予防するのに十分な量の1つ又は複数のイソフラボンを投与することを含む方法を提供する。いくつかの状態下では、動物、特に高齢の動物は、その状態の発生前に摂取していたのと同じ量のエネルギーを摂取していても過剰な体脂肪を蓄積する傾向がある。そのため、過剰な体脂肪の蓄積を回避するため、動物は、一般には食品の形態でのエネルギー消費を減らすことにより、エネルギー摂取量を制限する必要がある。本発明のこの態様は、そのような動物が、そのような過剰な体脂肪の蓄積を予防するのに十分な量の1つ又は複数のイソフラボンも摂取していれば、同じ量のエネルギーを消費し続けていても過剰な体脂肪の蓄積を減らすことができるという驚くべき発見に基づく。この状態は、過剰な体脂肪の蓄積を促進する任意の状態、例えば、疾患又は高齢である。好ましくは、この状態は高齢であり、動物は高齢の動物である。
【0037】
[0037]多様な実施形態では、この方法は、1つ又は複数のイソフラボンを、動物のエネルギー代謝の改善又は向上に有用な1つ又は複数のプロバイオティクスと共に投与することを更に含む。国際公開第07043933号パンフレット(欧州特許出願公開第1945235号)において開示されているものなど、エネルギー代謝の改善又は向上に有用な任意のプロバイオティクスを組み合わせて使用できる。好ましくは、プロバイオティクスは、ラクトバチルス・カゼイ、ラクトバチルス・アシドフィルス又はビフィドバクテリウム・ラクチスである。好ましい実施形態では、イソフラボンとプロバイオティクスとは相乗作用をもつ。一般に、プロバイオティクスは、摂取されると特定の医学的状態の予防及び治療において有益な効果を有する生きた微生物である。プロバイオティクスは、コロニー形成抵抗性として公知の現象を通じて生物学的効果を発揮すると考えられる。プロバイオティクスは、常在性の嫌気性細菌叢が消化管中の潜在的に有害な(大部分が好気性)細菌の濃度を限定する過程を容易にする。胃腸管中で酵素を供給するか、又は酵素活性に影響を及ぼすといった他の作用様式が、プロバイオティクスに起因している他の機能のいくつかの主な原因となっている可能性もある。乳酸菌又はビフィズス菌などのプロバイオティクス細菌は、白血球の抗体産生及び食作用(貪食作用又は殺菌作用)活性の向上につながる腸内の細菌バランスを改善することにより、免疫応答にプラスに影響すると考えられる。ビフィドバクテリウム・ラクチスは、高齢の動物における細胞性免疫のいくつかの側面を向上させるための有効なプロバイオティクス栄養補助食品となり得ると考えられる。プロバイオティクスは、全身性の細胞性免疫応答を向上させ、他の点においては健康な成体における自然免疫を高めるための栄養補助食品として有用であると考えられる。プロバイオティクスとしては多くの種類の細菌が挙げられるが、一般には、4つの細菌属:ラクトバチルス・アシドフィルス、ビフィズス菌、ラクトコッカス及びペジオコッカスから選択される。有益な種としては、腸球菌種及び酵母菌種、例えば、エンテロコッカス・フェシウムSF68が挙げられる。動物に投与されることになるプロバイオティクスの量は、プロバイオティクスの種類及び性質、並びに動物の種類及び性質(例えば、動物の年齢、体重、全身の健康状態、性別、微生物の枯渇の程度、有害細菌の存在及び食餌)に基づいて当業者により決定される。一般には、プロバイオティクスは、腸内の微生物叢の健康な維持のために1日当たり約1〜約200億のコロニー形成単位(CFU)、好ましくは1日当たり約50億〜約100億の生菌の量で動物に投与される。プロバイオティクスは、任意の適当な手段により、組成物の一部を構成していてもよい。一般には、プロバイオティクスは、食品組成物と混合し、又は、例えば、散布若しくは噴霧により組成物の表面に施用される。作用剤がキットの一部である場合、作用剤は、他の材料と共に、又は自身のパッケージの中で混合できる。
【0038】
[0038]動物は、任意の年齢、種、健康状態などの動物を含め、任意の種又は種類の任意の個体動物であってもよい。多様な実施形態では、動物は、エネルギー代謝が低下していることが公知の動物、例えば、高齢の、更年期の、ポストアンドロポーズの、卵巣摘出若しくは去勢された動物、又は、エネルギー代謝の低下若しくは不足を引き起こす状態(甲状腺機能低下症など)に罹患している動物である。一実施形態では、動物は、高齢の動物、一般には、エネルギー代謝が低下している、したがって、エネルギー代謝を向上させる方法が有効と考えられる高齢の動物である。別の実施形態では、動物は、エネルギー代謝の低下を引き起こす疾患、例えば、代謝障害、遺伝性の代謝性疾患、ミトコンドリア病などに罹患している動物である。
【0039】
[0039]イソフラボンは、当業者に公知の任意のイソフラボンであってもよい。多様な実施形態では、イソフラボンは、アグリコン、グルコシド、アセチルグルコシド及びマロニルグルコシドの形態のイソフラボンからなる群から選択される。好ましくは、イソフラボンは、ビオカニンA、ダイゼイン、ダイジン、グリシテイン、ホルモノネチン、エクオール、ゲニステイン、イリロン、ルテオン、プルネチン、プラテンセイン及びグリシチンからなる群から選択される。一実施形態では、イソフラボンは、大豆から得られるか、又は、大豆若しくは大豆抽出物を動物に与えることにより動物に投与される、大豆イソフラボンである。別の実施形態では、イソフラボンは、ピノレジノール、ラリシレジノール、セコイソラリシレジノール、マタイレジノール、ヒドロキシマタイレジノール、シリンガレジノール、セサミン、エンテロジオール、エンテロラクトン及びクメストロールなどの1つ又は複数のリグナン又はクメスタンで置換されたイソフラボンである。
【0040】
[0040]イソフラボンは、本発明における機能にとって必要なように、例えば、エネルギー代謝を向上させるように、動物に投与できる。投与量は、一般には、投与されることになる1つ又は複数のイソフラボン、動物、動物の健康状態及び状況、投与目的などに基づき、当業者により容易に決定できる。イソフラボンは、所望の通り又は定期的に投与される。好ましくは、イソフラボンは、定期的に、好ましくは毎週、最も好ましくは毎日、動物に投与される。多様な実施形態では、イソフラボンは、約5mg/日〜約5000mg/日、好ましくは10mg/日〜約2000mg/日、より好ましくは約30mg/日〜約500mg/日、最も好ましくは約50mg/日〜約300mg/日の量で動物に投与される。他の実施形態では、イソフラボンは、1日当たり体重1キログラム当たり約0.001〜約10グラム(g/kg/日)、好ましくは約0.05〜約5g/kg/日、最も好ましくは約0.01〜約1g/kg/日の量で動物に投与される。イソフラボンは、エネルギー代謝を向上させるか、又は健康なエネルギー代謝を促進及び維持する必要がある期間にわたり投与される。高齢の動物の場合、イソフラボン投与は、一般には、動物の余生にわたって必要である。
【0041】
[0041]イソフラボンは、当業者に公知の任意の適当な様式で動物に投与される。好ましくは、イソフラボンは、イソフラボンを含有する組成物、好ましくは経口投与用の組成物の形態で動物に投与される。一定の実施形態では、イソフラボンは、栄養補助食品として動物に投与される。他の実施形態では、イソフラボンは、食品組成物の形で動物に投与される。一実施形態では、食品組成物は、米国飼料検査官協会(AAFCO)により確立された基準による、動物、好ましくは伴侶動物のための「完全でバランスのとれた」栄養を提供するように調合される。他の実施形態では、この食品組成物は、伴侶動物用の食品組成物(イヌ又はネコ用の食品組成物など)として調合される。この栄養補助食品又は食品組成物は、1つ又は複数のイソフラボンを、望ましい量のイソフラボンを動物に投与するのに十分な量、すなわち、約5mg〜約5000mgの量、又は、約0.001〜約10g/kg/日を投与するのに十分な量で含有するように調合される。
【0042】
[0042]多様な実施形態では、動物はヒトである。中でも、動物は、伴侶動物、好ましくはイヌ又はネコである。いくつかの実施形態では、動物は、更年期又はポストアンドロポーズの動物である。中でも、動物は、卵巣摘出又は去勢された動物である。
【0043】
[0043]別の態様では、本発明は、1つ又は複数のイソフラボンと、パッケージの中にはエネルギー代謝に関する有益な特性を有するイソフラボンが入っていることを示す単語若しくは言葉、写真、デザイン、頭字語、宣伝文句、語句若しくは他の標語又はそれらの組合せ(例えば、エネルギー代謝を向上させ、健康なエネルギー代謝を促進し、又は健康なエネルギー代謝を維持する方法)の載っている、パッケージに添付されたラベルとを備えるパッケージを提供する。典型的には、そのような標語は、「エネルギー代謝を向上する」、「健康なエネルギー代謝を促進する」若しくは「健康なエネルギー代謝を維持する」という言葉、又は、パッケージに印刷された同等の表現を備える。例えば、紙、プラスチック、ホイル、金属などから製造された袋、箱、瓶、缶、ポーチなど、組成物を入れるのに適した任意のパッケージ又は包装材は、本発明において有用である。好ましい一実施形態では、パッケージには、ラベルに合わせ、ヒト、イヌ又はネコなどの特定の動物用に構成された食品組成物、好ましくはイヌ又はネコのための伴侶動物用食品組成物が入っている。好ましい一実施形態では、パッケージは、本発明の食品組成物を備える缶又はポーチである。
【0044】
[0044]更なる一態様では、本発明は、(1)エネルギー代謝を向上させるためのイソフラボンの使用、(2)健康なエネルギー代謝を促進するためのイソフラボンの使用、(3)健康なエネルギー代謝を維持するためのイソフラボンの使用、(4)エネルギー代謝の低下又は不足を引き起こす状態を予防するためのイソフラボンの使用、(5)エネルギー代謝の低下又は不足を引き起こす状態を治療するためのイソフラボンの使用、(6)動物によるエネルギー摂取量を減少させることなく動物の過剰な体脂肪の蓄積を予防するためのイソフラボンの使用、(7)エネルギー代謝を向上させ、健康なエネルギー代謝を促進し、健康なエネルギー代謝を維持し、エネルギー代謝の低下若しくは不足を引き起こす状態を予防し、エネルギー代謝の低下若しくは不足を引き起こす状態を治療し、又は動物によるエネルギー摂取量を減少させることなく動物の過剰な体脂肪の蓄積を予防するためのイソフラボンの投与、(8)動物のエネルギー代謝の向上に有用な1つ又は複数のプロバイオティクスと併せたイソフラボンの使用、(9)本発明の方法及び組成物について、例えば、エネルギー代謝を向上させ、健康なエネルギー代謝を促進し、健康なエネルギー代謝を維持し、エネルギー代謝の低下若しくは不足を引き起こす状態を予防し、エネルギー代謝の低下若しくは不足を引き起こす状態を治療し、又は動物によるエネルギー摂取量を減少させることなく動物の過剰な体脂肪の蓄積を予防するためのイソフラボン、食品組成物及びプロバイオティクスの投与又は使用について疑問がある場合に使用するための、消費者用の連絡情報、並びに(10)イソフラボンについての栄養情報、のうち1つ又は複数についてのコミュニケーション情報又は説明書を得るための手段を提供する。有用な説明書としては、イソフラボンの投与量及び投与頻度を挙げることができる。このコミュニケーション手段は、本発明を使用し、イソフラボン、及び、イソフラボンを含有する食品組成物を動物に投与する、承認された方法をやりとりすることの利点について指導するために有用である。この手段は、情報又は説明書を含有する、物理的又は電子的な文書、デジタル記憶媒体、光学記憶媒体、音声説明、音声画像ディスプレイ又は画像ディスプレイのうち1つ又は複数を備える。好ましくは、この手段は、ウェブサイト表示、画像ディスプレイキヨスク、小冊子、製品ラベル、添付文書、広告、チラシ、公共放送、録音テープ、ビデオテープ、DVD、CD−ROM、コンピューター読込みチップ、コンピューター読込みカード、コンピューター読込みディスク、USB機器、FireWire機器、コンピューターメモリー、及びその任意の組合せからなる群から選択される。
【0045】
[0045]更なる一態様では、本発明は、イソフラボンの動物への投与に適したキットを提供する。このキットは、単一パッケージ中の別々の容器又は仮想パッケージ中の別々の容器の中に、キット構成要素について必要に応じ、1つ又は複数のイソフラボンと、(1)動物による摂取に適した1つ又は複数の成分、(2)イソフラボンと他のキット構成要素とを合わせて、エネルギー代謝を向上させ、健康なエネルギー代謝を促進及び維持し、エネルギー代謝の低下若しくは不足を引き起こす状態を予防又は治療し、又は動物によるエネルギー摂取量を減少させることなく動物の過剰な体脂肪の蓄積を予防するのに有用な組成物を作製する方法についての説明書(特に、食品組成物を作製するための、動物による摂取に適した成分であるキット構成要素)、(3)エネルギー代謝を向上させるためのイソフラボンの使用方法についての説明書、(4)健康なエネルギー代謝を促進及び維持するためのイソフラボンの使用方法についての説明書、(5)エネルギー代謝の低下又は不足を引き起こす状態を予防又は治療するためのイソフラボンの使用方法についての説明書、(6)動物によるエネルギー摂取量を減少させることなく動物の過剰な体脂肪の蓄積を予防するためのイソフラボンの使用方法についての説明書、(7)スプーン又は他の施用用具など、キット構成要素を調製又は合わせて、動物への投与に適した組成物を作製するための用具、(8)動物のエネルギー代謝の向上に有用な1つ又は複数のプロバイオティクス、及び(9)ボウル又は他の容器など、合わされた又は調製されたキット構成要素を動物に投与するための用具のうち少なくとも1つを備える。
【0046】
[0046]このキットが仮想パッケージを備える場合、キットは、1つ又は複数の物理的なキット構成要素と組み合わせた、仮想環境における説明書に限定される。このキットには、イソフラボン及び他の構成要素が、エネルギー代謝を向上させ、健康なエネルギー代謝を促進及び維持し、又は動物によるエネルギー摂取量を減少させることなく動物の過剰な体脂肪の蓄積を予防するのに十分な量で入っている。典型的には、イソフラボン及び他の適当なキット構成要素は、動物による摂取の直前に混合される。このキットには、多様な組合せ及び/又は混合物のいずれかの形態のキット構成要素が入っていてもよい。一実施形態では、このキットには、1つ又は複数のイソフラボンの入った小さな包みと、動物による摂取用の食品容器とが入っている。このキットには、イソフラボンと成分とを混合するための用具又は混合物を入れるための用具(例えば食品用ボウル)などの追加アイテムが入っていてもよい。別の実施形態では、イソフラボンは、動物における良好な健康を促進するビタミン及びミネラルなどの追加的な栄養補助食品と混合される。この構成要素は、単一のパッケージ中の別々の容器、又は、異なるパッケージ中の多様な構成要素の混合物に入った形で、それぞれ提供される。好ましい実施形態では、このキットは、イソフラボンと、動物による摂取に適した1つ又は複数の他の成分とを備える。好ましくは、そのようなキットは、一般には、イソフラボンを他の成分と混合するか、又はイソフラボンを他の成分に施用する(例えば、食品組成物上にイソフラボンを振りかける)ことにより、イソフラボンを他の成分と合わせて動物による摂取用の食品組成物を形成する方法を記載する説明書を備える。
【0047】
[0047]一態様では、本発明は、動物の健康又はウェルネスを促進する方法を提供する。この方法は、健康又はウェルネスを促進する量の1つ又は複数のイソフラボンを動物に投与することを含む。イソフラボンは、動物の健康なエネルギー代謝を促進及び維持し、動物のエネルギー代謝の低下又は不足を引き起こす状態を予防又は治療する。この方法は、齢をとった動物、老齢の動物、肥満の動物、過体重の動物、及び、動物のエネルギー代謝の低下又は不足を引き起こす状態に罹りやすい又は罹患していると判断される動物など、任意の年齢又は分類の動物の健康又はウェルネスの促進に有用である。動物に投与されるイソフラボンの量は、動物において健康なエネルギー代謝を促進及び維持し、エネルギー代謝の低下又は不足を引き起こす状態を予防又は治療するための本明細書に記載したものと同じ量、例えば、約5mg〜約5000mgである。
【0048】
[0048]別の態様では、本発明は、動物の生涯の全盛期を延長する方法を提供する。この方法は、1つ又は複数のイソフラボンを、その動物にとっての全盛期を延長するために有効な量で動物に投与することを含む。イソフラボンは、動物の健康なエネルギー代謝を促進及び維持し、動物のエネルギー代謝の低下又は不足を引き起こす状態を予防又は治療する。結果として、動物は、その生涯を通して(生涯の全盛期にわたることを含め)健康な生活を送る。動物に投与されるイソフラボンの量は、動物において、健康なエネルギー代謝を促進及び維持し、エネルギー代謝の低下又は不足を引き起こす状態を予防又は治療するための本明細書に記載したものと同じ量、例えば、約5mg〜約5000mgである。
【0049】
[0049]更なる一態様では、本発明は、医薬を調製するための1つ又は複数のイソフラボンの使用を提供する。別の態様では、本発明は、エネルギー代謝を向上させること、健康なエネルギー代謝を促進すること、健康なエネルギー代謝を維持すること、エネルギー代謝の低下又は不足を引き起こす状態を予防すること、エネルギー代謝の低下又は不足を引き起こす状態を治療すること、動物によるエネルギー摂取量を減少させることなく動物の過剰な体脂肪の蓄積を予防することのうち1つ又は複数のための医薬を調製するためのイソフラボンの使用を提供する。同様に、この医薬は、動物の健康又はウェルネスを促進し、動物の生涯の全盛期を延長するために有用である。一般には、医薬は、化合物又は組成物を賦形剤、緩衝剤、結合剤、可塑剤、着色剤、希釈剤、圧縮剤、滑沢剤、香味剤、湿潤剤、並びに、医薬の作製、及び、動物への投与に適した医薬の製剤化に有用であることが当業者に公知の他の成分と混合することにより調製される。
【実施例】
【0050】
[0050]本発明は、以下の実施例により更に例証できるが、この実施例は、別に具体的に指示がない限り、例証目的でのみ記載するものであり、本発明の範囲を限定することを意図したものではないことは理解されよう。
実施例1
【0051】
[0051]ボディーコンディションスコアが4〜5、年齢が2〜3歳の間の30匹の成体のラブラドールレトリーバー(オス50%、メス50%)を、個別又は1群当たりイヌ2匹の群のいずれかで収容した。動物には個別に給餌した。
【0052】
[0052]6〜12週の期間の間での試験前の維持エネルギー所要量(MER)の推定及びランダム化:各イヌについてのMERを定量するため、全てのイヌについて、鶏肉と米との完全でバランスのとれたドッグフードが唯一の食餌であった。各イヌに与えた食餌の当初量は、約4カ月の期間にわたる食物摂取量の平均であった。1日の食餌量は、イヌの体重を維持するように、必要に応じて毎週調節した。食餌は、容器に入れて床の上に60分間置いた。予備試験期間の間、残った食餌を計量し、1日の食品摂取量を記録した。各イヌの体重を毎週モニターした。体重は、予備試験期間の最後3週間の間は10%を超えて変化することはなかった。
【0053】
[0053]ランダム化:各イヌについてMERを定量した後、MER、体重、体脂肪率(%)及び性別に基づき、イヌを1群当たりイヌ15匹の2つの群(対照及びイソフラボン)にランダム化した。
【0054】
[0054]給餌手順:イヌには9カ月間、MERの25%超の餌を与えた。1日の食物の量を2回分に等しく分けた。一方を午前中に与え、他方を午後に与えた。イヌが食べる時間は毎回60分であった。イヌが60分以内に全ての食物を食べなかった場合、食物は室内に一晩置き、イヌが自身のMERの25%超を確実に食べるようにした。
【0055】
[0055]試験用の食餌:対照及びイソフラボンの食餌には両方とも、同じレベルのタンパク質(29%)、脂肪(18%)及びCHO(46%)が入っていた。イソフラボン食には大豆胚芽ミール由来の総イソフラボン310mg/kgが入っていた。
【0056】
[0056]測定値:以下の測定値を得た:(1)食物摂取量を毎日収集した、(2)ベースライン時点、週に1回及び試験の終了時点で体重を記録した、(3)DEXAデータ(体脂肪、除脂肪体重)を、ベースライン時点、追加の9カ月処置の開始後3カ月毎及び試験終了時点で収集した、及び(4)二重標識水(DLW)法(Am J Clin Nutr、1987、45、905〜913)により、総エネルギー消費量を試験終了時点で定量した。DLW法により、5〜14日の期間にわたる平均エネルギー消費量(EE)が得られる。この手順は、非侵襲的、非拘束的であり、自由な生活条件下での実際のEEを反映している。簡潔に言えば、DLW法には、安定な(天然で非放射性の)同位体である重水素(2H)及び酸素18(18O)で体内水分を濃厚にすること、次いで血漿中でこの同位体の単一指数のウォッシュアウト動態を定量することが含まれる。DLW法は、2Hの消滅速度が水のターンオーバー速度を反映し、18Oの消滅速度は水及びCOの両方のターンオーバー速度を反映するとの原理に基づく。したがって、時間の経過に伴い、2Hと18Oとの消滅速度の間の差は、CO2生成の速度を表す。呼吸商(RQ)又は食物商(food quotient;FQ)がわかっていれば、EEはCO生成速度から計算できる。データを表1に示す。
【0057】
[0057]表1を参照すると、データから、イソフラボンは、エネルギー代謝を向上させ、健康なエネルギー代謝を促進し、又は健康なエネルギー代謝を維持するのに有用であることが示される。対照群とイソフラボン群との間には、ベースラインの維持エネルギー所要量(MER、安定な体重を維持するために必要な食品のグラム数として表す)において有意差はなかった。イソフラボン群のイヌは、対照群のイヌより総エネルギー消費量が有意に(p=0.0481)高かった。
【表1】

【0058】
[0058]対照のイヌと比較すると、イソフラボン食により、飼養試験の開始後3カ月時点(p=0.0483)及び9カ月時点(p=0.0255)での体脂肪の増加率(%)が有意に低下した。イソフラボン群のイヌは、飼養試験の開始後6カ月時点(p=0.106)で体脂肪の増加率(%)が低下する傾向が見られた。データを表2に示す。
【表2】

【0059】
[0059]試験期間中の両群のイヌの食物摂取量は同じであったにも関わらず、9カ月試験の終了時点で、イソフラボン食を与えたイヌは対照のイヌより体脂肪の増加率は有意に低かった。イソフラボンのイヌにおける体脂肪の増加率の低下は、エネルギー代謝が向上し、その結果生じた、イソフラボンにより誘導された総エネルギー消費量の増加によるものである。このデータから、イソフラボンは、動物の健康なエネルギー代謝を促進及び維持するうえで、又、動物によるエネルギー摂取量を減少させることなく動物の過剰な体脂肪の蓄積を予防するために有効であることが示される。
【0060】
[0060]本明細書においては、本発明の典型的な好ましい実施形態を開示してきた。具体的な用語を用いてはいるが、こうした用語は、一般的及び説明的な意味のみで用いられており、限定を目的としたものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲に記載してある。前述の教示に照らせば、本発明の多くの改変形及び変形が可能であることは明らかである。したがって、添付の特許請求の範囲内で、具体的に記載された以外の方法で本発明を実行できることは理解されたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
動物のエネルギー代謝を向上させる方法であって、エネルギー代謝を向上させる量の1つ又は複数のイソフラボンを前記動物に投与するステップを含む方法。
【請求項2】
前記イソフラボンが、アグリコン、グルコシド、アセチルグルコシド及びマロニルグルコシドの形態のイソフラボンからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記イソフラボンが、ビオカニンA、ダイゼイン、ダイジン、グリシテイン、ホルモノネチン、エクオール、ゲニステイン、イリロン、ルテオン、プルネチン、プラテンセイン及びグリシチンからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記イソフラボンが、約5mg〜約5000mgの量で前記動物に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記イソフラボンが定期的に前記動物に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記イソフラボンが、約0.001〜約10g/kg/日の量で前記動物に投与される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記動物が、エネルギー代謝の低下又は不足を引き起こす状態に罹患している、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記動物が高齢の動物である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記動物が、更年期又はポストアンドロポーズの動物である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記イソフラボンが栄養補助食品として投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記イソフラボンが食品組成物の形で投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記食品組成物が、前記動物のための完全でバランスのとれた栄養を供給するように調合される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記動物が伴侶動物である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記動物が高齢の動物である、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記動物が、更年期又はポストアンドロポーズの動物である、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記動物がイヌ又はネコである、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
前記動物が、卵巣摘出又は去勢された動物である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
1つ又は複数のイソフラボンを、エネルギー代謝の向上に有用な1つ又は複数のプロバイオティクスと共に投与するステップを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
動物の健康なエネルギー代謝を促進又は維持する方法であって、健康なエネルギー代謝を促進又は維持する量の1つ又は複数のイソフラボンを前記動物に投与するステップを含む方法。
【請求項20】
動物のエネルギー代謝の低下又は不足を引き起こす状態を予防又は治療する方法であって、状態を予防又は治療する量の1つ又は複数のイソフラボンを前記動物に投与するステップを含む方法。
【請求項21】
動物によるエネルギー摂取量を減少させることなく前記動物の過剰な体脂肪の蓄積を予防する方法であって、前記動物に、(1)動物の健康の維持に適した一貫したエネルギー摂取量、及び(2)前記動物によるエネルギー摂取量を減少させることなく前記動物の過剰な体脂肪の蓄積を予防するのに十分な量の1つ又は複数のイソフラボンを投与するステップを含む方法。
【請求項22】
1つ又は複数のイソフラボンと、パッケージの中にエネルギー代謝に関する有益な特性を有するイソフラボンが入っていることを示す単語若しくは言葉、写真、デザイン、頭字語、宣伝文句、語句若しくは他の標語又はそれらの組合せの載っている、パッケージに添付されたラベルとを備えるパッケージ。
【請求項23】
前記有益な特性が、エネルギー代謝を向上させ、健康なエネルギー代謝を促進し、健康なエネルギー代謝を維持することである、請求項22に記載のパッケージ。
【請求項24】
(1)エネルギー代謝を向上させるためのイソフラボンの使用、(2)健康なエネルギー代謝を促進するためのイソフラボンの使用、(3)健康なエネルギー代謝を維持するためのイソフラボンの使用、(4)エネルギー代謝の低下又は不足を引き起こす状態を予防するためのイソフラボンの使用、(5)エネルギー代謝の低下又は不足を引き起こす状態を治療するためのイソフラボンの使用、(6)動物によるエネルギー摂取量を減少させることなく前記動物の過剰な体脂肪の蓄積を予防するためのイソフラボンの使用、(7)エネルギー代謝を向上させ、健康なエネルギー代謝を促進し、健康なエネルギー代謝を維持し、エネルギー代謝の低下若しくは不足を引き起こす状態を予防し、エネルギー代謝の低下若しくは不足を引き起こす状態を治療し、又は動物によるエネルギー摂取量を減少させることなく前記動物の過剰な体脂肪の蓄積を予防するためのイソフラボンの投与、(8)動物のエネルギー代謝の向上に有用な1つ又は複数のプロバイオティクスと併せたイソフラボンの使用、(9)本発明の方法及び組成物について疑問がある場合に使用するための、消費者用の連絡情報、及び(10)イソフラボンについての栄養情報、のうち1つ又は複数についてのコミュニケーション情報又は説明書を得るための手段。
【請求項25】
ウェブサイト表示、画像ディスプレイキヨスク、小冊子、製品ラベル、添付文書、広告、チラシ、公共放送、録音テープ、ビデオテープ、DVD、CD−ROM、コンピューター読込みチップ、コンピューター読込みカード、コンピューター読込みディスク、USB機器、FireWire機器、コンピューターメモリー、及びその任意の組合せからなる群から選択される、請求項24に記載の手段。
【請求項26】
イソフラボンの動物への投与に適したキットであって、単一パッケージ中の別々の容器又は仮想パッケージ中の別々の容器の中に、キット構成要素について必要に応じ、1つ又は複数のイソフラボンと、(1)動物による摂取に適した1つ又は複数の成分、(2)イソフラボンと他のキット構成要素とを合わせて、エネルギー代謝を向上させ、健康なエネルギー代謝を促進及び維持し、エネルギー代謝の低下若しくは不足を引き起こす状態を予防又は治療し、又は動物によるエネルギー摂取量を減少させることなく前記動物の過剰な体脂肪の蓄積を予防するのに有用な組成物を作製する方法についての説明書、(3)エネルギー代謝を向上させるためのイソフラボンの使用方法についての説明書、(4)健康なエネルギー代謝を促進及び維持するためのイソフラボンの使用方法についての説明書、(5)エネルギー代謝の低下又は不足を引き起こす状態を予防又は治療するためのイソフラボンの使用方法についての説明書、(6)動物によるエネルギー摂取量を減少させることなく前記動物の過剰な体脂肪の蓄積を予防するためのイソフラボンの使用方法についての説明書、(7)前記キット構成要素を調製又は合わせて、動物への投与に適した組成物を作製するための用具、(8)動物のエネルギー代謝の向上に有用な1つ又は複数のプロバイオティクス、及び(9)前記合わされた又は調製されたキット構成要素を動物に投与するためのデバイスのうち1つ又は複数とを備えるキット。
【請求項27】
前記イソフラボンがサシェに入っている、請求項26に記載のキット。
【請求項28】
イソフラボンと、動物による摂取に適した1つ又は複数の成分を備える、請求項26に記載のキット。
【請求項29】
イソフラボンと、動物における、エネルギー代謝を向上させ、健康なエネルギー代謝を促進及び維持し、又は前記動物によるエネルギー摂取量を減少させることなく過剰な体脂肪の蓄積を予防するために有用な組成物を作製するための前記成分とを合わせる方法についての説明書を更に備える、請求項28に記載のキット。
【請求項30】
エネルギー代謝を向上させ、健康なエネルギー代謝を促進し、健康なエネルギー代謝を維持し、エネルギー代謝の低下若しくは不足を引き起こす状態を予防し、エネルギー代謝の低下若しくは不足を引き起こす状態を治療し、又は、動物によるエネルギー摂取量を減少させることなく前記動物の過剰な体脂肪の蓄積を予防するための医薬を調製するためのイソフラボンの使用。
【請求項31】
前記イソフラボンが、アグリコン、グルコシド、アセチルグルコシド及びマロニルグルコシドの形態のイソフラボンからなる群から選択される、請求項19に記載の方法。
【請求項32】
前記イソフラボンが、ビオカニンA、ダイゼイン、ダイジン、グリシテイン、ホルモノネチン、エクオール、ゲニステイン、イリロン、ルテオン、プルネチン、プラテンセイン及びグリシチンからなる群から選択される、請求項19に記載の方法。
【請求項33】
前記イソフラボンが、約5mg〜約5000mgの量で前記動物に投与される、請求項19に記載の方法。
【請求項34】
前記イソフラボンが定期的に前記動物に投与される、請求項19に記載の方法。
【請求項35】
前記イソフラボンが、約0.001〜約10g/kg/日の量で前記動物に投与される、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記動物が、エネルギー代謝の低下又は不足を引き起こす状態に罹患している、請求項19に記載の方法。
【請求項37】
前記動物が高齢の動物である、請求項19に記載の方法。
【請求項38】
前記動物が、更年期又はポストアンドロポーズの動物である、請求項19に記載の方法。
【請求項39】
前記イソフラボンが栄養補助食品として投与される、請求項19に記載の方法。
【請求項40】
前記イソフラボンが食品組成物の形で投与される、請求項19に記載の方法。
【請求項41】
前記食品組成物が、前記動物のための完全でバランスのとれた栄養を供給するように調合される、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記動物が伴侶動物である、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記動物が高齢の動物である、請求項41に記載の方法。
【請求項44】
前記動物が、更年期又はポストアンドロポーズの動物である、請求項41に記載の方法。
【請求項45】
前記動物がイヌ又はネコである、請求項41に記載の方法。
【請求項46】
前記動物が、卵巣摘出又は去勢された動物である、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
1つ又は複数のイソフラボンを、エネルギー代謝の向上に有用な1つ又は複数のプロバイオティクスと共に投与するステップを更に含む、請求項19に記載の方法。
【請求項48】
前記イソフラボンが、アグリコン、グルコシド、アセチルグルコシド及びマロニルグルコシドの形態のイソフラボンからなる群から選択される、請求項20に記載の方法。
【請求項49】
前記イソフラボンが、ビオカニンA、ダイゼイン、ダイジン、グリシテイン、ホルモノネチン、エクオール、ゲニステイン、イリロン、ルテオン、プルネチン、プラテンセイン及びグリシチンからなる群から選択される、請求項20に記載の方法。
【請求項50】
前記イソフラボンが、約5mg〜約5000mgの量で前記動物に投与される、請求項20に記載の方法。
【請求項51】
前記イソフラボンが定期的に前記動物に投与される、請求項20に記載の方法。
【請求項52】
前記イソフラボンが、約0.001〜約10g/kg/日の量で前記動物に投与される、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記動物が、エネルギー代謝の低下又は不足を引き起こす状態に罹患している、請求項20に記載の方法。
【請求項54】
前記動物が高齢の動物である、請求項20に記載の方法。
【請求項55】
前記動物が、更年期又はポストアンドロポーズの動物である、請求項20に記載の方法。
【請求項56】
前記イソフラボンが栄養補助食品として投与される、請求項20に記載の方法。
【請求項57】
前記イソフラボンが食品組成物の形で投与される、請求項20に記載の方法。
【請求項58】
前記食品組成物が、前記動物のための完全でバランスのとれた栄養を供給するように調合される、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記動物が伴侶動物である、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
前記動物が高齢の動物である、請求項58に記載の方法。
【請求項61】
前記動物が、更年期又はポストアンドロポーズの動物である、請求項58に記載の方法。
【請求項62】
前記動物がイヌ又はネコである、請求項58に記載の方法。
【請求項63】
前記動物が、卵巣摘出又は去勢された動物である、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
1つ又は複数のイソフラボンを、エネルギー代謝の向上に有用な1つ又は複数のプロバイオティクスと共に投与するステップを更に含む、請求項20に記載の方法。
【請求項65】
前記状態が甲状腺機能低下症である、請求項20に記載の方法。
【請求項66】
前記状態が、エネルギー代謝を低下させる薬物又は同様の化合物により引き起こされる状態である、請求項20に記載の方法。
【請求項67】
前記状態が、遺伝性の代謝障害により引き起こされる状態である、請求項20に記載の方法。
【請求項68】
動物の健康又はウェルネスを促進する方法であって、健康又はウェルネスを促進する量の1つ又は複数のイソフラボンを動物に投与するステップを含む方法。
【請求項69】
動物の生涯の全盛期を延長する方法であって、1つ又は複数のイソフラボンを、前記動物にとっての全盛期の延長に有効な量で前記動物に投与するステップを含む方法。

【公表番号】特表2012−504554(P2012−504554A)
【公表日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−522982(P2011−522982)
【出願日】平成21年8月10日(2009.8.10)
【国際出願番号】PCT/US2009/004584
【国際公開番号】WO2010/019212
【国際公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【出願人】(599132904)ネステク ソシエテ アノニム (637)
【Fターム(参考)】