説明

エネルギー線硬化樹脂組成物

【課題】 従来のエネルギー線硬化樹脂よりも極めて硬化能力が高く、かつ、簡便で設計自由度も高い、高硬化性エネルギー線硬化樹脂組成物を提供する。
【解決手段】 光重合性樹脂成分として分子構造に環状エーテル構造を有するエポキシ樹脂を含み、エネルギー線の照射によって該光重合性樹脂成分の硬化を可能にする光重合開始剤成分と、前記光重合性樹脂成分を常温硬化又は加熱硬化させるのに用いる硬化剤成分とを含み、前記光重合開始剤成分として、特定の鉄−アレン系化合物を含み、前記硬化剤成分が酸無水物であり、該硬化剤成分と反応可能な光重合性樹脂成分1molに対し、該硬化剤成分が0.1〜1.4molの比率であるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
樹脂成分を含有し、UV(紫外線)、EB(電子線)、赤外線、X線、可視光線、アルゴン,CO2もしくはエキシマ等のレーザー、太陽光線、および、放射や輻射等の熱線等といったエネルギー線によって硬化可能な組成物、いわゆるエネルギー線硬化樹脂組成物において、高硬化性のエネルギー線硬化樹脂組成物に関する。特に、エネルギー線硬化樹脂組成物をもとにこの硬化性を向上させた樹脂組成物、及びかかる硬化能力の向上した組成物の製法等に関する。
ここで、上記エネルギー線硬化樹脂組成物は、使用される光増感剤、光鋭感剤、反応性希釈剤、その他充填材や添加剤等に関係なく有効であり、また、光重合開始剤成分に適切なもの(例えば光・熱重合開始剤や連鎖硬化型光重合開始剤成分)を用いることで、充填材や添加剤の形状やUV遮蔽性の有無、硬化物の膜厚や形状に関係なく有効であり、利用分野も一般成形材や注型材の他に、ペースト材、複合材、砥石材、接着剤、封止材、ワニス、塗料、インキ、トナー、コーティグ材等、硬化樹脂が対応可能な多種分野に適用可能である。
【背景技術】
【0002】
近年、様々な分野で、低コスト化、易成形化、加工性向上、生産性向上、作業性向上、施工性向上、省エネルギー化、省スペース化、安全性向上、環境保全性向上等を考え、UV硬化に代表されるエネルギー線硬化という特徴をもつエネルギー線硬化樹脂の適用が検討されているが、適用を妨げる要因としてエネルギー線硬化の能力不足があげられる。UV硬化樹脂に代表されるエネルギー線硬化樹脂は、一定量以上のエネルギー線が照射された部位のみを硬化するという特徴を有し、また、UVに代表されるエネルギー線は、樹脂を透過する過程で減衰するという特徴を有するため、エネルギー線硬化という現象は、樹脂自体の硬化能力、エネルギー線の強度、照射時間、減衰特性等に大きく影響されるという特徴を有する。今後、この技術の利用拡大や様々な分野へ適用を図っていくためには、高い硬化能力が求められる場合が多々あるが、従来、エネルギー線硬化能力を向上させるために行ってきた方法としては、光開始剤の高性能化、照射するエネルギー線の強度UP、照射時間増大、エネルギー線の種類の変更等が挙げられる。
【0003】
しかしながら、上記の方法を採用する場合、樹脂組成の側では、開始剤の開発に時間と費用がかかる、あるいは、樹脂組成物が高価等の問題があった。また、エネルギー線照射装置・設備の側では、装置の大型化、消費エネルギーの増大、ランニングコスト増大、生産性の低下、線源の特殊化、装置・設備が高価、安全性の低下等の問題があった。このため、エネルギー線硬化の利点の消失、トータルコストの増大等の問題が解消されなければ、結果的に上記方法自体が利用・適用が困難な状況になっていた。例えば、一般的なエネルギー線硬化樹脂の硬化膜厚は有効なエネルギー線の到達する表層数μm〜mmで、エネルギー線の透過距離が長くなると有効なエネルギー線が届かないためそれ以上は未硬化である。硬化能力の向上を考えた場合、効果の大小を別にすれば、樹脂組成物の変更、照射するエネルギー線の強度UP、線源の変更等、が考えられるが、ここでも前述の問題点が障害になってくる。従って、これまでのエネルギー線硬化の利用分野は、フォトレジスト、コーティング、塗料、接着剤、ワニス等の限定された領域が中心であった。
【0004】
エネルギー線硬化能力を向上させた代表的な例としては、高UV硬化性樹脂(三菱レイヨン株式会社、活性エネルギー線硬化性組成物、特許文献1:特開平8−283388号公報)やUV・加熱併用硬化型樹脂(旭電化工業株式会社:オプトマーKSシリーズ、日立化成工業株式会社:ラデキュア、東洋紡績:UE樹脂、特許文献2:特公昭61−38023号公報等)等がある。しかし、高UV硬化性樹脂に代表されるこれまでの高硬化性エネルギー線硬化樹脂は、エネルギー線硬化に有効な新規光重合性開始剤の開発か、あるいはこれより例は少ないが新規光重合性オリゴマーの開発によるものであり、前述の問題点を内包しており、且つ、用途に適切な組成を容易に得ることが可能とは言い難い状況であった。また、UV・加熱併用硬化型樹脂はより幅広い硬化条件を備えているという特徴を有する反面、これまでの高硬化性エネルギー線硬化樹脂が有する前述の問題点はそのままであり、更には、加熱プロセスの必要性から加熱装置および設備が必要となるため、装置および設備の方面でもエネルギー線硬化の利点を損なっていた。
【特許文献1】特開平8−283388号公報
【特許文献2】特公昭61−38023号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明者らは、上記した従来エネルギー線硬化性樹脂の欠点や硬化能力向上の必要性、および従来の高硬化性エネルギー線硬化樹脂の欠点や硬化能力向上方法の欠点に鑑み、新規な高硬化性エネルギー線硬化樹脂組成物について鋭意研究した。その結果、本発明者らは、光重合性樹脂成分および光重合開始剤成分に加えて、該光重合性樹脂成分をエネルギー線照射以外の方法で硬化させる硬化剤成分を含む新規な高硬化性エネルギー線硬化樹脂組成物、さらに、エネルギー線照射以外の方法で硬化させる際に硬化を促進する硬化促進剤成分を含むエネルギー線硬化樹脂組成物によれば、従来のエネルギー線硬化樹脂よりも硬化能力が高く、かつ、簡便で設計自由度も高く、エネルギー線硬化樹脂が有していた前述の問題点を解決できることを見いだした。本発明は、かかる見地より完成されたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、すなわち、本発明の目的は、下記の構成を有することによって、効果的に達成することができる。
(1)光重合性オリゴマー又は光重合性モノマーのようなエネルギー線照射によって硬化可能な光重合性樹脂成分と、エネルギー線を照射した際に該光重合性樹脂成分の硬化を可能にする光重合開始剤成分と、該光重合性樹脂成分のうち少なくとも1種を常温硬化もしくは加熱硬化のようなエネルギー線硬化以外の方法で硬化させるのに利用可能な硬化剤成分と、を含むことを特徴とするエネルギー線硬化樹脂組成物、
(2)前記光重合性樹脂成分の少なくとも1種と前記硬化剤成分とを、常温硬化もしくは熱硬化のようなエネルギー線照射以外の方法で硬化させる際に、該硬化を促進する硬化促進剤成分を含むことを特徴とする上記(1)に記載のエネルギー線硬化樹脂組成物、
【0007】
(3)前記光重合性樹脂成分として、分子構造に環状エーテル構造を有するエポキシ樹脂成分を含むことを特徴とする上記(1)又は(2)に記載のエネルギー線硬化樹脂組成物、(4)前記硬化剤成分として、酸無水物、又はジカルボン酸若しくはそのエステル化物のような酸無水物の誘導体を含むことを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載のエネルギー線硬化樹脂組成物、(5)前記硬化剤成分として、1価又は多価のアルコール類を含むことを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載のエネルギー線硬化樹脂組成物、
【0008】
(6)前記硬化剤成分もしくは前記硬化促進剤成分として、酸無水物又はその誘導体と、1価又は多価のアルコール類と、を含むことを特徴とする上記(2)又は(3)に記載のエネルギー線硬化樹脂組成物、
(7)前記硬化剤成分もしくは前記硬化促進剤成分が、前記エポキシ樹脂成分と反応可能であり、且つ、分子構造内に窒素原子を有しない化合物からなることを特徴とする上記(3)〜(6)のいずれかに記載のエネルギー線硬化樹脂組成物、
【0009】
(8)前記光重合性樹脂成分として、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレートを含むことを特徴とする上記(3)〜(7)のいずれかに記載のエネルギー線硬化樹脂組成物、
(9)前記酸無水物又はその誘導体として、マレイン酸無水物又はその誘導体を含むことを特徴とする上記(4)又は(6)〜(8)のいずれかに記載のエネルギー線硬化樹脂組成物、
(10)前記アルコール類として、ポリエチレングリコールを含むことを特徴とする上記(5)〜(8)のいずれかに記載のエネルギー線硬化樹脂組成物、
【0010】
(11)硬化剤成分と反応可能な前記光重合性樹脂成分1molに対し、前記硬化剤成分を0.1mol〜1.4molの比率で含有することを特徴とする上記(1)〜(10)のいずれかに記載のエネルギー線硬化樹脂組成物、
(12)前記硬化剤成分1molに対し、前記硬化促進剤成分を0.04mol〜0.6molの比率で含有することを特徴とする上記(2)、(3)又は(6)〜(11)のいずれかに記載のエネルギー線硬化樹脂組成物、
【0011】
(13)前記光重合開始剤成分として、カチオン系光重合開始剤成分を含むことを特徴とする上記(1)〜(12)のいずれかに記載のエネルギー線硬化樹脂組成物、(14)前記光重合開始剤成分として、下記一般式(I)、(II)又は(III)
【0012】
【化1】

@0035
【0013】
で示される鉄−アレン系化合物を含むことを特徴とする上記(1)〜(13)のいずれかに記載のエネルギー線硬化樹脂組成物、
(15)前記光重合開始剤成分として、光および熱の双方で重合を開始させることができる光・熱重合開始剤を含むことを特徴とする上記(1)〜(14)のいずれかに記載のエネルギー線硬化樹脂組成物、
(16)前記光重合開始剤成分として、下記の一般式(IV),(IV’)又は(V)
【0014】
【化2】

@0036
【0015】
で示されるスルホニウム塩を含むことを特徴とする上記(1)〜(15)のいずれかに記載のエネルギー線硬化樹脂組成物、
(17)前記光重合開始剤成分が、光重合開始剤と光・熱重合開始剤とを含む2元系以上からなる重合開始剤成分を含むことを特徴とする上記(1)〜(16)のいずれかに記載のエネルギー線硬化樹脂組成物、
【0016】
(18)前記2元系以上からなる重合開始剤成分が、光重合開始剤として、アリール系スルホニウム塩類又は上記一般式(I)、(II)若しくは(III)で示される鉄−アレン系化合物の少なくとも1種を含み、光・熱重合開始剤として、上記一般式(IV)若しくは(V)で示されるスルホニウム塩の少なくとも1種を含むことを特徴とする上記(17)記載のエネルギー線硬化樹脂組成物、
(19)前記2元系以上からなる重合開始剤成分が、光・熱重合開始剤を重量比10〜100重量%の割合で含有することを特徴とする上記(17)又は(18)に記載のエネルギー線硬化樹脂組成物、並びに、
(20)前記光重合開始剤成分以外の成分の総重量100重量部に対し、前記光重合開始剤成分が0.1重量部〜6.0重量部の比率であることを特徴とする上記(1)〜(19)のいずれかに記載のエネルギー線硬化樹脂組成物、である。
【0017】
上記樹脂組成物は、上記(1)〜(20)の構成を有することによって高い硬化特性を示すが、これらの特徴(効果)は上記(1)〜(20)の構成を有することで、他のあらゆる全てのエネルギー線硬化樹脂組成物にも応用可能である。一般的にエネルギー線硬化樹脂組成物は、光硬化性樹脂成分と光重合開始剤成分とを含む。従って、上記(1)〜(20)において、エネルギー線硬化樹脂組成物に含まれている成分(例えば光重合性樹脂成分と光重合開始剤成分)をエネルギー線硬化樹脂組成物として置き換えて、上記(1)〜(20)を満足させることで、他のエネルギー線硬化樹脂組成物に同様の特徴を与えること(例えば高い硬化特性の付与)が可能となる。具体的には例えば、(i)エネルギー線硬化樹脂組成物に、該エネルギー線硬化樹脂組成物の光重合性樹脂成分の少なくとも1種を常温硬化もしくは加熱硬化のようなエネルギー線照射以外の方法で硬化させるのに用いることができる硬化剤成分を、該エネルギー線硬化樹脂組成物に加えることで硬化能力が向上し、(ii)エネルギー線硬化樹脂組成物に、上記(i)に記載の硬化剤成分と、該エネルギー線硬化樹脂組成物の光重合性樹脂成分の少なくとも1種と該硬化剤成分とを、常温硬化もしくは加熱硬化のようなエネルギー線照射以外の方法で硬化させる際に、該硬化を促進させる硬化促進剤成分とを、該エネルギー線硬化樹脂組成物に加えることで硬化能力が向上し、(iii)エネルギー線硬化樹脂組成物が、分子構造に環状エーテル構造を有するエポキシ樹脂成分を含む場合に、該エポキシ樹脂成分の少なくとも1種を常温硬化もしくは加熱硬化のようなエネルギー線照射以外の方法で硬化させる際に用いる硬化剤成分を、該エネルギー線硬化樹脂組成物に加えることで硬化能力が向上し、更に、該エポキシ樹脂成分の少なくとも1種と該硬化剤成分とを硬化させる際に該硬化を促進させる硬化促進剤成分を、該エネルギー線硬化樹脂組成物に加えることで硬化能力が向上し、
【0018】
(iv)上記(i)〜(iii)に記載の硬化剤成分が酸無水物又はその誘導体を含むことで硬化能力が向上し、(v)上記(i)〜(iii)に記載の硬化剤成分が1価又は多価のアルコール類を含むことで硬化能力が向上し、(vi)上記(ii)又は(iii)に記載の硬化剤成分もしくは硬化促進剤成分として、酸無水物又はその誘導体と、1価又は多価のアルコール類と、を含むことで硬化能力が向上し、(vii)上記(iii)〜(vi)に記載の硬化剤成分もしくは硬化促進剤成分が、エポキシ樹脂成分と反応可能であり、且つ、分子構造内に窒素原子を有しない化合物からなることで硬化能力が向上し、
【0019】
(viii)上記(iv)又は(vi)に記載の酸無水物又はその誘導体として、マレイン酸無水物又はその誘導体を含むことで硬化能力が向上し、(ix)上記(v)又は(vi)に記載のアルコール類として、ポリエチレングリコールを含むのでエネルギー線硬化能力が向上し、(x)エネルギー線硬化樹脂組成物に、上記(i)〜(ix)に加えて、光・熱重合開始剤を該エネルギー線硬化樹脂組成物に加えることで硬化能力が向上する。
【0020】
上記組成物は、以下のような用途がある。
(21)上記(1)〜(20)のいずれかに記載のエネルギー線硬化樹脂組成物を、エネルギー線照射もしくは常温硬化もしくは熱硬化等の何らかの硬化手段により硬化させたことを特徴とするエネルギー線硬化樹脂成形体(主として本発明に係るエネルギー線硬化樹脂成形体であり、樹脂硬化物、樹脂製造物等を含む)、
(22)上記(1)〜(20)のいずれかに記載のエネルギー線硬化樹脂組成物を含有することを特徴とするペースト材料(磁気ペースト、導電ペースト、ハンダ、金属ペースト、無機ペースト、(薄型ディスプレイパネル等の)リブペースト等を含む)、
(23)上記(1)〜(20)のいずれかに記載のエネルギー線硬化樹脂組成物を含有することを特徴とする複合成形材料(成形材料、注型材料、フィラー(無機フィラー、有機フィラー、金属フィラー等)充填材料、繊維(ガラス繊維、炭素繊維、無機繊維、有機繊維、金属繊維等)強化複合材料、砥石材料(砥粒結着剤)等を含む)、
【0021】
(24)上記(1)〜(20)のいずれかに記載のエネルギー線硬化樹脂組成物を含有することを特徴とする接着剤(封止材等を含む)、並びに、(25)上記(1)〜(20)のいずれかに記載のエネルギー線硬化樹脂組成物を含有することを特徴とするコーティング材(ワニス(絶縁ワニス等)、封止材(ダイオード、IC、コンデンサ、電子基盤等)、塗料、トナー又はインキ等を含む)、である。
【0022】
すなわち上記要約すると、本明細書で説明される発明は、エネルギー線硬化樹脂組成物の必須成分である光重合性樹脂成分および光重合性開始剤成分に加え、該光重合性樹脂成分の少なくとも1種を常温硬化もしくは加熱硬化のようなエネルギー線硬化以外の硬化方法で硬化させる際に利用可能な硬化剤成分を必須成分として含む高硬化性エネルギー線硬化樹脂組成物、また、この樹脂組成に加え、常温硬化もしくは熱硬化のようなエネルギー線硬化以外の硬化方法で硬化させる際に、その硬化反応の促進を可能とする成分である硬化促進剤成分を含む高硬化性エネルギー線硬化樹脂組成物、並びに、エネルギー線硬化樹脂組成物に、該エネルギー線硬化樹脂組成物の樹脂成分の少なくとも1種を常温硬化もしくは熱硬化のようなエネルギー線照射以外の方法で硬化させる際に利用可能な硬化剤成分や、該樹脂成分と該硬化剤成分の硬化反応の促進を可能とする成分である硬化促進剤成分を加えることで、エネルギー線硬化樹脂組成物のエネルギー線硬化能力を向上させる方法、さらには、これら特定のエネルギー線硬化樹脂組成物を用いた樹脂成形体や適用材料(ペースト材、複合材料、接着剤、コーティング材等)、および適用可能材料に関するものである。そして、特に光重合性樹脂成分としては物性に優れ硬化剤種類の豊富なエポキシ樹脂、硬化剤成分としてはマレイン酸無水物に代表される酸無水物又は酸無水物誘導体、および、硬化促進剤成分としてはポリエチレングリコールに代表される1価又は多価のアルコール類、を含むことが好ましい。また、本発明は硬化剤成分の組成比率、硬化促進剤成分の組成比率に関するものである。
【0023】
更に、光重合開始剤成分としては、特に好ましくはカチオン系光重合開始剤、光・熱重合開始剤、光重合開始剤と光・熱重合開始剤との2元系以上からなる光重合開始剤系を用いるものである。特に、上記一般式(I)ないし一般式(III)の鉄−アレン化合物タイプ、ホスホニウム塩タイプ、スルホニウム塩タイプや、上記一般式(IV)ないし一般式(V)の光・熱重合開始剤や、上記一般式(I)ないし一般式(III)の鉄−アレン化合物タイプ、スルホニウム塩タイプ、アリール系スルホニウム塩タイプ(トリアリールスルホニウム塩)の少なくとも1種と、一般式(IV)ないし一般式(V)の光・熱重合開始剤の少なくとも1種とを含む2元系以上からなる光重合開始剤を含むものが好適に用いられる。そして、本発明は上記2元系以上からなる光重合開始剤系の組成比率に関するものでもある。
また、本発明は、上記特定の成分を樹脂組成の構成成分に加えることによって、エネルギー線硬化樹脂組成物の硬化能力を一層向上させるものであり、該樹脂組成物を用いた樹脂組成物の硬化物、成形物、製造物、及び該樹脂組成物やエネルギー線硬化法による製造等の利用方法に関するものである。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、従来のエネルギー線硬化樹脂よりも極めて硬化能力が高く、かつ、簡便で設計自由度も高いエネルギー線硬化樹脂を使用し、様々な硬化物、成形物、製造物を得ることができる。なお、用いたエネルギー線硬化樹脂は、成形材料、繊維強化複合材料、炭素繊維強化複合材料、その他複合材料、接着剤、封止材、ワニス、塗料又はコーティング材、インキ又はトナー等にも利用可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明者らはまず、樹脂組成物の開発に時間と費用がかかる、樹脂組成物が高価、用途毎に容易に適切な樹脂組成物を得難い、という従来の高硬化性エネルギー線硬化樹脂組成物の欠点は、新規光重合性開始剤の開発やこれに関連する光増感剤、光鋭感剤の開発、及び新規光重合性オリゴマー等の開発が原因であることと、光硬化機構自体は従来と同様の硬化機構であること、硬化能力の向上を装置に負担させるとエネルギー線硬化の利点を損ないやすいことに着目し、光重合開始剤、光増感剤、光鋭感剤、光重合性オリゴマー等の従来開発対象成分以外の樹脂組成成分による硬化能力の向上、樹脂組成に新規成分の組合せによる硬化能力の向上、従来光硬化機構以外の硬化能力の付与、安価な硬化能力向上組成、用途毎に容易な樹脂特性制御、について鋭意研究した結果、以下に示す従来エネルギー線硬化樹脂よりも硬化能力が高く、樹脂組成物が安価で、容易に樹脂特性制御可能で、従来高硬化性エネルギー線硬化樹脂のかかる問題点を解決した新規な高硬化性エネルギー線硬化樹脂組成物、及びかかる簡便で設計自由度が高いエネルギー線硬化能力の向上方法を開発した。
【0026】
ここでエネルギー線としては紫外線のほか電子線、X線、赤外線、太陽光線、可視光線、各種レーザー(エキシマレーザー、CO2レーザー、アルゴンレーザー等)、熱線(放射や輻射等)等が挙げられる。また、開発した高硬化性エネルギー線硬化樹脂組成物は硬化剤成分を含有するという樹脂組成の特徴が示すように、付与するエネルギーとしては光や電磁波の他に、熱等でも硬化可能であり、更に、かかる樹脂組成の特徴から予め樹脂組成物を硬化しない程度に加温しておくことはエネルギー線硬化の特性を向上させるのに有効である。
【0027】
まず、高硬化性エネルギー線硬化樹脂組成物として、光重合性オリゴマー又は光重合性モノマーといったようなエネルギー線硬化に使用可能ないわゆる光重合性樹脂成分と、該樹脂成分のエネルギー線硬化を可能とする光重合開始剤成分と、該樹脂成分の少なくとも1種を常温硬化や加熱硬化といったエネルギー線硬化以外の硬化方法で硬化させる際に利用可能な硬化剤成分と、を必須成分として含む高硬化性エネルギー線硬化樹脂組成物、並びに、該高硬化性エネルギー線硬化樹脂組成に加え、該樹脂成分と該硬化剤成分を熱硬化等で硬化させる際にその硬化反応の促進を可能とする硬化促進剤成分を含むことを特徴とする高硬化性エネルギー線硬化樹脂組成物、エネルギー線硬化樹脂組成物(例えば既存のエネルギー線硬化樹脂組成物や関連材料、新規エネルギー線硬化樹脂組成物等)に、該エネルギー線硬化樹脂の樹脂成分特に光重合性樹脂成分の少なくとも1種を常温硬化もしくは熱硬化等のようなエネルギー線照射以外の方法で硬化させる際に利用可能な硬化剤成分を必須成分として加えてエネルギー線硬化樹脂組成物の硬化能力を向上させる方法、並びに、該樹脂成分と該硬化剤成分を熱硬化等で硬化させる際にその硬化反応の促進を可能とする硬化促進剤成分をエネルギー線硬化樹脂組成に加えてエネルギー線硬化樹脂組成物の硬化能力を向上させる方法、を開発した。これら本発明においては、硬化樹脂組成物(関連材料等含む)に適切な光開始剤成分を加えてエネルギー線硬化特性を持たせたものにも有効である。また、以上の組成物により、従来エネルギー線硬化樹脂の物性制御方法の中心であった光重合性樹脂成分と充填材や添加剤等による材料設計に、硬化剤や硬化促進剤による物性制御という熱硬化で一般的な材料設計の手法を複合可能であり、材料設計手法の幅が広がり且つ容易となる。
【0028】
上記各成分を有するエネルギー線硬化樹脂組成物の硬化能力が向上する理由としては次のように考えられる。まず、エネルギー線を樹脂組成物に照射すると光重合開始剤成分により光重合性樹脂成分が硬化し、この際硬化発熱により熱を発散する。次に、この熱を受け光重合性樹脂成分と硬化剤成分との間で熱硬化が発生する。以上のようなエネルギー線硬化と熱硬化という異なる硬化機構がほぼ同時に機能し、場合によっては硬化不足を補填するため、本発明はエネルギー線硬化単体に比べ総合的な硬化能力が向上する。
【0029】
ここで、光重合性樹脂成分としては、例えば、エポキシアクリレート、エポキシ化油アクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、ビニル/アクリレート、ポリスチリルエチルメタクリレート等に代表される各種アクリレート、脂環型エポキシ、グリシジルエーテル型エポキシ、ビスフェノール型エポキシ、ノボラック型エポキシ等に代表される各種エポキシ、不飽和ポリエステル、ポリエン/チオール、シリコン、ポリブタジエン、ビニルエーテル化合物、エポキシ化ポリオレフィン等の各種光重合性オリゴマーや、エポキシモノマー、アクリルモノマー、ビニルエーテル、環状エーテル等の各種光重合性モノマーが例示できるが、これに限定されるものではない。光重合開始剤成分としては、ラジカル系光重合開始剤、カチオン系光重合開始剤、アニオン系光重合開始剤等、対象とする光重合性樹脂成分で適性が異なるが、例えば、下記表1に示すようなジアゾニウム塩タイプの化合物、表2に示すようなヨードニウム塩タイプの化合物、下記一般式
【0030】
【化3】

@0037
【0031】
に示されるようなピリジニウム塩タイプの化合物、特開平6−157624号公報、特開平7−82283号公報に示されるようなホスホニウム塩タイプの化合物、後述の表3に示されるようなスルホニウム塩タイプの化合物、上記一般式(I)、(II)、(III)で示される鉄−アレン化合物タイプの化合物、スルホン酸エステルタイプの化合物、上記一般式(IV)、(V)で示される光・熱重合開始剤、後述の表4に示されるP1型光重合開始剤、及び後述の表5に示されるP2型光重合開始剤、Co−アミンmin錯体、O−アシルオキシム、ベンジルオキシカルボニル誘導体、ホルムアミド等の光塩基発生剤等が例示できるがこれに限定されるものではない。
【0032】
最近、カチオン系光重合開始剤のアニオンtetrakis(pentafluorophenyl)borateB(C654-というこれまでの代表的なもの(例えば六フッ化アンチモンSbF6-)に比べ性能がよいものが報告されており、これによる更なる性能UPも期待できる。これらの樹脂成分や光重合開始剤成分及び後述する充填材や添加剤の詳細については、著者 加藤清視「紫外線硬化システム」発行総合技術センター(平成元年2月28日)、編 高分子学会「第6巻 光機能材料」共立出版(株)(1991年6月15日)、講師 加藤清視「UV硬化における光開始剤の動向と選び方・使い方」講習会テキスト 主催 テクノフォーラム(株)(平成4年11月27日(金))、講師 角岡正弘「最近の光架橋システムの技術動向とその応用―光酸・塩基発生剤の化学とポリマー材料系での応用―」講習会テキスト 主催 企業研修協会(1996年9月17日(火))等の成書や文献に記載されているものを参考にできる。
【0033】
硬化剤成分は相手となる樹脂成分に対応して異なり、例えば光重合性樹脂成分が水酸基含有時にはエポキシ類、イソシアネート類等、エポキシ基含有時にはアミン類、酸無水物類、ポリオール類等が例示できるがこれに限定されるものではない。ここで重要なことは、必須成分としている硬化剤成分と光重合性樹脂成分の少なくとも1種との間で、常温硬化や加熱硬化といったエネルギー線硬化以外の硬化(化学反応)が可能な関係が成り立つことである。硬化剤成分、光重合性樹脂成分、および光開始剤成分は、それぞれ複数成分であっても良い。また、場合によっては、硬化剤成分と光重合性樹脂成分の位置関係を入れ替えて光重合性樹脂成分が硬化剤成分として位置付けられていても(通常組成物の主成分が樹脂成分で副成分が硬化剤成分であるが、これら逆転し、組成物の主成分が硬化剤成分で副成分が光重合性樹脂成分の様な場合(この際光開始剤成分は副成分と関連をもつことになる))上記関係が成り立つ以上、本発明によるところであるし、ある1種の光重合性樹脂成分の硬化剤成分が光重合性樹脂成分であっても何等問題ない。特に主剤成分と硬化剤成分の双方が光重合性樹脂成分の様な場合、主剤成分と硬化剤成分の少なくとも片方に適した光重合開始剤成分であれば良いことから選択幅が大きい等の利点をはじめ、幅広いエネルギー線硬化特性の材料設計が可能である。さらに、各必須成分からなる本発明の樹脂組成物にその他の成分が加わっていてもよく、例えば必須の硬化剤成分と無関係な他の光重合性樹脂成分やこれと関係がある光重合開始剤成分が加わっていてもよい。
【0034】
硬化促進剤成分も光重合性樹脂成分と硬化剤成分に対応して異なり、例えば、アミン類に対する1価又は多価のアルコール類、酸無水物等、酸無水物に対する1価又は多価のアルコール類、アミンが例示できるがこれに限定されるものではない。ここで重要なことは、必須成分とした硬化促進剤成分が、前述の必須成分とした硬化剤成分と光重合性樹脂成分の少なくとも1つとの間で起こりうる硬化反応(化学反応)を促進する機能を有することである。ここでは硬化剤成分の場合と同様に、他の成分や硬化促進剤成分がそれぞれ複数成分であっても良く、場合によっては、硬化促進剤成分が硬化剤成分や光重合性樹脂成分の機能を有する場合や、光重合開始剤成分が本発明で定義した硬化剤成分の機能を有する場合(この場合、別途硬化剤成分がなくても良い)等が考えられるが、いずれの場合も上記硬化反応促進機能を有している以上、本発明によるところである。一般的に、硬化剤成分としても硬化促進剤成分としても機能する成分(物質)同士の場合、該成分(物質)の位置付けは組成物中に含まれる含有量の割合によって区別される場合が多く、例えば前述の(6)を例にすれば、酸無水物等の割合が多い場合には、酸無水物等が硬化剤成分として作用し、アルコール類が硬化促進剤として作用する。一方、アルコール類の割合が多い場合には、アルコール類が硬化剤成分として作用し、酸無水物等が硬化促進剤として作用する。双方の量が多い場合には双方が両方の機能を有することとなる。加えて、硬化促進剤成分と硬化剤成分の双方が光重合性樹脂成分の少なくとも1つと反応可能な場合はより容易な硬化が期待できる。また、上記各成分からなる本発明樹脂組成物にその他の成分が加わっていてもよく、例えば硬化剤成分や硬化促進剤成分と無関係な他の光重合性樹脂成分や、これと関係がある光重合開始剤成分が加わっていてもよい。
【0035】
具体的な高硬化性エネルギー線硬化樹脂組成物の例としては、例えば、エポキシアクリレート(光重合性樹脂成分)、ラジカル系光重合開始剤(光重合開始剤成分)、酸無水物(硬化剤成分)およびポリオール(硬化促進剤成分)を含む樹脂組成物、エポキシアクリレートとエポキシ樹脂(光重合性樹脂成分)、ラジカル系光重合開始剤とカチオン系光重合開始剤(光重合開始剤成分)および酸無水物(硬化剤成分)を含む樹脂組成物、エポキシ樹脂(光重合性樹脂成分)、カチオン系光重合開始剤(光重合開始剤成分)、酸無水物(硬化剤成分)およびポリオール(硬化促進剤成分)を含む樹脂組成物、エポキシ樹脂(光重合性樹脂成分)、アニオン系光重合開始剤(光重合開始剤成分)、アミン類(硬化剤成分)および酸無水物(硬化促進剤成分)を含む樹脂組成物、等を挙げることができるが、これに限定されるものではない。以上の材料設計の注意点としては、樹脂組成物中の各種成分間で硬化阻害を発生させないこと、特に光重合開始剤成分と他成分との間で硬化阻害を発生させないことが重要であり、例えば、カチオン系光開始剤成分の硬化阻害物質であるアミン類は、カチオン系光開始剤成分を用いる際は使用を避けるべきである。
【0036】
【表1】

@0038
【0037】
【表2】

@0039
【0038】
【表3】

@0040
【0039】
【表4】

@0041
【0040】
【表5】

@0042
【0041】
特に、硬化剤成分や硬化促進剤成分の種類が豊富で、硬化物の物性が良好である点から光重合性樹脂成分としてはエポキシ樹脂成分が好ましく、特に3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレートが好ましい。また、特に硬化剤成分もしくは硬化促進剤成分としては、酸無水物又は酸無水物の誘導体、1価又は多価のアルコール類が好ましい。例えば、酸無水物としては表6に示す化合物、1価又は多価のアルコール類としてはフェノール、ノボラック、グリコール、アルコール、ポリオール等の化学構造中に水酸基を有する化合物が挙げられ、これらは特に前述のエポキシ樹脂成分の場合にも好ましい。
【0042】
【表6】

@0043
【0043】
光重合性樹脂成分としてエポキシ樹脂成分を用いた場合の硬化剤成分及び硬化促進剤成分としては、エポキシ基と反応可能な官能基(無水カルボン酸基、カルボン酸基、水酸基、アミン基、アミド基、ウレタン基、ウレア基、イソシアネート基、その他表7記載の官能基等)を有する化合物が考えられるが、一般的なものとしては、硬化剤成分としてアミン類、アミド類(ポリアミド)、酸無水物、フェノール類、等、硬化促進剤成分として酸無水物、ポリオール、アミン類等が例示できる。特に、酸無水物又は酸無水物の誘導体と、1価又は多価のアルコール類と、を成分とするものが好ましい。また、かかる成分の分子構造内に窒素原子を含まない化合物は、カチオン系光重合開始剤と組み合わせたときに硬化阻害を起こしにくいので材料設計をする上で好ましい。エポキシ樹脂成分及び硬化剤成分と硬化促進剤成分の種類や組合せ等の詳細については、編 垣内弘「エポキシ樹脂」発行 昭晃堂(株)、編著者 垣内弘「エポキシ樹脂―最近の進歩―」発行 昭晃堂(株)(1990年5月30日)等の成書を参考できる。
【0044】
特に、酸無水物としては価格、反応性、特性の点からマレイン酸無水物又はその誘導体が好ましく、特に3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレートと、マレイン酸無水物又はその誘導体と、カチオン系光重合開始剤と、を含む樹脂組成物が好ましい。また、特に、1価又は多価のアルコール類としては反応性制御、分子量制御、特性制御の点からポリエチレングリコールが好ましく、特に3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレートと、マレイン酸無水物又はその誘導体と、ポリエチレングリコールと、カチオン系光重合開始剤と、を含む樹脂組成物が好ましい。
【0045】
【表7】

@0044
【0046】
更に、樹脂組成物の組成比率としては、硬化剤成分と反応可能な樹脂成分1molに対し、硬化剤成分が0.1〜1.4molの比率であることが好ましく、特に、硬化剤成分と反応可能な樹脂成分1molに対し、硬化剤成分が0.3〜1.0molの比率であることが好ましい。熱硬化の場合、樹脂成分と硬化剤成分の割合はある程度化学量論的に決定でき、その範囲を超えた場合には良好な物性の硬化物を得ることが困難となる。一方、エネルギー線硬化の場合、光重合開始剤により樹脂成分単体で硬化が進行する。本発明はエネルギー線硬化と熱硬化の双方の特徴を有する。従って、硬化剤成分が上記範囲を外れて少なすぎると、本発明の特徴であるエネルギー線照射以外の硬化機構による硬化能力向上効果(エネルギー線硬化とその際の硬化発熱による熱硬化という異なる硬化機構のほぼ同時進行、並びに硬化不足解消等)が発揮されにくく、逆に多すぎると、相対的にエネルギー線硬化に必要な樹脂成分が少なくなるためエネルギー線硬化能力の低下や硬化発熱量の低下がおこり硬化特性が低下する。また、化学量論的な限度を超えて多い場合は良好な物性の硬化物を得ることが困難となる。また、硬化剤成分1molに対し、硬化促進剤成分が0.04〜0.6molの比率であることが好ましく、特に、硬化剤成分1molに対し、硬化促進剤成分が0.08〜0.4molの比率であることが好ましい。上記範囲を外れて少なすぎると硬化反応の促進効果を発揮できず、一方多すぎても適正量添加時以上の硬化反応促進効果は期待できず、かえって硬化反応の鈍化、エネルギー線硬化の阻害、硬化発熱量の浪費等を引き起こす点で好ましくない。
【0047】
必須成分とする光重合開始剤成分としては、特にカチオン系光重合開始剤が好ましく、特に上記一般式(I)、(II)、(III)で示される鉄−アレン系化合物は本発明の樹脂組成物に含まれると大きく硬化特性が向上するため好ましい。例えば、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレートと、マレイン酸無水物と、上記一般式(I)と、を含む樹脂組成物は太陽光で容易に硬化する程、硬化能力が向上し高硬化性を示す。また、光・熱重合開始剤を用いることも好ましく、特に上記一般式(IV),(IV’)又は(V)で示されるスルホニウム塩
は本発明の樹脂組成物に含まれると大きく硬化特性が向上し、且つ、従来2元系光重合開始剤を用いないと困難だった連鎖硬化反応が単一の重合開始剤でも可能となる。例えば、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレートと、マレイン酸無水物と、一般式(IV)等の化合物と、を含む樹脂組成物は、一般式(IV)等で示される化合物が約0.5wt%含有されているだけで連鎖硬化反応する程、硬化能力が向上し高硬化性を示す。
【0048】
更に、光重合開始剤と光・熱重合開始剤を成分とする2元系以上からなる光重合開始剤も好ましく、特にアリール系スルホニウム塩タイプもしくは上記一般式(I)、(II)、(III)で示される鉄−アレン系化合物の少なくとも1種と、上記一般式(IV),(IV’)又は(V)で示されるスルホニウム塩の少なくとも1種と、を含んで
なる2元系以上からなる光重合開始剤は本発明樹脂組成物に用いると大きく硬化特性が向上する。例えば、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレートと、マレイン酸無水物と、上記2元系以上からなる光重合開始剤と、を含んでなる樹脂組成物は硬化能力が向上し高硬化性を示すため、容易に連鎖硬化反応する。また、光重合開始剤、光・熱重合開始剤、上記2元系以上から成る重合開始剤成分等に、適当な熱重合開始剤成分(例えば、プレニル・テトラメチレンスルホニウム・ヘキサフルオロアンチモネート等)を加えた光重合開始剤成分も好ましく、熱硬化能力の向上からより容易な硬化が期待できる。
【0049】
更に、樹脂組成物の組成比率としては、光重合開始剤成分以外の他成分の総重量100重量部に対し、光重合開始剤成分が0.1〜6.0重量部の比率であることが好ましく、特に0.5〜3.0重量部が好ましい。光重合開始剤成分の割合が0.1重量部未満ではその効果が殆どなく、全体に対する量が少ないためそのものが機能しにくい。一方、6.0重量部を超えても光硬化機能そのものは変わらない。また、2元系以上からなる光重合開始を構成する光・熱重合開始剤光の重量比が10〜100wt%であることが好ましく、特に20〜80wt%であることが好ましい。従来の2元系以上からなる光重合開始剤では、光・熱重合開始剤光の重量比50〜80wt%が好ましかったが、本発明では上記比率においても連鎖硬化の機能を発揮する。但し、重量比が少ないと連鎖硬化の特徴を発揮しにくく、重量比が大きいと連鎖硬化を制御しにくい傾向にある。
【0050】
更には、上記の樹脂組成物に硬化可能な範囲で添加することのできる添加剤としては、エネルギー線遮蔽性物質(例えば炭素及び炭素繊維(短繊維、長繊維、連続繊維、カーボンクロス等)、無機フィラー、金属粉等)及び各種フィラー、有機成分、光増感剤、反応性希釈剤、光鋭感剤、増酸剤等慣用される添加剤を1種以上添加することができるし、本発明樹脂組成物及び硬化能力向上方法は、様々な硬化物、成形物、製造物、例えば、成形材料、注型材料、フィラー充填材量、繊維強化複合材料、炭素繊維強化複合材料、その他複合材料、ペースト材、接着剤、封止材、ワニス、塗料又はコーティング材、インキ又はトナー等に利用可能である。
【0051】
次に、本発明に係るエネルギー線硬化樹脂組成物の製造方法について説明する。
本発明の樹脂組成物の製造方法としては、例えば図1に示す製造フロー1、あるいは図2に示す製造フロー2〜4を挙げることができるが、本発明の樹脂組成物の製法はこれらに限定されるものではない。つまり、最終的に本発明の必須成分を含む樹脂組成物であれば良いので、例えば製造する樹脂組成物の成分や特徴によって、温度、攪拌時間、遮光の有無、投入順序等は適宜定めることができる。硬化剤成分、硬化促進剤成分、光重合開始剤成分の各成分と、光重合性樹脂成分との反応性が高い場合、特に温度に対する反応性が高く常温で短時間に硬化が可能な場合には、反応が進行しない様に考慮した低温での攪拌が好ましい。また、固体や溶解しにくい成分を攪拌する場合には、長時間の攪拌や予め溶媒等に溶解させて液状にしておく等の処置が好ましい。製造環境で容易に光重合開始剤成分が光反応可能であったり、光重合開始剤成分が投入されてから製造終了までに長時間を要する場合には、遮光や投入順序の入れ替えが有効となる。また、投入順序によっては硬化反応が開始及び進行したり、副反応が発生したりすることもあるため、この場合も投入順序の入れ替えが有効である。本発明で採用する樹脂組成物は高硬化性であり、熱及びエネルギー線双方で硬化可能なため、硬化反応が起きないように製造条件を決定することが重要となる。
【0052】
以下に、図1の製造フロー1をもとに製造方法の一例を説明する。本発明で用いる樹脂組成物の製造に用いる各成分を、成分A、成分B、成分C、成分D、成分Eおよび成分Fとして表し、成分Aが光重合性樹脂成分、成分Bが硬化剤成分、成分Cが光重合開始剤成分、成分Dが硬化促進剤成分、成分Eが光増感剤、光鋭感剤、安定化剤等のその他添加剤成分、成分Fが反応性希釈剤、希釈剤、顔料、フィラー等のその他成分を示す。この内、成分A〜Cが必須成分であることから、製造フロー1を例にすれば、混合成分2以降の各混合成分は全て本発明の樹脂組成物である。また、各成分はそれぞれ複数種から成ることもあるため、各成分を構成する種類の数だけ各成分のアルファベットの小文字に番号を付けて表し、例えば成分Aが3種類から成る場合、3種類の各々a1、a2、a3として示す。製造フロー1では便宜上全ての成分が3種類から成るとした。ここでは、製造方法の理解を容易にするため、より具体的な製造手順や使用装置を示すが、本発明で採用する樹脂組成物の製法はここで用いられる方法や装置等によって何ら限定されるものではない。
【0053】
まず、所定量の成分A(a1、a2、a3)に所定量の成分B(b1、b2、b3)を一度にフラスコに投入し、プロペラ型攪拌翼にて室温で約1hr、回転数300rpmで攪拌して完全に溶解させる(混合成分1)。勿論、予め成分Aや成分Bをそれぞれ1つに調製した後、プロペラ型攪拌翼にて室温、回転数約300rpmで成分Bが完全に溶解するまで攪拌する方法や、成分Aに成分Bを各種別に投入して、プロペラ型攪拌翼にて室温、回転数300rpmで成分Bが完全に溶解するまで攪拌する方法でも良い。成分Aと成分Bが常温硬化可能、特に短時間で硬化可能な場合には、成分Aや成分B及びその混合成分を硬化の防止及び抑制が可能な温度(例えば0℃以下)に保った方が良い。また、投入も徐々に行った方が良い。
【0054】
次に、所定量のc1、c2、c3を濃度50wt%に成るように良溶媒と共にサンプル瓶に封入し、攪拌子にて遮光、室温の条件で1hr攪拌してc1、c2、c3を完全に溶解させて予め1つに調製し、これを混合成分1に一度に投入して、プロペラ型攪拌翼にて遮光、室温で約0.2hr、回転数300rpmで攪拌して完全に溶解させる(混合成分2)。勿論、所定量の成分C(c1、c2、c3)を一度に混合成分1に投入したり、或いは、成分Cを混合成分1に各種別に投入して、例えばプロペラ型攪拌翼にて遮光、室温、回転数300rpmで成分Cが完全に溶解するまで攪拌する方法でも良い。また、混合成分1調整時と同様に混合成分1と成分Cの反応性が高い場合、特に成分C中に光・熱重合開始剤を含有し熱に対する反応性が高い場合には、混合成分1や成分C及びその混合成分を硬化の防止及び抑制が可能な温度(例えば0℃以下)に保った方が良い。また、投入も徐々に行った方が良い。
【0055】
そして、所定量のd1、d2、d3をプロペラ型攪拌翼にて、室温で約0.5hr、回転数300rpmで攪拌して予め1つに調製し、これを混合成分2に一度に投入して、プロペラ型攪拌翼にて遮光、室温で約0.2hr、回転数300rpmで攪拌して完全に溶解させる(混合成分3)。勿論、所定量の成分D(d1、d2、d3)を一度に混合成分2に投入したり、或いは、成分Dを混合成分2に各種別に投入して、例えばプロペラ型攪拌翼にて遮光、室温、回転数300rpmで成分Dが完全に溶解するまで攪拌する方法でも良い。また、混合成分2と成分Dの反応性が高い場合や混合成分2中に光・熱重合開始剤を含有し熱に対する反応性が高い場合等、成分D投入により混合成分の反応が開始しやすい場合には、混合成分2や成分D及びその混合成分を硬化の防止及び抑制が可能な温度(例えば0℃以下)に保った方が良い。また、投入も徐々に行った方が良い。
【0056】
さらに、所定量のe1、e2(e3を安定剤とした場合)を濃度50wt%に成るように良溶媒と共にサンプル瓶に封入し、攪拌子にて遮光、室温の条件で1hr攪拌してe1、e2を完全に溶解させて予め1つに調製し、これを混合成分3に一度に投入して、プロペラ型攪拌翼にて遮光、室温で約0.2hr、回転数300rpmで攪拌して完全に溶解させる。これにe3(e3を安定剤とした場合)を投入し、プロペラ型攪拌翼にて遮光、室温、回転数300rpmでe3が完全に溶解するまで攪拌した(混合成分4)。勿論、所定量の成分E(e1、e2、e3)を一度に混合成分4に投入したり、所定量のe1、e2を一度に混合成分に投入後e3を投入したり、或いは、成分Eを混合成分3に各種別に投入して、例えばプロペラ型攪拌翼にて遮光、室温、回転数300rpmで成分Eが完全に溶解するまで攪拌する方法でも良い。また、混合成分3と成分Eの反応性が高い場合や混合成分3中に光・熱重合開始剤を含有し熱に対する反応性が高い場合等、成分E投入により混合成分の反応が開始しやすい場合には、混合成分3や成分E及びその混合成分を硬化の防止及び抑制が可能な温度(例えば0℃以下)に保った方が良い。また、投入も徐々に行った方が良い。更に、成分Dと成分Eの投入順序を入れ替えて、混合成分2に成分Eを投入した後成分Dを投入したり、成分Cと同時期に成分Eを投入する順序も考えられるが、成分Eの安定剤は樹脂組成物の保存下での反応性を抑制しポットライフ向上を狙うものでもあり、硬化反応性や安定性効果の極端な失活等を防止するため最終的で投入する方が好ましい場合もある。
【0057】
最後に、所定量の成分F(f1、f2、f3)を一度に混合成分4に投入し、プロペラ型攪拌翼にて遮光、室温で約1hr、回転数300rpmで攪拌して樹脂組成物とする。勿論、所定量の成分Fを予め1つに調製した後に混合成分2に投入したり、或いは、成分Fを混合成分4に各種別に投入して、例えばプロペラ型攪拌翼にて遮光、室温、回転数300rpmで約1hr攪拌する方法でも良い。また、成分Fの投入・攪拌による反応開始、例えば攪拌時の発熱による反応開始等が考えられる場合には、混合成分4や成分F及びその混合成分を硬化の防止及び抑制が可能な温度(例えば0℃以下)に保った方が良い。また、投入も徐々に行った方が良い。また、成分Fは本発明樹脂組成物の特徴を活かして実際に様々な用途に用いる際に必要な成分であり、実使用直前に投入する方法でも良い。
【0058】
各成分の投入の仕方であるが、投入量については投入する成分と投入される側の製造時の反応性で異なり、反応性が高い場合、混合物の温度上昇に注意しながら徐々に投入して混合物を低温に保つようにするのが基本的であり、反応性が低い場合には一度に投入しても問題はない。但し、高反応性溶液同士の混合方法の例としては高速攪拌等により瞬時に分散させて反応を防止する方法もある。また、複数種から成る成分を投入・添加する場合、複数種の各々を1つ1つ投入しても、予め複数種を混合し1つにまとめた後投入しても、複数種を同時に投入しても良いが、安定化剤や最終的に粘度を調製する際の反応性希釈剤等、種類と用途によっては別途投入した方が良いものもあるし、溶解しにくいものなどは予め良溶媒等に溶解させた方が良い場合もある。遮光については、基本的には光反応性成分が含まれるものは全て行うべきである。製造フロー2〜4については製造フロー1の投入順序を変更したものであり、基本的には、温度は反応が進行しない様考慮した低温、攪拌時間は各攪拌工程において成分が完全に溶解するまで、遮光の有無については光反応性物質添加以降製造終了時までとなる。但し、製造フロー3については硬化性が高い混合成分に成分C(光重合開始剤成分)添加するため他に比べて硬化反応が発生しやすいと考えられ、遮光は勿論、冷却により温度も低温(例えば0℃以下)として、徐々に添加した方が好ましい。
【0059】
また、本発明に係る樹脂組成物の実用を考えた場合、最終的とは実際に樹脂組成物を硬化させる時点迄に本発明で意図する必須成分を含む樹脂組成物であればよい。従って、最初から必須成分を含む一液状態となっている樹脂組成物を製造しておくのではなく、最初は樹脂組成物を異なる2つ以上の組成物に分けて製造しておき、実際に使用する前に攪拌、混合して硬化させてもよい。その成分分割の例を下記表8に示すがこれに限定するものではなく、使用する成分の種類や比率、保存条件、製造条件等から様々なケースが考えられる。
【0060】
【表8】

@0045

なお、表中、樹脂組成物の構成成分および構成種は、成分A(構成種a1,a2)、成分B、成分C、成分Eとする。また、成分Fを追加する場合、基本的は配合量が多い成分Aを含有する方に追加するが、逆の場合もある。
【0061】
成分の分割は、従来の2液性硬化樹脂と同様に保存安定性が向上する利点がある反面、実作業において攪拌の手間が増える。以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【実施例】
【0062】
実施例1
セロキサイド2021P(ダイセル化学(株)製:脂環式エポキシ樹脂;3,4−シクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)1molに対し、マレイン酸無水物0.65molを加えて攪拌・溶解させたもの100重量部にイルガキュア261(チバガイギー(株)製:鉄−アレン系光重合開始剤;一般式(I))1.5重量部を配合した。(A)(A)をガラス容器(φ40mm×H50mm)に50g注入した。これを太陽光(4月、午後1時頃、晴天)にあてた。(B)上記サンプルは10min以内に完全に硬化した。
【0063】
実施例2
セロキサイド2021P 1molに対し、マレイン酸無水物0.65molを加えて攪拌・溶解させたもの100重量部にサンエイドSI−80L(三新化学(株)製:カチオン系光・熱重合開始剤;一般式(IV)50wt%+溶剤50wt%、添加剤微量)1.0重量部を配合した。(C)(C)をガラス容器(φ40mm×H50mm)に50g注入した。これにUVを3min照射した。UV照射条件はUV照射装置:UVL−1500M2(ウシオ電機(株))、ランプ種類:メタルハライドランプ、ランプ強度:120W/cm、ランプ長:125mm、雰囲気・温度・圧力:空気中・室温・大気圧、照射距離:15cmで行った。(D)上記サンプルは連鎖硬化しながら数分で完全に硬化した。
【0064】
実施例3
実施例2の(C)でサンエイドSI−80LのかわりにサンエイドSI−60(三新化学(株)製:カチオン系光・熱重合開始剤;一般式(IV))0.5重量部を配合する以外は、実施例2同様の試験を行った。上記サンプルは連鎖硬化しながら数分で完全に硬化した。
【0065】
実施例4
セロキサイド2021P 1molに対し、マレイン酸無水物0.65molを加えて攪拌・溶解させたもの100重量部にイルガキュア261 1.0重量部、サンエイドSI−60L(三新化学(株)製:カチオン系光・熱重合開始剤;一般式(IV)/溶剤=1/2、添加剤微量)1.0重量部を配合した。(E)(E)をガラス容器(φ40mm×H50mm)に50g注入し、実施例1の(B)と同様に太陽光にあてた。上記サンプルは連鎖硬化しながら数分で完全に硬化した。
【0066】
実施例5
実施例4の(E)をガラス容器(φ40mm×H50mm)に50g注入し、実施例2(D)と同様の方法でUVを照射した。上記サンプルは連鎖硬化しながら数分で完全に硬化した。
【0067】
実施例6
実施例4の(E)の光開始剤配合量を、イルガキュア261 1.0重量部、サンエイドSI−60L 0.5重量部に変更してガラス容器(φ40mm×H50mm)に50g注入し、実施例2(D)と同様の方法でUVを照射した。上記サンプルは連鎖硬化しながら数分で完全に硬化した。
【0068】
実施例7
実施例4の(E)の光開始剤配合量を、イルガキュア261 0.5重量部、サンエイドSI−60L 1.0重量部に変更してガラス容器(φ40mm×H50mm)に50g注入し、実施例2(D)と同様の方法でUVを照射した。上記サンプルは連鎖硬化しながら数分で完全に硬化した。
【0069】
実施例8
実施例4の(E)の樹脂組成物において、マレイン酸無水物0.65molを0.3molに変更してガラス容器(φ40mm×H50mm)に50g注入し、実施例2(D)と同様の方法でUVを照射した。上記サンプルは実施例5よりは硬化に時間がかかったが、連鎖硬化しながら数分で完全に硬化した。
【0070】
実施例9
実施例4の(E)の樹脂組成物において、マレイン酸無水物0.65molをヘキサヒドロフタル酸無水物0.65molに変更してガラス容器(φ40mm×H50mm)に50g注入し、実施例2(D)と同様の方法でUVを照射した。上記サンプルは実施例5よりは硬化に時間がかかったが、連鎖硬化しながら数分で完全に硬化した。
【0071】
実施例10
実施例4の(E)の樹脂組成物において、マレイン酸無水物0.65molをポリエチレングリコール300(分子量平均300)0.3molに変更してガラス容器(φ40mm×H50mm)に50g注入し、実施例2(D)と同様の方法でUVを照射した。上記サンプルは連鎖硬化しながら数分で完全に硬化した。
【0072】
実施例11
実施例4の(E)の光開始剤成分を、DAICAT11(ダイセル化学(株)製:アリール系スルホニウム塩タイプ/溶剤=1/1)0.3重量部、サンエイドSI−80L 0.7重量部に変更してガラス容器(φ40mm×H50mm)に50g注入し、実施例2(D)と同様の方法でUVを照射した。上記サンプルは連鎖硬化しながら数分で完全に硬化した。
【0073】
実施例12
セロキサイド2021P/マレイン酸無水物/ポリエチレングリコール300(モル比 1.0/0.65/0.17)100重量部にイルガキュア261 1.0重量部、サンエイドSI−60L 1.0重量部を配合した。(F)(F)をガラス容器(φ40mm×H50mm)に50g注入し、実施例2(D)と同様の方法でUVを照射した。上記サンプルは実施例5より容易に連鎖硬化しながら数分で完全に硬化した。
【0074】
実施例13
実施例12の(F)の樹脂組成物において、ポリエチレングリコール300のモル比を0.085に変更してガラス容器(φ40mm×H50mm)に50g注入し、実施例2(D)と同様の方法でUVを照射した。上記サンプルは実施例12よりは硬化に時間がかかったが、実施例5より容易に連鎖硬化しながら数分で完全に硬化した。
【0075】
実施例14
実施例12の(F)の樹脂組成物において、ポリエチレングリコール300のモル比を0.65に変更してガラス容器(φ40mm×H50mm)に50g注入し、実施例2(D)と同様の方法でUVを照射した。上記サンプルは連鎖硬化しながら数分で完全に硬化した。実施例12と比較すると硬化したサンプルは硬度が低く、ラバーとしての性質を強く示した。
【0076】
実施例15
セロキサイド2021P/セロキサイド2000(ダイセル化学(株):光重合性希釈剤;シクロヘキセンビニルモノオキサイド)/マレイン酸無水物/ヘキサヒドロフタル酸無水物/ポリエチレングリコール300(モル比 0.95/0.05/0.48mol/0.16mol/0.145mol)100重量部と、イルガキュア261 0.072重量部、DAICAT11 0.288、サンエイドSI−60 0.504重量部を配合した。調製する際はポリエチレングリコール300を最後に投入した。(G)(G)をガラス容器(φ40mm×H50mm)に50g注入し、実施例2(D)と同様の方法でUVを照射した。上記サンプルは連鎖硬化しながら数分で完全に硬化した。
【0077】
実施例16
実施例15の(G)の光開始剤成分を、イルガキュア261 0.1重量部、DAICAT11 0.2重量部、サンエイドSI−60L 0.7重量部に変更する以外は同様に樹脂組成物を調製してガラス容器(φ40mm×H50mm)に50g注入し、実施例2(D)と同様の方法でUVを照射した。上記サンプルは連鎖硬化しながら数分で完全に硬化した。
【0078】
実施例17
実施例15の(G)の光開始剤成分を、イルガキュア261 0.2重量部、DAICAT11 0.8重量部、サンエイドSI−60 1.4重量部に変更する以外は同様に樹脂組成物を調製した。(H)(H)をガラス容器(φ40mm×H50mm)に50g注入し、実施例2(D)と同様の方法でUVを照射した。上記サンプルは激しく連鎖硬化しながら実施例15より早く完全に硬化した。
【0079】
実施例18
実施例17の(H)のセロキサイド2021PをARALDITE AER 260(旭チバ(株)製:ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂)に変更する以外は同様に樹脂組成物を調製してガラス容器(φ40mm×H50mm)に50g注入し、実施例2(D)と同様の方法でUVを照射した。上記サンプルは連鎖硬化しながら数分で完全に硬化した。
【0080】
実施例19
実施例15の(G)をガラス試験管(φ15mm×H150mm)に高さ120mmまで注入し、照射距離を10cmにする以外は実施例2(D)と同様の方法でUVを照射した。上記サンプルは連鎖硬化しながら数分で完全に硬化した。
【0081】
実施例20
銅管(φ19mm×L500mm)にカーボンファイバーの不織布を充填したものに実施例17の(H)と同様の樹脂組成物を注入し、片端をゴム栓にて封じた。照射距離を10cm及び照射時間5minにする以外は実施例2(D)と同様の方法で照射した。上記サンプルは連鎖硬化しながら数時間以内に完全に硬化した。
【0082】
実施例21
銅管(φ19mm×L500mm)にカーボンファイバーの不織布を充填したものに実施例15の(G)を注入し、片端をゴム栓にて封じた。これを70℃に保持したオーブンに2hr入れた後取り出した。上記サンプルは熱によっても硬化していた。
【0083】
比較例1
セロキサイド2021P 100重量部と、イルガキュア261 1.5重量部の樹脂組成物(実施例1の(A)からマレイン酸無水物を除いた組成)を調製し、ガラス容器(φ40mm×H50mm)に50g注入した。これを実施例1の(B)と同様に太陽光にあてた。上記サンプルを5hr太陽光にあてても未硬化であった。
【0084】
比較例2
セロキサイド2021P 100重量部と、サンエイドSI−80L 1.0重量部の樹脂組成物(実施例2の(C)からマレイン酸無水物を除いて組成構築)を調製し、ガラス容器(φ40mm×H50mm)に50g注入した。これに実施例2の(D)と同様の方法でUVを照射した。上記サンプルは連鎖硬化が発生せず、表層のみ硬化し、残りは未硬化であった。
【0085】
比較例3
セロキサイド2021P 100重量部と、サンエイドSI−60 1.0重量部の樹脂組成物(実施例3の樹脂組成物からマレイン酸無水物を除いて組成構築)を調製し、ガラス容器(φ40mm×H50mm)に50g注入した。これに実施例2の(D)と同様の方法でUVを照射した。上記サンプルは連鎖硬化が発生せず、表層のみ硬化し、残りは未硬化であった。
【0086】
比較例4
セロキサイド2021P 100重量部と、イルガキュア261 1.0重量部と、サンエイドSI−60L 0.5重量部の樹脂組成物(実施例6の樹脂組成物からマレイン酸無水物を除いて組成構築)を調製し、ガラス容器(φ40mm×H50mm)に50g注入した。これに実施例2(D)と同様の方法でUVを照射した。上記サンプルは連鎖硬化が発生せず、表層のみ硬化し、残りは未硬化であった。
【0087】
比較例5
セロキサイド2021P 100重量部と、DAICAT11 0.3重量部と、サンエイドSI−80L 0.7重量部の樹脂組成物(実施例11の樹脂組成物からマレイン酸無水物を除いて組成構築)を調製し、ガラス容器(φ40mm×H50mm)に50g注入した。これに実施例2(D)と同様の方法でUVを照射した。上記サンプルは実施例11と比較すると明らかに硬化能力が低かった。
【0088】
比較例6
セロキサイド2021P/セロキサイド2000(モル比 0.95/0.05)100重量部と、イルガキュア261 0.072重量部、DAICAT110.288、サンエイドSI−60 0.504重量部の樹脂組成物(比較対象:実施例15)を調製し、ガラス容器(φ40mm×H50mm)に50g注入した。これに実施例2(D)と同様の方法でUVを照射した。上記サンプルは実施例15と比較すると明らかに硬化能力が低かった。
【0089】
比較例7
セロキサイド2021P/セロキサイド2000(モル比 0.95/0.05)100重量部と、イルガキュア261 0.1重量部、DAICAT11 0.2重量部、サンエイドSI−60L 0.7重量部の樹脂組成物(比較対象:実施例16)を調製し、ガラス容器(φ40mm×H50mm)に50g注入した。これに実施例2(D)と同様の方法でUVを照射した。上記サンプルは実施例16と比較すると明らかに硬化能力が低かった。
【0090】
上記した実施例1〜21及び比較例1〜7の結果から、上記樹脂組成物によれば、優れたエネルギー線硬化樹脂成形体が容易に得られることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】図1は、本発明に係る樹脂組成物を製造する際の製造フローの一例(製造フロー1)を示す図である。
【図2】図2は、本発明に係る樹脂組成物を製造する際の他の製造フローの例、(a)製造フロー2、(b)製造フロー3、(c)製造フロー4を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光重合性樹脂成分として分子構造に環状エーテル構造を有するエポキシ樹脂を含み、エネルギー線の照射によって該光重合性樹脂成分の硬化を可能にする光重合開始剤成分と、前記光重合性樹脂成分を常温硬化又は加熱硬化させるのに用いる硬化剤成分とを含み、
前記光重合開始剤成分として、下記一般式(I)、(II)又は(III)
【化1】

で示される鉄−アレン系化合物を含み、
前記硬化剤成分が酸無水物であり、該硬化剤成分と反応可能な光重合性樹脂成分1molに対し、該硬化剤成分が0.1〜1.4molの比率であることを特徴とするエネルギー線硬化樹脂組成物。
【請求項2】
前記光重合性樹脂成分の少なくとも1種と前記硬化剤成分とを常温硬化又は加熱硬化させる際に、該硬化を促進させる硬化促進剤成分を含むことを特徴とする請求項1記載のエネルギー線硬化樹脂組成物。
【請求項3】
前記硬化促進剤成分として、1価又は多価のアルコール類を含むことを特徴とする請求項2に記載のエネルギー線硬化樹脂組成物。
【請求項4】
前記硬化剤成分もしくは前記硬化促進剤成分が、前記エポキシ樹脂成分と反応可能であり、且つ、分子構造内に窒素原子を有しない化合物からなることを特徴とする請求項3のいずれかに記載のエネルギー線硬化樹脂組成物。
【請求項5】
前記光重合性樹脂成分として、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレートを含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のエネルギー線硬化樹脂組成物。
【請求項6】
前記酸無水物として、マレイン酸無水物又はその誘導体を含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のエネルギー線硬化樹脂組成物。
【請求項7】
前記アルコール類として、ポリエチレングリコールを含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のエネルギー線硬化樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載のエネルギー線硬化樹脂組成物を硬化させたことを特徴とするエネルギー線硬化樹脂成形体。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載のエネルギー線硬化樹脂組成物を含有することを特徴とするペースト材料。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載のエネルギー線硬化樹脂組成物を含有することを特徴とする複合成形材料。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載のエネルギー線硬化樹脂組成物を含有することを特徴とする接着剤。
【請求項12】
請求項1〜7のいずれかに記載のエネルギー線硬化樹脂組成物を含有することを特徴とするコーティング材。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2006−161046(P2006−161046A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−350739(P2005−350739)
【出願日】平成17年12月5日(2005.12.5)
【分割の表示】特願平11−269648の分割
【原出願日】平成11年9月24日(1999.9.24)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】