説明

エネルギー蓄積装置

【課題】無駄なエネルギー消費を抑制しつつ各セルの電圧を均等化することができるエネルギー蓄積装置を提供する。
【解決手段】充放電を行うメインセル21〜24とは別に、メインセル21〜24のセルバランスを行うための予備セル7を設ける。予備セル7は、メインセル21〜24とそれぞれ個別に並列接続可能に構成されている。コントロール回路51は、メインセル21〜24の充放電を行っていないときに、スイッチ部4の各スイッチを制御して予備セル7をメインセル21〜24に順次接続することで、予備セル7からメインセル21〜24を充電する。これにより、メインセル21〜24の電圧均等化を図る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直列接続された多数のキャパシタや二次電池等のセルを用いたエネルギー蓄積装置に関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池やキャパシタを用いたエネルギー蓄積装置は、例えばHEV(Hybrid Electric Vehicle)やUPS(Uninterruptible Power Systems)の電源装置として用いられる。HEV(Hybrid Electric Vehicle)の電源装置には、100V以上の高電圧が要求される。この電源装置に使用される二次電池としては、ニッケル水素(Ni−MH)電池、またはリチウムイオン(Li−ion)電池を用いたものが実用化され、二次電池以外としては、リチウムイオンキャパシタ(Li−capacitor)、または電気二重層コンデンサ(EDLC)を用いることが提案されている。しかしながら、これらの蓄電素子の1セルあたりの平均電圧は、ニッケル水素電池で約1.2V、リチウムイオン電池では約3.6V、リチウムイオンキャパシタで約3Vであるにすぎない。そのため、100Vの電源装置を構成するには、ニッケル水素電池で83セル、リチウムイオン電池では28セル、リチウムイオンキャパシタでは34セルを直列に接続する必要がある。
【0003】
このように多数のセルを直列接続したエネルギー蓄積装置で充放電を繰り返すと、各セルの電圧にばらつきが生じる。ばらつきを生じる原因としては、セル間容量や内部抵抗のばらつき、セルの配置による動作温度の差などが挙げられる。一般に、セルの直列接続数が多いほどセル間の電圧差は大きくなる。
セルがリチウムイオン電池あるいはリチウムイオンキャパシタである場合は、過充電及び/又は過放電保護回路によって、充電時には最大電圧、放電時には最小電圧が制限される。このために、多数直列接続されたセル間の電圧がばらつくと以下の問題が生じる。
【0004】
すなわち、充電の際には、一つのセルが最大電圧に達した時点で充電停止することになるため、その他のセルの電圧が低いままで充電が終了してしまい、装置全体での最大容量に達する前に充電が停止してしまう。一方、放電の際には逆の現象が起こる。放電の際には、一つのセルが最小電圧に達した時点で放電停止することになるため、その他のセルの電圧が高いままで放電が終了してしまい、セルにエネルギーを残したまま放電が停止してしまう。
【0005】
セルがEDLCやリチウムイオン二次電池以外の場合でも、必要に応じて保護回路によって充電停止・放電停止をさせることもあるが、そうでない場合であっても、多数直列接続されたセル間の電圧がばらつくことは同様であるため、耐電圧の近傍まで充電して繰返し使用する間にセル電圧が耐電圧以上に上昇することによって寿命劣化するセルが発生する。多数のセルを直列接続したエネルギー蓄積装置の寿命は、最も寿命の短いセルによって制限されるために、充放電によって他のセルより電圧が高くなるセルの発生は好ましくない。
【0006】
したがって、セルを多数使用したエネルギー蓄積装置では、各セルの電圧を均等化する(以下「セルバランスを行う」ともいう。)ことが重要である。
そこで、各セルに均等化回路を並列接続し、各セルの電圧を均等化させるものがある(例えば、特許文献1参照)。ここでは、直列に接続された複数の電気二重層コンデンサセルの充電時に各セルの電圧を均等化させるために、所定の電圧に満たないセルについては充電電流をバイパスせずにセルを充電する一方、所定の電圧を越えるセルについては、充電電流をバイパスさせたり、そのセルを個別に放電したりしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−25162号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記従来のエネルギー蓄積装置にあっては、他のセルよりも電圧が高いセルを抵抗やスイッチを用いて放電することでセルバランスを行う構成であるため、放電により熱を発生してしまう。このため、放熱装置などを設ける必要があり、装置が大型となってしまう。また、充電時にセルへの充電を制限することでセルバランスを行う場合にも、充電電流をバイパスするためのスイッチが必要となり、バイパス電流が大きくなるとスイッチが急激に加熱されてしまう。
このように、上記従来の手法では、放電エネルギーが熱に変換されてしまい、エネルギー効率が悪い。
そこで、本発明は、無駄なエネルギー消費を抑制しつつ各セルの電圧を均等化することができるエネルギー蓄積装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、請求項1に係るエネルギー蓄積装置は、直列接続された複数のメインセルと、当該メインセルを過充電及び過放電の少なくとも一方から保護するセル保護手段と、を備えるエネルギー蓄積装置であって、前記メインセルとそれぞれ個別に並列接続可能な予備セルと、前記メインセルと前記予備セルとをそれぞれ個別に順次並列接続することで前記予備セルから前記メインセルを充電し、前記メインセル間の電圧均等化を行う電圧均等化手段と、を備えることを特徴としている。
このように、予備セルを用いて充電によるメインセルの電圧均等化を行うので、従来装置のように放電による電圧均等化を行う必要がない。そのため、放電エネルギーが熱に変換されることがなく、エネルギー効率が良い。
【0010】
また、請求項2に係るエネルギー蓄積装置は、請求項1に係る発明において、前記メインセルの各セル電圧をそれぞれ検出する電圧検出手段と、前記メインセルと前記予備セルとをそれぞれ個別に並列接続可能なスイッチ群と、を備え、前記電圧均等化手段は、前記電圧検出手段で検出した前記メインセルの電圧に基づいて、前記各セル電圧を均等化するように、前記スイッチ群のオンオフを制御することを特徴としている。
これにより、比較的簡易な回路構成で適切にメインセルの各セル電圧を均等化することができる。
【0011】
さらに、請求項3に係るエネルギー蓄積装置は、請求項1又は2に係る発明において、前記予備セルは、前記メインセルを外部電源から充電している期間に、前記外部電源から充電されることを特徴としている。
このように、メインセルの充電中に同時に予備セルの充電を行うので、比較的簡易な制御方法で予備セルを充電することができ、回路の簡易化が可能となる。また、外部電源から予備セルの充電を行うため、セルバランスを行う際には予備セルによってメインセルを満充電することが可能である。
【0012】
また、請求項4に係るエネルギー蓄積装置は、請求項1又は2に係る発明において、前記予備セルは、前記メインセルを外部電源から充電した後に、前記メインセルから充電されることを特徴としている。
このように、メインセルから予備セルの充電を行うので、外部電源が接続されていない状態でも予備セルの充電が可能となる。そのため、外部電源が接続されている時間(外部電源からメインセルへの充電時間)にかかわらず、予備セルの充電を十分に行うことができる。
【0013】
さらにまた、請求項5に係るエネルギー蓄積装置は、請求項1又は2に係る発明において、前記予備セルは、任意のタイミングで、前記メインセルを充電する外部電源とは異なる第2の外部電源から充電されることを特徴としている。
これにより、予備セルの充電を、メインセルの充放電のタイミングとは関係なく行うことができる。
また、請求項6に係るエネルギー蓄積装置は、請求項1〜5の何れかに係る発明において、前記電圧均等化手段は、前記メインセルと外部電源又は外部機器とを接続する外部端子が開放状態である期間に、前記メインセル間の電圧均等化を行うことを特徴としている。
このように、メインセルの充放電を行っていない期間に、予備セルによるメインセルの電圧均等化を行うので、適正にセルバランスを行うことができる。
【0014】
さらに、請求項7に係るエネルギー蓄積装置は、請求項1〜6の何れかに係る発明において、前記電圧均等化手段は、前記メインセルの各セル電圧がそれぞれ所定電圧に達するまで、前記予備セルから前記メインセルへの充電を行うことを特徴としている。
これにより、予備セルによるセルバランス終了時に、メインセルの各セル電圧を確実に一致させた状態とすることができる。
また、請求項8に係るエネルギー蓄積装置は、請求項7に係る発明において、前記所定電圧は、前記メインセルの最大充電電圧であることを特徴としている。
これにより、予備セルによるセルバランス終了時に、各メインセルの各セル電圧を満充電電圧とすることができる。
【0015】
さらにまた、請求項9に係るエネルギー蓄積装置は、請求項1〜8の何れかに係る発明において、前記予備セルは、一つの前記メインセルよりも容量または最大電圧が高いセルであることを特徴としている。
これにより、予備セルとメインセルとを並列接続した際に、予備セルからメインセルへの充電を効率良く行うことができると共に、1つの予備セルで複数のメインセルの充電を行うことができる。
【0016】
また、請求項10に係るエネルギー蓄積装置は、請求項9に係る発明において、前記予備セルは、前記メインセルと同一構成のセルを複数接続して構成されていることを特徴としている。
これにより、例えば、メインセルと同一構成のセルを複数直列接続するだけで、容易に予備セルからメインセルへの充電開始電圧を、メインセルの満充電電圧よりも高くすることができる。
【0017】
さらに、請求項11に係るエネルギー蓄積装置は、請求項1〜10の何れかに係る発明において、前記セル保護手段は、前記メインセルの各セル電圧の上限電圧及び下限電圧の少なくとも一方を監視し、前記上限電圧を監視する場合には、前記メインセルと外部電源とを接続した充電時に、前記メインセルの何れか1つのセル電圧が前記上限電圧に達したときに充電を終了することで、前記メインセルを過充電から保護し、前記下限電圧を監視する場合には、前記メインセルと外部機器とを接続した放電時に、前記メインセルの何れか1つのセル電圧が前記下限電圧に達したときに放電を終了することで、前記メインセルを過放電から保護することを特徴としている。
このように、メインセルの各セル電圧を監視してメインセルの充放電を制御するので、メインセルの過充電や過放電を防止することができ、メインセルの性能維持、安全性を確保することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、充放電を行うメインセルとは別に予備セルを設け、予備セルからの充電によってメインセルの電圧均等化を行うので、従来装置のように放電エネルギーが熱に変換されてしまうなどの無駄なエネルギー消費を抑え、効率良くメインセルの電圧均等化を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明におけるエネルギー蓄積装置の全体構成を示す図である。
【図2】蓄電モジュールの構成を示す回路図である。
【図3】第1の実施形態の動作を示すタイミングチャートである。
【図4】第2の実施形態の動作を示すタイミングチャートである。
【図5】第3の実施形態の動作を示すタイミングチャートである。
【図6】本発明におけるエネルギー蓄積装置の別の例を示す回路図である。
【図7】本発明におけるエネルギー蓄積装置の別の例を示す回路図である。
【図8】従来のエネルギー蓄積装置の構成を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
(第1の実施形態)
(構成)
図1は、本発明におけるエネルギー蓄積装置の全体構成を示す図である。
図中、符号10はエネルギー蓄積装置である。このエネルギー蓄積装置10は、蓄電モジュール1を任意数直列接続して、所望の動作電圧を得るものであり、例えばHEV(Hybrid Electric Vehicle)の電源装置として用いられる。
【0021】
蓄電モジュール1は、複数のメインセル(キャパシタや二次電池等)が直列接続された蓄電セル1Aを備える。また、この蓄電モジュール1には、モジュール内の蓄電セル1Aを保護する目的で、蓄電セル1Aの直列接続端と外部端子との間にスイッチ1Bを直列に介在させると共に、蓄電モジュール1内の各メインセルの電圧を個別に監視し、充放電時に前記各メインセルの電圧に応じてスイッチ1Bのオン/オフ制御を行う制御回路(IC)1Cを設ける。制御回路1Cは、蓄電モジュール1内の各メインセルを過充電から保護するための過充電保護機能と、過放電から保護するための過放電保護機能とを有している。各蓄電モジュール1内の制御回路1C間は光ファイバ等で接続されており、相互に通信可能な構成となっている。
【0022】
また、図1において、符号11は外部充電器または負荷であり、直列接続されたこれら蓄電モジュール1には、充電動作時には外部充電器11が接続され、放電動作時には負荷11が接続される。
さらに、エネルギー蓄積装置10は、各蓄電モジュール1の制御回路1Cを制御するCPU12を備える。このCPU12は、各制御回路1Cの制御タイミングの管理や、各制御回路1Cの健康管理(故障管理)を行うと共に、システム全体として各制御回路1Cから後述する均等化終了の信号を受け取るなどして充電器及び負荷側との通信を行う役目がある。以下に記載するように、蓄電モジュール1内の各メインセルはセルバランスを行うことで電圧均等化される。したがって、上記CPU12が各蓄電モジュール1の均等化電圧が同一値になるように各制御回路1Cを制御することで、エネルギー蓄積装置10全体の電圧均等化を達成することができる。
【0023】
次に、蓄電モジュール1の具体的構成について説明する。
図2は、蓄電モジュール1の構成を示す回路図である。
蓄電モジュール1は、上記蓄電セル1Aとしてのメインセル部2と、セルマネージメント部3と、スイッチ部4と、バランスコントロール部5と、予備セル充電回路6と、予備セル7と、を備える。また、図中符号8は蓄電モジュールのプラス端子、符号9は蓄電モジュールのマイナス端子である。
メインセル部2は、複数(本実施形態では4つ)のメインセル21〜24を直列に接続して構成する。
【0024】
各メインセル間は、抵抗等を介さずに直接接続する。仮にメインセル間に抵抗成分があると、充放電電流が制限されることになり、高電流の充放電時には抵抗成分により充放電効率を落とすことになる。そこで、本実施形態では、メインセル間に抵抗成分を介さない構成とすることで、充放電効率を維持するようにしている。
セルマネージメント部3は、上記制御回路1Cとしてのセルマネージメントシステム(CMS)31と、上記スイッチ1Bとしての充放電制御スイッチ32とで構成されている。CMS31は、各メインセル21〜24のセル電圧をそれぞれ監視しており、メインセル21〜24の各セル電圧に応じて充放電制御スイッチ32のオン/オフを制御する。
【0025】
具体的には、CMS31は、各メインセル21〜24の電圧をそれぞれ監視し、充電動作時には、何れか一つのセル電圧が予め設定した上限電圧に達したことを検出したとき、充放電制御スイッチ32をオン状態からオフ状態へ切り替えることで、当該メインセルが過充電になるのを防止する。また、放電動作時には、何れか一つのセル電圧が予め設定した下限電圧に達したことを検出したとき、充放電制御スイッチ32をオン状態からオフ状態へ切り替えることで、当該メインセルが過放電になるのを防止する。このように、CMS31は、過充電保護機能と過放電保護機能とを有する。もちろん、過充電保護機能のみ、または過放電保護機能のみとすることも可能である。
【0026】
スイッチ部4は、例えばMOS(Metal Oxide Semiconductor)FET等のスイッチ41A〜44A,41B〜44Bで構成される。これらスイッチはバランスコントロール部5によってオン/オフ状態が制御される。
スイッチ41A及び41Bは、同時にオン状態となることでメインセル21と予備セル7とを並列に接続するようになっている。同様に、スイッチ42A及び42Bは、同時にオン状態となることでメインセル22と予備セル7とを並列に接続し、スイッチ43A及び43Bは、同時にオン状態となることでメインセル23と予備セル7とを並列に接続し、スイッチ44A及び44Bは、同時にオン状態となることでメインセル24と予備セル7とを並列に接続する。
【0027】
バランスコントロール部5は、コントロール回路51と、電源レギュレータ52と、を備える。
コントロール回路51は、スイッチ部4を構成する各スイッチ41A〜44A,41B〜44B及び後述する予備セル充電回路6の予備セル充電スイッチ62のオン/オフ制御を行う。また、コントロール回路51は、予備セル7の電圧を監視し、予備セル7の過充電保護および過放電保護を行うようになっている。このコントロール回路51は、一般的な論理回路で構成することも可能であるが、マイクロコントローラを用いるとスイッチ部4の各スイッチのオン/オフ制御がプログラムによって容易に調整できる。
【0028】
予備セル充電回路6は、定電流源61と、予備セル充電スイッチ62と、を備える。予備セル充電スイッチ62がコントロール回路51によってオン状態に制御されているとき、予備セル7への充電が行われる。本実施形態では、外部充電器11からメインセル21〜24への充電期間に、外部充電器11から予備セル7を充電するものとする。
予備セル7は、メインセル21〜24のセル間電圧の差を無くすようにセルバランスを行うためのものであり、メインセル21〜24と同一構成のセルを複数(本実施形態では2つ)直列接続して構成する。このように、予備セル7は、一つのメインセルよりも容量及び/または最大電圧の高いセルで構成する。
【0029】
次に、セルバランスを行う方法について具体的に説明する。
セルバランスは、メインセル21〜24の充放電が行われていない期間に行う。メインセル21〜24の充放電が行われていない期間とは、充放電制御スイッチ32がオフ状態の期間、すなわちメインセル21〜24と外部充電器もしくは負荷11とを接続する外部端子が切り離されている期間、または外部充電器もしくは負荷11がプラス端子8とマイナス端子9との間に接続されておらず、外部端子が開放状態にある期間である。
【0030】
ここで、メインセル21〜24の充放電が行われていないことは、CMS31で検出が可能である。コントロール回路51は、CMS31でメインセル21〜24の充放電が行われていないことを示す信号を受信しているとき、セルバランスを開始するべくスイッチ41A〜44A,41B〜44Bのオン/オフ制御を行う。
セルバランスは、コントロール回路51がスイッチ41A〜44A,41B〜44Bをオン/オフ制御して、予備セル7とメインセル21〜24とを順次個別に並列接続することで、予備セル7が予備セル7に並列接続したメインセルを充電して各メインセル21〜24の電圧均等化を行うものである。
【0031】
ここでは、メインセル21→メインセル22→メインセル23→メインセル24の順に、予備セル7と並列接続するものとする。なお、予備セル7との接続順序は上記に限定されるものではなく、任意の順序で接続可能である。
また、セルバランスを行う際には、コントロール回路51は、CMS31で検出したメインセル21〜24の電圧をそれぞれ取得し、取得したメインセル電圧に応じてスイッチ41A〜44A,41B〜44Bをオン/オフ制御する。
【0032】
すなわち、先ず、コントロール回路51は、CMS31からメインセル21の電圧を取得し、メインセル21の電圧が所定電圧(満充電電圧あるいは満充電電圧近傍の一定電圧)を下回っているか否かを判定する。そして、メインセル21の電圧が所定電圧を下回っている場合には、スイッチ41A及び41Bをオン状態、その他のスイッチ42A〜44A及び42B〜44Bをオフ状態とし、メインセル21と予備セル7とを並列に接続する。こうして、予備セル7からメインセル21へ充電を行う。なお、メインセル21の電圧が所定電圧に達している場合には、予備セル7からメインセル21への充電は行う必要はない。
【0033】
メインセル21の電圧が所定電圧に達すると、コントロール回路51はスイッチ41A及び41Bをオフ状態に切り替え、予備セル7からメインセル21への充電を終了する。
次に、コントロール回路51は、CMS31からメインセル22の電圧を取得し、メインセル22の電圧が所定電圧を下回っているか否かを判定する。そして、メインセル22の電圧が所定電圧を下回っている場合には、スイッチ42A及び42Bをオン状態に切り替え、メインセル22と予備セル7とを並列に接続する。こうして、予備セル7からメインセル22へ充電を行う。このとき、メインセル22の電圧がメインセル21の電圧に一致するまで充電を行う。
【0034】
このような動作をメインセル24まで繰り返す。これにより、すべてのメインセル21〜24が予備セル7によって充電され、セルバランスが終了したときには、メインセル21〜24の電圧が所定電圧以上となる。
なお、セルマネージメント部3がセル保護手段に対応し、セルマネージメントシステム31が電圧検出手段に対応し、スイッチ部4がスイッチ群に対応し、バランスコントロール部5が電圧均等化手段に対応し、外部充電器11が外部電源に対応し、負荷11が外部機器に対応している。
【0035】
(動作)
次に、第1の実施形態の動作について説明する。
図3は、第1の実施形態の動作を説明するためのタイミングチャートである。ここで、図3(a)はメインセル電圧であり、図3(b)は予備セル電圧である。なお、図3(a)では、メインセル21及び22の電圧のみを記しており、V1がメインセル21のセル電圧、V2がメインセル22のセル電圧である。なお、タイミングチャートにおいては、セルバランスを行っている期間をコンディショニング期間と記載している。
【0036】
先ず、エネルギー蓄積装置10は、蓄電モジュール1に外部充電器11を接続した状態で、メインセル21〜24の充電動作を行う。このとき、図3の時刻t1で、蓄電モジュール1のCMS31は、充放電制御スイッチ32をオン状態とする。これにより、外部充電器11からメインセル21〜24へ充電が行われ、メインセル21〜24の電圧が上昇していく。そして、一定の充電期間が経過した時刻t2で、CMS31は充放電制御スイッチ32をオフ状態に切り替え、蓄電モジュール1から外部充電器11を取り外すことで、メインセル21〜24の充電を終了する。
【0037】
本実施形態では、この時刻t1〜時刻t2の充電期間に、予備セル7の充電も行う。すなわち、蓄電モジュール1のコントロール回路51は、時刻t1で予備セル充電スイッチ62をオン状態に切り替えることで、外部充電器11から予備セル充電回路6を介して予備セル7への充電を行う。予備セル7のセル電圧は、コントロール回路51で監視しており、メインセル充電期間内に予備セル7が満充電された場合には、その時点でコントロール回路51は予備セル充電スイッチ62をオフ状態に切り替え、予備セル7の充電を終了する。
【0038】
その後、メインセル21〜24の充電動作が終了している状態の時刻t3で、蓄電モジュール1は、メインセル21〜24のセルバランスを行う。先ず、コントロール回路51は、CMS31で検出した時刻t3におけるメインセル21のセル電圧V1を取得し、このセル電圧V1が所定電圧(図3では、満充電電圧である最大充電電圧Vmax)に達しているか否かを判定する。このとき、メインセル21は満充電されておらず、V1<Vmaxであるため、コントロール回路51は、スイッチ41A及び41Bをオン状態とし、それ以外のスイッチ部4のスイッチをオフ状態に制御することで、メインセル21と予備セル7とを並列に接続する。これにより、予備セル7からメインセル21へ充電を行う。
【0039】
予備セル7はメインセル21〜24の外部充電器11からの充電期間に満充電されているため、予備セル7の電圧は、メインセル21の電圧よりも確実に高いものとなっている。そのため、この時刻t3からメインセル21の電圧V1は上昇し、一方、予備セル7の電圧は低下していく。
そして、時刻t4で、メインセル21のセル電圧V1が最大充電電圧Vmaxに達すると、これがCMS31で検出される。すると、CMS31から検出信号を受け取ったコントロール回路51は、予備セル7からメインセル21への充電を終了するべく、スイッチ41A及び41Bをオフ状態に切り替える。
【0040】
次に、コントロール回路51は、時刻t5で、CMS31で検出したメインセル22のセル電圧V2を取得し、このセル電圧V2が上記所定電圧に達しているか否かを判定する。このとき、V2<Vmaxであるため、コントロール回路51は、スイッチ42A及び42Bをオン状態とする。これにより、メインセル22と予備セル7とを並列に接続し、予備セル7からメインセル22へ充電を行う。そのため、この時刻t5からはメインセル22の電圧V2が上昇し、予備セル7の電圧が低下していく。
【0041】
この場合にも、メインセル22の電圧V2はCMS31で監視され、メインセル22の電圧V2が時刻t6で最大充電電圧Vmaxに達すると、予備セル7からメインセル22への充電を終了するべく、コントロール回路51はスイッチ42A及び42Bをオフ状態に切り替える。
その後は、メインセル23及び24についても同様に予備セル7からの充電を行う。これにより、セルバランス終了時には、すべてのメインセル21〜24の電圧が満充電によって均等化された状態となる。
【0042】
セルバランスが終了すると、蓄電モジュール1には負荷11が接続される。そして、時刻t7〜t8の放電期間において、メインセル21〜24の放電が行われる。その後、CMS31が、何れかのメインセル電圧が下限電圧を下回ったことを検出すると、充放電制御スイッチ32をオフ状態に切り替えて、メインセル21〜24の放電動作を終了する。
その後は、時刻t8で、再び蓄電モジュール1に外部充電器11を接続し、外部充電器11からメインセル21〜24への充電を行う。この時刻t8〜t9のメインセル充電期間では、上述した時刻t1〜t2の充電期間と同様に、予備セル7への充電も行われる。
ところで、本実施形態のように予備セル7を用いたセルバランスを行わないエネルギー蓄積装置では、一般に、充放電が繰り返されると各セルの電圧にばらつきが生じる。これは、セル間容量や内部抵抗のばらつき、セルの配置による動作温度の差などが原因である。
【0043】
各セルの容量を完全に均一にすることは不可能であり、各セルには必ず容量差がある。容量の大きなセルと小さなセルとを直列接続して充放電を行うと、この容量差によりセルの電圧は同じにならない。また、各セルの容量が完全に同じであっても、各セルの周辺温度には差がある。エネルギー蓄積装置は、金属ケースなどで密封されるが、機器からの放熱やケース外周の熱吸収などにより、セル間には温度差ができてしまう。セル間の温度が異なると、その温度差により擬似的に容量差ができてしまい、この場合にもセル間電圧はばらつくことになる。このように、セル間電圧は確実にばらついてしまう。そして、このセル間の電圧差は、蓄電モジュールにおけるセルの直列接続数が多いほど大きくなる。
【0044】
このように、セル間電圧に差が生じると、エネルギー蓄積装置全体の容量が低下してしまう。これは、セルの充電上限電圧と放電下限電圧とがセルマネージメント回路によって制限されていることに起因する。すなわち、充電の際には、一つのセルが充電上限電圧に達すると、その時点で充電は停止することになる。このように、他のセルの電圧が低いままで充電が終了してしまい、装置全体での最大容量に達する前に充電が停止してしまう。放電の際には逆の現象が起こる。つまり、一つのセルが放電下限電圧に達した時点で放電停止するため、他のセルの電圧が高いままで放電が終了してしまい、セルにエネルギーを残したまま放電が停止してしまう。
この対策として、他のセルよりも電圧の高いセルを抵抗やスイッチを用いて放電することにより、セルバランスを行う方法がある。
【0045】
図8は、従来のエネルギー蓄積装置100の構成を示す回路図である。
このエネルギー蓄積装置100は、セル群101と、セル群101の各セルの過充電及び過放電を保護するセルマネージメント部102と、放電トランジスタ群103とを備えるものである。
ここでは、セル群101の各セル電圧をセルマネージメント部102で監視し、他のセルよりも電圧の高いセルが存在する場合には、そのセルに対応する放電トランジスタ群103内のスイッチをオンすることで放電を行い、電圧均等化を図っている。
【0046】
しかしながら、この場合、セルバランスのための放電により熱を発生してしまうため、放熱装置などが必要となり装置が大きくなってしまう。また、充電時にセルへの充電を制限することにより、セルバランスを行う方法もあるが、この場合にも充電電流をバイパスするためのスイッチが必要となるため、バイパス電流が大きくなるとスイッチが急激に加熱されてしまう。これらの方法では、放電するエネルギーが熱に変換されてしまうため、エネルギー効率が悪いという問題もある。
【0047】
これに対して、本実施形態では、充放電を行うメインセル21〜24とは別にセルバランスを行うための予備セル7を設け、予備セル7からメインセル21〜24を充電することでセルバランスを行う。この構成により、メインセルの電圧を放電により均等化する必要がなくなるので、放電エネルギーが熱に変換されるのを防止することができ、エネルギー効率の悪化を防止することができる。
【0048】
(効果)
このように、上記第1の実施形態では、多数直列に接続されたメインセル群から充放電を行うエネルギー蓄積装置において、各メインセルとそれぞれ個別に並列接続可能な予備セルを設け、メインセルが充放電を行っていないときに、予備セルから順次メインセルを充電することでメインセルの電圧を均等化する。したがって、エネルギー蓄積装置全体の容量を確保することができる。また、予備セルからの充電によりセルバランスを行う構成であるため、メインセルを放電することによりセルバランスを行う必要がなくなり、部品の過熱などでエネルギー効率が悪くなるのを防止することができる。
【0049】
さらに、スイッチ群のオンオフ制御により各メインセルと予備セルとを順次並列接続するため、比較的簡易な制御方法で電圧均等化を行うことができる。
また、メインセルが外部電源から充電を行っている間に当該外部電源から予備セルを充電するので、セルバランスを開始する際には、予備セルを満充電した状態とすることができる。
【0050】
さらに、メインセルの充放電を行っていない期間に予備セルによるセルバランスを行うため、適切にメインセルの電圧均等化を行うことができる。また、セルバランスを行う際には、メインセルの各セル電圧がそれぞれ所定電圧に達するまで予備セルからの充電を行うので、セルバランス終了時にメインセルの各セル電圧を確実に一致させることができる。このとき、上記所定電圧をメインセルの最大充電電圧に設定すれば、セルバランス終了時に各メインセルを満充電させることができるので、エネルギー蓄積装置全体の容量を最大容量に確保することができる。
【0051】
また、予備セルとしてメインセルと同一構成のセルを用い、このセルを直列に複数接続することで予備セル容量と電圧とをメインセルのそれよりも大きくするので、セルバランス時には、複数のメインセルを適切に充電することができると共に、短時間でコンディショニングを行うことができる。
また、メインセルの各電圧をセルマネージメント回路によってモニターし、メインセルの何れかの電圧が上限電圧よりも高くなった場合に充電を禁止すると共に、メインセルの何れかの電圧が下限電圧よりも低くなった場合に放電を禁止する構成とする。したがって、セルの安全性を確保したエネルギー蓄積装置とすることができる。
【0052】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
この第2の実施形態は、予備セル7の充電を、メインセル21〜24の充電後にメインセル21〜24から行うようにしたものである。
(構成)
第2の実施形態における蓄電モジュール1は、前述した第1の実施形態において、予備セル7の充電電流供給方法および充電タイミングが異なることと、予備セル7の構成が異なることを除いては、第1の実施形態の蓄電モジュール1と同様の構成を有する。そのため、ここでは構成の異なる部分を中心に説明する。
【0053】
コントロール回路51は、CMS31からメインセル21〜24の外部充電器11からの充電が終了したことを示す信号を受信したとき、予備セル7への充電を開始する。本実施形態では、スイッチ部4を制御してメインセル21〜24を予備セル7に順次接続することで、メインセル21〜24から予備セル7への充電を行う。
予備セル7は、一つのメインセルより容量の大きい1セルで構成するか、またはメインセルと同一構成の複数のセル(例えば2つのセル)を並列接続して構成する。このとき、予備セル7はチャージポンプ的な結線として、メインセルに充電するときは直列接続、メインセルから充電されるときは並列接続とする。また、容量の大きな1セルで、メインセル充電時には昇圧回路経由とすることもできる。
【0054】
(動作)
次に、第2の実施形態の動作について説明する。
図4は、第2の実施形態の動作を説明するためのタイミングチャートである。ここで、図4(a)はメインセル電圧であり、図4(b)は予備セル電圧である。なお、図4(a)では、メインセル21及び22の電圧のみを記しており、V1がメインセル21のセル電圧、V2がメインセル22のセル電圧である。
先ず、エネルギー蓄積装置10は、時刻t11で外部充電器11からメインセル21〜24への充電を行う。そのため、メインセル21〜24の電圧は、この時刻t11から上昇していく。時刻t11〜時刻t12の充電期間では、前述した第1の実施形態のように、メインセル充電期間において予備セル7の充電動作は行わないため、図3の時刻t1〜t2に示すメインセル充電期間と比較して、メインセル21〜24の充電速度は速くなる。
【0055】
そして、時刻t12でメインセル21が満充電(最大充電電圧Vmax)となると、CMS31は充放電制御スイッチ32をオフ状態に切り替え、蓄電モジュール1から外部充電器11を取り外すことで、メインセル21〜24の充電を終了する。
次に、メインセル21〜24の充電動作が終了している状態の時刻t13で、蓄電モジュール1は、予備セル7の充電動作を開始する。すなわち、コントロール回路51は、時刻t13でスイッチ41A及び41Bをオン状態に切り替えることで、メインセル21から予備セル7への充電を行う。そして、一定の充電期間が経過した時刻t14でメインセル21の電圧が所定電圧VTHに低下したところで、コントロール回路51は、スイッチ41A及び41Bをオフ状態に切り替え、予備セル7の充電を終了する。
【0056】
このように、メインセル21から予備セル7への充電を行うので、時刻t13〜t14の期間では、メインセル21の電圧が低下し、予備セル7の電圧が上昇する。
なお、メインセル21〜24から予備セル7への充電を行う際には、電圧の高いメインセル(例えば、セル電圧が所定電圧VTH以上であるメインセル)と予備セル7とを順次接続するのが好ましい。このように構成することにより、追充電が必要なメインセルが予備セル7を充電するのを回避することができる。図4に示す例では、時刻t13におけるメインセル22のセル電圧が所定電圧VTH未満であるため、ここではメインセル21からのみ予備セル7への充電を行っているが、メインセル22〜24のセル電圧が所定電圧VTH以上であれば、メインセル21から予備セル7への充電後、順次メインセル22〜24を予備セル7と接続し、メインセル22〜24から予備セル7への充電を行うものとする。
【0057】
予備セル7の充電が終了すると、時刻t15で、メインセル21〜24のセルバランスを行う。
先ず、コントロール回路51は、CMS31で検出した時刻t15におけるメインセル21のセル電圧V1を取得し、このセル電圧V1が所定電圧VTH(<最大充電電圧Vmax)に達しているか否かを判定する。このとき、V1≧VTHであるため、コントロール回路51は、予備セル7からメインセル21への充電の必要はないと判断する。
【0058】
次に、コントロール回路51は、CMS31で検出した時刻t15におけるメインセル22のセル電圧V2を取得し、このセル電圧V2が所定電圧VTHに達しているか否かを判定する。このとき、V2<VTHであるため、コントロール回路51はスイッチ42A及び42Bをオン状態とし、それ以外のスイッチ部4のスイッチをオフ状態に制御することで、メインセル22と予備セル7とを並列に接続する。これにより、予備セル7からメインセル22へ充電を行う。そのため、この時刻t15からはメインセル22の電圧が上昇し、予備セル7の電圧が低下していく。そして、時刻t16で、メインセル22のセル電圧V2が所定電圧VTHに達すると、これがCMS31で検出される。すると、CMS31から検出信号を受け取ったコントロール回路51は、予備セル7からメインセル22への充電を終了するべく、スイッチ42A及び42Bをオフ状態に切り替える。
その後は、メインセル23及び24についても同様に予備セル7からの充電を行う。これにより、セルバランス終了時には、すべてのメインセル21〜24の電圧が所定電圧VTH以上となる。
【0059】
(効果)
このように、上記第2の実施形態では、外部充電器からメインセルへの充電が完了した後、メインセルから予備セルへの充電を行うので、外部充電器が接続されていない状態で予備セルの充電が可能である。
また、外部充電器からメインセルへの充電を行う期間に予備セルへの充電を行わない構成とするので、当該充電期間における予備セルの充電電流の発生を抑制することができる。そのため、上記充電期間にメインセルを効率良く充電することができる。その結果、予備セルによるメインセルのセルバランス期間を短縮することができる。
【0060】
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。
この第3の実施形態は、予備セル7の充電を、メインセル21〜24の充電中に外部充電器11から行うと共に、メインセル21〜24の充電後にメインセル21〜24から行うようにしたものである。
(構成)
第3の実施形態における蓄電モジュール1は、前述した第1及び第2の実施形態において、予備セル7の充電電流供給方法および充電タイミングが異なることを除いては、第1及び第2の実施形態の蓄電モジュール1と同様の構成を有する。そのため、ここでは構成の異なる部分を中心に説明する。
【0061】
コントロール回路51は、CMS31からメインセル21〜24の外部充電器11からの充電を開始することを示す信号を受信したとき、予備セル7への外部充電器11からの充電を開始するべく、予備充電制御スイッチ62をオン状態に切り替える。また、CMS31からメインセル21〜24の外部充電器11からの充電が終了したことを示す信号を受信したとき、スイッチ部4を制御してメインセル21〜24を予備セル7に順次接続することで、メインセル21〜24から予備セル7への充電を行う。このように、予備セル7を、外部充電器11とメインセル21〜24の両方から充電する。
【0062】
(動作)
次に、第3の実施形態の動作について説明する。
図5は、第3の実施形態の動作を説明するためのタイミングチャートである。ここで、図5(a)はメインセル電圧であり、図5(b)は予備セル電圧である。なお、図5(a)では、メインセル21及び22の電圧のみを記しており、V1がメインセル21のセル電圧、V2がメインセル22のセル電圧である。
先ず、エネルギー蓄積装置10は、時刻t21で外部充電器11からメインセル21〜24への充電を行う。そのため、メインセル21〜24の電圧は、この時刻t21から上昇していく。この時刻t21〜t22のメインセル充電期間においては、予備セル7の充電動作も同時に行う。そのため、このメインセル充電期間では、予備セル7の電圧も上昇する。
【0063】
次に、メインセル21〜24の充電動作が終了している状態の時刻t23で、蓄電モジュール1は、予備セル7の充電動作を開始する。すなわち、コントロール回路51は、時刻t23でスイッチ41A及び41Bをオン状態に切り替えることで、メインセル21から予備セル7への充電を行う。そして、一定の充電期間が経過した時刻t24でメインセル21の電圧が所定電圧VTHに低下したところで、コントロール回路51は、スイッチ41A及び41Bをオフ状態に切り替え、予備セル7の充電を終了する。したがって、この時刻t23〜t24の期間では、メインセル21の電圧が低下し、予備セル7の電圧が上昇する。
【0064】
この図5に示す例でも、上述した図4に示す例と同様に、時刻t23におけるメインセル22のセル電圧が所定電圧VTH未満であるため、メインセル21からのみ予備セル7への充電を行っている。
予備セル7の充電が終了すると、次いで時刻t25で、メインセル21〜24のセルバランスを行う。先ず、コントロール回路51は、CMS31で検出した時刻t25におけるメインセル21のセル電圧V1を取得し、このセル電圧V1が所定電圧VTH(<最大充電電圧Vmax)に達しているか否かを判定する。このとき、V1≧VTHであるため、コントロール回路51は、予備セル7からメインセル21への充電の必要はないと判断する。
【0065】
次に、コントロール回路51は、CMS31で検出した時刻t25におけるメインセル22のセル電圧V2を取得し、このセル電圧V2が所定電圧VTHに達しているか否かを判定する。このとき、V2<VTHであるため、コントロール回路51はスイッチ42A及び42Bをオン状態とし、それ以外のスイッチ部4のスイッチをオフ状態に制御することで、メインセル22と予備セル7とを並列に接続する。これにより、予備セル7からメインセル22へ充電を行う。そのため、この時刻t25からはメインセル22の電圧が上昇し、予備セル7の電圧が低下していく。そして、時刻t26で、メインセル22のセル電圧V2が所定電圧VTHに達すると、これがCMS31で検出される。すると、CMS31から検出信号を受け取ったコントロール回路51は、予備セル7からメインセル22への充電を終了するべく、スイッチ42A及び42Bをオフ状態に切り替える。
その後は、メインセル23及び24についても同様に予備セル7からの充電を行う。これにより、セルバランス終了時には、すべてのメインセル21〜24の電圧が所定電圧VTH以上となる。
【0066】
(効果)
このように、上記第3の実施形態では、外部充電器とメインセルとの両方から予備セルの充電を行うので、予備セルを十分に充電することができる。そのため、コンディショニング時には、複数のメインセルを確実に充電することができ、短時間でコンディショニングを終了することができる。
(変形例)
なお、上記各実施形態においては、メインセル部2を、4つのメインセルを直列に接続して構成する場合について説明したが、直列セル数を制限するものではなく、5つ以上のメインセルで構成することもできる。この場合にも、メインセルに対応したスイッチを設けるだけで予備セル7と接続可能な構成とすることができる。
【0067】
また、上記各実施形態においては、予備セル7を、メインセル21〜24と同一構成のセルを2つ直列接続して構成する場合について説明したが、3つ以上のセルを接続することもできる。
さらに、上記各実施形態においては、予備セル7としてメインセル21〜24と同一構成のセルを用いる場合について説明したが、予備セル7の容量若しくは最大電圧が一つのメインセルよりも高く設定されていればよく、メインセル21〜24とは異なる構成のセルを予備セル7として用いることもできる。予備セル7の電圧が低い場合には、コントロール回路51内にDC−DCコンバータを設けて昇圧した上でメインセル21〜24の充電に使用することもできる。予備セル7としては、二次電池の他に、一次電池や太陽電池、燃料電池などを用いることも可能である。
【0068】
また、上記各実施形態においては、CMS31からの所定の信号を受けてコントローラ51が自動的にメインセル21〜24のセルバランスを開始する場合について説明したが、手動でセルバランスを開始することもできる。この場合、図6に示すように、手動でオン/オフ操作が可能なスタートスイッチ15を設ける。そして、スタートスイッチ15がオンされたとき、コントロール回路51がこれを検知して、セルバランスを開始するようにする。
【0069】
さらに、上記各実施形態においては、バランスコントロール部5及び予備セル充電回路6の電源をメインセル部2から供給する場合について説明したが、図7に示すように、メインセル21〜24を充電する外部電源とは異なる外部電源から供給することもできる。図7において、符号16は外部電源入力端子である。この場合、予備セル7の充電を外部電源入力端子16に接続した外部電源から行うことができるので、メインセル21〜24の充放電のタイミングとは関係なく、任意のタイミングで予備セル7の充電を行うことができる。さらに、セルバランス期間中もメインセル21〜24の電圧が下がることがなくなり、短期間でセルバランスが終了する。
【0070】
(応用例)
なお、上記各実施形態においては、本発明をHEVの電源装置として用いる場合について説明したが、UPS(Uninterruptible Power Systems)や太陽電池エネルギー蓄積装置などでも同様の効果が得られる。また、充放電が頻繁に繰り返される建設機器などでは、特に効果的である。
【符号の説明】
【0071】
1…蓄電モジュール、2…メインセル部、3…セルマネージメント部、4…スイッチ部、5…バランスコントロール部、6…予備セル充電回路、7…予備セル7、8…プラス端子、9…マイナス端子、10…エネルギー蓄積装置、15…スタートスイッチ、16…外部電源入力端子、21〜24…メインセル、31…CMS、32…充放電制御スイッチ、51…コントロール回路、61…定電流源、62…予備セル充電制御スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直列接続された複数のメインセルと、当該メインセルを過充電及び過放電の少なくとも一方から保護するセル保護手段と、を備えるエネルギー蓄積装置であって、
前記メインセルとそれぞれ個別に並列接続可能な1つの予備セルと、
前記メインセルと前記予備セルとをそれぞれ個別に順次並列接続することで前記予備セルから前記メインセルを充電し、前記メインセル間の電圧均等化を行う電圧均等化手段と、を備えることを特徴とするエネルギー蓄積装置。
【請求項2】
前記メインセルの各セル電圧をそれぞれ検出する電圧検出手段と、
前記メインセルと前記予備セルとをそれぞれ個別に並列接続可能なスイッチ群と、を備え、
前記電圧均等化手段は、前記電圧検出手段で検出した前記メインセルの電圧に基づいて、前記各セル電圧を均等化するように、前記スイッチ群のオンオフを制御することを特徴とする請求項1に記載のエネルギー蓄積装置。
【請求項3】
前記予備セルは、前記メインセルを外部電源から充電している期間に、前記外部電源から充電されることを特徴とする請求項1又は2に記載のエネルギー蓄積装置。
【請求項4】
前記予備セルは、前記メインセルを外部電源から充電した後に、前記メインセルから充電されることを特徴とする請求項1又は2に記載のエネルギー蓄積装置。
【請求項5】
前記予備セルは、任意のタイミングで、前記メインセルを充電する外部電源とは異なる第2の外部電源から充電されることを特徴とする請求項1又は2に記載のエネルギー蓄積装置。
【請求項6】
前記電圧均等化手段は、前記メインセルと外部電源又は外部機器とを接続する外部端子が開放状態である期間に、前記メインセル間の電圧均等化を行うことを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載のエネルギー蓄積装置。
【請求項7】
前記電圧均等化手段は、前記メインセルの各セル電圧がそれぞれ所定電圧に達するまで、前記予備セルから前記メインセルへの充電を行うことを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載のエネルギー蓄積装置。
【請求項8】
前記所定電圧は、前記メインセルの最大充電電圧であることを特徴とする請求項7に記載のエネルギー蓄積装置。
【請求項9】
前記予備セルは、一つの前記メインセルよりも容量または最大電圧が高いセルであることを特徴とする請求項1〜8の何れか1項に記載のエネルギー蓄積装置。
【請求項10】
前記予備セルは、前記メインセルと同一構成のセルを複数接続して構成されていることを特徴とする請求項9に記載のエネルギー蓄積装置。
【請求項11】
前記セル保護手段は、前記メインセルの各セル電圧の上限電圧及び下限電圧の少なくとも一方を監視し、前記上限電圧を監視する場合には、前記メインセルと外部電源とを接続した充電時に、前記メインセルの何れか1つのセル電圧が前記上限電圧に達したときに充電を終了することで、前記メインセルを過充電から保護し、前記下限電圧を監視する場合には、前記メインセルと外部機器とを接続した放電時に、前記メインセルの何れか1つのセル電圧が前記下限電圧に達したときに放電を終了することで、前記メインセルを過放電から保護することを特徴とする請求項1〜10の何れか1項に記載のエネルギー蓄積装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−23802(P2012−23802A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−157765(P2010−157765)
【出願日】平成22年7月12日(2010.7.12)
【出願人】(000000033)旭化成株式会社 (901)
【Fターム(参考)】