説明

エネルギ吸収構造

【課題】エネルギ吸収体の圧壊によるエネルギ吸収ストロークを増すことができるエネルギ吸収構造を得る。
【解決手段】エネルギ吸収構造10は、繊維強化樹脂にて筒状に形成され軸方向からの入力荷重によって圧壊されるエネルギ吸収部材34と、エネルギ吸収部材34における荷重入力側と反対側の軸方向端部に接合された板状のベース部材32と、エネルギ吸収部材34とベース部材32との接合部分に設けられた排出部38とを備える。排出部38は、エネルギ吸収部材34が圧壊されるのに伴って生じる破片Hを該エネルギ吸収部材34内の空間から外部へ排出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筒状のエネルギ吸収部材を有するエネルギ吸収構造に関する。
【背景技術】
【0002】
移動体の外壁に繊維強化樹脂の中空体を取り付けて成るエネルギ吸収構造体が知られている(例えば、特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−118370号公報
【特許文献2】特開2005−247096号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、単に中空体を外壁に取り付ける構造では、該中空体の圧壊によるエネルギ吸収の際に、外壁にて閉じられた中空体の内部に破片がたまり、中空体を潰しきる前に底付きしてしまう。
【0005】
本発明は、エネルギ吸収体の圧壊によるエネルギ吸収ストロークを増すことができるエネルギ吸収構造を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明に係るエネルギ吸収構造は、繊維強化樹脂にて筒状に形成され、軸方向からの入力荷重によって圧壊されるエネルギ吸収部材と、前記エネルギ吸収部材における前記荷重入力側と反対側の軸方向端部に接合された板状の支持部材と、前記エネルギ吸収部材と前記支持部材との接合部分に設けられ、前記エネルギ吸収部材が圧壊されるのに伴って生じる破片を該エネルギ吸収部材内の空間から外部へ排出するための排出部と、を備えている。
【0007】
請求項1記載のエネルギ吸収構造では、軸方向の一端側で支持部材に直接的又は間接的に接合されたエネルギ吸収部材の他端に所定値以上の荷重が入力されると、該荷重によってエネルギ吸収部材が圧壊され、エネルギ吸収が果たされる。この圧壊に伴って生じるエネルギ吸収部材の破片は、少なくとも一部が排出部を通じて該エネルギ吸収部材の外側に排出される。このため、本エネルギ吸収構造では、エネルギ吸収部材内に破片がたまることが抑制され、この分だけエネルギ吸収構造の圧壊によるエネルギ吸収ストロークを増すことができる。
【0008】
このように、請求項1記載のエネルギ吸収構造では、エネルギ吸収体の圧壊によるエネルギ吸収ストロークを増すことができる。
【0009】
請求項2記載の発明に係るエネルギ吸収構造は、請求項1記載のエネルギ吸収構造において、前記排出部は、前記エネルギ吸収部材の筒壁に対する外側に前記破片を排出するように形成されている。
【0010】
請求項2記載のエネルギ吸収構造では、筒状を成すエネルギ吸収体の筒壁の外側に該エネルギ吸収部材の破片が排出される。すなわち、破片は、エネルギ吸収部材の軸方向との交差方向に沿って、良好に排出される。
【0011】
請求項3記載の発明に係るエネルギ吸収構造は、請求項1記載のエネルギ吸収構造において、前記排出部は、前記支持部材の厚み方向に前記破片を排出するように形成されている。
【0012】
請求項3記載のエネルギ吸収構造では、支持部材の厚み方向すなわち筒状を成すエネルギ吸収体の軸方向に沿って、該エネルギ吸収部材の破片が該エネルギ吸収部材の外側に良好に排出される。
【0013】
請求項4記載の発明に係るエネルギ吸収構造は、請求項2記載のエネルギ吸収構造において、前記排出部は、前記エネルギ吸収部材の筒壁における前記支持部材側の端部に形成された切り込み部を設けることで形成されている。
【0014】
請求項4記載のエネルギ吸収構造では、エネルギ吸収部材の筒壁に設けた切り込み部を通じて、該エネルギ吸収部材の破片が該エネルギ吸収部材の軸方向との交差方向に沿って良好に排出される。
【0015】
請求項5記載の発明に係るエネルギ吸収構造は、請求項2記載のエネルギ吸収構造において、前記支持部材は、前記エネルギ吸収部材の端部内に入り込まされた接合部において該エネルギ吸収部材の内面に接合されており、前記排出部は、前記前記エネルギ吸収部材の筒壁及び前記接合部の少なくとも一方に切り込み部を設けることで形成されている。
【0016】
請求項5記載のエネルギ吸収構造では、エネルギ吸収部材の筒壁及び支持部材の接合部の少なくとも一方に設けた切り込み部を通じて、該エネルギ吸収部材の破片が該エネルギ吸収部材の軸方向との交差方向に沿って良好に排出される。
【0017】
請求項6記載の発明に係るエネルギ吸収構造は、請求項2記載のエネルギ吸収構造において、前記排出部は、前記エネルギ吸収部材の端面における周方向の一部と離間する凹部を前記支持部材に設けることで形成されている。
【0018】
請求項6記載のエネルギ吸収構造では、支持部材側に形成された凹部(とエネルギ吸収部材の端面との隙間)を通じて、エネルギ吸収部材の破片が該エネルギ吸収部材の軸方向との交差方向に沿って良好に排出される。
【0019】
請求項7記載の発明に係るエネルギ吸収構造は、請求項3記載のエネルギ吸収構造において、前記支持部材は、前記エネルギ吸収部材の軸方向に対向する一対の板材間の空間が、該一対の板材に挟まれた区画壁にて前記軸方向と直交する断面視で複数の空間に区画され中空構造体とされており、前記排出部は、前記一対の板材のうち前記エネルギ吸収部材側に位置する板材に、該エネルギ吸収部材の内部と前記中空構造体内の空間とを連通する開口部である。
【0020】
請求項7記載のエネルギ吸収構造では、ハニカム構造体である支持部材の一方の板材に形成された開口部が、該ハニカム構造体内の区画された空間の一部に臨んでおり、該開口部を通じてエネルギ吸収部材の破片が支持部材の厚み方向すなわちエネルギ吸収体の軸方向に沿って良好に排出される。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように本発明に係るエネルギ吸収構造は、エネルギ吸収体の圧壊によるエネルギ吸収ストロークを増すことができるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るエネルギ吸収構造を示す図であって、(A)は斜視図、(B)は側断面図、(C)は変形例の側断面図である。
【図2】(A)は、本発明の第1の実施形態に係るエネルギ吸収構造を構成するエネルギ吸収部材によるエネルギ吸収過程の状態を模式的に示す側断面図、(B)は、比較例に係るエネルギ吸収部材によるエネルギ吸収過程の状態を模式的に示す側断面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係るエネルギ吸収構造が適用される自動車車体を模式的に示す分解斜視図である。
【図4】本発明の第2の実施形態に係るエネルギ吸収構造を示す図であって、(A)は斜視図、(B)は側断面図、(C)は変形例の側断面図である。
【図5】本発明の第3の実施形態に係るエネルギ吸収構造を示す図であって、(A)は斜視図、(B)は側断面図である。
【図6】本発明の第4の実施形態に係るエネルギ吸収構造を示す図であって、(A)は斜視図、(B)は側断面図である。
【図7】本発明の第5の実施形態に係るエネルギ吸収構造を示す図であって、(A)は斜視図、(B)は側断面図である。
【図8】本発明の第6の実施形態に係るエネルギ吸収構造を示す図であって、(A)は斜視図、(B)は分解斜視図である。
【図9】本発明の第6の実施形態に係るエネルギ吸収構造を示す図であって、(A)は側断面図、(B)は変形例の側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の第1の実施形態に係るエネルギ吸収構造10について、図1〜図3に基づいて説明する。なお、各図に適宜記す矢印FR、矢印UP、矢印Wは、それぞれエネルギ吸収構造10が適用された自動車の前方向(進行方向)、上方向、車幅方向を示している。以下の説明において、単に前後、上下の方向を用いる場合は、車両前後方向、車両上下方向を示すものとする。
【0024】
図3には、エネルギ吸収構造10が適用される自動車のアンダボディ12が模式的な斜視図にて示されている。この図に示される如く、アンダボディ12は、フロア部14と、フロア部14の前端から上向きに立設された立壁部としてのダッシュロア部16と、フロア部14の後端から上向きに立設されたロアバック部18とを含んで構成されている。ダッシュロア部16、ロアバック部18は、それぞれフロア部14の略全幅に亘る長さを有し、正面視では車幅方向に長手の略矩形状を成している。
【0025】
また、ダッシュロア部16の車幅方向両端からは、後向きに前側壁20が延設されており、ロアバック部18の車幅方向両端からは、前向きに後側壁22が延設されている。前側壁20、後側壁22は、それぞれの下部がフロア部14の車幅方向外端部から低く立設された側壁(ロッカ)24にて連結されている。アンダボディ12は、図3に示される如く全体としてバスタブ状(側壁の一部が切りかかれたバスタブ状)に形成されている。
【0026】
以上説明したアンダボディ12は、樹脂材にて構成されている。アンダボディ12を構成する樹脂材として、例えば炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維などの強化繊維を含有する繊維強化樹脂を用いても良い。
【0027】
ダッシュロア部16を構成する前壁28には、エネルギ吸収構造10を構成するエネルギ吸収構造体30が面接触状態で固定されるようになっている。エネルギ吸収構造体30は、平板状のベース部材32と、該ベース部材32に後端側が接合された複数のエネルギ吸収部材34とを主要部として構成されている。
【0028】
各エネルギ吸収部材34は、軸方向が前後方向に略一致された円筒状を成しており、それぞれ中空の構造体とされている。各エネルギ吸収部材34は、繊維強化樹脂にて構成されており、軸方向に所定値以上の圧縮荷重が入力されると、圧壊しながらエネルギ吸収を果たす構成とされている。エネルギ吸収部材34を構成する繊維強化樹脂としては、例えば炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維などの強化繊維を含有するものを用いることができる。
【0029】
図1(A)及び図1(B)に示される如く、各エネルギ吸収部材34は、その後端面34Aがベース部材32の前面32Aに接着剤36にて接合されている。図3に示される如く、エネルギ吸収部材34は、上下方向及び車幅方向にそれぞれ複数配置されている。
【0030】
そして、エネルギ吸収構造10では、図1(A)及び図1(B)に示される如く、エネルギ吸収部材34におけるベース部材32との接合部(の近傍)である後端部に、排出部38が形成されている。この実施形態における排出部38は、エネルギ吸収部材34の筒壁(エネルギ吸収部材34自体)の後端に後向きに開口する略「コ」字状の縁部を有する切り込み部(切欠部)40を形成することで構成されている。
【0031】
この実施形態では、エネルギ吸収部材34の周方向に複数(図示例では4つ)の排出部38が形成されている。各排出部38は、エネルギ吸収部材34が圧壊される際に生じる該エネルギ吸収部材34の破片Hを該エネルギ吸収部材34内の空間に対する外側に排出する経路を構成している。なお、図1(B)では、その中心線CLを挟む両側で異なる断面(排出部38の形成部分と非形成部分と)を示している。
【0032】
また、エネルギ吸収構造体30は、隣り合うエネルギ吸収部材34が排出部38からの破片Hの排出を阻害しないように、該隣り合うエネルギ吸収部材34の間隔などが設定されている。
【0033】
次に、第1の実施形態の作用を説明する。
【0034】
上記構成のエネルギ吸収構造10では、エネルギ吸収部材34の前端に衝突体Iが衝突し、この際の軸方向の圧縮荷重が所定値以上であると、エネルギ吸収部材34には軸方向に圧壊されながら、衝突エネルギを吸収する。これにより、エネルギ吸収構造10では、ベース部材32よりも後方部分、すなわちアンダボディ12(キャビン)の変形が抑制される。
【0035】
ここで、エネルギ吸収構造10では、エネルギ吸収部材34に排出部38が設けられているので、該エネルギ吸収部材34の全長に対する衝突の際の衝撃吸収ストロークを大きく採ることができる。この点を図2(B)に示す比較例との比較で説明する。
【0036】
図2(B)に示す比較例では、エネルギ吸収部材34に代えて排出部38(切り込み部40)を有しないエネルギ吸収部材100を有する。この構成では、エネルギ吸収部材100の圧壊に伴って、該エネルギ吸収部材100の破片Hが中空のエネルギ吸収部材100内にたまってしまう。このため、衝突体Iは、破片Hのたまった部分まで到達すると、底付きしてしまい、それ以上の有効なエネルギ吸収が阻害される。このため、エネルギ吸収部材100は、所要のエネルギ吸収ストロークを確保するために、その全長を長く設定する等の対策が必要になる。すなわち、破片Hがたまることで潰れきらない分の長さと、圧壊される分の長さとの和の長さが要求される。
【0037】
これに対してエネルギ吸収構造10では、エネルギ吸収部材34に排出部38が設けられているので、図2(A)に示される如く、エネルギ吸収部材34の圧壊に伴って生じる破片Hは、該エネルギ吸収部材34の体積減少に伴う空気流(正圧)などによって、排出部38から排出される。これにより、エネルギ吸収部材34内に破片Hがたまることが防止又は著しく抑制され、上記比較例と比較して、エネルギ吸収部材34の全長に占めるエネルギ吸収ストロークが長くなる。
【0038】
このように、第1の実施形態に係るエネルギ吸収構造10では、エネルギ吸収体の圧壊によるエネルギ吸収ストロークを増すことができる。なお、エネルギ吸収部材34における切り込み部40の形成部分は、他の部分と比較してエネルギ吸収の際の荷重(エネルギ吸収量)は減少するものの、エネルギ吸収に寄与する(エネルギ吸収ストロークに含まれる)。
【0039】
なお、第1の実施形態に係るエネルギ吸収構造10では、エネルギ吸収構造体30が支持部材としての前壁28に接合されるベース部材32を備えた例(エネルギ吸収部材34が間接的に前壁28に接合される例)を示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、図1(C)に示される如く、エネルギ吸収部材34が直接的に支持部材としての前壁28(ダッシュロア部16)に接合された構成としても良い。
【0040】
次に、本発明の他の実施形態を説明する。なお、上記第1の実施形態又は前出の構成と基本的に同一の部品・部分については、上記第1の実施形態又は前出の構成と同一の符号を付して説明を省略する。
【0041】
(第2の実施形態)
図4(A)には、本発明の第2の実施形態に係るエネルギ吸収構造50が、分解斜視図にて示されている。この図に示される如く、エネルギ吸収構造50は、ベース部材32と複数のエネルギ吸収部材34とを主要部とするエネルギ吸収構造体30に代えて、ベース部材52と複数のエネルギ吸収部材34とを主要部とするエネルギ吸収構造体54を備えて構成されている。
【0042】
ベース部材52は、エネルギ吸収部材34内に入り込む接合部としての環状の嵌合壁部56を有し、図4(B)に示される如く、嵌合壁部56の外周面56Aが接着剤36にてエネルギ吸収部材34の内周面34Bに接着により接合されている。
【0043】
そして、嵌合壁部56の周方向におけるエネルギ吸収部材34の切り込み部40に対応する位置には、前向きに開口する縁部を有する切り込み部58がそれぞれ形成されている。これらエネルギ吸収部材34側の切り込み部40とベース部材52側の嵌合壁部56とによって、排出部38が形成されている。エネルギ吸収構造50における他の構成は、図示しない部分を含め、エネルギ吸収構造10の対応する構成と同様に構成されている。
【0044】
したがって、第2の実施形態に係るエネルギ吸収構造50によっても、基本的に第1の実施形態に係るエネルギ吸収構造10と同様の作用によって同様の効果を得ることができる。また、エネルギ吸収構造50では、ベース部材52の嵌合壁部56がエネルギ吸収部材34の後端側に重なっているため、ベース部材52を繊維強化樹脂にて構成することで、切り込み部40の形成によって減少したエネルギ吸収量を嵌合壁部56の圧壊で補うこと構成とすることができる。
【0045】
なお、第2の実施形態では、嵌合壁部56が筒状(切り起こし状)に形成された例を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、図4(C)に示される如く、嵌合壁部56に代えて、有底筒状の嵌合壁部59を設けた構成としても良い。この場合、切り込み部58は、外周面59Aから底部59Bに跨るように形成される。
【0046】
また、第2の実施形態では、エネルギ吸収部材34に切り込み部40が形成されると共に嵌合壁部56に切り込み部58が形成された例を示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、エネルギ吸収部材34の後端面34Aを前壁28から離間させて該エネルギ吸収部材34の内周面34Bと嵌合壁部56の外周面56Aとを接合する構成としたり、後端面34Aと嵌合壁部56の前端面とを接着剤36を介して接合する構成としたりすることで、切り込み部58が単独で排出部38を形成する構成としても良い。これらの場合、エネルギ吸収部材34には切り込み部40を設けなくても良い(エネルギ吸収部材34に代えて、後述するエネルギ吸収部材64を採用しても良い)。
【0047】
(第3の実施形態)
図5(A)には、本発明の第3の実施形態に係るエネルギ吸収構造60が、分解斜視図にて示されている。この図に示される如く、エネルギ吸収構造60は、ベース部材32と複数のエネルギ吸収部材34とを主要部とするエネルギ吸収構造体30に代えて、ベース部材62と複数のエネルギ吸収部材64とを主要部とするエネルギ吸収構造体66を備えて構成されている。
【0048】
エネルギ吸収部材64は、切り込み部40を有しない点でのみエネルギ吸収部材34と異なる。ベース部材62は、接合部としての嵌合壁部68を有する。嵌合壁部68は、エネルギ吸収部材64の内周面64Aに接着剤36を介して接合される接着面68Aと、内周面64Aから離間される凹面68Bとが形成されている。この実施形態では、複数の接着面68Aと凹面68Bとが周方向に交互に設けられている。
【0049】
嵌合壁部68における凹面68Bが形成された部分のベース部材62には、前向きに開口するように板厚方向に凹まされた凹部62Aが形成されている。図5(B)に示される如く、ベース部材62は、凹部62Aにおいてエネルギ吸収部材64の後端面64Bとの間に隙間が形成されている。すなわち、内周面64Aと凹面68Bとの隙間G1、後端面64Bと凹部62Aとの隙間G2が繋がることで、この実施形態における排出部38が形成されている。
【0050】
エネルギ吸収構造60では、後向きに凸を成す凹面68Bを受け入れるように、前壁28にも凹部28Aが形成されている。エネルギ吸収構造60における他の構成は、図示しない部分を含め、エネルギ吸収構造50(エネルギ吸収構造10)の対応する構成と同様に構成されている。
【0051】
したがって、第3の実施形態に係るエネルギ吸収構造50によっても、基本的に第1、第2の実施形態に係るエネルギ吸収構造10、50と同様の作用によって同様の効果を得ることができる。また、エネルギ吸収構造60では、エネルギ吸収部材64が切り込み部40を有しないので、該エネルギ吸収部材64の略全長をエネルギ吸収に供することができる(同じ長さのエネルギ吸収部材34と比べて吸収できるエネルギ量が増す)。
【0052】
(第4の実施形態)
図6(A)には、本発明の第4の実施形態に係るエネルギ吸収構造70が、分解斜視図にて示されている。この図に示される如く、エネルギ吸収構造70を構成するエネルギ吸収構造体72は、ダッシュロア部16の前壁28に複数のエネルギ吸収部材64が接合されて構成されている。
【0053】
エネルギ吸収部材64の後端面64Bは、接着剤36によって前壁28の前面28Bに接合されている。前壁28には、凹部62Aとの間に隙間G3を形成する凹部28Cが形成されている。この実施形態では、周方向に複数の凹部28Cが配置されることで、周方向に複数の排出部38が形成されている。エネルギ吸収構造70における他の構成は、図示しない部分を含め、エネルギ吸収構造10、60の対応する構成と同様に構成されている。
【0054】
したがって、第4の実施形態に係るエネルギ吸収構造70によっても、嵌合壁部68の圧壊によるエネルギ吸収効果を除いて、基本的に第1、第3の実施形態に係るエネルギ吸収構造10、60と同様の作用によって同様の効果を得ることができる。
【0055】
なお、第4の実施形態では、エネルギ吸収部材64が支持部材としての前壁28に接合された例を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、複数のエネルギ吸収部材64が支持部材としてのダッシュロア部16に接合される構成としても良い。この場合、ダッシュロア部16には、凹部28Cに相当する凹部が設けられる。
【0056】
(第5の実施形態)
図7(A)には、本発明の第5の実施形態に係るエネルギ吸収構造75が、分解斜視図にて示されている。この図に示される如く、エネルギ吸収構造75を構成するエネルギ吸収構造体74は、ダッシュロア部16の前壁28から接合部としての有底の嵌合壁部76が突出されて構成されている。
【0057】
嵌合壁部76には、嵌合壁部68と同様に、接着面76A、凹面76Bが交互に形成されており、嵌合壁部76における凹面76Bが形成された部分の前壁28には、前向きに開口するように板厚方向に凹まされた凹部28Cが形成されている。図7(B)に示される如く、前壁28は、凹部28Cにおいてエネルギ吸収部材64の後端面64Bとの間に隙間が形成されている。すなわち、内周面64Aと凹面76Bとの隙間G1、後端面64Bと凹部62Aとの隙間G2が繋がることで、この実施形態における排出部38が形成されている。エネルギ吸収構造70における他の構成は、図示しない部分を含め、エネルギ吸収構造10、60、70の対応する構成と同様に構成されている。
【0058】
したがって、第5の実施形態に係るエネルギ吸収構造75によっても、嵌合壁部68の圧壊によるエネルギ吸収効果を除いて、基本的に第1、第3、第4の実施形態に係るエネルギ吸収構造10、60と同様の作用によって同様の効果を得ることができる。
【0059】
(第6の実施形態)
図8(A)には、本発明の第6の実施形態に係るエネルギ吸収構造80が斜視図にて示されており、図8(B)にはエネルギ吸収構造80の分解斜視図が示されている。これらの図に示される如く、エネルギ吸収構造80は、ベース部材62と複数のエネルギ吸収部材64とを主要部とするエネルギ吸収構造体66に代えて、ベース部材82と複数のエネルギ吸収部材64とを主要部とするエネルギ吸収構造体84を備えて構成されている。
【0060】
ベース部材82は、前後方向に対向する一対の板材としての前壁86と後壁88との間に区画壁としてのハニカム部材90が挟まれた中空構造体としてのハニカム構造体として構成されている。ハニカム部材90は、前壁86と後壁88との間で前後方向に立設されたハニカム状の壁(の集合体)であり、該前壁86と後壁88との間の空間を複数の空間Rに区画している。
【0061】
前壁86には、排出部92を構成する透孔が形成されており、ベース部材82のいくつかの空間Rが排出部92に臨んでいる。そして、図9(A)に示される如く、エネルギ吸収部材64の後端面64Bは、前壁86の前面86Aにおける排出部92の周縁部に接着剤36にて接合されている。これにより、エネルギ吸収構造80では、エネルギ吸収部材64の破片Hは、排出部92からベース部材82の空間R内に排出されるようになっている。エネルギ吸収構造70における他の構成は、図示しない部分を含め、エネルギ吸収構造10の対応する構成と同様に構成されている。
【0062】
したがって、第6の実施形態に係るエネルギ吸収構造80によっても、基本的に第1の実施形態に係るエネルギ吸収構造10と同様の作用によって同様の効果を得ることができる。また、エネルギ吸収構造80では、破片Hがベース部材82の厚み方向に排出されるので、隣り合うエネルギ吸収部材64によって破片Hの排出が阻害されることがない。したがって、エネルギ吸収構造80では、エネルギ吸収構造10、50、60、70と比べて、エネルギ吸収部材64を密に配置することが可能となる。
【0063】
なお、第6の実施形態では、エネルギ吸収部材64の後端面64Bが前壁86の前面86Aに接合された例を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、図9(B)に示される如く、前壁86における排出部92の周縁部から前向きに突出させた嵌合壁部94の外周面94Aを、接着剤36を介してエネルギ吸収部材64の内周面64Aに接合するようにしても良い。
【0064】
また、上記した各実施形態では、エネルギ吸収構造体30、54、66、72、74、84がダッシュロア部16の前壁28に接合される構成としたが、本発明はこれに限定されない。例えば、エネルギ吸収構造10、50、60、70、75、80は、破片Hを反衝突側に排出する孔などを形成できない車体の支持部材に、エネルギ吸収構造体30、54、66、72、74、84を接合して構成されても良い。
【0065】
さらに、本発明は、上記した各実施形態に限定されることはなく、その要旨を逸脱しない範囲で各種変形して実施可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0066】
10 エネルギ吸収構造
28 前壁(支持部材)
28C 凹部
32 ベース部材(支持部材)
34 エネルギ吸収部材
38 排出部
40 切り込み部
50・60・70・75・80 エネルギ吸収構造
52・62・82 ベース部材
56・59・68・76・94 嵌合壁部(接合部)
62A 凹部
64 エネルギ吸収部材
86 前壁(一対の板材の一方)
88 後壁(一対の板材の他方)
90 ハニカム部材(区画壁)
92 排出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維強化樹脂にて筒状に形成され、軸方向からの入力荷重によって圧壊されるエネルギ吸収部材と、
前記エネルギ吸収部材における前記荷重入力側と反対側の軸方向端部に接合された板状の支持部材と、
前記エネルギ吸収部材と前記支持部材との接合部分に設けられ、前記エネルギ吸収部材が圧壊されるのに伴って生じる破片を該エネルギ吸収部材内の空間から外部へ排出するための排出部と、
を備えたエネルギ吸収構造。
【請求項2】
前記排出部は、前記エネルギ吸収部材の筒壁に対する外側に前記破片を排出するように形成されている請求項1記載のエネルギ吸収構造。
【請求項3】
前記排出部は、前記支持部材の厚み方向に前記破片を排出するように形成されている請求項1又は請求項2記載のエネルギ吸収構造。
【請求項4】
前記排出部は、前記エネルギ吸収部材の筒壁における前記支持部材側の端部に形成された切り込み部を設けることで形成されている請求項2記載のエネルギ吸収構造。
【請求項5】
前記支持部材は、前記エネルギ吸収部材の端部内に入り込まされた接合部において該エネルギ吸収部材の内面に接合されており、
前記排出部は、前記前記エネルギ吸収部材の筒壁及び前記接合部の少なくとも一方に切り込み部を設けることで形成されている請求項2記載のエネルギ吸収構造。
【請求項6】
前記排出部は、前記エネルギ吸収部材の端面における周方向の一部と離間する凹部を前記支持部材に設けることで形成されている請求項2記載のエネルギ吸収構造。
【請求項7】
前記支持部材は、前記エネルギ吸収部材の軸方向に対向する一対の板材間の空間が、該一対の板材に挟まれた区画壁にて前記軸方向と直交する断面視で複数の空間に区画され中空構造体とされており、
前記排出部は、前記一対の板材のうち前記エネルギ吸収部材側に位置する板材に、該エネルギ吸収部材の内部と前記中空構造体内の空間とを連通する開口部である請求項3記載のエネルギ吸収構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2012−137129(P2012−137129A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−288753(P2010−288753)
【出願日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】