説明

エポキシ化されたモノヒドロキシル化ジエンポリマーからUV硬化性の接着剤およびシーラントを製造するための、非水性溶媒を使用しない方法

【課題】少なくとも2つの異なるジエンモノマーを構成単位とするブロックポリマーのモノヒドロキシル化エポキシ化合物からなるUV硬化性の接着剤、シーラント、コーティング剤の提供。
【解決手段】ヒドロキシル基がポリマー分子の一方の端部に結合している、水素化されてもよく、または水素化されなくてもよいイソプレンとブタジエンとのブロックコポリマーのエポキシ化は、トリアリールスルホニウム塩からなる群から選択される不溶性の光開始剤とともに使用すると迅速なUV硬化を達成できる。上記ポリマー組成物は、25℃から130℃(好ましくは40℃から100℃)の温度で、高速混合装置(好ましくは高速ディスクディスペンサー)において、ブレード先端速度が200cm/秒から2000cm/秒である混合条件下で行うことが肝要である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モノヒドロキシル化されたジエンポリマーから製造される接着剤およびシーラントの新しい製造方法に関する。より詳細には、本発明は、通常の場合には不溶性の光開始剤が非常に微細なミクロエマルションでポリマーに取り込まれるそのような方法に関する。
【背景技術】
【0002】
UV硬化性の接着剤組成物およびシーラント組成物および組成物における新規なエポキシ化されたモノヒドロキシル化ポリジエンの使用およびその製造方法が米国特許第5,776,998号に記載されている。このようなポリマーは、接着剤製品およびシーラント製品に適するようにするために粘着性付与樹脂などの他の成分と組み合わせられている。光開始剤が、組成物のUV硬化(架橋)を促進させるためにこの組合せに含められる。そのような材料を製造する先行技術の方法には、テトラヒドロフラン(THF)などの非水性溶媒中で成分を混合し、その後、溶液から接着性フィルムを注型することが含まれた。THFが使用されたのは、選択された特定の市販の光開始剤(プロピレンカーボネートにおけるトリアリールスルホニウムヘキサフルオロアンチモナートの混合塩)が、そうでない場合には、接着剤配合物に可溶性ではないが、THFには可溶性であったからである。接着剤が溶媒注型された後、THFを蒸発させて、残留する接着性フィルムに光開始剤が十分に分散され、UV光に露光したときに効果的なUV硬化が開始されるような状態にされていた。
【0003】
多くの適用に関して、非水性溶媒の使用は、環境に有害であるために、そして非水性溶媒の除去コストおよび非水性溶媒自体のために望ましくない。米国特許第5,776,998号には、効果的に硬化した接着剤またはシーラントが、溶媒の問題を伴うことなく製造されるように、同じ光開始剤および他の光開始剤をエポキシ化されたモノヒドロキシル化ジエンポリマー配合物に分散させるための、非水性溶媒を使用しない方法が記載された。この方法は、剪断速度が少なくとも38,000S−1である高剪断混合機での高剪断条件のもとで、または出力密度が少なくとも4ワット/ミリリットルである超音波処理器での高剪断条件のもとで、非水性溶媒を用いることなく成分を混合することを含んでいた。
【0004】
米国特許第5,776,998号の方法に従って、その特許に記載されているように、直径が10ミクロン未満である液滴サイズを有する微細な分散物を達成することができた。実際、この特許の方法により製造される最良の分散物は、直径が約0.5ミクロンである液適サイズを有する分散を達成することができた。特許に記載されているように、UV硬化した良好な接着剤生成物およびシーラント生成物を、特許に記載される混合方法によって製造される分散物を用いて製造することができる。
【0005】
このような分散物(エマルション)での経験は、非常に小さい粒子サイズの光開始剤エマルションを得ることが非常に重要であることを示している。直径が約0.5ミクロンであることが明らかであるそのような光開始剤エマルションは、直径が1ミクロン以上であるエマルションよりもはるかに有益である。非常に微細なエマルションは、活性な開始剤が接着剤配合物全体に基づいて0.04重量パーセントから0.1重量パーセント(wt%)もの低いレベルで使用されたときにほぼ瞬間的に硬化させることが可能である。配合物の最も高価な成分であるものをあまり必要としないという明らかな利点に加えて、その非常に低いレベルは、最終的な硬化した配合物が最大の熱安定性を有することを可能にする。光開始剤のUV露光によって生じる酸の残留量が少ないほど、ゲルの網目構造における結合の破壊が起こらなくなる。
【0006】
光開始剤エマルションを配合物に導入する好ましい方法は、これまで、配合物の成分の1つにおける光開始剤の高濃度エマルションを最初に作製し、次いでそれを配合物の最後の成分として加えることであった。光開始剤の高濃度物を事前に作製することには利点がいくつかある。第1に、光開始剤エマルションを使用前に調べることができる。第2に、必要とされる装置が設置されている別の場所でエマルションを調製することができる。第3に、はるかに少ない量の材料を超音波処理器または非常に高剪断な装置で処理することができ、従って、装置のサイズを小さくすることができる。第4に、光開始剤の正確な量を配合物に容易に添加することができる。大抵の場合、光開始剤の高濃度物は、超音波処理により調製されている、KRATON LIQUID(登録商標)ポリマーL−1203(モノオールポリマー)におけるトリアリールスルホニウムヘキサフルオロアンチモナート塩の5wt%エマルションである。光開始剤の高濃度物は、超音波処理により調製されている、KRATON LIQUID(登録商標)ポリマーL−207(エポキシ化されたモノオールポリマー)における同じ塩の5wt%エマルションであることもある。
【0007】
光開始剤高濃度物およびその製造におけるいくつかの改善が産業での作業から明らかになっている。第1に、超音波処理器または非常に高剪断なローター/ステーター装置よりも剪断が小さく、入手が容易な装置でエマルションを製造できることが強く求められている。第2に、光開始剤エマルションの高濃度物が事前に、または別の場所で作製される場合、エマルション高濃度物の重要な特徴の1つは、保管条件および運搬条件のもとでのその貯蔵安定性である。上記の理由から、凝集して、粒子サイズを増大させる傾向をほとんど有しない分散物を作製することは非常に重要である。増大した安定性は非常に所望されている。第3に、最小限の使用に対して最大の硬化を引き出すために、最少の液滴サイズのエマルションを作製することが常に求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第5,776,998号明細書
【発明の概要】
【0009】
本発明は、UV硬化性の接着剤、シーラント、コーティング剤、インク、柔軟な印刷用プレート、積層性接着剤、ファイバー、ガスケット、および関連する組成物、フィルム、および薄い部品を製造するための方法である。この場合、少なくとも2つの異なるジエンモノマーから構成され、その少なくとも1つがエポキシ化に好適な不飽和をもたらすジエンモノマーであるエポキシ化されたモノヒドロキシル化ポリジエンポリマーが組成物に対する結合剤の一部として使用される。好ましいエポキシ化されたモノヒドロキシル化ポリマーは、1個のヒドロキシル基がポリマー分子の一方の端部に結合している、イソプレンとブタジエンとのブロックコポリマーである。このようなポリマーは水素化されてもよく、または水素化されていなくてもよい。
【0010】
本方法は、トリアリールスルホニウム塩からなる群から好ましくは選択される不溶性の光開始剤とともに上記ポリマーを混合すること、またはそのような光開始剤とともにポリマーを1つ以上の他の配合成分と混合することを含む。その後、混合物は、25℃から130℃の温度で、好ましくは40℃から100℃の温度で、約200cm/秒から2000cm/秒のブレード先端速度での中速度から高速度の混合装置における比較的小さい剪断の混合条件に供される。本方法は、迅速なUV硬化を行わせるために、接着剤、コーティング剤、シーラント、その他の配合物に添加される、通常の場合には光開始剤およびエポキシ化モノオールポリマーのみからなる安定なカチオン性光開始剤の高濃度物を作製するために非常に適している。分散された光開始剤の液滴は、直径が1ミクロン未満であり、好ましくは0.5ミクロン以下であり、そして好ましくはエマルション高濃度物に均一に分散されている。
【発明を実施するための形態】
【0011】
エチレン性不飽和を含有する様々なポリマーが、1つ以上のオレフィン(特にジオレフィン)をそれ自身または1つ以上のアルケニル芳香族炭化水素モノマーと共重合することによって調製され得る。当然のことではあるが、そのようなコポリマーは、直鎖状、スター状または放射状であると同時に、ランダム状、テーパー状、ブロック状またはこれらの組合せであり得る。
【0012】
一般に、溶液のアニオン技術が使用されるとき、必要な場合にはビニル芳香族炭化水素との共役ジオレフィンのコポリマーが、同時または連続的に重合されるモノマー(1つまたは複数)を、IA族の金属(好ましくは、リチウム)、それらのアルキル化体、アミド、シラノラート、ナフタリド、ビフェニル化体またはアントラセニル誘導体などのアニオン性重合開始剤と接触させることによって調製される。モノヒドロキシル化ポリジエンは、これらのリチウム開始剤を用いて共役ジエン炭化水素をアニオン重合することによって合成される。この方法は、米国特許第4,039,593号および再発行特許第27,145号(これらの記載は参照により本明細書中に取り込まれる)に記載されているように十分に知られている。重合は、リビングポリマー骨格をそれぞれのリチウム部位において組み立てるモノリチウム開始剤によって開始される。
【0013】
アニオン重合させることができる共役ジオレフィンには、約4個から約24個の炭素原子を含有するそのような共役ジオレフィンが挙げられ、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン、ピペリレン、メチルペンタジエン、フェニルブタジエン、3,4−ジメチル−1,3−ヘキサジエン、4,5−ジエチル−1,3−オクタジエンなどが含まれる。イソプレンおよびブタジエンは、低コストであり、かつ容易に得ることができるため、本発明において使用される好ましい共役ジエンモノマーである。
【0014】
本発明のモノヒドロキシル化ポリジエンポリマーは下記の構造式を有する:
(I) (HO)−AB−(OH)
式中、AおよびBは、共役ジオレフィンモノマーのホモポリマーブロックまたは共役ジオレフィンモノマーのコポリマーブロックであり得るポリマーブロックである。一般に、Aブロックは、Bブロックが有するよりも、より高度に置換された脂肪族二重結合の濃度が大きいことが好ましい。従って、Aブロックは、1ユニットのブロック塊あたり、Bブロックが有するよりも高濃度の二置換、三置換または四置換の不飽和部位(脂肪族二重結合)を有する。これにより、最大の表面エポキシ化がAブロックにおいて生じるポリマーが得られる。
【0015】
Aブロックは分子量が500から4,000(好ましくは1000から3000)であり、Bブロックは分子量が2000から10,000(好ましくは3000から6000)である。xおよびyは0または1である。xまたはyのいずれかは1でなければならないが、同時には一方のみが1であり得る。AブロックまたはBブロックのいずれかは、何らかの開始または好ましくない共重合速度による漸減またはキャップ処理の困難さを補うために、異なる組成の、分子量が50から1000であるポリマーのミニブロックでキャップ処理することができる。このようなポリマーは、ポリマー1gあたり0.5から4ミリ当量(meq)のエポキシを含有するようにエポキシ化することができる。
【0016】
上記の説明に含まれるジブロックが好ましい。水素化およびエポキシ化が行われる前のそのようなジブロックの全体的な分子量は2500から14,000(好ましくは3000から7000)の範囲であり得る。例えば、Iがイソプレンを表し、Bがブタジエンを表し、そしてスラッシュ(/)がランダムコポリマーのブロックを表す場合、ジブロックは下記の構造を有し得る:
低ビニル−B高ビニル−OH、I−B−OH、I−I/B−OH
これらのジブロックは、光開始剤の高濃度物を調製するために良好な粘度を示すという点で好都合である。ヒドロキシルがブタジエンブロックに結合していることが好ましい。これは、エポキシ化がイソプレンについてより有利に進行し、そしてポリマー上の官能基の間が隔てられているからである。これにより、両端でもまた硬化し得るより特徴的な界面活性剤様分子が得られる。KRATON LIQUID(登録商標)L−207は、商業的な量で得ることができる、水素化およびエポキシ化されたI−B−OHポリマーである。これは、IブロックおよびBブロックについて好ましい範囲に含まれる。エポキシ化および水素化が行われる前のその全体的な分子量は約5400から6600である。
【0017】
ベースポリマーのエポキシ化は、事前に生成させることができる有機過酸または現場で生成させることができる有機過酸との反応によって行うことができる。事前に生成された好適な過酸には、過酢酸および過安息香酸が挙げられる。現場での生成は、過酸化水素およびギ酸などの低分子量の脂肪酸を使用することによって達成され得る。これらの方法および他の方法が米国特許第5,229,464号および同第5,247,026号(これらは参照により本明細書中に組み込まれる)においてより詳しく記載されている。これらのポリジエンポリマーのエポキシ化量はポリマー1gあたり0.5ミリ当量から4ミリ当量のエポキシドの範囲である。より低いレベルが、過硬化を避けるためには望ましい。4meq/gを越えた場合、剛性、架橋密度、コスト、製造の困難さ、およびポリマーの極性(ある種のモノヒドロキシジエンポリマーを許容せず、そして光開始剤を溶解しないような極性)が大きくなりすぎるので、利益をもたらさない。好ましいエポキシ化量は1meq/gから3meq/gであり、最も好ましいエポキシ化量は、KRATON LIQUID(登録商標)L−207では、約1.4meq/gから2.0meq/gの量である。最も好ましい量は、硬化対過硬化の割合を最も良くバランスさせ、そしてポリジエン系接着剤とともに一般に使用されている様々な配合成分との適合性をより良好に維持する。さらに、最も好ましい量により、優れた光開始剤エマルションが得られる。エポキシ化は、二量体および三量体が生成するために、ジブロックの分子量および粘度をいくらかか増大させ得る。このことは、本発明に対して不利にはならない。
【0018】
直鎖状ポリマー、またはポリマーの非アセンブル化直鎖状セグメント(例えば、モノブロック、ジブロック、トリブロックなど、スター状ポリマーのアーム)のカップリング前の分子量は、GPCシステムが適切に校正されているゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって都合よく測定される。アニオン重合した直鎖状ポリマーの場合、ポリマーは本質的には単分散である(重量平均分子量/数平均分子量の比が1に近い)。低分子量の官能化ポリマーの場合、特に、ポリマーが二量体および三量体の生成のためにわずかに多分散性になっている場合には、数平均分子量がクロマトグラフから計算されるはずである。GPCのカラムにおいて使用される物質については、スチレン−ジビニルベンゼンゲルまたはシリカゲルが一般には使用され、そしてこれらは優れた物質である。テトラヒドロフランが、本明細書中に記載されるタイプのポリマーに対する優れた非水性溶媒である。屈折率検出器を使用することができる。GPCの校正は、同じタイプのいくつかのポリマーについて、最初にプロトンNMRによる数平均分子量を測定することによって行うことができる。
【0019】
所望する場合には、これらのブロックコポリマーは部分的に水素化することができる。水素化は、米国再発行特許第27,145号(これは参照により本明細書中に組み込まれる)に開示されているように選択的に行うことができる。これらのポリマーおよびコポリマーの水素化は、ラネーニッケルのような触媒、白金などの貴金属、米国特許第5,039,755号(これもまた参照により組み込まれる)におけるような可溶性の遷移金属触媒およびチタン触媒の存在下での水素化を含む様々な十分に確立された方法によって行うことができる。ポリマーは種々のジエンブロックを有することができ、そしてこれらのジエンブロックを、米国特許第5,229,464号(これもまた参照により本明細書中に組み込まれる)に記載されているように選択的に水素化することができる。部分的に不飽和化されたヒドロキシル化ポリマーは、さらに官能化して、本発明のエポキシ化ポリマーを作製するために有用である。部分的な不飽和化は、好ましくは、エポキシ化に好適な0.5meqから4meqの脂肪族二重結合がポリマー上に残存するように行われる。エポキシ化が行われ、その後、水素化される場合には、残存する脂肪族二重結合のすべてを水素化することが好ましい。
【0020】
本発明の結合剤は、酸触媒を使用するカチオン的な手段によって硬化させることができるが、好ましくは、紫外線照射または電子ビーム照射によって硬化させられる。非常に様々な電磁波波長を利用する放射線硬化が可能である。イオン化放射線(アルファ線、ベータ線、ガンマ線、X線など)および高エネルギー電子または非イオン化放射線(紫外線、可視光線、赤外線、マイクロ波およびラジオ周波数など)のいずれかを使用することができる。この照射がいかにして達成され得るかの完全な記載は、同じ所有者の米国特許第5,229,464号(これは参照により本明細書中に組み込まれる)に見出される。
【0021】
放射線を使用する場合、架橋反応を開始させるために光開始剤を用いることが必要である。本発明を実施するためには、光開始剤は液体形態でなければならず、そして本発明のポリマーの少なくとも1つにおいて不溶性でなければならない。現在利用できるスルホニウム塩の開始剤はすべてが液体形態であり(開始剤はプロピレンカーボネートに溶解される)、そして本発明の最も好ましいポリマーにおいて実質的に不溶性であろう。そのような光開始剤はまた、乳化にも非常に好適である。これに反して、現在利用できるヨードニウム塩の光開始剤はすべてまたはほとんどが、そのアルキル鎖または使用されるカチオンのために、本発明のポリマーにおいて少なくともある程度の溶解性を有し、従って、本発明には適していない。これらは、エマルションを不安定化しないならば、補助的な添加剤として接着剤またはシーラントの配合物に添加することができる。乳化に対して有用な光開始剤には、下記のトリアリールスルホニウムヘキサフルオロアンチモナート塩が挙げられる:Union Carbideから得られるCyracure UVI−6974(混合型トリアリールタイプ)、Von Roll Isolaから得られるUVE−1014(混合型トリアリールタイプ)、旭電化工業(株)から得られるADEKAオプチマーSP−170、およびSartomerから得られるSarcat CD1010。下記のアリールスルホニウムヘキサフルオロアンチモナート塩もまた乳化に好適であるが、それらは、その硬化がより遅いため、それほど望ましくない:Union Carbideから得られるCyracure UVI6990、Von Roll Isolaから得られるUVE−1016、旭電化工業(株)から得られるADEKAオプチマーSP−150、およびSartomerから得られるSarcat CD1011。いくつかの可溶性のヨードニウム光開始剤として、Sartomerから得られるSarcat CD−1012、Rhodiaから得られるRhodorsil R−2074、(4−オクチルオキシフェニル)−フェニルヨードニウムのヘキサフルオロアンチモナート塩またはリン酸塩、および(4−デシルオキシフェニル)−フェニルヨードニウムのヘキサフルオロアンチモナート塩またはリン酸塩が挙げられる。
【0022】
これらのオニウム塩は、単独で、または長波長のUV光および可視光に応答する光増感剤と一緒に使用することができる。光増感剤の例として、チオキサントン、アントラセン、ペリレン、フェノチアジオン、1,2−ベンゾアトラセン、コロネン、ピレンおよびテトラセンが挙げられる。本発明の分散物/エマルションは40重量%以上までの光開始剤を含有することができる。
【0023】
本発明により、上記に記載されている不溶性の光開始剤は、非水性溶媒を必要とすることなく放射線硬化し得る組成物を製造するために、上記に記載されているポリマーに、必要な場合には粘着性付与剤などの他の成分と一緒に分散させることができる。ポリマー、必要に応じて使用される樹脂、および光開始剤は、高速度ではあるが、中程度の剪断の混合条件のもとで混合装置において混合される。
【0024】
混合は、200cm/秒から2000cm/秒のブレード先端速度で行われる。混合時の速度が約200よりも小さい場合、乳化された液滴の一部は直径が1ミクロンよりも大きくなり得る。これは、初期硬化を遅くし、生成物の自己寿命を低下させる。混合時の速度が大ざっぱに約2000cm/秒よりも大きい場合には、不必要な熱が生じる。除去されない熱エネルギーはエマルションの温度を上昇させ、これは、より大きい先端速度の何らかの潜在的な有利な効果を無効にしやすい。限界の最大先端速度は十分に規定された値ではない。限界の最大先端速度は、製造状況において実際に除去され得るよりも多くの熱をもたらすことがどのくらいの速度で予想されるかを大いに示唆し得る。ブレード先端速度は、ディスク(ブレード、インペラー)の直径および軸の回転数rpmによって決定される。市販の高速ディスペンサーは5000ft/分(2540cm/秒)までをもたらすことができる。
【0025】
本発明に対する好ましい先端速度は300cm/秒から1500cm/秒であり、最も好ましくは800cm/秒から1200cm/秒である。混合時の温度は25℃から130℃の範囲であり得るが、好ましくは40℃から100℃の範囲であり、最も好ましくは50℃から80℃の範囲であり得る。温度が130℃よりも高い場合、粒子のあまりにも多くが1ミクロンを越える直径を有する傾向がある。エマルション高濃度物は、少なくとも本発明の限界最低速度および限界最高温度の近くで作製されないときには、ミクロエマルションであると考えられる。典型的には、ミクロエマルションは、ミクロエマルションがもはや安定ではなく、従って液滴が大きくなる上部相転移温度を有する。本発明のエマルション高濃度物に関しては、相変化温度は、おそらくは、使用されるポリマーの大きい粘度/分子量のために、または使用されているポリマー「界面活性剤」の特別な官能性のために、急激ではなく、緩やかである。過度な温度によりエマルションが損なわれる場合、本発明の「ミクロエマルション」は、温度を低下させ、そして単に混合することによって容易に再形成させることができる。
【0026】
本発明が実施され得る混合装置の例は、ブレード先端速度を達成することができ、かつある程度の加熱能力および冷却能力を有する最も一般的に利用可能な装置である。本発明における使用に好ましい一例が、塗料および顔料の分散を混合するために1000秒−1よりも十分に低い剪断速度で通常的に使用される高速ディスクディスペンサーであるHockmeyer混合機である。様々な高速ディスペンサーが、1979年にJohn Wiley&Sonsによって刊行された、Temple C.PattonによるPaint Flow and Pigment Dispersionに記載されている。それらは、層流で一般に操作され、従って、10,000秒−1もの大きい剪断の乱流状態を生じさせることができないことは明らかである。
【0027】
この装置はまた、UV光の露光を制限するための蓋を有し得る。他の拡張には、消泡およびUV光制限のための真空釜、初期の過熱を避けるために成分を予備混合するための別の低速混合エレメント、そして、高速ブレード域への粘性物質の移動を助けるための、それ自身のディスクをそれぞれが有するさらなるシャフトが含まれる。
【0028】
本発明の方法は、開始剤の非常に安定なミクロエマルションを生じさせるようである。ミクロエマルションの液滴サイズは、大抵の場合には0.5ミクロン未満であり、そして、そのほとんどは少なくとも初期には非常に小さいので、白色光を用いて2000倍で光学顕微鏡を透過モードで使用して検出することができない。一般に、そのような光学顕微鏡は1ミクロン以上の粒子を区別することができるだけである。それにもかかわらず、直径が1ミクロンよりも小さい粒子または構造物の存在を、開始剤の小さい液滴によって、または小さい液滴の凝集体によって散乱または反射された光から生じる擬粒子(不鮮明な明暗点)を観察することにより検出することができる。(約0.5ミクロンであると考えられる)サイズが一層より小さくなるか、または小さい液滴の集合が止むと、何も検出することができない。0.5ミクロン以下の液滴サイズを得ることは、液滴の均一な分散とともに、最終組成物の良好なUV硬化および光開始剤エマルション高濃度物に対する最も良い貯蔵安定性を達成するためには非常に重要である。そのような液滴の存在およびそれらの分布は、これらの小さいサイズが達成されたときには、はるかにより複雑な装置によって検出され得るだけである。LeicaのTSC共焦点レーザー走査顕微鏡を、そのようなエマルション粒子を画像化するために反射モードで使用することができる。
【0029】
ポリマーとの適合性を有する接着促進性樹脂または粘着性付与樹脂を、一般にはポリマーの100部あたり20部から400部で添加することは一般に行われていることである。一般的な粘着性付与樹脂は、約95℃の軟化点を有する、ピペリレンおよび2−メチル−2−ブテンのジエン−オレフィンコポリマーである。この樹脂はWingtack(登録商標)95の商品名で市販されており、そして米国特許第3,577,398号に教示されているように、60%のピペリレン、10%のイソプレン、5%のシクロペンタジエン、15%の2−メチル−2−ブテンおよび約10%の二量体をカチオン重合することによって調製されている。他の粘着性付与樹脂を用いることができるが、この場合、そのような樹脂状コポリマーは20重量%から80重量%のピペリレンおよび80重量%から20重量%の2−メチル−2−ブテンを含む。これらの樹脂は、通常、ASTM法E28によって測定されるような環球式軟化点を約80℃から115℃の間に有する。
【0030】
水素化された樹脂は、通常、ポリマー自体が水素化されるときに使用される。有用な水素化樹脂として、Herculesから得られるRegalrez(登録商標)樹脂が挙げられる。これは、スチレン型コモノマーを使用して重合が行われたベース樹脂の選択的水素化によって製造されている。水素化度は30%から100%の範囲である。軟化点は18℃から140℃まで変化する。他の有用な樹脂として、混合された芳香族モノマー原料流から重合されたベースポリマーの選択的水素化によって製造されるRegalite(登録商標)樹脂が挙げられる。軟化点は90℃から125℃まで変化する。Regalite(登録商標)TおよびVの樹脂もまた有用である。Arakawaから得られるArkon(登録商標)Pシリーズの樹脂も同様に有用である。他の有用な樹脂には、Herculesから得られるAdtac LVおよびPiccolyte(登録商標)S25などのポリテルペン樹脂および液状樹脂が含まれる。
【0031】
配合において使用される特定のポリマーとの適合性を有し、かつ光開始剤液滴のUV光透過性または溶解性バランスを認められるほど妨害しないならば、芳香族樹脂もまた粘着性付与剤として用いることができる。通常、このような芳香族樹脂もまた環球式軟化点を約80℃から115℃の間に有するはずであるが、高い軟化点および低い軟化点を有する芳香族樹脂の混合物もまた使用することができる。有用な樹脂として、クマロン−インデン樹脂、ポリスチレン樹脂、ビニルトルエン−α−メチルスチレンコポリマーおよびポリインデン樹脂が挙げられる。
【0032】
必要に応じて使用される本発明の成分は、熱分解、酸化、表皮形成および色形成を阻害または遅らせる安定化剤である。安定化剤は、典型的には、組成物の調製時、使用時および高温貯蔵時の熱分解および酸化からポリマーを保護するために、市販の化合物に添加される。
【0033】
接着剤は、保護された環境で使用される(2つの物質を接着する)粘着性組成物の薄い層であることが多い。従って、水素化されていないエポキシ化ポリマーは、通常、十分な安定性を有しており、従って、樹脂のタイプおよび濃度は、安定性に対する大きな懸念を抱くことなく最大の粘着性のために選択されるが、顔料は通常の場合には使用されない。
【0034】
シーラントは隙間充填剤である。従って、シーラントは、2つの物質の間の空間を満たすためにかなり厚い層で使用される。そのような2つの物質は互いに動くことが多いので、シーラントは、通常、この動きに耐えることができる低弾性率の組成物である。シーラントは天候にさらされることが多いので、水素化されたエポキシ化ポリマーが、通常、使用される。樹脂および可塑剤が、低い弾性率を維持し、かつ汚れ付着を最小限にするために選択される。充填剤および顔料は、適切な耐久性および色を与えるために選択される。シーラントはかなり厚い層で適用されるので、非水性溶媒の含有量は、収縮を最小限にするために、できる限り低くされる。
【0035】
実施例
下記の実施例において使用される物質には、下記が含まれる:
1.KRATON LIQUID(登録商標)ポリマーのL−1203AおよびL−1203Bはともに、1個のヒドロキシル基が分子の一方の端部に位置する水素化されたポリブタジエンモノオールである。Aは数平均分子量が3750であり、Bは数平均分子量が3500である。
【0036】
2.KRATON LIQUID(登録商標)ポリマーのL−1302は、数平均分子量が約6400である水素化されたイソプレン−ブタジエンブロックコポリマーである。
【0037】
3.KRATON LIQUID(登録商標)ポリマーのL−207は、ポリマー1グラムあたり約1.7meqのエポキシがポリマー上に存在するように、主にイソプレンブロックにおいてエポキシ化されていることを除いて、ポリマーL−1302と同一である。
【0038】
4.UVI−6974は、トリアリールスルホニウムヘキサフルオロアンチモナートである、Union Carbideによって製造されている光開始剤である。
【0039】
5.UVE−1014は、トリアリールスルホニウムヘキサフルオロアンチモナートである、Von Roll Isola USA,Inc.から得られる光開始剤である。これはUVI−6974と交換可能である。
【0040】
6.SP−170は、UVI−6974と類似すると考えられる、Adekaから得られる光開始剤である。
【0041】
7.Regalite(登録商標)R−91は、混合された芳香族モノマー原料流から重合されたベース樹脂の選択的な部分的水素化によりHerculesによって製造されている、水素化された混合型芳香族粘着性付与樹脂である。これは88℃の環球式軟化点を有する。
【0042】
下記の実験のほとんどにおいて、混合は、Hockmeyerの実験室/パイロット規模の2馬力の混合機で行われた。この2馬力の装置は、約1ガロンから4ガロンの塗料配合物または接着剤配合物を混合することができ、そして直径が4インチの平らな歯状ブレードが取り付けられている1本の軸(いくつかの実験では、3つの表面の間の2組のフィンによって溶接された3つの平らな表面からなる直径が4インチの代わりのブレードが使用された)、単一速度の電動モーター、および軸の速度を制御するためのベルト/プーリーシステムを有する。この混合機は、600rpmから1900rpmの間で連続的な軸速度を達成することができる。
【0043】
小さいインペラーを備えた実験室用の77ワットの電動混合機もまた使用された。軸の回転速度は約650rpmから1850rpmの間で変化させることができる。インペラーブレードの直径は1.5インチであった。
【0044】
使用された主要な顕微鏡は、白色光、Plan100/1.25オイル対物レンズ、Miroimage Video SystemsのAutomatiCan A106Aビデオ、Sonyトリニトロン高解像度カラービデオモニターおよびToshiba HC−1200Aカラービデオプリンターを備えた(1980年型)Zeiss顕微鏡の最上位機種であった。この顕微鏡は、直径が約1ミクロンよりも小さい光開始剤液滴は明瞭に区別することができないが、1ミクロンよりも小さい液滴または液滴会合体の存在は検出することができる。約0.5ミクロンよりも小さい液滴および会合した液滴は検出することができない。非常に最新のLeica TSC共焦点レーザー走査顕微鏡もまた使用された。これは、そのようなエマルション粒子を画像化するために反射モードで使用された。この顕微鏡は63Xの油浸レンズを備えた。このレンズは、焦点深度が0.4ミクロンであり、横方向の解像度が0.15ミクロンであった。この顕微鏡は、約0.2ミクロンもの小さい直径の液滴を検出することができる。この顕微鏡は、Zeiss顕微鏡を用いて見ることができないミクロエマルションの細部を観察するために、利用できるときに使用された。液体媒体中の液滴の運動は液滴を不鮮明にさせるので、短い走査時間が使用された。
【0045】
実施例1(比較例)
この実験により、光開始剤の分散物を作製するための、米国特許第5,776,998号に記載されているような先行技術の方法の限界が示される。光開始剤エマルションの50グラムの回分処理物を、UVI−6974光開始剤と、L−1203AおよびL−1203Bの両ポリマーとを別々の実験で使用して、’998号特許で使用される超音波処理器(Branson450ソニファイヤー)で調製した。2.5グラムの光開始剤および47.5グラムのポリマーを重量測定して、小さいビンに入れ、そしてオーブンで135℃に加熱し、その後、1分間超音波処理して、冷却した。結果を2つのポリマーについて下記の表1に示す。理解され得るように、そして’998号特許において議論されているように、小さい液滴サイズを有するエマルションが、L−1203Aを使用して達成された。L−1203Aは、分子量(および粘度)がL−1203Bよりも大きかった。このエマルションは接着剤配合物において早い硬化をもたらした。一方、L−1203Bを使用して形成されたエマルションは、Zeissを使用して液滴が容易に認められ、液滴は2.5ミクロンもの大きさであり、そして加熱時効処理したときには一層大きくなった。下記に示されるように、これは、UV硬化を生じさせることについて同じ配合ではあまり効果的ではなかった。この挙動は、これらの光開始剤エマルションを用いて本発明者らが観測したことの特徴をよく示している。より大きい液滴がZeissを使用して認められ、これは、より不良なUV硬化に対応している。この実施例はまた、光開始剤エマルション高濃度物を安定化させることを助けるために特定の最小分子量/粘度を有することの重要性を明らかにしている。超音波処理により、L−1203Bを使用したときには、L−1203Aと同様に、非常に小さい液滴が瞬間的に作製されることが予想されるはずである。そのような液滴が観測されなかったという事実は、粘度が非常に低く、そのため、液滴−液滴の衝突を遅らせることができないために、分散物を冷却し、そして顕微鏡写真を撮影するために要した時間でさえ、液滴が安定に存続できないことを示唆している。
【0046】
【表1】

【0047】
【表2】

【0048】
実施例2(比較例)
別の比較例として、連続相の粘度が低すぎることの明らかな問題を、UVI−6974を超音波処理して、このタイプのポリマーを使用するカチオン性UV硬化用接着剤において使用される樹脂の特徴をよく示す粘着性付与樹脂に加えることを試みることによって調べた。Regalite(登録商標)R−91は、ポリマーL−1203B(M=3500)よりも小さい分子量を有し(Mは約600である)、室温で固体である。2.0グラムのUVI−6974および38.0グラムのRegalite(登録商標)R−91粘着性付与樹脂を小さいガラスビンに加え、135℃に加熱して、1.5分間超音波処理した。サンプルを取り出して、顕微鏡のスライドガラスに載せ、カバーガラスをその上にかぶせた。サンプルは直ちに固化した。残りを剥離紙の上に注ぎ、ほぼ即時的に固化させた。混合物は、超音波処理段階のときには粘度が非常に低く、そして非常に小さい液滴が瞬間的に形成されていたかもしれないが、分散された光開始剤のほとんどは大きい液滴であった。下記の表2に示される結果を参照のこと。この場合、Zeissで検出可能なエマルション液滴のサイズは0.5ミクロンから2.4ミクロンの範囲であった。
【0049】
【表3】

【0050】
実施例3
少量のUVI−6974光開始剤(混合物の5パーセント)を、上記に記載されたHockmeyer混合機を使用してL−207エポキシ化ポリマーに分散させた。ポリマーをステンレススチール製ポットに移し、100℃のオーブンに入れて加温した。ポットを混合機の下のホットプレートに載せて、ホットプレートを使用し、そして低速の混合を行いながら135℃に加熱した。混合物が135℃に達すると、軸の速度を1800rpmに上げた。1800rpmで保ちながら、光開始剤を約10分かけてゆっくり加えた。バッチの温度を約135℃で維持しながら、混合物を1800rpmでさらに10分間混合した。混合機を停止させ、少量のサンプルを採取して、Zeiss顕微鏡で観察した。光開始剤の液滴は、下記の表3に報告されるように、所望する0.5ミクロンから1.0ミクロンの範囲内であった。2時間後、バッチ温度は65℃に低下していた。そのとき、別のサンプルを採取して、顕微鏡で観察した。変化を認めることはできなかった。粒子のサイズ、数および分布は同じであるようであった。液滴のサイズおよび分布は一貫して、超音波処理法によって光開始剤の分散物を作製したときに得られたのとほぼ同じであるようであった。
【0051】
ミクロエマルションは、通常、ミクロエマルションがそれよりも高い温度で壊れる上部温度限界を有する。多くの場合、その温度は70℃から100℃の範囲にある。光開始剤とL−207ポリマーとの相互作用がこの場合には何らかの特別な重要性を有し、おそらくはミクロエマルションの形成にさえ好適であり得ると推測して、混合機を戻し、作動させた。速度は短時間(約3分)で2050rpmにまで達した。これは早すぎるので、ベルト/プーリーシステムが処理することができず、駆動ベルトがプーリーから外れ、切れた。残念なことに、混合機は、ベルトが切れたときには3分間作動しただけであった。しかし、これは、温度が65℃よりも著しく上昇する時間がほとんどなかったので好都合であった。サンプルを顕微鏡検査のためにポットから採取したが、短い混合時間のために、何ら大きな期待を有していなかった。驚くべきことに、混合時間がほんの極端に短い場合でさえ、エマルションは劇的に改善されていた。光開始剤液滴のほとんどすべてをZeiss顕微鏡で認めることができなかった。明らかに、超音波処理によって以前に達成されたエマルションよりもはるかに微細なエマルションが作製されていた。従って、温度は、非常に重要な要因であると考えられた。
【0052】
Hockmeyer混合機または類似する装置では、明らかに剪断がより小さいために、温度上昇を伴うことなく、L−207ポリマーを65℃もの低い温度で十分に混合することができ、それでもなお、はるかにより微細で、おそらくはより安定なエマルションを作製することができる。Hockmeyer混合機は層流条件のもとで運転された。層流条件のもとでは、最大剪断速度Rは、ディスクと混合タンクの底との分離距離(cmで示される)で除された先端速度(cm/seで表される)に等しい。通常的な流れパターンをもたらすディスクとタンクの底との通常の距離はディスク直径の0.5倍から1.0倍であり、これは、4インチのブレードについては5.08cmから10.16cmに対応する。従って、それぞれの混合において認められる最大剪断速度は、大まかには、5.08cmで除された先端速度である。
【0053】
この特定のエマルションの有用性を調べる最終試験として、少量が感圧性接着剤に添加され(活性な光開始剤は配合物の0.04重量パーセントであり)、その後、暖かい接着剤をUV光にさらした。接着剤はほぼ瞬間的に硬化した。接着剤は、短時間の露光後、20秒以内に触れるまでに完全に硬化していた。
【0054】
【表4】

【0055】
実施例4
この実験では、代わりのブレードがHockmeyer混合機に対して使用された。これは、3つの面の間の2組のフィンによって一緒に溶接されている3つの平らな面からなる、直径が4インチのブレードであった。製造者の文献は、このブレード配置により、それ以外のブレードの剪断よりも少々増大した剪断が得られることを示唆している。
【0056】
3つのポリマー(L−1302、L−207およびL−1203)を、不溶性の光開始剤UV−6974を分散させるその能力について比較した。光開始剤を、下記の表4に示されるように、増大した速度を使用して、これらのポリマーのそれぞれに分散させた。表から理解されるように、L−207のみが、非常に微細な液滴サイズのエマルションを製造することにおいて効果的であった。得られた液滴は、実際に非常に小さく、Zeiss顕微鏡を使用して観測することができなかった。このエマルションは、非常に大きい剪断を適用することによって形成される通常のエマルションのどれよりもミクロエマルションに類似しているようであった。それ以外の2つのポリマーは、商業的に許容され得ない粗いエマルションをもたらした。それらは硬化が遅く、耐用期間が非常に短かった。より大きい液滴が、残っているより小さい液滴を素早く取り込み、そして硬化を妨げるからである。この三重リングブレードは、不溶性光開始剤およびポリマーL207を使用して極めて小さい良好なエマルションを作製するために好適であったが、以前に使用されたより単純な平らなブレードほど効果的であるようではなかった。平らなブレードは、少々小さい剪断および少々大きい混合作用をもたらし、そして本発明の所望する結果である極めて微細なエマルションを作製するためにより好適であるようである。
【0057】
【表5】


【0058】
実施例5
三重リングブレードをはずし、以前に使用された歯状の平らなブレードと交換した。実施例4のエマルションの2つ(−69および−70)を重量測定して、L−207を含むエマルションの5部とL−1302を含むエマルションの95部との比率でポットに入れた。混合物を60℃に加熱し、その後、1800rpmで20分間混合した。少量を取り出して、液滴サイズを調べた。ちょうど5部のL−207/光開始剤分散物が存在することは、下記の表5に示されるように、(実施例4のL−1302エマルションに対して比較して)エマルションを根本的に改善するには十分であった。別の実験において、L−207エマルションをさらにポットに加えて、20部のそのエマルションと80部のL−1302エマルションとの新しい混合比にした。再び60℃から開始して、混合物を1800rpmで20分間混合した。得られたエマルションは非常に改善されていたので、下記の表5に示され得るように、実施例4の100パーセントのL−207/光開始剤エマルションと識別できないようであった。このことは、L−207と光開始剤との相互作用が特に十分であり、エマルション高濃度物において利用可能なポリマーのほんの20パーセントがL−207でなければならないことを示している。再度ではあるが、小さいサイズのエマルションが低い混合温度で生じることは、ミクロエマルションが生じていたことを示唆している。
【0059】
【表6】

【0060】
実施例6
L−207/光開始剤の特別なエマルションを作製するために最も望ましい混合温度をさらに明らかにするために、混合温度として60℃および90℃を使用して、回分処理物を作製した。結果を下記の表6に示す。明らかに、90℃は許容され得る温度ではあるが、60℃ほど良好でないことが理解され得る。表の結果はまた一貫して、温度が制御され得る限り、大きい軸速度(より大きいブレード先端速度)で混合することによって、より良好なエマルションが形成されることも示している。
【0061】
【表7】


【0062】
実施例7
以前の超音波処理法を使用した場合、光開始剤の添加が5重量パーセントよりも大きいとき、エマルションは非常に不安定であり、商業的使用に適していなかった。本実施例では、光開始剤およびポリマーL−207のエマルションを、5重量パーセント、20重量パーセントおよび40重量パーセントの光開始剤の添加で調製した。実験結果を下記の表7に記載する。表において、優れたエマルションが3つの添加量のすべてで調製され得ること、そしてエマルションが室温で非常に安定であることが理解される。エマルションを70℃で1週間にわたって保存した場合、高温でのエマルションの安定性が、より少ない添加で増大していること(すなわち、5パーセント>20パーセント>40パーセント)をこれらの結果が示しているように、5パーセントの添加を使用することが有益であるようである。しかし、混合が終了するまでの温度は、光開始剤の添加量の関数として増大した。40パーセントの添加で、温度は、混合が終了するまでに88℃に達した。このことは、前の実施例で60℃よりも望ましくないことが既に示されていた。ポットが冷水ジャケットまたは冷却コイルとともに組み立てられたならば、60℃またはおそらくはそれよりも低い温度が維持され得ること、そして70℃の安定性試験サンプルはかなり改善されているようであり得ることが考えられる。加熱時効処理によって影響を受ける高濃度物は、本発明によって指示されるように、それらを単に再混合することによってその元の状態に完全に回復し得るはずである。
【0063】
【表8】

【0064】
実施例8
本実施例は、‘998号特許の超音波処理法と、本発明の主題である本方法との比較を含む。本発明のエマルションの4000グラム回分処理物を、平らな歯状の4インチ直径のブレードを備えたHockmeyer混合機で調製した。3800グラムのL−207ポリマーをステンレススチール製ポットに加えて、65℃まで加熱した。混合機を約600rpmに設定して、200グラムの光開始剤UVE−1014をゆっくり加えた。添加が完了した後、混合機の速度を約1950rpmに上げて、回分処理物を20分間混合した。空気冷却が使用されたが、回分処理物の最終温度は79℃に達した。混合機を停止させ、回分処理物を貯蔵用の黄褐色容器に詰めた。
【0065】
光開始剤エマルションの50グラムの回分処理物を、下記の様式でUVE−1014およびL−207ポリマーを使用して上記に記載される超音波処理器で調製した。2.5グラムの光開始剤および47.5グラムのポリマーを重量測定して、小さいビンに入れ、オーブンで135℃に加熱し、その後、1分間にわたって超音波処理した。混合物を2分間冷却し、その後、さらに1分間にわたって再び超音波処理した。到達した最高温度は187℃であった。1分間の1回の超音波処理により均一な混合物が作製されないことが視覚的に明らかであるようにL−207ポリマーの粘度は十分に高いため、二重の超音波処理が使用された。また、エマルションの50グラムの回分処理物を、L−1203ポリマーのより低い粘度のために1回だけの1分間の超音波処理サイクルが必要とされたことを除いて、同じ光開始剤およびポリマーL−1203を同じような方法で使用して作製した。到達した最高温度は171℃であった。これらの3つの回分処理物を、光学顕微鏡を使用して調べた。結果を下記の表8に示す。本発明の方法は、先行技術の超音波処理法によって製造される液滴よりもはるかに小さい液滴をもたらすことが理解され得る。
【0066】
【表9】

【0067】
実施例9
5%エマルションの光開始剤高濃度物を、EKP−206エポキシ化モノオールポリマーおよび開始剤としてのUVE−1014を使用して作製した。EKP−206は、重合したスチレンを第2のブロックに含有するため、本発明の例ではない。これは約1.5meq/gのエポキシを有する。EKP−206は、より高いガラス転移温度温度を有するため、室温ではL−207よりもはるかに粘性であるが、約100℃以上では、ほぼ同じ分子量を有するために、L−207の粘度と類似している。温度を、50℃から80℃である本発明の最も好ましい範囲で保つことはより困難であることが予想された。前記の実施例のいくつかのように、Hockmeyerの高速ディスペンサーを使用した。3800グラムのEKP−206をステンレススチール製容器に入れて、オーブンで約60℃に温めた。容器を、液体内に置かれる4インチの平らなブレードを備えたHockmeyer装置の下に置き、625rpmで撹拌した。材料が十分に撹拌されたとき、69℃の温度で、200グラムのUVE−1014を5分かけて加えた。混合物を20分間にわたって混合した。混合を短時間停止して、サンプルを顕微鏡検査のために採取し、そして速度を約1200rpmに上げた。混合物をさらに20分間混合して。混合機を短時間停止させ、サンプルを採取した。その後、混合速度を約1800rpmに上げて、さらに20分間混合し、その後、混合を止めた。エマルションの最終温度は84℃であった。下記の表には、条件の詳細が示され、そしてZeiss顕微鏡検査の結果が示されている。本発明により必要とされる液滴サイズのエマルションを作製することができなかった。液滴は非常に大きく、従って、写真撮影されたものはほとんどなかったため、撮影された顕微鏡写真は、先端速度の増大とともに粒子サイズが低下していることさえ仮定するには十分な証拠を示していない。
【0068】
【表10】

【0069】
実施例10
異なる低剪断の混合装置を本実施例では使用した。この装置は、3枚の羽根が平らであり、しかし液体に対して一定の固定された角度で回転する、ラボタイプ3羽根(丸形)インペラーブレードを備えた実験室用の77ワット電動撹拌モーターであった。回転するブレードがもたらす円形パターンの直径は1.5インチであった。95グラムのL−207を重量測定して、パイレックス(登録商標)ビーカーに入れ、温めて、混合機の下のホットプレートの上に置き、そして66℃の温度が達成されるまで、650rpmの混合機の最低速度で混合した。5.0グラムのUVE−1014を加えて、混合を20分間続けた。混合機を短時間停止して、顕微鏡検査用のサンプルを採取した。混合機を、負荷条件下で生じさせることができる最大速度(1650rpm)に上げて、エマルションをさらに30分間混合した。ビーカーを混合機から除き、そして光開始剤のすべてが混合されていることを確認するために底および側面を調べた。本発明の優れたエマルション高濃度物が、混合速度を大きくしたときに得られた。より低い速度で形成されたエマルションは、Zeiss顕微鏡での液滴サイズによって判断されたときに本発明の範囲のちょうど外側で、基準に達しない品質であると見なされた。下記の表を参照のこと。
【0070】
対比される例を、L−1203ポリマーを使用して、できる限り同一の手段で調製した。95グラムのL−1203をパイレックスビーカーに加え、同じ混合機の下に置き、そしてポリマーの温度が65℃に達するまで加熱し、混合した。5.0グラムのUVE−1014を加えて、混合機が作動する最小速度(この場合、650rpm)で20分間混合した。混合機を短時間停止して、サンプルを顕微鏡検査のために採取した。サンプルは、肉眼に対して非常に透明であった。このことは、光開始剤がビーカーの底に沈降しているか、または形成されたエマルションが非常に粗かったことを示している。混合機を再び始動させて、混合物を、混合機から得られる最大速度(この場合、1850rpm)で20分間混合した。最終的な混合温度は67℃であった。本発明により達成されるような小さいサイズのエマルションは形成されなかった。下記の表を参照のこと。
【0071】
【表11】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外線硬化性の接着剤組成物、コーティング組成物またはシーラント組成物を製造するための方法であって、前記組成物は少なくとも2つの異なるジエンモノマーからなるモノヒドロキシル化されたエポキシ化ポリジエンブロックコポリマーおよび必要な場合には他の配合成分を含み、前記少なくとも2つの異なるジエンモノマーは少なくとも1つがエポキシ化に好適な不飽和をもたらすジエンモノマーであり、前記ポリマーはポリマー1グラム当たり0.5ミリ当量から4.0ミリ当量のエポキシを含有し、前記エポキシ化ポリマーおよび必要な場合には配合成分をポリマーに不溶性の光開始剤とブレード先端速度が2000センチメートル/秒から2000センチメートル/秒の混合条件のもと25℃から130℃の温度で混合することを含む、前記方法。
【請求項2】
前記ブレード先端速度が300cm/秒から1500cm/秒である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ブレード先端速度が800cm/秒から1200cm/秒である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記温度が40℃から100℃である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記温度が50℃から80℃である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記ポリマーがイソプレンとブタジエンとのジブロックポリマーであり、前記イソプレンブロックはエポキシ化のほとんどを含有し、ヒドロキシル基はブタジエンブロックの端部に存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記ポリマーが2500から14,000の数平均分子量を有する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記ポリマーが3000から7000の数平均分子量を有する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記ポリマーがポリマー1グラムあたり1ミリ当量から3ミリ当量のエポキシを有する、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記ポリマーが5400から6600の数平均分子量を有し、かつポリマー1グラムあたり1.4ミリ当量から2.0ミリ当量のエポキシを有する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記不溶性の光開始剤がトリアリールスルホニウム塩である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
混合装置が高速ディスクディスペンサーから構成される、請求項1に記載の方法。

【公開番号】特開2012−111952(P2012−111952A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−1094(P2012−1094)
【出願日】平成24年1月6日(2012.1.6)
【分割の表示】特願2001−578570(P2001−578570)の分割
【原出願日】平成13年4月27日(2001.4.27)
【出願人】(501140348)クレイトン・ポリマーズ・リサーチ・ベー・ベー (44)
【Fターム(参考)】