説明

エポキシ化ポリブタジエン水分散型樹脂組成物

【課題】常温乾燥の条件でも成膜性が良好で、プラスチック基材に対する密着性に優れた塗膜を形成するのに適する、水分散型樹脂組成物を含む硬化型水分散型樹脂組成物を提供する。
【解決手段】本発明の水分散型樹脂組成物は、エポキシ化ポリブタジエンと、少なくとも1種のエチレン性不飽和単量体とを、水系媒質中で乳化共重合して得られる。エチレン性不飽和単量体として、(a)親水性基を有しないエチレン性不飽和単量体と、(b)前記(a)親水性基を有しないエチレン性不飽和単量体と共重合可能な親水性基を有するエチレン性不飽和単量体とを用いることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は常温乾燥の条件でも成膜性が良好で、プラスチック基材に対する密着性に優れた塗膜を形成することを特徴とするエポキシ化ポリブタジエン水分散型樹脂組成物に関する。また、本発明は、該組成物の製造方法、及び該組成物を使用した硬化型水分散型樹脂組成物、硬化型水性塗料組成物ならびにそれらの硬化物、該組成物を含む接着剤、コーティング剤、ならびにサイジング剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境保全、安全衛生の面より、塗料の無公害化および安全衛生化が強く要望されており、溶剤系塗料に代わり水系塗料の用途が拡大されつつある。しかしながら水系塗料は、酢酸ビニル系、アクリル系、スチレン系塗料の粒子を界面活性剤、分散剤等を用いて水中に分散させたものを主成分とし、これに顔料、顔料分散剤、消泡剤、増粘剤、成膜助剤、防腐剤等を配合した分散型樹脂である。したがって、溶剤系塗料と比較して基材への濡れ、浸透性が悪いことによる密着性の低下や、水溶性成分による耐水性が良くないという問題などがあった。このような水系塗料の問題を解決するための方法として、界面活性剤を使用しないソープフリー乳化重合法、反応型界面活性剤を用いた乳化重合法などが種々検討されている。反応型界面活性剤、主にはアニオン系の反応型界面活性剤を用いた水分散型樹脂では、皮膜の耐水性は良好であるが、密着性、耐久性については、溶剤系のそれと比較した場合、未だ満足なものは得られていない。
【0003】
界面活性剤を使用せず、水溶性の高分子分散剤を用いて得られる水分散型樹脂では、反応型界面活性剤と比較して、高分子分散剤の乳化力が低いことなどから少量の使用量では重合できなかったり、粒子径が大きくなってしまうため、基材への濡れ、浸透性が悪くなる。また、粒子径をコントロールするために界面活性剤の使用量を多くすると水分散型樹脂は得られるが水溶性成分が増えたことにより耐水性の低下が避けられない。さらに、水溶性の高分子分散剤は、溶液中で重合、そして、中和・相転換された後、重合に使用した溶媒を留去する必要があり工程面、コスト面からも経済的に不利となるため汎用性に乏しい(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭50−40692号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、常温乾燥の条件でも成膜性が良好で、プラスチック基材に対する密着性に優れた塗膜を形成するのに適する水分散型樹脂組成物を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、上記水分散型樹脂組成物の製造方法を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、上記水分散型樹脂組成物を用いた、常温乾燥の条件でも成膜性が良好で、プラスチック基材に対する密着性に優れた塗膜を形成するのに適する硬化型水分散型樹脂組成物を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、上記硬化型水分散型樹脂組成物を硬化してなる、プラスチック基材に対する密着性に優れた塗膜を形成するのに適する硬化物を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、上記水分散型樹脂組成物を用いた、常温乾燥の条件でも成膜性が良好で、プラスチック基材に対する密着性に優れた塗膜を形成するのに適する硬化型水性塗料組成物を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、上記硬化型水性塗料組成物を硬化してなる、プラスチック基材に対する密着性に優れた塗膜を形成するのに適する硬化物を提供することにある。
さらに、本発明の他の目的は、上記水分散型樹脂組成物を用いた、常温乾燥の条件でも接着性が良好で、プラスチック基材に対する接着性に優れた接着剤を提供することにある。
さらにまた、本発明の他の目的は、上記水分散型樹脂組成物を用いた、常温乾燥の条件でも成膜性が良好で、プラスチック基材に対する密着性に優れた塗膜を形成するのに適するコーティング剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、エポキシ化ポリブタジエンを水系媒質に溶解または分散しうる水性化成分(A)を用いて、特定量のエポキシ化ポリブタジエンを水などの水系媒質に溶解及び/又は分散させ、必要により、ラジカル重合性モノマー由来のモノマー単位を有する化合物を含む水分散型樹脂組成物が、常温乾燥の条件でも成膜性が良好で、プラスチック基材に対する密着性に優れた塗膜を形成することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、エポキシ化ポリブタジエンと、少なくとも1種のエチレン性不飽和単量体とを、水系媒質中で乳化共重合して得られる水分散型樹脂組成物を提供する。
上記エチレン性不飽和単量体として、(a)親水性基を有しないエチレン性不飽和単量体と、(b)前記(a)親水性基を有しないエチレン性不飽和単量体と共重合可能な親水性基を有するエチレン性不飽和単量体とを用いることができる。
好ましくは、(a)と(b)との比(重量比)は、(a)/(b)=70/30〜99/1である。
また、好ましくは、上記水分散型樹脂組成物は、界面活性剤の存在下で乳化共重合して得ることができる。
さらに、好ましくは、上記水分散型樹脂組成物は、水溶性ラジカル重合開始剤の存在下で乳化共重合して得ることができる。
また、本発明は、エポキシ化ポリブタジエンと、(i)界面活性剤、(ii)高分子分散剤、及び(iii)側鎖に重合性不飽和基を有しない水溶性または水分散性ビニル重合体からなる群より選択された少なくとも1種の水性化成分(A)と、水系媒質とを含む、水分散型樹脂組成物を提供する。
また、本発明は、エポキシ化ポリブタジエンと、少なくとも1種のエチレン性不飽和単量体とを、水系媒質中で乳化共重合する工程を含む、水分散型樹脂組成物の製造方法を提供する。
本発明の水分散型樹脂組成物の製造方法において、好ましくは、エチレン性不飽和単量体として、(a)親水性基を有しないエチレン性不飽和単量体と、(b)前記(a)親水性基を有しないエチレン性不飽和単量体と共重合可能な親水性基を有するエチレン性不飽和単量体とを用いることができる。
また、本発明の水分散型樹脂組成物の製造方法において、(a)と(b)との比(重量比)は、(a)/(b)=70/30〜99/1であることが好ましい。
また、本発明の水分散型樹脂組成物の製造方法では、エポキシ化ポリブタジエンと、少なくとも1種のエチレン性不飽和単量体との乳化共重合を、界面活性剤の存在下で行うことができる。
また、本発明の水分散型樹脂組成物の製造方法では、エポキシ化ポリブタジエンと、少なくとも1種のエチレン性不飽和単量体との乳化共重合を、水溶性ラジカル重合開始剤の存在下で行うことができる。
また、本発明は、上記水分散型樹脂組成物を含む硬化型水分散型樹脂組成物を提供する。
また、本発明は、上記硬化型水分散型樹脂組成物を硬化してなる硬化物を提供する。
また、本発明は、上記水分散型樹脂組成物を含む硬化型水性塗料組成物を提供する。
また、本発明は、上記硬化型水性塗料組成物を硬化してなる硬化物を提供する。
さらに、本発明は、上記水分散型樹脂組成物を含む接着剤を提供する。
さらにまた、本発明は、上記水分散型樹脂組成物を含むコーティング剤を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、エポキシ化ポリブタジエンが水性溶媒に安定に溶解及び/又は分散し、保存安定性に優れた水分散型樹脂組成物が得られる。また、本発明の水分散型樹脂組成物の製造方法によれば、エポキシ化ポリブタジエンが水性溶媒に安定に溶解及び/又は分散し、保存安定性に優れた水分散型樹脂組成物を得ることができる。さらに水分散型樹脂組成物を含む本発明の硬化型水分散型樹脂組成物、硬化型水性塗料組成物、またはコーティング剤によれば、常温乾燥の条件でも成膜性が良好で、プラスチック基材に対する密着性に優れた塗膜を形成することができる。本発明の硬化物は、プラスチック基材に対する密着性に優れている。また、本発明の接着剤は、常温乾燥の条件でも接着性が良好で、プラスチック基材に対する接着性に優れている。また、本発明のコーティング剤は、常温乾燥の条件でも成膜性が良好で、プラスチック基材に対する密着性に優れた塗膜を形成できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<水分散型樹脂組成物>
本発明の水分散型樹脂組成物は、エポキシ化ポリブタジエンと、少なくとも1種のエチレン性不飽和単量体とを、水系媒質中で乳化共重合して得られる。
【0010】
また、本発明の水分散型樹脂組成物は、エポキシ化ポリブタジエンと、(i)界面活性剤、(ii)高分子分散剤、及び(iii)側鎖に重合性不飽和基を有しない水溶性または水分散性ビニル重合体からなる群より選択された少なくとも1種の水性化成分(A)と、水系媒質とを含んでいる。エポキシ化ポリブタジエンと水性化成分(A)とは、反応して相互に結合していても良い。
【0011】
本発明の水分散型樹脂組成物中における不揮発分の含有量は、例えば10重量%以上90重量%以下、好ましくは10重量%以上50重量%以下、さらに好ましくは20重量%以上40重量%以下である。不揮発分の含有量が上記範囲にあると、基材に対する密着性が向上し、成膜性が向上する。水分散型樹脂組成物中の不揮発分としては、エポキシ化ポリブタジエンとエチレン性不飽和単量体との共重合体、エポキシ化ポリブタジエン、水性化成分(A)、及びその他の不揮発性添加物が挙げられる。
【0012】
本発明の水分散型樹脂組成物中における固形分は、例えば10重量%以上90重量%以下、好ましくは10重量%以上50重量%以下、さらに好ましくは20重量%以上40重量%以下である。水分散型樹脂組成物中の固形分が上記範囲にあると、基材に対する密着性が向上し、成膜性が向上する。
【0013】
<エポキシ化ポリブタジエン>
本発明の水分散型樹脂組成物におけるエポキシ化ポリブタジエンは、一般に市販されているポリブタジエンを過酸化水素水、過酸類によりエポキシ化することによって容易に得られる。用いられるポリブタジエンの数平均分子量は、得られるエポキシ化ポリブタジエンの数平均分子量が500〜20,000の範囲となるものであればよく、好ましくは数平均分子量約500〜約15,000の範囲であり、直鎖状であっても分岐状であってもよい。ポリブタジエンとしては特に限定されるものではないが、日本曹達(株)製のB−1000、B−3000、G−1000、G−3000、日本石油(株)製のB−1000、B−2000、B−3000、B−4000、出光石油(株)製のR−15HT、R−45HT、R−45M、ダイセル工業(株)製のエポリードPB3600、エポリードPB4700などの市販されているものがあげられる。
【0014】
エポキシ化ポリブタジエンのオキシラン酸素濃度としては、通常1%から18%であり、好ましくは6%から12%である。オキシラン酸素濃度が3%より小さい場合は他の樹脂との相溶性が悪くなるため好ましくなく、一方、18%よりも大きい場合には得られる硬化物の成膜性が十分でなくなる。
【0015】
本発明の水分散型樹脂組成物中におけるエポキシ化ポリブタジエンの含有量は、全不揮発分100重量部に対し、例えば25重量部以上99重量部以下、好ましくは40重量部以上99重量部以下である。水性化成分(A)が(i)界面活性剤である場合には、特に、水分散型樹脂組成物中におけるエポキシ化ポリブタジエンの含有量は、全不揮発分100重量部に対し、例えば80重量部以上99重量部以下、好ましくは90重量部以上99重量部以下とすることができる。また、水性化成分(A)が(iii)側鎖に重合性不飽和基を有しない水溶性または水分散性ビニル重合体である場合には、水分散型樹脂組成物中におけるエポキシ化ポリブタジエンの含有量は、全不揮発分100重量部に対し、60重量部以上99重量部以下とすることができる。
【0016】
<エチレン性不飽和単量体>
エポキシ化ポリブタジエンと、水系媒質中で乳化共重合するエチレン性不飽和単量体としては、例えば、アクリル系単量体、スチレン系単量体、オレフィン系単量体、ビニルエステル単量体などが挙げられる。エチレン性不飽和単量体としては、(a)親水性基を有しないエチレン性不飽和単量体[以下、単に単量体(a)という]と、(b)前記(a)親水性基を有しないエチレン性不飽和単量体と共重合可能な親水性基を有するエチレン性不飽和単量体[以下、単に単量体(b)という]とを用いることができる。
【0017】
単量体(a)と単量体(b)との比(重量比)は、(a)/(b)として、例えば70/30〜99/1、好ましくは80/20〜95/5、さらに好ましくは85/15〜90/10である。このような比率にすることで、水分散型樹脂組成物の水分散性を向上させることができる。
【0018】
<(a)親水性基を有しないエチレン性不飽和単量体[単量体(a)]>
単量体(a)としては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸イソボニル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸イソボニル等の(メタ)アクリル酸のアルキルまたはシクロアルキルエステル;スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン等のスチレン系単量体;エチレン、プロピレン、1−ブテン等のオレフィン系単量体;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル単量体などが挙げられる。
【0019】
また、単量体(a)としては、上記例示の化合物の一種または二種類以上組み合わせても差しつかえない。
【0020】
単量体(a)の含有量は、全エチレン性不飽和単量体中、例えば、70〜99重量%、好ましくは80〜99重量%、さらに好ましくは85〜95重量%である。エチレン性不飽和単量体(a)の含有量が上記範囲にあると、密着性が向上する傾向がある。
【0021】
<(b)前記(a)親水性基を有しないエチレン性不飽和単量体と共重合可能な親水性基を有するエチレン性不飽和単量体[単量体(b)]>
単量体(b)の代表例としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、クロトン酸等のカルボキシル基を有する単量体;ポリオキシエチレン鎖を有する(メタ)アクリレ−ト;アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−ブトキシメチルアクリルアミド等のアミド基を有する単量体;ヒドロキシエチルアクリレ−ト、ヒドロキシエチルメタクリレ−ト、ヒドロキシプロピルアクリレ−ト、ヒドロキシプロピルメタクリレート等の(メタ)アクリル酸のC2〜C8のヒドロキシアルキルエステル;ジエチルアミノエチルアクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレートなどのアミノ基含有の(メタ)アクリル酸エステル;N−ビニルピロリドン;ビニルピリジンなどが挙げられる。
【0022】
また、単量体(b)としては、オキシラン環(エポキシ基)含有重合性不飽和化合物を使用しても良く、例えば、オキシラニル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2−メチルグリシジル(メタ)アクリレート、2−エチルグリシジル(メタ)アクリレート、2−オキシラニルエチル(メタ)アクリレート、2−グリシジルオキシエチル(メタ)アクリレート、3−グリシジルオキシプロピル(メタ)アクリレート、グリシジルオキシフェニル(メタ)アクリレート等のオキシラン環(単環)を含む重合性不飽和化合物((メタ)アクリル酸エステル誘導体など);3,4−エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル(メタ)アクリレート、2−(3,4−エポキシシクロヘキシルメチルオキシ)エチル(メタ)アクリレート、3−(3,4−エポキシシクロヘキシルメチルオキシ)プロピル(メタ)アクリレートなどの3,4−エポキシシクロヘキサン環等のエポキシ基含有脂環式炭素環を含む重合性不飽和化合物((メタ)アクリル酸エステル誘導体など);5,6−エポキシ−2−ビシクロ[2.2.1]ヘプチル(メタ)アクリレート等の5,6−エポキシ−2−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン環を含む重合性不飽和化合物((メタ)アクリル酸エステル誘導体など);エポキシ化ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート[3,4−エポキシトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−9−イル(メタ)アクリレート;3,4−エポキシトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−8−イル(メタ)アクリレート]、エポキシ化ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート[2−(3,4−エポキシトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−9−イルオキシ)エチル(メタ)アクリレート;2−(3,4−エポキシトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−8−イルオキシ)エチル(メタ)アクリレート]、エポキシ化ジシクロペンテニルオキシブチル(メタ)アクリレート、エポキシ化ジシクロペンテニルオキシヘキシル(メタ)アクリレートなどの3,4−エポキシトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン環を含む重合性不飽和化合物((メタ)アクリル酸エステル誘導体など)などが挙げられる。他のオキシラン環(エポキシ基)含有重合性不飽和化合物として、エポキシ基を含むビニルエーテル化合物、エポキシ基を含むアリルエーテル化合物等を用いることもできる。
【0023】
また、単量体(b)としては、オキセタン環(オキセタニル基)含有重合性不飽和化合物を使用しても良く、例えば、オキセタニル(メタ)アクリレート、3−メチル−3−オキセタニル(メタ)アクリレート、3−エチル−3−オキセタニル(メタ)アクリレート、(3−メチル−3−オキセタニル)メチル(メタ)アクリレート、(3−エチル−3−オキセタニル)メチル(メタ)アクリレート、2−(3−メチル−3−オキセタニル)エチル(メタ)アクリレート、2−(3−エチル−3−オキセタニル)エチル(メタ)アクリレート、2−[(3−メチル−3−オキセタニル)メチルオキシ]エチル(メタ)アクリレート、2−[(3−エチル−3−オキセタニル)メチルオキシ]エチル(メタ)アクリレート、3−[(3−メチル−3−オキセタニル)メチルオキシ]プロピル(メタ)アクリレート、3−[(3−エチル−3−オキセタニル)メチルオキシ]プロピル(メタ)アクリレートや、オキセタニル基を含むビニルエーテル化合物、オキセタニル基を含むアリルエーテル化合物などを用いることもできる。
【0024】
また、単量体(b)としては、オキソラン環(オキソラニル基)含有重合性不飽和化合物を使用してもよく、例えば、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレートや、オキソラニル基を含むビニルエーテル化合物、オキソラニル基を含むアリルエーテル化合物などが挙げられる。具体的には、アクリル酸1−メチル2−ピロリドン、アクリル酸1−エチル2−ピロリドン、メタクリル酸1−メチル2−ピロリドン、メタクリル酸1−エチル2−ピロリドン、などの(メタ)アクリル酸のピロール環含有のC1〜C24のアルキルエステル;アクリル酸1−メチル2−オキサゾリドン、アクリル酸1−エチル2−オキサゾリドン、メタクリル酸1−メチル2−オキサゾリドン、メタクリル酸1−エチル2−オキサゾリドン、などの(メタ)アクリル酸のオキサゾール環含有のC1〜C24のアルキルエステル、γ−メタクリルオキシトリメトキシシラン、γ−メタクリルオキシトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランなどのラジカル重合可能なシラン化合物などを用いることもできる。
【0025】
また、単量体(b)としては、上記例示の化合物の一種または二種類以上組み合わせても差しつかえない。
【0026】
単量体(b)の含有量は、全エチレン性不飽和単量体中、例えば、0〜10重量%、好ましくは3〜10重量%、さらに好ましくは5〜10重量%である。単量体(b)は、含まれていなくても良い。単量体(b)の含有量が上記範囲にあると、水分散型樹脂組成物の水分散性が向上する傾向がある。
【0027】
本発明の水分散型樹脂組成物中におけるエチレン性不飽和単量体由来の成分の含有量は、全不揮発分100重量部に対し、例えば25重量部以上99重量部以下、好ましくは40重量部以上99重量部以下である。
【0028】
本発明の水分散型樹脂組成物における、エポキシ化ポリブタジエンと少なくとも1種のエチレン性不飽和単量体との水系媒質中における乳化共重合は、界面活性剤の存在下で行うことができる。
【0029】
<界面活性剤>
界面活性剤としては、通常のアニオン系界面活性剤や非イオン性界面活性剤、カチオン系界面活性剤などの界面活性剤類が挙げられる。
【0030】
アニオン系界面活性剤としては、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、アルキレンジスルホン酸塩などのスルホン酸塩型界面活性剤;ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアリールエーテル硫酸エステル塩などの硫酸エステル塩型界面活性剤等が挙げられる。アニオン界面活性剤としては硫酸エステル塩型界面活性剤が好ましく、具体的にはNEWCOL707SF、NEWCOL707SFC、NEWCOL707SN(日本乳化剤株式会社 製)などが使用できる。
【0031】
上記のほか、アニオン系界面活性剤としては、ラジカル重合可能な重合性官能基を有する反応性界面活性剤で、例えば、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルの硫酸エステル塩の分子中にラジカル重合性の不飽和二重結合が導入された界面活性剤、スルホコハク酸アルキルエステル塩の分子中にラジカル重合性の不飽和二重結合が導入された界面活性剤、具体的には、前者については、アクアロンKH−10、アクアロンHS−10(第一工業製薬株式会社 製)、アデカリアソープSE−10N(旭電化工業株式会社 製)、後者については、エレミノールJS2、エレミノールRN−30(三洋化成工業株式会社 製)、ラテムルS−180、ラテムルS−180A(花王株式会社 製)などが挙げられる。
【0032】
非イオン系界面活性剤としては、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル型、多環フェニルエーテル型などの非イオン系界面活性剤が挙げられる。なかでも、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル型の非イオン系界面活性剤が好ましく、具体的にはノイゲンEA−197D、ノイゲンXL、ノイゲンET−B、ノイゲンTDS(第一工業製薬株式会社 製)などが使用できる。
【0033】
上記のほか、非イオン系界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルの分子中にラジカル重合性の不飽和二重結合が導入された界面活性剤、アクアロンRN−20、RN−50(以上、第一工業製薬株式会社 製)、アデカリアソープNE−20、NE−40(以上、旭電化工業株式会社 製)などが挙げられる。
【0034】
カチオン界面活性剤としては、塩化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラメチルアンモニウムなどの第4級アンモニウム塩型;モノメチルアミン塩酸塩、ジメチルアミン塩酸塩などのアルキルアミン塩型;塩化ブチルピリジニウム、塩化ドデシルピリジニウムなどのピリジン環を有する物質等が挙げられる。
【0035】
上記例示の界面活性剤は、一種または二種類以上組み合わせても差しつかえない。また、好ましくは、アニオン系界面活性剤と非イオン性界面活性剤とを組み合わせて使用することができる。
【0036】
アニオン系界面活性剤と非イオン性界面活性剤の使用量の比(重量比)は、アニオン系界面活性剤/非イオン性界面活性剤が、例えば90/10〜10/90,好ましくは70/30〜30/70,さらに好ましくは60/40〜30/70である。
【0037】
<水性化成分(A)>
本発明の水分散型樹脂組成物に含まれる水性化成分(A)は、(i)界面活性剤、(ii)高分子分散剤、及び(iii)側鎖に重合性不飽和基を有しない水溶性または水分散性ビニル重合体[以下、単にビニル重合体(iii)という。]からなる群より選択された少なくとも1種の水性化成分である。
【0038】
<水性化成分(A)としての(i)界面活性剤>
(i)界面活性剤としては、上記界面活性剤で例示のものが使用できる。(i)界面活性剤としては、上記例示の界面活性剤の一種または二種類以上組み合わせても差しつかえない。また、好ましくは、アニオン系界面活性剤と非イオン性界面活性剤とを組み合わせて使用することができる。
【0039】
(i)界面活性剤としてのアニオン系界面活性剤と非イオン性界面活性剤の使用量の比(重量比)は、アニオン系界面活性剤/非イオン性界面活性剤が、例えば90/10〜10/90,好ましくは70/30〜30/70,さらに好ましくは40/60〜30/70である。
【0040】
<水性化成分(A)としての(ii)高分子分散剤>
(ii)高分子分散剤としては、ポリビニルアルコールやポリビニルピロリドン、エチルビニルエーテルマレイン酸共重合体の各種金属塩やアンモニウム塩、スチレンマレイン酸共重合体の各種金属塩やアンモニウム塩CMCなどが挙げられる。
【0041】
<水性化成分(A)としての(iii)側鎖に重合性不飽和基を有しない水溶性または水分散性ビニル重合体[ビニル重合体(iii)]>
ビニル重合体(iii)は、例えば、アクリル系単量体、スチレン系単量体、オレフィン系単量体、ビニルエステル単量体などのラジカル重合性単量体を、重合することにより得ることができる。
【0042】
上記ラジカル重合性単量体としては、上記単量体(a)及び(b)として例示のものを使用することができる。また、ラジカル重合性単量体としては、上記例示の化合物の一種または二種類以上組み合わせても差しつかえない。ラジカル重合性単量体として上記単量体(b)として例示のものを使用することにより、水溶性または水分散性のビニル重合体とすることができる。
【0043】
ビニル重合体(iii)の合成における単量体(a)と単量体(b)との比(重量比)は、(a)/(b)として、例えば70/30〜99/1、好ましくは80/20〜95/5、さらに好ましくは85/15〜95/5である。このような比率にすることで、水分散型樹脂組成物の水分散性を向上させることができる。
【0044】
ビニル重合体(iii)の合成方法としては、特に制限はなく、特定の溶媒、開始剤の存在下でラジカル重合可能なモノマーの混合物を滴下し、重合終了後に水を添加し重合に使用した溶媒を除去することで得られる。重合方法は上記モノマー滴下法や溶媒、開始剤、モノマーの混合物すべての存在下でラジカル重合を行う一浴重合法が挙げられる。安全性の面からは、モノマー滴下法が好ましい。
【0045】
上記溶媒としては、常圧での沸点が200℃以下の水溶性溶媒が挙げられる。代表例としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノールなどの脂肪族系の水溶性アルコール;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルなどのエチレングリコールモノアルキルエーテル誘導体;プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテルなどのプロピレングリコールモノアルキルエーテル誘導体などが挙げられる。またこれらの一種または二種類以上組み合わせても差しつかえない。
【0046】
上記開始剤としては、熱、または還元性物質などによってラジカル分解してモノマーへの付加重合を起こさせるもので、水溶性または油溶性の過硫酸塩、過酸化物、アゾ化合物などが使用できる。その例としては過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素、t−ブチルハイドロパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−ジアミノプロパン)ハイドロクロライドなどがあり、特に水溶性のものが好ましく、使用量は樹脂に対して0.05〜2重量%、好ましくは0.1〜0.5重量%添加される。なお、重合速度の促進、低温での重合を望む時には、重亜硫酸ナトリウム、塩化第一鉄、アスコルビン酸塩、ロンガリットなどの還元剤をラジカル重合開始剤と組み合わせて使用することもできる。
【0047】
また、分子量の調節のため、ドデシルメルカプタン、α−メチルスチレンダイマーなどの連鎖移動剤を添加することも可能である。
【0048】
水性化成分(A)の水分散型樹脂組成物中の含有量は、例えば1〜50wt%、好ましくは1〜30wt%、さらに好ましくは1〜10wt%である。水性化成分(A)の含有量がこのような範囲にあると、水分散型樹脂組成物の水分散性が向上する。
【0049】
また、水性化成分(A)が(i)界面活性剤である場合、(i)界面活性剤の使用量は、エポキシ化ポリブタジエン100重量部に対し、例えば1重量部以上50重量部以下、好ましくは1重量部以上30重量部以下、さらに好ましくは5重量部以上15重量部以下とすることができる。また、水性化成分(A)がビニル重合体(iii)である場合、ビニル重合体(iii)の含有量は、エポキシ化ポリブタジエン100重量部に対し、例えば10重量部以上100重量部以下、好ましくは30重量部以上100重量部以下、さらに好ましくは50重量部以上100重量部以下とすることができる。水性化成分(A)の使用量をこのような範囲にすることで、水分散性がより向上した水分散型樹脂組成物が得られる。
【0050】
<水系媒質>
水系媒質としては、水または上記溶媒として例示の水溶性溶媒が使用できる。なかでも水が好ましい。
【0051】
本発明の水分散型樹脂組成物は、好ましくは水溶性ラジカル重合開始剤の存在下で乳化共重合して得ることができる。
【0052】
<水溶性ラジカル重合開始剤>
水溶性ラジカル重合開始剤としては、上記例示の開始剤のうち、水溶性の過硫酸塩、過酸化物、アゾ化合物などが使用できる。その例としては水溶性の、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素、t−ブチルハイドロパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−ジアミノプロパン)ハイドロクロライドなどが挙げられる。使用量は樹脂に対して0.05〜2重量%、好ましくは0.1〜0.5重量%添加される。なお、重合速度の促進、低温での重合を望む時には、重亜硫酸ナトリウム、塩化第一鉄、アスコルビン酸塩、ロンガリットなどの還元剤をラジカル重合開始剤と組み合わせて使用することもできる。
【0053】
<連鎖移動剤>
また、分子量の調節のため、ドデシルメルカプタン、α−メチルスチレンダイマーなどの連鎖移動剤を添加することも可能である。
【0054】
<水分散型樹脂組成物の製造方法>
本発明の水分散型樹脂組成物の製造方法は、エポキシ化ポリブタジエンと、少なくとも1種のエチレン性不飽和単量体とを、水系媒質中で乳化共重合する工程を含んでいる。エチレン性不飽和単量体としては、(a)親水性基を有しないエチレン性不飽和単量体[単量体(a)]と、(b)前記(a)親水性基を有しないエチレン性不飽和単量体と共重合可能な親水性基を有するエチレン性不飽和単量体[単量体(b)]とが好ましく用いられる。上記単量体(a)と単量体(b)との比(重量比)は、(a)/(b)=70/30〜99/1であることが好ましい。
【0055】
上記乳化共重合は、界面活性剤の存在下で行うことが好ましく、また、水溶性ラジカル重合開始剤の存在下で行うことが好ましい。
【0056】
本発明の水分散型樹脂組成物の製造方法は、好ましくは、エポキシ化ポリブタジエンと、モノマー成分として単量体(a)70〜99重量%と単量体(b)0〜10重量%とを含有する単量体混合物とを、水性化成分(A)の使用量が1〜20重量%の存在下、水系媒質中で水溶性ラジカル重合開始剤を用いて乳化共重合させる工程を含んでいる。
【0057】
単量体(a)、単量体(b)としては、上記例示のものが使用できる。また、水系媒質としては、上記例示のものが使用でき、なかでも水が好ましく用いられる。
【0058】
<乳化共重合>
乳化共重合方法については特に制限はなく、例えば、水系媒質、水性化成分(A)、上記水溶性ラジカル重合開始剤の存在下で、単量体(a)および単量体(b)の混合物を滴下するモノマー滴下法;単量体(a)および単量体(b)の混合物を水系媒質、水性化成分(A)の存在下で乳化しそれを滴下しながら重合を行うプレエマルション法;水系媒質、水性化成分(A)、水溶性ラジカル重合開始剤、単量体(a)および単量体(b)の混合物すべての存在下でラジカル重合を行う一浴重合法が挙げられる。また、モノマー滴下法、プレエマルション法については滴下量の1〜50重量%、好ましくは1〜30重量%を重合開始前に添加することもできる。安全性の面からは、モノマー滴下法、プレエマルション法が好ましく、その中でもプレエマルション法が好ましい。
【0059】
本発明の水分散型樹脂組成物は、水性エマルション中のカルボキシル基を中和しなくても安定な分散性を示すが、長期の分散性を保つために、例えばアンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アミン類を用いてpHを6〜10の範囲に調節することが好ましい。また、本発明の水分散型樹脂組成物には、通常水系塗料などに添加される成分、例えば、増粘剤、消泡剤、防腐剤、シリカ粉などの艶消し剤などを添加しても良い。
【0060】
本発明の水分散型樹脂組成物は、ガラス、炭素繊維、アラミド繊維などへのサイジング剤に使用できる。そのサイジング剤塗布された繊維による強化プラスチックは、耐衝撃性付与を期待できる
【0061】
<硬化型水分散型樹脂組成物、及びその硬化物>
本発明の硬化型水分散型樹脂組成物は、上記の水分散型樹脂組成物を含んでいる。本発明の硬化型水分散型樹脂組成物によれば、常温乾燥の条件でも成膜性が良好で、プラスチック基材に対する密着性に優れた塗膜を形成できる。本発明の硬化型水分散型樹脂組成物を硬化することにより、本発明の硬化物が得られる。硬化は、例えば20〜120℃で行うことができる。本発明の硬化型水分散型樹脂組成物の硬化物は、プラスチック基材に対する密着性に優れている。
【0062】
<硬化型水性塗料組成物、及びその硬化物>
本発明の硬化型水性塗料組成物は、上記の水分散型樹脂組成物を含んでいる。本発明の硬化型水性塗料組成物によれば、常温乾燥の条件でも成膜性が良好で、プラスチック基材に対する密着性に優れた塗膜を形成できる。本発明の硬化型水性塗料組成物を硬化することにより、本発明の硬化物が得られる。硬化は、例えば20〜120℃で行うことができる。本発明の硬化型水性塗料組成物の硬化物は、プラスチック基材に対する密着性に優れている。
【0063】
<接着剤>
本発明の接着剤は、上記の水分散型樹脂組成物を含んでいる。本発明の接着剤によれば、常温乾燥の条件でも、密着性よく、プラスチック等の基材を接着することができる。
【0064】
<コーティング剤>
本発明のコーティング剤は、上記の水分散型樹脂組成物を含んでいる。本発明のコーティング剤によれば、常温乾燥の条件でも成膜性が良好で、プラスチック基材に対する密着性に優れた塗膜を形成できる。
【実施例】
【0065】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0066】
合成例1
水性化成分(A1)の合成
還流冷却器、滴下ロート及び撹拌機を備えた1Lのフラスコ内に窒素を適量流して窒素雰囲気とし、プロピレングリコールモノメチルエーテル25重量部を入れ、撹拌しながら85℃まで加熱した。次いで、該フラスコ内に、メタクリル酸メチル25重量部、アクリル酸ブチル20重量部、アクリル酸5重量部を、プロピレングリコールモノメチルエーテル10重量部に溶解した溶液を滴下ポンプを用いて約4時間かけて滴下した。一方、重合開始剤2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.9重量部をプロピレングリコールモノメチルエーテル15重量部に溶解した溶液を別の滴下ポンプを用いて約4時間かけてフラスコ内に滴下した。重合開始剤の滴下が終了した後、約3時間同温度に保持し、その後室温まで冷却して、固形分51重量%の共重合体溶液[水性化成分(A1)]を得た。
【0067】
実施例1
エポキシ化ポリブタジエン(商品名「エポリードPB3600」、ダイセル化学工業株式会社製)90重量部に水性化成分(A)として市販の界面活性剤NEWCOL707SF(日本乳化剤株式会社製、有効成分30wt%)6重量部、ノイゲンEA−197D(第一工業製薬株式会社製、有効成分60wt%)6重量部を仕込み混合した。次いで、攪拌混合下でイオン交換水180重量部を約2時間かけて滴下し、滴下終了後にホモミキサーを用いて10000rpmで1分間強制乳化し、目的のエポキシ化ポリブタジエン水分散型樹脂組成物を得た。
【0068】
実施例2
エポキシ化ポリブタジエン(商品名「エポリードPB3600」、ダイセル化学工業株式会社製)50重量部に水性化成分(A)として上記(合成例1)で作成したアクリル樹脂の共重合体溶液[水性化成分(A1)]50重量部を仕込み混合した。次いで、攪拌混合下で25%アンモニア水にて中和後、イオン交換水200重量部を約2時間かけて滴下し、目的のエポキシ化ポリブタジエン水分散型樹脂組成物を得た。
【0069】
実施例3
エポキシ化ポリブタジエン(商品名「エポリードPB3600」、ダイセル化学工業株式会社製)150重量部にメタクリル酸メチル70重量部、アクリル酸ブチル60重量部、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル15重量部、メタクリル酸1.5重量部に、界面活性剤NEWCOL707SF(日本乳化剤株式会社製)40重量部、ノイゲンEA−197D(第一工業製薬株式会社製)10重量部、イオン交換水240重量部を添加し、ホモミキサーで撹拌を行いプレ乳化物を作製した。
次いで、還流冷却器、滴下ロート及び撹拌機を備えた2Lのフラスコ内に窒素を適量流して窒素雰囲気とし、イオン交換水360重量部を仕込み、83℃に昇温し、過硫酸アンモニウム0.6重量部をイオン交換水35重量部に溶解したものを4時間かけて滴下する。また、前記プレ乳化物も4時間かけて滴下する。滴下終了後、同温度で1時間重合を続けた。
その後30℃以下まで冷却し、固形分重量32%のエポキシ化ポリブタジエン水分散型樹脂組成物を得た。
【0070】
比較例1
エポキシ化ポリブタジエンの代わりにポリブタジエン(商品名「Poyl bd」、出光興産株式会社製)を使用した以外はすべて実施例1と同様の操作を行った。
【0071】
比較例2
エポキシ化ポリブタジエンの代わりにポリブタジエン(商品名「Poyl bd」、出光興産株式会社製)を使用した以外はすべて実施例2と同様の操作を行った。
【0072】
比較例3
エポキシ化ポリブタジエンの代わりにポリブタジエン(商品名「Poyl bd」、出光興産株式会社製)を使用した以外はすべて実施例3と同様の操作を行った。
【0073】
評価試験
密着性試験
基材に、各実施例及び比較例で得られた水分散型樹脂組成物をバーコーター#20で塗布したのち、105℃で7分間加熱乾燥することで密着性評価用試験片を作製した。基材として、PETとOPPフィルムを用いた。
次に、基材の樹脂塗布面に50mmを超える長さのテープ(ニチバン(株)製、セロテープ(登録商標)CT405AP−24)を貼り付け、樹脂塗布面に接触させるために、指先でしっかりとテープをこすって押しつけた。テープ全体が均一に基材に付着しているか確認後、5分以内に、基材の表面に対して、できるだけ60度に近い角度でテープの端をつかみ、0.5〜1秒間で引き離した。基材のテープを付着した部分を観察し、密着性を測定した。結果は、下記基準に基づいて評価した。結果を表1に示す。
○・・・剥離無し。△・・・塗膜の凝集破壊。×・・・全面剥離。
【0074】
【表1】

【0075】
各実施例で得られた水分散型樹脂組成物からなる硬化型水分散型樹脂組成物を、基材にバーコーター#20で塗布したのち、常温乾燥(25℃にて30分)することにより基材上に硬化物が得られた。基材として、PETとOPPフィルムを用いた。
得られた硬化物は、成膜性が良好で、基材に対する密着性に優れていた。
【0076】
また、各実施例で得られた水分散型樹脂組成物からなる硬化型水性塗料組成物を、基材にバーコーター#20で塗布したのち、常温乾燥(25℃にて30分)することにより基材上に硬化物が得られた。基材として、PETとOPPフィルムを用いた。
得られた硬化物は、成膜性が良好で、基材に対する密着性に優れていた。
【0077】
また、各実施例で得られた水分散型樹脂組成物は、接着剤及びコーティング剤としても基剤に対する優れた接着性を示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ化ポリブタジエンと、少なくとも1種のエチレン性不飽和単量体とを、水系媒質中で乳化共重合して得られる水分散型樹脂組成物。
【請求項2】
エチレン性不飽和単量体として、(a)親水性基を有しないエチレン性不飽和単量体と、(b)前記(a)親水性基を有しないエチレン性不飽和単量体と共重合可能な親水性基を有するエチレン性不飽和単量体とが用いられている、請求項1記載の水分散型樹脂組成物。
【請求項3】
(a)と(b)との比(重量比)が、(a)/(b)=70/30〜99/1である、請求項2記載の水分散型樹脂組成物。
【請求項4】
界面活性剤の存在下で乳化共重合して得られる、請求項1〜3の何れか1項に記載の水分散型樹脂組成物。
【請求項5】
水溶性ラジカル重合開始剤の存在下で乳化共重合して得られる、請求項1〜4の何れか1項に記載の水分散型樹脂組成物。
【請求項6】
エポキシ化ポリブタジエンと、(i)界面活性剤、(ii)高分子分散剤、及び(iii)側鎖に重合性不飽和基を有しない水溶性または水分散性ビニル重合体からなる群より選択された少なくとも1種の水性化成分(A)と、水系媒質とを含む、水分散型樹脂組成物。
【請求項7】
エポキシ化ポリブタジエンと、少なくとも1種のエチレン性不飽和単量体とを、水系媒質中で乳化共重合する工程を含む、水分散型樹脂組成物の製造方法。
【請求項8】
エチレン性不飽和単量体として、(a)親水性基を有しないエチレン性不飽和単量体と、(b)前記(a)親水性基を有しないエチレン性不飽和単量体と共重合可能な親水性基を有するエチレン性不飽和単量体とが用いられている、請求項7記載の水分散型樹脂組成物の製造方法。
【請求項9】
(a)と(b)との比(重量比)が、(a)/(b)=70/30〜99/1である、請求項8記載の水分散型樹脂組成物の製造方法。
【請求項10】
界面活性剤の存在下で乳化共重合して得られる、請求項7〜9の何れか1項に記載の水分散型樹脂組成物の製造方法。
【請求項11】
水溶性ラジカル重合開始剤の存在下で乳化共重合して得られる、請求項7〜10の何れか1項に記載の水分散型樹脂組成物の製造方法。
【請求項12】
請求項1〜6の何れか1項に記載の水分散型樹脂組成物を含む硬化型水分散型樹脂組成物。
【請求項13】
請求項12記載の硬化型水分散型樹脂組成物を硬化してなる硬化物。
【請求項14】
請求項1〜6の何れか1項に記載の水分散型樹脂組成物を含む硬化型水性塗料組成物。
【請求項15】
請求項14記載の硬化型水性塗料組成物を硬化してなる硬化物。
【請求項16】
請求項1〜6の何れか1項に記載の水分散型樹脂組成物を含む接着剤。
【請求項17】
請求項1〜6の何れか1項に記載の水分散型樹脂組成物を含むコーティング剤。

【公開番号】特開2011−246608(P2011−246608A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−121249(P2010−121249)
【出願日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【出願人】(595138155)ダイセルファインケム株式会社 (11)
【出願人】(000002901)株式会社ダイセル (1,236)
【Fターム(参考)】