説明

エポキシ化用触媒、その製造方法、及び、エポキシ化合物の製造方法

【課題】 エポキシ化を行うことのできる新規なエポキシ化用触媒、その製造方法、及び、前記エポキシ化用触媒を用いたエポキシ化合物の製造方法を提供することである。
【解決手段】 固体塩基、及び、アルカリ金属フッ化物からなることを特徴とするエポキシ化用触媒と、固体塩基とアルカリ金属フッ化物とを溶媒中で混合する工程、前記溶媒を除去し混合体を得る工程、及び、前記混合体を焼成する工程を含むことを特徴とするエポキシ化用触媒の製造方法と、固体塩基、及び、アルカリ金属フッ化物からなるエポキシ化用触媒の存在下、反応媒体中でα,β−不飽和カルボニル化合物の炭素−炭素2重結合を、過酸化物を用いてエポキシ化する工程を含むエポキシ化合物の製造方法とである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エポキシ化用触媒、その製造方法、及び、前記触媒を用いたエポキシ化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機合成においてエポキシ化合物は、その反応性から医薬品、農薬、香料、接着剤、塗料及び樹脂改質剤等に用いられる種々の化合物や、その中間体として非常に有用である。その中でもα,β−カルボニル化合物の炭素−炭素2重結合をエポキシ化したエポキシ化合物は、カルボニル基及びエポキシ基の双方の反応性から、様々な化合物への変換を容易に行うことができ、合成中間体として有用である。
近年、過酸化水素や無機過酸化物を用いるα,β−不飽和カルボニル化合物のエポキシ化法が報告されている(特許文献1及び2等)。
【0003】
【特許文献1】特開平11−92466号公報
【特許文献2】特開2004−97943号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の一つの目的は、エポキシ化を行うことのできる新規なエポキシ化用触媒、及び、その製造方法を提供することである。
本発明の他の目的は、前記エポキシ化用触媒を用いたエポキシ化合物の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは上記従来技術における問題点を克服するために鋭意検討した結果、以下の<1>、<5>及び<6>により上記課題を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。好ましい実施態様である<2>〜<4>及び<7>〜<9>と共に以下に記載する。
<1>固体塩基、及び、アルカリ金属フッ化物からなることを特徴とするエポキシ化用触媒、
<2>前記固体塩基が、Ca/P比が0.5〜2.0のリン酸カルシウム系化合物である上記<1>に記載のエポキシ化用触媒、
<3>前記固体塩基が、フルオロアパタイト(Ca10(PO462)又はヒドロキシアパタイト(Ca10(PO46(OH)2)である上記<2>に記載のエポキシ化用触媒、
<4>前記アルカリ金属フッ化物が、フッ化カリウムである上記<1>〜<3>のいずれか1つに記載のエポキシ化用触媒、
<5>固体塩基とアルカリ金属フッ化物とを溶媒中で混合する工程、前記溶媒を除去し混合体を得る工程、及び、前記混合体を焼成する工程を含むことを特徴とするエポキシ化用触媒の製造方法、
<6>固体塩基、及び、アルカリ金属フッ化物からなるエポキシ化用触媒の存在下、反応媒体中でα,β−不飽和カルボニル化合物の2重結合を、過酸化物を用いてエポキシ化する工程を含むエポキシ化合物の製造方法、
<7>前記α,β−不飽和カルボニル化合物が、下記式(1)で示す化合物である上記<6>に記載のエポキシ化合物の製造方法、
【0006】
【化1】

(式(1)中、R1及びR2はそれぞれ独立に、水素原子又は炭化水素系基を表し、また、R3は水素原子、炭化水素系基、ヒドロキシ基又はアルコキシ基を表す。)
<8>前記α,β−不飽和カルボニル化合物が、下記式(2)で示す化合物である上記<7>に記載のエポキシ化合物の製造方法、
【0007】
【化2】

(式(2)中、R4、R5及びR6はそれぞれ独立に、水素原子又は炭化水素系基を表す。)
<9>前記過酸化物が、過酸化水素である上記<6>〜<8>のいずれか1つに記載のエポキシ化合物の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、低コストで、後処理が簡便である新規なエポキシ化用触媒を得ることができる。
また、本発明によれば、低コストで、反応の後処理が簡便であり、温和な条件でエポキシ化反応を行うことのできる新規なエポキシ化合物の製造方法を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に、本発明のエポキシ化用触媒、その製造方法、前記触媒を用いたエポキシ化合物の製造方法について詳述する。
【0010】
<エポキシ化用触媒>
本発明のエポキシ化用触媒は、固体塩基、及び、アルカリ金属フッ化物からなることを特徴とする。本発明のエポキシ化用触媒を用いてエポキシ化反応を行う基質としては、後述するα,β−不飽和カルボニル化合物が好ましい。
【0011】
(固体塩基)
本発明に用いることのできる固体塩基としては、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の酢酸塩、炭酸塩、リン酸塩、酸化物又は水酸化物を用いることができるが、その中でもCa/P比が0.5〜2.0のリン酸カルシウム系化合物がα,β−不飽和カルボニル化合物の反応性の面で好ましい。
リン酸カルシウム系化合物としては、Ca/P比が0.5〜2.0である各種リン酸カルシウム系化合物を好ましく用いることができ、例えば、ヒドロキシアパタイト(Ca10(PO46(OH)2)、フルオロアパタイト(Ca10(PO462)、Ca10(PO46Cl2、Ca3(PO42、Ca227、Ca(PO32、及び、CaHPO4等が挙げられる。
これらの中でもα,β−不飽和カルボニル化合物の反応性の面から、フルオロアパタイト(Ca10(PO462)又はヒドロキシアパタイト(Ca10(PO46(OH)2)を用いるのが特に好ましい。また、これらアパタイト類は、動物の骨や歯の主成分であることから、環境にも優しい触媒であり好ましい。
【0012】
(アルカリ金属フッ化物)
本発明に用いることのできるアルカリ金属フッ化物としては、例えば、フッ化リチウム、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化ルビジウム、フッ化セシウムなどが挙げられるが、その中でもフッ化カリウム及びフッ化セシウムが好ましく、α,β−不飽和カルボニル化合物の反応性やコストの面からフッ化カリウムがより好ましい。
アルカリ金属フッ化物の使用量としては、水分を除去したエポキシ化用触媒の総重量に対し、α,β−不飽和カルボニル化合物の反応性やコストの面から0.1〜50重量%であるのが好ましく、5〜20重量%であるのがより好ましく、10〜20重量%であるのがさらに好ましい。
【0013】
<エポキシ化用触媒の製造方法>
本発明のエポキシ化用触媒の製造方法は、固体塩基とアルカリ金属フッ化物とを溶媒中で混合する工程(以下、混合工程とも言う。)、前記溶媒を除去し混合体を得る工程(以下、除去工程とも言う。)、並びに、前記混合体を焼成する工程(以下、焼成工程とも言う。)を含むことを特徴とする。
【0014】
(混合工程)
本発明における混合工程では、固体塩基とアルカリ金属フッ化物とを溶媒中で混合し、固体塩基とアルカリ金属フッ化物とを含む混合物が得られる。
本発明で、混合工程に用いることのできる溶媒としては、前記アルカリ金属フッ化物を溶解する溶媒であれば特に制限はないが、溶解性やコストの面から水が好ましく挙げられる。
また、混合手段は特に制限はなく、公知の方法を用いることができる。
【0015】
(除去工程)
本発明における除去工程では、前記混合工程で得られた混合物より溶媒を除去し、混合体が得られる。
溶媒を除去する手段としては、特に制限はなく、公知の方法を用いることができる。例えば、エバポレーターや加熱手段を用い、減圧下及び/又は加熱下において溶媒を留去する方法が挙げられる。
なお、除去工程において、溶媒を完全に除去する必要はなく、微量の溶媒が混合体中に残留していてもよく、後述する焼成工程で微量の溶媒をさらに除去してもよい。
【0016】
(焼成工程)
本発明における焼成工程では、前記除去工程で得られた混合体を焼成し、本発明のエポキシ化用触媒が得られる。
焼成手段としては、特に制限はなく、公知の方法を用いることができる。焼成し得られたエポキシ化用触媒は、例えばデシケーター等を用い、湿度の少ない雰囲気下で室温へ冷却及び/又は保存するのが好ましい。
焼成温度及び焼成時間は、本発明の趣旨に反しない限り特に制限はない。焼成温度としては、100〜250℃が好ましく、120〜180℃がより好ましい。焼成時間としては、焼成温度との兼ね合いとなるが、30分〜12時間が好ましく、1〜3時間がより好ましい。
【0017】
<エポキシ化合物の製造方法>
本発明のエポキシ化合物の製造方法は、固体塩基、及び、アルカリ金属フッ化物からなるエポキシ化用触媒の存在下、反応媒体中でα,β−不飽和カルボニル化合物を過酸化物によりエポキシ化する工程(以下、エポキシ化工程、又は、エポキシ化反応とも言う。)を含む製造方法である。
本発明における前記エポキシ化反応とは、α,β−不飽和カルボニル化合物の炭素−炭素2重結合を酸化してエポキシ化合物へと変換する反応である。
【0018】
(α,β−不飽和カルボニル化合物)
本発明に用いることのできるα,β−不飽和カルボニル化合物としては、例えば、α,β−不飽和ケトン、α,β−不飽和アルデヒド、α,β−不飽和カルボン酸、及び、α,β−不飽和エステル等が挙げられる。
前記α,β−不飽和カルボニル化合物としては、下記式(1)に示す化合物が好ましく挙げられる。
【0019】
【化3】

【0020】
式(1)中、R1及びR2はそれぞれ独立に、水素原子又は炭化水素系基を表し、また、R3は水素原子、炭化水素系基、ヒドロキシ基又はアルコキシ基を表す。
1〜R3の炭化水素系基としては、炭素数1〜40のアルキル基、炭素数2〜40のアルケニル基、炭素数2〜40のアルキニル基、及び、炭素数6〜40の炭化水素系芳香族基が挙げられ、これらの炭化水素系基は置換基を有していてもよい。ただし、アルケニル基及びアルキニル基の不飽和結合は、α,β−不飽和カルボニル化合物の炭素−炭素2重結合と共役していないのが好ましい。
置換基としては、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、及び、炭素数2〜20のアルキニル基、炭素数6〜20のアリール基、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、ヒドロキシ基、炭素数1〜20のアルコキシ基、カルボキシル基、及び、炭素数2〜20のアルコキシカルボニル基が挙げられる。これらの置換基はさらにこれらの置換基によって置換されていてもよい。また、可能な場合には互いに結合して環を形成していてもよい。
また、R1〜R3の炭化水素系基、及び、R3のアルコキシ基は、互いに結合して環を形成していてもよい。
式(1)で表される化合物の中でも、前記α,β−不飽和カルボニル化合物として式(2)で表される化合物がより好ましい。
【0021】
【化4】

【0022】
式(2)中、R4、R5及びR6はそれぞれ独立に、水素原子又は炭化水素系基を表す。
4〜R6の炭化水素系基としては、前記R1〜R3の炭化水素系基と同様である。
また、R4及びR5が共に水素原子でないのが好ましい。
本発明に用いることのできるα,β−不飽和カルボニル化合物の具体例としては、下記K−1〜K−10に示す化合物を好ましく挙げられる。
【0023】
【化5】

【0024】
(過酸化物)
前記エポキシ化反応に用いることのできる過酸化物としては、例えば、過酸化水素、有機過酸、無機過酸化物等のような公知の過酸化物を挙げられるが、コストや反応後処理、環境の面からエポキシ化反応後に水となる過酸化水素を用いるのが好ましい。
前記過酸化物として過酸化水素を用いる場合、用いる溶媒に直接過酸化水素を溶解させても、過酸化水素溶液を用いてもよいが、取り扱いなどの安全性の面から過酸化水素水を用いるのが好ましく、入手の容易さやコストの面から30%過酸化水素水を用いるのがより好ましい。
過酸化物の使用量は、α,β−不飽和カルボニル化合物1モルに対し、1〜5モル用いるのが好ましく、1.2〜3モルがより好ましく、2モルがさらに好ましい。
【0025】
(反応溶媒)
前記エポキシ化反応に用いることのできる反応溶媒としては、前記エポキシ化反応の酸化条件下で反応しない溶媒であれば特に制限はないが、具体的には、メタノール、エタノール、1−プロパノール、イソプロパノール、t−ブタノール、シクロヘキサノール、2−エチルヘキサノール、エチレングリコール、プロピレングリコール及びグリセリンなどのアルコール類;ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコールなどのエチレンオキサイド、プロピレンオキサイドの多価アルコールオリゴマー類;ジエチルエーテル、イソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、メチルt−ブチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ジメトキシエチレングリコール、ジエトキシエチレングリコール及びジメトキシジエチレングリコールなどのエーテル類;クロロホルム、ジクロロメタン及びジクロロエチレンなどのハロゲン化炭化水素類;アセトニトリルなどのニトリル類;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、イソオクタン、シクロペンタン及びシクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素類;ベンゼン、トルエン及びキシレンなどの芳香族炭化水素類が挙げられる。
上記反応溶媒は単独で用いてもよく、2以上の溶媒を混合して用いてもよい。
上述した反応溶媒の中でも、反応性の面から脂肪族炭化水素類やアルコール類を用いるのが好ましく、収率の面からヘキサン、又は、メタノールが特に好ましい。
また、上述したように過酸化水素水を過酸化物として用いてもよいことからもわかるように、エポキシ化反応に影響のでない限り、反応溶媒中に水を混合してもよい。
前記反応溶媒の使用量としては、特に制限はないが、α,β−不飽和カルボニル化合物1mmolに対し、0.1〜500mlが好ましく、1〜100mlがより好ましく、5〜20mlがさらに好ましい。
【0026】
(エポキシ化用触媒)
本発明のエポキシ化用触媒は、前述した本発明のエポキシ化用触媒の製造方法により製造されるのが好ましい。
本発明のエポキシ化用触媒としては、α,β−カルボニル化合物の反応性やエポキシ化合物の収率の面から、固体塩基としてヒドロキシアパタイト(Ca10(PO46(OH)2)又はフルオロアパタイト(Ca10(PO462)を用い、かつ、アルカリ金属フッ化物としてフッ化カリウムを用いるのが特に好ましい。
エポキシ化用触媒の使用量としては、固体塩基とアルカリ金属フッ化物とのモル比にもよるが、α,β−不飽和カルボニル化合物1mmolに対し、0.01〜10gが好ましく、0.02〜2.0gがより好ましく、0.05〜1.0gがさらに好ましい。
【0027】
(反応条件)
前記エポキシ化反応の反応温度は、0〜100℃が好ましく、温和な条件である0〜30℃がより好ましい。前記エポキシ化反応の反応時間は、α,β−不飽和カルボニル化合物、触媒量、過酸化物量、反応溶媒量、及び、反応温度等に依存するが、5分〜48時間が好ましく、1〜24時間がより好ましい。
【0028】
(エポキシ化反応の後処理)
前記エポキシ化反応の後処理は、公知の方法を好ましく用いることができる。
前記エポキシ化反応に用いたエポキシ化用触媒は、反応終了後、濾過によって容易に基質や反応溶媒等と分離することができる。また、抽出、洗浄、反応溶媒の減圧留去などの後処理を反応系に応じて選択して実施し、エポキシ化合物を得ることができる。エポキシ化合物の安定性を考慮し、単離精製を行ってもよい。
反応に用いたエポキシ化用触媒は、基質や溶媒等と分離し、必要に応じて洗浄及び/又は乾燥し、さらに必要に応じて前述の焼成工程を行うことにより、エポキシ化用触媒として再利用することもできる。
【実施例】
【0029】
(実施例1)
<エポキシ化用触媒:11重量%のフッ化カリウム/フルオロアパタイト(11wt%KF/FAP)の調製>
フッ化カリウム 1.1gをイオン交換水100mlに溶かし、その溶液へフルオロアパタイト 8.9gを加え、1時間攪拌した。その後、ロータリーエバポレーターで水分を除去することにより11重量%のフッ化カリウム/フルオロアパタイト(11wt%KF/FAP)触媒が定量的に得られた。該触媒は使用する前に電気炉を用い150℃で2時間焼成した。
【0030】
(実施例2)
<エポキシ化用触媒:11重量%のフッ化カリウム/ヒドロキシアパタイト(11wt%HF/HAP)の調製>
フルオロアパタイトの代わりにヒドロキシアパタイトを用いた以外は実施例1と同様に行い、11重量%のフッ化カリウム/ヒドロキシアパタイト(11wt%KF/HAP)触媒が定量的に得られた。該触媒は使用する前に電気炉を用い150℃で2時間焼成した。
【0031】
(実施例3)
<フッ化カリウム/フルオロアパタイト(KF/FAP)触媒を用いた2−シクロヘキセン−1−オンのエポキシ化>
【0032】
【化6】

【0033】
50mlナス型フラスコに30%過酸化水素水を過酸化水素のモル量として4mmol、メタノール 5ml、11wt%KF/FAP 0.5gを入れ、2−シクロヘキセン−1−オン 2mmolとメタノール 2mlの混合液を滴下し室温で1時間攪拌した。反応終了後、二酸化マンガンを加えて未反応の過酸化水素を処理して、触媒をろ過し、乾燥させた後、ガスクロマトグラフィーによりエポキシ化合物の収率(%)を求めた。結果は収率:99.2%であった。
1H NMR (CDCl3) δ(ppm) = 1.65-2.57(m, 6H), 3.22(d, 1H), 3.60(m, 1H).
【0034】
また、反応溶媒としてヘキサン又はエタノールを用いた以外は実施例3と同様に反応を行ったところ、エポキシ化合物の収率はそれぞれ94.7%、93.6%であった。
【0035】
(実施例4〜12)
表1に示すα,β−不飽和カルボニル化合物、反応時間とした以外は、実施例3と同様の操作で反応を行い、ガスクロマトグラフィーによりエポキシ化合物の収率(%)を求めた。反応溶媒はメタノールを用いた。
実施例3〜12の結果を、以下の表1に示す。なお、転換率とは、α,β−不飽和カルボニル化合物が反応により他の化合物に変化した割合を示す。
【0036】
【表1】

【0037】
(実施例13)
<フッ化カリウム/ヒドロキシアパタイト(KF/HAP)触媒を用いた2−シクロヘキセン−1−オンのエポキシ化>
11wt%KF/FAPの代わりに11wt%KF/HAPを用いた以外は実施例3と同様の操作で反応を行い、ガスクロマトグラフィーによりエポキシ化合物の収率(%)を求めた。結果は収率:98.8%であった。
【0038】
また、反応溶媒としてヘキサン又はエタノールを用いた以外は実施例13と同様に反応を行ったところ、エポキシ化合物の収率はそれぞれ90.5%、79.7%であった。
【0039】
(実施例14〜22)
表2に示すα,β−不飽和カルボニル化合物、反応時間とした以外は、実施例13と同様の操作で反応を行い、ガスクロマトグラフィーによりエポキシ化合物の収率(%)を求めた。反応溶媒はメタノールを用いた。
実施例13〜22の結果を、以下の表2に示す。
【0040】
【表2】

【0041】
(比較例1)
11wt%KF/FAPの代わりにフルオロアパタイトを用いた以外は実施例3と同様に反応を行ったが、エポキシ化合物は全く得られなかった。
【0042】
(比較例2)
11wt%KF/FAPの代わりにヒドロキシアパタイトを用いた以外は実施例3と同様に反応を行ったが、エポキシ化合物は全く得られなかった。
【0043】
(比較例3)
11wt%KF/FAPの代わりにフッ化カリウムを用いた以外は実施例3と同様に反応を行った。エポキシ化合物は収率11%で得られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体塩基、及び、
アルカリ金属フッ化物
からなることを特徴とする
エポキシ化用触媒。
【請求項2】
前記固体塩基が、Ca/P比が0.5〜2.0のリン酸カルシウム系化合物である請求項1に記載のエポキシ化用触媒。
【請求項3】
前記固体塩基が、フルオロアパタイト(Ca10(PO462)又はヒドロキシアパタイト(Ca10(PO46(OH)2)である請求項2に記載のエポキシ化用触媒。
【請求項4】
前記アルカリ金属フッ化物が、フッ化カリウムである請求項1〜3のいずれか1つに記載のエポキシ化用触媒。
【請求項5】
固体塩基とアルカリ金属フッ化物とを溶媒中で混合する工程、
前記溶媒を除去し混合体を得る工程、及び、
前記混合体を焼成する工程
を含むことを特徴とする
エポキシ化用触媒の製造方法。
【請求項6】
固体塩基、及び、アルカリ金属フッ化物からなるエポキシ化用触媒の存在下、反応媒体中でα,β−不飽和カルボニル化合物の炭素−炭素2重結合を、過酸化物を用いてエポキシ化する工程を含む
エポキシ化合物の製造方法。
【請求項7】
前記α,β−不飽和カルボニル化合物が、下記式(1)で示す化合物である請求項6に記載のエポキシ化合物の製造方法。
【化1】

(式(1)中、R1及びR2はそれぞれ独立に、水素原子又は炭化水素系基を表し、また、R3は水素原子、炭化水素系基、ヒドロキシ基又はアルコキシ基を表す。)
【請求項8】
前記α,β−不飽和カルボニル化合物が、下記式(2)で示す化合物である請求項7に記載のエポキシ化合物の製造方法。
【化2】

(式(2)中、R4、R5及びR6はそれぞれ独立に、水素原子又は炭化水素系基を表す。)
【請求項9】
前記過酸化物が、過酸化水素である請求項6〜8のいずれか1つに記載のエポキシ化合物の製造方法。

【公開番号】特開2006−224018(P2006−224018A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−42286(P2005−42286)
【出願日】平成17年2月18日(2005.2.18)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成16年11月1日 第43回 日本油化学会年会実行委員会発行の「第43回 日本油化学会年会(JOCS−MPOB ジョイントシンポジウム併催)講演要旨集」に発表
【出願人】(801000027)学校法人明治大学 (161)
【Fターム(参考)】