説明

エポキシ樹脂、およびエポキシ樹脂組成物

【課題】本発明は結晶性エポキシ樹脂であり、その硬化物において難燃性、低吸水性、耐衝撃性等の諸特性に優れており、光学材料に有用なエポキシ樹脂、及び該エポキシ樹脂結晶を含有する貯蔵(保存)安定性に優れたエポキシ樹脂組成物、及びその硬化物を提供することを目的とする。
【解決手段】下記式(1)
【化1】


をグリシジル化して得られる結晶性エポキシ樹脂。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は結晶性エポキシ樹脂、これを用いた光学用エポキシ樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシ樹脂は種々の硬化剤で硬化させることにより、一般的に機械的性質、耐水性、耐薬品性、耐熱性、電気的性質などに優れた硬化物となり、接着剤、塗料、積層板、成形材料、注型材料などの幅広い分野に利用されている。エポキシ樹脂の形状としては常温で液状のものや軟化点50〜100℃程度のものが一般的に用いられている。近年これらの材料においては、高純度化を始め耐熱性、耐湿性、密着性、低誘電性、速硬化性、難燃性、高靭性等、諸特性の一層の向上が求められている。中でも近年ハロゲンフリーの難燃性が求められていることから樹脂自体の難燃性が強く求められており、特に本骨格のエポキシ樹脂は特にその難燃性、低吸水性、耐衝撃性等の諸特性に優れている物として報告されている。(特許文献1、2)
【0003】
また光学材料分野において、例えばコンタクトレンズ、メガネレンズ、カメラレンズ等のプラスチック材料、プリズム、フィルター、画像表示材料、光導波路、光ディスク用基板、外観に特徴を付与するための各種包装容器、ケーシング材料、フィルム、雑貨、自動車部品等の成型分野や、コーティング材料等の幅広い分野において高屈折率を示す樹脂が広く使用されている。このような分野にはポリスチレン等のビニル系の共重合体やポリメチルメタクリレート等が用いられているが、耐熱性の求められる分野においては信頼性の面で不十分であった。こうした現状の下、耐熱性、吸湿性等に信頼性の高い硬化物を与えるエポキシ樹脂を光学材料分野に応用することが検討されているが、このような特性を有する多環芳香族系エポキシ樹脂は一般に着色しているものが多く、さらにはその屈折率は、1.6以下であるものが大半であり、高屈折率が求められる分野においては不十分であった。
【0004】
また近年その硬化条件の簡便さ、作業性から感光性樹脂組成物が多く使用されるようになっている。しかしながら単純に光で硬化させるだけではその耐湿性、耐熱性の低さから電気・電子材料に求められる高度な信頼性を達成できず、近年特に光・熱硬化性樹脂が注目されている。例えばソルダーレジストや穴埋めインキ、オーバーコート、各種接着剤等の分野においてはその成分にエポキシ樹脂を添加し、光で一次硬化させた後、さらに加熱して二次硬化させることを特徴とするエポキシ樹脂組成物が使用されてきている。このような分野においては二次硬化までのエポキシ樹脂の保存(貯蔵)安定性が重要となる。このようなことから熱安定性に優れた結晶性エポキシ樹脂が注目されている。
【0005】
このようなエポキシ樹脂として一般にTEPICシリーズ(日産化学工業株式会社製、複素環含有結晶性エポキシ樹脂)が一般的に用いられているが耐水(湿)性の問題からこれに変わるエポキシ樹脂の探索がなされている。
【0006】
【特許文献1】特開平09−157351号公報
【特許文献2】特開2000−248050号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は結晶性エポキシ樹脂であり、その硬化物において難燃性、低吸水性、耐衝撃性、屈折率等の諸特性に優れており、光学材料に有用なエポキシ樹脂、及び該エポキシ樹脂結晶を含有する貯蔵(保存)安定性に優れたエポキシ樹脂組成物、及びその硬化物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは前記のような特性を持つエポキシ樹脂について鋭意研究の結果、本発明を完成した。
即ち、本発明は、
(1)下記式(1)
【0009】
【化1】

【0010】
で表される化合物とエピハロヒドリンを反応させ得られるエポキシ樹脂である結晶状エポキシ樹脂
(2)上記(1)に記載のエポキシ樹脂及び硬化剤を含有するエポキシ樹脂組成物
(3)上記(1)に記載のエポキシ樹脂、分子中に1個以上の不飽和二重結合を有する化合物及び光重合開始剤を含有するエポキシ樹脂組成物
(4)上記(2)(3)に記載のエポキシ樹脂組成物をさせた硬化物
(5)上記(2)(3)に記載のエポキシ樹脂組成物を使用した光学材料
に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明のエポキシ樹脂は結晶状であり、その屈折率は非常に高く、また無色であることから光学用途に好適である。本発明のエポキシ樹脂組成物、並びに硬化物は、エポキシ樹脂の光硬化時の安定性が良いことから、熱安定性に優れ、高感度であるエポキシ樹脂組成物となる。また本発明のエポキシ樹脂を熱硬化性のエポキシ樹脂組成物、あるいは光・熱硬化性樹脂組成物の成分とした場合、該組成物の貯蔵安定性は極めて優れる。従って、本発明のエポキシ樹脂組成物は電気・電子材料、成型材料、注型材料、積層材料、塗料、接着剤、レジスト、光学材料などの広範囲の用途にきわめて有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明のエポキシ樹脂は下記式(1)
【0013】
【化2】

【0014】
に表されるフェノール樹脂をアルカリ金属水酸化物存在下、エピハロヒドリンと反応させた後、晶析を行うことで結晶として得ることができる。
【0015】
本発明のエポキシ樹脂を得る反応において、アルカリ金属水酸化物はその固形物を利用してもよく、水溶液を使用してもよい。水溶液を使用する場合は該アルカリ金属水酸化物の水溶液を連続的に反応系内に添加すると共に減圧下、または常圧下連続的に水及びエピハロヒドリンを流出させ、更に分液し水は除去しエピハロヒドリンは反応系内に連続的に戻す方法でもよい。アルカリ金属水酸化物の使用量は式(1)で表される化合物の水酸基1モルに対して通常0.9〜2.5モルであり、好ましくは0.95〜2.0モルである。
【0016】
前記反応には反応を簡便に進行させるため4級アンモニウム塩を触媒として添加することができる。用いることのできる4級アンモニウム塩としてはテトラメチルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムブロマイド、トリメチルベンジルアンモニウムクロライド等が挙げられる。4級アンモニウム塩の使用量としては式(1)に示した化合物の水酸基1モルに対し通常0.1〜15重量部、好ましくは0.2〜10重量部である。
【0017】
エピハロヒドリンの使用量は式(1)に示した化合物の水酸基1モルに対し通常0.8〜12モル、好ましくは0.9〜11モルである。使用するエピハロヒドリンとしては工業的には、エピクロロヒドリン、α−メチルエピクロロヒドリン、β−メチルエピクロロヒドリン、γ―メチルエピクロロヒドリン、等のエピクロロヒドリン誘導体、好ましくはエピクロロヒドリンが使用しやすい。この際、式(1)に示した化合物の溶解性を高めるためにメタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール類、ジメチルスルホン、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン、ジオキサン等の非プロトン性極性溶媒などを添加して反応を行うことが好ましい。
【0018】
アルコール類を使用する場合、その使用量はエピハロヒドリンの量に対し通常2〜50重量%、好ましくは4〜30重量%である。また非プロトン性極性溶媒を用いる場合はエピハロヒドリンの量に対し通常5〜100重量%、好ましくは10〜80重量%である。
【0019】
反応温度は通常30〜90℃、好ましくは35〜80℃であるが、温度は一定であっても、経時的に変化させてもよい。反応時間は通常0.5〜10時間、好ましくは1〜8時間である。また必要に応じて更に加水分解性ハロゲンの少ないエポキシ樹脂とするために、これらのエポキシ化反応の反応物を水洗後、または水洗無しに加熱減圧下でエピハロヒドリンや溶媒等を除去する。回収したエポキシ樹脂をトルエン、メチルイソブチルケトンなどの溶剤に溶解し、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物の水溶液を加えて反応を行い、閉環を確実なものにすることも出来る。この場合アルカリ金属水酸化物の使用量はエポキシ化に使用した表1に示した化合物の水酸基1当量に対して通常0.01〜0.3モル、好ましくは0.05〜0.2モルである。反応温度は通常50〜120℃、反応時間は通常0.5〜2時間である。
【0020】
反応終了後、反応液を水洗、もしくは反応液をろ過することで反応時に生成する塩や不純物を取り除く。エポキシ樹脂の析出の際、塩が結晶中に混入するおそれがあるため本操作を行うことは重要である。
【0021】
得られたエポキシ樹脂を含む反応液から、目的とするエポキシ樹脂の晶析方法としては、特に限定はないが、例えばいったん反応液を濃縮した後、溶剤を用いて再結晶を行う方法、あるいは貧溶剤を加え、再沈殿を行う方法など種々の手法を採用することができるが、本発明においては以下の手法が好ましい。
【0022】
反応生成物、エピハロヒドリン等を含有する反応混合物を加熱減圧下で過剰のエピハロヒドリン等を留去する(工程(a);エピハロヒドリン回収工程)。この際、結晶が析出し、スラリー状になった時点で減圧回収を止め、ここにアセトン、メチルエチルケトン(MEK)、シクロペンタノン(CP)、アノン等のケトン類、あるいは酢酸エチル、酢酸ブチル、酪酸エチル、γ―ブチロラクトン、カルビトールアセテート等のエステル類、ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)等のエーテル類、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール類等の有機溶剤を加え、分散させた後(工程(b);晶析工程1)、さらに必要により水溶性の溶剤、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール類、アセトン等のケトン類等を加え(工程(b’);晶析工程2)た後、これに水を徐々に滴下する(工程(c);晶析工程3)。次いで得られた結晶をろ過、乾燥(工程(d);乾燥工程)することで目的とする結晶性エポキシ樹脂を得ることができる。
【0023】
前記工程において条件、および使用する溶剤の量は使用する溶剤により異なるので一概には範囲を規定できないが、例えば工程(a)のエピハロヒドリンとしてエピクロロヒドリン、工程(b)においてアセトン、工程(b’)においてメタノールを使用した場合を例示すると、工程(a)では50〜100℃に加熱し、減圧度は−0.05MPa〜−0.095MPa程度とするのがよい。また、工程(b)において使用するアセトンの量は理論収量に対し20〜500重量%が好ましく、50〜200重量%が特に好ましい。工程(b’)において使用するメタノールは理論収量に対し20〜500重量%が好ましく、50〜200重量%が特に好ましい。またこの場合、工程(c)において使用する水は40〜1000重量%が好ましいが、工程(b):工程(b’):工程(c)の溶剤、水比率が1〜3:1〜3:1〜9程度となるよう使用するのが好ましい。また工程(e)においてろ過した結晶をメタノール、エタノール等のアルコール類、もしくは水で洗浄することは好ましい。
【0024】
この様にして得られたエポキシ樹脂は無色であり、約100度の融点を有する。したがって、光硬化性樹脂組成物中に分散した場合においても、貯蔵安定性に優れたエポキシ樹脂組成物となりうる。さらには、得られたエポキシ樹脂の屈折率を測定すると、1.65〜1.66となる、通常の芳香族系のエポキシ樹脂の屈折率は例えば一般的な芳香族エポキシ樹脂であるクレゾールノボラック型エポキシ樹脂であれば1.60程度である。比較的高屈折であるビフェニルノボラック型エポキシ樹脂であっても1.62、ビスフェノールフルオレン型エポキシ樹脂でも1.63程度である。これらのエポキシ樹脂は硬化剤にもよるが、硬化反応により、さらに分子密度が上がるため、より高屈折率の硬化物が得られる。したがって、無色で、屈折率の高い本化合物は光学材料に好適である。
【0025】
以下、本発明のエポキシ樹脂組成物について説明する。本発明のエポキシ樹脂組成物は、本発明のエポキシ樹脂及び硬化剤を含有する。本発明のエポキシ樹脂組成物において、本発明のエポキシ樹脂は単独で、または他のエポキシ樹脂と併用することができる。他のエポキシ樹脂としては、通常用いられるエポキシ樹脂が制限なく使用できるが、中でも結晶性のエポキシ樹脂で90℃以上の軟化点あるいは融点を有するものが好ましい。併用する場合、本発明のエポキシ樹脂と他のエポキシ樹脂の混合比は任意に変える事が可能である。
【0026】
好ましく併用できる他のエポキシ樹脂としては、具体的にはジャパンエポキシレジン(株)製のYX−4000、日本化薬(株)製のCER−3000(何れも商品名)等のビフェノール型もしくはビフェノール型結晶性エポキシ樹脂又はそれらの混合物;ビスフェノールS型結晶性エポキシ樹脂 ;ビスフェノールフルオレン型結晶性エポキシ樹脂;ハイドロキノン型結晶性エポキシ樹脂;日産化学工業(株)製のTEPIC(商品名)等の複素環式結晶性エポキシ樹脂等、グリオキザール−フェノール縮合体の結晶性エポキシ樹脂、トリスフェノールメタン型結晶性エポキシ樹脂、ビフェニルノボラック型結晶性エポキシ樹脂(例えば日本化薬(株)製、NC−3000と同様の骨格でかつ結晶のエポキシ樹脂)等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0027】
本発明の熱硬化性のエポキシ樹脂組成物が含有する硬化剤としては、例えばアミン系化合物、酸無水物系化合物、アミド系化合物、フェノール系化合物などが挙げられる。用いうる硬化剤の具体例としては、ジアミノジフェニルメタン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ジアミノジフェニルスルホン、イソホロンジアミン、ジシアンジアミド、リノレン酸の2量体とエチレンジアミンより合成されるポリアミド樹脂、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フルオレンビスフェノール、テルペンジフェノール、4,4’−ビフェノール、2,2’−ビフェノール、3,3’,5,5’−テトラメチル−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジオール、ハイドロキノン、レゾルシン、ナフタレンジオール、トリス−(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,2,2−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、フェノール類(フェノール、アルキル置換フェノール、ナフトール、アルキル置換ナフトール、ジヒドロキシベンゼン、ジヒドロキシナフタレン等)とホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド、p−ヒドロキシベンズアルデヒド、o−ヒドロキシベンズアルデヒド、p−ヒドロキシアセトフェノン、o−ヒドロキシアセトフェノン、ジシクロペンタジエン、フルフラール、4,4’−ビス(クロルメチル)−1,1’−ビフェニル、4,4’−ビス(メトキシメチル)−1,1’−ビフェニル、1,4−ビス(クロロメチル)ベンゼン、1,4−ビス(メトキシメチル)ベンゼン等との重縮合物及びこれらの変性物、テトラブロモビスフェノールA等のハロゲン化ビスフェノール類、イミダゾール、BF-アミン錯体、グアニジン誘導体などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらは単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0028】
本発明のエポキシ樹脂組成物において硬化剤の使用量は、本発明のエポキシ樹脂を含む全エポキシ樹脂成分のエポキシ基1当量に対して0.5〜2.0当量が好ましく、0.6〜1.5当量が特に好ましい。エポキシ基1当量に対して、0.5当量に満たない場合、あるいは2.0当量を超える場合、いずれも硬化が不完全になり良好な硬化物性が得られない恐れがある。
【0029】
また上記硬化物を用いる際に硬化促進剤を併用しても差し支えない。用いうる硬化促進剤としては、例えば、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール類、2−(ジメチルアミノメチル)フェノール、トリエチレンジアミン、トリエタノールアミン、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7等の第3級アミン類、トリフェニルホスフィン、ジフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン等の有機ホスフィン類、オクチル酸スズなどの金属化合物、テトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレート、テトラフェニルホスホニウム・エチルトリフェニルボレート等のテトラ置換ホスホニウム・テトラ置換ボレート、2−エチル−4−メチルイミダゾール・テトラフェニルボレート、N−メチルモルホリン・テトラフェニルボレート等のテトラフェニルボロン塩などが挙げられる。硬化促進剤を使用する場合の使用量はエポキシ樹脂100重量部に対して0.01〜15重量部が必要に応じ用いられる。
【0030】
更に、本発明のエポキシ樹脂組成物には、必要に応じて無機充填剤やシランカップリング剤、離型剤、顔料等の種々の配合剤、各種熱硬化性樹脂を添加することができる。無機充填剤としては、結晶シリカ、溶融シリカ、アルミナ、ジルコン、珪酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化ホウ素、ジルコニア、フォステライト、ステアタイト、スピネル、チタニア、タルク等の粉体またはこれらを球形化したビーズ等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらは単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0031】
これら無機充填剤は、特に半導体封止材用のエポキシ樹脂組成物を得る場合、硬化物の耐熱性、耐湿性、力学的性質などの面から、エポキシ樹脂組成物中で80〜93重量%を占める割合で使用するのが好ましい。
【0032】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、上記各成分を均一に混合することにより得られ、好ましい用途は半導体封止用である。本発明の変性エポキシ樹脂組成物は従来知られている方法と同様の方法で容易にその硬化物とすることが出来る。例えば、本発明の変性エポキシ樹脂と硬化剤、並びに必要により硬化促進剤、無機充填剤、配合剤及び各種熱硬化性樹脂とを必要に応じて押出機、ニーダ、ロール等を用いて均一になるまで充分に混合して本発明のエポキシ樹脂組成物を得、そのエポキシ樹脂組成物を溶融注型法あるいはトランスファー成型法やインジェクション成型法、圧縮成型法などによって成型し、更にそのエポキシ樹脂の融点以上で2〜10時間加熱することにより本発明の硬化物を得ることが出来る。
【0033】
また、本発明のエポキシ樹脂組成物をトルエン、キシレン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等の溶剤に溶解させ、ガラス繊維、カーボン繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、アルミナ繊維、紙などの基材に含浸させ加熱乾燥して得たプリプレグを熱プレス成型して硬化物を得ることも出来る。
【0034】
この際用いる希釈溶剤の使用量は本発明の変性エポキシ樹脂組成物と該希釈溶剤の合計重量に対し通常10〜70重量%、好ましくは15〜65重量%である。
【0035】
本発明のエポキシ樹脂組成物が好ましく使用される半導体装置としては、例えばDIP(デュアルインラインパッケージ)、QFP(クワッドフラットパッケージ)、BGA(ボールグリッドアレイ)、CSP(チップサイズパッケージ)、SOP(スモールアウトラインパッケージ)、TSOP(シンスモールアウトラインパッケージ)、TQFP(シンクワッドフラットパッケージ)等が挙げられる。また本発明のエポキシ樹脂は着色が少なく、光透過性にすぐれるため、光半導体封止装置へも利用が可能であり、例えば発光ダイオード(LED)、フォトトランジスタ、CCD(荷電結合素子)、UV−EPROMなどのEPROM等の光半導体素子(半導体チップ)の封止用に本発明のエポキシ樹脂組成物を使用することもできる。
【0036】
本発明のエポキシ樹脂は感光性のエポキシ樹脂組成物としても使用することができる。具体的には、エポキシ樹脂組成物における信頼性を向上させるための硬化剤として本発明のエポキシ樹脂を使用することができる。
【0037】
代表的な感光性のエポキシ樹脂組成物の例としてはアルカリ水溶液可溶性樹脂(A)、架橋剤(B)、光重合開始剤(C)、硬化剤(D)からなる感光性樹脂に本発明のエポキシ樹脂を硬化剤(D)の1成分として加えることで調製できる。うち該エポキシ樹脂の含有量は1〜50重量%、好ましくは2〜30重量%である。
【0038】
それぞれ詳細には以下記載のとおりである。具体例で記載しているが、本発明のエポキシ樹脂組成物に使用されるそれぞれの材は記載の化合物に限定されない。
【0039】
アルカリ水溶液可溶性樹脂(A);
例えば分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物(a)と分子中にエチレン性不飽和基を有するモノカルボン酸化合物(b)とを反応させて得られるエポキシカルボキシレート化合物と、多塩基酸無水物(c)との反応生成物等であり、具体的にはKAYARAD CCR−1159H、KAYARAD PCR−1169H、KAYARAD TCR−1310H、KAYARAD ZFR−1401H、KAYARAD ZAR−1395H(いずれも日本化薬株式会社製)等が挙げられる。
【0040】
架橋剤(B);
エチレン性不飽和基を有する化合物、例えばアクリレート、メタアクリレート化合物等が挙げられ、具体的にはKAYARAD HX−220、KAYARAD HX−620、KAYARAD DPHA、KAYARAD DPCA−60(いずれも日本化薬株式会社製)等が挙げられる。
【0041】
光重合開始剤(C);
例えばベンゾイン類、アセトフェノン類、アントラキノン類、チオキサントン類、ケタール類、ベンゾフェノン類、ホスフィンオキサイド類等が挙げられ、具体的にはKAYACURE DETX-S(日本化薬株式会社製)、イルガキュア 907(チバスペシャリティーケミカル)等が挙げられる。
【0042】
硬化剤(D);
エポキシ基を2つ以上有する化合物であれば特に限定はない。本発明のエポキシ樹脂は全硬化剤中30重量%以上が好ましく、更に好ましくは50〜100重量%である。本発明のエポキシ樹脂と併用可能なエポキシ樹脂の具体例としては、下記フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリスヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール型エポキシ樹脂、ビスフェノール−A型エポキシ樹脂、ビスフェノール−F型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂、ビスフェノール−Aノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン骨格含有エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂等が挙げられる。
フェノールノボラック型エポキシ樹脂:
例えばエピクロンN−770(大日本インキ化学工業(株)製)、D.E.N438(ダウ・ケミカル社製)、エピコート154(ジャパンエポキシレジン(株)製)、RE−306(日本化薬(株)製)等が挙げられる。
クレゾールノボラック型エポキシ樹脂:
例えばエピクロンN−695(大日本インキ化学工業(株)製)、EOCN−102S、EOCN−103S、EOCN−104S(いずれも日本化薬(株)製)、UVR−6650(ユニオンカーバイド社製)、ESCN−195(住友化学工業(株)製)等が挙げられる。
ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂:
例えばエピクロンN−880(大日本インキ化学工業(株)製)、エピコートE157S75(ジャパンエポキシレジン(株)製)等が挙げられる。
トリスヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂:
例えばEPPN−503、EPPN−502H、EPPN−501H(いずれも日本化薬(株)製)、TACTIX−742(ダウ・ケミカル社製)、エピコートE1032H60(ジャパンエポキシレジン(株)製)等が挙げられる。
ジシクロペンタジエンフェノール型エポキシ樹脂:
例えばエピクロンEXA−7200(大日本インキ化学工業(株)製)、TACTIX−556(ダウ・ケミカル社製)等が挙げられる。
ビスフェノール型エポキシ樹脂:
例えばエピコート828、エピコート1001(いずれもジャパンエポキシレジン(株)製)、UVR−6410(ユニオンカーバイド社製)、D.E.R−331(ダウ・ケミカル社製)、YD−8125(東都化成(株)製)等のビスフェノール−A型エポキシ樹脂;UVR−6490(ユニオンカーバイド社製)、YDF−8170(東都化成(株)製)等のビスフェノール−F型エポキシ樹脂等が挙げられる。
ビフェノール型エポキシ樹脂:
例えば、NC−3000、NC−3000H(いずれも日本化薬(株)製)等のビフェノール型エポキシ樹脂、YX−4000(ジャパンエポキシレジン(株)製)のビフェノール型エポキシ樹脂、YL−6121(ジャパンエポキシレジン(株)製)等が挙げられる。
ナフタレン骨格含有エポキシ樹脂:
例えばNC−7000、NC−7300(いずれも日本化薬(株)製)、EXA−4750(大日本インキ化学工業(株)製)等が挙げられる。
脂環式エポキシ樹脂:
例えばEHPE−3150(ダイセル化学工業(株)製)等が挙げられる。
複素環式エポキシ樹脂:
例えばTEPIC−L、TEPIC−H、TEPIC−S(いずれも日産化学工業(株)製)等が挙げられる。
【0043】
さらに必要に応じて各種の添加剤、例えば、タルク、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、シリカ、クレーなどの充填剤、アエロジルなどのチキソトロピー付与剤;フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、酸化チタンなどの着色剤、シリコーン、フッ素系のレベリング剤や消泡剤;ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテルなどの重合禁止剤などを組成物の諸性能を高める目的で添加することが出来る。
【0044】
本発明のエポキシ樹脂組成物は必要に応じて溶剤を含有してもかまわない。使用可能な溶剤としては、例えば、アセトン、エチルメチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、ベンゼン、トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル等のグリコールエーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、グルタル酸ジアルキル、コハク酸ジアルキル、アジピン酸ジアルキル等のエステル類、γ−ブチロラクトン等の環状エステル類、石油エーテル、石油ナフサ、水添石油ナフサ、ソルベントナフサ等の石油系溶剤、などが挙げられるがこれらは単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0045】
本発明のエポキシ樹脂組成物(液状又はフィルム状)は、電子部品の層間の絶縁材、光部品間を接続する光導波路やプリント基板用のソルダーレジスト、カバーレイ等のレジスト材料として有用である他、カラーフィルター、印刷インキ、封止剤、塗料、コーティング剤、接着剤等としても使用できる。
【0046】
本発明の硬化物は、紫外線等のエネルギー線照射により上記の本発明のエポキシ樹脂組成物を硬化させたものである。紫外線等のエネルギー線照射により硬化は常法により行うことができる。例えば紫外線を照射する場合、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノン灯、紫外線発光レーザー(エキシマーレーザー等)等の紫外線発生装置を用いればよい。
【0047】
本発明の感光性のエポキシ樹脂組成物の硬化物は、例えばレジスト膜、ビルドアップ工法用の層間絶縁材や光導波路としてプリント基板、光電子基板や光基板のような電気・電子・光基材に利用される。これらの具体例としては、例えば、コンピューター、家電製品、携帯機器等の物品が挙げられる。この硬化物層の膜厚は0.5〜160μm程度で、1〜100μm程度が好ましい。
【0048】
具体的には例えばプリント配線板を製造する場合は、その一例として次のようにして得ることができる。即ち、液状の樹脂組成物を使用する場合、プリント配線用基板に、スクリーン印刷法、スプレー法、ロールコート法、静電塗装法、カーテンコート法等の方法により5〜160μmの膜厚で本発明の組成物を塗布し、塗膜を通常50〜110℃、好ましくは60〜100℃の温度で乾燥させることにより、塗膜が形成できる。その後、ネガフィルム等の露光パターンを形成したフォトマスクを通して塗膜に直接または間接に紫外線等の高エネルギー線を通常10〜2000mJ/cm2程度の強さで照射し、未露光部分を後述する現像液を用いて、例えばスプレー、揺動浸漬、ブラッシング、スクラッビング等により現像する。その後、必要に応じてさらに紫外線を照射し、次いで通常100〜200℃、好ましくは140〜180℃の温度で加熱処理をすることにより、金メッキ性に優れ、耐熱性、耐溶剤性、耐酸性、密着性、屈曲性等の諸特性を満足する永久保護膜を有するプリント配線板が得られる。
【0049】
上記、現像に使用される、アルカリ水溶液としては水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム等の無機アルカリ水溶液やテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド、テトラエチルアンモニウムハイドロオキサイド、テトラブチルアンモニウムハイドロオキサイド、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の有機アルカリ水溶液が使用できる。
【0050】
本発明のエポキシ樹脂組成物、エポキシ樹脂組成物及びそれらの硬化物は光学部品材料をはじめ各種用途に使用できる。ここで光学用材料とは、可視光、赤外線、紫外線、X線、レーザーなどの光をその材料中を通過させる用途に用いる材料一般を意味する。これらを使用した具体的な物品としては、ランプタイプ、SMDタイプ等のLED用封止材の他、以下のようなものが挙げられる。例えば表示装置分野では、液晶ディスプレイ分野における基板材料、導光板、プリズムシート、偏向板、位相差板、視野角補正フィルム、接着剤、偏光子保護フィルムなどの液晶用フィルムなどの液晶表示装置周辺材料等、また次世代フラットパネルディスプレイとして期待されるカラーPDP(プラズマディスプレイ)の封止材、反射防止フィルム、光学補正フィルム、ハウジング材、前面ガラスの保護フィルム、前面ガラス代替材料、接着剤等、またLED表示装置に使用されるLEDのモールド材、LEDの封止材、前面ガラスの保護フィルム、前面ガラス代替材料、接着剤、またプラズマアドレス液晶(PALC)ディスプレイにおける基板材料、導光板、プリズムシート、偏向板、位相差板、視野角補正フィルム、接着剤、偏光子保護フィルム等、また有機EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイにおける前面ガラスの保護フィルム、前面ガラス代替材料、接着剤、またフィールドエミッションディスプレイ(FED)における各種フィルム基板、前面ガラスの保護フィルム、前面ガラス代替材料、接着剤等が挙げられる。また、光記録分野では、VD(ビデオディスク)、CD/CD−ROM、CD−R/RW、DVD−R/DVD−RAM、MO/MD、PD(相変化ディスク)、光カード用のディスク基板材料、ピックアップレンズ、保護フィルム、封止材、接着剤などが挙げられる。
【0051】
また、光学機器分野では、スチールカメラのレンズ用材料、ファインダプリズム、ターゲットプリズム、ファインダーカバー、受光センサー部等またビデオカメラの撮影レンズ、ファインダー等、またプロジェクションテレビの投射レンズ、保護フィルム、封止材、接着剤等、また光センシング機器のレンズ用材料、封止材、接着剤、フィルム等が挙げられる。また、光部品分野では、光通信システムにおける光スイッチ周辺のファイバー材料、レンズ、導波路、素子の封止材、接着剤等、また光コネクタ周辺の光ファイバー材料、フェルール、封止材、接着剤等、また光受動部品、光回路部品ではレンズ、導波路、LEDの封止材、CCDの封止材、接着剤等、また光電子集積回路(OEIC)周辺の基板材料、ファイバー材料、素子の封止材、接着剤等が挙げられる。また、光ファイバー分野では、装飾ディスプレイ用照明・ライトガイド等、工業用途のセンサー類、表示・標識類等、また通信インフラ用および家庭内のデジタル機器接続用の光ファイバー等、また半導体集積回路周辺材料では、LSI、超LSI材料用のマイクロリソグラフィー用のレジスト材料等が挙げられる。また、次世代の光・電子機能有機材料としては、有機EL素子周辺材料、有機フォトリフラクティブ素子、光−光変換デバイスである光増幅素子、光演算素子、有機太陽電池周辺の基板材料、ファイバー材料、素子の封止材、接着剤等が挙げられる。また、これら光学材料以外の用途として、自動車・輸送機分野では、自動車用のランプリフレクタ、ベアリングリテーナー、ギア部分、耐蝕コート、スイッチ部分、ヘッドランプ、エンジン内部品、電装部品、各種内外装品、駆動エンジン、ブレーキオイルタンク、自動車用防錆鋼板、インテリアパネル、内装材、保護・結束用ワイヤーネス、燃料ホース、自動車ランプ、ガラス代替品等、また鉄道車輌用の複層ガラス等、また航空機の構造材の靭性付与剤、エンジン周辺部材、保護・結束用ワイヤーネス、耐蝕コート等が挙げられる。また、建築分野では、内装・加工用材料、電気カバー、シート、ガラス中間膜、ガラス代替品、太陽電池周辺材料等が挙げられる。また、農業用分野では、ハウス被覆用フィルム等が挙げられる。
【0052】
更に、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂が使用される一般の用途が挙げられ、例えば、接着剤、塗料、コーティング剤、成形材料(シート、フィルム、FRP等を含む)、絶縁材料(プリント基板、電線被覆等を含む)、封止剤の他、他樹脂等への添加剤等が挙げられる。
【0053】
接着剤としては、土木用、建築用、自動車用、一般事務用、医療用の接着剤の他、電子材料用の接着剤が挙げられる。これらのうち電子材料用の接着剤としては、ビルドアップ基板等の多層基板の層間接着剤、ダイボンディング剤、アンダーフィル等の半導体用接着剤、BGA補強用アンダーフィル、異方性導電性フィルム(ACF)、異方性導電性ペースト(ACP)等の実装用接着剤等が挙げられる。
【実施例】
【0054】
次に本発明を実施例により更に具体的に説明するが、以下において、部は特に断りのない限り重量部である。なお、軟化点、エポキシ当量は以下の条件で測定した。
・融点:DSC法
Seiko Instruments Inc.製 EXSTAR6000
測定試料 2mg〜5mg 昇温速度 10℃/min.
・エポキシ当量
JIS K−7236に記載の方法で測定し、単位はg/eq.である。
【0055】
実施例1
温度計、冷却官、撹拌器を取り付けたフラスコに窒素ガスパージを施しながら前記式(1)の化合物(DOQ−O 三光化学株式会社製)169部、エピクロルヒドリン463部、メタノール169部を仕込み溶解させた。更に70℃に加熱しフレーク状水酸化ナトリウム41部を90分かけて分割添加し、その後、更に70℃で60分間反応させた。反応終了後、水150部で二回洗浄を行い生成した塩などを除去した後、加熱減圧下(〜70℃、−0.08MPa〜−0.09MPa)、撹拌しながら、3時間で、過剰のエピクロルヒドリン等を留去した。スラリー状態になったところで、減圧を開放し、アセトン300部を加え、還流状態で30分攪拌後、メタノール1500部を加え15分撹拌、つづいて水300部を徐々に加えた。この溶液を減圧濾過することで目的とする結晶状エポキシ樹脂が得られた。さらにこの結晶をメタノール200部、さらに水200部で十分洗浄し、乾燥することで本発明のエポキシ樹脂が白色の粉末状結晶として191g得られた(この結晶をD−1とする)。得られたエポキシ樹脂はエポキシ当量が242g/eq.で、その融点は98℃であった。また屈折率を測定したところ、その屈折率は1.65であった。(ジメチルスルホキシドに溶解し、その屈折率を3点測定し、計算した。測定装置:多波長アッベ屈折計DR−M2 株式会社アタゴ製、測定波長:589nm(D線))
【0056】
比較例1
温度計、冷却官、撹拌器を取り付けたフラスコに窒素ガスパージを施しながら前記式(1)(DOQ−O 三光化学株式会社製)169部、エピクロルヒドリン555部、DMSO110部を仕込み溶解させた。更に40℃に加熱しフレーク状水酸化ナトリウム41部を90分かけて分割添加し、その後、更に50℃で2時間、70℃で1時間反応させた。反応終了後、水150部で1回洗浄を行い生成した塩などを除去した後、油層から加熱減圧下過剰のエピクロロヒドリン等を除去し、残留物を450部のメチルイソブチルケトンに溶解させた。この溶液を70℃に加温した後、30重量%水酸化ナトリウム水溶液7部を添加し、1時間反応させた。ついで洗浄液が中性になるまで水洗を行い、油層から加熱減圧下、メチルイソブチルケトン等を留去することで比較用のエポキシ樹脂が207部得られた。エポキシ当量は234g/eq.、軟化点は63℃の淡黄色の樹脂状の固体であった(この樹脂をD−2とする)。
【0057】
実施例2(合成例)
攪拌装置、還流管をつけた3Lフラスコ中に、分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物(a)として、日本化薬製 EOCN−103S(多官能クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、エポキシ当量:215.0g/当量)を860.0g、分子中にエチレン性不飽和基を有するモノカルボン酸化合物(b)としてアクリル酸(分子量:72.06)を288.3g、反応用溶媒としてカルビトールアセテートを492.1g、熱重合禁止剤として2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾールを4.921g及び反応触媒としてトリフェニルホスフィンを4.921g仕込み、98℃で反応液の酸価が0.5mg・KOH/g以下になるまで反応させ、エポキシカルボキシレート化合物を得た。
次いでこの反応液に反応用溶媒としてカルビトールアセテートを169.8g、多塩基酸無水物(c)としてテトラヒドロ無水フタル酸を201.6g仕込み、95℃で4時間反応させ、アルカリ水溶液可溶性樹脂(A)を67重量%の濃度で含む樹脂溶液を得た(この溶液をA−1とする)。この溶液の酸価を測定したところ、69.4mg・KOH/g(固形分酸価:103.6mg・KOH/g)であった。
【0058】
実施例3 比較例2
前記実施例2で得られた樹脂溶液(A−1)及び、実施例1で得られたエポキシ樹脂(D−1)、更に比較例1で得られたエポキシ樹脂(D−2)を用い、表1に示す配合割合で混合、3本ロールミルで混練し、本発明のエポキシ樹脂組成物を得た。これをスクリーン印刷法により、乾燥膜厚が15〜25μmの厚さになるように約10cm角のプリント基板に塗布し塗膜を80℃の熱風乾燥器で30分乾燥させた。次いで、紫外線露光装置((株)オーク製作所、型式HMW−680GW)を用い回路パターンの描画されたマスクを通して紫外線を照射した。その後、1%炭酸ナトリウム水溶液でスプレー現像を行い、紫外線未照射部の樹脂を除去した。水洗乾燥した後、プリント基板を150℃の熱風乾燥器で60分加熱硬化反応させ硬化膜を得た。それらの結果を表2に示す。なお、試験方法及び評価基準は次のとおりである。
【0059】
(タック性)基板に塗布した乾燥後の膜に脱脂綿をこすりつけ、膜のタック性を評価した。
○・・・・脱脂綿は張り付かない。
×・・・・脱脂綿の糸くずが、膜に張り付く。
【0060】
(熱安定性)80℃での乾燥時間を40、50、60、70分で行った時の現像性を評価し、下記の評価基準を使用した。
○・・・・現像時、完全にインキが除去され、現像できた。
×・・・・現像時、現像されない部分がある。
【0061】
(解像性)乾燥後の塗膜に、50μmのネガパターンを密着させ積算光量200mJ/cmの紫外線を照射露光する。次に1%の炭酸ナトリウム水溶液で60秒間、2.0kg/cmのスプレー圧で現像し、転写パターンを顕微鏡にて観察する。下記の基準を使用した。
○・・・・パターンエッジが直線で、解像されている。
×・・・・剥離もしくはパターンエッジがぎざぎざである。
【0062】
(光感度)乾燥後の塗膜に、ステップタブレット21段(コダック社製)を密着させ積算光量500mJ/cmの紫外線を照射露光する。次に1%の炭酸ナトリウム水溶液で60秒間、2.0kg/cmのスプレー圧で現像し、現像されずに残った塗膜の段数を確認する。
【0063】
表1
実施例 比較例
注 3 2
樹脂溶液
A−1 51.80 51.80
架橋剤(B)
DPHA *1 3.38 3.38
光重合開始剤(C)
イルガキュア 907 *2 4.50 4.50
DETX−S *3 0.45 0.45
硬化剤(D)
D−1 17.62
D−2 17.62
熱硬化触媒
メラミン 1.00 1.00
フィラー
硫酸バリウム 15.15 15.15
フタロシアニンブルー 0.45 0.45
添加剤
BYK−354 *4 0.39 0.39
KS−66 *5 0.39 0.39
溶剤
CA 4.87 4.87
【0064】

*1 日本化薬製 :ジペンタエリスリトールポリアクリレート
*2 Vantico製 :2−メチル−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−モルホリノ−1−プロパン
*3 日本化薬製 :2,4−ジエチルチオキサントン
*4 ビックケミー製:レベリング剤
*5 信越化学製 :消泡剤
【0065】
表2
実施例 3
比較例 2
評価項目
タック性 ○ ×
熱安定性
40分 ○ ○
50分 ○ ○
60分 ○ ×
70分 ○ ×
解像性 ○ ○
光感度 12 11
【0066】
上記の結果から明らかなように、本発明のエポキシ樹脂組成物、並びに硬化物は、エポキシ樹脂の光硬化時の安定性が良いことから、熱安定性に優れ、高感度であるエポキシ樹脂組成物ということがわかる。
【0067】
以上の結果より、本発明のエポキシ樹脂は高屈折率で、かつ結晶性を有するエポキシ樹脂であり、光部品材料に有用である。またこれを含有するエポキシ樹脂組成物は、そのエポキシ樹脂を含有するエポキシ樹脂組成物においても高い貯蔵安定性を有することが確認できた。したがって本発明のエポキシ樹脂を含有するエポキシ樹脂組成物の硬化物は、電気・電子部品用絶縁材料及び積層板(プリント配線板など)やCFRPを始めとする各種複合材料、接着剤、塗料、レジスト材料、また特に光学用途等に使用する場合に極めて有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)
【化1】

で表される化合物とエピハロヒドリンを反応させ得られるエポキシ樹脂である結晶状エポキシ樹脂。
【請求項2】
請求項1に記載のエポキシ樹脂及び硬化剤を含有するエポキシ樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1に記載のエポキシ樹脂、分子中に1個以上の不飽和二重結合を有する化合物及び光重合開始剤を含有するエポキシ樹脂組成物。
【請求項4】
請求項2、3に記載のエポキシ樹脂組成物を硬化させた硬化物。
【請求項5】
請求項2、3に記載のエポキシ樹脂組成物を使用した光学材料。

【公開番号】特開2006−307011(P2006−307011A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−131463(P2005−131463)
【出願日】平成17年4月28日(2005.4.28)
【出願人】(000004086)日本化薬株式会社 (921)
【Fターム(参考)】