説明

エポキシ樹脂組成物及びその硬化物

【課題】 エポキシ樹脂硬化物の優れた耐食性を損なうことがなく、特に耐アルカリ性が良好であり、且つ柔軟性に優れ、塗料材料、ライニング材、コンクリートプライマー、コンクリートシーラー等に好適に用いることができるエポキシ樹脂組成物及びその硬化物を提供すること。
【解決手段】 多価フェノール類(a1)と多価ビニルエーテル類(a2)とを反応させて得られる変性多価フェノール類(A)をグリシジルエーテル化してなるエポキシ樹脂(X)と変性脂肪族ポリアミン類(Y)とを含有することを特徴とするエポキシ樹脂組成物及びその硬化物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエポキシ樹脂硬化物の優れた耐食性を損なうことがなく、特に耐アルカリ性が良好であり、且つ柔軟性に優れ、塗料材料、ライニング材、コンクリートプライマー、コンクリートシーラー等に好適に用いることができるエポキシ樹脂組成物及びその硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシ樹脂は種々の硬化剤で硬化させることにより、耐食性に優れた硬化物が得られる事から、塗料、ライニング材、接着剤、電気電子用途等に広く用いられているが、一般的に柔軟性に劣るという本質的な課題を抱えている。特に塗料用途や、コンクリートやモルタル用のライニング及びプライマー、コンクリートシーラー等では、屋外で使用されることが多いため、気温の変化や振動等による基材の伸縮が起こりやすく、硬化物にクラックが発生しやすいことから、エポキシ樹脂硬化物の優れた耐食性を損なうことがなく、柔軟性に優れるものが求められている。
【0003】
これらの課題の解決手段としては、例えば、ウレタン変性エポキシ樹脂を用いる方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。ウレタン変性エポキシ樹脂を用いて得られる硬化物は、例えば、ビスフェノール型エポキシ樹脂を用いて得られる硬化物よりも柔軟性はある程度改良されるものの、近年の要求性能を満たすものではなく、更に、特にコンクリート構造材で使用される場合に必要とされる耐アルカリ性が不足し、改良が求められている。
【0004】
【特許文献1】特開平8−311152号公報(第2〜4頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って本発明の課題は、エポキシ樹脂硬化物の優れた耐食性を損なうことがなく、特に耐アルカリ性が良好であり、且つ柔軟性に優れ、塗料材料、ライニング材等に好適に用いることができるエポキシ樹脂組成物及びその硬化物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは前記の課題を解決するため鋭意研究した結果、多価フェノール類と多価ビニルエーテル類を反応させて得られる変性多価フェノール類をグリシジルエーテル化してなるエポキシ樹脂と変性脂肪族ポリアミン類とを含有するエポキシ樹脂組成物が、前記の課題を解決できることを見いだし、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は、多価フェノール類(a1)と多価ビニルエーテル類(a2)とを反応させて得られる変性多価フェノール類(A)をグリシジルエーテル化してなるエポキシ樹脂(X)と変性脂肪族ポリアミン類(Y)とを含有することを特徴とするエポキシ樹脂組成物及びこれを硬化した硬化物を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、常温で硬化させることが出来、得られる硬化物は柔軟性に優れ、且つ耐食性、特に耐アルカリ性に優れる。このような物性を持つことから、塗料材料、ライニング材等の要求性能を満足でき、特にコンクリート構造材として使用される場面に好適に用いることが出来、極めて有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のエポキシ樹組成物は、多価フェノール類(a1)と多価ビニルエーテル類(a2)とを反応させて得られる変性多価フェノール類(A)をグリシジルエーテル化してなるエポキシ樹脂(X)と変性脂肪族ポリアミン類(Y)とを含有するものである。
【0010】
前記エポキシ樹脂(X)は、多価フェノール類(a1)中の芳香族性水酸基と多価ビニルエーテル類(a2)中のビニルエーテル基を付加反応させて、多価フェノール類をアセタール基によって分子鎖延長し、得られる変性多価フェノール類(A)中の水酸基をエピハロヒドリンによってグリシジルエーテル化してなる化学構造を有している。
【0011】
前記水酸基とビニルエーテル基との反応は、下記化学反応式
【0012】
【化1】

で表され、アセタール基を生成する。
【0013】
前記多価フェノール類(a1)としては、1分子中に1個より多い芳香族性水酸基を含有する芳香族系化合物であれば、特に限定されないが、例えば、ハイドロキノン、レゾルシン、カテコール、それらの置換基含有体のようなジヒドロキシベンゼン類;1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン、1,4−ジヒドロキシナフタレン、1,5−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、それらの置換基含有体のようなジヒドロキシナフタレン類;ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン(ビスフェノールF)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールC)、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン(ビスフェノールZ)、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン(ビスフェノールAP)、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン(ビスフェノールS)及びこれらの置換基含有体等のビスフェノール類;ビス(2−ヒドロキシ−1−ナフチル)メタン、ビス(2−ヒドロキシ−1−ナフチル)プロパン等のビスナフトール類;フェノール/ホルムアルデヒド重縮合物、オルソクレゾール/ホルムアルデヒド重縮合物、1−ナフトール/ホルムアルデヒド重縮合物、2−ナフトール/ホルムアルデヒド重縮合物、フェノール/アセトアルデヒド重縮合物、オルソクレゾール/アセトアルデヒド重縮合物、1−ナフトール/アセトアルデヒド重縮合物、2−ナフトール/アセトアルデヒド重縮合物、フェノール/サリチルアルデヒド重縮合物、オルソクレゾール/サリチルアルデヒド重縮合物、1−ナフトール/サリチルアルデヒド重縮合物、2−ナフトール/サリチルアルデヒド重縮合物等とこれらの置換基含有体等のフェノール類(ナフトール類)/アルデヒド類重縮合物類;フェノール/ジシクロペンタジエン重付加物、フェノール/テトラヒドロインデン重付加物、フェノール/4−ビニルシクロヘキセン重付加物、フェノール/5−ビニルノボルナ−2−エン重付加物、フェノール/α−ピネン重付加物、フェノール/β−ピネン重付加物、フェノール/リモネン重付加物、オルソクレゾール/ジシクロペンタジエン重付加物、オルソクレゾール/テトラヒドロインデン重付加物、オルソクレゾール/4−ビニルシクロヘキセン重付加物、オルソクレゾール/5−ビニルノボルナ−2−エン重付加物、オルソクレゾール/α−ピネン重付加物、1−ナフトール/ジシクロペンタジエン重付加物、1−ナフトール/4−ビニルシクロヘキセン重付加物、1−ナフトール/5−ビニルノルボルナジエン重付加物、1−ナフトール/α−ピネン重付加物、1−ナフトール/β−ピネン重付加物、1−ナフトール/リモネン重付加物、オルソクレゾール/β−ピネン重付加物、オルソクレゾール/リモネン重付加物等とこれらの置換基含有体等のフェノール類(ナフトール類)/ジエン類重付加物類;フェノール/p−キシレンジクロライド重縮合物、1−ナフトール/p−キシレンジクロライド重縮合物、2−ナフトール/p−キシレンジクロライド重縮合物、フェノール/ビスクロロメチルビフェニル重縮合物、オルトクレゾール/ビスクロロメチルビフェニル重縮合物、1−ナフトール/ビスクロロメチルビフェニル重縮合物、2−ナフトール/ビスクロロメチルビフェニル重縮合物とこれらの置換基含有体等のフェノール類/アラルキル樹脂類との重縮合物類が挙げられる。また、これらの置換基含有体の置換基例としては、アルキル基、アリール基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシル基、ハロゲン原子などが挙げられる。
【0014】
これらの多価フェノール類のなかでも、ビニルエーテル変性率を高めても液状の低粘度エポキシ樹脂が得られ、塗料やライニング材に好適に用いることが出来ることから、2価フェノール類が好ましい。2価フェノール類のなかでも、柔軟性、耐水性に優れる硬化物が得られることから、ビスフェノールA、ビスフェノールF等のビスフェノール類が好ましく、得られるエポキシ樹脂組成物の流動性を強く鑑みるとハイドロキノン、レゾルシン、カテコールなどのジヒドロキベンゼン類、1,6−ジヒドロキシナフタレンなどのジヒドロキシナフタレン類が特に好ましい。
【0015】
また前記多価ビニルエーテル類(a2)としては、1分子中に1個より多いビニルエーテル基を含有する化合物であれば、特に限定されないが、例えば、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、テトラエチレングリコールジビニルエーテル、ポリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレンレングリコールジビニルエーテル、ジプロピレンレングリコールジビニルエーテル、トリプロピレングリコールジビニルエーテル、テトラプロピレンレングリコールジビニルエーテル、ポリプロピレンレングリコールジビニルエーテル、ポリテトラメチレングリコールジビニルエーテル等の(ポリ)オキシアルキレン基を含有するジビニルエーテル類;グリセロールジビニルエーテル、トリグリセロールジビニルエーテル、1,3−ブチレングリコールジビニルエーテル、1,4−ブタンジジオールジビニルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジビニルエーテル、1,9−ノナンジオールジビニルエーテル、1,10−デカンジオールジビニルエーテル、ネオペンチルグリコールジビニルエーテル、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジビニルエーテル等のアルキレン基を有するジビニルエーテル類;1,4−シクロヘキサンジオールジビニルエーテル、1,4−シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、トリシクロデカンジオールジビニルエーテル、トリシクロデカンジメタノールジビニルエーテル、ペンタシクロペンタデカンジメタノールジビニルエーテル、ペンタシクロペンタデカンジオールジビニルエーテル等のシクロアルカン構造を含有するジビニルエーテル類;ビスフェノールAジビニルエーテル、エチレンオキサイド変性ビスフェノールAジビニルエーテル、プロピレンオキサイド変性ビスフェノールAジビニルエーテル、ビスフェノールFジビニルエーテル、エチレンオキサイド変性ビスフェノールFジビニルエーテル、プロピレンオキサイド変性ビスフェノールFジビニルエーテルのようなジビニルエーテル類;トリメチロールプロパントリビニルエーテル、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリビニルエーテル、プロピレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリビニルエーテル、ペンタエリスリトールトリビニルエーテルのような3価ビニルエーテル類;ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、ペンタエリスリトールエトキシテトラビニルエーテル、ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテルのような4価ビニルエーテル類;ジペンタエリスリトールヘキサ(ペンタ)ビニルエーテル等の多価ビニルエーテル類などが挙げられる。
【0016】
前記多価ビニルエーテル類のなかでも,ビニルエーテル変性率を高めても低粘度の液状エポキシ樹脂が得られ、塗料やライニング材に好適に用いることが出来ることから、ジビニルエーテル類が好ましい。ジビニルエーテル類としては、得られるエポキシ樹脂の所望の特性を考慮して、適当なものを選択すればよいが、低粘度、柔軟性などを所望するならば、ポリオキシアルキレン骨格を含有するジビニルエーテル類が好ましい。また、優れた耐食性を所望するならば、シクロアルカン骨格を含有するジビニルエーテル類が好ましい。
【0017】
前記変性多価フェノール類(A)としては、前記多価フェノール(a1)と前記多価ビニルエーテル類(a2)とをアセタール化反応させて得ることができる。
【0018】
アセタール化反応方法としては、芳香族性水酸基とビニルエーテル基との反応条件に準拠すればよく、特に限定されるものではないが、例えば、前記多価フェノール類(a1)と前記多価ビニルエーテル類(a2)とを仕込み、撹拌混合しながら加熱する方法が挙げられる。この場合、必要に応じて、有機溶媒や触媒を使用することができる。使用できる有機溶媒としては、特に限定されるものではないが、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族性有機溶媒や、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系有機溶媒、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ノルマルブタノールなどのアルコール系有機溶媒等が挙げられ、用いる原料や生成物の溶解度などの性状や反応条件や経済性等を考慮して適宜選択すればよい。前記有機溶媒の使用量としては、原料重量に対して5〜500重量%の範囲であることが好ましい。
【0019】
前記反応は、通常、無触媒においても十分反応は進行するが、用いる原料の種類や得られる変性多価フェノール類(A)の所望の特性、所望の反応速度等によっては、触媒を使用してもよい。その触媒の種類としては、通常、水酸基とビニルエーテル基との反応に用いられる触媒であれば特に限定されるものではないが、例えば、硫酸、塩酸、硝酸、リン酸などの無機酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、キシレンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、シュウ酸、ギ酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸など有機酸、塩化アルミニウム、塩化鉄、塩化スズ、塩化ガリウム、塩化チタン、臭化アルミニウム、臭化ガリウム、三弗化ホウ素エーテル錯体、三弗化ホウ素フェノール錯体などのルイス酸等が挙げられ、添加量としては、原料全重量に対して、10ppm〜1重量%の範囲で用いることができる。但し、触媒添加系においては、芳香環に対するビニル基の核付加反応を起こさないように、その種類や添加量、及び反応条件を選択する必要がある。
【0020】
芳香族性水酸基とビニルエーテル基との反応条件としては、通常、室温から200℃、好ましくは、50〜150℃の温度で、0.5〜30時間程度、加熱撹拌すればよい。この際、ビニルエーテル類の自己重合を防止するため、酸素含有雰囲気下で反応させることが好ましい。反応の進行程度は、ガスクロマトグラフィーや液体クロマトグラフィー等を用いて、原料の残存量を測定することによって追跡できる。また有機溶媒を使用した場合には、蒸留等でそれを除去し、触媒を使用した場合には、必要によって失活剤等で失活させて、水洗や濾過操作によって除去することも出来る。但し、次工程のエポキシ化反応で悪影響がない有機溶媒や触媒(失活触媒残含む)の場合は、特に精製しなくてもよい。
【0021】
上記反応における多価フェノール類(a1)と多価ビニルエーテル類(a2)との反応比率としては、反応生成物1分子中に1個以上の芳香族性水酸基が残るような比率であれば、特に限定されず、原料の多価フェノール類(a1)と多価ビニルエーテル類(a2)との種類と組み合わせや、得られる変性多価フェノール類(A)の所望のビニルエーテル変性率、分子量、水酸基当量等の物性値、及び反応条件に因るアセタール転化率等に応じて決定すればよい。例えば、ビニルエーテル変性に因る柔軟性などの効果を際だって高めたい場合は、多価ビニルエーテル類(a2)の量を高めればよい。具体的は、多価フェノール類(a1)中の芳香族性水酸基に対して、多価ビニルエーテル類(a2)中のビニルエーテル基が、〔多価フェノール類(a1)中の芳香族性水酸基〕/〔多価ビニルエーテル類(a2)中のビニルエーテル基〕=80/20〜50/50(モル比)となるような割合が好ましい。また、副反応の影響等によって、ビニルエーテル転化率が低いような反応条件の場合は、前述の比率〔多価フェノール類(a1)中の芳香族性水酸基〕/〔多価ビニルエーテル類(a2)中のビニルエーテル基〕=50/50(モル比)を超えて、ビニルエーテル基過剰の仕込み量条件でも構わない。一方、硬化性、耐食性等の物性バランスを重視したい場合は、前述の比率が〔多価フェノール類(a1)中の芳香族性水酸基〕/〔多価ビニルエーテル類(a2)中のビニルエーテル基〕=95/5〜80/20(モル比)の範囲が好ましい。
【0022】
次いで、本発明で用いるエポキシ樹脂(X)の製造方法に関して詳述する。該製造方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、前記で得られる変性多価フェノール類(A)とエピクロルヒドリン、エピブロムヒドリン等のエピハロヒドリンとの溶解混合物に水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物を添加し、または添加しながら20〜120℃で1〜10時間反応させる方法が挙げられる。前記エピハロヒドリンの添加量としては、原料の変性多価フェノール類(A)中の水酸基1当量に対して、通常、0.3〜20当量の範囲で用いられる。エピハロヒドリンが2.5当量よりも少ない場合、エポキシ基と未反応水酸基が反応しやすくなるため、エポキシ基と未反応水酸基が付加反応して生成する基(−CHCR(OH)CH−、R:水素原子又は有機炭素基)を含む高分子量物が得られる。一方、2.5当量以上の場合、原料の変性多価フェノール類(A)中の水酸基がグリシジル基に置換された構造を有する低分子量エポキシ樹脂の含有量が高くなる。所望の特性(エポキシ樹脂の粘度やエポキシ当量等)によってエピハロヒドリンの量を適宜調節すればよい。
【0023】
前記アルカリ金属水酸化物はその水溶液を使用してもよく、その場合は該アルカリ金属水酸化物の水溶液を連続的に反応系内に添加すると共に減圧下、または常圧下連続的に水及びエピハロヒドリンを留出させ、更に分液し水は除去しエピハロヒドリンは反応系内に連続的に戻す方法でもよい。
【0024】
また変性多価フェノール類(A)とエピハロヒドリンとの溶解混合物にテトラメチルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムブロマイド、トリメチルベンジルアンモニウムクロライド等の4級アンモニウム塩を触媒として添加し50〜150℃で1〜5時間反応させて得られる該フェノール類のハロヒドリンエーテル化物にアルカリ金属水酸化物の固体または水溶液を加え、再び20〜120℃で1〜10時間反応させ脱ハロゲン化水素(閉環)させる方法でもよい。
【0025】
更に、反応を円滑に進行させるためにメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノールなどのアルコール類、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、ジオキサンなどのエーテル類、ジメチルスルホン、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶媒などを添加して反応を行うことが好ましい。溶媒を使用する場合のその使用量としては、エピハロヒドリンの量に対し通常5〜50重量%、好ましくは10〜30重量%である。また非プロトン性極性溶媒を用いる場合はエピハロヒドリンの量に対し通常5〜100重量%、好ましくは10〜60重量%である。
【0026】
これらのエポキシ化反応の反応物を水洗後、または水洗無しに加熱減圧下、110〜250℃、圧力10mmHg以下でエピハロヒドリンや他の添加溶媒などを除去する。また更に加水分解性ハロゲンの少ないエポキシ樹脂とするために、エピハロヒドリン等を回収した後に得られる粗エポキシ樹脂を再びトルエン、メチルイソブチルケトンなどの溶剤に溶解し、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物の水溶液を加えて更に反応させて閉環を確実なものにすることもできる。この場合、アルカリ金属水酸化物の使用量としては粗エポキシ樹脂中に残存する加水分解性塩素1モルに対して、通常0.5〜10モル、好ましくは1.2〜5.0モルである。反応温度は通常50〜120℃、反応時間は通常0.5〜3時間である。反応速度の向上を目的として、4級アンモニウム塩やクラウンエーテル等の相関移動触媒を存在させてもよい。相関移動触媒を使用する場合のその使用量としては、粗エポキシ樹脂に対して0.1〜3.0重量%の範囲が好ましい。
【0027】
反応終了後、生成した塩を濾過、水洗などにより除去し、更に、加熱減圧下トルエン、メチルイソブチルケトンなどの溶剤を留去することにより目的のエポキシ樹脂(X)が得られる。
【0028】
もちろん変性多価フェノール類(A)を製造して、反応器から取り出すことなくして、そのままエピハロヒドリン類等の原料を仕込み、連続してグリシジルエーテル化するような合理的手段も用いることができる。
【0029】
前記で得られるエポキシ樹脂(X)は、下記一般式(1)
【0030】
【化2】

(式中、Xは2価の有機基を示し、両末端の酸素原子(*)は芳香族環と直接結合している。)
で表されるジアセタール構造を分子内に含有するエポキシ樹脂である。該エポキシ樹脂(X)の官能基濃度(エポキシ当量)や官能基数(1分子中のエポキシ基の平均個数)に関しても、特に限定されるものではないが、なかでもエポキシ当量に関しては、200〜2,000g/eq.の範囲が粘度、硬化性、柔軟性、耐食性等のバランスに優れることから好ましく、官能基濃度に関しては、1<官能基数(個)≦20の範囲が同様な特性バランスに優れることから好ましい。
【0031】
また、前記エポキシ樹脂(X)の25℃における粘度としては、流動性、作業性や組成分配合の自由度などから、5,000〜100,000mPa・sの範囲であるものが好ましい。
【0032】
本発明のエポキシ樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲において、前記エポキシ樹脂(X)以外のその他のエポキシ樹脂を併用して使用することができる。併用する場合、前記エポキシ樹脂(X)の全エポキシ樹脂に占める割合は、30重量%以上が好ましく、特に40重量%以上が好ましい。前記エポキシ樹脂(X)と併用しうるエポキシ樹脂としては、特に限定されず種々のエポキシ樹脂を用いることができるが、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、レゾルシン型エポキシ樹脂、ハイドロキノン型エポキシ樹脂、カテコール型エポキシ樹脂、ジヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、テトラメチルビフェニル型エポキシ樹脂等の液状エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン−フェノール付加反応型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトール−フェノール共縮ノボラック型エポキシ樹脂、ナフトール−クレゾール共縮ノボラック型エポキシ樹脂、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール樹脂型エポキシ樹脂、ビフェニル変性ノボラック型エポキシ樹脂、テトラブロモビスフェノールA型エポキシ樹脂、ブロム化フェノールノボラック型エポキシ樹脂などが挙げられる。またブチルグリシジルエーテル、アルキルフェノールグリシジルエーテル、脂肪鎖カルボン酸グリシジルエステルなどの反応性希釈剤型のエポキシ樹脂や、脂環式エポキシ樹脂などの液状エポキシ樹脂なども挙げられる。また前記他のエポキシ樹脂は単独で用いてもよく、2種以上を混合してもよい。
【0033】
本発明で用いる変性脂肪族ポリアミン類(Y)は、前記で得られたエポキシ樹脂(X)の硬化剤として用いるものであり、アミン蒸気による皮膚障害を抑制し、エポキシ樹脂との配合比が大きく取り扱い易くするために、脂肪族性アミノ基を2個以上有するポリアミン化合物(y1)を原料として各種変性を行ったものである。前記変性の方法としては特に限定されるものではなく、例えば、カルボン酸類とポリアミン化合物(y1)との重縮合による方法、ミカエル反応、チオ尿素反応、各種アダクト物との反応、後述するマンニッヒ変性等が挙げらる。これらの中でも、硬化性に優れる点からエポキシ樹脂との反応物であるエポキシアダクト変性ポリアミンやマンニッヒ変性ポリアミンを用いることが好ましく、特に低温硬化性に優れる点からマンニッヒ変性ポリアミンを用いることが好ましい。
【0034】
前記マンニッヒ変性ポリアミンは、ポリアミン化合物(y1)とホルムアルデヒド類(y2)とフェノール化合物(y3)とを反応させて得られるものであり、一般にアミン系硬化剤の中でも硬化性が良好であり、且つ、分子内にフェノール化合物(y3)由来の芳香環を有することから、得られる硬化物の耐水性や機械的物性を向上させるものであり、前述のエポキシ樹脂(X)と組み合わせて使用することにより、硬化促進剤を使用しなくても、常温で硬化反応が速やかに進行する点から好ましいものである。
【0035】
前記ポリアミン化合物(y1)としては、特に限定されるものではなく、種々のものを使用することが出来るが、例えば、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等のアルキレンジアミン;ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン等のポリアルキレンポリアミン;1,2−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ジアミノ−3,6−ジエチルシクロヘキサン、イソホロンジアミン、1,4−ビス(3−アミノプロピル)ピペラジン等の脂環式ポリアミン;m−キシレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルフォン等の芳香環を有するポリアミンなどが挙げられ、単独でも、2種以上の混合物として用いても良い。
【0036】
更に、前記で例示した所謂生アミン(変性されていないもの)を用いて、アミノ基の一部を脂肪族ジカルボン酸と重縮合しアミド化したポリアミドポリアミン類等もポリアミン化合物(y1)として使用することが出来る。この時用いることが出来る脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、トール油脂肪酸、リノレン酸、リノール酸等からなるダイマー酸等が挙げられる。
【0037】
前記ポリアミン化合物(y1)としては得られる硬化物の所望の特性を考慮して、適当なものを選択すればよいが、優れた柔軟性を所望するならば、ポリアルキレンポリアミン及びその変性物を用いることが好ましい。また、優れた耐食性を所望するならば、芳香環を有するアミン類を用いることが好ましい。
【0038】
また、前記ホルムアルデヒド類(y2)としては、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド、アセトンなどのホルムアルデヒド放出性物質が挙げられる。これらの中でも、反応性に優れることから、ホルムアルデヒドが好ましい。
【0039】
また、前記フェノール化合物(y3)としては、フェノール、アルキル置換フェノール、クレゾール、ハロゲン置換フェノール、アニソール、ビスフェノールA、ビスフェノールFなどが挙げられ、単独でも、2種以上を併用して用いても良い。これらの中でも硬化性に優れ、また硬化物の耐食性が優れることから、フェノールが好ましい。
【0040】
これらのポリアミン化合物(y1)、ホルムアルデヒド類(y2)、フェノール化合物(y3)を反応させてマンニッヒ変性ポリアミンを得る方法としては、特に限定されるものではないが、例えばポリアミン化合物(y1)とフェノール化合物(y3)との混合物にホルムアルデヒド類(y2)を80℃以下、好ましくは60℃以下で添加し、その後80〜180℃、好ましくは90〜150に昇温し、留出物を反応系から除去しながら1〜10時間反応させることによって得る方法などが挙げられる。得られたマンニッヒ変性ポリアミンとしては、単独でも、2種以上の混合物として使用しても良い。
【0041】
前記エポキシアダクト変性ポリアミンは、アダクト剤としてエポキシ樹脂を用い高分子量化したしたものであり、硬化反応の途中形態として考えられ、エポキシ樹脂/硬化剤系で得られる硬化物の優れた耐食性、密着性等の性能を損なうことなく、マンニッヒ変性ポリアミンと同様に常温で反応が進行する。
【0042】
この時用いることが出来るポリアミン化合物としては、前述のものを何れも挙げることができ、エポキシ樹脂としても、本発明で併用することが出来る前述のエポキシ樹脂を何れも挙げることができる。更に、前記で得られた本発明で用いるエポキシ樹脂(X)を用いても良い。これらの中でも優れた柔軟性を所望するならば、ポリアルキレンポリアミン及びその変性物、若しくは本発明で用いるエポキシ樹脂(X)を用いることが好ましい。また、優れた耐食性を所望するならば、芳香環を有するアミン類を用いることが好ましい。
【0043】
前記アダクト変性ポリアミンの製造方法としては、特に限定されるものではなく、原料として用いるポリアミン化合物(y1)中のアミノ基の一部が残存するような仕込比でエポキシ樹脂と混合し、80〜180℃、好ましくは90〜150に昇温して反応させる方法が挙げられる。得られたアダクト変性ポリアミンとしては、単独でも、2種以上の混合物として使用しても良い。
【0044】
また、更に硬化性を向上させるためには、マンニッヒ変性とアダクト変性とを組み合わせても良い。即ち、ポリアミン化合物(y1)にエポキシ樹脂を反応させて得られるポリアミンアダクトと、ホルムアルデヒド類(y2)とフェノール化合物(y3)とをマンニッヒ反応させて得られるポリアミンアダクトのマンニッヒ変性化合物であっても良い。
【0045】
前記変性脂肪族ポリアミン類(Y)の使用量としては、硬化が円滑に進行し、良好な硬化物性が得られることから、用いるエポキシ樹脂のエポキシ基1当量に対して、変性脂肪族ポリアミン類(Y)中の活性水素基が0.7〜1.5当量になる量が好ましい。
【0046】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、硬化促進剤を使用しなくても良好な硬化性を有するため、硬化促進剤を使用しなくても良いが、更に反応速度を上げて作業性を付与する等のためには、硬化促進剤を使用しても良い。前記硬化促進剤としては種々のものが使用できるが、例えば、リン系化合物、第3級アミン、イミダゾール、有機酸金属塩、ルイス酸、アミン錯塩等が挙げられ、これらは単独のみならず2種以上の併用も可能である。
【0047】
本発明のエポキシ樹脂組成物には、無機質充填材を配合することができる。前記無機質充填材としては、例えば、溶融シリカ、結晶シリカ、アルミナ、窒化珪素、水酸化アルミ等が挙げられる。
【0048】
本発明のエポキシ樹脂組成物には、必要に応じて、シランカップリング剤、離型剤、顔料、乳化剤等の種々の配合剤を添加することができる。
【0049】
本発明のエポキシ樹脂組成物には、必要に応じて難燃付与剤も添加できる。前記難燃付与剤としては種々のものが使用できるが、例えば、デカブロモジフェニルエーテル、テトラブロモビスフェノールAなどのハロゲン化合物、赤リンや各種燐酸エステル化合物などの燐原子含有化合物、メラミン或いはその誘導体などの窒素原子含有化合物、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、硼酸亜鉛、硼酸カルシウムなどの無機系難燃化合物が例示できる。
【0050】
本発明のエポキシ樹脂組成物には、必要に応じて有機溶媒を用いることができる。有機溶媒は粘度を下げて、流動性や成形性の向上を図るために用いられ、特にその種類は限定されるものではない。例示するならば、メタノール、トルエン、キシレン、ジエチルエーテル、アセトン、メチルエチルケトン、ジメチルホルムアミドなどが挙げられる。その使用量としては、エポキシ樹脂組成物の固形分値が20〜95重量%の範囲になることが好ましい。
【0051】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂(X)、変性脂肪族ポリアミン類(Y)、更に必要により併用するその他のエポキシ樹脂、添加剤等を、得られる組成物の粘度に応じた攪拌方法を用いて均一に混合することによって得ることが出来る。本発明のエポキシ樹脂組成物の形状についてはなんら制限されるものではなく、用いるエポキシ樹脂(X)が液状であっても、併用するエポキシ樹脂、変性脂肪族ポリアミン類(Y)、充填剤種及びその使用量によっては、得られるエポキシ樹脂組成物が常温で液状とならない場合もありうる。使用用途、所望の性能等によって、該組成物の形状を適宜選択すればよい。
【0052】
本発明のエポキシ樹脂組成物の使用用途としては、特に制限されるものではなく、例えば、塗料、接着剤、ライニング材等が挙げられ、これらの中でも、柔軟性と耐食性に優れる点からライニング材として好適に用いることができ、特に耐アルカリ性に優れる点からコンクリート構造材用のプライマー又はシーラーとして好適に用いることが出来る。
【0053】
本発明のエポキシ樹脂組成物を前記用途に応じた樹脂組成物として使用する場合には、例えば、エポキシ樹脂(X)、必要に応じて併用されるその他のエポキシ樹脂に顔料、着色剤、添加剤等を配合し、必要に応じて有機溶剤を加え、ペイントシェーカー、混合ミキサー、ボールミル等の装置を用いて十分に混合し、均一に分散させ、これに変性脂肪族ポリアミン類(Y)を更に配合して均一にし、所望の粘度に有機溶剤等で調製する方法を挙げることができる。
【0054】
前記手法によって得られた樹脂組成物は、各種の方法によって様々な基材に塗布することができ、特にその手法は制限されるものではなく、例えば、グラビアコーター、ナイフコーター、ロールコーター、コンマコーター、スピンコーター、バーコーター、刷毛塗り、ディッピング塗布、スプレー塗布、静電塗装等のコーティング方法が挙げられる。
【0055】
また、塗布後の硬化方法についても特に制限されるものではなく、常温硬化、加熱硬化の何れでも硬化物を得ることができ、成型物、積層物、注型物、構造物、接着剤、塗膜、フィルムなどの形態をもつものである。
【実施例】
【0056】
次に本発明を実施例、比較例により具体的に説明する。なお、以下に記載の部及び%は、特に断りがない限り重量基準である。
【0057】
合成例1 下記構造式で表されるエポキシ樹脂(X−1)の合成
【0058】
【化3】

【0059】
温度計、撹拌機を取り付けたフラスコにビスフェノールA228g(1.00モル)とトリエチレングリコールジビニルエーテル(ISP社製:商品名Rapi−Cure DVE−3)172g(0.85モル)を仕込み、120℃まで1時間要して昇温した後に、さらに120℃で6時間反応させて、透明半固形の原料樹脂400gを得た。これの水酸基当量は364g/eq.であった。
【0060】
次いで、上記で得られた原料樹脂400g、エピクロルヒドリン925g(10モル)、n−ブタノール185gを仕込み溶解させた。その後、窒素ガスパージを施しながら、65℃に昇温した後に、共沸する圧力までに減圧して、49%水酸化ナトリウム水溶液122g(1.5モル)を5時間かけて滴下した。次いでこの条件下で0.5時間撹拌を続けた。この間、共沸で留出してきた留出分をディーンスタークトラップで分離して、水層を除去し、有機層を反応系内に戻しながら反応した。その後、未反応のエピクロルヒドリンを減圧蒸留して留去させた。それで得られた粗エポキシ樹脂にメチルイソブチルケトン1000gとn−ブタノール100gを加え溶解した。更にこの溶液に10%水酸化ナトリウム水溶液20gを添加して80℃で2時間反応させた後に洗浄液のPHが中性となるまで水300gで水洗を3回繰り返した。次いで共沸によって系内を脱水し、精密濾過を経た後に、溶媒を減圧下で留去して、目的のエポキシ樹脂(X−1)を得た。得られたエポキシ樹脂(X−1)のエポキシ当量は462g/eq.、粘度は12,000mPa・s(25℃,キャノンフェンスケ法)、エポキシ当量から算出される式中のnの平均値は1.35であることが確認された。
【0061】
合成例2 エポキシ樹脂(X−2)の合成
トリエチレングリコールジビニルエーテル(DVE−3)の量を101gに変更した以外は、合成例1と同様にして原料樹脂を得た。この原料樹脂の水酸基当量は262g/eq.であった。
【0062】
次いで、この原料樹脂329gに変更する以外は、合成例1と同様にして、目的のエポキシ樹脂(X−2)395gを得た。得られたエポキシ樹脂(X−2)のエポキシ当量は350g/eq.、粘度は90,000mPa・s(25℃,E型粘度計)、エポキシ当量から算出される式中のnの平均値は0.84であることが確認された。
【0063】
合成例3 ダイマー酸変性のエポキシ樹脂(X’−1)の合成
温度計、冷却管、撹拌機を取り付けたフラスコに、ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂(大日本インキ化学工業株式会社製:商品名EPICLON 850S,エポキシ当量185g/eq.)457gとダイマー酸(築野食品工業製:商品名Tsunodyme216)243gを仕込み、窒素ガスパージを施しながら、80℃まで昇温し、トリフェニルホスフィン(触媒)0.14gを添加して、140℃で2時間反応させて、半固形のエポキシ樹脂700gを得た。このエポキシ樹脂はダイマー酸のカルボン酸とエポキシ基を反応させることにより、エステル結合によって、分子鎖延長された構造を有するエポキシ樹脂(X’−1)であり、エポキシ当量は451g/eq.、粘度は170mPa・s(150℃,ICI粘度計)であった。
【0064】
実施例1〜4及び比較例1〜8
エポキシ樹脂として、合成例1、2で得られた2種類のエポキシ樹脂(X−1)、(X−2)、及び比較用に合成例3で得られたダイマー酸変性エポキシ樹脂(X’−1)、ウレタン変性エポキシ樹脂としてEPICLON TSR−250−80BX(X’−2)(大日本インキ化学工業株式会社製、エポキシ当量850g/eq)を用いた。更に反応性希釈剤としてEPICLON 726(大日本インキ化学工業株式会社、エポキシ当量154g/eq)を用いた。また、硬化剤として、マンニッヒ変性ポリアミン ラッカマイドWH−614(大日本インキ化学工業株式会社製:トリエチレンテトラミンを用いたマンニッヒ型硬化剤、活性水素当量51g/eq.)、マンニッヒ変性ポリアミン ラッカマイドWH−630(大日本インキ化学工業株式会社製:m−キシレンジアミンを用いたマンニッヒ型硬化剤、活性水素当量79g/eq.)、アダクト変性ポリアミン ラッカマイドWH−108−S(活性水素当量57g/eq.)を用いて評価した。尚、エポキシ樹脂と硬化剤との配合は、エポキシ当量/活性水素当量=1/1で行い、更に不揮発分が50%になるようにキシレンで希釈した後、室温で十分に攪拌してエポキシ樹脂組成物を調製した。組成物の配合割合は表1にまとめて記した。
【0065】
塗膜の評価方法
塗膜の強度及び柔軟性を評価するための試験片は次のようにして作成した。まず、上記で得られたエポキシ樹脂組成物をポリプロピレン板に乾燥後の膜厚が250μmになるように塗布した。これを25℃の恒温室中で1週間放置乾燥した後、ポリプロピレン板から剥がした。これから100mm×10mmの試験片を切り出し、23℃の雰囲気下にて5mm/minの引張速度にて引張試験を行った。結果を表1に示す。
【0066】
耐食性の評価結果
コンクリート面における耐食性評価は次のようにして行った。まず、上記で得られたエポキシ樹脂組成物をコンクリート試験板(株式会社テストピース製、JISモルタル20×70×150mm)に刷毛を用いて150g/cmになるように塗布した。これを25℃の恒温室中に1週間放置乾燥した後、蒸留水及び10%水酸化ナトリウム水溶液中に浸漬し、表面の経時変化を目視によってASTM D714−87に準拠して評価した。結果を表1に示す。
【0067】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
多価フェノール類(a1)と多価ビニルエーテル類(a2)とを反応させて得られる変性多価フェノール類(A)をグリシジルエーテル化してなるエポキシ樹脂(X)と変性脂肪族ポリアミン類(Y)とを含有することを特徴とするエポキシ樹脂組成物。
【請求項2】
変性脂肪族ポリアミン類(Y)がマンニッヒ変性ポリアミン又はエポキシアダクト変性ポリアミンである請求項1記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項3】
変性脂肪族ポリアミン類(Y)がマンニッヒ変性ポリアミンである請求項1記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項4】
多価フェノール類(a1)が2価フェノール類であり、且つ多価ビニルエーテル類(a2)がジビニルエーテル類である請求項1記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項5】
多価ビニルエーテル類(a2)がポリオキシアルキレン骨格及び/又はシクロアルカン骨格を含有するものである請求項1記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項6】
ライニング材である請求項1〜5の何れか1項記載のエポキシ樹脂組成物
【請求項7】
コンクリート構造材用のプライマー又はシーラーである請求項1〜5の何れか1項記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1〜7の何れか1項記載のエポキシ樹脂組成物を硬化して得ることを特徴とする硬化物。

【公開番号】特開2006−206675(P2006−206675A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−18131(P2005−18131)
【出願日】平成17年1月26日(2005.1.26)
【出願人】(000002886)大日本インキ化学工業株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】