説明

エポキシ系組成物の反応発熱を低下させるための吸熱相転移を受ける充填剤の使用

硬化の間により低いピーク発熱を有する硬化性エポキシ系樹脂並びにこの硬化性エポキシ系組成物から形成された熱硬化樹脂及びエポキシ系パーツを開示する。硬化の間により低いピーク発熱を有するエポキシ系組成物は、少なくとも1種のエポキシ樹脂、少なくとも1種の硬化剤及び少なくとも1種の吸熱転移添加剤を含有してよい。この熱硬化樹脂は、硬化の間により低いピーク発熱を有する硬化性エポキシ系樹脂の反応生成物を含有してよく、大きいエポキシ系パーツ、例えば200グラム又はそれ以上の熱硬化樹脂を含有するものを形成するとき有用で有り得る。少なくとも1種のエポキシ樹脂、少なくとも1種の硬化剤及び少なくとも1種の吸熱転移添加剤を混合して、硬化性組成物を形成することを含む、硬化の間により低いピーク発熱を有する硬化性エポキシ系樹脂の形成プロセスも開示する。得られる硬化性組成物は、次いで、少なくとも60℃の温度で熱硬化されて、熱硬化樹脂を形成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書中に開示された態様は、一般的に、低い反応発熱(reaction exotherm)を有するエポキシ系組成物に関する。更に詳しくは、本明細書中に開示された態様は、エポキシ樹脂、硬化剤及び吸熱転移添加剤(endothermic transition additive)を含有するエポキシ系組成物であって、エポキシ系組成物が、吸熱相転移添加剤の存在のために、より低い反応発熱を有する組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシ樹脂と硬化剤(hardner)(硬化剤(curing agent)とも呼ばれる、例えばアミン及び無水物)との間の反応は、発熱であり、大量の熱を遊離する。エポキシ系組成物によって大きいパーツを製造する場合、反応の発熱は著しい安全問題である。
【0003】
小さいパーツ(例えば約200グラムよりも軽い)に於ける発熱は、表面対体積比が大きいために管理可能であり、この熱は容易に放出させることができる。大きい製品(例えば約200グラムよりも重い)に於ける発熱は、バルクマトリックス中での劣った熱伝達のために、この熱を効率的に放出させることができないために、特別に取り組まなくてはならない。より大きいパーツは、断熱媒体と同様に、特に反応媒体のコア内で、外側との熱伝達がないことに制限される傾向がある。その結果、パーツの熱伝達制限部分により、顕著な温度上昇を経験し得る。実際に、限界(threshold)温度が到達されると、エポキシ系材料は少なくとも部分的に分解し始め、変色、エポキシ系材料の特性の劣化、金型のコンポーネント及び/又はエポキシ系材料の中に埋め込まれる他のコンポーネントの劣化になり、極端な場合に、エポキシ系材料の炭化、焦化又は火災になり得る。
【0004】
エポキシ樹脂、硬化剤及び触媒又はこれらの組合せに対する種々の改質並びにこれらの組合せがエポキシ系組成物の硬化の間の発熱を制限するための試みに於いてなされてきた。例えば、Watanabe(特許文献1)は、エポキシ樹脂を、メチルテトラヒドロフタル酸無水物及び特定の硬化促進剤、即ち2−メチルイミダゾールと混合することによる、より低い発熱を有するエポキシ系組成物を記載している。
【0005】
Mizumoto(特許文献2)は、カチオン重合性硬化剤又はアニオン重合性硬化剤を使用することによる、より低い発熱を有するワンパックエポキシ系組成物を記載している。
【0006】
Yamamoto等(特許文献3)は、エポキシ樹脂及びアミン硬化剤と組み合わせて使用するとき、反応発熱を低下させることができる硬化促進剤を記載している。
【0007】
Hermansen等(特許文献4)は、電気注封(electrical potting)又はカプセル化、プラスチック工具及び繊維強化コンポジットのために有用であり、エポキシ樹脂成分並びに化学量論的量の、約20〜80重量%の少なくとも1種の立体的に障害を受けている脂環式ジアミン及び残りの少なくとも1種の立体的に障害を受けていない脂環式ジアミンを含む脂環式ジアミンの混合物である硬化剤を含んでなるエポキシ型含浸配合物を記載している。
【0008】
Kimura等(非特許文献1)は、無水物によって硬化したとき、低い反応性を有する新規な脂肪族エポキシ樹脂の成果を記載している。その結果として、この反応発熱は低い。
【0009】
Kenny(非特許文献2)は、硬化剤として使用される、無水フタル酸及びヘキサヒドロフタル酸無水物の混合物を含有する、エポキシ系組成物の成果を記載している。この発熱は、無水フタル酸と比較したとき、ヘキサヒドロフタル酸無水物とエポキシ樹脂とのより低い反応性のために、減少する。
【0010】
残念ながら、エポキシ樹脂、硬化剤又は使用される触媒に対するこのような特定の改質又は所望の発熱を達成するためにこれらの特定の混合物を必要とすることは、極めて限定的であり、広範囲の用途のためには適していないであろう。従って、広範囲のエポキシ系プロセス及び製品に使用するため又は適合性にするために適している減少した発熱を可能にするエポキシシステムについてのニーズが存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】JP第9249741号明細書
【特許文献2】JP第9052942号明細書
【特許文献3】JP第61130333号明細書
【特許文献4】米国特許第5350779号明細書
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Proc.Electr./Electron.Insul.Conf.、1975
【非特許文献2】Journal of Scientific Instruments、1965
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
一つの面に於いて、本明細書中に開示された態様は、硬化の間により低いピーク発熱を有する、硬化性エポキシ系樹脂に関する。この硬化の間により低いピーク発熱を有するエポキシ系組成物は少なくとも1種のエポキシ樹脂、少なくとも1種の硬化剤及び少なくとも1種の吸熱転移添加剤を含有してよい。
【0014】
別の面に於いて、本明細書中に開示された態様は、より低いピーク発熱を有する硬化性エポキシ系組成物を形成するためのプロセスであって、少なくとも1種のエポキシ樹脂、少なくとも1種の硬化剤及び少なくとも1種の吸熱転移添加剤を混合して、硬化性組成物を形成する工程を含むプロセスに関する。
【0015】
別の面に於いて、本明細書中に開示された態様は、熱硬化樹脂を形成するためのプロセスであって、少なくとも1種のエポキシ樹脂、少なくとも1種の硬化剤及び少なくとも1種の吸熱転移添加剤を混合して、硬化性組成物を形成する工程並びにこの硬化性組成物を少なくとも60℃の温度で熱的に硬化させて、熱硬化樹脂を形成する工程を含むプロセスに関する。
【0016】
別の面に於いて、本明細書中に開示された態様は、少なくとも1種のエポキシ樹脂、少なくとも1種の硬化剤及び少なくとも1種の吸熱転移添加剤の反応生成物を含有する熱硬化樹脂に関する。
【0017】
別の面に於いて、本明細書中に開示された態様は、上記の硬化性組成物及び熱硬化樹脂から形成されたエポキシ系パーツであって、200グラム、500グラム、1000グラム又はそれ以上の熱硬化樹脂を使用して形成されるエポキシ系パーツに関する。このようなパーツは、注型、注封、カプセル化、射出成形、積層及びインヒュージョン(infusion)の少なくとも1種によって製造することができ、電気注封品、注型品、成形品、カプセル化品、プラスチック工具及び繊維強化コンポジットのようなパーツを含んでよい。
【0018】
他の面及び利点は下記の説明及び添付される特許請求の範囲から明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、比較例及びポリエチレン粉末に対して比較した、本明細書中に開示された態様に従ったエポキシ系組成物の、温度の関数としての正規化熱流のグラフ比較である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
一つの面に於いて、本明細書中に開示された態様は、低い反応発熱を有するエポキシ系組成物に関する。更に詳しくは、本明細書中に開示された態様は、エポキシ樹脂、硬化剤及び吸熱転移添加剤を含有するエポキシ系組成物であって、吸熱相転移添加剤の存在に起因する、より低い反応発熱を有するエポキシ系組成物に関する。
【0021】
本明細書を通して使用する用語「発熱(exotherm)」は、製造の間にパーツによって経験された反応熱を意味することを意図する。従って、用語「最大発熱」は、製造の間にパーツによって経験された最大反応熱を意味することを意図する。特に、これは、硬化の間に(典型的にはコア内の)パーツによって到達される最高温度を測定することによって評価することができる。
【0022】
本発明を通して、用語「融解エンタルピー」、「融解潜熱」及び「融解熱」は、同じ意味を有することを意図し、互換的に使用される。これらは、それぞれ、材料の吸熱相転移エンタルピーによって定義される。
【0023】
より低いピーク発熱を有するエポキシ系組成物には、(a)少なくとも1種のエポキシ樹脂、(b)少なくとも1種の硬化剤及び(c)少なくとも1種の吸熱転移添加剤が含有されてよい。他の態様に於いて、本明細書中に開示されたエポキシ系組成物には、(d)エポキシと硬化剤との間の反応のための少なくとも1種の触媒及び(e)無機充填剤が含有されていてよい。
【0024】
別の面に於いて、本明細書中に開示された態様は、(i)(a)エポキシ樹脂、(b)硬化剤及び(c)少なくとも1種の吸熱転移添加剤を混合して、反応混合物を製造する工程、(ii)この反応混合物を金型の中に置く工程並びに(iii)この反応混合物中でエポキシ樹脂と硬化剤とを反応させて、エポキシ系パーツを製造する工程からなる方法を提供する。他の態様に於いて、この反応混合物は、(d)エポキシと硬化剤との間の反応のための触媒及び(e)無機充填剤を更に含有していてよい。
【0025】
エポキシ系組成物についてのより低い反応発熱は、エポキシ組成物の硬化の間に吸熱転移を受けることによってヒートシンクとして作用する材料の導入によって達成できる。吸熱転移は、熱の吸収から得られる転移を意味する。吸熱転移添加剤を適切に選択することによって、例えばピーク発熱よりも低い温度で、吸熱転移がエポキシ反応発熱の間に起こり得、従って、このプロセスの間に遊離される反応熱の顕著な部分を吸収することができる。この吸熱転移は、例えば吸熱転移添加剤の溶融からもたらされることができる。幾つかの態様に於いて、この吸熱転移添加剤は、周囲(ambient)温度及び圧力(常温常圧)で固体であってよい。他の態様に於いて、この吸熱転移添加剤は高度に結晶性のポリマー又は半結晶性のポリマーであってよい。
【0026】
吸熱転移の間の有用な吸熱転移添加剤のエンタルピーは、幾つかの態様に於いて、少なくとも50J/gであってよく、ピーク発熱の温度を著しく低下させることができる。他の態様に於いて吸熱転移エンタルピーは、約50〜約600J/g、他の態様に於いて約60〜約400J/g、更に他の態様に於いて約80〜約250J/gの範囲内であってよい。与えられた充填剤材料について、吸熱相転移エンタルピーは、当業者によって容易に決定することができる。特に、融解熱及び結晶化熱のための試験方法は、ASTM E793に従って、示差走査熱量測定(DSC)によって決定することができる。
【0027】
吸熱転移添加剤はフィルム、繊維、粒子、粉末、球、微小球、顆粒等の形態で使用することができる。この微粒子材料のサイズは特に制限されない。しかしながら、吸熱転移添加剤のサイズは、エポキシ系組成物の加工又はエポキシ系組成物の最終機械的特性(即ち硬化後)への有害な影響を有しないように選択されるべきである。吸熱転移添加剤は、幾つかの態様に於いて、約1mmよりも小さい、他の態様に於いて約5nm〜500ミクロンの、他の態様に於いて、約10nm〜300ミクロンの、他の態様に於いて約100nm〜100ミクロンの、更に他の態様に於いて500nm〜20ミクロンの平均粒子サイズを有することができる。
【0028】
吸熱転移添加剤の存在に起因してより低いピーク発熱を有する、このようなエポキシ系組成物は大きい又は嵩があって重いエポキシ系パーツ(part)の製造のために適しているであろう。例えば、パーツを製造するために使用することができるエポキシ系組成物の量は、種々の態様に於いて、約200gよりも大きい、約500gよりも大きい又は約1kgよりも大きくてよい。
【0029】
如何なる特別の理論又は作用のモードによっても結び付けられることを望むものではないが、殆どの場合に、吸熱転移は、エポキシ系ポリマーの製造の間に遊離される反応熱の少なくとも一部を吸収する、固体吸熱転移添加剤によって起こり、この固体材料の溶融及び/又は他の吸熱転移になるであろうと考えられる。最高温度に達した後でパーツが冷却するとき、この添加剤材料は、再び固化することができる。従って、エポキシと硬化剤との全反応熱は、実質的に変化しないままであると考えられるが、この添加剤材料は、反応熱の一部を迅速に吸収する、活性ヒートシンク(即ちこの材料は、それが、反応の最大発熱の前に相転移のある形態を受けるという意味で活性である)として作用すると考えられる。正味の結果は、製造の間にパーツによって経験される最大発熱(又は最高温度)の低下並びにパーツによって経験される温度勾配に於ける減少に起因する、おそらく一層均一な及び/又は改良された特性である。
【0030】
エポキシ系組成物の最大発熱は、以下のようにして決定することができる。エポキシ系組成物(典型的には、エポキシ樹脂、エポキシ樹脂用の硬化剤、吸熱転移添加剤、任意的に、エポキシ樹脂と硬化剤との間の反応のための触媒及び任意的に、他の添加剤又は充填剤を含有する)を、十分に混合し、次いで、容器の中に注ぐ。サーモカップルプローブを、容器の中に、その幾何的中心の近くに挿入し、エポキシと硬化剤との反応の間に、温度をモニターする。最大発熱温度は試験の間に記録される最高温度によって決定する。
【0031】
幾つかの態様に於いて、反応発熱の温度は、吸熱転移添加剤を含有しない同じエポキシ系配合物と比較したとき、少なくとも約5℃、他の態様に於いては少なくとも約10℃ほど、他の態様に於いては少なくとも約20℃、更に他の態様に於いては少なくとも約30℃低下させることができる。他の態様に於いて、反応発熱の温度は、℃で測定したとき、吸熱転移添加剤を含有しない同じエポキシ系配合物と比較したとき、少なくとも約5%、他の態様に於いて少なくとも約10%、他の態様に於いて少なくとも約20%、更に他の態様に於いて少なくとも約30%低下させることができる。
【0032】
この吸熱転移添加剤は、それが、エポキシ系組成物が吸熱転移添加剤の不存在下で製造の間に経験する最大発熱よりも低い温度で、吸熱相変化(即ち熱を吸収する結果としての相変化)を含む転移を受けるように選択することができる。幾つかの態様に於いて、この吸熱転移添加剤は、エポキシ系組成物が吸熱転移添加剤の不存在下で製造の間に経験する最大発熱よりも、少なくとも5℃低い、他の態様に於いてはこの最大発熱よりも少なくとも10℃低い、他の態様に於いてはこの最大発熱よりも少なくとも20℃低い、他の態様に於いてはこの最大発熱よりも少なくとも50℃低い温度で、吸熱相変化を含む転移を受ける。更に他の態様に於いて、吸熱転移添加剤又は吸熱転移添加剤の混合物は、エポキシ系組成物が吸熱転移添加剤の不存在下で製造の間に経験する最大発熱よりも低い種々の温度で、2回以上の吸熱転移を受けることができる。
【0033】
幾つかの態様に於いて、吸熱転移の開始温度は、約160℃よりも低くてよく、他の態様に於いて、吸熱転移は、約140℃よりも低い、他の態様に於いて120℃よりも低い、他の態様に於いて約100℃よりも低い、他の態様に於いて0℃よりも高い、他の態様に於いて25℃よりも高い、他の態様に於いて約40℃よりも高い、更に他の態様に於いて約50℃よりも高い温度で起こるであろう。
【0034】
前記充填剤材料は、結晶性であってよく又は非晶性であってよい。高度に結晶性の及び/又は部分的に結晶性(半結晶性)の材料、例えば高結晶性ポリマー及び半結晶性ポリマーを使用することもできる。
【0035】
本明細書中に開示されたエポキシ系組成物は、エポキシ系組成物の約50重量%よりも少ない、他の態様に於いては約1重量%〜約40重量%、他の態様に於いては約5重量%〜約35重量%、更に他の態様に於いては約10重量%〜約30重量%の量で、吸熱転移添加剤を含有してよい(ここで、上記の重量パーセントは、エポキシ樹脂、硬化剤及び吸熱転移添加剤の合計重量を基準にする)。使用される吸熱転移添加剤の量は、特定の吸熱転移添加剤の熱容量、吸熱転移添加剤を含有していないエポキシ系組成物の最大発熱及び特に吸熱転移添加剤のより高い含有量での反応混合物の粘度を含む、多数の要因によって影響を受けるであろう。
【0036】
前記のような、エポキシ樹脂、吸熱転移添加剤及び硬化剤に加えて、本明細書中に開示したエポキシ系組成物は触媒、難燃剤及び他の添加剤を含有することもできる。エポキシ系組成物に於いて有用なこれらの成分のそれぞれを、以下、更に詳細に説明する。
【0037】
エポキシ樹脂
本明細書中に開示された態様に於いて使用されるエポキシ樹脂は変化することができ、一般的で、市販されているエポキシ樹脂を含み、これらは単独で又は2種若しくはそれ以上の組合せで使用することができる。本明細書中に開示された組成物のためのエポキシ樹脂を選択する際に、最終製品の特性に対してのみならず、樹脂組成物の加工に影響し得る粘度及び他の特性に対しても考慮しなければならない。
【0038】
このエポキシ樹脂成分は、1個又はそれ以上の反応性オキシラン基(これらは本明細書に於いて「エポキシ基」又は「エポキシ官能基」として参照する)を含有する任意の材料を含む、エポキシ樹脂の任意の種類であってよい。本明細書中に開示された態様に於いて有用であるエポキシ樹脂には、単官能性エポキシ樹脂、多−又はポリ官能性エポキシ樹脂及びこれらの組合せが含まれてよい。モノマー性及びポリマー性エポキシ樹脂は、脂肪族、脂環式、芳香族又は複素環式エポキシ樹脂であってよい。ポリマー性エポキシ樹脂には、末端エポキシ基を有する線状ポリマー(例えばポリアルキレングリコールのジグリシジルエーテル)、ポリマー骨格オキシラン単位(例えばポリブタジエンポリエポキシド)及び側鎖エポキシ基を有するポリマー(例えばグリシジルメタクリレートポリマー又はコポリマー)が含まれる。このエポキシは純粋な化合物であってよいが、一般的に、分子当たり1個、2個又はそれ以上のエポキシ基を含有する混合物又は化合物群である。幾つかの態様に於いて、エポキシ樹脂は、反応性−OH基(これは、より高い温度で、無水物、有機酸、アミノ樹脂、フェノール樹脂又はエポキシ基(触媒作用されるとき)と反応して、追加の架橋になることができる)を含有していてもよい。
【0039】
一般的に、前記エポキシ樹脂は、グリシド化樹脂、脂環式樹脂、エポキシ化油等であってよい。グリシド化樹脂は、しばしば、エピクロロヒドリンとビスフェノール化合物、例えばビスフェノールAとの反応生成物;C4〜C28アルキルグリシジルエーテル;C2〜C28アルキル−及びアルケニル−グリシジルエステル:C1〜C28アルキル−、モノ−及びポリ−フェノールグリシジルエーテル;多価フェノール、例えばピロカテコール、レゾルシノール、ヒドロキノン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルメタン(又はビスフェノールF)、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルメタン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルジメチルメタン(又はビスフェノールA)、4,4’−ジヒドロキシジフェニルメチルメタン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルシクロヘキサン、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルプロパン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン及びトリス(4−ヒドロキシフィニル)メタンのポリグリシジルエーテル;上記のジフェノールの塩素化及び臭素化生成物のポリグリシジルエーテル;ノボラックのポリグリシジルエーテル;芳香族ヒドロカルボン酸の塩をジハロアルカン又はジハロゲンジアルキルエーテルによってエステル化することによって得られるジフェノールのエーテルをエステル化することによって得られるジフェノールのポリグリシジルエーテル;フェノールと少なくとも2個のハロゲン原子を含有する長鎖ハロゲンパラフィンとを縮合させることによって得られるポリフェノールのポリグリシジルエーテルである。本明細書中に開示された態様に於いて有用であるエポキシ樹脂の他の例には、ビス−4,4’−(1−メチルエチリデン)フェノールジグリシジルエーテル及び(クロロメチル)オキシランビスフェノールAジグリシジルエーテルが含まれる。
【0040】
幾つかの態様に於いて、前記エポキシ樹脂には、グリシジルエーテル型、グリシジルエステル型、脂環式型、複素環式型及びハロゲン化エポキシ樹脂等が含まれてよい。適切なエポキシ樹脂の非限定例には、クレゾールノボラックエポキシ樹脂、フェノールノボラックエポキシ樹脂、ビフェニルエポキシ樹脂、ヒドロキノンエポキシ樹脂、スチルベンエポキシ樹脂並びにこれらの混合物及び組合せが含まれてよい。
【0041】
適切なポリエポキシ化合物には、レゾルシノールジグリシジルエーテル(1,3−ビス−(2,3−エポキシプロポキシ)ベンゼン)、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル(2,2−ビス(p−(2,3−エポキシプロポキシ)フェニル)プロパン)、トリグリシジルp−アミノフェノール(4−(2,3−エポキシプロポキシ)−N,N−ビス(2,3−エポキシプロピル)アニリン)、ブロモビスフェノールAのジグリシジルエーテル(2,2−ビス(4−(2,3−エポキシプロポキシ)−3−ブロモ−フェニル)プロパン)、ビスフェノールFのジグリシジルエーテル(2,2−ビス(p−(2,3−エポキシプロポキシ)フェニル)メタン)、メタ−及び/又はパラ−アミノフェノールのトリグリシジルエーテル(3−(2,3−エポキシプロポキシ)−N,N−ビス(2,3−エポキシプロピル)アニリン)及びテトラグリシジルメチレンジアニリン(N,N,N’,N’−テトラ(2,3−エポキシプロピル) 4,4’−ジアミノジフェニルメタン)並びに2種又はそれ以上のポリエポキシ化合物の混合物が含まれてよい。見出される有用なエポキシ樹脂の更に包括的なリストは、Lee,H.及びNeville,K.、Handbook of Epoxy Resins、McGraw-Hill Book Company、1982年再発行中に記載されている。
【0042】
他の適切なエポキシ樹脂には、芳香族アミン及びエピクロロヒドリンをベースにするポリエポキシ化合物、例えばN,N’−ジグリシジル−アニリン;N,N’−ジメチル−N,N’−ジグリシジル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン;N,N,N’,N’−テトラグリシジル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン;N−ジグリシジル−4−アミノフェニルグリシジルエーテル及びN,N,N’,N’−テトラグリシジル−1,3−プロピレン ビス−4−アミノベンゾエートが含まれる。エポキシ樹脂には、芳香族ジアミン、芳香族モノ第一級アミン、アミノフェノール、多価フェノール、多価アルコール、ポリカルボン酸の1種又はそれ以上のグリシジル誘導体が含まれてもよい。
【0043】
有用なエポキシ樹脂には、例えば多価ポリオール、例えばエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、グリセロール及び2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパンのポリグリシジルエーテル;脂肪族及び芳香族ポリカルボン酸、例えばシュウ酸、コハク酸、グルタル酸、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸及び二量化リノール酸のポリグリシジルエーテル;ポリフェノール、例えばビスフェノールA、ビスフェノールF、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)イソブタン及び1,5−ジヒドロキシナフタレンのポリグリシジルエーテル;アクリレート又はウレタン部分を有する変性エポキシ樹脂;グリシジルアミンエポキシ樹脂並びにノボラック樹脂が含まれる。
【0044】
このエポキシ化合物は、脂環式又は脂環式エポキシドであってよい。脂環式エポキシドの例には、ジカルボン酸の脂環式エステルのジエポキシド、例えばシュウ酸ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)、アジピン酸ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)、アジピン酸ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)、ピメリン酸ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル);ビニルシクロヘキセンジエポキシド;リモネンジエポキシド;ジシクロペンタジエンジエポキシド等が含まれる。他の適切なジカルボン酸の脂環式エステルのジエポキシドは、例えば米国特許第2,750,395号明細書に記載されている。
【0045】
他の脂環式エポキシドには、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート群、例えば3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート;3,4−エポキシ−1−メチルシクロヘキシル−メチル−3,4−エポキシ−1−メチルシクロヘキサンカルボキシレート;6−メチル−3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメチル−6−メチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート;3,4−エポキシ−2−メチルシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシ−2−メチルシクロヘキサンカルボキシレート;3,4−エポキシ−3−メチルシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシ−3−メチルシクロヘキサンカルボキシレート;3,4−エポキシ−5−メチルシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシ−5−メチルシクロヘキサンカルボキシレート等が含まれる。他の適切な3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート群は、例えば米国特許第2,890,194号明細書に記載されている。
【0046】
特に有用である更なるエポキシ含有材料には、グリシジルエーテルモノマーをベースにするものが含まれる。例は、多価フェノールを過剰のクロロヒドリン、例えばエピクロロヒドリンと反応させることによって得られる多価フェノールのジ−又はポリグリシジルエーテルである。このような多価フェノールには、レゾルシノール、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン(ビスフェノールFとして知られている)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールAとして知られている)、2,2−ビス(4′−ヒドロキシ−3′,5′−ジブロモフェニル)プロパン、1,1,2,2−テトラキス(4′−ヒドロキシフェニル)エタン又は酸性条件下で得られるフェノールとホルムアルデヒドとの縮合物、例えばフェノールノボラック及びクレゾールノボラックが含まれる。この型のエポキシ樹脂の例は、米国特許第3,018,262号明細書に記載されている。他の例には、多価アルコール、例えば1,4−ブタンジオール又はポリアルキレングリコール、例えばポリプロピレングリコールのジ−又はポリグリシジルエーテル及び脂環式ポリオール、例えば2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパンのジ−又はポリグリシジルエーテルが含まれる。他の例は、単官能性樹脂、例えばクレジルグリシジルエーテル又はブチルグリシジルエーテルである。
【0047】
エポキシ化合物の他の種類には、多価カルボン酸、例えばフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロフタル酸又はヘキサヒドロフタル酸の、ポリグリシジルエステル及びポリ(β−メチルグリシジル)エステルが含まれる。エポキシ化合物の更なる種類は、アミン、アミド及び複素環式窒素塩基のN−グリシジル誘導体、例えばN,N−ジグリシジルアニリン、N,N−ジグリシジルトルイジン、N,N,N’,N’−テトラグリシジルビス(4−アミノフェニル)メタン、トリグリシジルイソシアヌレート、N,N’−ジグリシジルエチルウレア、N,N’−ジグリシジル−5,5−ジメチルヒダントイン及びN,N’−ジグリシジル−5−イソプロピルヒダントインである。
【0048】
更に他のエポキシ含有材料は、グリシドールのアクリル酸エステル、例えばアクリル酸グリシジル及びメタクリル酸グリシジルと1種又はそれ以上の共重合性ビニル化合物とのコポリマーである。このようなコポリマーの例は1:1スチレン−メタクリル酸グリシジル、1:1メタクリル酸メチル−アクリル酸グリシジル及び62.5:24:13.5メタクリル酸メチル−アクリル酸エチル−メタクリル酸グリシジルである。
【0049】
容易に入手可能であるエポキシ化合物には、オクタデシレンオキシド;メタクリル酸グリシジル;ビスフェノールAのジグリシジルエーテル;ザ・ダウ・ケミカル社(The Dow Chemical Company)、ミシガン州Midlandから入手可能なD.E.R.330、D.E.R.331、D.E.R.332及びD.E.R.383;ビニルシクロヘキセンジオキシド;3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート;3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキサンカルボキシレート;ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート;ビス(2,3−エポキシシクロペンチル)エーテル;プロピレングリコールによって変性された脂肪族エポキシ;ジペンテンジオキシド;エポキシ化ポリブタジエン;エポキシ官能基を含有するシリコーン樹脂;難燃性エポキシ樹脂(例えばザ・ダウ・ケミカル社、ミシガン州Midlandから入手可能な、商標D.E.R.530、D.E.R.539、D.E.R.542、D.E.R.560及びD.E.R.592で入手可能な臭素化ビスフェノール型エポキシ樹脂);フェノールホルムアルデヒドノボラックの1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル(例えばザ・ダウ・ケミカル社、ミシガン州Midlandから入手可能な、商標D.E.N.431及びD.E.N.438で入手可能なもの)及びレゾルシノールジグリシジルエーテルが含まれる。特に記載しないが、ザ・ダウ・ケミカル社から入手可能な商品名指定D.E.R.及びD.E.N.での他のエポキシ樹脂も使用することができる。幾つかの態様に於いて、エポキシ樹脂組成物には、ビスフェノールAのジグリシジルエーテルとビスフェノールAとの反応によって形成されるエポキシ樹脂が含まれてよい。
【0050】
他の適切なエポキシ樹脂は米国特許第5,112,932号明細書(参照して本明細書に含める)に開示されている。このようなエポキシ樹脂には、例えばポリエポキシド化合物とポリイソシアネート化合物との反応生成物を含む、エポキシ末端ポリオキサゾリドン含有化合物が含まれてよい。開示されたポリエポキシドには、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(一般的に、ビスフェノールAとして参照される)のジグリシジルエーテル及び2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン(一般的に、テトラブロモビスフェノールAとして参照される)のジグリシジルエーテルが含まれてよい。適切なポリイソシアネートには、4,4’−メチレンビス(フェニルイソシアネート)(MDI)及びその異性体、MDIのより高い官能性ホモログ(通常「ポリマー性MDI」として指定される)、トルエンジイソシアネート(TDI)、例えば2,4−トルエンジイソシアネート及び2,6−トルエンジイソシアネート、m−キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)及びイソホロンジイソシアネートが含まれる。
【0051】
他の適切なエポキシ樹脂は、例えば米国特許第7,163,973号明細書、米国特許第6,887,574号明細書、米国特許第6,632,893号明細書、米国特許第6,242,083号明細書、米国特許第7,037,958号明細書、米国特許第6,572,971号明細書、米国特許第6,153,719号明細書、米国特許第5,405,688号明細書、PCT公開WO第2006/052727号明細書並びに米国特許出願公開第20060293172号明細書及び米国特許出願公開第20050171237号明細書(これらのそれぞれを、参照して本明細書中に含める)中に開示されている。
【0052】
吸熱転移添加剤
前記のように、エポキシ系組成物のためのより低い反応発熱は、エポキシ組成物の硬化の間に吸熱転移を受けることによってヒートシンクとして作用する材料の導入によって達成できる。この吸熱転移は、例えば吸熱転移添加剤の溶融から得ることができる。幾つかの態様に於いて、吸熱転移添加剤は、周囲温度及び圧力で固体であってよい。他の態様に於いて、吸熱転移添加剤は高結晶性ポリマー又は半結晶性ポリマーであってよい。
【0053】
幾つかの態様に於いて、吸熱転移添加剤は性質が結晶性であってよい。これに関して、吸熱転移添加剤を参照して本明細書中で使用される用語「結晶性」は、広い意味を有するように意図し、部分的結晶性(即ち半結晶性(semi-cristalline))及び高結晶性固体をカバーすることが認められるべきである。如何なる特別の理論又は作用のモードによっても結び付けられることを望むものではないが、本明細書中に開示された態様の利点の少なくとも幾らかは、結晶性吸熱転移添加剤の熱吸収能力に関係していると考えられる。特に、結晶性吸熱転移添加剤は、前記のように、製造の間にエポキシ系組成物によって到達される最高温度よりも低い溶融温度を有していなくてはならない。従って、エポキシと硬化剤との反応の間に遊離される熱の一部は、結晶性吸熱転移添加剤によって吸収され、典型的には、エポキシ系組成物の発熱を上昇させる代わりに、吸熱転移添加剤が溶融する。結晶性吸熱転移添加剤が、エポキシ系組成物マトリックスの全体に実質的に均一に分布されているとき、その結果は、反応又は硬化の間にエポキシ系組成物によって経験される最大発熱の全体的低下(overall lowering)である。より低い発熱は、製造の安全性を著しく改良することができ及び/又は種々の物理的特性の劣化を回避することができる。エポキシ系マトリックスが製造後に冷却されるとき、充填剤材料は再結晶化又は再固化することができる。
【0054】
幾つかの態様に於いて、吸熱転移添加剤は、有機物、例えば熱可塑性材料を含む有機ポリマーである。有用な熱可塑性ポリマーの非限定例には、ポリエチレン、ポリプロピレン、塩素化ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル(EVA)、ポリエチルエタクリレート(PEEA)、アセタール、ナイロン11、ポリ塩化ビニリデン、ポリブテン、エピクロロヒドリン(ECO)プラスチックゴム変性アナログコポリマー及びこれらの混合物が含まれる。幾つかの態様に於いて、吸熱転移添加剤には、ポリエチレン、ポリプロピレン及びこれらの混合物が含まれる。更に他の態様に於いて、吸熱転移添加剤は結晶性ポリエチレンである。他の有用な有機材料の非限定例には、パラフィン、脂肪酸、アルコール、テトラデカン酸ミリスタミド、脂肪酸の塩(例えばステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ラウリン酸亜鉛等)が含まれる。
【0055】
代わりに、吸熱転移添加剤は無機物であってよい。有用な無機材料の非限定例には、チオ硫酸ナトリウム五水和物、酢酸ナトリウム三水和物、硫酸ナトリウム十水和物、水酸化バリウム水和物、硝酸ニッケル四水和物、硝酸亜鉛六水和物、これらのブレンド、これらのアロイ及びこれらの共融混合物が含まれてよい。
【0056】
変性充填剤材料を使用することもできる。例えばそれらを、化学処理、紫外線、電子ビーム及び同様の処理に露出することによって、粒子の表面を変性して、例えばそれらが中に分散されているマトリックス中の粒子の接着を改良することが知られている。
【0057】
エポキシ系組成物中で有用であるために、吸熱転移の開始は、発熱反応に起因するピーク発熱の温度よりも低い温度で生じなくてはならない。この材料を適切に選択することによって、吸熱転移が反応発熱の間に起こり、従って、プロセスの間に遊離される反応熱の顕著な部分を吸収する。
【0058】
硬化剤
エポキシ樹脂組成物の架橋を促進して、ポリマー組成物を形成させるために、硬化剤(hardness or curing agents)を提供することもできる。エポキシ樹脂でのように、硬化剤は、個々に使用することができ又は2種又はそれ以上の混合物として使用することができる。硬化剤成分(硬化剤又は架橋剤としても参照される)には、エポキシ樹脂のエポキシ基と反応性である活性基を有する、任意の化合物が含まれてもよい。硬化剤には、窒素含有化合物、例えばアミン及びそれらの誘導体;酸素含有化合物、例えばカルボン酸末端ポリエステル、無水物、フェノールノボラック、ビスフェノール−Aノボラック、DCPD−フェノール縮合生成物、臭素化フェノール性オリゴマー、アミノ−ホルムアルデヒド縮合生成物、フェノール、ビスフェノールA及びクレゾールノボラック、フェノール末端エポキシ樹脂;硫黄含有化合物、例えばポリスルフィド、ポリメルカプタン並びに接触硬化剤、例えば第三級アミン、ルイス酸、ルイス塩基並びに上記の硬化剤の2種又はそれ以上の組合せが含まれてよい。実際的に、例えばポリアミン、ジアミノジフェニルスルホン及びこれらの異性体、アミノベンゾエート、種々の酸無水物、フェノール−ノボラック樹脂並びにクレゾール−ノボラック樹脂を使用することができるが、本発明の開示はこれらの化合物の使用に限定されない。
【0059】
使用することができる架橋剤の他の態様は、米国特許第6,613,839号明細書に記載されており、例えば1500〜50,000の範囲内の分子量(Mw)及び15%よりも多い無水物含有量を有する、スチレン及び無水マレイン酸のコポリマーを含む。
【0060】
本明細書中に開示された組成物中で有用で有り得る他の成分には、硬化触媒が含まれる。硬化触媒の例には、イミダゾール誘導体、第三級アミン及び有機金属塩が含まれる。このような硬化触媒の他の例には、フリーラジカル開始剤、例えばアゾイソブチロニトリルを含むアゾ化合物並びに有機過酸化物、例えば過安息香酸第三級ブチル、第三級ブチルペルオクトエート及び過酸化ベンゾイル、メチルエチルケトンペルオキシド、アセト酢酸ペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、シクロヘキサノンヒドロペルオキシド、過酸化ジクミル及びこれらの混合物が含まれる。メチルエチルケトンペルオキシド及び過酸化ベンゾイルが、本発明に於いて好ましく使用される。
【0061】
幾つかの態様に於いて、硬化剤には、第一級及び第二級ポリアミン及びこれらの付加物、無水物並びにポリアミドが含まれてよい。例えば多官能性アミンには、脂肪族アミン化合物、例えばジエチレントリアミン(ザ・ダウ・ケミカル社、ミシガン州Midlandから入手可能なD.E.H.20)、トリエチレンテトラミン(ザ・ダウ・ケミカル社、ミシガン州Midlandから入手可能なD.E.H.24)、テトラエチレンペンタミン(ザ・ダウ・ケミカル社、ミシガン州Midlandから入手可能なD.E.H.26)並びにエポキシ樹脂、希釈剤又は他のアミン反応性化合物との上記のアミンの付加物が含まれてよい。芳香族アミン、例えばメタフェニレンジアミン及びジアミンジフェニルスルホン、脂肪族ポリアミン、例えばアミノエチルピペラジン及びポリエチレンポリアミン並びに芳香族ポリアミン、例えばメタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルスルホン及びジエチルトルエンジアミンも使用することができる。
【0062】
無水物硬化剤には、例えばとりわけ、メチルナド酸無水物(nadic methyl anhydride)、ヘキサヒドロフタル酸無水物、トリメリト酸無水物、ドデセニルコハク酸無水物、無水フタル酸、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物、テトラヒドロフタル酸無水物及びメチルテトラヒドロフタル酸無水物が含まれてよい。無水物硬化剤には、スチレンとマレイン酸無水物とのコポリマー及び米国特許第6,613,839号明細書(参照して本明細書中に含める)に記載されているような他の無水物も含まれてよい。
【0063】
幾つかの態様に於いて、フェノールノボラック硬化剤は、ビフェニル又はナフチル部分を含有してよい。フェノール性ヒドロキシ基は、この化合物のビフェニル又はナフチル部分に結合していてよい。この型の硬化剤は、例えば欧州特許出願公開第915118A1号明細書に記載されている方法に従って製造することができる。例えばビフェニル部分を含有する硬化剤は、フェノールをビスメトキシ−メチレンビフェニルと反応させることによって製造することができる。
【0064】
他の態様に於いて、硬化剤には、三フッ化ホウ素モノエチルアミン及びジアミノシクロヘキサンが含まれてよい。硬化剤には、イミダゾール、それらの塩及び付加物が含まれてもよい。これらのエポキシ硬化剤は、典型的には、室温で固体である。適切なイミダゾール硬化剤の一例は2−フェニルイミダゾールを含む。他の適切な硬化剤は欧州特許出願公開第906927A1号明細書に開示されている。他の硬化剤には、芳香族アミン、脂肪族アミン、無水物及びフェノールが含まれる。
【0065】
幾つかの態様に於いて、硬化剤は、アミノ基当たり500以下の分子量を有するアミノ化合物、例えば芳香族アミン又はグアニジン誘導体であってよい。アミノ硬化剤の例には、4−クロロフェニル−N,N−ジメチルウレア及び3,4−ジクロロフェニル−N,N−ジメチルウレアが含まれる。
【0066】
本明細書中に開示された態様に於いて有用である硬化剤の他の例には、3,3’−及び4,4’−ジアミノジフェニルスルホン;メチレンジアニリン;シェル・ケミカル社(Shell Chemical Co.)からEPON1062として入手可能なビス(4−アミノ−3,5−ジメチルフェニル)−1,4−ジイソプロピルベンゼン及びシェル・ケミカル社からEPON1061として入手可能なビス(4−アミノフェニル)−1,4−ジイソプロピルベンゼンが含まれる。
【0067】
エポキシ化合物のためのチオール硬化剤を使用することもでき、これらは、例えば米国特許第5,374,668号明細書に記載されている。本明細書中に使用される「チオール」には、ポリチオール又はポリメルカプタン硬化剤も含まれる。例示的チオールには、脂肪族チオール、例えばメタンジチオール、プロパンジチオール、シクロヘキサンジチオール、2−メルカプトエチル−2,3−ジメルカプトスクシネート、2,3−ジメルカプト−1−プロパノール(2−メルカプトアセテート)、ジエチレングリコール ビス(2−メルカプトアセテート)、1,2−ジメルカプトプロピルメチルエーテル、ビス(2−メルカプトエチル)エーテル、トリメチロールプロパン トリス(チオグリコレート)、ペンタエリスリトール テトラ(メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトール テトラ(チオグリコレート)、エチレングリコール ジチオグリコレート、トリメチロールプロパン トリス(β−チオプロピオネート)、プロポキシル化アルカンのトリグリシジルエーテルのトリス−メルカプタン誘導体及びジペンタエリスリトール ポリ(β−チオプロピオネート);脂肪族チオールのハロゲン置換誘導体;芳香族チオール、例えばジ−、トリス−又はテトラ−メルカプトベンゼン、ビス−、トリス−又はテトラ−(メルカプトアルキル)ベンゼン、ジメルカプトビフェニル、トルエンジチオール及びナフタレンジチオール;芳香族チオールのハロゲン置換誘導体;複素環式環含有チオール、例えばアミノ−4,6−ジチオール−sym−トリアジン、アルコキシ−4,6−ジチオール−sym−トリアジン、アリールオキシ−4,6−ジチオール−sym−トリアジン及び1,3,5−トリス(3−メルカプトプロピル)イソシアヌレート;複素環式環含有チオールのハロゲン置換誘導体;少なくとも2個のメルカプト基を有し、メルカプト基に加えて硫黄原子を含有するチオール化合物、例えばビス−、トリス−又はテトラ−(メルカプトアルキルチオ)ベンゼン、ビス−、トリス−又はテトラ−(メルカプトアルキルチオ)アルカン、ビス(メルカプトアルキル)ジスルフィド、ヒドロキシアルキルスルフィドビス(メルカプトプロピオネート)、ヒドロキシアルキルスルフィドビス(メルカプトアセテート)、メルカプトエチルエーテルビス(メルカプトプロピオネート)、1,4−ジチアン−2,5−ジオールビス(メルカプトアセテート)、チオジグリコール酸ビス(メルカプトアルキルエステル)、チオジプロピオン酸ビス(2−メルカプトアルキルエステル)、4,4−チオ酪酸ビス(2−メルカプトアルキルエステル)、3,4−チオフェンジチオール、ビスマスチオール及び2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾールが含まれる。
【0068】
硬化剤は、求核性物質、例えばアミン、第三級ホスフィン、求核性アニオンとの第四級アンモニウム塩、求核性アニオンとの第四級ホスホニウム塩、イミダゾール、求核性アニオンとの第三級アルセニウム塩及び求核性アニオンとの第三級スルホニウム塩であってもよい。
【0069】
エポキシ樹脂、アクリロニトリル又は(メタ)アクリレートによる付加によって変性された脂肪族ポリアミンも、硬化剤として利用することができる。更に、種々のマンニッヒ塩基を使用することができる。アミン基が芳香族環に直接結合している芳香族アミンも使用することができる。
【0070】
本明細書に開示された態様に於いて硬化剤として有用な、求核性アニオンとの第四級アンモニウム塩には、テトラエチルアンモニウムクロリド、テトラプロピルアンモニウムアセテート、ヘキシルトリメチルアンモニウムブロミド、ベンジルトリメチルアンモニウムシアニド、セチルトリエチルアンモニウムアジド、N,N−ジメチルピロリジニウムシアネート、N−メチルピリジニウムフェノレート、N−メチル−o−クロロピリジニウムクロリド、メチルビオロゲンジクロリド等が含まれてよい。
【0071】
幾つかの態様に於いて、少なくとも1種のカチオン性光開始剤を使用することができる。カチオン性光開始剤には、特定の波長又は波長の範囲の電磁線に露出されたとき分解して、エポキシド基とヒドロキシル基との間のような重合反応に触媒作用することができるカチオン性種を形成する化合物が含まれる。このカチオン性種は、エポキシド基と、硬化性組成物中に含有されている他のエポキシド反応性種(例えば他のヒドロキシル基、アミン基、フェノール基、メルカプタン基、無水物基、カルボン酸基等)との反応に触媒作用することもできる。カチオン性光開始剤の例には、ジアリールヨードニウム塩及びトリアリールスルホニウム塩が含まれる。例えばジアリールヨードニウム塩型の光開始剤は、チバ・ガイギー社(Ciba-Geigy)から取引指定IRGACURE250で入手可能である。トリアリールスルホニウム型光開始剤は、ザ・ダウ・ケミカル社からCYRACURE6992として入手可能である。カチオン性光開始剤は、触媒的有効量で使用することができ、硬化性組成物の約10重量%以下を構成することができる。
【0072】
触媒
幾つかの態様に於いて、エポキシ樹脂成分と、ジシアンジアミド及び前記のフェノール性硬化剤を含む硬化剤との間の反応を促進するために、触媒を使用することができる。触媒には、ルイス酸、例えば三フッ化ホウ素が、便利にはアミン、例えばピペリジン又はメチルエチルアミンとの誘導体として含まれてよい。触媒は、塩基性、例えばイミダゾール又はアミンであってもよい。他の触媒には、塩化第二スズ、塩化亜鉛等を含む他の金属ハロゲン化物ルイス酸、金属カルボン酸塩、例えばスタナス オクトエート(stannous octoate)等;ベンジルジメチルアミン;ジメチルアミノメチルフェノール及びアミン、例えばトリエチルアミン、イミダゾール誘導体等が含まれてよい。
【0073】
第三級アミン触媒は、例えば米国特許第5,385,990号明細書(参照して本明細書中に含める)中に記載されている。例示的第三級アミンには、メチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、ベンジルジメチルアミン、m−キシリレンジ(ジメチルアミン)、N,N’−ジメチルピペラジン、N−メチルピロリジン、N−メチルヒドロキシピペリジン、N,N,N’,N’−テトラメチルジアミノエタン、N,N,N’,N’,N’−ペンタメチルジエチレントリアミン、トリブチルアミン、トリメチルアミン、ジエチルデシルアミン、トリエチレンジアミン、N−メチルモルホリン、N,N,N’,N’−テトラメチルプロパンジアミン、N−メチルピペリジン、N,N’−ジメチル−1,3−(4−ピペリジノ)プロパン、ピリジン等が含まれる。他の第三級アミンには、1,8−ジアゾビシクロ[5.4.0]ウンデク−7−エン、1,8−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、4−ジメチルアミノピリジン、4−(N−ピロリジノ)ピリジン、トリエチルアミン及び2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノールが含まれる。
【0074】
難燃剤添加剤
本明細書に記載されたエポキシ系組成物は、臭素化難燃剤及び非臭素化難燃剤を含有する配合物中に使用することができる。臭素化添加剤の特定の例には、テトラブロモビスフェノールA(TBBA)及びそれから誘導された材料、TBBA−ジグリシジルエーテル、ビスフェノールA又はTBBAとTBBA−ジグリシジルエーテルとの反応生成物及びビスフェノールAジグリシジルエーテルとTBBAとの反応生成物が含まれる。
【0075】
非臭素化難燃剤には、DOP(9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン 10−オキシド)から誘導された種々の材料、例えばDOP−ヒドロキノン(10−(2’、5’−ジヒドロキシフェニル)−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン 10−オキシド)、DOPとノボラックのグリシジルエーテル誘導体との縮合生成物並びに無機難燃剤、例えばアルミニウム三水和物(aluminum trihydrate)及びアルミニウムホスフィナイト(aluminum phosphinite)が含まれる。
【0076】
任意的な添加剤
【0077】
本明細書中に開示された硬化性組成物及び熱硬化組成物には、任意的に、一般的な添加剤及び充填剤が含有されていてよい。添加剤及び充填剤には、例えば他の難燃剤、ホウ酸、シリカ、ガラス、タルク、金属粉末、二酸化チタン、湿潤剤、顔料、着色剤、離型剤、カップリング剤、イオンスカベンジャー、UV安定剤、柔軟剤、強化剤及び粘着付与剤が含まれてよい。添加剤及び充填剤には、とりわけ、ヒュームドシリカ、骨材、例えばガラスビーズ、ポリテトラフルオロエチレン、ポリオール樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、グラファイト、二硫化モリブデン、研磨顔料、粘度低下剤、窒化ホウ素、雲母、核生成剤及び安定剤が含まれてもよい。充填剤及び変性剤は、エポキシ樹脂組成物に添加する前に水分を追い出すために予熱することができる。更に、これらの任意的な添加剤は、硬化の前及び/又は後に、組成物の特性に影響を有しかねず、組成物及び所望の反応生成物を配合するとき考慮に入れなくてはならない。本明細書に開示された硬化性組成物には、任意的に、例えば安定剤、他の有機又は無機添加剤、顔料、湿潤剤、流動改質剤、UV光遮断剤及び蛍光添加剤も含む、一般的に従来の種類の他の添加剤が含有されていてもよい。これらの添加剤は、幾つかの態様に於いて0〜5重量%の量、他の態様に於いて3重量%よりも少ない量で存在してよい。適切な添加剤の例は、米国特許第5,066,735号明細書及びPCT/US2005/017954号明細書にも記載されている。
【0078】
幾つかの態様に於いて、ケトン、例えばメチルエチルケトン(MEK)、グリコールエーテル、例えばプロピレングリコールメチルエーテル及びアルコール、例えばメタノールを含む、有機溶媒を使用することができる。幾つかの態様に於いて、本明細書に開示された硬化性組成物及び熱硬化組成物中で可塑剤として機能するために、少量の、高分子量で比較的非揮発性のモノアルコール、ポリオール及び他のエポキシ−又はイソシアナト−反応性希釈剤も所望により使用することができる。
【0079】
硬化性組成物
前記のような、エポキシ樹脂、硬化剤及び吸熱転移添加剤を組み合わせることによって、硬化性組成物を形成することができる。本明細書に記載された硬化性組成物は、エポキシ樹脂、硬化剤及び吸熱転移添加剤を、追加の硬化剤、添加剤、触媒及びその他の任意の成分と一緒に組み合わせることによって形成することもできる。例えば幾つかの態様に於いて、硬化性組成物は、エポキシ樹脂組成物、硬化剤及び吸熱転移添加剤を混合して、混合物を形成することによって形成することができる。エポキシ樹脂及び硬化剤の特性は、部分的に、製造されるべき硬化性組成物又は硬化組成物に於いて所望される特性、組成物の所望される硬化応答及び組成物の所望される貯蔵安定性(所望される貯蔵寿命)に依存するであろう。他の態様に於いて、硬化性組成物を形成するためのプロセスには、エポキシ樹脂又はプレポリマー組成物を形成する工程、硬化剤を混合する工程、吸熱転移添加剤を混合する工程、追加の硬化剤又は触媒を混合する工程、難燃剤を混合する工程及び添加剤を混合する工程の1個又はそれ以上が含まれるであろう。
【0080】
幾つかの態様に於いて、エポキシ樹脂は、硬化性組成物中に、硬化性組成物の0.1〜99重量%の範囲内の量で存在してよい。他の態様に於いて、エポキシ組成物は、硬化性組成物の0.1〜50重量%、他の態様に於いて15〜45重量%、更に他の態様に於いて25〜40重量%の範囲であってよい。他の態様に於いて、エポキシ樹脂は、硬化性組成物の30〜99重量%、他の態様に於いて50〜99重量%、他の態様に於いて60〜95重量%、更に他の態様に於いて70〜90重量%の範囲内で存在してよい。
【0081】
幾つかの態様に於いて、硬化性組成物は、約30〜約98体積%のエポキシ樹脂を含有してよい。他の態様に於いて、硬化性組成物は、65〜95体積%のエポキシ樹脂、他の態様に於いて70〜90体積%のエポキシ樹脂、他の態様に於いて30〜65体積%のエポキシ樹脂、更に他の態様に於いて40〜60体積%のエポキシ樹脂を含有してよい。
【0082】
幾つかの態様に於いて、硬化剤は、硬化性組成物中に、0.01重量%〜60重量%の範囲内の量で存在してよい。他の態様に於いて、硬化剤は、0.1重量%〜55重量%、他の態様に於いて0.5重量%〜50重量%、更に他の態様に於いて1〜45重量%の範囲内の量で存在してよい。
【0083】
幾つかの態様に於いて、触媒は、硬化性組成物中に、0.01重量%〜10重量%の範囲内の量で存在してよい。他の態様に於いて、触媒は、0.1重量%〜8重量%、他の態様に於いて0.5重量%〜6重量%、更に他の態様に於いて1〜4重量%の範囲内の量で存在してよい。
【0084】
態様の一クラスに於いて、本明細書に記載された硬化性組成物は、30〜99重量%のエポキシ樹脂、1〜40重量%の硬化剤及び45重量%以下の吸熱転移添加剤を含有してよく、ここで、示された重量パーセントは、硬化剤、エポキシ樹脂及び吸熱転移添加剤を一緒にした重量基準である。
【0085】
硬化性組成物は、幾つかの態様に於いて、約0.1〜約50体積%の任意的な添加剤を含有していてもよい。他の態様に於いて、硬化性組成物は、約0.1〜約5体積%の任意的な添加剤、更に他の態様に於いて約0.5〜約2.5体積%の任意的な添加剤を含有してよい。
【0086】
基体(Substrate)
前記の硬化性組成物は、基体の上に又は金型の中に配置し、硬化させることができる。基体は、特別の制限を受けない。それ故、基体には、金属、例えばステンレススチール、鉄、鋼、銅、亜鉛、スズ、アルミニウム、アルマイト等、このような金属の合金及びこのような金属によってめっきされたシート及びこのような金属の積層シートが含まれてもよい。基体には、ポリマー、ガラス及び種々の繊維、例えば炭素/グラファイト;ホウ素;石英;酸化アルミニウム;ガラス、例えばEガラス、Sガラス、S−2GLASS(登録商標)又はCガラス及び炭化ケイ素又はチタン含有炭化ケイ素繊維が含まれてもよい。市販の繊維には、有機繊維、例えばデュポン社(DuPont)からのケブラー(KEVLAR);酸化アルミニウム含有繊維、例えば3M社からのNEXTEL繊維;炭化ケイ素繊維、例えば日本カーボン社からのNICALON及びチタン含有炭化ケイ素繊維、例えば宇部興産社からのTYRRANOが含まれてよい。特別の態様に於いて、この硬化性組成物は、回路基板又は印刷回路基板の少なくとも一部を形成するために使用することができる。幾つかの態様に於いて、基体は、基体への硬化性又は硬化組成物の接着を改良するために、相溶化剤でコーティングすることができる。
【0087】
コンポジット及び被覆された構造体
幾つかの態様に於いて、コンポジットは、本明細書中に開示された硬化性組成物を硬化させることによって形成することができる。他の態様に於いて、コンポジットは、例えば基体又は強化材料を含浸又はコーティングし、硬化性組成物を硬化させることによって、硬化性組成物を基体又は強化材料に適用することによって形成することができる。
【0088】
前記の硬化性組成物は、粉末、スラリー又は液体の形状であってよい。硬化性組成物を前記のようにして製造した後、硬化性組成物の硬化の前、間又は後に、これを、前記の基体の上、中又は間に配置することができる。
【0089】
例えばコンポジットは、基体を硬化性組成物によってコーティングすることによって形成することができる。コーティングはスプレーコーティング、カーテンフローコーティング、ロールコーター若しくはグラビアコーターによる被覆、刷毛コーティング及び漬け又は浸漬コーティングを含む、種々の手順によって予備形成することができる。
【0090】
種々の態様に於いて、基体は単層又は多層であってよい。例えば基体は、とりわけ、例えば2種のアロイのコンポジット、多層ポリマー物品及び金属コーティングポリマーであってよい。他の種々の態様に於いて、硬化性組成物の1個又はそれ以上の層を、基体の上又は中に配置することができる。基体層及び硬化性組成物層の種々の組合せによって形成された他の多層コンポジットも、本明細書で予想される。
【0091】
幾つかの態様に於いて、硬化性組成物の加熱は、例えば温度感受性基体の過熱を回避するために、局在化させることができる。他の態様に於いて、この加熱には、基体及び硬化性組成物を加熱することが含まれてよい。
【0092】
本明細書に開示された硬化性組成物の硬化は、樹脂組成物、硬化剤及び使用する場合触媒に依存して、数分間〜数時間の間、少なくとも約0℃、約250℃以下の温度を必要とするであろう。他の態様に於いて、硬化は、数分間〜数時間の間、少なくとも20℃で50℃よりも低い温度で起こり得る。他の態様に於いて、硬化は、数分間〜数時間の間、少なくとも100℃の温度で起こり得る。後処理を同様に使用することができ、このような後処理は、通常、約100℃〜220℃の温度である。
【0093】
幾つかの態様に於いて、硬化は発熱を防ぐために段階化することができる。段階化には、例えば或る温度で或る時間硬化させ、続いてより高い温度で或る時間硬化させることが含まれる。段階化(staged)硬化には、2個又はそれ以上の硬化段階が含まれてよく、幾つかの態様に於いて約180℃よりも低い、他の態様に於いて約150℃よりも低い、他の態様に於いて約120℃よりも低い、他の態様に於いて約100℃よりも低い、更に他の態様に於いて約80℃よりも低い温度で開始することができる。
【0094】
幾つかの態様に於いて、硬化温度は、0℃、10℃、20℃、30℃、40℃、50℃、60℃、70℃、80℃、90℃、100℃、110℃、120℃、130℃、140℃、150℃、160℃、170℃又は180℃の下限から、250℃、240℃、230℃、220℃、210℃、200℃、190℃、180℃、170℃、160℃、150℃、140℃、130℃、120℃、110℃、100℃、90℃、80℃、70℃、60℃、50℃の上限までの範囲(この範囲は、任意の下限から任意の上限までであってよい)であってよい。他の態様に於いて、硬化温度は環境温度(常温)である。
【0095】
本明細書に記載された硬化性組成物及び硬化性コンポジットは、他の用途の中でも、接着剤、構造的及び電気的ラミネート、コーティング、注型品、航空宇宙工業用の構造体及びエレクトロニクス工業用の回路基板等として有用であろう。本明細書に開示された硬化性組成物は、とりわけ、電気ワニス(electrical varnish)、カプセル化材、半導体、一般的成形粉末、フィラメント巻きパイプ、貯蔵タンク、風車タービン用羽根、構造的及び電気的コンポジット、炭素繊維又はガラス繊維強化プラスチックパーツ、ポンプ用内張及び耐蝕性コーティングに於いて並びにスキー、スキーポール、釣竿及びその他のアウトドアスポーツ用具の形成のために使用することもできる。選択された態様に於いて、本明細書中に記載された硬化性組成物は米国特許第6,432,541号明細書(参照して本明細書中に含める)中に記載されているものと同様に、樹脂コーティング箔の形成に於いて有用であろう。
【0096】
本明細書中に開示されたエポキシ系組成物を含有するコンポジットを形成するために、種々の加工技術を使用することができる。例えばフィラメント巻き付け、溶媒有り又は無しのプリプレグ形成、樹脂トランスファー成形(RTM)、真空補助樹脂トランスファー成形(VARTM)、シート成形コンパウンド(sheet molding compounds)(SMC)、バルク成形コンパウンド(BMC)及び引抜成形が、典型的な加工技術であり、ここでは未硬化のエポキシ樹脂を使用することができる。更に、束の形状にある繊維を、未硬化のエポキシ樹脂組成物によってコーティングし、フィラメント巻き付けによるようにして堆積し、硬化させて、コンポジットを形成することができる。
【0097】
本明細書に開示された態様は、注型、注封、カプセル化、射出成形及び他の成形技術によって、ラミネーションにより又はインヒュージョンによって製造される大きいエポキシ系パーツを製造するために特に適している。このようなパーツには、電気注封品、注型品、成形品、又はカプセル化品、プラスチック工具及び繊維強化コンポジットが含まれてよい。
【実施例】
【0098】
下記の実施例に於いて使用される原材料についての、種々の用語、略語及び指定は、下記のように説明する。
(a)EEWは、エポキシ当量重量(固体基準)を表す。
(b)AEWは、アミン当量重量(固体基準)を表す。
(c)エポキシ樹脂ER1は、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、ビスフェノールFのジグリシジルエーテル及びジプロピレングリコールのジグリシジルエーテルの予備触媒作用させたブレンドである。これは、揮発性有機化合物を含有していない。EEWは180である。25℃での粘度は約1800mPa・sである。
(d)アミン硬化剤AH1は、脂環式ポリアミン、脂肪族アミドアミン及び反応性ポリアミドのブレンドである。これは、揮発性有機化合物を含有していない。AEWは118である。25℃での粘度は約2800mPa・sである。
(e)シリカ充填剤SF1は、Quarzwerke GmbH(ドイツ国、Frenchen)から商品名MILLISIL W12で入手可能な、有機表面処理をしていないシリカ粉末(SiO2>99%、水分含有量<0.1%)である。上方粒子(upper grain)サイズd95%は50μmであり、比表面積BET(DIN66132)は0.9m2/gである。
(f)ポリエチレン粉末PE1は、低密度ポリエチレン粉末である。ビカー軟化点(ISO306)は80℃であり、融点は107℃(開始=92℃)である。融解エンタルピーは、95J/gである。上方粒子サイズd95%は300μmよりも小さい。比密度は0.92g/cm3である。
(g)ポリエチレン粉末PE2は、低密度ポリエチレン粉末である。ビカー軟化点(ISO306)は85℃であり、融点は103℃(開始=56℃)である。融解エンタルピーは、63J/gである。上方粒子サイズd95%は300μmよりも小さい。比密度は0.92g/cm3である。
(h)ポリエチレン粉末PE3は、線状低密度ポリエチレン粉末である。結晶化点は110℃であり、融点は123℃(開始=76℃)である。融解エンタルピーは、116J/gである。上方粒子サイズd95%は100μmよりも小さい。比密度は0.935g/cm3である。
(i)PVDF1は、ポリフッ化ビニリデン粉末である。融点は156℃である。上方粒子サイズd95%は300μmよりも小さい。
(j)SAT1は、酢酸ナトリウム三水和物粉末である。融点は66℃である。融解エンタルピーは274J/gである。化学式は、CH3COONa・3H2Oである。
【0099】
透明注型品の製造
個々の樹脂(エポキシ及び硬化剤)を、任意の充填剤と共に、環境温度(常温)で、均質になるまでブレンドする。次いで、任意的に充填剤を含有するエポキシ樹脂及び硬化剤樹脂を、一緒に混合して、配合物を製造する。この配合物を、開放金型(100gの注型品のために200mLのガラスボトル、200gの注型品のために250mLのガラスボトル及び500gの注型品のために1Lのガラスボトル)内に注ぐことによって、注型品を製造する。断熱条件をより良く表すために、1Lのボトルを断熱する。注型品を、ヒュームフード下で、25℃で3日間硬化させ、その後、硬化製品で、任意の測定を行った。
【0100】
ゲル時間及びピーク発熱の測定
配合物を、前記の一般的な手順に従って製造する。エポキシ樹脂及び硬化剤樹脂を混合して直ぐに、ストップウォッチ及び電子温度計を開始して、それぞれ時間及び配合物温度を記録する。ゲル時間は、もはや、配合物から木の棒を自由に除去できなくなった時間として決定する。この方法の再現性は、ゲル時間について約±3分間であると推定される。最高温度に達したとき、ピーク発熱での時間及びピーク発熱での温度を記録する。この方法の再現性は、ピーク発熱での時間について約±4分間であり、ピーク発熱での温度について約±3℃であると推定される。
【0101】
粘度の測定
粘度は、ICIコーン・アンド・プレート・レオメーターで決定される。配合物を、前記の一般的手順に従って製造する。エポキシ樹脂及び硬化剤樹脂を十分に混合して直ぐに、配合物のサンプル(約0.5g)を採り、25℃に保持された温度制御したプレート(±0.1℃)の上に置く。次いで、コーンを下げ、配合物と接触させる。コーンの回転を開始し、温度を25℃で平衡にする。コーンの回転速度を、装置の操作手順に記載されているようにして、測定の最善の正確性を得るように調節する。粘度測定は、4分間以内に行う。この方法の再現性は、約±5%であると推定される。
【0102】
ガラス転移温度Tgの測定
ガラス転移温度Tgは、示差走査熱量測定(DSC)によって測定される転移の中間点として報告する。加熱勾配は10℃/分である。この方法の再現性は、約±2℃であると推定される。
【0103】
反応エンタルピーの測定
反応エンタルピーは、示差走査熱量測定(DSC)によって測定する。配合物を、前記の一般的手順に従って製造する。エポキシ樹脂及び硬化剤樹脂を十分に混合して直ぐに、配合物の小さい代表的サンプル(約10mg)を採り、2分間以内に、DSCアルミニウムパンの中に置く。このパンを、DSC測定セル内に載せ、温度を2分間以内に40℃に平衡にした。次いで、温度を、5℃/分の加熱勾配で上昇させる。熱流を温度の関数として記録する。反応エンタルピーは、40℃〜180℃の正規化熱流を積分することによって決定する。この方法の再現性は、約±2%であると推定される。
【0104】
硬度の測定
透明注型品の硬度は、ショアーD押込硬度計によって測定する。試験片を、硬い水平の表面の上に置く。圧子の針を、試験片の任意の縁から少なくとも12mmにして、押込硬度計を垂直位置に保持する。押込硬度計足を、この足を試験片の表面に対して平行に保持しながら、衝撃を与えずできるだけ迅速に試験片に適用する。足と試験片とのがしっかり接触するようにちょうど充分な圧力を適用する。報告されたショアーD硬度値は、少なくとも3個の測定値の平均である。この方法の再現性は、約±3単位であると推定される。
【0105】
実施例1並びに比較例A及びB
ポリエチレン粉末PE1を含有する配合物(実施例1)並びに充填剤を含有しない配合物(比較例A)及びシリカ充填剤SF1を含有する配合物(比較例B)を、一般的手順に従って製造する。配合物の組成及び注型品の性質を、表1及び2に示す。温度の関数としての正規化熱流を、図1に示す。
【0106】
【表1】

【0107】
【表2】

【0108】
図1は、実施例1(黒三角)、比較例A(白菱形)、比較例B(白四角)及びポリエチレン粉末PE1(白丸)についての、温度の関数としての正規化熱流のグラフ比較である。20重量%のポリエチレン粉末PE1の存在によって、比較例Aに記載された非充填の配合物に対して比較したとき、配合物の粘度が僅かに増加している。しかしながら、実施例1に記載された配合物の粘度は、比較例Bに記載された、20重量%のシリカ粉末SF1を含有する配合物よりも著しく低い。
【0109】
ゲル時間及びピーク発熱での時間は、充填剤を含有する配合物に於いて、より長い。実施例1に記載された配合物は、比較例Aと比較したとき、僅かに長いゲル時間及びピーク発熱での時間を示す。
【0110】
DSCによって測定された反応エンタルピーは、シリカ粉末SF1の導入によって17%減少し、一方、これは、ポリエチレン粉末PE1の導入によって24%減少している。ピーク発熱温度は、実施例1と比較例Bとを比較するとき、48℃低下している。
【0111】
硬化注型品の断面を作った後、コア(即ち注型品の幾何的中心に近い)と表面付近との両方で、色を観察する。コアと表面との間で顕著な差異を示さない実施例1とは違って、比較例Bは、コアでより暗い色を示す(変色)。
【0112】
実施例1並びに比較例A及びBは、同様のガラス転移温度及び硬度を示す。これらの結果に従って、注型品中のポリエチレン粉末PE1の存在によって、注型品の耐熱性又は機械的性質は低下しない。
【0113】
これらの結果は、硬化プロセスの間に吸熱相転移を受けない従来の充填剤に対して比較したとき、反応発熱の低下のための吸熱相転移添加剤の正の効果を示している。
【0114】
実施例2〜5及び比較例C
低密度ポリエチレン粉末PE2(実施例2)、線状低密度ポリエチレン粉末PE3(実施例3)、ポリフッ化ビニリデン粉末(PVDF1)、酢酸ナトリウム三水和物(SAT1)を含有する配合物並びに充填剤を含有しないそれぞれの配合物(比較例C)を、一般的手順に従って製造する。配合物の組成及び注型品の性質を、表3及び4に示す。
【0115】
【表3】

【0116】
【表4】

【0117】
ピーク発熱での時間は、比較例Cと比較したとき、充填剤を含有する配合物(実施例2〜5)に於いて、より長いが、許容できる状態に留まっている。ピーク発熱温度は、比較例Cと比較したとき、実施例2〜5に於いて、硬化プロセスの間に吸熱相転移を受ける充填剤の添加により猛烈に低下している。ピーク発熱に於ける温度は、比較例Cと比較したとき、実施例2に於いて65℃低く、実施例3に於いて95℃低く、実施例4に於いて58℃低く、実施例5に於いて73℃低い。
【0118】
これらの結果は、反応発熱の低下のために、吸熱相転移添加剤の正の効果を示している。
【0119】
前記のように、本明細書に開示された態様は、低い反応発熱を有するエポキシ系組成物に関する。更に詳しくは、本明細書に開示された態様は、エポキシ樹脂、硬化剤及び吸熱転移添加剤を含有するエポキシ系組成物であって、エポキシ系組成物が、吸熱相転移添加剤の存在のために、より低い反応発熱を有する組成物に関する。
【0120】
有利なことに、本明細書に開示された態様は、吸熱転移添加剤を含有しない同じエポキシ系組成物と比較したとき、より低い発熱又はより低いピーク発熱を経験するエポキシ系組成物を提供することができる。より低い発熱は、特に、熱移動が制限される大きいパーツの内部部分について、より低い発熱からもたらされ得るような、形成されるパーツのマトリックス全体で更に均一な特性、改良された色、エポキシポリマー劣化の減少又は除去及びより少ない炭化の1個又はそれ以上になり得る。発熱に於ける減少は、より大きいパーツ製造、増加するサイクル時間及び他の利益の1個又はそれ以上も可能にもするであろう。
【0121】
この開示は、限定された数の態様を含むが、この開示の利益を有する当業者は、本発明の開示の範囲から逸脱しない他の態様を案出できることを認めるであろう。従って、この範囲は、付属する特許請求の範囲によってのみ制限されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種のエポキシ樹脂、
少なくとも1種の硬化剤及び
少なくとも1種の吸熱転移添加剤
を含んでなる、硬化の間に、より低いピーク発熱を有する硬化性エポキシ系組成物。
【請求項2】
少なくとも1種の触媒を更に含む請求項1に記載のエポキシ系組成物。
【請求項3】
少なくとも1種の無機充填剤を更に含む請求項1又は2に記載のエポキシ系組成物。
【請求項4】
前記吸熱転移添加剤が周囲温度及び圧力で固体である請求項1〜3のいずれか1項に記載のエポキシ系組成物。
【請求項5】
前記熱転移添加剤が少なくとも50J/gの吸熱転移エンタルピーを有する請求項1〜4のいずれか1項に記載のエポキシ系組成物。
【請求項6】
前記吸熱転移添加剤が50J/g〜600J/gの吸熱転移エンタルピーを有する請求項1〜4のいずれか1項に記載のエポキシ系組成物。
【請求項7】
前記吸熱転移添加剤が5nm〜500ミクロンの範囲内の平均粒子サイズを有する請求項1〜6のいずれか1項に記載のエポキシ系組成物。
【請求項8】
前記吸吸熱転移添加剤が、前記エポキシ系組成物が、少なくとも1種の吸熱転移添加剤の不存在下で、少なくとも1種のエポキシ樹脂と少なくとも1種の硬化剤との反応の間に経験する最大発熱よりも、少なくとも5℃低い温度で、吸熱転移を受けるように選択される請求項1〜7のいずれか1項に記載のエポキシ系組成物。
【請求項9】
前記吸熱転移添加剤が、前記エポキシ系組成物が、少なくとも1種の吸熱転移添加剤の不存在下で、少なくとも1種のエポキシ樹脂と少なくとも1種の硬化剤との反応の間に経験する最大発熱よりも、少なくとも10℃低い温度で、吸熱転移を受けるように選択される請求項1〜7のいずれか1項に記載のエポキシ系組成物。
【請求項10】
前記吸熱転移添加剤の吸熱転移を受ける温度が0℃〜160℃である請求項1〜9のいずれか1項に記載のエポキシ系組成物。
【請求項11】
前記エポキシ系組成物が、エポキシ樹脂、硬化剤及び吸熱転移添加剤の合計重量基準で、50重量%又はそれ以下の吸熱転移添加剤を含む請求項1〜10のいずれか1項に記載のエポキシ系組成物。
【請求項12】
少なくとも1種のエポキシ樹脂、
少なくとも1種の硬化剤及び
少なくとも1種の吸熱転移添加剤
を混合して硬化性組成物を形成することを含んでなる、より低いピーク発熱を有する硬化性エポキシ系組成物の形成プロセス。
【請求項13】
前記混合が触媒を混合することを更に含む請求項12に記載のプロセス。
【請求項14】
前記混合が、無機充填剤を混合することを更に含む請求項12又は13に記載のプロセス。
【請求項15】
前記吸熱転移添加剤が周囲温度及び圧力で固体である請求項12〜14のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項16】
前記吸熱転移添加剤が少なくとも50J/gの吸熱転移エンタルピーを有する請求項12〜15のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項17】
前記吸熱転移添加剤が50J/g〜600J/gの吸熱転移エンタルピーを有する請求項12〜15のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項18】
前記吸熱転移添加剤が5nm〜500ミクロンの範囲内の平均粒子サイズを有する請求項12〜17のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項19】
前記吸熱転移添加剤が前記エポキシ系組成物が、少なくとも1種の吸熱転移添加剤の不存在下で、少なくとも1種のエポキシ樹脂と少なくとも1種の硬化剤との反応の間に経験する最大発熱よりも、少なくとも5℃低い温度で、吸熱転移を受けるように選択される、請求項12〜18のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項20】
前記吸熱転移添加剤が、前記エポキシ系組成物が、少なくとも1種の吸熱転移添加剤の不存在下で、少なくとも1種のエポキシ樹脂と少なくとも1種の硬化剤との反応の間に経験する最大発熱よりも、少なくとも10℃低い温度で、吸熱転移を受けるように選択される請求項12〜18のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項21】
前記吸熱転移添加剤が吸熱転移を受ける温度が0℃〜160℃である請求項12〜20のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項22】
前記エポキシ系組成物が、エポキシ樹脂、硬化剤及び吸熱転移添加剤の合計重量基準で、50重量%又はそれ以下の吸熱転移添加剤を含む請求項12〜21のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項23】
少なくとも1種のエポキシ樹脂、
少なくとも1種の硬化剤及び
少なくとも1種の吸熱転移添加剤
を混合して、硬化性組成物を形成させ、そして
前記硬化性組成物を、少なくとも60℃の温度で熱硬化させて熱硬化樹脂を形成する
ことを含んでなる熱硬化樹脂の形成プロセス。
【請求項24】
前記混合が触媒を混合することを更に含む請求項23に記載のプロセス。
【請求項25】
前記混合が無機充填剤を混合することを更に含む請求項23又は24に記載のプロセス。
【請求項26】
前記硬化性組成物を金型内に配置することを更に含む請求項23〜25のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項27】
前記吸熱転移添加剤が周囲温度及び圧力で固体である請求項23〜26のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項28】
前記吸熱転移添加剤が少なくとも50J/gの吸熱転移エンタルピーを有する請求項23〜27のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項29】
前記吸熱転移添加剤が50J/g〜600J/gの吸熱転移エンタルピーを有する請求項23〜27のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項30】
前記吸熱転移添加剤が5nm〜500ミクロンの範囲内の平均粒子サイズを有する請求項23〜29のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項31】
前記吸熱転移添加剤が、前記エポキシ系組成物が、少なくとも1種の吸熱転移添加剤の不存在下で、少なくとも1種のエポキシ樹脂と少なくとも1種の硬化剤との反応の間に経験する最大発熱よりも、少なくとも5℃低い温度で、吸熱転移を受けるように選択される請求項23〜30のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項32】
前記吸熱転移添加剤が吸熱転移を受ける温度が0℃〜160℃である請求項23〜31のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項33】
前記エポキシ系組成物が、エポキシ樹脂、硬化剤及び吸熱転移添加剤の合計重量基準で、50重量%又はそれ以下の吸熱転移添加剤を含む請求項23〜32のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項34】
少なくとも1種のエポキシ樹脂、
少なくとも1種の硬化剤及び
少なくとも1種の吸熱転移添加剤
の反応生成物を含んでなる熱硬化樹脂。
【請求項35】
前記反応生成物が触媒を更に含む請求項34に記載の熱硬化樹脂。
【請求項36】
前記反応生成物が無機充填剤を更に含む請求項34又は35に記載の熱硬化樹脂。
【請求項37】
前記吸熱転移添加剤が周囲温度及び圧力で固体である請求項34〜36のいずれか1項に記載の熱硬化樹脂。
【請求項38】
前記吸熱転移添加剤が少なくとも50J/gの吸熱転移エンタルピーを有する請求項34〜37のいずれか1項に記載の熱硬化樹脂。
【請求項39】
前記吸熱転移添加剤が50J/g〜600J/gの吸熱転移エンタルピーを有する請求項34〜37のいずれか1項に記載の熱硬化樹脂。
【請求項40】
前記吸熱転移添加剤が5nm〜500ミクロンの範囲内の平均粒子サイズを有する請求項34〜39のいずれか1項に記載の熱硬化樹脂。
【請求項41】
前記吸熱転移添加剤が、前記エポキシ系組成物が、少なくとも1種の吸熱転移添加剤の不存在下で、少なくとも1種のエポキシ樹脂と少なくとも1種の硬化剤との反応の間に経験する最大発熱よりも、少なくとも5℃低い温度で、吸熱転移を受けるように選択される、請求項34〜40のいずれか1項に記載の熱硬化樹脂。
【請求項42】
前記吸熱転移添加剤が吸熱転移を受ける温度が0℃〜160℃である請求項34〜41のいずれか1項に記載の熱硬化樹脂。
【請求項43】
前記エポキシ系組成物が、エポキシ樹脂、硬化剤及び吸熱転移添加剤の合計重量基準で、50重量%又はそれ以下の吸熱転移添加剤を含む請求項34〜42のいずれか1項に記載の熱硬化樹脂。
【請求項44】
請求項34に記載の熱硬化樹脂を含んでなり、200グラム又はそれ以上の熱硬化樹脂を含むエポキシ系パーツ。
【請求項45】
前記エポキシ系パーツが、500グラム又はそれ以上のこの熱硬化樹脂を含む請求項44に記載のエポキシ系パーツ。
【請求項46】
前記エポキシ系パーツが1000グラム又はそれ以上の前記熱硬化樹脂を含む請求項44に記載のエポキシ系パーツ。
【請求項47】
前記パーツが注型、注封、カプセル化、射出成形、ラミネーション及びインヒュージョンの少なくとも1種によって製造される請求項44〜46のいずれか1項に記載のエポキシ系パーツ。
【請求項48】
前記パーツが電気注封品、注型品、成形品、カプセル化品、プラスチック工具及び繊維強化コンポジットの少なくとも1種を含む請求項44〜46のいずれか1項に記載のエポキシ系パーツ。

【図1】
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【公表番号】特表2011−517724(P2011−517724A)
【公表日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−505085(P2011−505085)
【出願日】平成21年4月7日(2009.4.7)
【国際出願番号】PCT/US2009/039722
【国際公開番号】WO2009/129084
【国際公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ エル エルエルシー (1,383)
【Fターム(参考)】