説明

エポキシ/アミンバリアコーティング

【課題】ガスバリア特性を有する樹脂、このような樹脂を用いた硬化性バリアコーティング組成物、およびこのバリアコーティングを含むパッケージ材料および/または容器を提供すること(このバリアコーティングは、パッケージ材料を通じての二酸化炭素および/または酸素のようなガスの透過性を低減する)。
【解決手段】ポリアミン(A)とポリエポキシド(B)との反応生成物を含有するバリアコーティングであって、該ポリアミン(A)が以下の成分の非ゲル化反応生成物である、バリアコーティング:(I)開始ポリアミンであって、ここで炭素原子の少なくとも50%が芳香族であるポリアミン;および(II)以下の(a)〜(d)のうち少なくとも1つ:(a)エピクロロヒドリン;(b)ポリエポキシド(c)ノボラックエポキシ樹脂またはビスフェノールFエポキシ樹脂;あるいは(d)ホルムアルデヒドおよびフェノール。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
本発明は、ガスバリア特性を有する樹脂、このような樹脂を用いた硬化性バリアコーティング組成物、およびこのバリアコーティングを含むパッケージ材料および/または容器に関する。このバリアコーティングは、パッケージ材料を通じての二酸化炭素および/または酸素のようなガスの透過性を低減する。
【背景技術】
【0002】
プラスチックは、特に食物および飲料のパッケージにおけるガラスおよび金属容器の代替物としての用途が増大している。このようなプラスチックパッケージの利点として、軽量、破損が少ないこと(ガラスに比べて)および潜在的により低いコストが挙げられる。しかし、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレンおよびポリプロピレン)、ポリ(エチレンテレフタレート)およびポリカーボネートのような一般的なパッケージ用プラスチックのガスバリア特性は不十分であり、このことが多くの食物および飲料のパッケージにおいて主に不利な点である。例えば、多くの食物および飲料は、酸化を受けやすく、そして変色または他の有害な影響を防止するために酸素から保護されなければならない。さらに、プラスチックの飲料容器は、プラスチック容器を通しての二酸化炭素の損失または酸素の侵入により、ガラスあるいは金属と比べてかなり保管寿命に問題がある。
【0003】
食物への適用に加えて、バリアコーティングは、プラスチック医療用アンプルなど、およびプラスチック燃料容器のための実用性を有する。
【0004】
多数のバリアコーティングが先行技術において開発されている。このバリアコーティングは、塩化ビニリデンまたはエチレン−ビニルアルコールのような熱可塑性の結晶性樹脂に基づくバリア材料を包含する。これらの材料の各々は欠点を有する。エチレン−ビニルアルコールベースのポリマーは、水に曝すとバリア特性を失い、そしてこの材料のパッケージは一般に、バリア性能を失うことなくレトルトを行う(すなわち、滅菌のために加圧蒸気下で加熱する)ことが出来ない。塩化ビニリデンベースのポリマーは、優れたガスバリア特性を有することが認められているが、このような塩化ビニリデンベースのポリマーの調製は、一般に高圧下で行われなければならない。さらに、塩化ビニリデンベースのバリア材料はハロゲン原子を含有するので、焼却によるこのような材料の処理は環境問題を提起する。さらに、塩化ビニリデンベースのポリマーおよびエチレン−ビニルアルコールベースのポリマーの両方とも、レトルトを行った後の接着性の損失を示す。
【0005】
米国特許第2,830,721号(Pinskyら)は、プラスチック容器のためのポリアミン−ポリエポキシドバリアコーティングを開示している。目的は、ポリエチレン容器を通した有機溶媒の透過を低減することである。高分子食物容器および高分子飲料容器に関して、Pinskyらの特許に開示されているものよりも低い酸素および/または二酸化炭素透過性ならびに湿度に対するより低い感度を有するバリアコーティングを提供することが望ましい。
【0006】
高アミン窒素含量のポリアミン−ポリエポキシド樹脂に基づく非常に低い透過性を有するバリアコーティングは、共有に係る米国特許出願番号07/767,458および米国特許第5,006,381号ならびに米国特許第5,008,137号(全てNugentら)の主題である。これらに開示されている好適なポリアミンは、テトラエチレンペンタミンのようなポリエチレンポリアミンである。これらのコーティングは、高分子容器のバリアコーティングとしての商業的に容認されている。しかし、さらなる改良が望まれる。特に、高い湿度条件下でのこのタイプのコーティングの性能を改良することが望まれる。
【0007】
メタキシリレンジアミンが、ポリエポキシド樹脂の硬化剤として知られている。米国特許第4,605,765号(Miyamotoら)は、ポリエポキシド樹脂の硬化剤として、メタキシリレンジアミンとエピクロロヒドリンとのアミン官能性反応生成物の使用をさらに開示している。反応生成物中、1エポキシ基当たりアミン水素が約1当量という一般的な硬化比率が開示されている。
【0008】
先行技術(例えば、米国特許第4,908,272号;第4,983,719号;および第5,028,462号)は、メタまたはパラキシリレンジアミンと有機酸とを反応させてガスバリア層として作用するアミドを形成することを開示している。これらのアミドは、コーティングとして使用され得る液体ではない。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によって、以下が提供される:
(項目1)ポリアミン(A)とポリエポキシド(B)との反応生成物であって、(A)中の活性アミン水素と(B)中のエポキシ基との比が少なくとも1.5:1である反応生成物を含有するバリアコーティングであって、該ポリアミン(A)が以下の成分の非ゲル化反応生成物である、バリアコーティング:
(I)開始ポリアミンであって、ここで炭素原子の少なくとも50%が芳香族であるポリアミン;および
(II)以下の(a)〜(d)のうち少なくとも1つ:
(a)エピクロロヒドリン;
(b)以下の構造を有するポリエポキシド
【0010】
【化4】

【0011】
ここで
Rはフェニレンまたはナフチレンであり;
XはN、NR'、CH2N、CH2NR'、O、C(O)-O、またはそれらの組み合わせであり;
R'は1個〜3個の炭素原子を有するアルキル基、あるいはシアノエチルまたはシアノプロピル基であり;
nは1または2であり;
mは2〜4である;
(c)ノボラックエポキシ樹脂またはビスフェノールFエポキシ樹脂;あるいは
(d)ホルムアルデヒドおよび以下の構造のフェノール
R''-OH
ここでR''は炭素原子1個〜4個のアルキル置換基を含み得る芳香族基または縮合芳香族基である。
(項目2)前記開始ポリアミンが、炭素原子の少なくとも60%が芳香族である化合物である、項目1に記載のコーティング。
(項目3)前記開始ポリアミンが、炭素原子の少なくとも70%が芳香族である化合物である、項目1に記載のコーティング。
(項目4)前記開始ポリアミンが、アミノメチル多置換ベンゼンまたはナフタレン化合物である、項目1に記載のコーティング。
(項目5)前記開始ポリアミンが、キシリレンジアミンである、項目1に記載のコーティング。
(項目6)前記ポリエポキシド(B)が、以下の構造を有するポリエポキシドである、項目1に記載のコーティング:
【0012】
【化5】

【0013】
ここで
R'''はフェニレンまたはナフチレンであり;
ZはN、NR'、CH2N、CH2NR'、O、C(O)-O、またはそれらの組み合わせであり;
R'は1個〜3個の炭素原子を有するアルキル基、あるいはシアノエチルまたはシアノプロピル基であり;
pは1または2であり;
qは2〜4である。
(項目7)前記ポリエポキシド(B)が、N,N,N',N'-テトラキス(オキシラニルメチル)-1,3-ベンゼンジメタンアミンを含有する、項目1に記載のコーティング。
(項目8)前記ポリエポキシド(B)が、N,N,N',N'-テトラキス(オキシラニルメチル)-1,3-ベンゼンジメタンアミンを含有する、項目5に記載のコーティング。
(項目9)前記ポリエポキシド(B)が、N,N,N',N'-テトラキス(オキシラニルメチル)-1,3-ベンゼンジメタンアミンを含有する、項目8に記載のコーティング。
(項目10)重量基準で少なくとも50%のアミノメチル多置換ベンゼンまたはナフタレン基を含有する硬化したポリマー網目を含有する、項目1に記載のコーティング。
(項目11)重量基準で少なくとも55%のアミノメチル多置換ベンゼンまたはナフタレン基を含有する硬化したポリマー網目を含有する、項目1に記載のコーティング。
(項目12)重量基準で少なくとも60%のアミノメチル多置換ベンゼンまたはナフタレン基を含有する硬化したポリマー網目を含有する、項目1に記載のコーティング。
(項目13)重量基準で少なくとも50%のキシリレンジアミン基を含有する硬化したポリマー網目を含有する、項目1に記載のコーティング。
(項目14)重量基準で少なくとも55%のキシリレンジアミン基を含有する硬化したポリマー網目を含有する、項目1に記載のコーティング。
(項目15)重量基準で少なくとも60%のキシリレンジアミン基を含有する硬化したポリマー網目を含有する、項目1に記載のコーティング。
(項目16)20%〜40%の2-ヒドロキシプロピレン基を含有する硬化したポリマー網目を含有する、項目9に記載のコーティング。
(項目17)重量基準で少なくとも75%のアミノメチル多置換ベンゼンまたはナフタレン基と2-ヒドロキシプロピレン基との組み合わせを含有する硬化したポリマー網目を含有する、項目16に記載のコーティング。
(項目18)前記ポリアミン(A)が、メタキシリレンジアミンとエピクロロヒドリンとの反応生成物を含有する、項目17に記載のコーティング。
(項目19)前記ポリエポキシド(B)が、N,N,N',N'-テトラキス(オキシラニルメチル)-1,3-ベンゼンジメタンアミン、テトラグリシドキシビス(パラ−アミノフェニル)メタン、レゾルシノールジグリシジルエーテル、フタル酸ジグリシジルエステル、トリグリシジルパラ−アミノフェノール、ノボラックエポキシ樹脂、およびビスフェノールFエポキシ樹脂からなる群から選択される、項目18に記載のコーティング。
(項目20)前記ポリエポキシド(B)が、N,N,N',N'-テトラキス(オキシラニルメチル)-1,3-ベンゼンジメタンアミンを含有する、項目18に記載のコーティング。
(項目21)重量基準で少なくとも85%の、アミノメチル多置換ベンゼンまたはナフタレン基、2-ヒドロキシプロピレン基、-O-Φ-O-基、および-O-Φ-N<基から選択される基を含有する硬化したポリマー網目を含有する、項目1に記載のコーティング。
(項目22)重量基準で少なくとも90%の、アミノメチル多置換ベンゼンまたはナフタレン基、2-ヒドロキシプロピレン基、-O-Φ-O-基、および-O-Φ-N<基から選択される基を含有する硬化したポリマー網目を含有する、項目1に記載のコーティング。
(項目23)重量基準で少なくとも95%の、アミノメチル多置換ベンゼンまたはナフタレン基、2-ヒドロキシプロピレン基、-O-Φ-O-基、および-O-Φ-N<基から選択される基を含有する硬化したポリマー網目を含有する、項目1に記載のコーティング。
(項目24)前記アミノメチル多置換ベンゼンまたはナフタレン基が、キシリレンジアミン基を含む、項目23に記載のコーティング。
(項目25)XがCH2Nであり、nが2であり、そしてmが2である、項目1に記載のコーティング。
(項目26)ZがCH2Nであり、pが2であり、そしてqが2である、項目6に記載のコーティング。
(項目27)Rがフェニレンである、項目1に記載のコーティング。
(項目28)前記開始ポリアミンが、アミノメチル多置換ベンゼンまたはナフタレンを含有する、項目1に記載のコーティング。
(項目29)前記開始ポリアミンが、キシリレンジアミンを含有する、項目1に記載のコーティング。
(項目30)前記(A)中の活性アミン水素と(B)中のエポキシ基との比が少なくとも1.8:1である、項目1に記載のコーティング。
(項目31)前記(A)中の活性アミン水素と(B)中のエポキシ基との比が少なくとも2:1である、項目1に記載のコーティング。
(項目32)前記開始ポリアミンが、ポリアミンとエピクロロヒドリンとのモル比が2:1から1:1でエピクロロヒドリンと反応する、項目1に記載のコーティング。
(項目33)前記開始ポリアミンが、ポリアミンとエピクロロヒドリンとのモル比が1.5:1から1:1でエピクロロヒドリンと反応する、項目1に記載のコーティング。
(項目34)比較的透過性の高分子材料層を有し、そして該層上に項目1のコーティングを有する、パッケージ材料。
(項目35)比較的透過性の高分子材料から成形されたボディを有し、そして該ボディ上に項目1のコーティングを有する、容器。
発明の要旨
本発明は、高分子容器および他のパッケージ材料での使用に適切なポリエポキシド−ポリアミン樹脂ベースの液体バリアコーティングにおける改良である。本発明のコーティングは、例外的に低い酸素および/または二酸化炭素透過性を有するのみならず、高湿度条件下でこれらの優れたバリア特性を保持する、他のポリエポキシド−ポリアミンベースバリアコーティングよりも相当優れた能力を有する。
【0014】
以下の2つの分子基から主としてなる分子網目を有するポリエポキシド−ポリアミン樹脂の硬化したフィルムが、高湿度条件下で低透過性を保持する驚くべき能力を有することが発見された:
(1)>NRΦRN<タイプの芳香族含有ポリアミン基(ここでRは1個または2個の炭素を有するアルキルである);および
(2)-CH2CH(OH)CH2-基(2-ヒドロキシプロピレン基)。
(Φは、ベンゼン環を示すために本明細書中で使用される。)優れたバリア特性は、硬化したフィルム網目がこれらの2つの分子基のみ、または実質的にこれらの2つの分子基のみ(少なくとも85重量%、好ましくは少なくとも90重量%、最も好ましくは少なくとも95重量%)を含む場合に達成され得る。本発明のポリアミン成分の特徴は、その炭素原子の少なくとも50%を芳香族環中に含むことである。特に有用な実施態様において、>NRΦRN<基中のRは1個の炭素原子を含み、それによって少なくとも70%の炭素原子が芳香族環中にある。特定の実施例において、網目中のポリアミン基は、アミノメチル多置換ベンゼンまたはナフタレンである開始(initial)ポリアミン(例えば、キシリレンジアミン)の残基であり得る。
【0015】
本発明による重要な改良は、上記の好適な基のレベルを最適化することなく達成され得ることが理解されるべきである。好適な基に加えて、分子網目は、-O-Φ-O-基、-O-Φ-N<基、またはそれらの組み合わせのようなさらなる分子基を含み得るが、それでもなお高湿度条件下での優れたバリア特性を提供する。好適な分子基の含量を最大にすることは一般に望ましいが、特定の分子基の含量を、硬化したポリマー網目中で最小にするかあるいは存在させないことがさらに有利であることが見出されている。避けることが好ましい基は、一般に非置換アルキル鎖(エチレン基を包含する)、特にアルキレンポリアミン基、およびイソプロピリデン基(ビスフェノールA中のような)を包含する。
【0016】
本発明の樹脂は、予備的に以下の1つ以上の成分と有利に反応してポリアミン官能性付加体を形成し得る、開始ポリアミンに基づく:
(a)エピクロロヒドリン
(b)以下の構造を有するポリエポキシド
【0017】
【化1】

【0018】
ここで
Rはフェニレンまたはナフチレンであり;
XはN、NR'、CH2N、CH2NR'、O、C(O)-O、またはそれらの組み合わせである;
R'は1個〜3個の炭素を有するアルキル基、あるいはシアノエチルまたはシアノプロピル基であり;
nは1または2であり;
mは2〜4である;
(c)ノボラックエポキシ樹脂またはビスフェノールFエポキシ樹脂;あるいは
(d)ホルムアルデヒドおよび以下の構造のフェノール
R''-OH
ここでR''は炭素1個〜4個のアルキル置換基を含み得る芳香族基または縮合芳香族基である。
【0019】
上で定義したポリアミン付加体は、ポリエポキシド化合物で硬化されて、本発明の硬化したコーティングを形成する。本発明の利点は、ポリアミンと反応させて硬化したフィルムを形成するために使用することが知られている任意のポリエポキシドの使用により、ある程度は達成され得る。しかし、高湿度条件下でのバリア特性の損失に対して優れた耐性を有する好適な実施態様は、付加体を製造するために使用されるポリエポキシドと同様の特性を有するポリエポキシド硬化成分を使用する。言い換えれば、硬化のために使用される好適なポリエポキシドもまた、硬化した網目に寄与し、好適な分子基は、少なくとも50%の芳香族炭素含量を有する芳香族含有ポリアミン基、2-ヒドロキシプロピレン基、および必要に応じて、-O-Φ-O-基および-O-Φ-N<基の一方または両方により特徴付けられる。
【0020】
ポリアミン付加体を形成するか、またはポリアミン付加体を硬化するかのいずれかのために使用されるポリエポキシドが、有意な量のビスフェノールAのグリシジルエーテルを含まないことが、高湿度条件下で良好なバリア特性を達成するために有利であることもまた見出された。しかし、ビスフェノールFのグリシジルエーテルは、好ましくないけれどもこの目的に許容され得る。アミノアルキル基および芳香族基を含むポリエポキシド、ノボラックポリエポキシド、およびレゾルシノールポリエポキシドが好ましい。
【0021】
ポリアミン官能性付加体およびポリエポキシド硬化剤を硬化するために、良好なバリア特性を達成するために実質的に過剰量のポリアミン成分が供給される。これは、アミン水素の当量とエポキシ基の当量とが約1:1の比である従来のエポキシ−アミン樹脂の硬化と対照的である。本発明において、硬化比は、ポリアミン成分中のアミン水素の当量対ポリエポキシド成分中のエポキシ基の当量が、少なくとも1.5:1、好ましくは少なくとも2:1である。
【0022】
さらに本発明によれば、少なくとも1層の比較的ガス透過性の高分子材料および上で定義したような少なくとも1層のポリアミン−ポリエポキシドバリアコーティングを含むパッケージ材料が提供される。この複合パッケージ材料は、バリアコーティング自体の説明と関連して上記で示したようなガス透過性を示す。パッケージ材料に含まれるバリアコーティングは、高分子材料の1つ以上の表面に付与され得、あるいは高分子材料の2つの層の間に積層され得る。包装として使用され得、あるいは容器または他の物品に形成され得るストックシートが意図される。あるいは、容器または他の物品は、高分子材料から形成され得、そして本発明のバリアコーティングが、例えば、噴霧、ロールコーティング、または他の従来のコーティング方法により、形成した物品の表面上に付与され得る。これらの目的のために、本発明のバリアコーティング組成物は、液体コーティング組成物のレオロジー特性を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
発明の詳細な説明
本説明を通して使用される用語「バリア材料」とは、酸素および/または二酸化炭素のようなガスに対する透過性が低い材料、すなわち、材料を通じての酸素または二酸化炭素の通過に対して高い耐性を示す材料を意味する。材料を通した透過は、材料の厚みの関数である。本発明のバリア材料は、二酸化炭素および酸素の両方に対する比較的高い耐性の組み合わせを示すが、多くの用途は両方に対する耐性を必要としない。従って、材料を「バリア材料」とみなすには、以下で定義するような二酸化炭素または酸素のいずれかに対する低い透過性で十分である。
【0024】
本発明のバリアコーティングの性能は、透過性の大きさに関わらず、低湿度または中湿度と比較した高湿度での透過性の違いが小さいことにより特徴付けられ得る。最適な透過性より低くても、より厚いコーティングを付与することにより補償され得るが、高い湿度においてでさえ良好なバリア特性を補償するに十分な厚みのコーティングを使用することは実用的であり得ない。ある先行技術のエポキシ−アミンバリアコーティングは、75%の相対湿度(R.H.)で、50%のR.H.での透過性よりも数倍大きな透過性を有する。本発明のバリアコーティングの実施態様は、75%のR.H.で、50%のR.H.での透過性の5倍を越えないことにより特徴付けられ、そして好適な実施態様においては3倍未満である。
【0025】
商業的に有用であるためには、バリアコーティングの透過性は、コーティングの余分な費用を正当化するために製品の保存寿命の十分な増加を導かなければならない。さらにまた考慮されなければならない事実は、厚いバリアコーティングは保存寿命において十分な改良を提供し得るが、加算されたコーティングの費用は経済的に正当化され得ないということである。容器へのバリアコーティングの付与の費用を低く保つためには、達成されるべき所望のバリア特性のために1mil厚未満、好ましくは約0.5mil以下のオーダーの厚みのドライコーティングが一般に望ましい。これらの代表的な厚みで、バリアコーティングが、0.60cc-mil/100in2/atm./日未満の酸素透過定数(1気圧の分圧差下、24時間で、1mil厚のサンプル100平方インチを通じてのガス透過を立方センチメートルとして測定した透過の標準単位)、より注目すべきは0.50cc-mil/100in2/atm./日未満の酸素透過定数、そしてさらにより有利には0.30cc-mil/100in2/atm./日未満の酸素透過定数を有する場合に、保存寿命における有用な改良が一般に見出される。透過性の最低レベルを達成し得る先行技術のポリエポキシド−ポリアミンバリアコーティングは、湿度に対して特に敏感であることが見出されており、それによって透過性が、75%のR.H.ほどの高さの湿度で実質的に増加する。本発明のバリアコーティングの好適な実施態様は、薄いコーティングの使用を可能にする低い透過性を有するばかりでなく、高い湿度(例えば、75%の相対湿度(R.H.))で透過性のこれらのレベルを保持し得る。
【0026】
本発明の最高性能の組成物は、低い初期透過性および高湿度条件下での最小限の増加の両方を示すが、極度に低い初期透過性を有する実施態様が、透過性が高湿度条件下で増加し得る程度についてより大きなゆとりを有することが明らかである。
【0027】
本発明のバリアコーティングの二酸化炭素透過性は、一般に酸素に対する透過性と対応する。通常、酸素および二酸化炭素の両方、ならびに他のガスに対する透過定数は、一緒に増加するかまたは減少する傾向がある。3cc-mil/100in2/気圧/日未満の二酸化炭素透過性(30℃、0%の相対湿度で測定)は、一般に本発明のバリアコーティングを特徴付ける。好適な実施態様は、約1cc-mil/100in2/気圧/日未満、および最も好ましくは0.50cc-mil/100in2/気圧/日未満の二酸化炭素透過性を示す。しかし、本発明のバリアコーティングが有用であるためには、優れた酸素バリア特性および優れた二酸化炭素バリア特性の両方を同時に提供する必要がないことが理解されるべきである。
【0028】
一般に、バリア材料中のアミン窒素の量が増加すると、ガス透過性が減少することが見出されている。共有に係る米国特許出願番号07/767,458号において、所望の透過性レベルを示すバリアコーティングは少なくとも約7重量%のアミン窒素を有すると特徴付けられ、そして本発明の好適な実施態様は、同様に特徴付けられ得る。しかし、本発明の第1の特徴は、硬化したコーティングのポリマー網目の分子構造である。この分子構造により、特に酸素に対する有用なバリア特性に必要なアミン窒素含量について、より大きなゆとりが存在する。従って、本発明のコーティング中の最少アミン窒素含量について決定的な制限はないが、実施態様は、一般に硬化したフィルム中に少なくとも5重量%のアミン窒素含量を有すると特徴付けられる。透過性を最小にするために、アミン窒素含量について理論的な上限はないが、実用目的のためには11重量%を越えるアミン窒素含量が好ましくは避けられる。なぜなら、高いアミン窒素含量は、一般にコーティングの耐湿性を低下させるからである。
【0029】
本発明のバリアコーティングの主要なフィルム形成樹脂を構成するポリアミン−ポリエポキシドポリマーは、プラスチック基材に付与する直前に混合される2つの成分からインサイチュで硬化する。一方の成分は、ポリアミン官能性付加体であり、そしてもう一方の成分はポリエポキシドであり、そして2つの成分を、ポリアミン成分中の活性アミン水素の当量とポリエポキシド成分中のエポキシ基の当量とが、少なくとも1.5:1の比で反応させる。ポリアミン成分は、モノマーポリアミンまたは開始モノマーポリアミンと以下の(a)〜(d)のうち1種以上との反応により生産されるポリアミン官能性付加体を含有し得る:(a)エピクロロヒドリン;(b)複数のグリシジル基が芳香族部分に結合している特定のポリエポキシド;(c)ノボラックエポキシ樹脂またはビスフェノールFエポキシ樹脂;あるいは(d)マンニッヒ塩基を形成するためのホルムアルデヒドおよびフェノール。
【0030】
予備反応による付加体の形成は、樹脂の直線性を保持しながら分子量を増加させる利点を有し、それによってゲル化が回避される。2個を越えない1級アミノ基を有するポリアミンを使用して付加体を作成すると、ゲル化が回避される。さらに、基材への付与前のエポキシ反応物とアミン反応物との摂取(ingestion)に必要な通常の時間は、付加体を形成する予備反応により減少または省略される。開始ポリアミンが付加体を形成するために予備反応する場合、ポリアミンの活性アミン水素の約10〜80%、好ましくは20〜50%が、付加体の形成の間にエポキシ基と反応し得る。活性アミン水素の予備反応をより少なくすると、予備反応工程の有効性が低下し、そして付加体を形成する利点の1つであるポリマー生成物の直線性がわずかしか提供されなくなる。より大きな割合の活性アミン水素の予備反応は、好ましくない。なぜなら、最終硬化工程中に反応するための反応部位を供給するために、十分な活性アミン水素基が未反応のままでなければならないからである。
【0031】
しかし、バリアコーティングは、摂取期間の必要性が許容され得る場合に付加体の形成工程なしに作製され得る。代わりに、硬化に必要とされる全てのポリエポキシドは、開始モノマーポリアミンとブレンドされ得、そして摂取期間をおいた後、混合物は基材に付与され得、そしてその場で硬化され得る。このような付加体なしのアプローチにより作製されたコーティングは、理論的には、付加体を用いて作製したコーティングと等価であると考えられ得る。
【0032】
ポリアミン官能性付加体を作製するための反応物として使用する開始ポリアミンモノマーは、実質的な芳香族含量により特徴付けられる。より特定すると、炭素原子の少なくとも50%、好ましくは少なくとも70%が、縮合芳香族環を包含する芳香族環内(すなわち、フェニレン基および/またはナフチレン基)にある。これらは芳香族アミン(ここでアミン基は芳香族環に直接結合している)、または好ましくはアミノアルキル化合物(ここでアミノ基はアルキル基を介して芳香族基に結合している)を包含し得る。好ましくはアルキル基は小さいアルキル基であり、最も好ましくはメチレン基である。後者の場合、芳香族基がフェニレンであると、ポリアミンはキシリレンジアミンである。
【0033】
上記オプション(a)に従うと、開始モノマーポリアミンが付加体を形成するために反応し得る物質の1つは、エピクロロヒドリンである。アルカリ存在下、1:1より大きい(好ましくは2:1)ポリアミン対エピクロロヒドリンのモル比で反応を行うことにより、主反応生成物は、2−ヒドロキシプロピレン結合により結合したポリアミン分子を含有することになる。好適なポリアミンであるメタキシリレンジアミンとエピクロロヒドリンとの反応は、米国特許第4,605,765号に記述されており、そしてこのような生成物は、Mitsubishi Gas Chemical Companyから「GASKAMINE328」として市販されている。
【0034】
付加体を形成するためのオプション(b)は、ポリアミンと以下の構造を有するポリエポキシドの選択された群との反応を含む:
【0035】
【化2】

【0036】
ここで
Rはフェニレンまたはナフチレンであり;
XはN、NR'、CH2N、CH2NR'、O、C(O)-O、またはそれらの組み合わせであり;
R'は1個〜3個の炭素を有するアルキル基、あるいはシアノエチル基またはシアノプロピル基であり;
nは1または2であり;
mは2〜4である;
これらは、N,N,N',N'-テトラキス(オキシラニルメチル)-1,3-ベンゼンジメタンアミン(MitsubishiGas Chemical Co.から「TETRAD X」として入手可能)、テトラグリシドキシビス(パラ−アミノフェニル)メタン(Ciba-GeigyCorporationから「MY-720」として入手可能)、レゾルシノールジグリシジルエーテル(例えば、Shell Chemical Co.製の「HELOXY69」)、フタル酸ジグリシジルエステル(例えば、Shell Chemical Co.製の「EPI-REZ A-100」)、およびトリグリシジルパラ−アミノフェノール(例えば、Ciba-GeigyCorporation製の「Epoxy Resin 0500」)を包含する。
【0037】
付加体を形成するためのオプション(c)は、開始ポリアミンとノボラックエポキシ樹脂またはビスフェノールFエポキシ樹脂との反応を伴う。ビスフェノールA型エポキシ樹脂は特に排除される。Dow Chemical Co.製の「DEN-431」のようなジグリシジルノボラックが、この群で好ましい。他のものとして、DowChemical Co.製の「DEN-438」および「DEN-439」のような多グリシジル官能性のノボラックが挙げられる。
【0038】
付加体を形成するためのオプション(d)は、開始ポリアミンとホルムアルデヒドおよびフェノールとの反応からのマンニッヒ塩基の形成を含む。市販のものの例(ここでポリアミンはメタキシリレンジアミンである)は、Pacific Anchor Chemical Corporation division of Air Products and Chemicals, Inc.製の「ANCAMINE 1856」である。
【0039】
非ゲル化付加体を得るためのポリエポキシドとポリアミンとの反応は、非ゲル化生成物を得るに十分な温度および反応物濃度で行われ、そして出発原料の選択により変化し得る。一般に、反応温度は、約40℃〜140℃で変化し得、ゲル化しやすい系に対しては低目の温度(40℃〜110℃)が好ましい。同様に、反応物の濃度は、反応物の個別のモル比およびタイプに応じて、ニートから適切な溶媒中の反応物の5重量%程の低濃度まで変化し得る。低目の濃度が、一般にゲル化しやすい系に対して必要とされる。個別の反応条件は、本明細書中の実施例を目安にして当業者により容易に選択され得る。非ゲル化アミン官能性高分子付加体の調製は、米国特許第5,006,381号(Nugentら)に記述されており、そしてこのような非ゲル化樹脂の調製の説明は、本明細書中に参考として援用される。
【0040】
この説明中に使用される用語「非ゲル化」とは、このようなアミン官能性高分子樹脂が可溶性または分散性の反応生成物であり、この樹脂が本発明の処理条件下で流動体であることを意味する。
【0041】
付加体とポリエポキシドとの反応から硬化したバリアコーティングを形成する際に、2つの成分を、好ましくは活性アミン水素とエポキシ基との比が10:1〜1:1、より好ましくは5:1〜2:1で一緒に反応させる。アミン官能性付加体の各アミン水素は、理論的には1つのエポキシ基と反応し得、そして1アミン当量と考えられる。従って、1級アミン窒素は、バリア材料を形成するためのポリエポキシドとの反応において2官能性であると考えられる。好ましくは、硬化した反応生成物は、実質的な数の未反応アミン水素を含有する。ポリアミン反応物の量を最大にすることは、一般的にバリア特性を最大にするために望ましいが、エポキシ基の数が不十分だと、強靭で耐湿性の耐溶媒性フィルムを与えるために十分な架橋が提供され得ない。また、好適な量よりも多いエポキシの使用は過度の架橋を生成し得、そして脆すぎるフィルムを生成し得る。
【0042】
ポリアミンを硬化するために使用されるポリエポキシド成分は、コーティング用途に適切であることが当業者に公知の任意のポリエポキシドであり得るが、好ましくは付加工程に使用するための上記のカテゴリー(b)および(c)のポリエポキシドの1つ以上を含有する。ポリエポキシドが付加体形成工程および硬化工程の両方に使用される場合、それらは同一のポリエポキシドであってもよく、またはそれらは異なるポリエポキシドであってもよい。本明細書で推奨されるポリエポキシドまたはポリアミンの混合物はいずれも、純粋な化合物の代わりに使用され得る。好ましくは、ポリアミン付加体の形成および硬化工程で使用されるポリエポキシドは、少なくとも1.4、最も好ましくは約2以上のエポキシ官能性を有する。少量のモノエポキシドの存在は、許容され得る。
【0043】
本発明のより広範な局面において、硬化に使用されるポリエポキシドは、飽和または不飽和、脂肪族、脂環式、芳香族、あるいは複素環式のポリエポキシドを包含し得、そしてヒドロキシル基などの妨害しない置換基で置換され得る。例として、芳香族ポリオールのポリグリシジルエーテルが挙げられ、これはアルカリ存在下で芳香族ポリオールをエピクロロヒドリンまたはジクロロヒドリンでエーテル化することにより形成され得る。例として、ビス(2-ヒドロキシナフチル)メタン、4,4'-ジヒドロキシベンゾフェノン、1,5-ジヒドロキシ−ナフタレンなどが挙げられる。環式および多環式アルコールを包含する多価脂肪族アルコールのポリグリシジルエーテルがまた、付加体を硬化するために使用され得るポリエポキシドの広範なカテゴリーに包含される。
【0044】
ポリエポキシドのエポキシ基当量重量は、本発明において好適な基ではない分子基を硬化したポリマー網目へ不必要に導入することを回避するために、好ましくは最小にされる。一般的には、ポリエポキシドは、約86を越える、好ましくは200〜1000、より好ましくは200〜800の分子量を有し、そして43を越える、好ましくは60〜350、より好ましくは90〜250のエポキシ当量重量を有する。
【0045】
バリアコーティングの硬化したポリマー網目は、ポリアミンおよびポリエポキシド成分の残基を含有する。好適な実施態様は、2-ヒドロキシプロピレン基(-CH2-CH(OH)-CH2-、グリシジル基の残基)と結合したアミノメチル置換ベンゼンまたはナフタレン(例えば、>N-CH2-Φ-CH2-N<、キシリレンジアミン基の残基)の含量が高い実施態様であることが見出されている。これらの実施態様は、重量基準で、少なくとも50%、より好ましくは55%、最も好ましくは60%のアミノメチル多置換ベンゼンまたはナフタレンの残基、好ましくはキシリレンジアミンの残基を含有する網目を有する。好適な実施態様の2-ヒドロキシプロピレン基は、硬化した網目の20重量%〜40重量%を構成する。いくつかの最も好適な実施態様は、硬化した網目により特徴付けられ、ここでアミノメチル置換ベンゼンまたはナフタレンと2-ヒドロキシプロピレン基との組み合わせが、硬化した網目の75重量%〜100重量%を構成する。これらの実施態様の例として、メタキシリレンジアミンにエピクロロヒドリン、またはN,N,N',N'テトラキス(オキシラニルメチル)-1,3-ベンゼンジメタンアミン(TETRADX)を付加し、TETRAD Xで硬化したものが挙げられる。
【0046】
ここでアミノメチル置換基のいくつかが、オキシ置換で置き換えれられている(すなわち、-O-Φ-O-基)硬化した網目もまた、非常に有効であることが見出されている。これらは、開始ポリアミンとポリフェノールのポリグリシジルエーテル(例えば、レゾルシノールのジグリシジルエーテル)との付加により、あるいは好適な付加体の1つをこのようなポリフェノールのポリグリシジルエーテルで硬化することにより網目中に導入され得る。トリグリシジルパラ−アミノフェノールでの付加または硬化の残基である-O-Φ-N<のような混合置換もまた有効である。従って、本発明の最も好適な実施態様は、硬化したポリマー網目の少なくとも85重量%、好ましくは少なくとも90重量%、最も好ましくは少なくとも95重量%が、アミノメチル多置換ベンゼンまたはナフタレンを2-ヒドロキシプロピレン基、ならびに必要に応じて-O-Φ-O-基および/または-O-Φ-N<基と組み合わせて含有する実施態様である。
【0047】
好適な実施態様ほどの傑出した性能は示さないが、先行技術のバリアコーティングと比べて改良されたポリエポキシド−ポリアミンバリアコーティングが、上記の好適な基の代わりに十分な量の-O-Φ-CH2-Φ-O-基(これはノボラックエポキシ樹脂またはビスフェノールFエポキシ樹脂の残基である)を硬化した網目が含む場合に得られた。芳香族酸のジグリシジルエステルから生じた網目中の-O-C(O)-Φ-C(O)-O-基、および網目に対して>N-CH2-Φ-CH2-N-CH2-Φ-OH構造を与える芳香族マンニッヒ塩基ジアミン由来の残基によっていくつかの改良がまた見出された。
【0048】
所望の分子基は、開始ポリアミン、ポリアミン付加体、またはポリエポキシド硬化成分により硬化したポリマー網目に導入され得ることが明らかである。上記の芳香族部分上の種々の置換は、反応物中の同一分子上での互いの組み合わせで提供され得ることもまた、明らかである。
【0049】
ビスフェノールAのような芳香族ポリオールまたは1,4-ブタンジオールのような脂肪族アルコールのジグリシジルエーテルは、本発明においては好ましくないが、ポリアミン付加体の好適な実施態様を硬化するために使用する場合には許容され得る。低い酸素透過性のためには、ビスフェノールFのジグリシジルエーテルが、ビスフェノールAベースのエポキシドより好ましい。ビスフェノールA中のメチル基の存在は、酸素バリア特性に対する有害な影響を有することが理論付けられる。従って、イソプロピリデン基は好ましくは回避される。他の非置換アルキル基も同様の効果を有すると考えられ、そしてこのような基を含む成分は、本発明において好ましくは回避される。
【0050】
本発明の組成物に使用するための溶媒は、コーティングされるプラスチック基材に適合性でなければならず、そして付与に際して液体組成物に所望の流動特性を提供するように選択されるべきである。本発明の組成物と使用するに適切な溶媒は、好ましくは酸素化溶媒、例えばグリコールエーテル(例えば、2-メトキシエタノール、2-エトキシエタノール、2-プロポキシエタノール、2-ブトキシエタノール、1-メトキシ-2-プロパノールなど)またはメタノール、エタノール、プロパノールなどのようなアルコールである。2-ブトキシエタノールおよび1-メトキシ-2-プロパノールのようなグリコールエーテルがより好ましく、1-メトキシ-2-プロパノールが最も好ましい。1-メトキシ-2-プロパノールの使用は、その迅速な蒸発速度のため好ましく、これは硬化したフィルム中の溶媒保持を最小にする。予備反応させた付加体を使用するいくつかの実施態様において所望の流動特性を得るために、2-ブトキシエタノールの使用が好適であり得る。流動特性のために蒸発の遅い溶媒を必要としない実施態様において、ここに挙げた溶媒は、トルエンまたはキシレンのようなより高価でない溶媒で希釈され得る。溶媒はまた、ハロゲン化炭化水素(例えば、塩化メチレンのような塩素化炭化水素)であり得る。1,1,1-トリクロロエタンなど(通常速く蒸発する溶媒と考えられる)は、硬化したバリアフィルムを得るのに特に有用であり得る。このような溶媒の混合物もまた使用され得る。非ハロゲン化溶媒は、得られるバリア材料がハロゲン化物を含まないことが所望される場合に好ましい。樹脂はまた、水性媒質中に存在し得る。すなわち、非ゲル化アミン官能性高分子樹脂は、水性溶液または水性分散液であり得る。例えば、コーティングを硬化するのに使用されるポリエポキシドが、水溶性ポリエポキシド(例えば、ブタンジオールのような脂肪族ジオールのポリグリシジルエーテル)である場合、非ゲル化アミン官能性高分子樹脂は、水溶液として使用され得る。あるいは、水不溶性ポリエポキシドの場合、非ゲル化アミン官能性高分子樹脂は、ギ酸、乳酸、または酢酸のような有機酸、あるいは塩酸またはリン酸のような無機酸で中和される十分なアミン基を有し得、非ゲル化アミン官能性高分子樹脂の水性媒体への可溶化を可能にする。有機酸が好適に使用される。
【0051】
本発明は、さらにバリア材料から形成されるパッケージ材料および容器、またはバリア材料を含有するパッケージ材料および容器に関する。このようなパッケージ材料および/または容器は、以下の特性のいくつかまたは全てを有することが所望される:(1)低い酸素透過性(例えば、食物のようなパッケージ内容物の外部酸素からの保護のため)、(2)低い二酸化炭素透過性(例えば、容器内の二酸化炭素ガスの保持のため)、(3)多層パッケージ材料または多層容器の形成に使用されるガス透過性高分子材料への良好な接着性、(4)高湿度条件下での透過性の実質的な変化に対する耐性、(5)良好な可撓性、(6)高い耐衝撃性、(7)熱に敏感な基材(例えば、特定のガス透過性高分子材料)との使用のための低い加工温度および硬化温度、(8)高い光沢、および(9)良好な透明度。さらに、本発明のパッケージ材料または容器に使用されるバリア材料は、ハロゲン化物を含まないとして特徴付けられ得、または好ましくは特徴付けられる。
【0052】
本発明のパッケージ材料および容器において、本発明のコーティング組成物から形成されるバリア材料は、従来のパッケージ材料に使用される任意の高分子材料(例えば、ポリエチレンまたはポリプロピレンのようなポリオレフィン、ポリ(エチレンテレフタレート)のようなポリエステル、ポリカーボネートなど)と組み合わせて使用され得る。例えば、ポリオレフィンおよびポリカーボネートのような多くの高分子材料は、非常にガス透過性であることが知られている。本明細書中で使用する用語「ガス透過性」とは、このような高分子材料が、バリア材料のガス透過性よりも大きなガス透過性(通常、少なくとも2倍の大きさ)を有することを意味する。ガス透過性高分子材料は、一般に酸素に敏感な食物または飲料のパッケージとして、あるいは炭酸飲料のパッケージのための使用に対してより制限されている。本明細書中に記載されるバリア材料は、ポリオレフィンまたはポリカーボネートのような高分子材料と組み合わせての使用に特に適切である。ポリオレフィンおよびポリカーボネート材料は、酸素透過性および二酸化炭素透過性の両方(すなわち、一般に、それぞれ23℃、相対湿度0で1気圧の酸素または二酸化炭素分圧差下で、1mil厚のサンプル、100平方インチを24時間かけて透過する酸素が100立方センチメートル(cc)(100cc-mil/100in2-日-気圧)より大きな値、および二酸化炭素が250ccより大きな値)を有する。本発明の容器またはパッケージ材料はまた、例えば、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレンコポリマー、ポリアミド、ポリフルオロカーボンのような1種以上の他の高分子材料、およびこのような材料のブレンドまたは組み合わせを含み得る。
【0053】
バリア材料は、溶媒または水性ベース熱硬化性コーティング組成物のいずれかとして高分子材料(例えば、パッケージ材料または容器)に、吹き付け、ロール塗り、浸漬、はけ塗りなどのような任意の従来の方法により塗付され得る。吹き付け塗付またはロール塗付が好ましい。例えば、硬化性コーティング成分を塗付するための従来の吹き付け技術および装置が使用され得る。
【0054】
一般に、塗付のために準備されるアミン官能性高分子樹脂の溶液は、予備反応付加体のアプローチを使用する実施態様については、約15重量%〜約50重量%、好ましくは約25重量%〜約40重量%の範囲の樹脂固形分重量%を有する。より高い重量%の固形分は、特に吹き付け塗りの場合、塗付を困難にし得るが、他方、より低い重量%だと、熱硬化工程中により大量の溶媒の除去を必要とする。ポリアミンとポリエポキシドとの直接反応を使用する実施態様については、50%を越える固形分含量が首尾良く塗付され得る。
【0055】
本発明のコーティング組成物は、顔料、エポキシ−アミン反応を伴うコーティング組成物のための触媒、シリコーンまたは界面活性剤を包含する他の添加剤をさらに含有し得る。例えば、顔料の添加は、得られるバリア材料のガス透過性をさらに減少し得る。ガス透過性を減少するのに有用な顔料の中には、二酸化チタン、雲母、シリカ顔料、タルクおよびアルミニウムまたはガラスの微粒子(例えば、フレーク)が包含され得る。雲母、アルミニウムフレークおよびガラスフレークは、このような顔料がプレート様構造であるため好適であり得る。一般に、顔料がコーティング組成物に含まれる場合、顔料と結合剤との重量比は、約1:1、好ましくは約0.3:1、そしてより好ましくは約0.05:1であり、結合剤の重量はコーティング組成物中のポリアミン−ポリエポキシド樹脂の総固形分重量である。
【0056】
シリコーンは、ガス透過性高分子表面の湿れを促進するために本発明のコーティング組成物に含まれ得る。適切なシリコーンは、ポリジメチルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサンなどの種々の有機シロキサンを包含する。SF-1023シリコーン(General Electric Co.から入手可能なポリメチルフェニルシロキサン)、AF-70シリコーン(GeneralElectric Co.から入手可能なポリジメチルシロキサン)、およびDF-100 Sシリコーン(Mazer Chemicals(PPG Industries,Inc.の一部門)から入手可能なポリジメチルシロキサン)が典型的である。このようなシリコーンは、組成物の総樹脂固形分を基準にして、約0.01重量%〜約1.0重量%の量でコーティング組成物に添加され得る。
【0057】
界面活性剤は、本発明の水性ベースコーティング組成物に含まれ得る。例えば、非ゲル化アミン官能性高分子樹脂が水性溶液である場合である。このような界面活性剤は、一般に任意の適切な非イオン性またはアニオン性界面活性剤であり得、そして溶液の総重量を基準にして約0.01重量%〜約1重量%のレベルで使用され得る。
【0058】
コーティング組成物に含まれ得る触媒は、一般にエポキシ−アミン反応物のために使用される触媒であり、例えばジヒドロキシ芳香族(例えば、レゾルシノール)、亜リン酸トリフェニル、硝酸カルシウムなどである。
【0059】
バリア材料の層を形成するための基材への熱硬化性コーティング組成物の塗付において、コーティング組成物の成分(例えば、ポリエポキシドおよび非ゲル化アミン官能性高分子樹脂)は、最初に十分に混合され、次いで吹き付けのような適切な方法により塗付される。混合後、コーティング組成物はまた、硬化および透明度を改良するために塗付前に約5分〜約60分の時間(摂取時間という)保持され得る。この摂取時間は、一般にポリアミンが予備反応させた付加体である場合または溶媒が2-ブトキシエタノールである場合には省略され得る。コーティング組成物の塗付後、室温程度の低温(すなわち、約70oF)で、数時間から数日またはそれ以上かけて徐々に硬化させることにより硬化され得る。しかし、このような低温硬化は、商業生産ラインで所望されるより遅く、そして硬化したコーティングから溶媒を除去するのに有効ではない。従って、コーティングは、プラスチック基材を歪ませることなく可能な限りの高温で、かつコーティングから特定の溶媒を有効に追い出すに十分に高温で加熱することにより硬化させることが好ましい。比較的「遅い」溶媒、すなわち比較的低い蒸発速度を有する溶媒にとって、約130oF〜約230oF、好ましくは約160oF〜約200oFの温度で約1分〜約60分が適切であり得る。比較的「速い」溶媒、すなわち比較的高い蒸発速度を有する溶媒にとって、100oF〜160oF、好ましくは約120oF〜150oFの範囲の温度が適切であり得る。熱硬化性コーティング組成物は、単一層として塗付および硬化され得、または多重層として、各連続層から溶媒を除去するための複数の加熱工程を用いて塗付され得る。
【0060】
本発明の多層パッケージ材料は、少なくとも1層のガス透過性高分子材料の層および少なくとも1層の本明細書中で記載される硬化反応生成物であるバリア材料の層を有する。1つの実施態様において、バリア層を含む積層体は、例えば、ガス透過性高分子材料の第1の層へのコーティング組成物の吹き付け塗りにより形成され得る。その後、同様のまたは異なるガス透過性高分子材料の第2の層が、バリア層上に付与されて積層体を形成し得、そして前述したように加熱され得るかまたは、必要に応じて加圧下で加熱され得る。
【0061】
本発明の多層パッケージ材料の実施態様(ここでポリプロピレン(または任意の他のポリオレフィン)がガス透過性高分子材料である)において、ポリプロピレンの表面は、好ましくは表面張力を増加するために、例えば、火炎処理、コロナ処理など(これらの全ては当業者に周知である)により処理される。このような処理は、プラスチックフィルムおよび容器のための表面処理に関してPinnerら、Plastics: Surface and Finish, Butterworth & Co.Ltd.(1971)、第3章に詳細に記載されており、そしてこの表面処理の説明は本明細書中に参考として援用される。このような処理は、ポリオレフィン材料へのバリア層のより良好な接着を促進する。
【0062】
上記の多層パッケージ材料は、従来のプラスチック加工技術により容器に成形され得る。例えば、シート、フィルム、および他の構造が、周知の積層または押出し技術により成形され得る。多層パッケージ材料から製造されるフィルムまたはシート材料は、包装材、袋などのような物品に成形され得る。
【0063】
あるいは、少なくとも1層のガス透過性高分子パッケージ材料を含む容器は、任意の所望の形状に予備成形され得、次いで少なくとも1層の本発明のバリアコーティングが、多層パッケージ材料に関して記載したのと同様の方法で予備成形した容器に付与され得る。本発明の多層容器および多層パッケージ材料は、理想的には食物、飲料、医薬および同様の物質のパッケージに適する。本発明のパッケージ材料および容器の最も重要な利点は、容器壁を通したガス輸送の全体としての減少である。この減少を達成するためには、容器の全表面がバリア材料で被覆される必要はない。本発明の好適な実施態様のバリア材料は、透過性を顕著に減少し得るので、例えば、容器の表面のわずか約50%以下をコーティングすることで製品の保存寿命を大幅に増加させ得る。表面の一部分のみのコーティングが有利である。なぜなら、コーティングプロセスは、容器の垂直側壁のような比較的コーティングし易い領域のみにバリア材料を付与することにより単純化され得るからである。バリア材料はまた、容器のラベルまたは他の不透明材料により被覆される領域に限定され得、それによってバリア材料に対する外観の要求が低減される。未コーティングのパッケージ材料の透過性が低くなると、本発明のバリア材料でコーティングされる必要のある範囲が小さくなる。例えば、ポリ(エチレンテレフタレート)の容器は、十分に良好なバリア特性を有するため、バリア材料の部分的なコーティングに特に適切である。
【0064】
本発明の多層パッケージ材料および容器は、それぞれのガス透過性高分子材料とバリア材料との間に接着剤、結着層(tie layer)などの使用を必要としない。
【0065】
本発明のバリア材料は、種々のガス透過性高分子材料のコーティングとして有用であると記載しているが、このようなバリア材料は、ガス透過性高分子材料以外にも使用され得、そして例えば、酸素との接触を最小にしようとする場合に、例えば、金属表面のコーティングとして有用であり得ることが本明細書を読む人々に容易に明らかである。このようなバリア材料はまた、他の高分子材料なしで使用され得る。例えば、このようなバリア材料は、例えば、冷蔵庫および/または冷凍庫での食物の家庭用貯蔵のための市販のフィルムのような薄いフィルムに成形され得る。
【0066】
本発明の硬化したバリアコーティングは熱硬化性ポリマーであることが利点である。これは食物および飲料容器にとって好ましく、運送中の隣接する容器の摩擦が、バリアコーティングの局所的軟化およびコーティングへの起こり得る損傷を引き起こさない。
【0067】
本発明は、以下の実施例により具体的に記載されるが、この実施例は例示としてのみ意図される。なぜなら多数の改変および変更が当業者には明らかだからである。
【0068】
付加体A〜付加体Pの以下の説明は、非ゲル化アミン官能性高分子付加体の調製例である。これは次の節で記載されるようなポリエポキシドとの反応によりバリア材料を形成するために続いて硬化される。
【0069】
付加体A
非ゲル化エポキシ−アミン付加体を以下のように調製した。反応容器に1mol(136g)のMXDAおよび835gの1-メトキシ-2-プロパノールを仕込んだ。混合物を窒素雰囲気下で100℃まで加熱し、そして0.857mol(322g)のEPON828と1980gの1-メトキシ-2-プロパノールとの混合物を1時間かけて加えた。反応混合物を100℃で合計約2時間保持した。次いで、混合物を70℃まで冷却し、そして減圧ストリップした。得られた物質は、約3100の理論分子量、110℃で1時間測定して29.0パーセント固形分、および約200の理論アミン水素当量重量を有していた。
【0070】
付加体B
非ゲル化エポキシ−アミン付加体を以下のように調製した。反応容器に0.5mol(68g)のMXDAおよび418gの1-メトキシ-2-プロパノールを仕込んだ。混合物を窒素雰囲気下で100℃まで加熱し、そして0.429mol(112g)のHeloxy69(レゾルシノールジグリシジルエーテル)と685gの1-メトキシ-2-プロパノールとの混合物を1時間かけて加えた。反応混合物を100℃で合計約2時間保持した。次いで、混合物を70℃まで冷却し、そして減圧ストリップした。得られた物質は、約2510の理論分子量、110℃で1時間測定して52.1パーセント固形分、および約157の理論アミン水素当量重量を有していた。
【0071】
付加体C
非ゲル化エポキシ−アミン付加体を以下のように調製した。反応容器に1mol(136g)のMXDAおよび408gの1-メトキシ-2-プロパノールを仕込んだ。混合物を窒素雰囲気下で100℃まで加熱し、そして0.25mol(100g)のTetradXと300gの1-メトキシ-2-プロパノールとの混合物を1時間かけて加えた。反応混合物を100℃で合計約2時間保持した。得られた物質は、約900の理論分子量、25.0%の理論パーセント固形分、および約78の理論アミン水素当量重量を有していた。
【0072】
付加体D
非ゲル化エポキシ−アミン付加体を以下のように調製した。反応容器に0.875mol(119g)のMXDAおよび674gの1-メトキシ-2-プロパノールを仕込んだ。混合物を窒素雰囲気下で100℃まで加熱し、そして0.25mol(100g)のTETRADXと567gの1-メトキシ-2-プロパノールとの混合物を2時間かけて加えた。反応混合物を100℃で合計約2時間保持した。次いで、混合物を70℃まで冷却し、そして減圧ストリップした。得られた物質は、約1670の理論分子量、110℃で1時間測定して29.8パーセント固形分、および約87の理論アミン水素当量重量を有していた。
【0073】
付加体E
非ゲル化エポキシ−アミン付加体を以下のように調製した。反応容器に0.5mol(68g)のMXDAおよび418gの1-メトキシ-2-プロパノールを仕込んだ。混合物を窒素雰囲気下で100℃まで加熱し、そして0.227mol(88g)のDEN-431エポキシと538gの1-メトキシ-2-プロパノールとの混合物を2時間かけて加えた。反応混合物を100℃で合計約2時間保持した。次いで、混合物を70℃まで冷却し、そして減圧ストリップした。得られた物質は、約700の理論分子量、110℃で1時間測定して26.9パーセント固形分、および約104の理論アミン水素当量重量を有していた。
【0074】
付加体F
非ゲル化エポキシ−アミン付加体を以下のように調製した。反応容器に1mol(189g)のテトラエチレンペンタミンおよび1161gの1-メトキシ-2-プロパノールを仕込んだ。混合物を窒素雰囲気下で100℃まで加熱し、そして0.857mol(322g)のEPON-828エポキシと1979gの1-メトキシ-2-プロパノールとの混合物を1時間かけて加えた。反応混合物を100℃で合計約2時間保持した。次いで、混合物を70℃まで冷却し、そして減圧ストリップした。得られた物質は、約3600の理論分子量、110℃で1時間測定して30.1パーセント固形分、および約98の理論アミン水素当量重量を有していた。
【0075】
付加体G
非ゲル化エポキシ−アミン付加体を以下のように調製した。反応容器に1mol(189g)のテトラエチレンペンタミンおよび1161gの1-メトキシ-2-プロパノールを仕込んだ。混合物を窒素雰囲気下で100℃まで加熱し、そして0.25mol(100g)のTETRADXエポキシと614gの1-メトキシ-2-プロパノールとの混合物を1時間かけて加えた。反応混合物を100℃で合計約2時間保持した。次いで、混合物を70℃まで冷却し、そして減圧ストリップした。得られた物質は、約1160の理論分子量、110℃で1時間測定して32.7パーセント固形分、および約48の理論アミン水素当量重量を有していた。
【0076】
付加体H
非ゲル化エポキシ−アミン付加体を以下のように調製した。反応容器に1mol(103g)のジエチレントリアミンおよび240gの1-メトキシ-2-プロパノールを仕込んだ。混合物を窒素雰囲気下で100℃まで加熱し、そして0.25mol(100g)のTETRADXと233gの1-メトキシ-2-プロパノールとの混合物を2時間かけて加えた。反応混合物を100℃で合計約2時間保持した。得られた物質は、約800の理論分子量、30.0%の理論パーセント固形分、および約51の理論アミン水素当量重量を有していた。
【0077】
付加体I
非ゲル化エポキシ−アミン付加体を以下のように調製した。反応容器に1mol(60g)のエチレンジアミンおよび140gの1-メトキシ-2-プロパノールを仕込んだ。混合物を窒素雰囲気下で100℃まで加熱し、そして0.25mol(100g)のTETRADXと233gの1-メトキシ-2-プロパノールとの混合物を2時間かけて加えた。反応混合物を100℃で合計約2時間保持した。得られた物質は、約650の理論分子量、30.0%の理論パーセント固形分、および約53の理論アミン水素当量重量を有していた。
【0078】
付加体J
この付加体は、Mitsubishi Gas Chemical Co.から「GASKAMINE 328」として市販されており、そしてメタキシリレンジアミン対エピクロロヒドリンのモル比が約2:1のメタキシリレンジアミンとエピクロロヒドリンとの付加体である。
【0079】
付加体K
エチレンジアミン(240g、4mol)、水酸化ナトリウム(80g、2mol)、および水(80g)を、メカニカルスターラー、熱電対、窒素導入管、および滴下漏斗を備えた2リットルのフラスコに仕込んだ。エピクロロヒドリン(185g、2mol)を、室温で1時間かけてフラスコに滴下した。反応温度を冷水浴で60℃未満に制御した。添加終了後、反応混合物を100℃で3時間保持した。フラスコを30℃まで冷却し、そして水を低真空でフラスコから取り除いた。反応混合物を一晩放置し、その後生成物を、塩を遠心分離することにより単離した。
【0080】
付加体L
ジエチレントリアミン(412g、4mol)、水酸化ナトリウム(80g、2mol)、および水(80g)を、メカニカルスターラー、熱電対、窒素導入管、および滴下漏斗を備えた2リットルのフラスコに仕込んだ。エピクロロヒドリン(185g、2mol)を、室温で3時間かけてフラスコに滴下した。反応温度を冷水浴で60℃未満に制御した。添加終了後、反応混合物を110℃で3時間保持した。反応混合物を室温まで冷却し、そしてn-ブタノールと水との1:1混合物の500ミリリットルをフラスコに加え、そして室温で30分間撹拌した。有機層を分液漏斗で分離し、そして無水硫酸マグネシウムで乾燥した。有機層中のn-ブタノールを減圧蒸留により取り除き、そしてフラスコ中の生成物を集めた。
【0081】
付加体M
この付加体は、メタキシリレンジアミンとフェノールおよびホルムアルデヒドとの反応から得られるマンニッヒ塩基である。付加体Mは、Pacific Anchor Chemical Corporation division of Air Products and Chemicals, Inc.から「ANCAMINE 1856」として市販されている。
【0082】
付加体N
この付加体は、ジエチレントリアミンとフェノールおよびホルムアルデヒドとの反応から得られるマンニッヒ塩基である。付加体Nは、Pacific Anchor Chemical Corporation division of Air Products and Chemicals, Inc.から「ANCAMINE 1637」として市販されている。
【0083】
付加体O
この付加体は、脂環式アミンとフェノールおよびホルムアルデヒドとの反応から得られるマンニッヒ塩基である。付加体Oは、Pacific Anchor Chemical Corporation division of Air Products andChemicals, Inc.から「ANCAMINE MCA」として市販されている。
付加体P
非ゲル化エポキシ−アミン付加体を以下のように調製した。反応容器に0.5mol(94.5g)のテトラエチレンペンタミンおよび221gの1-メトキシ-2-プロパノールを仕込んだ。混合物を窒素雰囲気下で100℃まで加熱し、そして0.227mol(88g)のDEN-431エポキシと204gの1-メトキシ-2-プロパノールとの混合物を2時間かけて加えた。反応混合物を100℃で合計約2時間保持した。得られた物質は、約800の理論分子量、110℃で1時間測定して28.9パーセント固形分、および約61の理論アミン水素当量重量を有していた。
【0084】
コーティング調製および試験
酸素透過性試験のためのサンプルを、上記の各付加体から調製し、そして種々のポリエポキシドで硬化させた。結果を表Iに示す。ほとんどの実施例において、付加体は、エポキシノボラック樹脂である、Dow Chemical Company製の「DEN-431」、またはメタキシリレンジアミンのテトラグリシジル反応生成物である、Mitsubishi Gas Chemical Company製の「TETRAD X」のいずれかで硬化させた。硬化用ポリエポキシドが「DEN-431」であった各実施例では、ポリエポキシドは、付加体中の活性アミン水素の当量と硬化用エポキシド中のエポキシ基の当量との比が2.8:1であるような量で使用された。「TETRADX」を硬化用ポリエポキシドとして使用した場合、比は2.3:1であった。実施例19では、硬化用ポリエポキシドは、Shell Chemical Company製のビスフェノールAのジグリシジルエーテルである、「EPON828」であった。この場合、硬化比は3:1であった。実施例28では、硬化用ポリエポキシドは、Shell Chemical Company製のビスフェノールFのジグリシジルエーテルである、「EPON862」であった。この場合、硬化比は3:1であった。実施例20では、硬化用ポリエポキシドは、Shell Chemical Company製のレゾルシノールのジグリシジルエーテルである、「HELOXY(R)69」であった。この場合、硬化比は2.3:1であった。実施例21では、硬化用ポリエポキシドは、ShellChemical Company製のフタル酸のジグリシジルエステルである、「EPI-REZ(R) A-100」であった。この場合、硬化比は2.1:1であった。実施例27では、硬化用ポリエポキシドは、Ciba-Geigy Corporation製のトリグリシジルパラ−アミノフェノールである、「Epoxy Resin 0500」であった。この場合、硬化比は2.3:1であった。
【0085】
各コーティング例の調製は、1-メトキシ-2-プロパノール(Dow Chemical Company製の「DOWANOL(R)PM」)、少量の水(樹脂固形分の約3%〜5%)、およびGeneral Electric製の少量の「SF-1023」シリコーン界面活性剤(樹脂固形分に基づいて約0.2%)中に上記のポリアミン付加体A〜Pの1つをサンプル容器に加える工程を包含した。サンプルを均一になるまで手で撹拌し、そして上述のNH/エポキシ比を与えるに十分な量のポリエポキシドを加えた。サンプルを均一になるまで再び撹拌し、次いで透明なフィルムが得られ得るように十分な摂取を可能にするに十分な時間(約1時間)放置した。十分な1-メトキシ-2-プロパノールを入れて、35〜40%固形物のコーティング組成物を得た。0.028インチの巻き線型バー(wire wound bar)を使用して、サンプルを2milポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に塗り広げた。コーティングしたフィルムサンプルを、ラボラトリーオーブン中、145oFで30分間加熱して、約0.5mil〜0.6milの硬化したコーティングを得た。コーティングサンプルを、試験前に室温で4日間エージングした。酸素透過速度を、相対湿度0%および相対湿度20%〜25%の結果についてはOXTRAN1000を用いて、そして相対湿度50%〜55%および相対湿度70%〜75%の結果についてはOXTRAN 2/20を用いて30℃で測定した。OXTRAN1000からの相対湿度20%〜25%の結果を、装置の試験ガスバブラー管の水を用いて得た。相対湿度を、名目上0%、25%、50%、および75%として表に報告する。これらのコーティングサンプルについての酸素透過定数を、以下の式を用いてコーティングしたPETサンプルに対する結果から計算した:
【0086】
【化3】

【0087】
ここで R1=コーティングしたPETの透過速度(cc/100in2/atm./日)
R2=PETフィルムの透過速度(cc/100in2/atm./日)
DFT=コーティング乾燥フィルム厚(mil)
PO2=コーティングの酸素透過定数(cc-mil/100in2/atm./日)
【0088】
【表1】

【0089】
実施例1〜16は、実質的な量のポリエチレンポリアミン基またはビスフェノールA基を包含する、本発明の範囲外の比較例である。実施例17〜21、27、および28は、高い芳香族含量のポリアミンおよびエピクロロヒドリンから生じるオプション(a)型付加体を用いる本発明の実施態様を示す。実施例22〜26は、上記オプション(b)で定義したような選択したポリエポキシドから生じる付加体を用いる本発明の実施態様を表す。実施例29および30は、オプション(c)に従ってノボラックポリエポキシドまたはビスフェノールFポリエポキシドから生じる付加体を用いる本発明の実施態様を表す。実施例31〜36は、オプション(d)のようなマンニッヒ塩基型付加体を含み、実施例32は所望の結果を示す。低い酸素透過性および湿度に対する耐性の特に優れた組み合わせは、実施例18、20、23、25、26、および27に示され得る。
【0090】
より高い相対湿度での透過性定数対NH/エポキシ比
別の系列のポリエポキシド−ポリアミンコーティングを、ポリアミンとポリエポキシドとの種々の比で調製し、そして高相対湿度レベルで酸素透過性について試験した。結果を表IIに報告する。ポリアミン付加体として、この系列において各組成物は、Mitsubishi Gas Chemical Company製の「GASKAMINE328」ポリアミンを使用した。このポリアミンはメタキシリレンジアミンとエピクロロヒドリンとの反応生成物である。組成物の半分において、ポリエポキシドは、エポキシノボラック樹脂である、Dow Chemical Company製の「DEN-431」であった。組成物の他の半分において、ポリエポキシドは、メタキシリレンジアミンのテトラグリシジル反応生成物である、Mitsubishi Gas Chemical Company製の「TETRAD X」であった。以下はこの系列の実施例の代表的なサンプル調製である。
【0091】
酸素透過性試験のサンプルを、8.0g(0.145当量)のGASKAMINE 328、18.0gの1-メトキシ-2-プロパノール、0.2gの水、およびGeneral Electric製の0.04gのSF-1023シリコーン界面活性剤をサンプル容器に加えることにより調製した。サンプルを均一になるまで手で撹拌し、そして9.5g(0.052当量)のDEN-431エポキシ樹脂を加えて、2.8のサンプルNH/エポキシ比を与えた。サンプルを均一になるまで再び撹拌し、次いで透明なフィルムが得られ得るように十分な摂取を可能にするに十分な時間(約1時間)放置した。0.028インチ直径の巻き線型バーを使用して、サンプルを2milポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に塗り広げた。コーティングしたフィルムサンプルを、ラボラトリーオーブン中、145oFで30分間加熱して、約0.5mil〜0.6milの硬化したコーティングを得た。コーティングサンプルを、試験前に室温で4日間エージングした。酸素透過速度を、相対湿度50%〜55%および相対湿度70%〜75%の結果についてOXTRAN2/20を用いて30℃で測定した。コーティングサンプルについての酸素透過定数を、先に示した式から計算した。別のコーティングサンプルを、表示したNH/エポキシ比を達成するために適切な量のポリアミン成分およびポリエポキシ成分および35%〜40%の固形分のサンプルを与えるに十分な1-メトキシ-2-プロパノールを用いて同様の方法で調製および試験した。
【0092】
【表2】

【0093】
表IIのデータが、1.5を越えるNH/エポキシ比で透過性が最小になったことを示すことに注目し得る。過剰量のNH(例えば、3.0を越える比)が、特により高い湿度で増大した透過性を生じることもまた分かり得る。
【0094】
種々のレベルの相対湿度で酸素透過性を測定するための装置が入手しやすいので、上記の実施例の透過性は、酸素に対してのみ与える。二酸化炭素(ならびにいくつかの他のガス)の透過性が、酸素の透過性に対応することが観察されている。本発明のコーティングが非常に低い二酸化炭素透過性を示すことを、実施例51〜56で示し、これらの結果を表IIIに報告する。実施例51〜56の手順は前述の実施例と同様であり、そして上記のいくつかのポリアミン官能性付加体を使用し、そして表示したアミン水素当量とエポキシ基当量との比で表IIIに記載したポリエポキシドで硬化した。二酸化炭素透過性を、相対湿度0%、30℃でMoconPERMATRAN C-IVを用いて測定した。表IIIの二酸化炭素透過定数の単位は、cc-mil/1002inch/atm./日である。
【0095】
【表3】

【0096】
本発明を、本発明の最良の様式を証明するために特定の実施態様に関して記載するが、当業者に公知であるような他の変形および改変が、以下の請求項により定義するような本発明の範囲から逸脱することなく行われ得ることが理解されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
実施例に記載のバリアコーティング。

【公開番号】特開2006−176793(P2006−176793A)
【公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−18119(P2006−18119)
【出願日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【分割の表示】特願平7−525663の分割
【原出願日】平成7年2月7日(1995.2.7)
【出願人】(599087017)ピーピージー インダストリーズ オハイオ, インコーポレイテッド (267)
【Fターム(参考)】