説明

エポシロン調製用キラルヘプチン誘導体、およびこれらの調製方法

本発明は、エポシロン又はエポシロン誘導体の合成に有効な中核的な中間体を製造するための新規な合成方法、こうした中核的中間体を製造するために使用される特定化合物、そして前記化合物の製造方法に関する。用いられた中間体は、式IIおよび式IIIにて示され、式中Rは、水素、アルキルおよび置換されたアルキルから選択され、そしてX1は酸素保護基である。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エポシロン又はエポシロン誘導体の合成に有効な中核的な中間体の製造方法、これらの中核的な中間体の製造に使用される特定化合物、そして前記化合物の製造方法に関する。中間体の重要な製造方法は、入手が容易で且つ安価な開始物質から始まり、エナンチオマー純度が高く化学純度の高い良好な収率の生成物が得られ、そして工業規模の製造が可能なことである。
【0002】
本発明は、天然および合成により修飾されたエポシロン又はエポシロン誘導体の構造単位Bの合成に使用される。エポシロンは、16員環の大員環化合物であり、医薬分野に利用されることがわかった。エポシロンは、Myxobacterium Sorangium Cellosumの培養により単離され、試験された有望な抗腫瘍剤の代表的な種類であり、そして多くのガン細胞株に有効であることが見出された。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
これら化合物の合成研究は、J.Mulzerらによりin Monatsh. Chem. 2000、131、205-238に記載されている。これらの薬剤が、パクリタキセルや他のタキサン(パクリタキセル、D.G.I.Kingston、Chem.Commun.2001、867-880を参照)と生物的に同じ作用形態を有する。しかしながら、さらにエポシロンが、多くの耐細胞株に作用することが見出された(S.J.Stachelらによる、Curr.Phamaceut.Design 2001、7、1277-1290 ; K.-H.Altmann、Curr.Opin.Chem.Biol.2001、5、424-431を参照)。
【0004】
【化1】

【0005】
天然のエポシロンに加えて、文献では、遊離基M、TおよびRのほとんどの部位にて変化する多くの合成エポシロン誘導体を記載している。ほとんどの場合、Mが複素遊離基を表している。天然のエポシロンAの場合、Rは水素を表すがエポシロンBの場合、Rはメチルを表す。
【0006】
天然のエポシロンおよび合成エポシロン誘導体のほとんどの合成は、幾つかの合成単位の結合が関与する。C11-C16断片を示す構造単位Bは、戦略的に重要な構造単位の1であることが判った。従ってエポシロン合成の構造単位Bの経済的に安価な製造方法を開発することが、非常に重要である。
【0007】
ほとんどの場合、保護されたヒドロキシ・ケトン(式I、X1 = 保護基)として構造単位Bを挿入することで、エポシロンが合成される。 C1-C16結合は、Wittig反応により行われ、一方C10-C11結合は、アルドール反応により行われる。すでに両方の反応が、文献に記載されている(K.C.Nicolaouらによる、Tetrahedron 1998、54、7127-7166 ; Angew.Chem.1998,110、85-89 ; Chem.Eur.J.1997、3、1971-1986 ; J.Am.Chem.Soc.1997、119、7974-7991を参照)。
【0008】
【化2】

【0009】
たとえば、可能な構造単位Bの調製は、WO 99/07692 およびWO 00/47584に記載されている。しかしながらそこで示される合成体は、高価なキラル補助剤を使用し、高価であり且つ高価なキラリティーの導入に基づいているため、エポシロン又はエポシロン誘導体の工業規模の製造の使用又は実施容易性がない。
【0010】
さらにWO 98/25929およびK.C.Nicoaouらによる、J.Am.Chem.Soc.1997、119、7974-7991では、キラル補助剤を用いた構造単位Bの面倒な調製が記載されている。さらにこれら調製の不都合なことは、-100℃の反応温度にてキラリティーを導入することである。
さらなる合成法が、Helv.Chim.Acta 1990、73、733-738に記載され、この場合も式 I(X1 = H)の化合物が用いられる。しかしながらこの化合物が、出発物質として、ジテルペンス含むコストの高い合成方法でしか得られず(さらにCHIMIA 1973、27、97-99を参照)、さらにエナンチオマーの純度が、わずか約80乃至85%しか得られない。
【0011】
さらに文献に記載された方法は、幾つかのクロマトグラフ工程を含む精製方法が必要であり、それは溶媒の再構成、環境汚染の回避、高コストなど一般的な多くの技術問題が発生するという製造の観点から、不都合である。
【0012】
低い全収率、空間、低い時間空間収率、そして極めて過剰な試薬のために、構造単位Bを工業的規模で経済的に調製するために当業者に利用可能な方法は何もない。そのため、エポシロンおよびエポシロン誘導体の全合成において、構造単位Bを汎用的な製造用に使用できる中間体の化合物が製造できるよう、工業規模で、そして操業規模にて実施できる方法が必要とされる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の目的は、エポシロンおよびエポシロン誘導体の合成に使用される中間体の製造の新規な合成方法を提供することである。他に公開された合成法と対照的に、新たな経路は、経済的な出発物質から始まり、高いエナンチオマー純度および高い化学的純度、良好な収率にて中間製造物を生成し、工業規模の製造を可能にする。先行技術は、高価なキラル補助剤(幾つかの例で-100℃の温度)、高価な出発物質又は高価な精製方法のいずれかを使用するという不都合がある。そのためのに新しい合成法が、多くの重要な利点を提供する。
【0014】
本発明は、エポシロン又はエポシロン誘導体の全合成に使用される重要な構造単位としての、下記一般式(IA):
【0015】
【化3】

【0016】
(式中、Rは水素、アルキル、および置換されたアルキルから選択され、アルキルが好ましく、そしてX1は、酸素保護基である)
の化合物を製造する合成経路に関する。
【0017】
次に一般式(IA)の化合物を技術的に周知の種々の工程により、エポシロンおよびエポシロン誘導体の合成に使用され得る。
【0018】
さらに本発明は、一般式(IA)の化合物を製造するために使用される下記一般式(II)および(III )の新規化合物、およびこれら新規化合物の製造の本明細書に記載される方法に関する。
【0019】
【化4】

【0020】
(式中RおよびX1は、式(IA)に基づいて上記の与えられた意味と同じ意味を有する。)
【0021】
特に本発明は、一般式(IV)の化合物から開始される式(IA)の化合物の合成(反応順序を参照)に関し、この合成法は、エポシロンの合成に関し文献に見出されるどの合成法にもほとんど関係せず、そして多くの重要な利点を有する。
【0022】
【化5】

(式中、X1は式IAに基づいて与えられた前記意味と同じ意味を有する。)
【0023】
本明細書の記載において、前記および以後記載に使用される一般的な定義は、好ましくは以下の意味を有する。
アルキルは、好ましくは最大12個の炭素原子を含む、直鎖又は分岐鎖のアルキルにて良い。アルキル基の例には、メチル、エチル、n-プロピル、n-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル、n-ノニル、n-デシル、n-ウンデシル、又はn-ドデシル基などの直鎖アルキル、iso-プロピル、iso-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、iso-ペンチル、neo-ペンチル、2-ペンチル・ペンチル、2,2-ジメチル・ブチル、2,3-ジメチル・ブチル、2-メチル・ヘキシル、2,2-ジメチル・ペンチル、2,2,3-トリメチル・ブチル又は2,3,3-トリメチル・ブチル基などの分岐したアルキル基があげられる。特に好ましくは、メチルおよびエチルである。
【0024】
置換されたアルキルの例は、-CH2-ハロゲン又は-C(ハロゲン)3を含み、特に好ましくは-CH2FおよびCF3である。
【0025】
保護基は、トリメチルシリル、tert-ブチル・ジメチルシリル、トリエチルシリル、トリ(iso-プロピル)シリル、ジメチルペンチルシリルなどのシリル保護基、アセチルなどの低級アルカノイル、ベンゾイル、テトラヒドロピラニル、Mom保護基、Mem保護基、ベンジル又は4-メトキシベンジルなどの置換されたベンジル遊離基、又は文献から知られた他の保護基の群から選択される(たとえば、T.W.Green、Protective Groups in Organic Synthesis、John Wiley & Sons N.Y.、1981;P.J.Kocienski,Protecting Groups、Georg Thieme Verlag Stutgart、1994を参照)。好ましくはテトラヒドロピラニル(THP)およびtert-ブチルジメチルシリル(TBDMS)であり、特に好ましくはTHPである。
【0026】
本発明を構成するプロセス工程およびその好ましい観点は、好ましいものとして以下に記載されている。
反応順序は、一般式(IV)の化合物から開始し、下記一般式(V):
RCHO V
(式中、Rは前に定義したとおりである)
のアルデヒドと、アルデヒドへのアセチレンの付加のために当業者に周知の反応条件下で、反応させる。
【0027】
(Shun、Annabelle L.K.Shiらによる、J.Org.Chem.、2003、68、4、1339-1347;Mukai、ChisatoらによるJ. Org.Chem.、2003、68、4、1376-1385;Clark、J.Stephanらによる、Org.Lett.、2005、5、1、89-92;Chun,Joingらによる、J. Org.Chem.、2003、68、2、348-354;Nomura,Izumiらによる、Org.Lett.、2002、4、24、4301-4304;Nielsen,Thomas Rらによる、J. Org.Chem.、2002、67、18、6366-6371;Koyota,Hiromasaらによる、Syn.Lett.、2003、2、219-220;Baileyらによる、J.Chem.Soc.、1957、3027、3031;Nsylerらによる、J.Chem.Soc.、1955、3037、3045;Moureu,Bull.Soc.Chim.Fr.、33、155;Theusらによる、Helv.Chim.Acta、1955、38、239,249;Gredy,C.R.Hebd.Seances Acad.Sci.、1934、199,153;Ann.Chim.(Paris)、<11>4、1935、5,36を参照)。
【0028】
好ましくはアルキンを、BuLi、LDA又はLi、Na、K-HMDSなどの強塩基、又はMeMgCl、MeMgBr、又はイソプロピル-MgBrなどのグリニヤ溶液と共に、メチル-tert-ブチルエーテル、2-メチル-THF、ジオキサン、トルエン又はTHFなどの非プロトン性溶媒中で、-78乃至0℃の温度にて脱プロトン化し、そして次に前記アルデヒドに添加し、上記一般式(III)の化合物を生成する;次に一般式(III)の化合物を、当業者周知の酸化剤、
【0029】
(たとえば、Shun,Annabelle L.K.ShiらによるJ. Org.Chem.、2003、68、4、1330-1347;Clark,J.Stephenらによる、Org.Lett.、2003、5、1、89-92;Chun,JiongらによるJ. Org.Chem.、2003、68、2、348-354;Quesnelle,Claude Aらによる、Bioorg.Med.Chem.Lett.,2003、13、3、519-524;Barriga,Susanaらによる、J. Org.Chem.、2002、67、18、6439-6448;Suzuki,KeisukeらによるOrg.Lett.、2002、4、16、2739-2742;Claeys,Sandraらによる、Eur. J. Org.Chem.、2002、6、1051-1062;Tanaka,Katsunaoらによる、Bioorg.Med.Chem.Lett.,2002、12、4、623-628;Rodriguez,Davidらによる、Tetrahedron Lett.、2002、43、15、2717-2720 ; Tanaka,Koichiらによる、J.Chem.Soc.Perkin Trans.、2002、1,6、713-714;Hao,Junliangらによる、Tetrahedron Lett.、2002、43、1,1-2;HiegelらによるSynthetic Commun.、1999、22(11)、1589;De Micoらによる、J.Org.Chem.1997、62、6974を参照)、
【0030】
特にTHF中の二酸化マンガン、TEMPO酸化、トリクロロイソシアヌル酸又はSwern酸化条件下にて酸化し、前記一般式(II)の化合物を得、次に一般式(II)の化合物の三重結合を、当業者に周知の方法を用いて還元する(たとえば、CrombleらによるJ.Chem.Soc.、1958、4435,4443;Braudeによる、J.Chem.Soc.、1946、52;Fazio,Fabioらによる、Tetrahedron Lett.、2002、43、5、811-814;Gonzalez、Isabel CらによるJ.Amer.Chem.Soc.、2000、122、38、9099-9108;Brimble、Margaret Aらによる、Aust.J.Chem.2000、53、10、845-852を参照)、
【0031】
好ましくはこの還元は、THF中での炭素上Pdを用いて、および酢酸エステル、メタノール、エタノール、イソプロパノール、2-メチル-THF、などの低級アルコールの存在下で、0〜50℃の温度、5〜10barの圧力にて、そして1〜10時間、触媒的水素付加にて行い、一般式(IA)の化合物を得る。
【0032】
一般式(IV)の化合物は、文献にて知られており、以下のような当業者に周知の方法により調製できる、すなわち:
X1 = TBSに対し:Ireland,Robert Eらによる、Tetrahedron、1997、53、39、13221-13256;Bhatt,UlhasらによるJ.Org.Chem.、2001、66、5、1885-1893;Yan,Jingboらによる、J.Org.Chem.、1999、64、4、1291-1301。
【0033】
X1 = ベンジルに対し:Takle,Andrewらによる、Tetrahedron、1990、46、13/14、4503-4516;Ireland,Robert Eらによる、J.Org.Chem.、1992、57、19、5071-5073;
X1 = tert-ブチルジフェニールシリルに対し:Culshaw,Davidらによる、Tetrahedron Lett.、1985、26、47、5837-5840。
X1 = MOMに対し:Williams,David Rらによる、J.Amer.Chem.Soc.、1089、111、5、1923-1925。
X1 = THPに対し:Baker,Raymondらによる、Tetrahedron Lett.、1986、27、28、3311-3314、Ireland,Robert Eらによる、Tetrahedron、1997、53、39、13221-13256。
【0034】
あるいは、一般式(II)の化合物は、前に記載した一般式(IV)の化合物と一般式(VI):
【化6】

【0035】
(式中、Rは、上記と同様であり、そしてXは、適当な遊離基、好ましくはハロゲン、-OCOR1、OR1、イミダゾール、4-ニトロフェノール、Weinreb残基、-N(R1)2又は混合無水物であり、式中R1はアルキルである)
で表される活性化された酸誘導体との反応により直接に得ることができる。
【0036】
次に、一般式(II)の化合物は、前記反応順序において前記のようにして、一般式(IA)の化合物に変換される。一般式(IV)と(VI)などの化合物の反応は、たとえば、以下の文献に記載されている。
すなわち、Naka,Tadaatsuらによる、Tetrahedron Lett.、2003、44、3、443-446; Nielsen,Thomas Eらによる、J.Org.Chem.2002、67、21、7309-7313 ; Hakogi,Toshikazuらによる、Bioorg.Med.Chem.Lett.、2003、13、4、661-664;Nielsen,Thomas Eらによる、J.Org.Chem.、2002、67、21、7309-7313;およびKnoelker,Hans-Joachimらによる、Tetrahedron、2002、58、44、8937-8946を含む。
【0037】
当業者に知られている二級アルコールの酸化法を用い、
一般式(VII ):
【化7】

【0038】
の化合物を酸化することにより、一般式(VII)の化合物から直接に一般式(IA)の化合物を調製することが、幾つかの例において、都合がよいことが判った(上記引用文献を参照)。
一般式(VII)の化合物は、上記方法により三重結合を還元することにより、一般式(III)の化合物から得られる。
【0039】
その他の選択肢は、一般式(II)の化合物を、対応する一般式(VIII):
【化8】

【0040】
のアルケンに水素化し、次に対応するアルケンを酸化し、次に一般式(IA)の化合物に更に水素付加することであり、あるいはアリルアルコール(VIII)が直接転移する場合、一般式IAの化合物を、以下記載のように得ることができる:
【0041】
すなわちたとえば、Paul、C.R.Hebd.Seances Acad.Scl.、1939、208、1320;Bull.Soc.Chim.Fr.、1941、<5>8、509;およびCheesemanらによる、J.Chem.Soc.、1949、2034;Uma,Ramalingaらによる、Eur.J.Org.Chem.2001、10、3141-3145; Cherkaoul, Hassanらによる、Tetrahedron、2001、57、12、2379-2384;Lee,Donghyunらによる、Org.Lett.、2000、2、15、2377-2380に記載されている。
【0042】
従って、さらに本発明は、上記中間体の製造方法を含むエポシロンおよびエポシロン誘導体の合成方法に向けられる。本発明の更なる観点は、エポシロンおよびエポシロン誘導体の合成のために新規な化合物を使用することである。上記反応を、実施例に示される条件と同様の条件下で行うことが好ましい。以下の例は、本発明の範囲に限定すること意図することなく、本発明を明示することを意図する。
【実施例】
【0043】
実施例 1
a ) (2RS,6S)-6-メチル-7-[(RS)-(3,4,5,6-テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)オキシ]ヘプト-3-イン-2-オル
ヘキサン中2450ml(1.6M)のn-ブチル溶液を、325mlのTHF中(RS)-2-{[(S)-2-メチルペント-4-イン-1-イル]オキシ}-3,4,5,6-テトラヒドロ-2H-ピランの650g(3.566mol)の溶液に、−10℃にて滴加した(Ireland,Robert Eらによる、Tetrahedron、1997、53、39、13221-13256に従って調製)。次に1200mlのTHF中で310gのアセトアルデヒド溶液を、滴加する。
【0044】
30分後、3250mlのMTBE(メチル-tert.ブチルエーテル)を添加し、そして3250mlの10%のaq NH4CL溶液を添加し、さらに10分間攪拌する。有機相を、1300mlのH2Oにて各2回洗浄し、さらに真空濃縮にて乾燥する。930gの生成物が得られる。得られた生成物を直接後の工程に使用する。
【0045】
収率: 約100%(DC定量により)
元素分析
計算値 C 68.99 H 9.80
実測値 C 68.75 H 10.03
1H-NMR(CD2Cl2)、400MHz
1H(ppm)/H数
【0046】
1.00(3H)
1.4(2H)
1.50-1.83(6H)
1.92(1H)
2.15+2.33(2H)
3.25+3.6(2H)
3.45+3.85(2H)
4.48(1H)
4.56(1H)
【0047】
b ) (S)-6-メチル-7-[(RS)-(3,4,5,6-テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)オキシ]ヘプト-3-イン-2-オン
600mlのTHF中に溶解した(2RS,6S)-6-メチル-7-[(RS)-(3,4,5,6-テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)オキシ]ヘプト-3-イン-2-オルの300g(1.3255mol)溶液を、2250mlのTHF中1500gの二酸化マンガンの懸濁液に攪拌しながら添加し、その攪拌処理を室温にて48時間続ける。次に懸濁液をシリカゲル上でろ過し、そして溶媒を真空下にて取り除き、280gの生成物が得られる。
【0048】
収率: 理論値の94.1%
元素分析
計算値 C 69.61 H 8.99
実測地 C 69.42 H 9.16
1H-NMR(CD2Cl2)、400MHz
1H(ppm)/H数
【0049】
1.03(3H)
1.5-1.85(6H)
2.04(1H)
2.3(3H)
2.35+2.53(2H)
3.2-3.3+3.6-3.65(2H)
3.5+3.8(2H)
4.55(1H)
【0050】
c ) (S)-6-メチル-7-[(RS)-(3,4,5,6-テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)オキシ]ヘプタン-2-オン
(S)-6-メチル-7-[(RS)-(3,4,5,6-テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)オキシ]ヘプト-3-イン-2-オンの50g(222.9mmol)溶液、および400mlのTHF中で5gの炭素上パラジウム(10%のPd/C)を、室温にて8barの水素で1時間水素添加に付する。次に触媒をろ取し、わずかな溶媒にて再度洗浄し、そして溶媒を真空にて取り除き、50.9gの生成物が得られる。
【0051】
収率: 理論値の約100%(DC定量により)
元素分析
計算値 C 68.38 H 10.59
実測地 C 68.18 H 10.71
1H-NMR(CDCl3)、400MHz
1H(ppm)/H数
【0052】
0.91/0.93(3H)
1.0-1.9(11H)
2.13(3H)
2.42(2H)
3.19(1H)
3.4-3.6(2H)
3.85(1H)
4.55(1H)
【0053】
実施例2
【化9】

【0054】
(S)-6-メチル-7-[(RS)-(3,4,5,6-テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)オキシ]ヘプト-3-イン-2-オン
200mlのTHF中100gの(RS)−2-{[(S)-2-メチルペント-4-イン-1-イル]オキシ}- 3,4,5,6 - テトラヒドロ-2H-ピラン(Ireland,Robert Eらによる、Tetrahedron、1997、53、39、13221-13256)溶液に、439mlのn-ブチルリチウム(ヘキサン中15%)を、−30℃にて滴加した。その溶液を、−30℃にて20分間攪拌し、さらに−20℃にて20分間攪拌した。
【0055】
−30℃まで冷却した後、200mlのTHF中95.6gのN,N-ジメチルアセトアミド溶液を、15分間添加し、そしてその反応混合物を、−20℃にて30分間攪拌した。次にその反応混合物を、1000mlのヘキサンと、700mlの水中クエン酸一水和物104.8gの溶液との予め冷却した(0℃)混合液中に攪拌しながら注いだ。水相を分離し、有機相を300mlの水にて洗浄し、次に100gのシリカゲル上でろ過した。シリカゲルを1000mlのヘキサンにて洗浄した。一緒にした溶出物を、真空蒸留により油状にした。
【0056】
収率: 116.9g(95%)
C13H20O3 MW:224.30g/mol
元素分析
計算値 C 69.61 H 8.99
実測地 C 69.44 H 9.19
1H-NMR(CD2Cl2)、400MHz
1H(ppm)/H数
【0057】
1.03(3H)
1.5-1.85(6H)
2.04(1H)
2.3(3H)
2.35+2.53(2H)
3.2-3.3+3.6-3.65(2H)
3.5+3.8(2H)
4.55(1H)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(IA):
【化1】

(式中Rは、水素、アルキル、および置換されたアルキルから成る群から選択され、そしてX1は酸素保護基である)
で表される化合物の製造方法において、
下記式(IV):
【化2】

(X1は、上記定義と同様である)
の化合物と、下記式(V):
RCHO V
(式中Rは、上記定義と同様である)
のアルデヒドを、適切な塩基の存在下で反応させて、下記式(III):
【化3】

(式中RおよびX1は、上記定義と同様である)、
の化合物を生成せしめ、式IIIの化合物を適切な酸化剤と反応させて、下記式(II):
【化4】

(式中RおよびX1は、上記定義と同様である)
の化合物を生成し、次に化合物IIを適切な還元剤と反応させて、式(IA)の前記化合物生成せしめる、
ことを含む方法。
【請求項2】
下記式(IA):
【化5】

(式中Rは、水素、アルキル、および置換されたアルキルから成る群から選択され、そしてX1は酸素保護基である)
で表される化合物の製造方法において、下記式(IV):
【化6】

(X1は、上記定義と同様である)
の化合物と、下記式(VI):
【化7】

(式中Rは、上記定義と同様であり、Xは、適切な遊離基である)
の活性酸の誘導体とを、適切な塩基の存在下で反応させて、下記(II):
【化8】

(式中RおよびX1は、上記定義と同様である)
の化合物を生成し、そして次に式(II)の化合物と適切な還元剤とを反応させて、式(IA)の前記化合物を生成せしめる、
ことを含む方法。
【請求項3】
下記式(IA):
【化9】

(式中Rは、水素、アルキル、および置換されたアルキルから成る群から選択され、そしてX1は酸素保護基である)
で表される化合物の製造方法において、下記式(III):
【化10】

(RおよびX1は、上記定義と同様である)
の化合物と適切な還元剤とを反応させて、下記式(VII ):
【化11】

(式中RおよびX1は、上記定義と同様である)
の化合物を生成せしめ、そして次に式(VII )の前記化合物と適切な酸化剤とを反応させて、式(I)Aの前記化合物を生成せしめる、
ことを含む方法。
【請求項4】
下記式(IA):
【化12】

(式中Rは、水素、アルキル、および置換されたアルキルから成る群から選択され、そしてX1は酸素保護基である)
で表される化合物の製造方法において、下記式(II):
【化13】

(RおよびX1は、上記定義と同様である)
の化合物と適切な還元剤とを反応させて、下記式(VIII):
【化14】

(式中RおよびX1は、上記定義と同様である)
の化合物を生成せしめ、そして次に式(VIII)の前記化合物と適切な酸化剤とを反応させ、さらに適切な還元剤と反応させて、式(IA)の前記化合物を生成するか、あるいは、式(VIII)の化合物を直接式(IA)の化合物に転移させる、
ことを含む方法。
【請求項5】
Xが、ハロゲン、-OCOR1、OR1、イミダゾール、4-ニトロフェノール、Weinreb残基、-N(R1)2、又は混合無水物であり、そしてR1がアルキルである、請求項2記載の方法。
【請求項6】
Xが、Cl又はBrである請求項2又は5に記載の方法。
【請求項7】
Xが、-OCOMe又はOMeである、請求項2又は5に記載の方法。
【請求項8】
Xが、-N(CH3)2である請求項2又は5に記載の方法。
【請求項9】
Rが、アルキルである請求項1〜8の何れか1項に記載の方法。
【請求項10】
Rが、CH3である請求項1〜9の何れか1項に記載の方法。
【請求項11】
X1が、THP又はTBDMSである、請求項1〜10の何れか1項に記載の方法。
【請求項12】
X1が、THPである請求項1〜11の何れか1項に記載の方法。
【請求項13】
請求項1〜12の何れか1項に記載の方法を含む、エポシロンおよびエポシロン誘導体の合成方法。
【請求項14】
下記式(II):
【化15】

(式中Rは、水素、アルキル、および置換されたアルキルから成る群から選択され、そしてX1は、酸素保護基である)
で表される化合物。
【請求項15】
下記式(III ):
【化16】

(式中Rは、水素、アルキル、および置換されたアルキルから成る群から選択され、そしてX1は、酸素保護基である)
で表される化合物。
【請求項16】
Rがアルキルである、請求項14に記載の化合物。
【請求項17】
RがCH3である、請求項14に記載の化合物。
【請求項18】
X1が、THP又はTBDMSである、請求項14、16および17のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項19】
X1がTHPである、請求項14および16〜18のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項20】
Rがアルキルである、請求項15に記載の化合物。
【請求項21】
RがCH3である、請求項20に記載の化合物。
【請求項22】
X1が、THP又はTBDMSである、請求項15、20および21のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項23】
X1がTHPである、請求項15、および20〜22のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項24】
下記構造式:
【化17】

の化合物。
【請求項25】
下記構造式:
【化18】

の化合物。
【請求項26】
エポシロンおよびエポシロン誘導体を合成するための請求項14〜25のいずれか1項に記載の化合物の使用。

【公表番号】特表2007−533700(P2007−533700A)
【公表日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−508870(P2007−508870)
【出願日】平成17年4月21日(2005.4.21)
【国際出願番号】PCT/EP2005/004492
【国際公開番号】WO2005/101950
【国際公開日】平成17年11月3日(2005.11.3)
【出願人】(300049958)バイエル・シエーリング・ファーマ アクチエンゲゼルシャフト (357)
【Fターム(参考)】