説明

エポチロングリコシド類化合物とそれを活性成分とする配合物及びその応用

【課題】 エポチロングリコシド類化合物や、その調製方法、この化合物を活性成分とする薬物配合物、及びその肝癌、肺癌及び乳腺癌の治療と予防用薬物調製への応用方法を提供する。
【解決手段】 本発明の前記エポチロングリコシド類化合物の構造は式(I)又は(II)の通りであり、肝癌や、肺癌、乳腺癌の予防と治療に使われる薬物配合物であり、その中には、治療有効量の前記化合物と薬学上引き受けられるキャリアを含有し、エポチロングリコシド類化合物は、新しい抗癌薬物の開発と応用のための基盤となっており、本発明の肝癌の予防と治療に使われる薬物配合物には、治療有効量の上記化合物と薬学上引き受けられるキャリアが含まれ、上記薬学上引き受けられるキャリアとは薬学分野での通常の薬物キャリアを言う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエポチロングリコシド類化合物や、その調製方法、当該化合物を活性成分とする薬物配合物、及びその肝癌や肺癌及び乳腺癌の治療・予防用薬物の調製への応用に関わるものである。
【背景技術】
【0002】
エポチロン(Epothilone)は抗腫瘍活性を有するマクロライド類化合物で、例えば、目下、良く見られるEpothilone AとBの構造は次の通りである。
【0003】

【0004】
粘液細菌(Sorangium cellulosum)はミクソコックス目、シストバクター亜目、シストバクター科、シストバクター属に属するスリップ移動ができる単細胞グラム陰性の桿菌で、土壌の中に大量に存在している。この細菌は種類の極めて豊富な二次代謝産物を合成することができ、その代謝産物の化学構造と生物学活性作用メカニズムの多様性は甚だしくストレプトマイセスにも相当している。
【0005】
粘液細菌によって合成されたepothiloneの主な産物はepothilone AとBであるが、その構造から、本品はマルチモジュールのポリケタイド合成酵素とシングルモジュールの非リボソームペプチド合成酵素によって構成された複雑なムルチエンチームの複合体の触媒作用によって合成されるものであると予想できる。
【0006】
1993年にRechenbachとHofleらは、これらの細胞毒性を有する天然産物を発現し、1995年にMerch Research Laboratories研究グループはこれらの化合物がパクリタキセル(TAXOL(登録商標))と類似した作用メカニズムがあることを実証した。1996年になって、Hofleらはepothilone Bの立体化学構造を掲示し、その構造特徴がepoxide/thiazole /ketoneとなっていることから、RechenbachとHofleらは、それを“epothilones”と名付けたのである。
【0007】
Epothiloneはパクリタキセル(TAXOL(登録商標))と類似した、微小管の重合促進及び微小管安定化(microtubule-stabilizing)の作用があり、微小管蛋白の多重合体を誘導して超安定状態を形成することによって、有糸分裂を阻害し、更に腫瘍細胞の繁殖を阻害する。Epothiloneの分子構造はパクリタキセルに比べて、遥かにシンプルで、もっと優れた水溶性と優れた化学修飾の底力を持っている。本品はパクリタキセルに耐薬性のある腫瘍細胞に対しても極めて高い活性を有し、粘液細菌 (Sorangium cellulosum)を源としており、大規模発酵生産の底力を持っている。上記の様々な特徴によって、epothiloneはパクリタキセルのグレードアップ製品と認められており、極めて大きな市場前途を有する新型の抗腫瘍薬物である。
【0008】
目下、すでに数種のepothiloneの類似物がそれぞれの臨床評価段階に入っており、甚だしくは市場にて販売されている。例えば、ixabepilone (aza-epothilone B BMS-247550), BMS-310705 (a water-soluble analog of epothilone B), patupilone (epothilone B, EPO906, developed by Novartis), epothilone D (KOS-862, Kosan/Sloan-Kettering /Roche), ZK-EPO及びC20-desmethyl-C20-methylsulfanyl-Epo B (ABJ879, Novartis)などである。しかし、検索の結果、エポチロングリコシド類化合物に関する報道はまだなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、エポチロングリコシド類化合物や、その調製方法、この化合物を活性成分とする薬物配合物、及びその肝癌、肺癌及び乳腺癌の治療と予防用薬物調製への応用方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の前記エポチロングリコシド類化合物の構造は式(I)又は(II)の通りである。
【0011】

その中、


その中、

【0012】
上記エポチロングリコシド類化合物は、粘液細菌(Sorangium cellulosum ) So0157-2 CCTCC NO:M 208078の固体と/又は液体を発酵させて、その固体又は液体の発酵産物を分離することによって得られる。その中、前記粘液細菌(Sorangium cellulosum ) So0157-2 CCTCC NO:M 208078は、すでに2008年5月27日に中国典型培養物保存センター(武漢大学、中国・武漢)に保存されている。
【0013】
本発明の前記肝癌の予防と治療に使われる薬物配合物には、治療有効量の上記化合物と薬学上引き受けられるキャリアが含まれている。
【0014】
本発明の前記肺癌の予防と治療に使われる薬物配合物には、治療有効量の上記化合物と薬学上引き受けられるキャリアが含まれている。
【0015】
本発明の前記乳腺癌の予防と治療に使われる薬物配合物には、治療有効量の上記化合物と薬学上引き受けられるキャリアが含まれている。
【0016】
上記薬学上引き受けられるキャリアとは薬学分野での通常の薬物キャリアを言い、例えば、希釈剤、水などの賦形剤、澱粉・サッカロースなどの充填剤、繊維素誘導物・アルジネート・ゼラチン及びポリビニルピロリドンなどの粘着剤、グリセリンなどの活水剤、寒天・炭酸カルシウム及び重炭酸ナトリウムなどの崩壊剤、第四級アンモニウム化合物などの吸収促進剤、ヘキサデカノールなどの表面活性剤、カオリン及びベントナイトなどの吸着剤、タルクパウダー・ステアリン酸カルシウムとマグネシウム・及びポリグリコールなどの潤滑剤などを言う。また、配合物の中には香味料や甘味料などのその他補助剤を入れることもできる。
【0017】
本発明の前記化合物は肝癌、肺癌、乳腺癌の予防と治療用薬物の調製に使われる。
【0018】
発明人は本発明の前記化合物が肝癌や、肺癌、乳腺癌に対する予防と治療の作用があることを発現した。試験によると、本発明の化合物は10-6M濃度において、ヒトの肝癌細胞HepG2細胞に対して強い抑制作用があり、ヒトの肺癌A−549細胞と乳腺癌MDA-MB-435細胞に対してもある程度の抑制作用があった。と言うことは、この化合物の活性部位は肝癌や、肺癌及び乳腺癌の化学抑制剤として使えると言うことを説明し、本発明の化合物又は前記化合物の薬物配合物は関連薬物製剤の調製に使えると言うことを説明する。
【0019】
本発明の化合物は配合物の形式で、内服や、鼻吸入、直腸又は腸・胃外の投与方式によって、前記病症の治療が必要とする患者に使用することができる。内服に使われる場合は、錠剤や、粉剤、顆粒剤、カプセル剤などの通常の固体製剤にして使うことができ、水又はオイル懸濁剤、又はシロップやエリキシル剤などの液体製剤にして使うことができる。腸・胃外投与の場合は、注射用の溶液、水又はオイル懸濁剤などにして使うことができる。優先的な形式は錠剤、コーティング錠剤、カプセル剤、栓剤、鼻噴霧剤及び注射剤などであるが、最適なのは腸の特定部位に釈放できる製剤である。
【0020】
本発明の薬物配合物の各種剤型は、薬学分野の通常の生産方法によって調製することができる。例えば、活性成分を一種又は数種のキャリアと混合してから、それを必要とする剤型に作ることである。
【0021】
本発明の薬物配合物の優先的な活性成分の重量含有量は0.1%−99.5%であり、最適な重量含有量は0.5〜95%である。
【0022】
本発明の薬物配合物の使用量は、薬物の投与方式や患者の年齢、体重、治療しようとする疾患の類型と程度などによって変わって来るが、その1日当たりの分量は0.01〜10mg/kg体重で、優先的には0.1〜5mg/kg体重であるが、1回又は数回に分けて使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
では、実施例も合わせて、本専門の技術者たちが全面的に本発明を理解するようにするが、任意の方式によって本発明を制限するのではない。
【実施例1】
【0024】
1.菌株の取得、保護及びエポチロングリコシド類化合物の分離・純化とその抗腫瘍活性のテスト(エポチロングリコシドA-1を例として):
菌採取用土壌サンプルは雲南省の程海湖の岸から採取したもので、次の方法によって菌株を分離する。
【0025】
無菌ろ過紙をCNST平板に敷き、培地のpH値を7.2にし、25μg/ml濃度のろ過除菌アクチジオンを入れて、30℃にて縦置き培養し、2日後に毎日解剖顕微鏡の下で粘液細菌の拡張状況を観察するとともに、得られた粘液細菌の拡張平板を新鮮なCNST培地に移して培養純化する。この時、培地のpH値を10.0にする。それから、30℃にて縦置き培養し、5日後にサブ実体の構造が現れるが、この得られたサブ実体を250μg/mlの硫酸カナマイシンを入れたWCX平板中のすでに滅菌した大腸桿菌の菌糸上に接種し、大多数の細菌を除去し、最後に群落の縁の粘液細菌をCNST(pH10.0)平板のろ過紙上に接種することによって、純化が完了される。平板上のすでに成熟した、純化済み粘液細菌のサブ実体を掻き落として、1.5×3cmの無菌ろ過紙上に移してから、ろ過紙を無菌の菌種保存管内に入れて、乾燥した所にて保管する。このプロセスによって、エポチロンを生成できる耐アルカリ粘液細菌So0157を後続の菌種として、選種・育成する出発菌株が得られる。
【0026】
前記エポチロンを生成できる耐アルカリ粘液細菌So0157を出発菌株とし、繰り返した固体−液体連続間歇培養によって、菌株の誘導と馴らしを行う。
【0027】
その具体的な方法は次の通りである。先ず、菌株をpH9.0の固体CNST培地にて、30℃の下で、逆置き培養を行い、7日後にはサブ実体の形成が観察できるが、菌落縁の比較的新鮮な細胞を選んで、100ml体積の液体VY/2培地に接種して、30℃、200rpmの下で、5日間振動培養し、それから、10mlの発酵液を取って90ml体積の液体VY/2培地に接種して、30℃、200rpmの下で、5日間振動培養し、更に10mlの発酵液を取って90ml体積の液体VY/2培地に接種して、30℃、200rpmの下で、5日間振動培養することによって、1つの誘導・馴らし培養プロセスが完了される。最後に培養された発酵液1mlをpH9.0の固体CNST培地に接種し、30℃の下で、逆置き培養を行うことによって、第2の培養プロセスが始まる。このような方法によって、複数のプロセスを繰り返すことによって、得られた菌株を振盪培養機にて発酵させ、その生長状態の評価とエポチロン産出量の測定によって、目的の菌株を選択したが、最終的に、発明人はその中から産出量が高いエポチロンの粘液細菌So0157-2の菌株を手に入れることができた。この菌株はすでに山東大学微生物国家重点実験室によって粘液細菌と鑑定され、その16S rDNA序列情報はすでに公布(DQ256394.1)され、この菌株はすでに2008年5月27日に中国典型培養物保管センター(武漢大学、中国・武漢)に保管されており、保管センター番号は、粘液細菌(Sorangium cellulosum ) So0157-2 CCTCC NO:M 208078である。
【0028】
上記菌株の分離と誘導・馴らしに使われるCNST配合方法及び調合方法は、KNO3 0.5g/L、Na2HPO4 0.25g/L、MgSO4・7H2O 1g/L、FeCl3 0.001%で、微量元素液1 ml/L、寒天1.5%であるが、必要に応じて異なるpH値に調整する。滅菌後に平板を置き換えて、冷却凝固の後、無菌ろ過紙を貼り付ける。
【0029】
上記菌株純化に使われるWCX培地の構成は重量百分比で示されるが、CaCl2 ・2H2O 0.15%、寒天1.6%、KOHをpH7.0に調整する。滅菌後、25μg/mlの量をろ過除菌済みのアクチジオンに入れる。それから平板を逆置きにし、培地の表面に密集した線を描いて、大腸桿菌の生菌を粘液細菌サブ実体形成の餌とする。大腸桿菌は通常のLB培地にて調製する。
【0030】
上記菌株の誘導・馴らしに使われるVY/2倍値の構成は重量百分比で示されるが、活性酵母0.5%;CaCl2 0.08%;VB12 0.5mg/ml;pH 9.0である。
【0031】
前記微量元素液の配合方法:MnCl2・4H2O 0.1g/L,CoCl2 0.02g/L,CuSO4 0.01g/L,Na2MoO4・2H2O 0.01g/L,ZnCl2 0.02g/L,LiCl 0.005g/L,SnCl2・2H2O 0.005g/L,H3BO3 0.01g/L,KBr 0.02g/L,KI 0.02g/L。
【0032】
発明にの研究によると、粘液細菌(Sorangium cellulosum ) So0157-2 CCTCC NO:M 208078は、エポチロン類化合物によって生じる細菌であるということである。発明人は、固体発酵と液質連用測定及び活性追跡などの方法を利用して、エポチロンA/B/Cなどの化合物を検出しただけでなく、その抽出物から抗癌活性を有するエポチロングリコシドA-1、A-2、B-1、B-2、C-1及びC-2をも分離することができた。
【0033】
発明人は、液質連用器を利用して、エポチロンA/B/Cと対応するグリコシド(エポチロングリコシドA-1、A-2、B-1、B-2、C-1及びC-2)の分子イオンピークを検出した。
【0034】
1.1 粘液細菌(Sorangium cellulosum ) So0157-2 CCTCC NO:M 208078の発酵と化合物の抽出
通常の培養方法によって、固体CNST培地上で、粘液細菌(Sorangium cellulosum ) So0157-2 CCTCC NO:M 208078菌体を選択して、固体M26平板に接種する。それから、30℃の下で、3-4日間培養した後、菌体を掻き取って、50mlの液体M26培地の振盪培養機に接種し、30℃の下で、4-5日間培養して、対数レベルの生長期になると、滅菌ボトル回転機で菌体を均一にミックスし、M26液体培地に接種し換えて、拡大培養を行う。拡大培養が終わると、菌体を固体発酵の種として、無菌水で菌体を洗浄してから、菌体を掻き落として、CNST培地のろ過紙上に均一に塗り、30℃の下で3-4日間培養して、対数レベルの生長期になると、2%の比例によって、ろ過紙上に1層のXAD16樹脂を敷き、30℃の下で、次の代謝段階に完全入るまで、引き続き7-9日間培養する。
【0035】
上記内容と関連するCNSTの配合方法と調合方法:KNO3 0.5g/L、Na2HPO4 0.25g/L、MgSO4・7H2O 1g/L、FeCl3 0.001%、微量元素液1 ml/L、寒天1.5%、pH7.2である。滅菌後平板を置き換えて、冷却・凝固の後無菌ろ過紙を貼り付ける。
【0036】
上記M26培地の配合方法及び調合方法:ジャガイモ澱粉8g/L、酵母エキス2g/L、ペプトン2g/L、ブドウ糖2g/L、MgSO4・7H2O 1g/L、CaCl2 1g/L、EDTA-FeCl3 1 ml/L、微量元素液1ml/L、pH 7.2であり、固体は12g/Lの寒天粉の添加が必要とする。
【0037】
上記微量元素液の配合方法:MnCl2・4H2O 0.1g/L、CoCl2 0.02g/L、CuSO4 0.01g/L、Na2MoO4・2H2O 0.01g/L、ZnCl2 0.02g/L、LiCl 0.005g/L、SnCl2・2H2O 0.005g/L、H3BO3 0.01g/L、KBr 0.02g/L、KI 0.02g/L。
【0038】
7-9日間培養した後の固体平板を収集して、滅菌処理済みのスコップでろ過紙上のM208078菌体とXAD樹脂を掻き取って、ピンセットでシストバクターによって生分解されたろ過紙を剥がし取って、両者を40℃のオーブンに入れて余分の水分を乾燥させてから、メタノールで浸して、浸漬液をろ過紙でろ過し、40℃の下で乾燥させることによって、エポチロングリコシドA-1、A-2、B-1、B-2、C-1及びC-2を含有する抽出物が得られる。
【0039】
10Lの粘液細菌(Sorangium cellulosum ) So0157-2 CCTCC NO:M 208078の菌体及びXAD樹脂を発酵して、メタノールに浸漬し、浸漬液をろ過紙でろ過し、40℃の下で乾燥させることによって、1.25gのエポチロングリコシドA-1、A-2、B-1、B-2、C-1及びC-2を含有する抽出物が得られる。
【0040】
1.2 エポチロングリコシドA-1の分離・純化
上記粘液細菌(Sorangium cellulosum ) So0157-2 CCTCC NO:M 208078の発酵抽出物を中圧の液相カラムクロマトグラフィーで分離(RP-18, 80 g)し、メタノール溶液システムで洗脱する。50%の1500mlから、M1+M2(940mg)が得られ、65% 700 ml (M3, 100 mg) 75% 700 ml (M4, 250 mg)、300mlのメタノール洗浄カラム(M5, 82 mg)、TLC検査、石油エーテル/アセトン(3:2)で展開することによって、流動成分M3とM4の中にはアルカロイド・カラーリージェントによってイングレーンされた斑点が含有されている。しかも、M3の中には一つの極性の比較的大きいアルカロイド・カラーリージェントによってイングレーンされた斑点がある。
【0041】
M3は先ずゲルカラムクロマトグラフィーで分離して、メタノールで洗脱し、自動に収集されるが、それぞれの試験管には3ml(2600秒)を収集し、TLC検査を行い、クロロフォルム/メタノール(10:1)で展開し、それぞれの流動成分17-22 (44 mg)と流動成分23-24 (11 mg)を合併させる。流動成分17-22は引き続きゲルカラムクロマトグラフィで分離して、メタノールで洗脱し、自動に収集されるが、それぞれの試験管には3ml(2600秒)を収集し、TLC検査結果によって、流動成分5-8 (35 mg)を合併する。この流動成分はノーマルフェース・カラムクロマトグラフィで分離し、0.8gのシリカゲル石油エーテルを飽和するようにカラムに入れて、クロロフォルムで上部の部分を溶解させる。先ず石油エーテル/酢酸エステル(10 : 1, 41 ml; 5 : 1, 48 ml)を使って、引き続きクロロフォルム/メタノール(30:1)で洗脱し、この洗脱勾配によって1つの主な成分(25g)が収集されるが、引き続きノーマルフェース・カラムクロマトグラフィで分離し、0.6gのシリカゲル石油エーテルを飽和するようにカラムに入れて、クロロフォルムで上部の部分を溶解させる。クロロフォルム/メタノール(40 : 1, 41 ml; 35 : 1, 36 ml; 30 : 1, 31 ml)を勾配洗脱し、約3-4ml/管を収集し、TLC検査結果によって、流動性成分4−6 (13 mg)と流動成分7−10 (5 mg)を合併して、後者をTLC検査を行ったが、数種の展開剤の展開はいずれも1つの斑点であった。これは純粋な化合物であることを説明し、その番号はEPO-E(CDCl3を溶剤として測定したNMRスペクトル)である。
【0042】
2.化合物EPO-Eの構造の鑑定
ESIMS質量スペクトルの結果によって得られた化合物EPO-Eの準分子イオンピークはm/z 626.4[M + H]+及び648.3 [M + Na]+であるので、化合物の分子量は625である。しかも、裂けたm/z 133の砕片ピークm/z 492がある。高解像度快速原子衝撃質量スペクトルの結果によって、この化合物の分子式はC31H47NO10S (HRFAB-MS、実際測定値:m/z 625.7706、計算値:m/z 625.2921)である。
【0043】
化合物EPO-EのC-NMR (DEPTを含めて)によって31個の信号が提供されるが、中には、6つのメチル基、7つのメチレン基、12のメチン基及び6の四級カーボンが含まれている。1H NMRスペクトルのδ. 5.21 (s, H-1’, the anomeric proton)、3.91 (s, H-2’)、4.00 (m, H-3’)、4.31 (m, H-4’)、3.85 ( H-5’)及び3.78 (dd, H-5’)での信号や、13C NMRスペクトルのδ. 108.7 (C-1’)、 79.0 (C-2’)、78.2 (C-3’)、88.1 (C-4’)及び66.2 (C-5’)での信号、及びHMQCとHMBCスペクトル信号によって、α-D-ribofuranosylユニットの存在が確認された。HMQCとHMBCスペクトル関連信号に対する更なる分析によって、そのアグリコンはエポチロンA(データは表1を参照)であることが確認された。C-1’位置のプロトンとC-3の遠隔関連関係によって、糖の代替位置はエポチロンAのC-3位置であることが確認された。そのため、化合物EPO-Eはエポチロングリコシドであることが鑑定され、エポチロングリコシドA-1と命名されているが、これは新しい化合物である。
【0044】

a 1H, 13C NMR及びHMBC測定データは、室温にて得られ、CDCl3,は、それぞれ600MHz,150MHz及び600MHzの下で得られる。
b 特別な説明がない限り、プロトン信号は1Hに帰一化される。
【0045】
3.化合物――エポチロングリコシドA-1の抗腫瘍活性のテスト
選別方法:
メチル・チアゾール・テトラゾリウム(methyl-thiazol-tetozolium,MTT)の還元法
スルホードアミンB(sulforhodamine B,SRB)のプロティン染色法
細胞株:HepG2ヒト肝癌、A-549ヒト肺癌及びMDA-MB-435ヒト乳腺癌
作用時間:48〜72h
結果評価:無効:10-5 mol/L < 85%
弱効果:10-5 mol/L ≧ 85%又は10-6 mol/L > 50%
強効果:10-6 mol/L > 85%又は10-7 mol/L > 50%
具体的な実験結果は表2を参照。

【0046】
結論:表2から見ると、エポチロングリコシドA-1の濃度が10-6 Mになると、肝癌細胞HepG2に対して強い抑制作用があり、ヒトの肺癌細胞A-549及びヒトの乳腺癌細胞MDA-MB-435に対して、弱い抑制作用がある。そのため、この化合物は腫瘍細胞に対して選択性の抑制作用があるので、この化合物の活性部位は関連癌細胞の化学抑制剤とすることができる。
【実施例2】
【0047】

調整方法:エポチロングリコシドA-1と乳糖及びトウモロコシ澱粉を混ぜて、水で均一に濡らして、篩にかけてから乾燥し、再び篩にかけてから、ステアリン酸マグネシウムを入れて、均一に錠剤にするが、1枚の重さは240mgで、エポチロングリコシドA-1の含有量は1mgである。
【実施例3】
【0048】

調整方法:エポチロングリコシドA-1と乳糖及びステアリン酸マグネシウムを混ぜて、篩にかけ、適当な容器にて均一に混ぜる。得られた混合物はハードゼラチンカプセルに入れるが、1カプセルの重さは200mgで、エポチロングリコシドA-1の含有量は1mgである。
【実施例4】
【0049】

調整方法:エポチロングリコシドA-1と塩化ナトリウムを適当量の注射用水に溶かして、ろ過によって得られた溶液を無菌状態で、アンプル瓶の中に入れる。
【実施例5】
【0050】

調整方法:エポチロングリコシドB-1と乳糖及びステアリン酸マグネシウムを混ぜて、篩にかけて、適当な容器の中にて均一に混ぜる。得られた混合物はハードゼラチンカプセルに入れるが、1カプセルの重さは200mgで、エポチロングリコシドB-1の含有量は1mgである。
【実施例6】
【0051】

調製方法:エポチロングリコシドB-1と塩化ナトリウムを適当量の注射用水に溶かして、ろ過によって得られた溶液を無菌状態で、アンプル瓶の中に入れる。
【実施例7】
【0052】

調整方法:エポチロングリコシドC-1と乳糖及びトウモロコシ澱粉を混ぜて、水で均一に濡らして、篩にかけてから乾燥し、再び篩にかけてから、ステアリン酸マグネシウムを入れて、均一に錠剤にするが、1枚の重さは240mgで、エポチロングリコシドC-1の含有量は1mgである。
【実施例8】
【0053】

調整方法:エポチロングリコシドA-2と乳糖及びステアリン酸マグネシウムを混ぜて、篩にかけ、適当な容器にて均一に混ぜる。得られた混合物はハードゼラチンカプセルに入れるが、1カプセルの重さは200mgで、エポチロングリコシドA-2の含有量は1mgである。
【実施例9】
【0054】

調製方法:エポチロングリコシドB-2と塩化ナトリウムを適当量の注射用水に溶かして、ろ過によって得られた溶液を無菌状態で、アンプル瓶の中に入れる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)又は(II)に示されている、1組のエポチロングリコシド化合物。

その中:


その中:

【請求項2】
請求項1において、前記エポチロングリコシド類化合物は粘液細菌(Sorangium cellulosum ) So0157-2 CCTCC NO:M 208078の固体と/又は液体発酵の後、その固体又は液体発酵の産物を分離することによって得られることを特徴とするエポチロングリコシド化合物。
【請求項3】
治療有効量の請求項1の化合物と薬学上引き受けられるキャリアを含有する肝癌の予防と治療に使われる薬物配合物。
【請求項4】
治療有効量の請求項1の化合物と薬学上引き受けられるキャリアを含有する肺癌の予防と治療に使われる薬物配合物。
【請求項5】
治療有効量の請求項1の化合物と薬学上引き受けられるキャリアを含有する乳腺癌の予防と治療に使われる薬物配合物。
【請求項6】
請求項1の化合物が肝癌の予防と治療用薬物調製への応用。
【請求項7】
請求項1の化合物が肺癌の予防と治療用薬物調製への応用。
【請求項8】
請求項1の化合物が乳腺癌の予防と治療用薬物調製への応用。

【公表番号】特表2012−504559(P2012−504559A)
【公表日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−529435(P2011−529435)
【出願日】平成20年11月28日(2008.11.28)
【国際出願番号】PCT/CN2008/001946
【国際公開番号】WO2010/040252
【国際公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【出願人】(594196624)山東大学 (1)
【Fターム(参考)】