説明

エマルジョンオイルの連続生成方法およびエマルジョンオイルの連続生成装置

【課題】 エマルジョンオイル生成混合槽に対して油成分側および水成分側にそれぞれ独立の混合手段を設けることにより、連続的に均質のエマルジョンオイル生成が可能であるエマルジョンオイルの連続製造方法およびエマルジョンオイルの連続製造装置を提供する。
【課題手段】 槽内部の中間よりも上側に固定された金属製ろ過手段を境界として下方の混合領域と上方のエマルジョンオイル取出し領域とが形成されたエマルジョンオイル生成混合槽を用い、該混合領域に属する外壁に第1の流体混合手段ならびに第2の流体混合手段を固定する。これら各々の流体混合手段に前記混合領域から取出した混合途上の流体を個別に圧入することにより吐出口周辺に形成される負圧によって燃料タンクから油成分および水タンクからから水成分をそれぞれ吸引し、該新たに吸引された油成分と前記放射拡散流を生じている混合途上の流体とをさらに流動混合させながら前記混合領域内に吐出させることにより乳状化を進行させ、エマルジョンオイルを生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重油や軽油に所定割合で水を添加混合して乳状化させ、内燃機関および燃焼装置類の燃料とするためのエマルジョンオイルの連続生成方法ならびに該方法によりエマルジョンオイルを連続的製造に適するエマルジョンオイルの生成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
工業用、民生用を問わず多くの機器および装置類の運用のために化石燃料が多く使用され、殊に地域性、可搬性、輸送および貯蔵の容易性、価格等の総体的利便性を考慮して、軽油や重油等の石油系燃料が広く利用されている。我が国では石油系燃料は全て輸入に頼らざるを得ないため価格の変動も大きく、さらに地球温暖化の元凶と目される二酸化炭素の排出が不可避であるような問題点がある。しかし、電気をはじめLPG、LNG等よりも低廉である上、ディーゼル機関に代表される熱機関の燃料として、重油や軽油は根強い需要が保たれている。このような重油や軽油をさらに経済的に利用するために、適宜重量比で水成分を添加して分散含有させたエマルジョン(乳状化)オイルが経済的な燃料油として注目されている。
【0003】
エマルジョンオイル(以下、同義である「エマルジョン燃料」とも表現する)は水を微細な粒子として油中に分散させて混合乳化させたものである。したがって、エマルジョン燃料の原始的製造手段としては油槽内の重油や軽油に対して適宜乳化剤と共に水を添加し、撹拌翼を回転させる手段が採用されていた。しかし、このような撹拌翼の回転による生成手段では、基本的にバッチ処理に頼らざるを得ないため、仕込みから撹拌製造過程に応じて、製造されるエマルジョン燃料の成分比等に多少のムラが生ずる欠点があった。さらに、エマルジョン燃料の最大の難点として、そのまま放置するとやがて油成分と水成分とが2層分離し、そして凝集を生ずることが知られている。
【0004】
このような問題点を考慮して、特許文献1は分散水粒子を極微細化して経時安定性を確保するエマルジョン燃料及びその製造方法、ならびにエマルジョン燃料駆動装置を開示している。しかし、水粒子を微細化するだけで油水の2層分離を完全に防止することは困難である。さらに特許文献2では、油槽の表面上部に陽電極Pを配置し、油槽底部の油中に陰電極Mを配置して両電極間にそれぞれの極性の高電圧を印加してプラズマ放電を生起させ、油水を十分に混合ならびに乳化させたエマルジョン燃料の他、食品および化粧品等が得られる旨開示している。しかし、このようなプラズマ放電によりエマルジョン燃料が生成されるとしても、油槽内に満たされた原料油のエマルジョン生成は油槽単位のバッチ処理となる。したがって、例えば小規模でも足りる化粧品等であればともかく、通常は大量生産を前提とするエマルジョン燃料製造に適するものとはいえない。
【0005】
特許文献3は、それぞれ所定範囲のHLB値である親油性界面活性剤と親水性界面活性剤とを適宜比率で混合した混合界面活性剤を乳化剤として、乳化装置によってエマルジョン燃料油を製造する技術手段を開示している。このような混合界面活性剤を必須要件とする技術手段にあっては、界面活性剤は基本的に燃料に対する不純物であるため、燃料としての用途が限定される可能性がある。
【特許文献1】特開平2−105890
【特許文献2】特開2007−224156
【特許文献3】特開2003−113385
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、エマルジョンオイル生成混合槽に対して油成分側ならびに水成分側にそれぞれ独立の混合手段を設けることにより、連続的に均質のエマルジョンオイル生成が可能であるエマルジョンオイルの連続製造方法およびエマルジョンオイルの連続製造装置を提供することである。なお、エマルジョンオイル形成の基本的な油成分としては重油や軽油等を想定しているが、その他の油成分に対しても適用可能である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の課題は、請求項1に記載するように、槽内部の中間よりも上側に固定された金属製ろ過手段2を境界として下方の混合領域MAと上方のエマルジョンオイル取出し領域0Aとが形成されたエマルジョンオイル生成混合槽1を用い、該エマルジョンオイル生成混合槽の混合領域MAに属する外壁に第1の流体混合手段10ならびに第2の流体混合手段20を固定し、前記混合領域から取出した混合途上の流体を前記第1の流体混合手段10に圧入することにより発生する放射拡散流が前記混合領域に還流される際に、該第1の流体混合手段の吐出口周辺に形成される負圧によって燃料タンクから供給される油成分を吸引し、該吸引された油成分と前記放射拡散流を生じている混合途上の流体とをさらに流動混合させながら前記混合領域内に吐出させる工程と、前記混合領域から取出した混合途上の流体を前記第2の流体混合手段20に圧入することにより発生する放射拡散流が前記混合領域に還流される際に、該第2の流体混合手段の吐出口周辺に形成される負圧によって水タンクから供給される水成分を吸引し、該吸引された水成分と前記放射拡散流を生じている混合途上の流体とをさらに流動混合させながら前記混合領域内に吐出させる工程と、油成分リッチ混合液および水成分リッチ混合液同士の乳化混合が進行して総体的比重が所望値に達し、該エマルジョンオイル生成混合槽上方のエマルジョンオイル取出し領域OAに通過したエマルジョンオイルを取出す工程と、からなるエマルジョンオイルの連続製造方法によって解決される。
【0008】
また、本発明の課題は、前記油成分と水成分との混合比を6:4〜8:2の範囲とすることができ、製造されるエマルジョンオイルの用途に応じて適宜選定可能にすることにより有利に解決することができる。さらに、エマルジョンオイルの製造時点から利用装置に供給するまでの時間が長くなる用途にあっては、前記第1の流体混合装置10における油成分の流体混合過程において乳化剤を2〜4%添加することによりさらに有利に解決することができる。なお、前記金属製ろ過手段2、4は、ステンレス線による金網またはステンレス板に多数の穿孔を行ったパンチングメタルとしてもよい。
【0009】
本発明の課題は、請求項5に記載するように、所定比率で供給される油成分および水成分を乳化混合するためのエマルジョンオイル生成混合槽であって、該槽内部の中間よりも上側に固定された金属製ろ過手段2を境界として下方の混合領域MAと上方のエマルジョンオイル取出し領域OAとが形成されたエマルジョンオイル生成混合槽1と、該エマルジョンオイル生成混合槽の混合領域に属する外壁に固定されて、前記混合領域から取出した混合途上の流体を第1の流体混合手段に圧入することにより発生する負圧によって、燃料タンクから供給される新たな油成分を吸引し、該吸引された油成分と前記放射拡散流を生じている混合途上の流体とをさらに拡散混合させながら前記混合領域内に吐出させる第1の流体混合手段10と、該エマルジョンオイル生成混合槽の混合領域に属する外壁に固定されて、前記混合領域から取出した混合途上の流体を第2の流体混合手段に圧入することにより発生する負圧によって、水タンクから供給される新たな水成分を吸引し、該吸引された水成分と前記放射拡散流を生じている混合途上の流体とをさらに拡散混合させながら前記混合領域内に吐出させる第2の流体混合手段20と、前記エマルジョンオイル取出し領域からエマルジョンオイルを取出すためのエマルジョンオイル送出手段7と、を備えたエマルジョンオイルの連続製造装置によって解決される。
【0010】
エマルジョンオイル生成混合槽に供給する油成分および水成分の好ましい成分比は製造されるエマルジョンオイルの用途および使用態様によって変更することができる。例えば、ディーゼル機関その他原動機類の燃料に使用する場合は油成分をやや多めに選定することが好ましい。これに対し暖房装置、農業用、工業用等の各種加熱装置のためのバーナーなどの燃料とする場合は油成分の配合比を低減することにより一層の燃費節減が可能となる。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るエマルジョンオイルの連続製造方法およびエマルジョンオイルの連続製造装置によれば、金属製ろ過手段2、4を内蔵するエマルジョンオイル生成混合槽1に対して、該エマルジョンオイル生成混合槽の混合領域から取出した混合途上の流体を第1の流体混合手段10への圧入により形成される負圧によって外部の燃料タンクから導油管を介して吸引されて混合される油成分混合体を前記混合領域へ連続的に送り込み、そして前記エマルジョンオイル生成混合槽の前記混合領域から取出された混合途上の流体を第2の流体混合手段20に圧入することにより形成される負圧によって水タンクから導水管を介して吸引されて混合される水成分混合体を前記混合領域に対して連続的に送り込みながら、油成分および水成分を強制的に撹拌混合してエマルジョンオイルが生成される。
【0012】
このようにエマルジョンオイルを生成させる過程の乳状化処理能力は、エマルジョンオイル生成混合槽の外壁に取付けられた第1および第2の流体混合手段の混合能力に依存する。前記エマルジョンオイル生成混合槽の混合領域から取出した混合途上の流体を拡散放射させながら外部の油成分タンクから吸引される油成分と混合する混合手段として、例えば特許第3751308号に開示される「混合機」が好適に適用可能である。この混合機の詳細は、後述するように、略円筒状であって第1、第2および第3の流体導入口ならびに第2の流体導入口の周辺に拡がる流体吐出開口を除き閉塞された金属製容器によって包囲されている。この流体吐出口の周囲は、流体の放射拡散を伴う強制排出により負圧を形成する構造となっており、この負圧を利用して油成分または水成分をそれぞれの配管から吸引し、混合動作を繰り返す構造となっている。
【0013】
本発明に係るエマルジョンオイル生成混合装置での油水混合作用は、エマルジョンオイル生成混合槽の混合領域に属する範囲の外壁に取付けられた第1の流体混合手段である油成分混合手段および第2の流体混合手段である水成分混合手段によってそれぞれ個別に実行される。このような混合手段は、混合槽本体内部に配設された共通撹拌翼による撹拌動作とは異なり、エマルジョンオイル成分の需要状況に応じて各混合機を他方に影響されずに個別に運転制御することができ、混合効果が任意に調整可能である。そして、十分に混合されて比重が下がったエマルジョンオイル成分は金属製ろ過手段を通過してエマルジョンオイル取出し領域へ上昇する。したがって、取出されるエマルジョンオイル成分は好ましいエマルジョン状態となっている。
【0014】
エマルジョンオイルの成分比は、例えば油成分を増加したい場合には、導油管に結合されている第1の流体混合機に対する混合途上の液体圧入ポンプの運転を強めるように制御することにより達成でき、したがってそれぞれの需要手段に合致する成分比とすることが容易である。なお、金属製ろ過手段は、流体の混合領域とエマルジョンオイル取出し領域との境界となることはもとより、混合領域において激しく流動していた各流体の流速がろ過手段を通過する際に失われ、上方のエマルジョンオイル取出し領域においてはほぼ静止状態となるように抑制する効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、添付図を参照しつつ本発明に係るエマルジョンオイルの連続製造方法および連続製造装置の好適な実施例を開示する。図1は本発明に係るエマルジョンオイルの連続製造装置の主要部であるエマルジョンオイル生成混合槽1の基本構成を示す正面図であり、図2は平面図である。なお、本実施例において使用される油成分は重油または軽油を想定しているが、他種の油成分にも適用可能である。
【0016】
エマルジョンオイル生成混合槽1は断面形状が円形の金属容器で、本実施例では有効容積50リットルのものを使用しているが、用途に応じて適宜変更可能である。混合槽を形成する容器の形状は流体の滞留が生じる可能性の少ない円筒状としている。エマルジョンオイル生成混合槽1の底部を基準として槽高さの約2/3の近辺内部には第1の金属製ろ過手段として仮想線で図示した金網2、好ましくはステンレス製金網が固定される。この第1の金属製ろ過手段2の下方が混合領域MA、上方がエマルジョンオイル取出し領域OAとなる(図5参照)。なお、この金網はステンレス板に対して直径が数mm程度の貫通孔を多数個形成したパンチングメタルとしてもよい。
【0017】
エマルジョンオイル生成混合槽1の内部の底部近くで、ドレイン排出部(DR)3のやや上方に、第2の金属製ろ過手段として金網4を混合槽内周全体に配設固定している。エマルジョンオイル生成混合槽1における処理成分である重油、軽油等の油成分ならびに添加される水成分等は、多少なりともスラッジ、不純物、その他異質雑成分等を含む可能性がある。かかる異物成分がエマルジョンオイルに混入することは好ましくないため、金網4によりろ過された異物成分は、ドレイン排出部(DR)3に接続されたバルブを開放することにより適時排出される。この場合、混合領域MAにおいて激しく流動していた各流体は、金網4を通過する際にその流速が失われほぼ静止状態となるように抑制されて異物成分が傾斜して形成された底部のプレートに沈殿し、ドレイン排出部3から容易に排出することができる。なお、図4は、図2のA−A'断面図でエマルジョンオイル生成混合槽1の内部構成例を示しており、後述する本発明に係るエマルジョンオイルの連続製造装置の作動状態を説明するための図である。
【0018】
エマルジョンオイル生成混合槽1の適宜部位、本実施例ではほぼ中間位置に反応時における槽内流体の温度測定が可能である温度計5が取付けられている。油成分の粘度は温度によって変化するため、温度変化を監視しようとするものである。また、エマルジョンオイル生成混合槽1における第1の金属製ろ過手段2と上端部との間には、液面計6が配設されている。この液面計6により、エマルジョンオイル取出し領域OAにおいて製品取出しが可能な液面が保たれているか否かが確認可能となる。
【0019】
エマルジョンオイル生成混合槽1には、本発明において主要な作用効果を発揮する第1の流体混合手段10および第2の流体混合手段20がそれぞれ取付けられている。これら流体混合手段10および20は、例えば本願と同一発明者に係る特許第3751308号公報に開示される「混合機」が好適に適用可能である。これら混合機10および20は、混合成分は異なるものの基本的に同一構造であるため、以下、油成分用の流体混合機10について説明する。
【0020】
混合機10は、図3の断面図に示すように、略円筒状の中空部を有し、その両端が当該開口をそれぞれ閉鎖することのできる半球体および半楕円体によって閉じられた略砲弾状のケーシング101によって包囲されている。第1の流体導入口102、第2および第3の流体導入口103、104並びに第2の流体導入口の周辺に拡がる流体の吐出開口109を除き閉塞されている。第1の流体導入口102は、ケーシング101の中心から右側よりに偏移している。ケーシング101内で流体導入口102の右側には隔壁105が設けられ、大容積の第1室および小容積の第2室に分離されている。そして、隔壁105の中央部には第1室内の流体を第2室を跨いで右端外部側へ放出するための円筒体106が貫通している。
【0021】
短小な円筒体106のケーシング外への出口107の周囲には、負圧を発生させるために、小径の底部側が開放された椀状体108の広口側がケーシングに固着され、前記狭い開口が外部を向くように配設されている。この椀状体108の狭い開口よりもケーシング101側へ僅か入り込む状態で、第2の流体導入口103が配設される。なお、第3の流体導入口104は、必要であれば液体または気体である成分、例えば乳化剤などの流体配管に接続されるが、第3の流体が使用されない場合には閉塞される。
【0022】
図3のように形成された流体混合機10または20に対して第1の流体導入口102からポンプを介して流体を圧入すると、流体はケーシング101の内壁面に沿って旋回を継続しながら後続流体の進入に伴って高圧となり、円筒体106から矢印110のように外部に向かって拡散しながら放出される。このような第1の流体の強烈な拡散放出に伴って、小径底部側が開放された椀状体108の内側には負圧が発生する。このように形成される負圧によって第2の流体のための供給管103の開口から、第2の流体を吸引する。このように吸引された第2の流体が開口から吸引される途端、拡散放出中の第1の流体中に直ちに吸収混合されつつ拡散放射される。したがって、本発明に係るエマルジョンオイル生成混合槽1の混合領域MAから供給される混合途上の第1の流体(O+W:油成分および水成分からなる混合途上の流体)と第2の流体(O:油成分またはW:水成分のいずれか)とが確実に撹拌混合された状態でエマルジョンオイル生成混合槽1の混合領域内MAに戻される。
【0023】
本発明においては、流体混合機10または20の第2の流体導入口付近に、底部側が切除された小径開口で広口側がケーシング101の流体吐出口107を包囲するように取付けられた、第1の流体の拡散放射にしたがって椀状体108内に発生する負圧を利用する。この負圧により外部からの配管を通して第2の流体である油成分または水成分を吸引導入し、第1の流体である油成分および水成分からなる混合途上の流体の拡散放射流と一体化させる結果、強力な撹拌混合が達せられる。したがって、第2の流体である油成分または水成分は配管から吸引されて排出された直後から既に混合途上にある第1の流体の強い拡散放射流に巻き込まれ、第1の流体との良好な撹拌混合が同時に達成される。
【0024】
このような機能を発揮する第1の流体混合機10および第2の流体混合機20は、エマルジョンオイル生成混合槽1の混合領域の外壁面に取付け固定される。なお、第2の主たる成分である油成分および水成分はそれぞれエマルジョンオイル生成混合槽1の内部を貫通する導油管または導水管によって供給され、第1の主たる成分である油および水による混合途上の成分は、混合領域から金属管を介して取出され、それぞれ加圧ポンプを介して第1の流体導入口から圧入される。
【0025】
エマルジョンオイル生成混合槽1の混合領域の外壁に固定された第1の流体混合機10または20において外部から吸引される油成分または水成分と混合領域内部から取出されて圧送され拡散放射流を形成する油水両成分の混合途上流体とが繰り返し混合せしめられる。このように本発明に係るエマルジョンオイル生成混合槽1では、混合領域の外壁に取付けられた油成分混合機10および水成分混合機20それぞれの流体混合機において各成分を主体とする強力な混合作用が連続的に繰返される。その後も混合領域MA内の混合途上成分は繰り返し混合作用を受けて、所望のエマルジョンオイル状態に達した成分は、ステンレス製ろ過手段2を通過してエマルジョンオイル取出し領域OAに移動する。このようにして得られるエマルジョンオイル成分は、混合槽上方のエマルジョンオイル送出手段7からポンプにより取出され、ディーゼル機関やバーナー等の適宜需要装置に供給される。
【0026】
図4、5は、エマルジョンオイル生成混合槽1における一連の作動状態を説明するための図である。混合槽1内部には、図4に示すように下限フロートスイッチ(浮玉スイッチ)FS1、中間フロートスイッチFS3、上限フロートスイッチFS2が配設されている。本発明に係るエマルジョンオイル生成装置によりエマルジョンオイル製造を行うに際しては、当初図5のaのようにエマルジョンオイル生成混合槽1に対して上方の投入口からエマルジョンオイルを製造するための原料である重油または軽油等の油成分を注油する。注入量は下限フロートスイッチFS1がONになる位置(混合領域MA)までとし、レベル計(液面計)6で確認し得る量とする。
【0027】
そして、下限フロートスイッチFS1がONになったとき、混合機用駆動ポンプ並びに混合槽1の混合領域MAの混合途上の流体を混合機に供給するための流体供給ポンプ(ポンプ1、2)がONとなり作動開始する。次いで、中間フロートスイッチFS3がONになったとき、水成分導入電磁弁12、油成分導入電磁弁11、乳化剤導入電磁弁13がONとなり、水成分、油成分、必要であれば乳化剤成分が混合機に供給される。一方、下限フロートスイッチFS1がOFFになった場合は流体混合機用駆動ポンプ及び流体供給ポンプはOFFとなり駆動しない。また、上限フロートスイッチFS2がONになったとき水成分導入電磁弁12、油成分導入電磁弁11、乳化剤導入電磁弁13がOFFとなり、水成分、油成分、乳化剤成分は混合機に供給されない。
【0028】
このように、所定レベルまで注油後(a)、図では省略されている油成分タンク、水成分タンク、使用する場合には乳化剤タンク等の各系統に属するバルブ類が開放され、これらの運転前手順が完了したことを確認した後、図5のb〜gに示したように、本発明に係る装置は一連の作動を実施する。先ずbのように、流体混合機10および20に対して混合領域内の流体を圧入するための図示は省略されている流体供給ポンプ1、2及び混合機用駆動ポンプをそれぞれ運転する。これら両ポンプが作動すると混合領域内の混合途上の流体、すなわち油成分−水成分の混合体ではあるが完全には混合されていない流体が、混合機下方の入口から圧入されて出口付近に負圧を形成する。この負圧を利用して、各混合機の吐出口にはcのように水成分またはdのように油成分がそれぞれの導入管を通して導入され(必要であれば乳化剤を導入)、各混合機の拡散放射流に取り込まれてeおよびfのように混合領域内において混合体拡散作用が繰返される。
【0029】
このような過程を経て、混合体拡散が繰返される結果、次第に比重が低減し、エマルジョン化が進み、かつ混合領域において激しく流動していた各流体の流速がろ過手段を通過する際に失われほぼ静止状態となったエマルジョンオイルは、金属製のろ過手段2、例えばステンレス線による金網を通過して、上方のエマルジョンオイル取出し領域OA内に上昇する。このエマルジョンオイル取出し領域まで上昇してきた成分は確実にエマルジョン化されているから、gのように燃料として外部の燃焼装置または一時貯留場所等へ送られる。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明はこのような構成を採用しているので、確実に乳状化されたエマルジョンオイルを効率よく生成することができる。得られるエマルジョンオイルは、良好な乳状化が行われている結果、産業用、農業用等で使用される様々な乾燥機、ボイラー、加熱器等はもとより、車両、船舶等の内燃機関の燃料として適しており、省エネルギー、省資源に資することができる。化石燃料の燃焼では必然的に二酸化炭素を発生するため、地球温暖化防止の機運に反するものであるが、かかるエマルジョンオイルの利用により化石燃料消費が20〜30%の節減されることから、温暖化抑制の面からも大きな効果が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明に係るエマルジョンオイル製造方法の実施に適する製造装置の構成例を示す正面図である。
【図2】本発明に係るエマルジョンオイル製造方法の実施に適する製造装置の構成例を示す平面図である。
【図3】本発明に係るエマルジョンオイル製造装置において重要な機能を担う流体混合機の内部構成例を示す断面図である。
【図4】図2におけるA−A'断面図である。
【図5】本発明に係るエマルジョンオイル製造装置の作動状態を模式的に示した説明図である。
【符号の説明】
【0032】
1 エマルジョンオイル生成混合槽
2 第1の金属製ろ過手段(金網2)
3 ドレイン排出口(DR)
4 第2の金属製ろ過手段(金網4)
5 温度計
6 液面計(レベル計)
7 エマルジョンオイル送出手段
10 第1の流体混合手段(油成分用流体混合機)
11 油成分導入電磁弁
12 水成分導入電磁弁
13 乳化剤導入電磁弁
20 第2の流体混合手段(水成分用流体混合機)
101 ケーシング
102 第1の流体導入口
103 第2の流体導入口
104 第3の流体導入口
105 隔壁
106 円筒体
107 出口
108 椀状体
109 椀状体開口
FS1 下限フロートスイッチ
FS2 上限フロートスイッチ
FS3 中間フロートスイッチ
OA エマルジョンオイル取出し領域
MA 混合領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
槽内部の中間よりも上側に固定された金属製ろ過手段を境界として下方の混合領域と上方のエマルジョンオイル取出し領域とが形成されたエマルジョンオイル生成混合槽を用い、該エマルジョンオイル生成混合槽の混合領域に属する外壁に第1の流体混合手段ならびに第2の流体混合手段を固定し、前記混合領域から取出した混合途上の流体を前記第1の流体混合手段に圧入することにより発生する放射拡散流が前記混合領域に還流される際に、該第1の流体混合手段の吐出口周辺に形成される負圧によって燃料タンクから供給される油成分を吸引し、該吸引された油成分と前記放射拡散流を生じている混合途上の流体とをさらに流動混合させながら前記混合領域内に吐出させる工程と、前記混合領域から取出した混合途上の流体を前記第2の流体混合手段に圧入することにより発生する放射拡散流が前記混合領域に還流される際に、該第2の流体混合手段の吐出口周辺に形成される負圧によって水タンクから供給される水成分を吸引し、該吸引された水成分と前記放射拡散流を生じている混合途上の流体とをさらに流動混合させながら前記混合領域内に吐出させる工程と、油成分リッチ混合液および水成分リッチ混合液同士の乳化混合が進行して総体的比重が所望値に達し、該エマルジョンオイル生成混合槽上方のエマルジョンオイル取出し領域に通過したエマルジョンオイルを取出す工程と、からなることを特徴とするエマルジョンオイルの連続製造方法。
【請求項2】
前記油成分と水成分との混合比を6:4〜8:2の範囲とすることができ、製造されるエマルジョンオイルの用途に応じて適宜選定可能である、ことを特徴とする請求項1に記載のエマルジョンオイルの連続製造方法。
【請求項3】
エマルジョンオイルの製造過程にあって、前記油成分用の流体混合手段に対して乳化剤を2〜4%添加する、ことを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載のエマルジョンオイルの連続製造方法。
【請求項4】
前記金属製ろ過手段として、ステンレス線による金網またはステンレス板に多数の穿孔を行ったパンチングメタルのいずれかを使用する、ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のエマルジョンオイルの連続製造方法。
【請求項5】
所定比率で供給される油成分および水成分を乳化混合するためのエマルジョンオイル生成混合槽であって、該槽内部の中間よりも上側に固定された金属製ろ過手段を境界として下方の混合領域と上方のエマルジョンオイル取出し領域とが形成されたエマルジョンオイル生成混合槽と、該エマルジョンオイル生成混合槽の混合領域に属する外壁に固定されて、前記混合領域から取出した混合途上の流体を第1の流体混合手段に圧入することにより発生する負圧によって、燃料タンクから供給される新たな油成分を吸引し、該吸引された油成分と前記放射拡散流を生じている混合途上の流体とをさらに拡散混合させながら前記混合領域内に吐出させる第1の流体混合手段と、該エマルジョンオイル生成混合槽の混合領域に属する外壁に固定されて、前記混合領域から取出した混合途上の流体を第2の流体混合手段に圧入することにより発生する負圧によって、水タンクから供給される新たな水成分を吸引し、該吸引された水成分と前記放射拡散流を生じている混合途上の流体とをさらに拡散混合させながら前記混合領域内に吐出させる第2の流体混合手段と、前記エマルジョンオイル取出し領域からエマルジョンオイルを取出すためのエマルジョンオイル送出手段と、を備えたことを特徴とするエマルジョンオイルの連続製造装置。
【請求項6】
前記油成分と水成分との混合比を6:4〜8:2の範囲とすることができ、製造されるエマルジョンオイルの用途に応じて適宜選定可能である、ことを特徴とする請求項5に記載のエマルジョンオイルの連続製造装置。
【請求項7】
エマルジョンオイルの製造過程にあって、前記油成分用の流体混合手段に対して乳化剤を2〜4%添加する、ことを特徴とする請求項5または6のいずれかに記載のエマルジョンオイルの連続製造装置。
【請求項8】
油成分の混合を行う前記第1の流体混合手段が、前記エマルジョンオイル生成混合槽内の混合領域における下方に配置され、そして水成分の混合を行う前記第2の流体混合手段が、前記混合領域における上方に配置され、混合工程における油水間の比重差により自然循環を可能にした、ことを特徴とする請求項5ないし7のいずれかに記載のエマルジョンオイルの連続製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−149089(P2010−149089A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−332840(P2008−332840)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(509003357)愛州エンジニアリング株式会社 (1)
【出願人】(390020008)株式会社ジェット (1)
【Fターム(参考)】