説明

エマルジョン液滴含有ポリマー組成物およびその製品

【課題】
本発明が解決しようとする問題点はコーティング材および成型品に一般的な方法で使用可能な機能性エマルジョン液滴含有ポリマー組成物の新規製造方法を見出し、コーティング材、インクおよび成型品に新規機能性を廉価に付加することである。
【解決手段】
本発明ポリマー組成物は内部に50℃から10℃で液状である有効成分を10重量%以上含有し、ブロックコポリマー分子が界面活性剤状に配位し、100ナノメーター以下、20ナノメーター以上の厚さの界面膜を持つエマルジョン液滴を含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は機能性塗料、シーラント、仕上げ加工剤などのコーティング材およびインク、および成型品、およびその原料となるポリマー組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロカプセルは塗料、インキ、シーラントなどに既に数多く使用され、界面重合法によるナイロン6−10皮膜マイクロカプセル、コアセルベーション法によるゼラチン・アラビアゴム皮膜マイクロカプセル、in-situ重合法による尿素・ホルムアルデヒド皮膜マイクロカプセルや噴霧乾燥法によるアラビアゴム皮膜マイクロカプセルなどが製造されている。しかし、これらのマイクロカプセルに用いられている皮膜は高分子が配列していない一様な皮膜からなり、界面活性剤的に高分子が配列した界面膜ではなく、平衡関係で安定性が得られるエマルジョン液滴で構成されていない。
【0003】
界面活性剤的に高分子が配列した皮膜形成はポリマーアロイで既に報告されている。しかし、ポリマーアロイは相分離する2種のポリマーを安定的に分散するために相溶化剤を配合し、この相溶化剤が界面活性剤的に高分子が配列した界面膜形成を行う。ポリマー中に常温で液体を含有するポリマーマトリックスのエマルジョンは5重量%の液体を含有することは既に秋庭、水上により報告されているが、(非特許文献1から9)10重量%以上の液体を含有する報告は未だない。
【0004】
また、マイクロカプセルは一度皮膜が破れると自己修復しないため、皮膜を補強する皮膜の多層化が検討されて来た。画像記録シートに使用する着色用複合壁膜化マイクロカプセルの一般的な製造方法として、マイクロカプセル表面にワックス外壁膜を形成して複合壁膜化する方法としては、相分離法(融解分散冷却法)が一般的であり、まず溶媒中にワックスを分散させ、ワックスの融点以上に加熱するとともによく撹拌してワックスエマルジョンとした後、これにマイクロカプセルを投入して溶解したワックスを集め、徐々に冷却することによりマイクロカプセルの周囲にワックスを沈積させて、外壁膜を形成する多層マイクロカプセル製造方法がある。
【0005】
しかし、この方法ではワックスなどの析出が均一でないため、特許文献1では複合壁膜化マイクロカプセル 及びその製造方法並びにそれを用いた画像記録シートが新たに提案されている。ここで記載されているマイクロカプセルは耐熱性合成樹脂製内壁膜上に、(イ) 酸性又はアルカリ性の分散媒に溶解又は分散可能であるとともに、(ロ) 上記分散媒への溶解又は分散時に上記内壁膜の電荷と反対の極性の電荷を帯びる化合物からなる外壁膜を形成する方法である。
【0006】
また、特許文献2にポリイソシアネートの溶液を水中の水難溶性農薬中に分散させ、引き続き分散液をポリアミンと反応させることにより、ポリ尿素のマイクロカプセル皮膜を形成させたブロックコポリマーを皮膜としたマイクロカプセルの製造方法が提案されている。この提案は前記界面重合法によるブロックコポリマー皮膜の製造方法であり、このような水中にのみ安定して存在するマイクロカプセルを他のポリマー中に2次凝集または破壊することなく分散させるためには水系重合前の低粘度の原料水溶液に添加混合し、重合する以外に方法がなく、工程が複雑となり経済的に実現性が乏しく、さらには重合方法がラジカル重合またはカチオン重合に限定され、コーティング材として汎用性に乏しい。
これらマイクロカプセルは一度皮膜が破れると自己修復しない致命的な欠陥があり、シェアが大きく掛かる溶融混練方法による製品化が困難であった。
【非特許文献1】高分子学会2006年年会予稿集、発表番号100236
【非特許文献2】高分子学会2006年年会予稿集、発表番号100238
【非特許文献3】高分子学会2006年年会予稿集、発表番号100740
【非特許文献4】高分子学会2006年年会予稿集、発表番号100763
【非特許文献5】高分子学会2006年年会予稿集、発表番号100770
【非特許文献6】高分子学会2006年年会予稿集、発表番号100899
【非特許文献7】ポリマー材料フォーラム2006年予稿集、発表番号100001
【非特許文献8】ポリマー材料フォーラム2006年予稿集、発表番号100052
【非特許文献9】ポリマー材料フォーラム2006年予稿集、発表番号100054
【特許文献1】特開2002−336683号公報
【特許文献2】特開平6−238159号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする問題点はコーティング材および成型品に一般的な方法で使用可能な機能性エマルジョン液滴含有ポリマー組成物の新規製造方法を見出し、コーティング材、インクおよび成型品に新規機能性を廉価に付加することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明ポリマー組成物は内部に50℃から10℃で液状である有効成分を10重量%以上含有し、ブロックコポリマー分子が界面活性剤状に配位し、100ナノメーター以下、20ナノメーター以上の厚さの界面膜を持つエマルジョン液滴を含有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明のポリマー組成物は液状有効成分を内包したエマルジョン液滴を含有するため、医薬品、抗菌剤、抗黴剤、抗ウイルス剤、静電防止剤、防藻剤、防腐剤、芳香剤、防虫剤、殺虫剤、防鼠剤、防鳥剤、防獣剤、誘引剤、農薬、防付着性海中生物剤、難燃剤、塵捕捉剤、肥料、消臭剤などの機能性液状成分が徐放され、機能性をコートされた製品に長期間に渡り付与することができる。特に海中生物の付着防止機能が求められる船底塗料には安全性の高いコーティング材がなく、好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明ポリマー組成物は内部に50℃から10℃で液状である有効成分を10重量%以上含有し、ブロックコポリマー分子が界面活性剤状に配位し、100ナノメーター以下、20ナノメーター以上の厚さの界面膜を持つエマルジョン液滴を含有する。
【0011】
また本発明は前記本発明ポリマー組成物またはその混合物を含有するコーティング材、インクおよび成型品である。
【0012】
本発明者等はポリマーに相溶性の低い液体状の化合物を高濃度で保持させる際、マトリックスポリマーおよび液状化合物、それぞれに相溶性の高いポリマーユニットを一つの分子内にブロック共重合の形で有しているブロックコポリマーを配合、分散することにより、該ブロックコポリマーが界面活性剤的に働き界面を形成し、その内部に液状化合物を内在したエマルジョン液滴を形成したポリマー組成物を創製し、この組成物を新たに液体イン固体ポリマーエマルジョンと命名した。(以下このようなエマルジョン状態を「ナノエマルジョン」と略記する。)
【0013】
本発明のポリマー組成物は、例えば熱可塑性重合体(A)に相溶性の高いブロック(B1)と相溶性の低いブロック(B2)からなり、(A)と相分離するが、安定した1μm以下の径のポリブレンドを形成するブロックコポリマー(B)と(B1)および(A)に相溶性が低く(A)および(B)と相分離し、(B2)に相溶性が高く、50℃から10℃で液状である液状化合物(C)を総重量に対し10重量%以上分散し、(B)が界面活性剤的な作用でその内部に液状化合物(C)を取り込んだエマルジョン液滴、即ちナノエマルジョンを形成したポリマー組成物(D)である。好ましくは(C)を総重量に対し20重量%以上分散し、(B)が界面活性剤的な作用でその内部に液状化合物(C)を取り込んだエマルジョン液滴、即ちナノエマルジョンを形成したポリマー組成物(D)である。
【0014】
また、ナノエマルジョンを形成した組成物(D)をさらに(A)と相分離する他の熱可塑性ポリマー、またはポリマーと可塑剤のブレンド物からなるポリマー組成物(E)に分散したポリマーブレンド、またはポリマー溶液、またはポリマーと可塑剤のブレンド物(F)とすることができ、(E)を第2層とする本発明多層エマルジョン液滴含有ポリマー組成物が製造される。また、熱可塑性ポリマー(E)の代わりに熱硬化性ポリマー前駆体、または熱硬化処理前熱硬化性ポリマー(E)に分散したポリマーブレンド、またはポリマー溶液、またはポリマーと可塑剤のブレンド物(G)とすることができ、(E)を第2層とする本発明で使用する多層エマルジョン液滴含有組成物が製造される。
【0015】
本発明ポリマー組成物およびその混合物は前記エマルジョン液滴が組成物(F)または(G)に含有されており、これらのエマルジョン液滴を含有した組成物の最外層(E)を溶解または溶融相溶し、エマルジョン液滴をコーティング材、またはインク中に分散し、本発明では使用する。
【0016】
また、本発明に使用するエマルジョン液滴内部の(C)は常圧下、50℃から10℃で液状である液状化合物(C)が有機化合物、または有機化合物溶液、または水溶液である組成物である。
【0017】
本発明ポリマー組成物(D)の熱可塑性重合体(A)がポリオレフィン系重合体である場合、ブロックコポリマー(B)は、例えば(A)と相溶性の高いブロックを有する、ポリ(エチレン/プロピレン)(B1)−液状化合物(C)と相溶性の高いブロックを有するポリスチレン(B2)ブロック共重合体(SEP)、ポリスチレン(B2)−ポリ(エチレン/ブチレン)(B1)ブロック共重合体(SEB)、ポリスチレン(B2)−ポリ(エチレン/プロピレン)(B1)−ポリスチレン(B2)ブロック共重合体(SEPS)、ポリスチレン(B2)−ポリ(エチレン/ブチレン)(B1)−ポリスチレン(B2)ブロック共重合体(SEBS)およびポリスチレン(B2)−ポリ(エチレン−エチレン/プロピレン)(B1)−ポリスチレン(B2)ブロック共重合体(SEEPS)などから選ばれ、内部に50℃から10℃で液状である有効成分を10重量%以上含有し、ブロックコポリマー分子(B)が界面活性剤状に配位し、100ナノメーター以下、20ナノメーター以上の厚さの界面を持つエマルジョン液滴、即ちナノエマルジョンを形成しうる組み合わせからなる(D)または(F)または(G)である。しかし、上記のようなマトリックスポリマー(A)、ブロックコポリマー(B)、液状有効成分(C)の組み合わせであっても、必ずしも本発明に必要なナノエマルジョンを形成するとは限らないことに注意する必要がある。例えば本発明で発現するナノエマルジョンはマトリックスポリマー(A)とブロックコポリマー(B)が安定した1μm径以下のポリマーブレンドを形成するこれらの組み合わせの組成、分子量、分岐、分散方法などを選定することが必要である。従って従来の知見である分散されたブロックコポリマー(B)が熱可塑性ゴムでその3次元網目構造の中に液状有効成分が保持される構造とは全く異なるもので、またその効果も異なるものである。
【0018】
また本発明ポリマー組成物(D)は例えばマトリックスポリマー(A)にポリオレフィン、ブロックコポリマー(B)にスチレンコポリマーとポリオレフィンを使用する場合、液状化合物(C)がポリスチレンと相溶性が高い、芳香環や脂環骨格や環構造に近いシス2重結合を有する有機化合物またはその溶液で、ナノエマルジョン形成する組成物(D)または(F)または(G)からなることが好ましい。
【0019】
また本発明ポリマー組成物(D)は例えばマトリックスポリマー(A)にポリスチレンまたはABS、ブロックコポリマー(B)にスチレンコポリマーとポリオレフィンを使用する場合、液状化合物(C)がポリオレフィンと相溶性が高い、アルキルまたはアルケニル、およびこれらのエステルまたはエーテルまたはポリエーテルアミン、アルコールなどのポリスチレンと相溶性の低い有機化合物または溶液で、ナノエマルジョン形成する組成物(D)または(F)または(G)からなることが好ましい。
【0020】
また本発明ポリマー組成物(D)は例えばマトリックスポリマー(A)にポリスチレンまたはABS、ブロックコポリマー(B)にスチレンコポリマーとポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのポリオールからなる親水性ブロックコポリマーを使用する場合、液状化合物(C)がポリオールと相溶性が高い、有機化合物またはその水溶液で、ナノエマルジョン形成する組成物(D)または(F)または(G)からなることが好ましい。
【0021】
また本発明に使用する液状有効成分(C)は例えば医薬品、抗菌剤、抗黴剤、抗ウイルス剤、静電防止剤、防藻剤、防腐剤、芳香剤、防虫剤、殺虫剤、防鼠剤、防鳥剤、防獣剤、誘引剤、農薬、防付着性海中生物剤、難燃剤、塵捕捉剤、肥料、消臭剤などの少なくとも1種であることが好ましい。
【0022】
本発明で使用するマトリックスとなる熱可塑性重合体(A)はポリオレフィン系ポリマー、ポリエステル系ポリマー、ポリアミド系ポリマー、アクリル系ポリマー、ポリウレタン系ポリマー、ポリスチレン系ポリマー、ポリカーボネート系ポリマー、などの熱可塑性ポリマーおよびフェノール系ポリマー、不飽和ポリエステル系ポリマー、メラミン系ポリマー、エポキシ系ポリマー、ウレア系ポリマー、アルキド系ポリマーなどの熱硬化性ポリマーが挙げられる。
ポリオレフィン系ポリマーの具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、ポリ1−ブテン、ポリ1−ペンテン、ポリメチルペンテンなどの単独重合体、または共重合体などを用いることができる。中では融点が低く、反応性が低いためポリオレフィン系重合体であることが好ましい。
(A)、(F)または(G)の融点の高い場合、添加される液体状の化合物沸点との乖離が大きくなるため、成型時の逸散量が多くなるため、マスターバッチ生産の際、ペレタイズに例えば水中カッターのような特殊な急速冷却逸散防止設備の設置が好ましい。
【0023】
本発明ポリマー組成物において、ブロックコポリマー(B)の最少配合比率は液状有効成分(C)の含有比率に比例する。即ち、ブロックコポリマー(B)の形成する界面膜厚が20ナノメータ、エマルジョン液滴径が0.5μmの場合にブロックコポリマー(B)と液状有効成分の比重が同じと仮定し、体積比率で11.5%になる。従って界面を含むエマルジョン液滴体積の大凡12V%以上であれば良い。同じ膜厚でエマルジョン液滴径が0.3μmの場合は35V%になる。言い換えればブロックコポリマー(B)の配合比率が少ないとエマルジョン液滴径は大きくなる傾向にある。安定したナノエマルジョン形成には15V%以上、より好ましくは25V%以上である。
【0024】
本発明ポリマー組成物を形成する他のマトリックスポリマー(E)は安定した生産が可能な範囲であれば幅広く選定することができ、似通った2種のポリオレフィン以外に、例えばPET(E)中にLDPE(D)の島ができ、その中に液状化合物(C)を含有する(B)で包まれた2重構造液体イン固体ポリマーエマルジョン液滴含有組成物・エマルジョン(F)、PVC(E)中にLDPE(D)の島ができ、その中に液状化合物(C)を含有する(B)で包まれた2重構造液体イン固体ポリマーエマルジョン液滴含有組成物・エマルジョン(F)が形成される。
他のマトリックスポリマー(E)はポリマー前駆体であっても良く、例えば熱硬化性ポリフェノール樹脂前駆体ノボラック(E)、その中に液状化合物(C)を含有する(B)で包まれた(D)液体イン固体ポリマーエマルジョンを内在する熱硬化性2重構造液体イン固体ポリマーエマルジョン(F)が形成される。ここで使用する熱硬化性樹脂としてはフェノール樹脂、キシレン樹脂、ユリア樹脂、エポキシ樹脂、メラミンユリア樹脂などがある。
【0025】
一方、PET、ポリスチレンなどの芳香族系ポリマー、PVCのように芳香族系可塑剤を使用するポリマーをポリマー組成物(D)のマトリックスポリマー(A)とし、芳香族系液体有機化合物(C)を含有させ、ナノエマルジョン形成させたポリマー組成物を得ることはマトリックス(A)と液状化合物(C)の相溶性がよいため困難である。しかし、マトリックスポリマーとしてのポリオレフィン(A)中に分散した芳香族系液体有機化合物(C)のナノエマルジョンを形成した本発明ポリマー組成物(D)とPET、ポリスチレンなどの芳香族系ポリマー(E)、ポリ塩化ビニルのように芳香族系可塑剤などを含有するポリマーを新たなマトリックスポリマー(E)としてポリブレンドすることにより、2重ナノエマルジョン(G)を形成することもできる。
ここでいう他のマトリックスポリマー(E)は一時的にポリマー溶液であっても良く、例えばポリエチレンをマトリックス(A)とし、ポリウレタン(E)により2重ナノエマルジョン(F)を形成した後、ポリウレタン(E)をDMFで溶解し、ポリアクリロニトリルDMF溶液と混合した(F)が得られる。この混合液を湿式紡糸することにより、本発明の成型品であるアクリル繊維が得られる。この場合、ナノエマルジョンはポリウレタンとポリアクリロニトリルポリブレンドの中に分散する。
【0026】
また、マトリックスポリマー(A)、ブロックコポリマー(B)、他のポリマー(E)に生分解性ポリマーを使用すると本発明のポリマー組成物およびそれからなる製品に生分解性が付与され、持続性農薬または肥料供給方法として好適である。
【0027】
本発明に使用するエマルジョン液滴含有組成物において液状化合物(C)が水溶液で、エマルジョン液滴第2層マトリックスポリマー(A)がポリオレフィンである場合、ブロックコポリマー(B)がその一部にポリオレフィンユニット(B1)を有するブロックコポリマーであることが好適であり、さらには、ブロックコポリマー(B)が、(A)と相溶性を有する(B1)と親水性を有する(B2)を有するブロックコポリマーであることが好ましい。例えば(B1)が、疎水性ポリビニル、(B2)が無水マレイン酸、無水フマル酸、無水イタコン酸などの無水ジカルボン酸ビニルポリマーまたはコポリマー、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのポリオールまたは親水性ポリ酢酸ビニルなどからなる親水性ブロックコポリマーなどが好適である。(B1)のポリビニルは例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリロニトリル、ポリメタクリル、ポリメチルアクリレート、ポリブテン、ポリジイソブテンなどであり、定法により逐次カチオンリビング重合法などで無水マレイン酸などのジカルボン酸ビニル(B2)と容易にブロック共重合体を製造することができる。無水ジカルボン酸は水または水溶液と反応し、カルボン酸になる。
また、定法によりポリ乳酸などの疎水性ポリアルキルエステル(B1)と親水性ポリエチレングリコール(B2)を溶融混合し、減圧混練することにより疎水性と親水性を具備したブロック共重合体(B)が得られる。また、末端にジブテンを導入したポリオレフィン(B1)にエチレンオキサイドを付加重合させる定法により、ポリオレフィン(B1)ポリエチレングリコール(B2)ブロック共重合体(B)が得られる。
【0028】
本発明に使用するエマルジョン液滴含有組成物において、例えばLDPEのように低融点で加工できるマトリックスポリマー(A)を使用し、本発明に使用可能なエマルジョン液滴含有組成物を製造し、さらに水溶性熱可塑性ポリエチレングリコール(以下「PEG」と略記する。)で希釈混練して多層エマルジョン液滴含有組成物を製造することもできる。この場合、PEG(E)の中にLDPE(A)の島ができ、その中に液状化合物(C)を含有する(B)で包まれたエマルジョン液滴含有組成物・ナノエマルジョン組成物(D)がPEG(E)中に微細分散した2重構造エマルジョン液滴含有組成物・ナノエマルジョン組成物(F)が形成され、本発明の水性コーティング材原料、例えば水性塗料やインク原料として使用される。
必要に応じてマトリックスポリマー(D)とマトリックスポリマー(E)の安定配合および微細配合による強度向上などに適当な相溶化剤を配合することも好ましい。
【0029】
本発明エマルジョン液滴含有組成物・ナノエマルジョン形態は、該組成物の固化の後も安定的に保持され、密閉系で再度溶融、剪断されても平衡状態にあるため、ナノエマルジョンが再形成され安定している。液状化合物(C)は緻密な(B)膜に取り囲まれた状態にあり、透過速度が小さく、また局部的に貯蔵され、徐放効果に優れる。
【0030】
本発明において有効成分である50℃以下、10℃以上で液状である有効成分化合物(C)は、エマルジョン液滴第2層熱可塑性ポリマー(A)に相溶性が低く相分離し、ブロックコポリマー(B)中の(B2)に相溶性が高く、安定したナノエマルジョンを形成する組み合わせを選定すべきである。液状化合物(C)は有機液体であっても、水溶液であっても良い。50℃以下、10℃以上特に常温で液体状であることが日常使用において有効成分の適当な拡散速度を選択し易く好適である。50℃以下、10℃以上で固体である有機化合物、または溶融しない例えば無機化合物を溶媒に溶解し、有機溶液または水溶液として本発明に用いることもできる。また、低沸点有機化合物などを有機溶液とすることにより、分圧を小さくし、逸散速度を小さくすることもできる。
【0031】
本発明において液状有効成分(C)は、例えばテルペン類などの天然精油、例えば防虫、防ダニ性に優れたthuyopseneを多く含有するcedarwood oilなどの針葉樹精油、防鼠性に優れたmentholを多く含有するpeppermint oil、抗菌性、抗ヴィールス性に優れ、気管支拡張機能のあるeucalyptus oil、防カビ性に優れたlemongrass oil、芳香性に優れたlavender oilなどが挙げられる。また、農薬機能を有する有機化合物としてはpermethrinなどのピレスロイド系化合物の殺虫剤または除草剤など、肥料機能を有する有機化合物としては、アミノ酸を含む低分子有機物など、誘引機能を有する有機化合物としては、動物を誘引する動植物のホルモンなど、忌避機能を有する有機化合物としては、動物が忌避するカプサイシン、リモネンなど、殺菌機能を有する有機化合物としては、トリクロサンなど、カビ抵抗機能を有する有機化合物としては、イソチアゾリン系化合物など、また抗菌機能を有する有機化合物としては、ジンクピリチオンなど、防腐剤としてはパラベン、EDTAなど、帯電防止剤としてはオレイルポリエーテルモノグリセリド、ステアリルポリエーテルモノグリセリド、ステアリルポリエーテルジグリセリド、ステアリルアミノポリエーテル、グリセリンなど、およびこれらの溶液が挙げられる。
【0032】
また液状有効成分(C)は水溶液であっても良く、水溶性リン酸、硫酸、塩酸化合物、およびこれらの塩類水溶液などがあり、その代表的な例はベタインなど各種界面活性剤である。また、本発明で使用する水溶液(C)には、水溶性の無機物または、および有機物が溶解される。また、水溶液が乳化水溶液であっても良い。さらには水アルコールなどの混合溶液にさらにその他の溶質を溶解した水溶液であっても良い。(C)に含まれる機能成分が塩の場合、(A)は平衡水分量が大きく透水性の大きいポリマー例えばポリアミド、EVAなどが機能性成分の解離し、イオン化した状態で拡散しやすい点で好ましい。
熱可塑性重合体に含有されている水または水溶液は、高温に加熱昇温されると水蒸気が熱可塑性重合体表面を被覆し、酸素を遮断すること、および蒸発潜熱を奪うことにより、製品に難燃性を付与することができる。
【0033】
水溶液中に界面活性剤のような静電気抑制効果のある溶質を溶解している場合、界面活性剤が徐放され、熱可塑性重合体表面に拡散してくることにより、耐久性静電気抑制効果を付与する。界面活性剤としては例えばセッケン、硫酸エステル塩、スルホン酸塩、リン酸エステル塩、ジチオリン酸エステル塩などのアニオン界面活性剤、アミン塩型、第4級アンモニウム塩型などのカチオン界面活性剤、アミノ酸型、ベタイン型などの両性界面活性剤、ポリエチレングリコール型、ポリプロピレングリコール型、プルロニック型、多価アルコール型などのノニオン型界面活性剤がある。
【0034】
界面活性剤には洗浄剤としての作用もあり、静電気抑制効果の他に軽度の持久性ソイルリリース効果も熱可塑性重合体に付与することができる。また、熱可塑性重合体表面の持久性親水性を付与することができる。さらには熱可塑性重合体の摩擦係数を変化させ、持続性平滑性、持続性制動性を付与する。
【0035】
また、カチオン界面活性剤は蛋白質と作用する性質を持ち、抗菌作用、殺菌(滅菌)作用がある。例えばラウリルジメチルベンジルアンモニウムクロライドは最も有名なカチオン系の殺菌剤であり、フェーノールの数十倍の殺菌能力を持つ。4級アンモニウム塩は温和な殺菌剤として用いられる。また、界面活性剤以外に水溶性の殺菌剤、例えばフェノール、アクロラインなどの水溶液も殺菌剤として使用することができる。極端な用途としてはグルタルアルデヒド水溶液を使用することも可能であるが、毒性が著しく強いので取り扱いには厳重に注意する必要がある。また、硝酸銀、硫酸銅などの無機塩殺菌性水溶液も強い殺菌作用があり使用することができる。これらの殺菌剤は殺黴剤として有効なものもある。
【0036】
本発明に使用する水溶液は乳化水溶液または水アルコール溶液、例えば水グリセリン水溶液、水ポリビニルアルコール水溶液、蔗糖水などにさらに溶質を溶解した混合水溶液であっても良いため、溶質がこれら混合溶液に溶解するまたは安定的に分散する、例えば各種フレーバーのような脂質類であっても良い。各種フレーバーとしてはCedarwood oil、Eucalyptus oil、Peppermint oil、Capcaicin、Rose oil、Lavender oil、Lemon grass oilなどの精油、食品用フレーバー、香料などをも使用することができる、熱可塑性重合体に適宜アロマテラピー効果、嗜好性フレーバー効果、マーキング効果などを付与することができる。
【0037】
どのような組み合わせが本発明ナノエマルジョンを形成するか、否かは定かではないが、結果としてナノエマルジョンの観察において、適当なエマルジョン液滴が(A)中に形成されているか、否かの顕微鏡観察結果によってのみ判断が可能である。
エマルジョン液滴の平均粒径が3μmより大きいと、塗膜1層の厚さは数μmの場合もあるコーティング材用途では往々にして、製品表面品質に重大な悪影響を及ぼす。本発明ではこの平均粒径および界面の厚さを操作型または透過型電子顕微鏡観察にて計測した。
また、本発明のコーティング材には、本発明の目的を逸脱しない範囲において他の添加剤を配合することができる。添加剤としては、無機充填剤、顔料、滑剤、安定剤などが挙げられる。
【0038】
塗料はコーティング材の代表例であり、塗膜になる例えば、酸化鉄、酸化鉛、カーボンブラック、二酸化チタン、タルク、硫酸化バリウム、カドミウムイエロー、カドミウムレッド、クロムイエロー、アルミニウムフレーク、フタロシアニンブルーなどの配合量0.5から40W%の顔料、樹脂と添加剤と塗膜にならない溶剤と安定剤および硬化促進剤などの添加物からなる。この樹脂には大豆油、あまに油、サフラー油、ひまし油、キリ油、トール油、やし油などの油脂類、ロジン、コバール、セラックなどの天然樹脂類、クロマン樹脂、石油樹脂などの加工樹脂類、アルキド樹脂、アクリル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂、塩化ビニル樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、合成樹脂エマルジョンなどの合成樹脂類、塩化ゴム、環化ゴムなどのゴム類や硝化綿、アセチルセルロースなどのセルロース誘導体類などがある。
これらの樹脂を溶解する溶剤として、水や、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、トルエン、キシレン、ブチルセロソルブ、MEK、MIBK、酢酸ブチル、酢酸エチルおよびこれらの数種類の溶剤を配合した塗料用シンナー、ラッカーシンナー、ポリウレタン用シンナーなどがあり、各樹脂ごとに指定された溶剤がある。
【0039】
本発明に使用するコーティング材マトリックス(M)は上記のような一般的な塗料用組成物、インキ用組成物、シーラント用組成物および仕上げ加工剤用組成物の中から、(A)または(E)と(M)および塗料などのコーティング材に使用されている溶剤(S)との組み合わせを考慮し、最終コートされた製品の品質にも配慮し、適宜選択すべきである。最終製品の品質上、および溶剤(S)に分散して使用することが多いので、同じ溶剤(S)または相溶性のある溶剤(S)に溶解し、かつコーティング材の基本性能を損なわないように(A)または(E)と(M)は相溶性に優れていることが好ましい。
【0040】
塗料の一般的な製造工程はデゾルバーまたはボールミルによる前練、サンドグラインダーまたはアトライターによる分散、調合槽またはデゾルバーによる調合、調色、フィルターによるろ過および充填工程である。本発明に使用する多層エマルジョン液滴は平均粒径が3μm以下と小さく、皮膜がソフトで剪断力により壊れ難いため、他の原料と同時に前練工程で添加することができ、経済的である。
【0041】
インクの一般的な組成は溶剤、着色剤、浸透剤、乾燥防止剤、酸やアルカリのpH調節剤、防腐剤、防黴剤、消剤泡剤、分散剤、脱酸素剤などから構成され、溶剤としては前記、塗料の溶剤と同様な溶剤、水、有機溶剤およびソリッドインクにはアルキルまたはアルケニル酸、エステル、アミドなどのワックスが使用される。着色剤粒径の大きさが最小であるのはインクジェット用インクで、ノズル径が20〜30μmであるから、その大きさは少なくともその10の1以下であることが好ましいとされているが本発明ナノエマルジョンはこの条件をクリアーできる。
着色剤としては水性インクでは直接染料、酸性染料、塩基性染料、油性インクではアゾ系金属錯塩染料やフタロシアニン染料などが、顔料ではカーボンブラックが使用される。浸透剤には溶解型、表面張力低下型、蒸発併用型がある。溶解型は印刷面を溶解するもので、有機溶剤やpHを高める水酸化カリウムなどがあり、表面張力低下型は界面活性剤や有機溶剤などがあり、エタノールやイソプロパノールは蒸発併用型である。
インクジェットノズル目詰まり防止に使用される乾燥防止剤にはジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、N−メチルー2−ピロリドンなどがある。
水溶性インクは保存しておくと微生物が増殖するため、パラベンアルカリ塩、ソルビタン酸カリウム、チアベンダゾール、ベンツイミダゾール、サイアベンダゾール、チアゾスルファミド、ピリジンチオールオキシドなどが使用される。
【0042】
本発明のコーティング材に使用するエマルジョン液滴含有組成物は(A)、(B)、(C)、(E)の4者により構成され、不可分であるため、その分散混合方法はコーティング材の溶剤(S)により、およびその混合時の温度と粘度により適宜選定すべきである。
粘度が低い場合はディゾルバーや液体用ミキサーを備えたタンクを使用することができる。また、粘度が高い時には2軸混練機、ローラー混練機、ニーダー混練機などを使用することができる。
【0043】
一般的な仕上げ加工材、特に繊維用仕上げ加工剤の多くは塗料やインクとほぼ同じような組成からできているが、水性塗料と類似した水エマルジョンの形態で使用されることが多い。特に機能性を付与するため、および風合いを硬くするために使用されるいわゆる樹脂加工に本発明の仕上げ加工剤は好適である。
本発明のコーティング材が水エマルジョンタイプや水溶媒の場合には(E)に水溶性の熱可塑性樹脂を使用すると好適である。水溶性の熱可塑性樹脂としては例えば、変成ポリビニルアルコールが日本合成化学工業(株)からエコマティAX(商標名)、クラレ(株)からエクセバール(商標名)として、また融点約65℃分子量が10万から数百万のポリエチレンオキサイドがある。例えば明成化学工(株)からアルコックス(商標名)として販売されている。このような水溶性樹脂を(E)に使用する場合にはペレット成型する時に水冷できないため、チルドローラーで引き取り、ローラーカッターでカットし、角ペレットとして製造することが好ましい。
水溶媒のインクや水エマルジョンタイプの仕上げ加工材に配合する前に必要な濃度に水に溶解し、混合することにより、容易にホモミキサーなどにより混合調整することができる。
【0044】
本発明コーティング材は液状化合物(C)がコーティング表面を覆い1μmから単分子膜厚さのの薄膜を形成する。一般的な後加工の場合は一度洗浄すると液体薄膜は除去され、その効果が失われる。しかし、本発明品は洗浄後も内部から新たに液状有機化合物がブリードし、薄膜を形成し、機能が回復する。
【実施例】
【0045】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の実施例にのみ限定されるものではない。
(1)GCによる含有濃度計測
トリクロルベンゼン熱抽出法により島津製GC−2010にて製品中機能成分含有濃度を計測した。
(2)走査型および透過型電子顕微鏡観察
観察面を四塩化ルテニウムなどで処理し、芳香環部分などを染色して走査型電子顕微鏡(SEM)または透過型電子顕微鏡にてエマルジョン液滴・固体マトリックスエマルジョン形成観察した。
【0046】
実施例1
マトリックスポリマー(A)としてLDPEポリマー(日本ポリエチレン(株)ノバテックLL)70kg、ブロックコポリマー(B)としてSEP((株)クラレ製SEPS2002)5kgを常法の2軸押し出し機により混練中に、親水性液状有効成分グリセリン25kgをプランジャーポンプで添加し、ダイヘッドより200℃で押し出し、索状で取り出し、水中で急冷し、カッターにて切断し、粒状の成型ペレットである本発明マスターバッチを製造した。若干白濁しているこのペレットのGC測定結果グリセリン含有量は22重量%であった。SEM観察像で液滴径約0.6μmの微細な海島構造が観察され、島の一部が破損した所から内部が空洞になってナノエマルジョンを形成していた。液滴の破れた空洞の大きさと破断面から界面の厚さは約20ナノメーターであることが判明した。
【0047】
比較例1
実施例1と同様にし、ブロックコポリマー(B)を添加せず、粒状ペレットを製造しようとしたが、相分離したグリセリンがダイから出た所で噴出し、ペレット採取にいたらなかった。
【0048】
実施例2
実施例1と同様にし、マトリックスポリマー(A)としてLDPEポリマー(日本ポリエチレン(株)ノバテックLL)80kg、ブロックコポリマー(B)としてSEPS((株)クラレ製SEPS2002)5kgを常法の2軸押し出し機により混練中に、抗菌・防カビ液状有効成分(C)、Propyl paraben 2kgとdi-Octyl phthalate13kg混合溶液をプランジャーポンプで添加し、190℃でダイヘッドより押し出し、索状で取り出し、水中で急冷し、カッターにて切断し、本発明粒状の成型ペレットであるマスターバッチを得た。このペレットのGC測定結果混合液含有量は13%と良好な歩留まりを示した。SEM観察像で微細な液滴径約0.4μmの海島構造が観察され、島の一部が破損した所から内部が空洞になってナノエマルジョンを形成していた。液滴の破れた空洞の大きさと破断面から界面の厚さは約30ナノメーターであることが判明した。
【0049】
比較例2
実施例1と同様にして マトリックスポリマー(A)としてLDPEポリマー(日本ポリエチレン(株)ノバテックLL)60kg、ブロックコポリマー(B)としてSEP((株)クラレ製SEPS2002)5kgを常法の2軸押し出し機により混練中に、親水性液状有効成分グリセリン35kgをプランジャーポンプで添加し、ダイヘッドより200℃で押し出し、索状で取り出し、水中で急冷し、カッターにて切断し、粒状の成型ペレットである本発明マスターバッチを製造しようとしたが、相分離したグリセリンがダイから出た所で噴出し、ペレット採取にいたらなかった。これは液滴界面の厚さが限界に達し、液滴に取り込まれなかった余剰のグリセリンが噴出したものと思われる。
【0050】
実施例3
実施例1で製造したペレット40重量部と水溶性熱可塑性PEOアルコックス60重量部を2軸押し出し混練機に定量的に供給し、最高温度160℃、ダイス温度130℃で5℃チルドローラー上に押し出し、シート状に取り出した後、ローラーカッターで角ペレットを製造した。次に角ペレット30重量部を70重量部の65℃温水中に攪拌しつつ投入し、常温まで冷却し、本発明コーティング材原料1を製造した。本発明コーティング材は少し白濁し、光学顕微鏡観察結果平均粒径1μm以下の安定したスラリー状態を示した。
【0051】
実施例4
実施例3で製造した20重量部の本発明コーティング材原料1を関西ペイント工業(株)製水溶性多用途白色塗料ハピオEG(商標名)80重量部に徐々に添加しつつ混合し、本発明のコーティング材を製造した。次にこのコーティング材を約0.1リッター/m2の厚さで1辺50cm正方形、厚さ10mmの杉板の上に1回塗りし、標準常態で24時間乾燥し、本発明のコーティング材塗布製品を製造した。この製品の塗布面の表面抵抗率をJIS K 6911に準じ、表面電極の内縁の外径5cm、表面の環状電極の内径7cm、印加電圧; 1000V試験室の温湿度; 20℃,40%RHで測定した結果、1012台の抵抗率で優れた帯電防止性を示した。
【0052】
実施例5
実施例2で製造したペレット40重量部とSEPS((株)クラレ製SEPS2104)60重量部を2軸押し出し混練機に定量的に供給し、最高温度160℃、ダイス温度150℃で押し出し、水中カットし、50℃で乾燥した。このペレット30重量部を70重量部の関西ペイント工業(株)製油性うすめ液70重量部に攪拌しつつ混合し、本発明コーティング材原料を製造した。本発明コーティング材は少し白濁し、光学顕微鏡観察結果平均粒径1μm以下の安定したエマルジョン状態を示した。
【0053】
実施例6
実施例5で製造した20重量部の本発明コーティング材原料2を関西ペイント工業(株)製油性トタン用途白色塗料80重量部に徐々に添加しつつ混合し、本発明のコーティング材2−1を製造した。次にこのコーティング材を約0.1リッター/m2の厚さでトタン板の上に1回塗りし、室温乾燥し、本発明のコーティング材塗布製品2−1−1を製造した。この製品のJIS Z2911 2000湿式法4種混合菌によるかび抵抗性試験結果、2週間後も菌接種部分に菌糸の発育が認められず、優れたかび抵抗性を示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に50℃から10℃で液状である有効成分を10重量%以上含有し、ブロックコポリマー分子が界面活性剤状に配位し、100ナノメーター以下、20ナノメーター以上の厚さの界面膜を持つエマルジョン液滴を含有するポリマー組成物。
【請求項2】
請求項1のポリマー組成物を含有させて製造する成型品。
【請求項3】
請求項1のポリマー組成物またはその混合物を含有するコーティング材およびインク。
【請求項4】
請求項3記載のコーティング材または、およびインクにより印刷またはコートされた製品。

【公開番号】特開2008−169258(P2008−169258A)
【公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−1938(P2007−1938)
【出願日】平成19年1月10日(2007.1.10)
【出願人】(503188092)有限会社サンサーラコーポレーション (14)
【出願人】(591045105)クラレリビング株式会社 (21)
【Fターム(参考)】