エマルジョン系クーラント廃液の分離促進剤および分離方法
【課題】エマルジョン系水溶性クーラント廃液から油分を分離する場合、従来の処理方法では油分と水分とを充分に分離することができなかった。
【解決手段】エマルジョン系クーラント廃液から油分を分離するための分離促進剤は、水100重量部に対して、水酸化ナトリウムを1〜10重量部、水酸化カリウムを1〜10重量部、および高分子水溶性カチオンポリマーを1〜5重量部含有し、前記高分子水溶性カチオンポリマーは、ポリエチレンイミン系重合物、ジシアンジアミド、ポリアリルアミン系重合物、ジアリルアミン系重合物、ジアリルアミン−マレイン酸共重合物、および4級アンモニウム塩の何れか一つにて構成される。
【解決手段】エマルジョン系クーラント廃液から油分を分離するための分離促進剤は、水100重量部に対して、水酸化ナトリウムを1〜10重量部、水酸化カリウムを1〜10重量部、および高分子水溶性カチオンポリマーを1〜5重量部含有し、前記高分子水溶性カチオンポリマーは、ポリエチレンイミン系重合物、ジシアンジアミド、ポリアリルアミン系重合物、ジアリルアミン系重合物、ジアリルアミン−マレイン酸共重合物、および4級アンモニウム塩の何れか一つにて構成される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エマルジョン系クーラント廃液から油分を分離するための分離促進剤および分離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一般的に、エマルジョン系の水溶性クーラント廃液は、水溶性クーラントに不水溶性油および水が混合して構成されている。
このようなエマルジョン系水溶性クーラント廃液は、静置することによりその一部が油分と水分に自然分離するが、その他の部分は、水溶性クーラントに含まれる界面活性剤により、一般にW/O型エマルジョンと呼ばれる水分が油分中に安定的に分散してエマルジョンとなった状態、またはO/W型エマルジョンと呼ばれる油分が水分中に安定的に分散してエマルジョンとなった状態の泥油として存在している。
【0003】
現状では、前述のエマルジョン系水溶性クーラント廃液から分離した油分は有価物として回収されて再度利用され、分離した水分は排水処理されており、残りの泥油として存在している部分はそのまま処分されている。
しかし、泥油として存在している部分から油分をさらに分離して回収することができれば資源の有効利用という観点からも好ましい。
【0004】
そこで、従来においては、次のような方法により泥油から油分を分離することが行われている。
例えば、遠心力により泥油の油分と水分とを分離したり、泥油を加温することにより油分と水分とに分離したりすることが行われている。
【0005】
しかし、遠心力により油分と水分とを分離した場合、油分と水溶性クーラント(水分)との比重差が小さいため、完全に分離することができず、泥油の多くの部分が残存することとなっていた。
また、遠心分離機の構造が複雑であるため機器のメンテナンスが煩雑であったり、遠心分離機の運転時の騒音が大きかったり、遠心分離機などの設備が高価であるという問題があった。
また、泥油を加温して油分と水分とを分離する場合には、泥油を加温することにより設備の周辺に臭気が発生したり、泥油の加温は蒸気を用いて行われるため加温のための費用が高価になったりという問題があった。
【0006】
また、エマルジョン系水溶性クーラント廃液における前記泥油の処理方法としては、特許文献1に示すように、エマルジョン系水溶性クーラント廃液に電解質を添加して、乳化安定化している油分を浮上分離しやすくした後に、酸を添加してpHを調整することによりエマルジョンを破壊し、その後そのPHを維持しながら無機凝集剤を添加することにより処理する方法が開示されている。
このように特許文献1に示される処理方法では、処理装置の小型化などを図ることが可能となっているが、泥油の油分と水分とへの分離を充分に行うことは困難であった。
【特許文献1】特開平11−197405号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明においては、上述の問題を解決すべく、泥油の油分と水分とへの分離を効率よく充分に行うことができるエマルジョン系クーラント廃液の分離促進剤および分離方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するエマルジョン系クーラント廃液の分離促進剤および分離方法は、以下の特徴を有する。
即ち、請求項1記載の如く、エマルジョン系クーラント廃液から油分を分離するための分離促進剤であって、水100重量部に対して、水酸化ナトリウムを1〜10重量部、水酸化カリウムを1〜10重量部、および高分子水溶性カチオンポリマーを1〜5重量部含有する。
【0009】
また、請求項2記載の如く、前記高分子水溶性カチオンポリマーは、ポリエチレンイミン系重合物、ジシアンジアミド、ポリアリルアミン系重合物、ジアリルアミン系重合物、ジアリルアミン−マレイン酸共重合物、および4級アンモニウム塩の何れか一つにて構成される。
【0010】
また、請求項3記載の如く、請求項1または請求項2に記載のエマルジョン系クーラント廃液の分離促進剤を用いて、エマルジョン系クーラント廃液から油分を分離する分離方法であって、前記エマルジョン系クーラント廃液と、前記分離促進剤と、塩化ナトリウム水溶液とを混合する
【0011】
また、請求項4記載の如く、前記エマルジョン系クーラント廃液に混合される前記分離促進剤は、水100重量部に対して2〜50重量部に希釈され、前記塩化ナトリウム水溶液は、水100重量部に対して塩化ナトリウム5〜35重量部を含有する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、例えばW/O型エマルジョンの場合、油中に安定的に分散している水滴の表面の電荷を中和するとともに、界面活性剤の親水基を疎水化させ、エマルジョン化している泥油中の水滴同士を効率良く合一化させて、泥油を水と油とに充分に分離させることが可能となる。
また、O/W型エマルジョンの場合も同様の効果により、泥油を水と油とに充分に分離させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
次に、本発明を実施するための形態を、添付の図面を用いて説明する。
【0014】
本例における分離促進剤2は、エマルジョン系クーラント廃液1と混合することにより、エマルジョン系クーラント廃液1の油分と水分との分離を促進して、効率良く充分な分離を可能とするものである。
【0015】
本分離促進剤2は、例えば水、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、および高分子水溶性カチオンポリマーを含有しており、これらの各成分の含有割合は、水100重量部に対して、水酸化ナトリウムが1〜10重量部、水酸化カリウムが1〜10重量部、および高分子水溶性カチオンポリマーが1〜5重量部となっている。
また、前記各成分の含有割合を、水100重量部に対して、水酸化ナトリウムを1〜5重量部、水酸化カリウムを1〜5重量部、および高分子水溶性カチオンポリマーを1〜3重量部とすることがさらに好ましい。
【0016】
分離促進剤2の前記高分子水溶性カチオンポリマーとしては、例えばポリエチレンイミン系重合物、ジシアンジアミド、ポリアリルアミン系重合物、ジアリルアミン系重合物、ジアリルアミン−マレイン酸共重合物、および4級アンモニウム塩の何れか一つが用いられる。
【0017】
一方、前記分離促進剤2による油分と水分への分離対象となるエマルジョン系クーラント廃液1(以下、単に「廃液1」と記載する)は、例えば水溶性クーラントと不水溶性油と水との混合物であり、その混合比は、水溶性クーラント:不水溶性油:水=5〜30重量部:50〜80重量部:10〜50重量部程度となっている。
【0018】
図1に示すように、前記廃液1は、静置することによりその一部が油分10と水分30とに自然分離するが、その他の部分として泥油20が残存することとなる。
この泥油20は、W/O型エマルジョンの場合、図2に示すように、水溶性クーラントに含まれる界面活性剤25により水23が油21中に安定的に分散しており、エマルジョンを構成した状態にある。
また、泥油20がO/W型エマルジョンの場合は、図3に示すように、前記界面活性剤25により油21が水23中に安定的に分散してエマルジョンを構成した状態となる。
【0019】
界面活性剤25は親油基25aと親水基25bとを有した両親媒性物質であり、本例の前記泥油20内においては、前記親水基25bが水23側に配向し、前記親油基25aは油21側に配向して、油中水滴型(W/O型)エマルジョン、または水中油滴型(O/W型)エマルジョンを形成している。
前記親油基25aは炭化水素鎖により構成されており、前記親水基25bはカルボキシル基、アミノ基、アミド基、および水酸基などにより構成されている。
【0020】
水溶性クーラントの界面活性剤25は、一般的に陰イオン性界面活性剤および非イオン性界面活性剤を含有している。
陰イオン性界面活性剤としては、ラウリル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルフォン酸塩、アルカンスルホン酸ナトリウム、アルキルジフェニルエーテルスルホン酸ナトリウム、アルキル硫酸エステルナトリウム塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステルナトリウム塩、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウムなどが用いられている。
【0021】
また、非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン・ブロックポリマー、ポリオキシエチレンポリペンジルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンミリスチルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油などが用いられている。
【0022】
また、前記陰イオン性界面活性剤および非イオン性界面活性剤としては、その分子量が例えば100〜1000000程度のもの、さらに好ましくは1000〜30000程度のものが用いられる。
さらに、前記各界面活性剤25は、例えばpH5〜10の範囲で安定して存在しており、HLB(Hydrophile-Lipophile Balance)=3〜20程度、さらに好ましくはHLB=6〜15程度に設定されている。
【0023】
また、前記廃液1に含まれる不水溶性油は、不水溶性の作動油、潤滑油、プレス油、摺動面油、ギア油、タービン油、加工油などの流動性を有する油である。
【0024】
次に、前記分離促進剤2を用いて前記廃液1の泥油20を油分と水分とに分離する方法について説明する。
まず、泥油20においては、前記界面活性剤25の親水基25bが分極した水23と結合(水和)しており、水23の表面は正の電荷を帯びている。従って、電気的反発により界面活性剤の親油基25aは、負の電荷を帯びることとなる。
つまり、図4に示すように、W/O型エマルジョンの場合、油21内に分散している各水滴(水23)に結合している界面活性剤の油接触部位には負の電荷が存在しているため水滴(水23)同士は電気的に反発することとなり、これによりエマルジョンが安定して形成されている。
一方、O/W型エマルジョンの場合は、図5に示すように、水23内に分散している各油滴(油21)に結合している界面活性剤の水接触部位には正の電荷が存在しているため油滴(油21)同士は電気的に反発し、エマルジョンが安定して形成されている。
【0025】
このように、W/O型エマルジョンまたはO/W型エマルジョンとして安定的に分散して構成されている泥油20を油分と水分とに分離させるために、図6および図7に示すように、本例では泥油20に前記分離促進剤2および電解質である塩化ナトリウム水溶液3を添加して、泥油20と分離促進剤2と塩化ナトリウム水溶液3とを混合している(図6にはW/O型エマルジョンの場合を、図7にはO/W型エマルジョンの場合を示している)。
【0026】
泥油20に混合する分離促進剤2は水にて希釈した状態で泥油20に添加される。
この場合、分離促進剤2の水による希釈割合は、例えば水100重量部に対して分離促進剤2を2〜50重量部としており、さらに好ましくは、水100重量部に対して分離促進剤2を5〜20重量部としている。
【0027】
また、泥油20に混合する塩化ナトリウム水溶液3は、例えば水100重量部に対して5〜35重量部の塩化ナトリウムを溶解させたものを用いており、さらに好ましくは水100重量部に対して20〜30重量部の塩化ナトリウムを溶解させたものを用いている。
【0028】
このような濃度に調製された塩化ナトリウム水溶液3を泥油20に混合することにより、前記界面活性剤25、特に陰イオン性界面活性剤が結合している水23の表面が電気的に中和される(つまり、水23の表面における正の電荷が小さくなる)。
これにより、水23に結合している界面活性剤25の親油基25aに帯電している負の電荷も、同様に小さくなる。
【0029】
また、前記界面活性剤25、特に非イオン性界面活性剤においては、混合された分離促進剤2に含まれる水酸化ナトリウムや水酸化カリウムによって周囲が塩基性雰囲気となるため、親油基25aと親水基25bとのバランスが崩れて親水基25bが作用しなくなり、親水基25bが水23から離れることとなる。
なお、分離促進剤2の水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムは、前記水23の表面を電気的に中和する作用も有している。
【0030】
このように、水滴(水23)または油滴(油21)の表面が電気的に中和されるとともに、界面活性剤25の親水基25bの水23に対する水和状態が阻害されることにより、水滴(水23)同士または油滴(油21)同士の反発力が弱くなるため、図8および図9に示すように、分散している水滴(水23)同士または油滴(油21)同士がその分子間引力により互いに接近して、図10および図11に示すように、ついには合一化して水滴(水23)または油滴(油21)が大きくなっていく。
【0031】
そして、水滴(水23)または油滴(油21)がある適度以上の大きさになると、水23と油21との比重差により水23が降下し、または油21が浮上して、図12に示すように、水23と油21とが分離することとなる。
【0032】
このように、泥油20に塩化ナトリウム水溶液3および分離促進剤2を混合することで、塩化ナトリウム水溶液3、ならびに分離促進剤2内の水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムの作用により、安定して存在していたエマルジョンを破壊し、また塩析反応が進行して泥油20が水23と油21とに分離する。
つまり、泥油20に塩化ナトリウム水溶液3および分離促進剤2を混合することにより、油21中に分散している水23の表面の電荷を中和するとともに、界面活性剤25の親水基25bの機能を阻害して疎水化させ、エマルジョンを構成している水滴(水23)同士または油滴(油21)同士を効率良く合一化させて、泥油20を水23と油21とに充分に分離させることが可能となっている。
【0033】
また、この場合、分離処理は、泥油20に塩化ナトリウム水溶液3および分離促進剤2を添加して攪拌するだけであるので、処理設備を簡単な構成にすることができ、安価にかつ容易な作業で分離することができる。
なお、泥油20から分離した水23は排水処理場などに排水することができ、分離した油21は回収して燃料などとして再利用することが可能である。
【0034】
また、泥油20中に含まれている界面活性剤25やその他の不純物などは、分離促進剤2に含有される高分子水溶性カチオンポリマーにより凝集され、水23内における沈殿物となるため、分離した水23の澄度を向上させることができる。
なお、分離した水23内には、泥油20に添加した塩化ナトリウム水溶液3や分離促進剤2に起因するナトリウム分やカリウム分が含まれているため、分離した水23を分離処理を行う前の泥油20に添加することで、分離処理を行う際に泥油20に添加する塩化ナトリウム水溶液3や分離促進剤2の量を削減することが可能となる。
【0035】
次に、前記泥油20に塩化ナトリウム水溶液3および分離促進剤2を混合しての油21と水23との分離処理を実際に行った場合の、油21と水23との分離状況の結果について、以下の実施例1および実施例2により説明する。
【実施例1】
【0036】
本実施例の分離処理は、前記泥油20に所定量の塩化ナトリウム水溶液3および所定量の分離促進剤2を添加した後に所定時間攪拌し、さらに所定時間静置することにより行い、油21と水23との分離状況は、油21と水23との分離率を確認することで行った。
泥油20に混合する前記塩化ナトリウム水溶液3および前記分離促進剤2としては、25重量%濃度の塩化ナトリウム水溶液3および希釈率10%の分離促進剤2を用いた。
【0037】
また、本実施例では(表1)に示す各試料a〜dのように、泥油20に混合する塩化ナトリウム水溶液3および分離促進剤2の量をそれぞれ変化させて、油21と水23との分離率を確認した。
【0038】
【表1】
【0039】
各試料a〜dにおける塩化ナトリウム水溶液3および分離促進剤2の混合量は、試料aが100重量部の泥油20に対して塩化ナトリウム水溶液3が33重量部、および分離促進剤2が23重量部混合されており、試料bが100重量部の泥油20に対して塩化ナトリウム水溶液3が27重量部、および分離促進剤2が27重量部混合されており、試料aが100重量部の泥油20に対して塩化ナトリウム水溶液3が33重量部、および分離促進剤2が17重量部混合されており、試料aが100重量部の泥油20に対して塩化ナトリウム水溶液3が23重量部、および分離促進剤2が23重量部混合されている。
【0040】
表1によると、試料aの分離率が94%で最も高く、試料b〜dはともに88%であった。
このことから、本実施例における泥油20に対しては、試料a〜dのなかでは試料aにおける塩化ナトリウム水溶液3および分離促進剤2の混合割合が油水分離に最も適した割合であるということが言え、試料aにより泥油20を略完全に油21と水23とに分離することが可能となっている。
【実施例2】
【0041】
本実施例の分離処理は、前記泥油20に所定量の塩化ナトリウム水溶液3および所定量の分離促進剤2を添加した後に所定時間攪拌し、さらに所定時間静置することにより行い、油21と水23との分離状況の確認は、「分離」、「若干分離」、「分離せず」の3段階の評価により行った。
泥油20に混合する前記塩化ナトリウム水溶液3および前記分離促進剤2としては、25重量%濃度の塩化ナトリウム水溶液3および希釈率10%の分離促進剤2を用いた。
【0042】
また、本実施例では(表2)に示す各試料A〜Hのように、泥油20に混合する塩化ナトリウム水溶液3および分離促進剤2の量をそれぞれ変化させて、油21と水23との分離状態を確認した。
【0043】
【表2】
【0044】
各試料A〜Hにおける塩化ナトリウム水溶液3および分離促進剤2の混合量は、試料Aが100重量部の泥油20に対して塩化ナトリウム水溶液3が30重量部、および分離促進剤2が10重量部混合されており、試料Bが100重量部の泥油20に対して塩化ナトリウム水溶液3が30重量部、および分離促進剤2が0重量部混合されており、試料Cが100重量部の泥油20に対して塩化ナトリウム水溶液3が50重量部、および分離促進剤2が0重量部混合されており、試料Dが100重量部の泥油20に対して塩化ナトリウム水溶液3が0重量部、および分離促進剤2が10重量部混合されており、試料Eが100重量部の泥油20に対して塩化ナトリウム水溶液3が0重量部、および分離促進剤2が20重量部混合されており、試料Fが100重量部の泥油20に対して塩化ナトリウム水溶液3が15重量部、および分離促進剤2が5重量部混合されており、試料Gが100重量部の泥油20に対して塩化ナトリウム水溶液3が50重量部、および分離促進剤2が20重量部混合されており、試料Hが100重量部の泥油20に対して塩化ナトリウム水溶液3が10重量部、および分離促進剤2が3重量部混合されている。
【0045】
表1によると、試料Aの分離状態が「分離」となっており、試料Fおよび試料Gの分離状態が「一部分離」となっており、その他の資料B〜E・Hの分離状態が「分離せず」となっている。
このことから、本実施例における泥油20に対しては試料Aにおける塩化ナトリウム水溶液3および分離促進剤2の混合割合が油水分離に最も適した割合であると言え、試料Aにより泥油20を略完全に油21と水23とに分離することが可能となっている。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】静置することにより油と泥油と水とに分離した状態のエマルジョン系クーラント廃液を示す図である。
【図2】油中に水が分散してエマルジョンを構成している状態の泥油を示す図である。
【図3】水中に油が分散してエマルジョンを構成している状態の泥油を示す図である。
【図4】油中に分散している水滴同士が互いの表面の電荷により反発する様子を示す図である。
【図5】水中に分散している油滴同士が互いの表面の電荷により反発する様子を示す図である。
【図6】W/O型エマルジョンに構成されているエマルジョン系クーラント廃液に塩化ナトリウム水溶液および分離促進剤を添加する様子を示す図である。
【図7】O/W型エマルジョンに構成されているエマルジョン系クーラント廃液に塩化ナトリウム水溶液および分離促進剤を添加する様子を示す図である。
【図8】油中に分散している水滴同士が互いに接近する様子を示す図である。
【図9】水中に分散している油滴同士が互いに接近する様子を示す図である。
【図10】油中に分散していた水滴同士が合一化する様子を示す図である。
【図11】水中に分散していた油滴同士が合一化する様子を示す図である。
【図12】油と水とに分離した泥油を示す図である。
【符号の説明】
【0047】
1 エマルジョン系クーラント廃液
2 分離促進剤
3 塩化ナトリウム
10 油分
20 泥油
21 油
23 水
25 界面活性剤
25a 親油基
25b 親水基
30 水分
【技術分野】
【0001】
本発明は、エマルジョン系クーラント廃液から油分を分離するための分離促進剤および分離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一般的に、エマルジョン系の水溶性クーラント廃液は、水溶性クーラントに不水溶性油および水が混合して構成されている。
このようなエマルジョン系水溶性クーラント廃液は、静置することによりその一部が油分と水分に自然分離するが、その他の部分は、水溶性クーラントに含まれる界面活性剤により、一般にW/O型エマルジョンと呼ばれる水分が油分中に安定的に分散してエマルジョンとなった状態、またはO/W型エマルジョンと呼ばれる油分が水分中に安定的に分散してエマルジョンとなった状態の泥油として存在している。
【0003】
現状では、前述のエマルジョン系水溶性クーラント廃液から分離した油分は有価物として回収されて再度利用され、分離した水分は排水処理されており、残りの泥油として存在している部分はそのまま処分されている。
しかし、泥油として存在している部分から油分をさらに分離して回収することができれば資源の有効利用という観点からも好ましい。
【0004】
そこで、従来においては、次のような方法により泥油から油分を分離することが行われている。
例えば、遠心力により泥油の油分と水分とを分離したり、泥油を加温することにより油分と水分とに分離したりすることが行われている。
【0005】
しかし、遠心力により油分と水分とを分離した場合、油分と水溶性クーラント(水分)との比重差が小さいため、完全に分離することができず、泥油の多くの部分が残存することとなっていた。
また、遠心分離機の構造が複雑であるため機器のメンテナンスが煩雑であったり、遠心分離機の運転時の騒音が大きかったり、遠心分離機などの設備が高価であるという問題があった。
また、泥油を加温して油分と水分とを分離する場合には、泥油を加温することにより設備の周辺に臭気が発生したり、泥油の加温は蒸気を用いて行われるため加温のための費用が高価になったりという問題があった。
【0006】
また、エマルジョン系水溶性クーラント廃液における前記泥油の処理方法としては、特許文献1に示すように、エマルジョン系水溶性クーラント廃液に電解質を添加して、乳化安定化している油分を浮上分離しやすくした後に、酸を添加してpHを調整することによりエマルジョンを破壊し、その後そのPHを維持しながら無機凝集剤を添加することにより処理する方法が開示されている。
このように特許文献1に示される処理方法では、処理装置の小型化などを図ることが可能となっているが、泥油の油分と水分とへの分離を充分に行うことは困難であった。
【特許文献1】特開平11−197405号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明においては、上述の問題を解決すべく、泥油の油分と水分とへの分離を効率よく充分に行うことができるエマルジョン系クーラント廃液の分離促進剤および分離方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するエマルジョン系クーラント廃液の分離促進剤および分離方法は、以下の特徴を有する。
即ち、請求項1記載の如く、エマルジョン系クーラント廃液から油分を分離するための分離促進剤であって、水100重量部に対して、水酸化ナトリウムを1〜10重量部、水酸化カリウムを1〜10重量部、および高分子水溶性カチオンポリマーを1〜5重量部含有する。
【0009】
また、請求項2記載の如く、前記高分子水溶性カチオンポリマーは、ポリエチレンイミン系重合物、ジシアンジアミド、ポリアリルアミン系重合物、ジアリルアミン系重合物、ジアリルアミン−マレイン酸共重合物、および4級アンモニウム塩の何れか一つにて構成される。
【0010】
また、請求項3記載の如く、請求項1または請求項2に記載のエマルジョン系クーラント廃液の分離促進剤を用いて、エマルジョン系クーラント廃液から油分を分離する分離方法であって、前記エマルジョン系クーラント廃液と、前記分離促進剤と、塩化ナトリウム水溶液とを混合する
【0011】
また、請求項4記載の如く、前記エマルジョン系クーラント廃液に混合される前記分離促進剤は、水100重量部に対して2〜50重量部に希釈され、前記塩化ナトリウム水溶液は、水100重量部に対して塩化ナトリウム5〜35重量部を含有する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、例えばW/O型エマルジョンの場合、油中に安定的に分散している水滴の表面の電荷を中和するとともに、界面活性剤の親水基を疎水化させ、エマルジョン化している泥油中の水滴同士を効率良く合一化させて、泥油を水と油とに充分に分離させることが可能となる。
また、O/W型エマルジョンの場合も同様の効果により、泥油を水と油とに充分に分離させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
次に、本発明を実施するための形態を、添付の図面を用いて説明する。
【0014】
本例における分離促進剤2は、エマルジョン系クーラント廃液1と混合することにより、エマルジョン系クーラント廃液1の油分と水分との分離を促進して、効率良く充分な分離を可能とするものである。
【0015】
本分離促進剤2は、例えば水、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、および高分子水溶性カチオンポリマーを含有しており、これらの各成分の含有割合は、水100重量部に対して、水酸化ナトリウムが1〜10重量部、水酸化カリウムが1〜10重量部、および高分子水溶性カチオンポリマーが1〜5重量部となっている。
また、前記各成分の含有割合を、水100重量部に対して、水酸化ナトリウムを1〜5重量部、水酸化カリウムを1〜5重量部、および高分子水溶性カチオンポリマーを1〜3重量部とすることがさらに好ましい。
【0016】
分離促進剤2の前記高分子水溶性カチオンポリマーとしては、例えばポリエチレンイミン系重合物、ジシアンジアミド、ポリアリルアミン系重合物、ジアリルアミン系重合物、ジアリルアミン−マレイン酸共重合物、および4級アンモニウム塩の何れか一つが用いられる。
【0017】
一方、前記分離促進剤2による油分と水分への分離対象となるエマルジョン系クーラント廃液1(以下、単に「廃液1」と記載する)は、例えば水溶性クーラントと不水溶性油と水との混合物であり、その混合比は、水溶性クーラント:不水溶性油:水=5〜30重量部:50〜80重量部:10〜50重量部程度となっている。
【0018】
図1に示すように、前記廃液1は、静置することによりその一部が油分10と水分30とに自然分離するが、その他の部分として泥油20が残存することとなる。
この泥油20は、W/O型エマルジョンの場合、図2に示すように、水溶性クーラントに含まれる界面活性剤25により水23が油21中に安定的に分散しており、エマルジョンを構成した状態にある。
また、泥油20がO/W型エマルジョンの場合は、図3に示すように、前記界面活性剤25により油21が水23中に安定的に分散してエマルジョンを構成した状態となる。
【0019】
界面活性剤25は親油基25aと親水基25bとを有した両親媒性物質であり、本例の前記泥油20内においては、前記親水基25bが水23側に配向し、前記親油基25aは油21側に配向して、油中水滴型(W/O型)エマルジョン、または水中油滴型(O/W型)エマルジョンを形成している。
前記親油基25aは炭化水素鎖により構成されており、前記親水基25bはカルボキシル基、アミノ基、アミド基、および水酸基などにより構成されている。
【0020】
水溶性クーラントの界面活性剤25は、一般的に陰イオン性界面活性剤および非イオン性界面活性剤を含有している。
陰イオン性界面活性剤としては、ラウリル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルフォン酸塩、アルカンスルホン酸ナトリウム、アルキルジフェニルエーテルスルホン酸ナトリウム、アルキル硫酸エステルナトリウム塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステルナトリウム塩、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウムなどが用いられている。
【0021】
また、非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン・ブロックポリマー、ポリオキシエチレンポリペンジルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンミリスチルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油などが用いられている。
【0022】
また、前記陰イオン性界面活性剤および非イオン性界面活性剤としては、その分子量が例えば100〜1000000程度のもの、さらに好ましくは1000〜30000程度のものが用いられる。
さらに、前記各界面活性剤25は、例えばpH5〜10の範囲で安定して存在しており、HLB(Hydrophile-Lipophile Balance)=3〜20程度、さらに好ましくはHLB=6〜15程度に設定されている。
【0023】
また、前記廃液1に含まれる不水溶性油は、不水溶性の作動油、潤滑油、プレス油、摺動面油、ギア油、タービン油、加工油などの流動性を有する油である。
【0024】
次に、前記分離促進剤2を用いて前記廃液1の泥油20を油分と水分とに分離する方法について説明する。
まず、泥油20においては、前記界面活性剤25の親水基25bが分極した水23と結合(水和)しており、水23の表面は正の電荷を帯びている。従って、電気的反発により界面活性剤の親油基25aは、負の電荷を帯びることとなる。
つまり、図4に示すように、W/O型エマルジョンの場合、油21内に分散している各水滴(水23)に結合している界面活性剤の油接触部位には負の電荷が存在しているため水滴(水23)同士は電気的に反発することとなり、これによりエマルジョンが安定して形成されている。
一方、O/W型エマルジョンの場合は、図5に示すように、水23内に分散している各油滴(油21)に結合している界面活性剤の水接触部位には正の電荷が存在しているため油滴(油21)同士は電気的に反発し、エマルジョンが安定して形成されている。
【0025】
このように、W/O型エマルジョンまたはO/W型エマルジョンとして安定的に分散して構成されている泥油20を油分と水分とに分離させるために、図6および図7に示すように、本例では泥油20に前記分離促進剤2および電解質である塩化ナトリウム水溶液3を添加して、泥油20と分離促進剤2と塩化ナトリウム水溶液3とを混合している(図6にはW/O型エマルジョンの場合を、図7にはO/W型エマルジョンの場合を示している)。
【0026】
泥油20に混合する分離促進剤2は水にて希釈した状態で泥油20に添加される。
この場合、分離促進剤2の水による希釈割合は、例えば水100重量部に対して分離促進剤2を2〜50重量部としており、さらに好ましくは、水100重量部に対して分離促進剤2を5〜20重量部としている。
【0027】
また、泥油20に混合する塩化ナトリウム水溶液3は、例えば水100重量部に対して5〜35重量部の塩化ナトリウムを溶解させたものを用いており、さらに好ましくは水100重量部に対して20〜30重量部の塩化ナトリウムを溶解させたものを用いている。
【0028】
このような濃度に調製された塩化ナトリウム水溶液3を泥油20に混合することにより、前記界面活性剤25、特に陰イオン性界面活性剤が結合している水23の表面が電気的に中和される(つまり、水23の表面における正の電荷が小さくなる)。
これにより、水23に結合している界面活性剤25の親油基25aに帯電している負の電荷も、同様に小さくなる。
【0029】
また、前記界面活性剤25、特に非イオン性界面活性剤においては、混合された分離促進剤2に含まれる水酸化ナトリウムや水酸化カリウムによって周囲が塩基性雰囲気となるため、親油基25aと親水基25bとのバランスが崩れて親水基25bが作用しなくなり、親水基25bが水23から離れることとなる。
なお、分離促進剤2の水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムは、前記水23の表面を電気的に中和する作用も有している。
【0030】
このように、水滴(水23)または油滴(油21)の表面が電気的に中和されるとともに、界面活性剤25の親水基25bの水23に対する水和状態が阻害されることにより、水滴(水23)同士または油滴(油21)同士の反発力が弱くなるため、図8および図9に示すように、分散している水滴(水23)同士または油滴(油21)同士がその分子間引力により互いに接近して、図10および図11に示すように、ついには合一化して水滴(水23)または油滴(油21)が大きくなっていく。
【0031】
そして、水滴(水23)または油滴(油21)がある適度以上の大きさになると、水23と油21との比重差により水23が降下し、または油21が浮上して、図12に示すように、水23と油21とが分離することとなる。
【0032】
このように、泥油20に塩化ナトリウム水溶液3および分離促進剤2を混合することで、塩化ナトリウム水溶液3、ならびに分離促進剤2内の水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムの作用により、安定して存在していたエマルジョンを破壊し、また塩析反応が進行して泥油20が水23と油21とに分離する。
つまり、泥油20に塩化ナトリウム水溶液3および分離促進剤2を混合することにより、油21中に分散している水23の表面の電荷を中和するとともに、界面活性剤25の親水基25bの機能を阻害して疎水化させ、エマルジョンを構成している水滴(水23)同士または油滴(油21)同士を効率良く合一化させて、泥油20を水23と油21とに充分に分離させることが可能となっている。
【0033】
また、この場合、分離処理は、泥油20に塩化ナトリウム水溶液3および分離促進剤2を添加して攪拌するだけであるので、処理設備を簡単な構成にすることができ、安価にかつ容易な作業で分離することができる。
なお、泥油20から分離した水23は排水処理場などに排水することができ、分離した油21は回収して燃料などとして再利用することが可能である。
【0034】
また、泥油20中に含まれている界面活性剤25やその他の不純物などは、分離促進剤2に含有される高分子水溶性カチオンポリマーにより凝集され、水23内における沈殿物となるため、分離した水23の澄度を向上させることができる。
なお、分離した水23内には、泥油20に添加した塩化ナトリウム水溶液3や分離促進剤2に起因するナトリウム分やカリウム分が含まれているため、分離した水23を分離処理を行う前の泥油20に添加することで、分離処理を行う際に泥油20に添加する塩化ナトリウム水溶液3や分離促進剤2の量を削減することが可能となる。
【0035】
次に、前記泥油20に塩化ナトリウム水溶液3および分離促進剤2を混合しての油21と水23との分離処理を実際に行った場合の、油21と水23との分離状況の結果について、以下の実施例1および実施例2により説明する。
【実施例1】
【0036】
本実施例の分離処理は、前記泥油20に所定量の塩化ナトリウム水溶液3および所定量の分離促進剤2を添加した後に所定時間攪拌し、さらに所定時間静置することにより行い、油21と水23との分離状況は、油21と水23との分離率を確認することで行った。
泥油20に混合する前記塩化ナトリウム水溶液3および前記分離促進剤2としては、25重量%濃度の塩化ナトリウム水溶液3および希釈率10%の分離促進剤2を用いた。
【0037】
また、本実施例では(表1)に示す各試料a〜dのように、泥油20に混合する塩化ナトリウム水溶液3および分離促進剤2の量をそれぞれ変化させて、油21と水23との分離率を確認した。
【0038】
【表1】
【0039】
各試料a〜dにおける塩化ナトリウム水溶液3および分離促進剤2の混合量は、試料aが100重量部の泥油20に対して塩化ナトリウム水溶液3が33重量部、および分離促進剤2が23重量部混合されており、試料bが100重量部の泥油20に対して塩化ナトリウム水溶液3が27重量部、および分離促進剤2が27重量部混合されており、試料aが100重量部の泥油20に対して塩化ナトリウム水溶液3が33重量部、および分離促進剤2が17重量部混合されており、試料aが100重量部の泥油20に対して塩化ナトリウム水溶液3が23重量部、および分離促進剤2が23重量部混合されている。
【0040】
表1によると、試料aの分離率が94%で最も高く、試料b〜dはともに88%であった。
このことから、本実施例における泥油20に対しては、試料a〜dのなかでは試料aにおける塩化ナトリウム水溶液3および分離促進剤2の混合割合が油水分離に最も適した割合であるということが言え、試料aにより泥油20を略完全に油21と水23とに分離することが可能となっている。
【実施例2】
【0041】
本実施例の分離処理は、前記泥油20に所定量の塩化ナトリウム水溶液3および所定量の分離促進剤2を添加した後に所定時間攪拌し、さらに所定時間静置することにより行い、油21と水23との分離状況の確認は、「分離」、「若干分離」、「分離せず」の3段階の評価により行った。
泥油20に混合する前記塩化ナトリウム水溶液3および前記分離促進剤2としては、25重量%濃度の塩化ナトリウム水溶液3および希釈率10%の分離促進剤2を用いた。
【0042】
また、本実施例では(表2)に示す各試料A〜Hのように、泥油20に混合する塩化ナトリウム水溶液3および分離促進剤2の量をそれぞれ変化させて、油21と水23との分離状態を確認した。
【0043】
【表2】
【0044】
各試料A〜Hにおける塩化ナトリウム水溶液3および分離促進剤2の混合量は、試料Aが100重量部の泥油20に対して塩化ナトリウム水溶液3が30重量部、および分離促進剤2が10重量部混合されており、試料Bが100重量部の泥油20に対して塩化ナトリウム水溶液3が30重量部、および分離促進剤2が0重量部混合されており、試料Cが100重量部の泥油20に対して塩化ナトリウム水溶液3が50重量部、および分離促進剤2が0重量部混合されており、試料Dが100重量部の泥油20に対して塩化ナトリウム水溶液3が0重量部、および分離促進剤2が10重量部混合されており、試料Eが100重量部の泥油20に対して塩化ナトリウム水溶液3が0重量部、および分離促進剤2が20重量部混合されており、試料Fが100重量部の泥油20に対して塩化ナトリウム水溶液3が15重量部、および分離促進剤2が5重量部混合されており、試料Gが100重量部の泥油20に対して塩化ナトリウム水溶液3が50重量部、および分離促進剤2が20重量部混合されており、試料Hが100重量部の泥油20に対して塩化ナトリウム水溶液3が10重量部、および分離促進剤2が3重量部混合されている。
【0045】
表1によると、試料Aの分離状態が「分離」となっており、試料Fおよび試料Gの分離状態が「一部分離」となっており、その他の資料B〜E・Hの分離状態が「分離せず」となっている。
このことから、本実施例における泥油20に対しては試料Aにおける塩化ナトリウム水溶液3および分離促進剤2の混合割合が油水分離に最も適した割合であると言え、試料Aにより泥油20を略完全に油21と水23とに分離することが可能となっている。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】静置することにより油と泥油と水とに分離した状態のエマルジョン系クーラント廃液を示す図である。
【図2】油中に水が分散してエマルジョンを構成している状態の泥油を示す図である。
【図3】水中に油が分散してエマルジョンを構成している状態の泥油を示す図である。
【図4】油中に分散している水滴同士が互いの表面の電荷により反発する様子を示す図である。
【図5】水中に分散している油滴同士が互いの表面の電荷により反発する様子を示す図である。
【図6】W/O型エマルジョンに構成されているエマルジョン系クーラント廃液に塩化ナトリウム水溶液および分離促進剤を添加する様子を示す図である。
【図7】O/W型エマルジョンに構成されているエマルジョン系クーラント廃液に塩化ナトリウム水溶液および分離促進剤を添加する様子を示す図である。
【図8】油中に分散している水滴同士が互いに接近する様子を示す図である。
【図9】水中に分散している油滴同士が互いに接近する様子を示す図である。
【図10】油中に分散していた水滴同士が合一化する様子を示す図である。
【図11】水中に分散していた油滴同士が合一化する様子を示す図である。
【図12】油と水とに分離した泥油を示す図である。
【符号の説明】
【0047】
1 エマルジョン系クーラント廃液
2 分離促進剤
3 塩化ナトリウム
10 油分
20 泥油
21 油
23 水
25 界面活性剤
25a 親油基
25b 親水基
30 水分
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エマルジョン系クーラント廃液から油分を分離するための分離促進剤であって、
水100重量部に対して、水酸化ナトリウムを1〜10重量部、水酸化カリウムを1〜10重量部、および高分子水溶性カチオンポリマーを1〜5重量部含有する、
ことを特徴とするエマルジョン系クーラント廃液の分離促進剤。
【請求項2】
前記高分子水溶性カチオンポリマーは、ポリエチレンイミン系重合物、ジシアンジアミド、ポリアリルアミン系重合物、ジアリルアミン系重合物、ジアリルアミン−マレイン酸共重合物、および4級アンモニウム塩の何れか一つにて構成される、
ことを特徴とする請求項1に記載のエマルジョン系クーラント廃液の分離促進剤。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のエマルジョン系クーラント廃液の分離促進剤を用いて、エマルジョン系クーラント廃液から油分を分離する分離方法であって、
前記エマルジョン系クーラント廃液と、前記分離促進剤と、塩化ナトリウム水溶液とを混合する、
ことを特徴とするエマルジョン系クーラント廃液の分離方法。
【請求項4】
前記エマルジョン系クーラント廃液に混合される前記分離促進剤は、水100重量部に対して2〜50重量部に希釈され、
前記塩化ナトリウム水溶液は、水100重量部に対して塩化ナトリウム5〜35重量部を含有する、
ことを特徴とする請求項3に記載のエマルジョン系クーラント廃液の分離方法。
【請求項1】
エマルジョン系クーラント廃液から油分を分離するための分離促進剤であって、
水100重量部に対して、水酸化ナトリウムを1〜10重量部、水酸化カリウムを1〜10重量部、および高分子水溶性カチオンポリマーを1〜5重量部含有する、
ことを特徴とするエマルジョン系クーラント廃液の分離促進剤。
【請求項2】
前記高分子水溶性カチオンポリマーは、ポリエチレンイミン系重合物、ジシアンジアミド、ポリアリルアミン系重合物、ジアリルアミン系重合物、ジアリルアミン−マレイン酸共重合物、および4級アンモニウム塩の何れか一つにて構成される、
ことを特徴とする請求項1に記載のエマルジョン系クーラント廃液の分離促進剤。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のエマルジョン系クーラント廃液の分離促進剤を用いて、エマルジョン系クーラント廃液から油分を分離する分離方法であって、
前記エマルジョン系クーラント廃液と、前記分離促進剤と、塩化ナトリウム水溶液とを混合する、
ことを特徴とするエマルジョン系クーラント廃液の分離方法。
【請求項4】
前記エマルジョン系クーラント廃液に混合される前記分離促進剤は、水100重量部に対して2〜50重量部に希釈され、
前記塩化ナトリウム水溶液は、水100重量部に対して塩化ナトリウム5〜35重量部を含有する、
ことを特徴とする請求項3に記載のエマルジョン系クーラント廃液の分離方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2009−247943(P2009−247943A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−96527(P2008−96527)
【出願日】平成20年4月2日(2008.4.2)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(591050796)豊田化学工業株式会社 (3)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年4月2日(2008.4.2)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(591050796)豊田化学工業株式会社 (3)
【Fターム(参考)】
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