説明

エラストマーの仕上げ方法および装置

【課題】エラストマー、たとえばイソブチレン系エラストマーのような温度感受性のエラストマーを脱水し乾燥するための改善された方法の必要が依然として存在する。特に、単一の仕上げラインにおいて大生産量のイソブチレン系エラストマーを仕上げることができる方法および装置の必要が存在する。
【解決手段】エラストマーの製造では、重合工程から得られた製品は多くの場合スラリーの形態をしている。本明細書で説明されるのは、エラストマーを「仕上げる」、すなわちエラストマーを脱水し乾燥する装置および方法である。本方法は、水およびエラストマーを含むスラリーを取得する工程、第一の脱水装置中に該スラリーを通して湿ったエラストマークラムを製造する工程であって、該第一の脱水装置が2の脱水押出機を並列に含む工程、第二の脱水装置中に該湿ったエラストマークラムを通す工程、および次いで乾燥装置中に該湿ったエラストマークラムを通して乾燥されたエラストマークラムを製造する工程、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示発明はエラストマーの仕上げ方法に関する。より詳しくは、本開示発明は水スラリー状エラストマーを脱水し乾燥する方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エラストマーポリマー、たとえばイソブチレン系エラストマーの製造では、重合工程から得られた製品は多くの場合水性スラリーの形態をしている。水スラリー状エラストマーは次に「仕上げ」られて、最終エラストマー製品が得られる。すなわちエラストマーは脱水され、乾燥され、そして乾燥されたエラストマーは冷却されて、その結果乾燥されたエラストマーはベールにされ/包装されることができる。
【0003】
米国特許第5,729,911号(特許文献1)はEP(D)Mを連続的に脱水し/乾燥する方法を開示している。この方法は、湿ったEP(D)Mクラムを特有の構造的特徴を有する単軸押出機中に連続的に供給する工程、および該押出機の長さ方向に湿ったクラムを搬送する工程を含み、該押出機は水を除去し押出機のダイプレート通過前の圧力を増加しおよびクラムを加熱するのに十分な条件下にある。このようにして押出された乾燥クラムは、1%未満の水を含有する特徴を有する。
【0004】
しかし、EP(D)Mエラストマーを仕上げる方法は他の種類のエラストマーには有効でないことがある。たとえば、イソブチレン系エラストマーのようないくつかのエラストマーは温度感受性であり、EP(D)Mの脱水および乾燥方法に一般的に見られる極端な温度に付されると分解してしまう。さらに、異なったエラストマーは異なったスラリー化学挙動および異なった粘弾性を有し、これらはエラストマーを脱水し乾燥する能力に影響を与える。たとえば、ブチルエラストマー、特にハロブチルエラストマーはEP(D)Mのスラリーよりも高いpHを有する。このより高いpHはブチルエラストマーのクラムをより滑りやすくし、したがってEP(D)Mクラムよりも脱水し乾燥するのを困難にする。さらなるエラストマー特性、たとえばムーニー粘度、分子量分布および長鎖分岐の有無も、エラストマーを脱水し乾燥する能力に影響を与えることがある。
【0005】
典型的な仕上げライン、たとえば米国特許第5,041,249号(特許文献2)に記載されたものは脱水押出機、任意的な中間乾燥押出機、および乾燥機からなる。かかる仕上げラインは、単位時間に仕上げることができるエラストマーの量に制限がある。一つのボトルネックは脱水工程にある。脱水押出機がスラリーを受け入れると、これは押出機バレル内でクラムを機械的に絞ることによってクラム中に吸収されていた水を除去し、かつ一部の少量の水はダイからフラッシュ蒸発する。脱水押出機はエラストマークラムから大量の水を除去するのでスラリー水の中のまたはクラム表面上の汚染物質(界面活性剤等)の影響を受けやすく、これらの汚染物質はバレル内での滑りを誘発しおよび/またはウォーターロギング(湛水)を引き起こすことがあり、そうなるとクラムが浮遊してもはや搬送されることができなくなる。
【0006】
仕上げラインの能力へのこのほかの制限は、乾燥押出機に供給されたエラストマークラム中の水の量である。乾燥押出機中でエラストマークラムはせん断力によって加熱され、乾燥押出機のダイ出口から水がフラッシュ蒸発除去される。乾燥押出機に供給されたエラストマークラムの水分レベルが高すぎると、クラムは適切に乾燥されないことになる。しかし、供給原料の水分レベルが低すぎると、乾燥押出機のダイからの不十分な水のフラッシュ蒸発の故に最終エラストマークラム製品が依然として湿っていることになる。かくして、乾燥押出機に入るエラストマークラムの水分レベルがその内になければならない狭い操作許容範囲は、仕上げラインの能力を増加する上でのもう一つのボトルネックとして働く。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第5,729,911号明細書
【特許文献2】米国特許第5,041,249号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、エラストマー、たとえばイソブチレン系エラストマーのような温度感受性のエラストマーを脱水し乾燥するための改善された方法の必要が依然として存在する。特に、単一の仕上げラインにおいて大生産量のイソブチレン系エラストマーを仕上げることができる方法および装置の必要が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
1の側面では、本方法は、エラストマーと、スラリーの重量基準で30.0〜70.0重量%の水と、を含む該スラリーを取得する工程、少なくとも2の脱水押出機を並列に含む第一の脱水装置中に該スラリーを通して湿ったエラストマークラムを製造する工程であって、該湿ったエラストマークラムが該湿ったエラストマークラムの重量基準で3.0〜20.0重量%の水を含む工程、第二の脱水装置中に該湿ったエラストマークラムを通して部分的に乾燥されたエラストマークラムを製造する工程であって、該部分的に乾燥されたエラストマークラムが該部分的に乾燥されたエラストマークラムの重量基準で2.0〜10.0重量%の水を含む工程、および乾燥装置中に該部分的に乾燥されたエラストマークラムを通して乾燥されたエラストマークラムを製造する工程であって、該乾燥されたエラストマークラムが該乾燥されたエラストマークラムの重量基準で1.0重量%以下の水を含む工程、を含む。
【0010】
1の実施形態において、および上で開示された側面との組み合わせで、本方法は、第一の脱水装置中にスラリーを通す前に少なくとも1の脱水スクリーンにスラリーを通す工程、をさらに含む。
【0011】
他の側面では、本方法は、エラストマーと、スラリーの重量基準で70.0〜99.0重量%の水と、を含む該スラリーを取得する工程、該スラリーを少なくとも2の流れに分ける工程、別々の脱水スクリーンに各該流れを通して部分的に脱水されたスラリーの流れを得る工程であって、該部分的に脱水されたスラリーが該スラリーの重量基準で30.0〜70.0重量%の水を含む工程、別々の脱水押出機中に該部分的に脱水されたスラリーの各流れを通す工程であって、該脱水押出機が並列に操作されて、湿ったエラストマークラムの重量基準で5.0〜18.0重量%の水をそれぞれ含む該湿ったエラストマークラムの流れを製造する工程、該湿ったエラストマークラムの流れを一緒にする工程、脱水装置中に該湿ったエラストマークラムの一緒にされた流れを通して、部分的に乾燥されたエラストマークラムの重量基準で2.0〜10.0重量%の水を含む該部分的に乾燥されたエラストマークラムを形成する工程、および200℃以下の温度で操作される乾燥装置中に該部分的に乾燥されたエラストマークラムを通して、乾燥されたエラストマークラムの重量基準で1.0重量%以下の水を含む該乾燥されたエラストマークラムを製造する工程、をさらに含む。
【発明の効果】
【0012】
上で開示された方法および実施形態は、温度感受性のエラストマーを脱水し乾燥するのに有用であることがある。ある実施形態では、温度感受性エラストマーは、スチレン−ブタジエンゴム、溶液スチレン−ブタジエンゴム、イソプレン−ブタジエンゴム、ポリイソプレンゴム、イソブチレン系エラストマー、ハロゲン化イソブチレン系エラストマーおよびこれらの混合物から選択される。
【0013】
1の実施形態において、および上で開示された側面または実施形態のいずれかとの組み合わせで、本方法は毎時少なくとも6トンの乾燥されたエラストマークラムを製造する能力がある。他の実施形態では、本方法は毎時少なくとも8トン、または少なくとも10トン、または少なくとも12トンのエラストマークラムを製造する能力がある。
【0014】
1の実施形態において、および上で開示された側面または実施形態のいずれかとの組み合わせで、本発明の乾燥装置は少なくとも2のスクリューを有する押出機を含む。
【0015】
他の実施形態において、および上で開示された側面または実施形態のいずれかとの組み合わせで、乾燥装置内の圧力を超える圧力で、不活性ガスが乾燥装置の圧縮部中に注入される。
【0016】
本開示発明のこれらのおよび他の特徴、側面および利点は、以下の説明および添付された特許請求の範囲を考慮して、さらによく理解される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1はエラストマーを脱水し乾燥する装置の実施形態を例示する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の様々な特定の実施形態、変形および実施例が、特許請求された発明の理解の目的のためにここに採用された好まれる実施形態および定義を含めて、これから説明される。以下の詳細な説明は特定の好まれる実施形態を示すけれども、これらの実施形態は例示にすぎず、本発明が他の仕方で実施されることができることを当業者は正しく理解するだろう。侵害を認定する目的のためには、本発明の範囲は、添付された特許請求の範囲の請求項のうちのいずれか1以上のことを、これらの均等物および文言通りの請求項と均等である要素または限定物を含めて、言う。本「発明」への何らかの言及は、請求項によって規定された本発明の1以上のことを言っていることがあり、必ずしもその全てを言っているとは限らない。
【0019】
「エラストマー」の語は、本明細書で用いられるときは、「大変形から回復する能力があり、かつ沸騰溶媒中に本質的に不溶性である(が膨潤することはできる)状態に変性されることができる、またはすでにそのように変性されている材料」というASTM D1566の定義に合致する任意のポリマーまたはポリマーの組み合わせを言う。本明細書で用いられる「エラストマー」の語は「ゴム」の語と互換的に用いられることができる。好まれるエラストマーは、DSCによって測定されることができる融点がない、またはDSCによって融点が測定されることができるときは40℃未満、もしくは好ましくは20℃未満、もしくは0℃未満である融点を有する。好まれるエラストマーは、DSCによって測定された−50℃以下のTgを有する。
【0020】
本明細書で用いられる「イソブチレン系エラストマー」とは、少なくとも70モル%のイソブチレン由来の繰り返し単位を含むエラストマーまたはポリマーを言う。これらのポリマーは、Cイソモノオレフィン由来の単位、たとえばイソブチレン由来の単位と、少なくとも1の他の重合可能な単位と、のランダムコポリマーと説明されることができる。このイソブチレン系エラストマーはハロゲン化されていてもよいし、されていなくてもよい。
【0021】
本明細書で用いられる「スラリー」の語は、エラストマーと水との混合物に、重合工程から残っていることがある何らかの残留炭化水素揮発分が加わったものを言う。
【0022】
エラストマーの製造では、重合工程から得られた製品は多くの場合スラリーの形態をしている。本明細書に記載されたのは、エラストマーを「仕上げる」、すなわちエラストマーを脱水し乾燥する装置および方法である。たとえば、1の実施形態では、本方法は、スラリーを取得する工程、第一の脱水装置中に該スラリーを通して湿ったエラストマークラムを製造する工程、第二の脱水装置中に該湿ったエラストマークラムを通す工程、次いで乾燥装置中に該湿ったエラストマークラムを通して乾燥されたエラストマークラムを製造する工程、を含む。
【0023】
ここに記載された方法および装置は、温度感受性エラストマーを仕上げるのに有用である。温度感受性エラストマーとは、仕上げ方法の間に極端な温度に曝露されると分解を起こすようなエラストマーである。高い温度は、エラストマーの分解、スコーチ(焼け焦げ)もしくは発火、安定剤および他の添加剤の化学構造の変化、または下流装置の汚染を引き起こすことがある。温度感受性エラストマーは230℃より高い温度に曝露されると、変色し、ゲルまたは架橋を形成し、そして分解することがある。ここで説明される仕上げ方法は、スチレン−ブタジエンゴム、溶液スチレン−ブタジエンゴム、イソプレン−ブタジエンゴム、ポリイソプレンゴム、イソブチレン系エラストマー、ハロゲン化イソブチレン系エラストマーおよびこれらの混合物から選択された温度感受性エラストマーを仕上げるのに特に有用であることがある。
【0024】
好まれる実施形態では、本明細書に記載された仕上げ方法は、イソブチレン系エラストマー、たとえばこのエラストマーのハロゲン化変性物を仕上げるのに用いられることができる。イソブチレン系エラストマーの非限定的な例は、Cモノオレフィン系ゴム、ブチルゴム(イソプレン−イソブチレンゴム、「IIR」)、分枝(「星状分枝」)ブチルゴム、星状分枝ポリイソブチレンゴム、ハロゲン化ブチルゴム(たとえば、ブロモブチルまたはクロロブチル)、イソブチレンとパラ−メチルスチレンとのランダムコポリマー、これらのエラストマーのいずれかのハロゲン化変性物およびこれらの混合物を含む。
【0025】
1の実施形態では、イソブチレン系エラストマーは、0.5〜20.0モル%のパラ−メチルスチレンを含む、イソブチレンとパラ−メチルスチレンとのランダムコポリマーを含み、このランダムコポリマーでは、ベンジル基上に存在する60.0モル%までのメチル置換基が臭素または塩素原子を含んでおり、またさらにはこれらの酸またはエステル官能化変性物をも含んでいる。ある実施形態では、このランダムコポリマーは、少なくとも95.0重量%の該ポリマーが該ポリマーの平均パラ−アルキルスチレン含有量から10.0%以内のパラ−アルキルスチレン含有量を有するような、実質的に均一な組成分布を有する。典型的なポリマーは、ゲル浸透クロマトグラフィーによって測定された5.0未満の、あるいは2.5未満の狭い分子量分布(Mw/Mn)、200、000から2,000,000までの範囲の典型的な粘度平均分子量、および25,000〜750,000の範囲の典型的な数平均分子量の特徴を有する。
【0026】
他の実施形態では、イソブチレン系エラストマーは臭素化ポリ(イソブチレン−コ−p−メチルスチレン)(「BIMSM」)であることができる。BIMSMポリマーは一般に、該コポリマー中のモノマー由来単位の全量当たり0.1〜5.0モル%のブロモメチルスチレン基を含む。1の実施形態では、該ランダムコポリマーはC〜Cイソオレフィン(またはイソモノオレフィン)由来単位、パラ−メチルスチレン由来単位およびパラ−(ハロメチルスチレン)由来単位のコポリマーであり、パラ−(ハロメチルスチレン)単位はパラ−メチルスチレンの全数基準で0.4〜3.0モル%の範囲で該ポリマー中に存在し、パラ−メチルスチレン由来単位は該ポリマーの全重量基準で3.0〜15.0重量%の範囲で存在する。好まれる実施形態では、パラ−(ハロメチルスチレン)はパラ−(ブロモメチルスチレン)である。
【0027】
他の実施形態では、本明細書に記載された仕上げ方法は、ナノ複合材料を含有するエラストマーを仕上げるために用いられることができる。ナノ複合材料は、少なくとも一の次元の大きさがナノメートルの領域にある無機粒子を含有するポリマー系である。ナノ複合材料に用いられる無機粒子の一般的な種類はフィロケイ酸塩、すなわち、いわゆる「ナノクレー」または「クレー」の一般的な部類に由来する無機物質である。ある実施形態では、ナノ複合材料は、イソブチレン系エラストマーおよび膨潤性無機クレー物質、たとえば天然または合成のフィロケイ酸塩、とりわけスメクティッククレー、たとえばモンモリロナイト、ノントロナイト、バイデライト、フォルコンスコイト、ラポナイト、ヘクトライト、サポナイト、サウコナイト、マガダイト、ケニヤイト、ステヴェンサイト等、またそのほかにバーミキュライト、ハロイサイト、アルミン酸塩酸化物、ハイドロタルサイト等を含む。
【0028】
本明細書に記載された仕上げ方法および装置は、仕上げラインの操業において、より大きな柔軟性を可能にする。第一の脱水装置中に少なくとも2の脱水押出機を並列に有することは、仕上げラインがより大きい生産量のエラストマーを仕上げることを可能にするだけでなく、必要に応じてより小さい生産量のエラストマーを仕上げる柔軟性をも可能にする。さらに、第二の脱水装置は第一の脱水押出機からの変動する生産量を受け入れる能力がある。第一の脱水装置および第二の脱水装置はまた、乾燥装置がより広い範囲の供給ミル水分を有するエラストマークラムを乾燥することも可能にする。
【0029】
本明細書に記載された仕上げ方法および装置は、大生産量エラストマーの仕上げを可能にし、毎時少なくとも6トンのエラストマークラムを脱水し乾燥する能力がある。ある実施形態では、この方法および装置は、毎時少なくとも8トンのエラストマークラム、または毎時少なくとも10トンのエラストマークラム、または毎時少なくとも12トンのエラストマークラム、またはある実施形態では、毎時少なくとも15トンのエラストマークラムを脱水し乾燥する能力がある。
【0030】
本明細書に記載された仕上げ方法および装置は、従来の仕上げ方法と比較して仕上げ比の改善を可能にすることができる。仕上げラインの仕上げ比とは、毎時仕上げられるエラストマーのトン数と必要な押出機の数との比である。本明細書に記載された仕上げ方法が、従来の仕上げ方法を用いて同じ量のエラストマーを仕上げるのに必要とされるであろうよりも小さい設置面積および優れたエネルギー効率を有することを、改善された仕上げ比は可能にすることができる。ある実施形態では、本発明の仕上げ方法は少なくとも2.75、または少なくとも3、または少なくとも3.2の仕上げ比を達成する。
【0031】
本明細書に記載された方法および装置は、エラストマーを10分間以下で仕上げることを可能にする。すなわち、スラリーが第一の脱水装置に入った時から乾燥されたエラストマークラムが乾燥装置を出て行く時までが10分間以下、より好ましくは5分間以下である。ある実施形態では、スラリーが第一の脱水装置に入った時から乾燥されたエラストマークラムが乾燥装置を出て行く時までは3分間以下、または2分間以下、または1分間以下である。
【0032】
本仕上げ方法および装置は、これから図1を参照してより詳しく説明される。本仕上げ方法および装置は全体として、第一の脱水装置(「FDWD」)10中にスラリーを通して湿ったエラストマークラムを製造する工程、第二の脱水装置(「SDWD」)20中に該湿ったエラストマークラムを通して部分的に乾燥されたエラストマークラムを製造する工程、そして次に乾燥装置30中に該部分的に乾燥されたエラストマークラムを通して乾燥されたエラストマークラムを製造する工程、を含む。
【0033】
ある実施形態では、スラリーの全重量基準で1.0〜30.0重量%のエラストマー、または2.0〜20.0重量%のエラストマー、または5.0〜15.0重量%のエラストマーを含有するスラリーが、該スラリーをFDWDに導入する前に、1以上の脱水スクリーン(図1に示されていない。)に通される。1の実施形態では、2の脱水スクリーンが並列に存在する。ある実施形態では、脱水スクリーンは振動スクリーンである。脱水スクリーンを通った後、スラリーは該スラリーの全重量基準で30.0〜70.0重量%の水、または40.0〜60.0重量%の水、または45.0〜55.0重量%の水、または47.0〜53.0重量%の水を含むことができる。スラリー状エラストマークラムが脱水スクリーンから排出された後、これはさらなる水除去のためにFDWD10に供給される。
【0034】
FDWD10は1以上の押出機、好ましくは少なくとも2の押出機を並列に含む。FDWDは典型的には、押出機バレル中でエラストマーを機械的に絞ることによってスラリーを脱水する。ある実施形態では、少量の水がダイからフラッシュ蒸発することもある。水のフラッシュ蒸発とは、高められた温度および高められた(大気圧超の)圧力で押出機からエラストマーが出る時に生じる瞬間的な水の開放である。
【0035】
FDWDに用いられることができる押出機の例は、V.D.Anderson社もしくはFrench Oil Mill Machinery社によって製造されたExpeller(連続圧搾機)、またはWelding Engineers社、National Feed Screw Machine社もしくは日本製鋼所社によって製造されたSlurry Dewatering Unit(スラリー脱水装置)もしくはDewatering Extruder(脱水押出機)を含む。
【0036】
FDWDは好ましくは2以上の押出機を並列に含む。ある実施形態では、FDWD10は並列に配置された2の脱水押出機(「DWE」)(11および12)を含む。スラリーはDWEに押出機投入口13から入り、DWE中を通り、そこでスラリーは部分的に脱水され、湿ったエラストマークラムを製造してDWEを出口ダイ14から出て行く。FDWDの出口におけるミル水分(すなわち、湿ったエラストマークラムの含水量)は3.0〜20.0重量%の水の範囲、または5.0〜18.0重量%の水の範囲、または10.0〜17.0重量%の水の範囲、または12.0〜16.0重量%の水の範囲であることができる。
【0037】
FDWDから排出されるクラムは一般的に3インチ(7.62cm)(長さ)×1.5インチ(3.81cm)(直径)以下、または2インチ(5.08cm)(長さ)×1インチ(2.54cm)(直径)以下の大きさを有する。
【0038】
1の実施形態では、FDWDから「放出された」水および脱水スクリーンが用いられる場合にはそこからデカンテーションされた水は、微粒子回収系(示されていない。)に送られる。微粒子回収系において、水中のエラストマー微粒子は将来再処理するために回収されてもよい。微粒子回収系からの水は次に戻し水槽にポンプ輸送されまたは廃棄されることができる。
【0039】
FDWD10から放出された湿ったエラストマークラムは次にSDWD20中に供給される。ある実施形態では、FDWDから排出された湿ったエラストマークラムは、空気コンベアによってまたは傾斜振動コンベア15によってSDWDに搬送される。
【0040】
1の実施形態では、SDWD20は単軸押出機であることができる。ある実施形態では、SDWDは少なくとも8インチ(20.32cm)、または少なくとも10インチ(25.4cm)、または少なくとも12インチ(30.48cm)の押出機バレル直径を有する。有用なSDWDの例はV.D.Anderson社もしくはFrench Oil Mill Machinery社によって製造されたExpander(エキスパンダー)、日本製鋼所社、Welding Engineers社もしくはNational Feed Screw Machinery社によって製造された脱水押出機、または日本製鋼所社、Welding Engineers社もしくはNational Feed Screw Machinery社によって製造されたVolatile Control Unit(揮発分調節装置)を含む。
【0041】
ある実施形態では、少量の不活性ガスがSDWD中に注入される。好ましくは、該ガスはSDWDの圧縮部にSDWD内の圧力よりも高い圧力で注入される。圧縮部とは、圧力が大気圧を超えているSDWD内の領域である。該ガスはSDWD内で該ガスが何ら大気放出されることなくエラストマーと混合し、該混合物が圧縮部から大気圧下にあるダイまで移動すると、該混合物は膨張して爆発乾燥および水のフラッシュ蒸発を引き起こす。1の実施形態では、SDWDは複数のポートを有して、SDWDの長さ方向に沿ってある異なる点からの同時ガス注入を可能にすることができる。たとえば、SDWDは、2の異なるガスをSDWDの長さ方向に沿ってある異なる場所から同時にSDWD中に注入させることができる。不活性ガスは窒素、アルゴン、ヘリウム、ネオン、COまたはこれらの混合物を含むことができる。1の実施形態では、少なくとも窒素がSDWD中に注入される。SDWD中に注入されるガスの量はエラストマー処理量の5.0重量%未満、または3.0重量%未満、または2.0重量%未満であることができる。
【0042】
1の実施形態では、SDWDのダイ出口23におけるエラストマークラムのミル水分、すなわち含水量は2.0〜10.0重量%の水の範囲、または3.0〜8.0重量%の水の範囲、または4.0〜7.0重量%の水の範囲である。他の実施形態では、SDWDのダイ出口23におけるミル水分は5.0〜9.0重量%の水の範囲である。
【0043】
部分的に乾燥されたエラストマークラムがSDWDを出ると、これは乾燥装置30に輸送される。ある実施形態では、SDWDのダイ孔を通って下向きに排出されたエラストマークラムは機械式カッターによって切断される。1の実施形態では、エラストマークラムはSDWDから傾斜振動コンベア24上に落ち、乾燥装置30中に供給される。
【0044】
好まれる実施形態では、乾燥装置は乾燥押出機を含む。1の実施形態では、乾燥装置は2の押出機スクリューを有する。ある実施形態では、乾燥装置の押出機バレルは少なくとも4インチ(10.16cm)、または少なくとも6インチ(15.24cm)、好ましくは少なくとも8インチ(20.32cm)の直径を有する。乾燥押出機の例は以下のものに限定されることなく、V.D.Anderson社によって製造されたExpander(エキスパンダー)、Welding Engineers社もしくはNational Feed Screw Machine社によって製造されたVolatile Control Unit(揮発分調節装置)およびDual Worm Dryer(二軸ワーム乾燥機)、または日本製鋼所社によって製造された異方向回転もしくは同方向回転二軸押出機を含む。
【0045】
乾燥装置中で、部分的に乾燥されたエラストマークラムは押出機の1または複数のスクリューによる機械的せん断によって加熱され圧縮される。ある実施形態では、追加の熱が、加熱された押出機ジャケットを介して押出機に供給されてもよい。乾燥装置のダイ33から出ると、過熱された水は、蒸発し、フラッシュし、そして水蒸気が逃げ蒸発するための通路(孔)を生成し、このようにしてエラストマークラムを乾燥する。ある実施形態では、乾燥装置のダイ33の出口における乾燥されたエラストマークラムの温度は160〜200℃の範囲、または170〜190℃の範囲、または180〜190℃の範囲である。ある実施形態では、乾燥装置は1000〜1500psi(6.89〜10.34MPa)の範囲、もしくは1100〜1300psi(7.58〜8.96MPa)の範囲の操作圧力を有し、または約1200psi(8.27MPa)の圧力で操作される。
【0046】
ある実施形態では、少量の不活性ガスが乾燥装置中に注入される。好ましくは、該ガスは乾燥装置の圧縮部に乾燥装置内の圧力よりも高い圧力で注入される。乾燥装置の圧縮部とは、圧力が大気圧を超えている乾燥装置内の領域である。該ガスは乾燥装置内で該ガスが何ら大気放出されることなくエラストマーと混合し、該混合物が圧縮部から大気圧下にあるダイまで移動すると、該混合物は膨張して爆発乾燥および水のフラッシュ蒸発を引き起こす。1の実施形態では、乾燥装置は複数のポートを有して、乾燥装置の長さ方向に沿ってある異なる点からの同時ガス注入を可能にすることができる。たとえば、乾燥装置は、2の異なるガスを乾燥装置の長さ方向に沿ってある異なる場所から同時に乾燥装置中に注入させることができる。不活性ガスは窒素、アルゴン、ヘリウム、ネオン、COまたはこれらの混合物を含むことができる。1の実施形態では、少なくとも窒素が乾燥装置中に注入される。乾燥装置中に注入されるガスの量はエラストマー処理量の5.0重量%未満、または3.0重量%未満、または2.0重量%未満であることができる。乾燥装置中への不活性ガスの注入は英国特許第1590532号に、より詳しく記載されており、その内容は参照によって本明細書に取り込まれる。
【0047】
ある実施形態では、エラストマークラムは乾燥装置を出た後、機械式カッターによって切断される。ある実施形態では、さらなる乾燥のために、乾燥装置から排出されたクラムは流動床コンベア(「FBC」)(図1には示されていない。)でさらに乾燥される。FBCの加熱空気は在りうる残留表面水分の蒸発を助けることができる。
【0048】
本明細書に記載された仕上げ方法および装置は、1.0重量%未満の水を含有する乾燥されたエラストマークラムを製造する。ある実施形態では、乾燥されたエラストマークラムは0.5重量%未満の水、または0.3重量%未満の水、または0.10重量%未満の水、または0.05重量%未満の水を含む。
【0049】
本方法は、ハロゲン化されたイソブチレン系エラストマーを仕上げるのに、ハロブチルは特に熱感受性であるので、とりわけ有利である。1の実施形態では、本仕上げ工程中のいかなる点においてもエラストマークラムは230℃超の温度に曝露されることはない。温度が高すぎると、エラストマーは分解して(たとえば、ハロブチルの場合には脱ハロゲン化を開始して)エラストマー製品に変色したまたは斑点状/ゲル状の外観を与えることがある。好まれる実施形態では、エラストマークラムはFDWD、SDWDおよび乾燥装置中にある間、215℃超、または210℃超、または205℃超、または200℃超、または195℃超の温度に曝露されない。ある実施形態では、エラストマークラムはFDWDとSDWDと乾燥装置との任意の組み合わせ、および全仕上げ工程中にある間、230℃超、または215℃超、または210℃超、または205℃、または200℃超、または195℃超の温度に曝露されない。エラストマークラムの分解を回避するためには、エラストマークラムが乾燥装置中にある間、230℃超の温度に、またはある実施形態では、乾燥装置中にある間、200℃超の温度に、曝露されないことが重要である。
【0050】
エラストマークラムが曝露される温度はFDWD、SDWDまたは乾燥装置によって異なることがある。たとえば、エラストマークラムが曝露される温度はFDWD中およびSDWD中では乾燥装置中よりも低いことがある。ある実施形態では、エラストマークラムはFDWD中およびSDWD中にある間は230℃超の温度、または200℃超の温度、または180℃超の温度、または150℃超の温度、または100℃超の温度に曝露されないことがあり、乾燥装置中にある間は230℃超の温度、または215℃超の温度、または205℃超の温度、または200℃超の温度に曝露されないことがある。1の実施形態では、エラストマークラムはFDWD中およびSDWD中にある間は230℃超の温度に曝露されず、乾燥装置中にある間は200℃超の温度に曝露されない。他の実施形態では、エラストマークラムはFDWD中およびSDWD中にある間は150℃超の温度に曝露されず、乾燥装置中にある間は200℃超の温度に曝露されない。
【0051】
1の実施形態では、毎時少なくとも6トンのエラストマークラムを乾燥する方法が提供され、該方法は、(a)エラストマーと、スラリーの重量基準で30.0〜70.0重量%の水と、を含む該スラリーを取得する工程、(b)少なくとも2の脱水押出機を並列に含む第一の脱水装置中に該スラリーを通して湿ったエラストマークラムを製造する工程であって、該湿ったエラストマークラムが該湿ったエラストマークラムの重量基準で3.0〜20.0重量%の水を含む工程、および(c)乾燥装置中に該湿ったエラストマークラムを通して乾燥されたエラストマークラムを製造する工程であって、該乾燥されたエラストマークラムが該乾燥されたエラストマークラムの重量基準で1.0重量%以下の水を含む工程、を含む。ある実施形態では、スラリーは工程(b)の前に脱水スクリーンに通される。ある実施形態では、スラリーは2の流れに分けられ、各流れが工程(b)の前に別々の脱水スクリーンに通される。
【0052】
他の実施形態では、毎時少なくとも6トンのエラストマークラムを乾燥する方法が提供され、該方法は、(a)エラストマーと、スラリーの重量基準で30.0〜70.0重量%の水と、を含む該スラリーを取得する工程、(b)少なくとも2の脱水押出機を並列に含む第一の脱水装置中に該スラリーを通して湿ったエラストマークラムを製造する工程であって、該湿ったエラストマークラムが該湿ったエラストマークラムの重量基準で3.0〜20.0重量%の水を含む工程、(c)脱水押出機を含む第二の脱水装置中に該湿ったエラストマークラムを通して部分的に乾燥されたエラストマークラムを製造する工程であって、該部分的に乾燥されたエラストマークラムが該湿ったエラストマークラムの重量基準で2.0〜10.0重量%の水を含む工程、および(d)乾燥装置中に該部分的に乾燥されたエラストマークラムを通して乾燥されたエラストマークラムを製造する工程であって、該乾燥されたエラストマークラムが該乾燥されたエラストマークラムの重量基準で1.0重量%以下の水を含む工程、を含む。
【0053】
さらに他の実施形態では、毎時少なくとも6トンのエラストマークラムを乾燥する方法が提供され、該方法は、(a)エラストマーと、スラリーの重量基準で70.0〜99.0重量%の水と、を含む該スラリーを取得する工程、(b)少なくとも1の脱水スクリーンに該スラリーを通して部分的に脱水されたスラリーを製造する工程であって、該部分的に脱水されたスラリーが該スラリーの重量基準で30.0〜70.0重量%の水を含む工程、(c)少なくとも2の脱水押出機を並列に含む第一の脱水装置中に該部分的に脱水されたスラリーを通して湿ったエラストマークラムを製造する工程であって、該湿ったエラストマークラムが該湿ったエラストマークラムの重量基準で3.0〜20.0重量%の水を含む工程、(d)脱水押出機を含む第二の脱水装置中に該湿ったエラストマークラムを通して部分的に乾燥されたエラストマークラムを製造する工程であって、該部分的に乾燥されたエラストマークラムが該湿ったエラストマークラムの重量基準で2.0〜10.0重量%の水を含む工程、および(e)乾燥装置中に該部分的に乾燥されたエラストマークラムを通して乾燥されたエラストマークラムを製造する工程であって、該乾燥されたエラストマークラムが該乾燥されたエラストマークラムの重量基準で1.0重量%以下の水を含む工程、を含む。
【0054】
1の実施形態では、エラストマーと、70.0〜99.0重量%の水、または80.0〜98.0重量%の水、または85.0〜95.0重量%の水と、を含むスラリーは少なくとも2の流れに分けられ、各流れは別々の脱水スクリーンに導入されて、部分的に脱水されたスラリーの2の流れを形成する。それぞれが30.0〜70.0重量%の水、または40.0〜60.0重量%の水、または45.0〜55.0重量%の水、または47.0〜53.0重量%の水を含む各部分的に脱水されたスラリー流は次に別々の脱水押出機に導入され、該脱水押出機は並列に操作される。部分的に脱水されたスラリー流は脱水押出機を通り、湿ったエラストマークラムの2の流れを形成し、それぞれが3.0〜20.0重量%の水、または5.0〜18.0重量%の水、または10.0〜17.0重量%の水、または12.0〜16.0重量%の水を含んでいる。湿ったエラストマークラムの流れは次に一緒にされ、SDWDに導入される。SDWDは好ましくは単軸押出機である。湿ったエラストマークラムはSDWDを通って、2.0〜10.0重量%の水、または3.0〜9.0重量%の水、または5.0〜9.0重量%の水を含む部分的に乾燥されたエラストマークラムを形成する。部分的に乾燥されたエラストマークラムは次に乾燥装置に導入され、そこでエラストマークラムはさらに乾燥されて、乾燥されたエラストマークラムを形成する。乾燥装置は好ましくは少なくとも2のスクリューを有する押出機である。乾燥されたエラストマークラムは1.0重量%未満、または0.7重量%未満の水、または0.5重量%未満の水、または0.3重量%未満の水を含む。
【0055】
1の実施形態では、本方法は、温度感受性エラストマーと、スラリーの重量基準で40.0〜60.0重量%の水と、を含む該スラリーを2の脱水押出機を並列の配置で含むFDWDに導入する工程を含む。スラリーはFDWDを通り、そこで水の少なくとも一部が除かれて、12.0〜16.0重量%の水を含む湿ったエラストマークラムが得られる。湿ったエラストマークラムは次にSDWDに導入され、そこで単軸押出機が、押出機バレルに沿ってあるブレーカーボルトに対向するスクリュー要素のせん断作用(粘性加熱)、ならびにダイによる流れ制限に抗するスクリュー要素のせん断作用、によってエラストマークラムをさらに脱水し乾燥する。エラストマークラムは次にSDWDダイを通って排出され、そこでクラム中の水がフラッシュ蒸発し、このフラッシュ蒸発はエラストマー温度を80〜90℃の範囲の温度にまで下げる。湿ったエラストマークラムはここで5.0〜9.0重量%の水を含んでおり、次に乾燥装置に導入され、該乾燥装置は好ましくは少なくとも2のスクリューを有するものである。乾燥装置は、湿ったゴムをダイに押圧するスクリューの作用によってエラストマークラムを加熱する。乾燥装置のダイ温度は、ダイのところでの激しい爆発が、ゴムクラムから残っている水の蒸発を生じさせるのに十分なほどに高くなければならないが、エラストマーの分解を引き起こすほど高くてはいけない。乾燥装置のダイ温度は180〜190℃の範囲であることができる。乾燥されたエラストマークラムは、0.5重量%未満の含水量を持って乾燥装置を出て行く。
【0056】
他の実施形態では、本仕上げ方法は3段階の押出工程において毎時少なくとも8トンの温度感受性エラストマーを仕上げる能力がある。押出工程はスラリー槽から出発し、該スラリー槽は、スラリーの重量基準で10.0重量%の温度感受性エラストマークラムを水中に含む該スラリーを2の並列の脱水スクリーンに供給して、クラムから遊離の水を分離する。スラリーはここで40.0〜50.0重量%の水を含んでおり、各脱水スクリーンから排出され2の並列の脱水押出機中に入る。脱水押出機はさらに水を除去し、10.0〜17.0重量%の水を含む湿ったエラストマークラムを製造する。湿ったエラストマークラムは該2の並列の脱水押出機から共通の振動コンベアを通って第二の押出機中に供給される。第二の押出機は湿ったエラストマークラムを、該クラムが2.0〜10.0重量%の水を含む程度にまでさらに脱水し乾燥する。第二の押出機から排出されたエラストマークラムは機械式カッターによって切断され、それから傾斜振動コンベア中に落とされ、そして乾燥装置に供給される。乾燥装置は少なくとも2の押出機スクリューを有し、機械的せん断によって最後の水フラッシュ蒸発のためのエネルギーを供給する。乾燥装置から排出された乾燥されたエラストマークラムは1.0重量%未満の表面水を含有する。このクラムは次に、流動床コンベアで0.3重量%未満を含有する程度にまでさらに乾燥される。
【0057】
さらに他の実施形態では、毎時少なくとも6トンの温度感受性エラストマークラムを乾燥する方法が提供され、該方法は(a)温度感受性エラストマーと、スラリーの重量基準で70.0〜99.0重量%の水と、を含む該スラリーを取得する工程、(b)少なくとも1の脱水スクリーンに該スラリーを通して部分的に脱水されたスラリーを製造する工程であって、該部分的に脱水されたスラリーが該スラリーの重量基準で30.0〜70.0重量%の水を含む工程、(c)少なくとも2の脱水押出機を並列に含む第一の脱水装置中に該部分的に脱水されたスラリーを通して、湿ったエラストマークラムの重量基準で3.0〜20.0重量%の水を含む該湿ったエラストマークラムを製造する工程、(d)脱水押出機を含む第二の脱水装置中に該湿ったエラストマークラムを通して、該湿ったエラストマークラムの重量基準で2.0〜10.0重量%の水を含む部分的に乾燥されたエラストマークラムを製造する工程であって、エラストマー処理量基準で5.0重量%以下の不活性ガスがSDWD内の圧力よりも高い圧力で該SDWD中に注入される工程、および(e)乾燥装置中に該部分的に乾燥されたエラストマークラムを通して、乾燥されたエラストマークラムの重量基準で1.0重量%以下の水を含む該乾燥されたエラストマークラムを製造する工程であって、該部分的に乾燥されたエラストマークラムが該乾燥装置中にある間、200℃超の温度に曝露されない工程、を含む。
【0058】
さらなる実施形態では、毎時少なくとも6トンの温度感受性エラストマークラムを乾燥する方法が提供され、該方法は(a)温度感受性エラストマーと、スラリーの重量基準で30.0〜70.0重量%の水と、を含む該スラリーを取得する工程、(b)少なくとも2の脱水押出機を並列に含む第一の乾燥装置中に該スラリーを通して、湿ったエラストマークラムの重量基準で3.0〜20.0重量%の水を含む該湿ったエラストマークラムを製造する工程、(c)脱水押出機を含む第二の脱水装置中に該湿ったエラストマークラムを通して、該湿ったエラストマークラムの重量基準で2.0〜10.0重量%の水を含む部分的に乾燥されたエラストマークラムを製造する工程、および(d)乾燥装置中に該部分的に乾燥されたエラストマークラムを通して、乾燥されたエラストマークラムの重量基準で1.0重量%以下の水を含む該乾燥されたエラストマークラムを製造する工程であって、エラストマー処理量基準で5.0重量%以下の不活性ガスが該乾燥装置内の圧力よりも高い圧力で該乾燥装置の圧縮部中に注入される工程、を含む。好ましくは、不活性ガスは窒素を含む。
【0059】
さらに他の実施形態では、少なくとも6トンの温度感受性エラストマーを乾燥する方法が提供される。該方法は(a)温度感受性エラストマーと、スラリーの重量基準で30.0〜70.0重量%の水と、を含む該スラリーを取得する工程、(b)該スラリーを少なくとも2の流れに分ける工程、(c)第一の脱水装置中に該流れを通して、湿ったエラストマークラムの重量基準でそれぞれ3.0〜20.0重量%の水を含む該湿ったエラストマークラムの流れを製造する工程であって、該第一の脱水装置が少なくとも2の脱水押出機を並列に含み、かつ該スラリーの各流れが別々の脱水押出機中に通される工程、(d)該湿ったエラストマークラムの流れを一緒にする工程、(e)SDWD中に該湿ったエラストマークラムの一緒にされた流れを通して、部分的に乾燥されたエラストマークラムの重量基準で2.0〜10.0重量%の水を含む該部分的に乾燥されたエラストマークラムを製造する工程であって、エラストマー処理量基準で5.0重量%以下の不活性ガスがSDWD内の圧力よりも高い圧力でSDWD中に注入される工程、および(f)乾燥装置中に該部分的に乾燥されたエラストマークラムを通して、1.0重量%以下の水を含む乾燥されたエラストマークラムを製造する工程であって、エラストマー処理量基準で5.0重量%以下の不活性ガスが該乾燥装置内の圧力よりも高い圧力で該乾燥装置の圧縮部中に注入される工程、を含む。好ましくは、不活性ガスは窒素を含む。
【0060】
さらなる実施形態は、毎時少なくとも8トンのイソブチレン系エラストマーを乾燥する能力のある装置を提供する。該装置は、少なくとも2の脱水押出機を並列に含んでいる第一の脱水装置;脱水押出機を含んでいる第二の脱水装置であって、該第二の脱水装置の入口が空気圧輸送装置によって該第一の脱水装置の出口に接続されている第二の脱水装置;および6インチ(15.24cm)以上の直径を有する乾燥装置であって、該第二の脱水装置の出口が空気圧輸送装置によって該乾燥装置の入口に接続されている乾燥装置、を含んでいる。
【0061】
本明細書に引用された全ての特許および特許出願、試験方法(たとえば、ASTM法、UL法等)および他の文書は、参照によって完全に取り込まれる。ただし、かかる開示内容が本発明と矛盾しない程度において、かつ、かかる取り込みが許容される全ての法的管轄地域に対してを限度とする。
【0062】
下限数値および上限数値が本明細書に挙げられているときは、任意の下限から任意の上限までの範囲が意図されている。本発明の例示的実施形態が詳細に説明されてきたけれども、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、様々な他の変形が当業者には明らかであり、当業者によって容易になされることができることが理解されるだろう。したがって、本明細書に添付された特許請求の範囲は、本明細書に記載された実施例および発明の詳細な説明に限定されるべきでなく、むしろ特許請求の範囲は、本発明に存在する特許を受けることができる新しさの全ての特徴を、本発明が属する技術分野の当業者によって本発明の均等物として取り扱われるであろうすべての特徴を含めて、包含するものと解釈されるべきことが意図されている。
【0063】
本発明は多数の実施形態および特定の実施例を参照して上に説明されてきた。上記の詳細な説明に照らして、多くの変形が当業者に自明的に示唆されるであろう。全てのかかる変形は、添付された特許請求の範囲の全面的な意図された範囲内にある。
【符号の説明】
【0064】
10・・・第一の脱水装置(FDWD)、11および12・・・FDWD脱水押出機(DWE)、13・・・FDWD脱水押出機投入口、14・・・FDWD脱水押出機出口ダイ、15・・・FDWD傾斜振動コンベア、20・・・第二の脱水装置(SDWD)、23・・・SDWD脱水押出機出口ダイ、24・・・SDWD傾斜振動コンベア、30・・・乾燥装置、33・・・乾燥装置押出機出口ダイ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エラストマーを乾燥する方法において、該方法が
a.エラストマーと、スラリーの重量基準で30.0〜70.0重量%の水と、を含む該スラリーを取得する工程、
b.少なくとも2の脱水押出機を並列に含む第一の脱水装置中に該スラリーを通して湿ったエラストマークラムを製造する工程であって、該湿ったエラストマークラムが該湿ったエラストマークラムの重量基準で3.0〜20.0重量%の水を含む工程、
c.第二の脱水装置中に該湿ったエラストマークラムを通して部分的に乾燥されたエラストマークラムを製造する工程であって、該部分的に乾燥されたエラストマークラムが該部分的に乾燥されたエラストマークラムの重量基準で2.0〜10.0重量%の水を含む工程、および
d.乾燥装置中に該部分的に乾燥されたエラストマークラムを通して乾燥されたエラストマークラムを製造する工程であって、該乾燥されたエラストマークラムが該乾燥されたエラストマークラムの重量基準で1.0重量%以下の水を含む工程、
を含み、毎時少なくとも6トンの乾燥されたエラストマークラムを製造する能力がある、上記の方法。
【請求項2】
エラストマーが、スチレン−ブタジエンゴム、溶液スチレン−ブタジエンゴム、イソプレン−ブタジエンゴム、ポリイソプレンゴム、イソブチレン系エラストマー、ハロゲン化イソブチレン系エラストマーおよびこれらの混合物から選択された温度感受性エラストマーである、請求項1に記載された方法。
【請求項3】
第一の脱水装置中にスラリーを通す前に、少なくとも1の脱水スクリーンに該スラリーを通す工程をさらに含む、請求項1または2に記載された方法。
【請求項4】
乾燥装置が、少なくとも2のスクリューを有する押出機を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載された方法。
【請求項5】
乾燥されたエラストマークラムが、乾燥されたエラストマーの重量基準で0.5重量%以下の水を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載された方法。
【請求項6】
毎時少なくとも8トンの乾燥されたエラストマークラムを製造する能力がある、請求項1〜5のいずれか1項に記載された方法。
【請求項7】
乾燥装置が圧縮部を含み、不活性ガスが該乾燥装置の該圧縮部中に注入される、請求項1〜6のいずれか1項に記載された方法。
【請求項8】
エラストマークラムが、第一の脱水装置、第二の脱水装置および乾燥装置中にある間、230℃超の温度に曝露されない、請求項1〜7のいずれか1項に記載された方法。
【請求項9】
温度感受性エラストマーを乾燥する方法において、該方法が
a.温度感受性エラストマーと、スラリーの重量基準で70.0〜99.0重量%の水と、を含む該スラリーを取得する工程、
b.該スラリーを少なくとも2の流れに分ける工程、
c.別々の脱水スクリーンに各該流れを通して部分的に脱水されたスラリーの流れを取得する工程であって、該部分的に脱水されたスラリーが該スラリーの重量基準で30.0〜70.0重量%の水を含む工程、
d.第一の脱水装置中に該流れを通して湿ったエラストマークラムの流れを製造する工程であって、該湿ったエラストマークラムが該湿ったエラストマークラムの重量基準で5.0〜18.0重量%の水を含み、該第一の脱水装置が少なくとも2の脱水押出機を並列に含み、かつ各該流れが別々の該脱水押出機中に通される工程、
e.該湿ったエラストマークラムの流れを一緒にする工程、
f.該湿ったエラストマークラムの一緒にされた流れを第二の脱水装置中に通して部分的に乾燥されたエラストマークラムを形成する工程であって、該部分的に乾燥されたエラストマークラムが該部分的に乾燥されたエラストマークラムの重量基準で2.0〜10.0重量%の水を含む工程、および
g.200℃以下の温度にある乾燥装置中に該部分的に乾燥されたエラストマークラムを通して乾燥されたエラストマークラムを製造する工程であって、該乾燥されたエラストマークラムが該乾燥されたエラストマークラムの重量基準で1.0重量%以下の水を含む工程、
を含み、毎時少なくとも8トンの乾燥されたエラストマークラムを製造する能力がある、上記の方法。
【請求項10】
温度感受性エラストマーが、スチレン−ブタジエンゴム、溶液スチレン−ブタジエンゴム、イソプレン−ブタジエンゴム、ポリイソプレンゴム、イソブチレン系エラストマー、ハロゲン化イソブチレン系エラストマーおよびこれらの混合物から選択される、請求項9に記載された方法。
【請求項11】
乾燥されたエラストマークラムが、乾燥されたエラストマーの重量基準で0.5重量%以下の水を含む、請求項9または10に記載された方法。
【請求項12】
毎時少なくとも12トンの乾燥されたエラストマークラムを製造する能力がある、請求項9〜11のいずれか1項に記載された方法。
【請求項13】
乾燥装置が圧縮部を含み、かつ不活性ガスが該乾燥装置の該圧縮部中に注入される、請求項9〜12のいずれか1項に記載された方法。
【請求項14】
エラストマークラムが、第一の脱水装置および第二の脱水装置中にある間、150℃超の温度に曝露されない、請求項9〜13のいずれか1項に記載された方法。
【請求項15】
エラストマーを乾燥する装置であって、
a.少なくとも2の脱水押出機を並列に含んでいる第一の脱水装置、
b.脱水押出機を含んでいる第二の脱水装置であって、該第二の脱水装置の入口が該第一の脱水装置の出口に接続されている第二の脱水装置、および
c.6インチ(15.24cm)以上の直径を有する乾燥装置であって、該第二の脱水装置の出口が該乾燥装置の入口に接続されている乾燥装置、
を含んでおり、毎時少なくとも8トンのエラストマーを乾燥する能力がある、装置。

【図1】
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【公表番号】特表2012−528027(P2012−528027A)
【公表日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−513078(P2012−513078)
【出願日】平成22年4月19日(2010.4.19)
【国際出願番号】PCT/US2010/031592
【国際公開番号】WO2010/138257
【国際公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【出願人】(599134676)エクソンモービル・ケミカル・パテンツ・インク (301)
【Fターム(参考)】