説明

エレクトロウェッティング式表示デバイス

本発明は、複数の画素と第1の支持板及び第2の支持板とを備えるエレクトロウェッティング式表示デバイスを作製する方法に関する。各画素が、第1の支持板と第2の支持板の間に空間を備える。この方法は、第1の支持板に電極構造体を与えるステップと、電極構造体上に、厚さと空間に面する疎水性表面とを有する絶縁層を配置するステップと、表面の所定の領域の疎水性を恒久的に低下させるために、絶縁層の厚さにわたって一時的に電界をかけるステップとを含む。本発明は、さらに、エレクトロウェッティング式表示デバイス及びエレクトロウェッティング式デバイスの低疎水性領域の使用方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレクトロウェッティング式表示デバイス及び同デバイスを作製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
国際特許出願の国際公開第2003/071346号パンフレットに説明されているものなどのエレクトロウェッティング式表示デバイスは、2つの支持板を含む。支持板の1つに対して或るパターンの複数の壁が配置され、このパターンは、表示デバイスの画素を画定する。ピクセルとしても知られている画素を構成する壁の間の領域は、表示領域と称され、表示効果が生じる。画素の壁は親水性の材料で作製される。表示領域の支持板の領域は、画素の適切な動作のために、かなりの程度まで疎水性でなければならない。製造中、画素が配置されている支持板の領域は、疎水性層によって覆われる。壁は、疎水性層上に壁材料の層を堆積し、壁材料の層を、例えばフォトリソグラフィ法を用いてパターニングすることにより、疎水性層上に作製される。
【0003】
壁材料の層と疎水性層の間の付着力は比較的弱く、壁材料の層が疎水性層から剥離し易い。例えばリアクティブイオンエッチングによって壁材料の層を与えるのに先立って、疎水性層の疎水性を低下させることが知られている。壁の形成の後、疎水性層は、疎水性を回復するためにアニールされる。しかし、この方法を用いて作製された表示デバイスの品質は十分ではない。
【0004】
他の方法には、所定の領域のみ疎水性を低下させるために、露出領域において、例えばリアクティブイオンエッチング、プラズマ又はUVのオゾン処理を適用することにより、フォトリソグラフィステップを用いるものがある。追加のリソグラフィステップが必要であること、及び層間剥離のリスク増加を伴って均一の疎水性表面に対してリソグラフィプロセスを適用するのが困難であること、といった不利益がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、このような不利益がないエレクトロウェッティング式表示デバイスを作製する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様によれば、第1の支持板及び第2の支持板と、それぞれが第1の支持板と第2の支持板の間に空間を備える複数の画素とを備えるエレクトロウェッティング式表示デバイスを作製する方法が提供され、この方法は、第1の支持板に電極構造体を与えるステップと、電極構造体上に、厚さと空間に面する疎水性表面とを有する絶縁層を配置するステップと、その表面の所定の領域の疎水性を恒久的に低下させるために、絶縁層の厚さを横切って一時的に電界を印加するステップとを含む。
【0007】
本発明による方法により、電界を印加することによって絶縁層の所定の領域の疎水性を局所的に低下させることができる。この方法は、表示デバイスの寿命に悪影響を及ぼす、表面の疎水性を低下させた後に上昇させるステップを必要としない。本発明による方法によって作製される表示デバイスは、疎水性を低下させて上昇させるプロセスステップを受けないので、より優れた寿命を有する。そのうえ、疎水性を上昇させるのに用いられるアニールでは、当初のままの疎水性表面の品質が完全に回復されるわけではない。本発明による方法は、従来技術のように疎水性を局所的に低下させるためにフォトリソグラフィプロセスを用いる必要がない。したがって、プロセスステップの数が減少し、層間剥離のリスクがより低下する。疎水性が低下した領域は、表示デバイスの製造及び/又は使用において、様々な目的に利用され得る。導電性流体又は極性流体に対して、ある領域から働く反発力が、疎水性が低下していない領域から働く反発力より小さい場合、その領域は疎水性が低下しているとされ、疎水性が十分に低下すると、引き寄せる力になり得る。その領域の疎水性低下の度合いは、電界の強度によって制御することができる。
【0008】
絶縁層の疎水性の低下は、恐らく絶縁層の中又は上に電荷が蓄積することによるものである。疎水性を低下させることは、表示デバイスの製造で用いられ、この低下が少なくとも1日間続く場合、「恒久的な」低下と称される。疎水性の低下が表示デバイスの動作に用いられるとき、表示デバイスの寿命を通じて疎水性の低下が持続する場合、「恒久的な」低下と称される。電界が停止された後、与えられた電荷の一部分は漏れ出す可能性があるが、別の部分は恒久的にとどまる。
【0009】
B.J.Feenstra及びM.W.J.Prinsによる、Nederlands Tijdschrift voor Natuurkundeの2001年2月号、34ページの記事「Elektrobenatting:Vloeistofmanipulatie op micronschaal」は、特定の強度を上回る電界を印加すると、エレクトロウェッティング式デバイスの絶縁層に望ましくない電荷蓄積が起こることを開示していることに留意されたい。この記事は、電荷蓄積のある領域が疎水性の低下を示すことは開示しておらず、電荷蓄積の利用も指摘していない。
【0010】
特別な実施形態では、この領域は、実質的にすべての画素において類似のパターンを形成する。「実質的に」は、ほとんどの画素、好ましくは90%を上回る画素が、そのパターンを構成することを意味する。
【0011】
この方法の好ましい実施形態では、絶縁層上に導電性流体又は極性流体が配置され、電極構造体とこの流体の間に電界が印加される。この方法は、電界を所望の領域に効果的に印加する。電極構造体を使用すると、疎水性の低下した領域が、それ以上の位置合わせ手段をとることなく、電極構造体と適切に位置合わせされる。
【0012】
電極構造体は、好ましくは、電界を印加するための少なくとも1つの電極と、画素を操作するための少なくとも1つの電極とを含むか、或いは、電界を印加し、且つ画素を操作するための少なくとも1つの電極を含む。
【0013】
電極構造体の特定の電極が、画素の動作又は疎水性を局所的に低下させるための電界の生成のいずれかに用いられてもよく、或いは特定の電極が両方の機能に用いられてもよい。この機能が、画素の電極の位置を決定してもよい。例えば、壁を配置することになる領域で疎水性を低下させるための電界を生成するのに、ゲートライン及びソースラインを使用することができる。
【0014】
有利な実施形態では、電極構造体と導電性流体又は極性流体との間に電圧を印加することにより電界が発生され、電極構造体上の電圧が導電性流体又は極性流体上の電圧より大きい。この極性を用いると、恒久的な低疎水性領域を生成するのに、より効果的である。
【0015】
電界は、表示デバイスを第1の流体11で満たす以前に、又は満たした後に印加してもよい。第1の流体で充填する以前に電界を印加するとき、電極及び絶縁層を有する第1の支持板が導電性流体又は極性流体で覆われ、導電性流体又は極性流体と電極の間に電圧が印加される。導電性流体又は極性流体は、表示デバイスの動作中に用いられる第2の流体でもよい。
【0016】
第1の流体で充填した後に、例えば第1及び第2の支持板を互いにシールした後に電界を印加するとき、導電性流体又は極性流体と電極の間に高電圧を印加してもよい。この電圧が、疎水性を低下させるべき領域から第1の流体を除去することになる。好ましくは、この電圧は、第1の流体の除去を制御するために、階段状又はランプ(傾斜路)状に上昇させる。第1の支持板と導電性流体又は極性流体上の電極の間に電圧を印加することによる高電圧の印加に先立つ別のステップで、この領域から第1の流体を除去することも可能である。
【0017】
第1及び第2の支持板を互いにシールした後に、第1の支持板上の1つ又は複数の電極と導電性流体又は極性流体の間に大きな電界を印加するステップは、後に表示デバイスの寿命期間中に繰り返すこともできる。そのため、このステップは、絶縁層の中又は上の電荷量を、表示デバイスで用いるために一定に、又は十分に大きく実質的に保つことができる。
【0018】
電極構造体の電極は、隣接のシールド電極を有してもよい。シールド電極は、電界を閉じ込めることにより、疎水性を低下させる領域の範囲を画定するのを支援する。好ましくは、電極は、各側面にシールド電極を有する。
【0019】
この方法の特別な実施形態には、所定の領域上に壁を配置するステップが含まれる。所定の領域の疎水性が低下しているので、壁材料と絶縁層の間の付着力が改善されており、壁材料がはがれるリスクは低い。
【0020】
本発明の第2の態様によれば、複数の画素と第1の支持板及び第2の支持板とを備えるエレクトロウェッティング式表示デバイスが提供され、各画素が第1の支持板と第2の支持板の間に空間を備え、この空間が第1の流体と第2の導電性流体又は極性流体とを含み、第1の流体と第2の流体は混合せず、第1の支持板上に電極構造体が配置され、この空間に面した疎水性表面を有する絶縁層が電極構造体上に配置され、この絶縁層は、本発明による方法を用いて作製された所定の低疎水性領域を有する。
【0021】
表示デバイスの特別な実施形態では、疎水性表面の領域は恒久的電荷を帯びる。電荷の存在は、静電電圧計を使用して測定することができる。電荷の恒久性は、電極構造体に印加された電圧がない状態で測定することができる。
【0022】
この領域は、好ましくは実質的にすべての画素で類似のパターンを形成する。
【0023】
パターンは、画素の形状を画定し、第1の流体を画素の空間に閉じ込めることが有効である。この領域は、画素の高さゼロの壁として働く。この領域は、通常、正方形又は長方形のグリッドの形状を有することになる。この領域の低疎水性により、第1の流体が、壁によって囲まれた領域に閉じ込められる。高さゼロの壁の近くでは第1の流体の厚さがゼロであるため、画素の切換え挙動が改善されることになり、表示デバイスのグレイスケール性能の改善が特に顕著である。
【0024】
好ましくは、パターンが画素の形状を画定し、この領域に配置される壁が第1の流体を画素の空間に閉じ込める。この領域上に特定の壁材料で作製された壁が配置されると、疎水性の低下によって壁材料と絶縁層の間の付着力が改善する。
【0025】
表示デバイスの特別な実施形態では、パターンが画素の開始点を形成し、表示デバイスが作動中のとき第1の流体が移動し始める位置をもたらす。そのため、画素の開始点によって切換え及びグレイスケールの性能が改善する。
【0026】
パターンが、画素における第1の流体に対する障壁を形成することができる。この障壁は、双安定の表示デバイスで使用することができる。電極の電圧パルスによって第1の流体は障壁を越えて移動することができ、電圧がゼロに低下すると、第1の流体は、障壁によって所定の位置に保持されることになる。画像コンテンツは不揮発性になるはずである。したがって、障壁を使用する表示デバイスは、電力消費を比較的小さくすることができる。
【0027】
本発明の第3の態様によれば、エレクトロウェッティング素子と第1の支持板及び第2の支持板とを備えるエレクトロウェッティング式デバイスにおける低疎水性領域の使用方法が提供され、エレクトロウェッティング素子が第1の支持板と第2の支持板の間に空間を備え、この空間が第1の流体と第2の導電性流体又は極性流体とを含み、第1の流体と第2の流体は混合せず、第1の支持板上に電極構造体が配置され、この空間に面した疎水性表面を有する絶縁層が電極構造体上に配置され、この領域は、その表面の領域の疎水性を恒久的に低下させるために、絶縁層の厚さを横切って一時的に電界を印加することによって作製されており、当該使用方法は、流体の運動又は絶縁層上への層の接着の制御である。
【0028】
本発明のさらなる特徴及び利点が、単なる一例として添付図面を参照しながら示される、本発明の好ましい実施形態の以下の説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】エレクトロウェッティング式表示デバイスの画素の概略断面図である。
【図2a】表示デバイスの第1の支持板上の電極構造体の概略上面図である。
【図2b】第1の支持板の概略断面図である。
【図3】絶縁層表面の上面図である。
【図4】ソースラインとゲートラインが交差する電極構造体の上面図である。
【図5】第1の支持板の別の実施形態の上面図である。
【図6】第1の支持板のさらなる実施形態の上面図である。
【図7a】双安定画素の状態の断面図である。
【図7b】双安定画素の別の状態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1は、エレクトロウェッティング式表示デバイス1の一部分の概略の断面を示す。この表示デバイスは、複数の画素2を含み、そのうち1つが図面に示されている。画素の横方向の範囲が、2つの破線3及び4によって図面に示されている。画素は、第1の支持板5及び第2の支持板6を含む。支持板は、各画素の個別の部分でもよいが、好ましくは複数の画素によって共有される。支持板は、ガラス又はポリマーの基板を含んでもよく、剛体でも可撓体でもよい。
【0031】
表示デバイスは、表示デバイスによって形成された画像又は表示を見ることができる画面8及び後面9を有する。図面では、第1の支持板5が後面9と向かい合って、第2の支持板6が画面と向かい合うが、或いは第1の支持板が画面と向かい合ってもよい。表示デバイスは、反射型、透過型、又は半透過型等とすることができる。表示デバイスは、画像がセグメントで構築され得るセグメント化された表示方式でもよく、各セグメントがいくつかの画素を含む。表示デバイスは、アクティブマトリクスで駆動される表示方式であるか、又は受動的に駆動される表示デバイスでもよい。複数の画素は白黒でもよい。カラー表示デバイスについては、画素は、各群が別の色を有する群に分割されてもよく、或いは、個々の画素が様々な色を示すことができてもよい。
【0032】
支持板間の空間10は、第1の流体11及び第2の流体12の2つの流体で満たされる。第2の流体は、第1の流体と混ざらない。第2の流体は、導電性また有極性であり、水又は水とエチルアルコールの混合物中の塩化カリウムの溶液などの食塩水でもよい。第2の流体は、好ましくは透明であるが、有色でもよく、白色でもよく、光を吸収しても反射してもよい。第1の流体は、非導電性であり、例えばヘキサデカンのようなアルカン又は(シリコン)オイルである。
【0033】
第1の流体は、光スペクトルの少なくとも一部分を吸収する。第1の流体は、光スペクトルの一部分に対して透過性でもよく、カラーフィルタを形成する。このために、第1の流体は、顔料粒子又は染料を付加することによって着色される。代わりに、第1の流体は、黒色で、すなわち光スペクトルのすべてを実質的に吸収するか、或いは反射してもよい。反射層は、可視スペクトルの全体を反射して白色に見えてもよく、又はその一部分を反射して有色に見えてもよい。
【0034】
支持板5上に絶縁層13が配置される。絶縁層は透明でもよく、又は反射性でもよい。絶縁層13は、画素の壁の間に延在してもよい。しかし、第2の流体12と絶縁層の下に配置された電極の間の短絡を回避するために、絶縁層は、図面に示されるように、好ましくは複数の画素2にわたって延在する連続した層である。絶縁層は、画素2の空間10に面する疎水性の表面14を有する。絶縁層の厚さは、好ましくは2マイクロメートル未満であり、より好ましくは1マイクロメートル未満である。
【0035】
絶縁層は疎水性層でもよく、或いは、図面に示されるように、絶縁層は、疎水性層15及び誘電体層16でもよく、疎水性層15が空間10に面する。疎水性層は、例えばAF1600又はAF1601などのアモルファスのフッ素ポリマー層でもよく、或いは他の表面エネルギーの低いポリマーでもよい。疎水性層の厚さは、好ましくは300〜800nmの間にある。誘電体層は、シリコン酸化物層又は窒化シリコン層でもよく、例えば200nmの厚さを有する。
【0036】
絶縁層13の表面に対して、第1の流体11が第2の流体12より高い湿潤性を有するので、表面14の疎水性の特性によって、第1の流体11が、絶縁層13に差別的に付着する。湿潤性は、流体の、固体の表面に対する相対的親和性に関連する。
【0037】
各要素2は、支持板5上に配置された電極17を含む。電極17は絶縁層13によって流体から分離され、隣接した画素の電極は非導電層によって分離される。絶縁層13と電極17の間に他の層が配置されてもよい。電極17は、任意の所望の形状又は形態であり得る。画素の電極17は、図面に概略的に示された信号ライン18によって電圧信号を供給される。第2の信号ライン19が、導電性の第2の流体12に接している電極に接続される。この電極は、すべての要素が第2の流体を壁で遮断されることなく共有することにより、第2の流体によって相互に接続されるとき、すべての要素に対して共通であり得る。画素2は、信号ライン18と19の間に印加する電圧Vによって制御することができる。支持板5上の電極17は、表示駆動システムに接続される。マトリクス形式で配置された画素を有する表示デバイスでは、電極を、第1の支持板上の制御ラインのマトリクスに接続することができる。
【0038】
第1の流体11は、画素の断面に続く壁20によって1つの画素に閉じ込められる。画素の断面は任意の形状を有することができ、画素がマトリクス形式で配置されたとき、断面は、通常、正方形又は長方形である。壁は、支持板5から突出する構造として示されているが、親水性又は低疎水性の層など、第1の流体をはじく支持板上の表面層でもよい。壁は、第1の支持板から第2の支持板まで延在してもよいが、第1の支持板から第2の支持板まで部分的に延在してもよい。破線3及び4によって示された画素の範囲は、壁20の中心によって画定される。波線21及び22で示される画素の壁の間の領域は、表示領域23と称され、表示効果が生じる。
【0039】
電極間に電圧が印加されないとき、図面に示されるように、第1の流体11が壁20の間に層を形成する。電圧を印加すると、図面に破線の形状24で示されるように、第1の流体が、例えば壁に対して収縮することになる。第1の流体の制御可能な形状が、画素を光弁として動作させるのに用いられ、表示領域23に対する表示効果をもたらす。
【0040】
図1に示される表示デバイスの実施形態の壁20は、本発明による疎水性低減効果を用いて作製されたものである。この効果は、図2aの上面図に示され、図1のA−Aラインに沿って示され、図2bの断面にも示されているパターン付き電極構造体によって得られる。図2aは、正方形の画素のマトリクスを示す。図1の破線3及び4に対応する図2aの中央の画素の範囲は、破線25によって示されている。電極17は、画素を操作するのに使用される。グリッド形式の隣接した電極17の間に電極26が配置される。電極17と電極26の間の領域27及び28は、絶縁材料で作製される。図2bは、支持板5並びに電極17及び26の断面を示す。
【0041】
表示デバイスの製造プロセス中に、電極17及び26を備えるパターン付き電極構造体が第1の支持板5上に設けられる。次に、電極構造体上に絶縁層13が配置される。絶縁層13の表面14は、導電性流体、好ましくは完成した表示デバイスで第2の流体として使用されるものと同一の導電性流体又は極性流体で覆われる。導電性流体で満たされた空間は、図2bの参照数字29によって示されている。
【0042】
本発明による表面14の局所的疎水性低下は、ここで、電極26に接続された信号ライン30と空間29において導電性流体に接する電極に接続された信号ライン31の間に電圧を印加することにより達成される。電圧は直流であり、信号ライン30は、好ましくはプラスである。この電圧が、絶縁層13の厚さを横切って電界を生成する。電界は、閾値を上回る必要があり、閾値を上回ると、表面14の疎水性の恒久的な低下が起こる。閾値は、絶縁層の材料及び厚さ並びに導電性流体の材料に応じて変動する。電界は、絶縁層の破壊絶縁耐力より小さくなければならない。電圧は100〜400Vの範囲でもよく、好ましくは数秒〜数分の期間にわたって印加する。疎水性の恒久的な低下は、例えば静電電圧計を使用して、絶縁層の上又は中の恒久的な電荷の存在を測定することにより求めることができる。
【0043】
疎水性が恒久的に低下した表面14の所定の領域は、図2bで参照数字32によって示されている。この領域の範囲は、電極26の形状及び漂遊電界によって決定される。電極26の共通の幅は、5〜15マイクロメートルである。絶縁層の厚さが1マイクロメートルであるとき、領域32の幅は8〜20マイクロメートルである。
【0044】
領域32の範囲は、シールド電極を、電極26に隣接して配置して導電性流体の電位に保つことにより縮小することができる。図2bに示される実施形態は、電極17をシールド電極として使用する。電極17に接続された各画素の信号ライン18は、信号ライン31と同じ電圧に保たれる。代替実施形態では、電極26は、画素の操作に使用されないシールド電極を有することができる。
【0045】
電界を一時的に印加した後に、図2aに示されるような電極26の形状を有する表面14のグリッド形の領域32は、低疎水性を有する。図3は、低疎水性領域32及び領域32によって囲まれた当初のままの領域33を有する表面14の上面図を示す。当初のままの領域33の疎水性は、電界の印加によって変更されていない。当初のままの領域33の形状は、図1の表示領域23に相当する。好ましくは、当初のままの領域33は、表示領域23より、両側で、わずかに、例えば数マイクロメートルだけ大きく、それによって、低疎水性領域32上の壁の小さな位置合わせ不良の調節が可能になる。後続の製造ステップで、低疎水性領域32上に壁が配置されてもよい。
【0046】
特別な実施形態では、当初のままの領域33は表示領域23よりわずかに小さくてもよく、壁の隣に疎水性が低下した細長い領域を生成する。この細長い領域は、図5を参照しながら以下で説明されるように、第1の流体の移動のための開始点として動作することができる。
【0047】
この壁は、いくつかの方法によって作製することができる。第1の方法では、壁はリソグラフィステップを用いて製作され、リソグラフィステップでは、図1の表示領域23はラッカーで覆われ、壁が堆積されることになっている領域は覆われない。覆われない領域は、低疎水性領域32に相当する。壁は、スピンコーティング、浸漬コーティング、スリットコーティング又はプリント処理などの既知の堆積プロセスを用いて作製される。壁を与えた後に、表示領域からラッカーが除去される。壁の下の表面14の低疎水性により、壁材料の絶縁層13への付着力が改善する。
【0048】
第2の方法では、リソグラフィを用いて壁が製作され、フォトラッカーは壁材料で作製される。この方法では、ラッカーは、従来方式を用いて表面14上に堆積される。次に、表示領域23からラッカーが除去され、この材料は、低疎水性領域32に集中した画素壁として残る。
【0049】
第3の方法では、自己集合を用いて壁が製作される。低疎水性領域32と表面14の当初のままの領域33の間の疎水性の差によって化学的コントラストが形成される。表面14は、壁材料の溶液又は分散液を含む液体によって覆われる。壁材料は、親水性表面よりも疎水性表面に対してより大きな付着力を有するように選択される。したがって、壁材料は、低疎水性領域32に向かって移行してそこで壁を形成する。壁の形成が完了した後に、残りの壁材料を有する液体が第1の支持板から吐出され、又は壁材料溶液の溶剤が蒸発して、固体の壁材料が残る。
【0050】
第1、第2、及び第3の方法では、領域32の低疎水性は、表示デバイスの寿命を通じて残存することができる。或いは、領域32の低疎水性は、表示デバイスの製造期間中のみ、好ましくは1日以上残存してもよい。
【0051】
第4の方法では、低疎水性領域32自体によって壁が形成され、すなわち壁はゼロ高さを有する。領域32の疎水性は、第1の流体が表示領域全体にわたって広がるとき及び収縮するときのどちらにおいても、図1の第1の流体11を表示領域23に制限するように十分に低くなければならない。領域32の低疎水性は、表示デバイスの寿命を通じて残存しなければならない。
【0052】
反射型表示デバイスにおいて電極26が光を反射する材料で作製されている場合、壁材料は、画面8から入った周辺光が電極上で反射して見る方向に戻ることにより画像のコントラストが低下するのを回避するために、好ましくは不透明である。或いは、電極26は、ITOなどの透明な材料で作製することができ、いかなる後方反射も、第1の支持板の上又は背後に、壁を通って伝送された光を捕捉する光吸収層を配置することにより、さらに低下させることができる。
【0053】
壁20の形成の後、例えば国際特許出願の国際公開第2005/098797号パンフレットに開示されているように、既知の方法を用いて第1の支持板5に第1の流体が与えられる。例えば国際出願の国際公開第2009/065909号パンフレットに開示されているように、第1及び第2の支持板は互いに取り付けられ、空間は、既知のやり方で第2の液体で満たされる。
【0054】
各画素の電極17の電圧を制御するための信号ラインは、図2a、図2b及び図3には示されていない。制御ラインは、国際出願の国際公開第2009/071694号パンフレットに開示されているようにレイアウトされてもよい。特別な実施形態では、信号ラインは、疎水性を低下させるための電界を生成するのに使用され得る。図4は、例えば国際公開第2009/071694号パンフレットから知られているアクティブマトリクス型表示デバイスで使用されるような、電極17並びにソースライン40及びゲートライン41を含む電極構造体の上面図を示す。ソースラインとゲートラインは、第1の支持板上に配置された薄層のスタックにおいて異なる高さで交差し、表示デバイスの動作中にラインを個々に制御することができる。製造中に、低疎水性領域32を形成するために、ソースライン及びゲートラインの両方に同一の高電圧が印加される。
【0055】
この方法の上記の実施形態では、第1の支持板上に配置された電極及び第1の支持板上の導電性流体に印加される電圧によって電界が生成される。或いは、電界は、製造プロセス中に第1の支持板(図1を参照されたい)の後面9に接して押しつけられた板上に配置されるパターン付き電極構造体によって生成することができる。電極と表面14に接触する導電性流体の間に電圧が印加される。この方法の空間分解能は低く、恒久的な帯電に必要な電圧は、支持板の厚さのために、上記実施形態のものより大きい。
【0056】
電界を生成する別の方法には、表面14に接して押しつけられた板上に配置されたパターン付き電極構造体及び例えば後面9に対して押しつけられた金属板の形で複数の画素にわたって延在する電極を使用することによるものがある。パターン付き電極構造体と後面に対して押しつけられた電極の間に電圧が印加される。この方法は、高度な空間分解能を有する。後者の2つの方法により、第1の支持板上に配置された電極とは無関係に低疎水性領域32を形成することができ、同電極は、画素の操作のために最適化することができる。
【0057】
図5は、第1の支持板の別の実施形態の上面図を示す。表示領域23は、壁20に囲まれている。表示領域の領域51は、低疎水性を有する。画素の動作中に、領域51は、第1の流体11の移動の開始点として働く。第2の流体12が、低疎水性によって表面14の方へ引きつけられ、電極17に電圧が印加されないとき、領域51の上に第1の流体のより薄い層をもたらす。電圧が電極17に印加されると、より薄い層により、領域51では表示領域の他の領域よりも第1の流体に対して大きな力が生じて、第1の流体が領域51から移動し始めることになり、領域51は、通常、開始点と称される。それによって、領域51は、各画素において第1の流体の制御する移動をもたらし、画像品質が改善される。領域51は、実質的にすべての画素において類似のパターンを形成する。
【0058】
領域51は、本発明による方法によって作製される。第1の支持板の製造中に、上記で詳述された方法の1つを用いて、絶縁領域の領域51に対して、電界が一時的に印加される。この電界により、領域51の疎水性が恒久的に低下する。この低下は、表示デバイスの寿命がつきるまで残存する。
【0059】
図6は、第1の支持板のさらなる実施形態の上面図を示す。画素の表示領域23は、低疎水性領域63によって分離された2つの高疎水性領域61と62に分割されている。領域63が障壁として働き、画素は、国際出願の国際公開第2006/090317号パンフレットに開示されているような双安定素子として動作することができる。
【0060】
図7aは、図6の画素の断面を示す。第1の支持板5と絶縁層13の間に、それぞれが領域61、62及び63と同一の形状を有する電極71、72及び73が配置されている。図7aに示されるように、第1の流体11により、絶縁層13上に、障壁領域63によって中断された層が形成されることになる。電極71に対して十分に高い電圧が印加されると、図7bに示されるように、第1の流体は領域62に移動してそこに蓄積することになる。電極71上の電圧が停止されると、障壁領域63が第1の流体を図7bの構成に保つことになり、電圧を印加しなくても安定した表示状態がもたらされる。電極72に電圧を印加して第1の流体を領域61へ押し進めることにより、再び図7aの構成が得られる。電圧レベルにより、領域62に第1の流体がいくらか残るか少しも残らないか、ということが決まる。この実施形態を、本発明による、カラーフィルタを有する1つ又は複数のサブピクセルの障壁と組み合わせることにより、双安定カラー表示デバイスを得ることができる。好ましい実施形態では、各サブピクセルが実質的に同一の障壁パターンを有することになる。別の実施形態では、例えばISBN 978−0−470−72374−6(Wiley)の書籍である、Mobile Displays, Technology and Applicationsの18章に説明されているように、各層が互いの頂部上に別の色を有する第1の流体の複数の層を有する表示デバイスにおいて、本発明による障壁を用いることにより、双安定カラー表示デバイスを作製することができる。
【0061】
障壁領域63は、本発明による方法によって、製造中に電極73に高電圧を印加して作製される。国際出願の国際公開第2006/090317号パンフレットに示されるように、障壁領域は様々な構成を有することができる。画素は、いくつかの前記出願で開示されたモードで操作され得る。
【0062】
上記の実施形態は、本発明の説明に役立つ実例として理解されるべきである。本発明のさらなる実施形態が意図される。例えば、低疎水性領域は、画素以外のエレクトロウェッティング素子で使用され得る。低疎水性領域は、疎水性表面上に壁などの層を接着するために、疎水性を低下させるのに使用することができる。低疎水性領域は、例えば障壁又は開始点として働くことにより、第1の流体の運動を制御するためにも使用することもできる。低疎水性領域は、ダイアフラム、シャッタ又はレンズなどのエレクトロウェッティング素子で使用することができる。
【0063】
いかなる一実施形態に対して説明されたいかなる特徴も、単独で、又は説明された他の特徴と組み合わせて用いられ得て、また、実施形態のその他の1つ又は複数の特徴、又は実施形態のその他の任意の組合せと組み合わせても用いられ得ることを理解されたい。さらに、上記で説明されていない等価物及び変更形態も、本発明の範囲から逸脱することなく利用され得て、このことは添付の特許請求の範囲において定義される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の支持板及び第2の支持板と、それぞれが前記第1の支持板と前記第2の支持板の間に空間を備える複数の画素とを備えるエレクトロウェッティング式表示デバイスを作製する方法であって、
前記第1の支持板に電極構造体を付与するステップと、
前記電極構造体上に、厚さと、前記空間に面する疎水性表面とを有する絶縁層を配置するステップと、
前記表面の所定の領域の前記疎水性を恒久的に低下させるために、前記絶縁層の前記厚さを横切って一時的に電界を印加するステップとを含む方法。
【請求項2】
前記領域が、前記画素の実質的にすべてにおいて、類似のパターンを形成する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記絶縁層上に導電性流体又は極性流体が配置され、前記電極構造体と前記流体の間に前記電界が印加される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記電極構造体が、前記電界を印加するための少なくとも1つの電極と、画素を操作するための少なくとも1つの電極とを含むか、或いは、前記電界を印加し、且つ画素を操作するための少なくとも1つの電極を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記電界が、前記電極構造体と前記導電性流体又は極性流体の間に電圧を印加することによって発生され、
前記電極構造体上の電圧が前記導電性流体又は極性流体上の電圧より高い、請求項3又は4に記載の方法。
【請求項6】
前記電極構造体の電極が、隣接のシールド電極を有する、請求項3、4又は5に記載の方法。
【請求項7】
前記所定の領域上に複数の壁を配置するステップを含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
複数の画素と第1の支持板及び第2の支持板とを備えるエレクトロウェッティング式表示デバイスであって、
各画素が前記第1の支持板と前記第2の支持板の間に空間を備え、前記空間が第1の流体と第2の導電性流体又は極性流体とを含み、前記第1の流体と第2の流体は混合せず、前記第1の支持板上に電極構造体が配置され、前記空間に面した疎水性表面を有する絶縁層が前記電極構造体上に配置され、前記絶縁層が、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法を用いて作製された所定の低疎水性領域を有するエレクトロウェッティング式表示デバイス。
【請求項9】
前記疎水性表面の領域が恒久的電荷を帯びる、請求項8に記載のエレクトロウェッティング式デバイス。
【請求項10】
前記領域が、前記画素の実質的にすべてにおいて、類似のパターンを形成する、請求項8又は9に記載のエレクトロウェッティング式表示デバイス。
【請求項11】
前記パターンが、前記画素の形状を画定し、前記画素の前記空間に前記第1の流体を閉じ込める、請求項10に記載のエレクトロウェッティング式表示デバイス。
【請求項12】
前記パターンが、前記画素の形状を画定し、前記領域に配置される壁が前記第1の流体を前記画素の前記空間に閉じ込める、請求項10に記載のエレクトロウェッティング式表示デバイス。
【請求項13】
前記パターンが、前記画素についての開始点を形成する、請求項8〜12のいずれか一項に記載のエレクトロウェッティング式表示デバイス。
【請求項14】
前記パターンが、前記画素における前記第1の流体に対する障壁を形成する、請求項1〜13のいずれか一項に記載のエレクトロウェッティング式表示デバイス。
【請求項15】
エレクトロウェッティング素子と第1の支持板及び第2の支持板とを備えるエレクトロウェッティング式デバイスにおける低疎水性領域の使用方法であって、
前記エレクトロウェッティング素子が前記第1の支持板と前記第2の支持板の間に空間を備え、前記空間が第1の流体と第2の導電性流体又は極性流体とを含み、前記第1の流体と第2の流体は混合せず、前記第1の支持板上に電極構造体が配置され、前記空間に面した疎水性表面を有する絶縁層が前記電極構造体上に配置され、
前記領域が、前記表面の前記領域の前記疎水性を恒久的に低下させるために、前記絶縁層の前記厚さを横切って一時的に電界を印加することによって作製されており、
当該使用方法が、前記流体の運動又は前記絶縁層上への層の接着の制御である、使用方法。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7a】
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【図7b】
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【公表番号】特表2013−516635(P2013−516635A)
【公表日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−546425(P2012−546425)
【出願日】平成22年12月23日(2010.12.23)
【国際出願番号】PCT/EP2010/070695
【国際公開番号】WO2011/080224
【国際公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【出願人】(506255669)サムスン エルシーディー ネザーランズ アール アンド ディー センター ビー.ブイ. (12)
【Fターム(参考)】