説明

エレクトロクロミック機能を備えた複合ポリマー材料

【課題】従来技術に比べて、より加工しやすく、発色効率が高く、安定性が高く、応答が速く、そしてRGB三原色を表示可能なポリマー材料が求められる。
【解決手段】化学構造の化学式1で示すエレクトロクロミック機能を備えた複合ポリマー。


式中、mは1〜4、pは0〜3、nは3〜10000であって、
およびRはそれぞれ−H、−C2a+1、−OC2a+1、−SC2a+1、−N(C2a+1または−[O(C2a]であり、ここで、a=1〜15、b=1〜5であり、
Xは不飽和基である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は複合ポリマー材料に関し、特にエレクトロクロミック(electrochromic)性質を有する複合ポリマー材料に関する。
【背景技術】
【0002】
省エネで炭素排出を減らし、エネルギーの再利用技術を開発することは、地球環境を末永く保つための重要な作業であり、エレクトロクロミック材料で製作されたエレクトロクロミック素子もまた新たな省エネ技術である。現時点では、材料および技術的な限界により、関連する製品では商業化するための経済的な要求を満たすことはできないものの、科学技術の進歩および人類の永続的な発展という要求に伴い、経済効果の有無が製品を判定する唯一の基準ということではなくなり、より優れたエレクトロクロミック材料の開発を続けていくこともまた重要な研究課題となると確信している。
【0003】
複合ポリマーは応答が速く、コントラストおよび発色効果が高く、構造を変更しやすく、サンプルの製造が便利であるなどの長所を備えていることから、エレクトロクロミック材料における研究で注目されている。エレクトロクロミック材料として複合ポリマーを用いる他の長所は、ポリマーの構造に手を加えてそのエネルギーギャップの大きさを変更し、ひいてはポリマーに異なる色を発色させることができるところである。例えば、複合ポリマーの主鎖または側鎖上に異なる置換基を加え、立体効果および電子効果により複合ポリマーのエネルギーレベルの大きさを調節することで、複合ポリマーの色を調節することができる。あるいは、主鎖上へ付加(例えば共重合体を形成)することによりポリマーの色を調節することができる。それでもなお、加工しやすく、発色効率が高く、安定性が高く、応答が速く、そしてRGB三原色を表示可能なポリマー材料を求めることで、エレクトロクロミック材料の商業化の歩みを加速することは、常に科学者が努力する目標となっている。
【0004】
また、従来の複合ポリマーはp型半導体材料であって、これは例えばC60またはC70といったn型半導体と混成して、高分子太陽光電池を構成することができる。これら複合ポリマーは、範囲が可視光から赤外線までの異なる波長の電磁波を吸収することができる。したがって、比率の異なるポリマーとC60またはC70とを混成した後に構成される電池素子は良好な光−電気変換効率を備え得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来技術に比べて、より加工しやすく、発色効率が高く、安定性が高く、応答が速く、そしてRGB三原色を表示可能なポリマー材料が求められる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
したがって、本発明の目的は複合ポリマー材料を提供するものである。この複合ポリマー材料は一般的な溶剤に溶解するため、スピンコーティング加工で成膜できる特性を備えている。しかも、適度な構造設計により、赤、緑、青といった三原色または黒として発色することも可能であり、さらに高い発色効率および高い電気化学的安定性を具備する。
【0007】
本発明は、化学構造が化学式1で表されるエレクトロクロミック性質を持つ複合ポリマー材料を提供する。
【化1】

式中、mは1〜4、pは0〜3、nは3〜10000であり、
およびRは、それぞれ−H、-C2a+1、−OC2a+1、−SC2a+1、−N(C2a+1または−[O(C2a](a=1〜15,b=1〜5)であり、
【0008】
Xは、化学構造が下記化学式2〜27のうちのいずれかで表される不飽和基である。
【化2】

【0009】
式中、YはO、SまたはSeであり、
〜R42は、それぞれ−H、−C2c+1、OC2c+1、SC2c+1、−N(C2c+1または[O(C2c](c=1〜15,d=1〜5)のうちのいずれかを示している。
【発明の効果】
【0010】
上記複合ポリマーは下記のような特長を備えている。
1.加工性および電気化学的安定性に優れている。
2.赤、緑、青といった三原色または黒を含む異なる色を発色することができる。
3.発色効率がよい。
4.変色電位が低い。
5.エレクトロクロミック素子および高分子太陽光電池の光起電力効果材料に応用できる。
【0011】
本発明の上記およびその他の目的、特徴、長所および実施例を、より理解しやすくするため、下記のとおり添付の図面を詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は本発明の実施例2におけるPDOCPDT−DOT複合ポリマーフィルムを三電極システムにて1000回酸化/還元したとき、PDOCPDT−DOTフィルムの最大吸収波長の透過度の変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
実施例1
実施例1で合成する複合ポリマーは、化学式28に示すとおりである。
【化3】

【0014】
化学式1と比較して分かるように、化学式1のRおよびRは−C17であり、Xは化学式2であり、mおよびpは1である。化学式2中のYはSであり、Rは−H、Rは−C17である。化学式28中のnは24である。
【0015】
化学式28の合成工程は工程1A〜1Bに示すとおりであり、このうちTHFはテトラヒドロフラン、DMFはジメチルホルムアミド、EGはエチレングリコール、そしてetherはエーテルを表している。
【化4】

【化5】

【0016】
まず、合成工程1A中のDTOHを準備した。1000mlの二口丸底フラスコ(うち一口には吸引弁を取付ける)で3−BrTを30g計量し、無水ヘキサンを300ml加えて、アルゴンガスを送り込み、さらに真空吸引して、これを3回繰り返すことで、水分を除去した。続いて、−78℃まで冷却して、前記二口丸底フラスコ中にn−BuLi(2.5M)を73.6ml加えて、さらに無水テトラヒドロフランを30ml加えて15分間撹拌した。−78℃以下を維持して、HCOOCHが5.2gとTHFが20mlの混合溶液をゆっくりと滴下で加えて(遅ければ遅いほどよい。約10〜15分間)、滴下が終了した後に引き続き3時間撹拌した。室温にまで戻して、150mlの飽和NHCl(aq)を反応が終わるまで加えて30分間撹拌した。
【0017】
エーテルで生成物を数回抽出した後、集められた有機溶液をMgSOで水分を除去した後ろ過し、ろ過液中の有機溶剤を回転濃縮法で除去した。続いて、それぞれ体積比が25:1であるヘキサン:エチルアセテートの混合溶液を溶離液として、篩孔が240〜400のシリカゲルカラムを通過させて分離純化し、約91%の収率で、DTOHの白色固体を16.45g得た。
【0018】
続いて、合成工程1A中のDT−ケトンを準備した。500mlの二口丸底フラスコでDTOHを16.45g計量し、無水メチレンクロライドを250ml加えて、粉砕したモレキュラーシーブを10g加えて反応にて生じた水分を吸収した。またサンプル容器からクロロクロム酸ピリジニウム(Pyridinium chlorochromate;PCC)を27.965g計量し、0℃にて、前記の丸底フラスコにPPCを投入した。室温にまで戻った後、少なくとも10時間撹拌した後、無水エーテルを200ml加えた。
【0019】
100mlのビーカーに珪藻土(celite)およびシリカ(silica)を重量比1:1で加えて、さらにエーテルを加えて、珪藻土−シリカ−エーテル混合物がゲル状になったとき漏斗に移し換えて、吸引して余分なエーテルをろ過した。続いて、前記丸底フラスコ中の混合物を前記漏斗に移し換えるとともに、これをエーテルで洗浄した。その後、MgSOでろ過液から水分を除去した後ろ過して、さらに有機溶剤を回転濃縮で除去した。
【0020】
体積比が50:1であるヘキサン:エチルアセテート混合溶液を溶離液として、篩孔が240〜400のシリカゲルカラムを通過させて分離純化し、DT−ケトンの白色固体を13.8g得た。集められた生成物はCHClに溶解可能であり、収率は約85%であった。
【0021】
そして、合成工程1A中のジオキソランを準備した。1000mlの取っ手付き丸底フラスコでDT−ケトンを13.8g計量し、無水CHClを250ml、3回に分けて加えた。0℃で、1,2−ビス−トリメチルシラニル−オキシ−エタンを30.22gゆっくりと前記取っ手付き丸底フラスコに加えて、続いて触媒であるトリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリルを3.5mlをさらに加えて、室温にまで戻し、3時間撹拌した。
【0022】
無水ピリジンを3ml加えて急冷反応を起こさせて、さらにNaHCO3(aq)を250ml加えた。エーテルで生成物を数回抽出して、合わせられた有機溶液をさらにNaCOおよびNaSO(重量比は1:1)で水分を除去し、ろ過液中の有機溶剤を回転濃縮で除去した。体積比が50:1であるヘキサン:エチルアセテートの混合溶液を溶離液として、篩孔が240〜400のシリカゲルカラムを通過させて分離純化し、約70%の収率で、ジオキソランの白色固体を11.9g得た。
【0023】
続いて、合成工程1A中のDI−ジオキソランを準備した。250mlの取っ手付き丸底フラスコでジオキソランを11.9g計量し、無水エーテルを125ml加えた。−78℃で、n−BuLi(2.5M)を42mlゆっくりと取っ手付き丸底フラスコに加えるとともに、10分以内に室温にまで戻した。500mlの取っ手付き丸底フラスコでIを25.81g計量し、10mlの無水エーテルに溶解させて、ジオキソラン溶液を500mlの取っ手付き丸底フラスコのヨウ素溶液中に移して、室温にて3時間撹拌して、純水100mlをフラスコ内に加えて反応を終了させた。
【0024】
エーテルで生成物を数回抽出して、得られた有機溶液は順に30%のNa3(aq)、および40ml純水で不純物を除去した後、さらにMgSOで水分を除去した後ろ過して、大部分の有機溶剤を回転濃縮で除去し、高真空で乾燥させた後、DI−ジオキソランを得た。
【0025】
次に、合成工程1A中のCDTを準備した。集められたDI−ジオキソラン(500mlの丸底フラスコ内に収容されている)に銅粉末を9.5304gおよびDMFを150ml加えて、15時間循環させた。加熱を停止して、反応物が室温にまで冷めた後、容器中の混合物を吸引ろ過した(少量のDMFまたはエーテルで洗浄することができる)。得られたろ過液中にさらに2MのHCl(aq)を250ml加えて、4〜5時間撹拌して保護反応を行って、エーテルで生成物を数回抽出した。合わせられた有機溶液は順に2MのHCl(aq)、飽和NaHCO3(aq)および純水で洗浄した。MgSOで水分を除去した後ろ過して、ろ過液の有機溶剤を回転濃縮で除去した。体積比で50:1であるヘキサン:エチルアセテートの混合溶液を溶離液として、篩孔が240〜400のシリカゲルカラムを通過させて分離純化し、約22%の収率で、CDTの紫色固体を5.8g得た。
【0026】
続いて、合成工程1A中のCPDTを準備した。250mlの二口丸底フラスコでCDTを5.8g計量し、100mlのエチレングリコール(ethylene glycol;EG)中に溶解させた。窒素ガスを送り込み、循環管を取付けるとともに180℃まで加熱したとき、赤色の溶液に変化した。さらにヒドラジン水和物(hydrazine hydrate)10.2mlをゆっくりと加えて、1時間循環させたとき(温度は約180℃を維持した)、赤色の溶液はオレンジ色に変化した。KOH、5.8gをゆっくりと加えて(突沸に注意)、温度を210℃まで上げて、引き続き8時間循環させた。
【0027】
室温まで冷却した後、1.2MのHCl(aq)で中和して、エーテルを用いて生成物を抽出した。得られた有機溶液は順に蒸餾水、飽和食塩水および飽和したNHCl(aq)で各々3回洗浄し、さらにMgSOで水分を除去した後ろ過し、ろ過液中の有機溶剤を回転濃縮で除去した。ヘキサンを溶離液として、篩孔が240〜400のシリカゲルカラムを通過させて生成物を純化して、約71%の収率で、CPDTの薄黄色の固体を3.82g得た。
【0028】
続いて、合成工程1A中のDOCPDTを準備した。250mlの二口丸底フラスコでCPDTを3.82g計量し、25mlのDMF中に溶解させた。KIを0.38gおよびNaHを1.29g加えて、アルゴンガス、そして0℃で2時間反応させた。C17Brを9.36ml加えた後、さらに8時間反応させた。蒸留水を加えて反応を終了させて、エーテルで生成物を数回抽出した。集められた有機溶液を前後して蒸留水、飽和食塩水および飽和NHCl(aq)で洗浄して、さらにMgSOで水分を除去した後ろ過して、ろ過液中の有機溶剤を回転濃縮で除去した。ヘキサンを溶離液として、シリカゲルカラムを通過させて純化して生成物を反応させて、約57%の収率で、DOCPDTの薄黄色の油状物を4.9g得た。
【0029】
そして、合成工程1A中のDTMSnDOCPDTを準備した。50mlの取っ手付き丸底フラスコでDOCPDTを0.5g計量するとともに、無水テトラヒドロフランを約20ml加えて、アルゴンガスを送り込み、さらに真空吸引してこれを3回繰り返すことで、水分を除去した。−78℃で、n−BuLiを1.23mlで2.5M加えて、室温にまで戻して2時間反応させた。再度−78℃にまで冷却して、MeSnCl(4mlの無水テトラヒドロフラン中に溶解している)を0.57g加えて、室温にまで戻して10時間反応させた。
【0030】
蒸留水を加えて反応を終了させるとともに、CHClで生成物を抽出した。得られた有機溶液を蒸留水、飽和食塩水およびNHCl(aq)で洗浄して、MgSOで水分を除去した後ろ過して、ろ過液中の有機溶剤を回転濃縮で除去して、DTMSnDOCPDTを得た。そのH−NMR(300MHz,δ/ppm in CDCl)を測定したところ、0.35(18H,s)、0.84(6H,t)、1.13(24H,m)、1.81(4H,m)、6.91(2H,s)の化学シフトδが得られた。
【0031】
続いて、工程1Bの共重合反応でPDOCPDT−OTを合成した。DTMSnDOCPDTを0.63g、2,5−ジブロモ3−オクチルチオフェンを0.30g、そして磁石を100mlの取っ手付き丸底フラスコ中に投入して、DMFを50ml加えた。均一に混合させた後、混合物を−78℃まで冷却して、混合溶液が完全に凝固した後真空吸引した。室温にまで戻った後、容器中の固体を完全に溶解させて、さらにアルゴンガスを送り込んだ。この作業を4回繰り返した。
【0032】
Pd(PPh触媒を0.02g準備して、まずごく少量の無水THFで溶解させ、アルゴンガス雰囲気でフラスコ中に加えるとともに、120℃まで加熱して3日間循環反応させた。反応が終了した後、温度を室温にまで冷却し、ろ紙でろ過するとともに、得られたろ過液をさらに500mlのメチルアルコールに加えて、沈殿するよう数時間静置した。このときの溶液は混濁現象が起きるので、回転遠心の方式で沈殿物をすべて回収して、そして沈殿物を筒状ろ紙内に集めて、さらにソックスレー抽出器(soxhlet extrator)内に投入してメチルアルコール、エチルアルコールおよびアセトンで沈殿物を数日間洗浄して、最後にヘキサンで生成物を抽出した。ヘキサンで抽出した溶液から回転濃縮で溶剤を除去した後、DTMSnDOCPDTの濃赤色の粉末を得た。H NMR(CDCl,200MHz)を測定したところ、0.85(6H)、1.17(24H)、1.82(4H)、2.78(2H)、7.01(4H)の化学シフトδが得られた。
【0033】
実施例2
実施例2で合成する複合ポリマーは化学式29に示すとおりである。
【化6】

【0034】
化学式1と比較して分かるように、化学式1のRおよびRは−C17であり、Xは化学式2であり、mは1であり、pは2である。化学式2中のYはSであり、Rは−H、Rは−C17である。化学式29中のnは50である。
【0035】
化学式29の合成工程は下記工程2A〜2Cに示すとおりであり、このうちTHFはテトラヒドロフラン、DMFはジメチルホルムアミド、EGはエチレングリコール、そしてetherはエーテルを表している。
【化7】

【化8】

【化9】

【0036】
まず、合成工程2A中のDTMSnDOCPDTを合成した。50mlの取っ手付き丸底フラスコでDOCPDT(合成方法は工程1Aを参照されたい)を0.5g計量するとともに、無水テトラヒドロフランを約20ml加えて、アルゴンガスを送り込んだ後さらに真空吸引して、これを3回繰り返して、水分を除去した。−78℃で、n−BuLiを1.23mlで2.5M加えて、室温にまで戻した後、2時間反応させた。再度−78℃にまで冷却して、MeSnCl(4mlの無水THFに溶解している)を0.57g加えて、室温にまで戻して10時間反応させた。蒸留水を加えて反応を終了させるとともに、CHClで生成物を抽出した。得られた有機溶液を蒸留水、飽和食塩水および飽和NHCl(aq)で洗浄して、さらにMgSOで水分を除去した後ろ過し、ろ過液中の有機溶剤を回転濃縮で除去して、DTMSnDOCPDTを得た。
【0037】
続いて、合成工程2B中之DOCPDT−DOTの単量体を準備した。250mlの長首の取っ手付き丸底フラスコでDTMSnDOCPDTを1.64g、Br−OTを1.24g計量するとともに磁石を投入して、さらにDMFを40ml加えて、二つの反応物が均一に溶解するまで撹拌した。混合物を−78℃にまで冷却し、混合溶液が完全に凝固した後、真空吸引し、混合溶液を室温にまで戻した後アルゴンガスを送り込んだ。容器中の固体が完全に溶解した後、再度−78℃にまで冷却するとともに真空吸引し、この作業を4回繰り返した。室温にて、アルゴンガスを送り込んだ雰囲気で、Pd(PPh(20mlにTHFに溶解している)を0.0522g加えて、72時間循環(約150℃)させて、加熱を停止した。フラスコを室温にまで冷却した後、飽和NHCl(aq)を50ml加えて反応を終了させた。
【0038】
CHClで生成物を数回抽出し、集められた有機溶液を脱イオン水で6〜7回抽出して、DMFを除去した。有機溶液をMgSOで水分を除去した後吸引ろ過し、さらにろ過液中の有機溶剤を回転濃縮で除去した。ヘキサンを溶離液として、篩孔が240〜400のシリカゲルカラムを通過させて分離純化し、約65%の収率で、DOCPDT−DOTの濃オレンジ色の液体を0.58g得た。H−NMRのスペクトラムで(300MHz,δ/ppm in CDCl)を測定したところ、0.88(6H,t)、1.2(20H,m)、1.72(4H,t)、1.82(4H,t)、2.78(4H,t)、6.93(2H,d)、6.96(2H,s)、7.15(2H,d)の化学シフトδが得られた。
【0039】
続いて、合成工程2C中の共重合体PDOCPDT−DOTを合成した。250mlの取っ手付き丸底フラスコでDOCPDT−DOTを0.58g計量するとともに磁石を投入して、FeClを0.83g加えた後、アルゴンガスを送り込み、さらに真空吸引して、これを3回送り込んだ。アルゴンガス中にて無水CHClを50ml加えて、72時間撹拌した。大量のメチルアルコールを加えて反応を終了させるとともに沈殿するように静置した。
【0040】
ろ過の後、沈殿物を筒状ろ紙中内に投入して、さらにソックスレー抽出器(soxhlet extrator)内に投入してそれぞれメチルアルコール、エチルアルコールおよびアセトンを溶剤として、不純物を洗浄した。さらに順にヘキサン、CHClおよびTHFを溶剤として、生成物を抽出した。抽出で得られた溶液から有機溶剤を回転濃縮で除去するとともに、真空乾燥することで、PDOCPDT−DOTの小豆色の固体を得た。H−NMR(300MHz,δ/ppm in CDCl)を測定したところ、0.88(6H,t)、1.2(20H,m)、1.70(4H,s)、1.84(4H,s)、2.78(4H,s)、6.99(4H,s)の化学シフトδが得られた。
【0041】
エレクトロクロミック性質の測定−方法1
続いて、複合ポリマーのエレクトロクロミック特性(コントラスト、応答時間、発色効率・・・など)の測定方式を説明するとともに、上記したPDOCPDT−DOTのエレクトロクロミック特性と、従来の複合ポリマーのエレクトロクロミック特性とを比較した。
【0042】
いわゆるエレクトロクロミックとは、物質が一つの電子を得るか、または失ったとき、物質の光光吸収スペクトルがこれにより変化することである。光吸収スペクトルが変化するので、それ自体の色も変化することになる。複合ポリマーもこの特性を備えているうえ、化学的構造が異なるに伴い、または酸化/還元反応の発生に伴って、発色状態から無色状態に変化し、そして無色状態から発色状態にも変化可能である。
【0043】
複合ポリマーのコントラスト、応答時間、発色効率などの測定方式は、UV−Vis分光光度計(Cary 5E)および電気化学測定器(AutoLab potentiostat/ galvanostat,PGSTAT30)を接続したシステムを用いて測定するものである。複合ポリマーの測定システムにおける作用電極(Work electrode)は複合ポリマー膜が被覆されているITOガラスであり、基準電極(Reference electrode)はAg/Ag+であり、対電極(Counter electrode)は白金プレートであって、電解液は0.1MのLiClO4/CHCN溶液である。上記したITOガラスの面積は4cm×4cmであって、塗布面積は2cm×1cmである。
【0044】
電気化学測定器システムが有効電極に異なる電位を印可したとき、ITO上に被覆されている複合ポリマーに酸化/還元反応が生じるとともに、色の変化を伴なった。電気化学測定器は、電位印可時間およびシステムが酸化/還元を生じさせた電流の大きさを記録する一方で、UV−Vis分光光度計は複合ポリマーの光吸収スペクトルが変化を同期して観察した。その後、数式1−1および数式1−2から、材料のコントラスト((Δ% T)および発色効率(η)をそれぞれ計算した。ちなみにエレクトロクロミック材料の応答時間は電位を印可したとき、材料に95%の最大コントラストが現れるのに要する時間のことである。
【0045】
【数1】

【数2】

【0046】
PDOCPDT−DOTのエレクトロクロミック特性の測定結果は表1に示すとおりである。表1には、PDOCPDT−DOTのエレクトロクロミック特性の測定結果以外に、従来の複合ポリマーPMeT、PhexTおよびPocTのエレクトロクロミック特性の測定結果も開示してある(Pang,Y.;Li,X.;Ding,H.;Shi,G.;Jin,L. Electrochimica Acta. 2007,52,6172-6177)。
【表1】

【0047】
表1から分かるように、本発明の実施例2におけるPDOCPDT−DOTポリマーのエレクトロクロミック特性は従来のポリマーよりも優れている。なぜならばこのポリマーは応答時間が短く、発色効率に優れ、変色電位が低いからである。
【0048】
これよれば、本発明の実施例における複合ポリマーは下記化学式30に示す特殊なビチオフェン基を含むので、従来のエレクトロクロミック複合ポリマーよりも優れたエレクトロクロミック特性を備えることから、本発明の複合ポリマーをエレクトロクロミック素子に応用するのに有利となり、短い応答時間、高いコントラストおよび発色効率を得ることができるということが明らかになった。
【化10】

【0049】
エレクトロクロミック性質の測定−方法2
ここで、高速で連続して交差するように電位を印加する方法で、複合ポリマーの電気化学/光学的安定を試験する。
【0050】
図1を参照する。これは本発明の実施例2におけるPDOCPDT−DOT複合ポリマーフィルムを三電極システムにて1000回酸化/還元したとき、PDOCPDT−DOTフィルムの最大吸収波長の透過度の変化を示す図である。図1によれば、酸化/還元反応(または発色/無色の置換)が1000回行われた後、PDOCPDT−DOTフィルムの透過率には顕著な変化は見られず、PDOCPDT−DOTフィルムが優れた電気化学および光学的安定性を備え、各種のエレクトロクロミック素子への応用に適していることが分かる。
【0051】
上記本発明の実施例から分かるように、本発明を応用することで下記のような長所を備えることになる。
1.本発明の実施例における複合ポリマーいずれも上記化学式30に示すビチオフェン基を含むので、加工性および電気化学的安定性に優れている。
2.本発明の実施例における複合ポリマーはいずれも上記化学式30に示すビチオフェン基と、上記化学式2ないし27のうちのいずれかにより形成された重合体であるので、化学的構造の異なる単量体を組み合わせることで、赤、緑、青といった三原色および黒を含む異なる色を発色することができる。
3.本発明の実施例における複合ポリマーは発色効率に優れ、変色電位が低い。
4.本発明の実施例における複合ポリマーはエレクトロクロミック素子および高分子太陽光電池の光起電力効果材料に応用することができる。
【0052】
本発明では実施例を上記のように開示したが、これは本発明の保護範囲を限定するためのものではなく、当該分野に習熟する当業者であれば、本発明の技術的思想および範囲を逸脱することなく、各種変更および付加を行うことができるので、本発明の保護範囲は特許請求の範囲により限定されるものを基準とすべきである。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明の複合ポリマーはエレクトロクロミック素子および高分子太陽光電池に応用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学式1で表されることを特徴とする複合ポリマー。
【化1】

式中、mは1〜4、pは0〜3、nは3〜10000であって、
およびRは、それぞれ、−H、−C2a+1、−OC2a+1、−SC2a+1、−N(C2a+1または−[O(C2a]であり、ここで、a=1〜15、b=1〜5であり、
Xは不飽和基である。
【請求項2】
Xが、下記化学式2〜27のうちのいずれかで表されることを特徴とする、請求項1に記載の複合ポリマー。
【化2】

式中、Yは、O、SまたはSeであり、
〜R42は、それぞれ、−H、−C2c+1、OC2c+1、SC2c+1、−N(C2c+1または[O(C2c]であり、ここで、c=1〜15、d=1〜5である。
【請求項3】
下記化学式で表されることを特徴とする、請求項2に記載の複合ポリマー。
【化3】

【請求項4】
下記化学式で表されることを特徴とする、請求項2に記載の複合ポリマー。
【化4】

【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の複合ポリマーを含むことを特徴とするエレクトロクロミック材料。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の複合ポリマーを含むことを特徴とする高分子太陽光電池に応用可能な光起電力効果材料。

【図1】
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【公開番号】特開2011−38070(P2011−38070A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−22766(P2010−22766)
【出願日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【出願人】(504007741)國立中央大學 (28)
【Fターム(参考)】