説明

エレクトロルミネセンス物質およびデバイス

新たなルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウムもしくは白金のチアントレン配位子との錯体はエレクトロルミネセンス化合物である。本発明によって、構造式(I)の錯体が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレクトロルミネセンス物質(electroluminescent material)と、エレクトロルミネセンスデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
電流を通したときに発光する物質は、よく知られており、ディスプレイ用途に広く用いられている。無機半導体系(inorganic semiconductor systems)に基づいたデバイスが広く用いられている。しかしながら、これらはエネルギー消費が高いこと、生産コストが高いこと、量子効率が低いこと、および、フラットパネルディスプレイを生産することができないこと、という欠点を持っている。有機ポリマーは、エレクトロルミネセンスデバイスに用いるのに有用であるとして提案されているが、純色を得ることができず、生産コストが高い上に効率が比較的低い。提案されている他のエレクトロルミネセンス化合物には、アルミニウムキノラート(aluminium quinolate)があるが、色の範囲を得るために使用するにはドーパント(dopant)が必要である上、比較的効率が低い。
【0003】
特許出願「WO98/58037」には、改善された特質を有し、より優れた実験結果を与えるエレクトロルミネセンスデバイスに使用することが可能な、一連の遷移金属錯体およびランタニド錯体が記載されている。特許出願「PCT/GB98/01773」、「PCT/GB99/03619」、「PCT/GB99/04030」、「PCT/GB99/04024」、「PCT/GB99/04028」および「PCT/GB00/00268」には、希土類キレートを用いたエレクトロルミネセンス錯体、構造、およびデバイスが記載されている。「US Patent 5128587」には、仕事関数が高い透明電極と仕事関数が低い第二電極との間に挟まれたランタニド系列の希土類元素の有機金属錯体、エレクトロルミネセンス層と透明高仕事関数電極(transparent high work function electrode)との間に入れられた正孔伝導層(hole conducting layer)、およびエレクトロルミネセンス層と低仕事関数電子注入アノード(electron injecting low work function anode)との間に入れられた電子伝導層(electron conducting layer)とから成る、エレクトロルミネセンスデバイスが開示されている。正孔伝導層と電子伝導層はデバイスの仕事と効率を向上させるために必要である。正孔輸送層(hole transporting layer)は、正孔を輸送して電子を遮断する役割を果たす。その結果、電子が正孔と再結合(recombining)しないで電極中に移動するのを防ぐ。このキャリアーの再結合は主に発光層(emitter layer)で起こる。
【発明の開示】
【0004】
現在、我々は、新しいエレクトロルミネセンス有機金属錯体をさらに発見した。
本発明によって以下の構造式(I)の錯体が提供される。
【0005】
【化3】

ここで、
Lは以下のものであり
【0006】
【化4】

Mはルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウムもしくは白金であり、
nは1もしくは2であり、
R1、R4およびR5は、同じ基であっても異なる基であっても良く、
置換および非置換のヒドロカルビル基(hydrocarbyl groups)、
置換ならびに非置換の単環式複素環基および多環式複素環基、
置換ならびに非置換のヒドロカルビルオキシ基(hydrocarbyloxy)もしくはカルボキシ基、
フルオロカルビル基(fluorocarbyl groups)、
ハロゲン基、
ニトリル基、
アミノ基、
アルキルアミノ基、
ジアルキルアミノ基、
アリールアミノ基、
ジアリールアミノ基、
チオフェニル基から選択され、
p、sおよびtは独立に0、1、2または3であり、
p、sおよびtの任意のものが2または3であるときには、それらの一つのみが飽和ヒドロカルビル基もしくはハロゲン基以外のものである可能性があり、
R2およびR3は、同じ基であっても異なる基であっても良く、
置換および非置換のヒドロカルビル基、
ハロゲン基から選択され、
qおよびrは独立に0、1または2である。
前述の種類の好ましい化合物は、Mがイリジウムであるものである。nの好ましい値は1である。
【0007】
これらの化合物で環が置換されているものでは、R1、R4およびR5は典型的にはC1からC12であることがある置換または非置換の、脂肪族基もしくはシクロ脂肪族基(cycloaliphatic group)であることがあり、シクロ脂肪族基の場合には、好ましくは、シクロペンチル基もしくはシクロヘキシル基に基づくものである。R1、R4およびR5がアルキル基の場合は、それらは好ましくは、C1からC4で、特にはメチル基もしくはエチル基である。R1、R4およびR5は、アルキル基もしくはアルコキシ基であることもあり、そのアルキル基は好ましくはC1からC12で、さらに好ましくはC1からC4である。従って、R1、R4およびR5の少なくとも一つに好ましいものは、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、s-ブチル基、t-ブチル基、シクロヘキシル基、メトキシ基、もしくはエトキシ基である。更なる可能性としては、R1、R4およびR5の少なくとも一つが、置換あるいは非置換の、単環式または多環式の、芳香族基、アリールオキシ基、もしくは複素環基構造である。例えば、R1、R4およびR5の少なくとも一つが、フェニル基、トリル基、フルオロフェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、フルオレニル基、アントラセニル基(anthracenyl)、フェナントレニル基(phenanthrenyl)もしくはカルバゾリル基であることがある。R1、R4およびR5の少なくとも一つについての他の可能性は、フルオロ基、クロロ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ベンジルアミノ基、もしくはジベンジルアミノ基である。
【0008】
これらの化合物で環が置換されているものでは、R2およびR3は、置換または非置換の脂肪族基であることがある。ここでR2およびR3はアルキル基で、それらは好ましくは、C1からC4で、特にはメチル基もしくはエチル基である。他の可能性としては、R2およびR3の少なくとも一つが、クロロ基もしくはブロモ基である。
【0009】
前述の構造式(I)の特定の化合物は、MがIrで、nが1で、かつp、q、r、sおよびtが0である化合物である。
【0010】
本発明のさらなる態様では、先に定義した構造式(I)の化合物を製造するための方法も提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
チアントレン、および、その置換誘導体は、「US4139516」および「US4091031」に開示されている方法に従って、三塩化アルミニウム触媒の存在下、ベンゼン化合物を二塩化二硫黄で処理して調製でき、必要なハロゲン化された物質は、他の反応物から例えばHPLCのような、それ自体が既知の方法を用いて分離することができる。
【0012】
【化5】

その後、既知の方法である、ハロゲン化マグネシウムおよびホウ酸トリアルキル(trialkyl borate)での処理によって、生成物をチアントレン-1-イル-ボロン酸(thianthren-1-yl-boronic acid)に転換することができる。望ましい2-(チアントレン-1-イル)ピリジンの合成は、2-ブロモピリジンとチアントレン-1-イル-ボロン酸との鈴木カップリング(Suzuki coupling)で、例えばテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウムのようなパラジウム(0)触媒を用いて、以下に示すスキームなどに従って行うことができる。
【0013】
【化6】

【0014】
2-(チアントレン-1-イル)ピリジン、もしくは、その置換誘導体を三塩化イリジウム(iridium trichloride)と共に加熱すると、例えば、以下のような錯体が得られる。
【0015】
【化7】

【0016】
上記の錯体を強塩基でさらに処理して、(2-ピリジル)ベンズイミダゾール((2- pyridyl)benzimidazole)もしくは、その置換誘導体を加えると、構造式(I)の化合物が生成する。ここで、その置換基は構造式(I)のものと同じ意味である。
【0017】
第一番目のステップでは、ベンゼンの代わりに例えば、トルエン、o-クロロトルエン、m-クロロトルエン、p-クロロトルエン、o-キシレンもしくはm-キシレンを用いることもできる。
【0018】
第二番目のステップでは、2-ブロモピリジンの代わりに、例えば、2-クロロ-5-ヨードピリジン、2-ブロモ-5-ヨードピリジン、もしくは2-アミノ-5-ヨードピリジンを用いることがある。
【0019】
本発明は、(i) 第一電極と、(ii) 前述の構造式(I)のエレクトロルミネセンス物質の層と、(iii) 第二電極とを含む、エレクトロルミネセンスデバイスも提供する。
エレクトロルミネセンス物質の層の厚みは、好ましくは10〜250nm、さらに好ましくは20〜75nmである。
【0020】
第一電極はアノードとして機能する可能性があり、第二電極はカソードとして機能する可能性があり、好ましくは正孔輸送物質(hole transporting material)の層が、アノードとエレクトロルミネセンス化合物の層の間に存在する。
正孔輸送物質は、エレクトロルミネセンスデバイスに用いられる任意の正孔輸送物質とすることができる。
【0021】
正孔輸送物質は、α-NBP、ポリ(ビニルカルバゾール)、N,N'-ジフェニル-N,N'-ビス(3-メチルフェニル)-1,1'-ビフェニル-4,4'-ジアミン(TPD)、非置換もしくは置換のアミノ置換芳香族化合物のポリマー、ポリアニリン、置換ポリアニリン類、ポリチオフェン類、置換ポリチオフェン類、非置換ならびに置換のポリシラン類などのような、アミン錯体(amine complex)とすることができる。ポリアニリン類の例としては以下のポリマーがあり、
【0022】
【化8】

ここでRはオルト位、もしくはメタ位にあり、水素、C1-18アルキル基、C1-6アルコキシ基、アミノ基、クロロ基、ブロモ基、ヒドロキシル基もしくは以下に示す基である。
【0023】
【化9】

ここでRはアルキル基もしくはアリール基で、R'は水素、前述の構造式IIに示した他のモノマーの少なくとも一つを含むC1-6アルキル基もしくはC1-6アリール基である。
【0024】
またあるいは、正孔輸送物質は、ポリアニリンとすることができる。本発明で用いることができるポリアニリン類は、以下の一般的構造を有している。
【0025】
【化10】

ここでpは1〜10、nは1〜20、Rは先に定義したとおりであり、かつXがアニオンであり、好ましくは、Cl、Br、SO4、BF4、PF6、H2PO3、H2PO4、アリールスルホン酸イオン(arylsulphonate)、アレーンジカルボン酸イオン(arenedicarboxylate)、ポリスチレンスルホン酸イオン(polystyrenesulphonate)、ポリアクリル酸イオン(polyacrylate)、アルキルスルホン酸イオン(alkylsulphonate)、ビニルスルホン酸イオン(vinylsulphonate)、ビニルベンゼンスルホン酸イオン(vinylbenzene sulphonate)、セルローススルホン酸イオン(cellulose sulphonate)、ショウノウスルホン酸イオン(camphor sulphonate)、セルロース硫酸イオン(cellulose sulphate)、もしくは、全フッ素置換ポリアニオン(perfluorinated polyanion)から選択される。
アリールスルホン酸イオン類の例としては、p-トルエンスルホン酸イオン(p-toluenesulphonate)、ベンゼンスルホン酸イオン(benzenesulphonate)、9,10-アントラキノン-スルホン酸イオン(9,10-anthraquinone-sulphonate)およびアントラセンスルホン酸イオン(anthracenesulphonate)がある。アレーンジカルボン酸イオンの例としてフタル酸イオン(phthalate)があり、アレーンカルボン酸の例として、安息香酸イオン(benzoate)がある。
【0026】
我々は、ポリアニリンなどの、アミノ置換芳香族化合物の非置換もしくは置換ポリマーの、プロトン化されたポリマーは、蒸発(evaporate)しにくいか、または蒸発しないことを発見した。しかしながら、驚くべきことに、アミノ置換芳香族化合物の非置換もしくは置換ポリマーが脱プロトン化されると、簡単に蒸発できるようになること、すなわちポリマーが蒸発可能(evaporable)であることを、我々は見出した。
好ましくは、蒸発可能な、アミノ置換芳香族化合物の非置換もしくは置換ポリマーの脱プロトン化されたポリマーが用いられる。そのアミノ置換芳香族化合物の非置換もしくは置換の脱プロトン化されたポリマーは、水酸化アンモニウムのようなアルカリ、または水酸化ナトリウムもしくは水酸化カリウムのようなアルカリ金属の水酸化物で、処理して脱プロトン化することにより生成できる。
【0027】
プロトン化の程度は、プロトン化したポリアニリンの形成と脱プロトン化で調節することができる。ポリアニリン類の調製方法は、「A. G. MacDiarmid and A. F. Epstein, Faraday Discussions, Chem Soc.88 P319, 1989」の文献に記載されている。
ポリアニリンの伝導率はプロトン化の程度に依存し、伝導率が最大となるのは、例えば約50%のように、プロトン化の程度が40%と60%の間であるときである。
好ましくは、ポリマーは実質的に完全に脱プロトン化されている。
ポリアニリンは、例えば以下のようなオクタマー単位(octamer unit)、すなわちpが4であるようなもの、を形成する可能性がある。
【0028】
【化11】

ポリアニリン類は1 x 10-1 Siemen cm-1 の桁以上の導電率を有する可能性がある。
芳香族環は非置換であるか、もしくは例えばエチル基のようなC1から20のアルキル基などで置換されている可能性がある。
【0029】
ポリアニリンはアニリンの共重合体である可能性があり、好ましい共重合体は、アニリンとo-アニシジン、m-スルファニル酸もしくはo-アミノフェノールとの共重合体、またはo-トルイジン(o-toluidine)とo-アミノフェノール、o-エチルアニリン、o-フェニレンジアミン、もしくはアミノアントラセン類との共重合体である。
使用することができるその他のアミノ置換芳香族化合物のポリマーには、置換もしくは非置換のポリアミノナフタレン類、ポリアミノアントラセン類、ポリアミノフェナントレン類など、さらには、任意の他の縮合ポリ芳香族化合物のポリマーが含まれる。ポリアミノアントラセン類、および、それらを作る方法は「US Patent 6,153,726」に開示されている。芳香族環は非置換であっても良いし、例えば先に定義したR基で置換されているものでも良い。
【0030】
その他の正孔輸送物質は共役高分子(conjugated polymer)で、用いることができる共役高分子は、「US 5807627」、「WO90/13148」、および「WO92/03490」に開示もしくは参照されている、任意の共役高分子とすることができる。
【0031】
好ましい共役高分子は、ポリ(p-フェニレンビニレン)(PPV)および、PPVを含む共重合体である。その他の好ましい高分子は、ポリ[2-メトキシ-5-(2-メトキシペンチルオキシ-1,4-フェニレンビニレン)]、ポリ[(2-メトキシペンチルオキシ)-1,4-フェニレンビニレン]、ポリ[(2-メトキシ-5-(2-ドデシルオキシ-1,4-フェニレンビニレン)]などのポリ(2,5-ジアルコシキフェニレンビニレン)、ならびに、長鎖可溶化性アルコキシ基(long chain solubilising alkoxy group)であるアルコキシ基、ポリフルオレン類およびオリゴフルオレン類、ポリフェニレン類およびオリゴフェニレン類、ポリアントラセン類およびオリゴアントラセン類、ポリチオフェン類およびオリゴチオフェン類のうちの少なくとも一つを含む、他のポリ(2,5-ジアルコキシフェニレンビニレン類) である。
【0032】
PPVのフェニレン環は、任意に1箇所以上置換することができ、例えば個々に、アルキル基(好ましくはメチル基)、またはアルコキシ基(好ましくはメトキシ基もしくはエトキシ基)から独立に選択することができる。
ポリフルオレンでは、フルオレン環を任意に1箇所以上置換することができ、例えば個々に、アルキル基(好ましくはメチル基)、またはアルコキシ基(好ましくはメトキシ基もしくはエトキシ基)から独立に選択することができる。
【0033】
任意のポリ(アリーレンビニレン)(poly(arylenevinylene))には、用いることができるその置換誘導体も含まれ、ポリ(p-フェニレンビニレン) のフェニレン環は、アントラセン環もしくはナフタレン環のような縮合環系に置き換えることができ、それぞれのポリ(フェニレンビニレン)部分のビニレン基の数は例えば7つ以上のように増やすこともできる。
【0034】
共役高分子は「US 5807627」、「WO90/13148」、および「WO92/03490」に開示された方法で作ることができる。
【0035】
正孔輸送層(hole transporting layer)の厚さは20nm〜200nmが好ましい。
前述のポリアニリン類などのアミノ置換芳香族化合物のポリマーは、他の正孔輸送物質とともに、もしくは組み合わせて、例えばアノードと正孔輸送層の間などの、バッファー層としても用いることができる。他のバッファー層は、フタロシアニン銅のようなフタロシアニン類から形成することができる。
【0036】
その他のいくつかの正孔輸送物質の構造式を図3、4、5、6および7の図に示した。ここで、R、R1、R2、R3およびR4は同じであっても異なっていても良く、水素、置換および非置換の脂肪族基のような置換および非置換のヒドロカルビル基(hydrocarbyl)、置換および非置換の芳香族基、複素環基ならびに多環の環状構造、トリフルオロメチル基のようなフルオロカーボン基(fluorocarbon group)、フッ素原子などのハロゲン類あるいはチオフェニル基から選択されるものであり、R、R1、R2、R3およびR4は置換および非置換の縮合芳香族環、複素環、および多環の環構造を形成する可能性もあり、スチレンなどのモノマーと共重合体を作る可能性がある。XはSe、SもしくはOであり、Yは水素、置換および非置換の芳香族基、複素環基、ならびに多環の環状構造のような、置換もしくは非置換のヒドロカルボキシル基(hydrocarboxyl group)、トリフルオロメチル基のようなフルオロカーボン基、フッ素のようなハロゲン類、チオフェニル基もしくはニトリル基である可能性がある。
【0037】
Rおよび/もしくはR1および/もしくはR2および/もしくはR3および/もしくはR4の例には、脂肪族基、芳香族基および複素環基、アルコキシ基、アリールオキシ基およびカルボキシ基、置換ならびに非置換のフェニル基、フルオロフェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、フルオレニル基、アントラセニル基(anthracenyl)およびフェナントレニル基(phenanthrenyl)、t-ブチル基のようなアルキル基、ならびにカルバゾール基のような複素環基が含まれる。
【0038】
オプションとして、電子注入物質(electron injecting material)の層が、アノードとエレクトロルミネセンス物質の層との間に存在する。電子注入物質は電流が通ったときに電子を輸送する物質である。電子注入物質には、例えばアルミニウムキノラート、リチウムキノラート、ジルコニウムキノラート(Zrq4)などの金属キノラート(metal quinolate)のような金属錯体、9,10-ジシアノアントラセンのようなシアノアントラセン、シアノ置換芳香族化合物、テトラシアノキノジメタン(tetracyanoquinodimethane)、ポリスチレンスルホン酸(polystyrene sulphonate)、または、図1もしくは2の図に示した構造式の化合物、あるいはMx(DBM)nが含まれる。ここでMxは金属であり、DBMはジベンゾイルメタンで、nはMxの価数である。例えばMxはアルミニウムもしくはクロムである。シッフ塩基をDBM部分の代わりに用いることもできる。
別々の層とする代わりに、電子注入物質をエレクトロルミネセンス物質と混合して共蒸着(co-deposited)させることもできる。
【0039】
オプションとして、正孔輸送物質をエレクトロルミネセンス物質と混合して共蒸着させ、かつ、電子注入物質とエレクトロルミネセンス物質を混合することもできる。正孔輸送物質、エレクトロルミネセンス物質、および電子注入物質を一緒に混ぜて一つの層を形成することもでき、これによって構成を単純化することができる。
【0040】
第一電極は、好ましくはアノードとして作用する導電ガラス(conductive glass)もしくは導電性のプラスチック物質などの透明基板(transparent substrate)である。好ましい基板は、インジウム-スズ酸化物被覆ガラス(indium tin oxide coated glass)などの導電ガラスであるが、任意の導電性を有するガラス、または、金属もしくは導電性ポリマーなどの導電層を有するガラスを用いることができる。導電性ポリマー類、ならびに、導電性ポリマーで被覆されたガラスもしくはプラスチック物質も、基板として用いることができる。
【0041】
カソードは好ましくは、例えばアルミニウム、バリウム、カルシウム、リチウム、希土類金属、遷移金属、マグネシウム、および、銀/マグネシウム合金、希土類金属合金などのような、それらの合金などの仕事関数の低い金属で、アルミニウムが好ましい金属である。フッ化リチウムなどのアルカリ金属のフッ化物、または希土類金属のフッ化物、もしくはそれらの合金などの、金属フッ化物(metal fluoride)を第二電極として用いることができ、例えば金属フッ化物の層をその表面に有する金属を用いることができる。
【0042】
イリジウムもしくは他の金属錯体は、ホスト物質(host material)と混合することができる。
【0043】
本発明に係るデバイスはビデオディスプレイ、携帯電話、ポータブル・コンピュータ、および、電気的に制御されている視覚的イメージ(visual image)が用いられる任意の他の用途に用いられるディスプレイに用いることができる。本発明に係るデバイスは、このようなディスプレイのアクティブ用途(active applications)とパッシブ用途(passive applications)の両方に用いることができる。
【0044】
既知のエレクトロルミネセンスデバイスでは、一方もしくは両方の電極をシリコン、および、エレクトロルミネセンス物質で形成することができ、正孔輸送物質および電子輸送物質(electron transporting material)の中間層(intervening layers)をピクセル(pixel)としてシリコン基板上に形成することができる。好ましくは、各ピクセルには、基板から離れたほうの端で有機層に接触している、少なくとも一つのエレクトロルミネセンス物質の層、および、透明電極(少なくとも半透明)が含まれる。
【0045】
好ましくは、基板がシリコン結晶(crystalline silicon)でできていて、電極もしくはエレクトロルミネセンス化合物を蒸着する(deposition)前に平らな表面を作るために、基板の表面は磨かれもしくは平らにされることがある。また、あるいは、平滑化していない(non-planarised)シリコン基板に、さらに物質を蒸着する前に、平滑な面を作るために、導電性ポリマーの層で被覆して平らな面を作ることができる。
【0046】
ある実施例では、各ピクセルは基板に接触している金属電極を含んでいる。金属電極と透明電極の相対的な仕事関数によって、一方がアノードとして機能し、他方がカソードとして機能することがある。
【0047】
シリコン基板がカソードの場合、インジウム-スズ酸化物被覆ガラスをアノードとして作用させることができ、光はアノードを通して発光する。シリコン基板がアノードとして作用するとき、カソードは、適切な仕事関数を有する透明電極で構成される可能性がある。例えばインジウム-亜鉛酸化物被覆ガラス(indium zinc oxide coated glass)は、インジウム-亜鉛酸化物が低い仕事関数を有するため、用いることができる。このアノードの上に金属の透明被覆(transparent coating of a metal)をして適切な仕事関数を与えるようにすることが可能である。これらのデバイスは、トップエミッティングデバイス(top emitting devices)もしくはバックエミッティングデバイス(back emitting devices)と呼ばれることがある。
【0048】
金属電極は多数の金属層から構成されることがある。例えば、アルミニウムのように高い仕事関数を有する金属を基板の上に蒸着して、カルシウムのように低い仕事関数を有する金属を、より高い仕事関数を有する金属の上に蒸着することがある。他の例としては、さらに導電性のポリマーの層が、アルミニウムなどの安定な金属の上に位置する。
好ましくは、電極は各ピクセルの裏側が鏡としても機能し、電極が表面を平坦化された基板の上に蒸着され、もしくは表面を平坦化された基板中に沈められる。しかしながら、もう一つの方法として、吸光黒色層(light absorbing black layer)を基板に隣接させることができる。
【0049】
さらに他の実施例では、選択された範囲の下端の導電性ポリマー層を、適切な水溶液にさらして導電性をなくすことによって、ピクセル電極の下端接触部(the bottom contacts)として機能するピクセルパッド(pixel pads)の配列(arrays)を構成することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
本文中に図面の簡単な説明に該当する記載なし。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の構造式を有するエレクトロルミネセンス化合物。
【化1】

ここで、
Lは以下のものであり
【化2】

Mはルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウムもしくは白金であり、
nは1もしくは2であり、
R1、R4およびR5は、同じ基であっても異なる基であっても良く、
置換および非置換のヒドロカルビル基、
置換ならびに非置換の単環式複素環基および多環式複素環基、
置換ならびに非置換のヒドロカルビルオキシ基もしくはカルボキシ基、
フルオロカルビル基、
ハロゲン基、
ニトリル基、
アミノ基、
アルキルアミノ基、
ジアルキルアミノ基、
アリールアミノ基、
ジアリールアミノ基、
チオフェニル基から選択され、
p、sおよびtは独立に0、1、2または3であり、
p、sおよびtの任意のものが2または3であるときには、それらの一つのみが飽和ヒドロカルビル基もしくはハロゲン基以外のものである可能性があり、
R2およびR3は、同じ基であっても異なる基であっても良く、
置換および非置換のヒドロカルビル基、
ハロゲン基から選択され、
qおよびrは独立に0、1または2である。
【請求項2】
Mがイリジウムであることを特徴とする、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
nが1であることを特徴とする、請求項1もしくは2記載の化合物。
【請求項4】
R1、R4およびR5の少なくとも一つが、置換または非置換の脂肪族基もしくはシクロ脂肪族基であることを特徴とする、前述の請求項のいずれかに記載の化合物。
【請求項5】
R1、R4およびR5の少なくとも一つが、アルキル基もしくはアルコキシ基であることを特徴とする請求項4記載の化合物。
【請求項6】
R1、R4およびR5の少なくとも一つが、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、s-ブチル基、t-ブチル基、シクロヘキシル基、メトキシ基、もしくはエトキシ基であることを特徴とする請求項5記載の化合物。
【請求項7】
R1、R4およびR5の少なくとも一つが、置換あるいは非置換の、単環式または多環式の、芳香族基、アリールオキシ基、もしくは複素環基構造であることを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載の化合物。
【請求項8】
R1、R4およびR5の少なくとも一つが、フェニル基、トリル基、フルオロフェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、フルオレニル基、アントラセニル基(anthracenyl)、フェナントレニル基(phenanthrenyl)もしくはカルバゾリル基であることを特徴とする、請求項7記載の化合物。
【請求項9】
R1、R4およびR5の少なくとも一つが、フルオロ基、クロロ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ベンジルアミノ基、もしくはジベンジルアミノ基であることを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載の化合物。
【請求項10】
R2およびR3の少なくとも一つが、置換または非置換の脂肪族基であることを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載の化合物。
【請求項11】
R2およびR3の少なくとも一つが、アルキル基であることを特徴とする、請求項10記載の化合物。
【請求項12】
R2およびR3の少なくとも一つが、メチル基もしくはエチル基であることを特徴とする、請求項11記載の化合物。
【請求項13】
R2およびR3の少なくとも一つが、クロロ基もしくはブロモ基であることを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載の化合物。
【請求項14】
MがIrで、nが1で、かつp、q、r、sおよびtが0であることを特徴とする、請求項1記載の化合物。
【請求項15】
(i) 第一電極、(ii) 前述の請求項のいずれかに記載のエレクトロルミネセンス物質の層、および (iii) 第二電極を含むことを特徴とする、エレクトロルミネセンスデバイス。
【請求項16】
前記第一電極と前記エレクトロルミネセンス層の間に正孔輸送物質の層があることを特徴とする、請求項15記載のデバイス。
【請求項17】
前記正孔輸送物質が芳香族アミン錯体(aromatic amine complex)であることを特徴とする、請求項16記載のデバイス。
【請求項18】
前記正孔輸送物質がポリ芳香族アミン錯体(polyaromatic amine complex)であることを特徴とする、請求項16記載のデバイス。
【請求項19】
前記正孔輸送物質が、α-NBP、ポリ(ビニルカルバゾール)、N,N'-ジフェニル-N,N'-ビス(3-メチルフェニル)-1,1'-ビフェニル-4,4'-ジアミン(TPD)、ポリアニリン、置換ポリアニリン類、ポリチオフェン類、置換ポリチオフェン類、ポリシラン類および置換ポリシラン類から選択された、ポリマーの膜であることを特徴とする、請求項16記載のデバイス。
【請求項20】
前記正孔輸送物質が、本明細書の構造式(II)もしくは(III)の化合物、または図3から7の図のような化合物の膜であることを特徴とする、請求項16記載のデバイス。
【請求項21】
前記正孔輸送物質が、アニリンの共重合体、アニリンとo-アニシジン、m-スルファニル酸、もしくはo-アミノフェノールとの共重合体、またはo-トルイジンとo-アミノフェノール、o-エチルアニリン、o-フェニレンジアミンもしくはアミノアントラセンとの共重合体であることを特徴とする、請求項16記載のデバイス。
【請求項22】
前記正孔輸送物質が、共役高分子であることを特徴とする、請求項16記載のデバイス。
【請求項23】
前記共役高分子がポリ(p-フェニレンビニレン)(PPV)、ならびに、PPV、ポリ(2,5-ジアルコキシフェニレンビニレン)、ポリ(2-メトキシ-5-(2-メトキシペンチルオキシ-1,4-フェニレンビニレン)、ポリ(2-メトキシペンチルオキシ)-1,4-フェニレンビニレン)、ポリ(2-メトキシ-5-(2-ドデシルオキシ-1,4-フェニレンビニレン) および、長鎖可溶化性アルコキシ基であるアルコキシ基、ポリフルオレン類およびオリゴフルオレン類、ポリフェニレン類およびオリゴフェニレン類、ポリアントラセン類およびオリゴアントラセン類、ポリチオフェン類およびオリゴチオフェン類のうちの少なくとも一つを含む、他のポリ(2,5-ジアルコキシフェニレンビニレン類) を含む共重合体とから選択された共役高分子であることを特徴とする、請求項22記載のデバイス。
【請求項24】
前記エレクトロルミネセンス化合物が前記正孔輸送物質に混合されていることを特徴とする、請求項16から23のいずれかに記載のデバイス。
【請求項25】
前記カソードと前記エレクトロルミネセンス化合物の層の間に、電子輸送物質の層があることを特徴とする、請求項15から19のいずれかに記載のデバイス。
【請求項26】
前記電子輸送物質が金属キノラートであることを特徴とする、請求項25記載のデバイス。
【請求項27】
前記金属キノラートがアルミニウムキノラート、ジルコニウムキノラート、もしくはリチウムキノラートであることを特徴とする、請求項22記載のデバイス。
【請求項28】
前記電子輸送物質の構造がMx(DBM)nであることを特徴とし、
ここでMxは金属で、DBMはジベンゾイルメタンであり、nはMxの価数である、
請求項25記載のデバイス。
【請求項29】
前記電子輸送物質が9,10-ジシアノアントラセンのようなシアノアントラセン、ポリスチレンスルホン酸(polystyrene sulphonate)、または図1もしくは2の図で示された構造式の化合物であることを特徴とする、請求項28記載のデバイス。
【請求項30】
前記電子輸送物質が前記エレクトロルミネセンス化合物と混合されていることを特徴とする、請求項25から29のいずれかに記載のデバイス。
【請求項31】
前記第一電極が透明電気伝導ガラス電極であることを特徴とする、請求項15から30のいずれかに記載のデバイス。
【請求項32】
前記第二電極が、アルミニウム、バリウム、希土類金属、遷移金属、カルシウム、リチウム、マグネシウム、および、それらの合金、ならびに銀/マグネシウム合金から選択されたものであることを特徴とする、請求項15から31のいずれかに記載のデバイス。
【請求項33】
前記第二電極が、金属フッ化物の層をその表面に有する金属から選択されることを特徴とする、請求項15から29のいずれかに記載のデバイス。
【請求項34】
前記金属フッ化物がフッ化リチウム、もしくは希土類のフッ化物であることを特徴とする、請求項33記載のデバイス。

【公表番号】特表2008−511603(P2008−511603A)
【公表日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−529001(P2007−529001)
【出願日】平成17年8月5日(2005.8.5)
【国際出願番号】PCT/GB2005/050128
【国際公開番号】WO2006/024878
【国際公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【出願人】(505347488)オーエルイーディー−ティー リミテッド (12)
【Fターム(参考)】