説明

エレクトロルミネセンス装置におけるヘテロ原子位置規則性ポリ(3−置換チオフェン)

置換基にヘテロ原子を有する位置規則性ポリチオフェンポリマーを、エレクトロルミネセンス装置の正孔注入層および正孔輸送層において用いることができる。コポリマーおよび有機酸化物を用いることができる。ホモポリマーを用いることができる。金属不純物を除去することができる。ヘテロ原子は酸素であってもよく、3位で置換されていてもよい。利点には、汎用性、合成の制御、および良好な熱安定性が含まれる。異なる装置設計を用いることができる。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2004年9月24日提出の特許仮出願第60/612,640号に対する優先権を主張し、これは特許請求の範囲および図面を含むその全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【背景技術】
【0002】
背景
有機エレクトロルミネセンス装置は、外部電力源によって励起状態へと移行した時に光を生ずる有機低分子またはポリマーを利用することができる。励起状態は正および負の電荷が反対の電極からエレクトロルミネセンス材料へと流れ込む時につくられる。多層装置では、一つの電極とエレクトロルミネセンス材料との間の正孔注入および/または正孔輸送材料が装置の効率を改善することがよくある。これらの装置は、例えば、単色およびカラーのフラットパネルディスプレイ、サイネージ(signage)、ならびに白色光で用いるために設計されている。しかし、商業的需要が高まるにつれて、特定の適用に適したよりよい材料を有し、目的に合わせることができ、商業的に製造可能で、良好な安定性を提供しうる、よりよい装置が必要とされている。
【0003】
国際公開公報第2005/081335号(Gambogi et al., DuPont)(特許文献1)は、電荷輸送層を含む多層装置および加工法を記載している。
【0004】
EP 1,279,691(Heeney et al., Merck)(特許文献2)は、フッ化半導体材料を記載している。
【0005】
米国特許公報第2005/0080219号(Koller et al.)(特許文献3)は、その称するところではポリチオフェンの製造法を記載している。
【0006】
McCulloughらの米国特許第6,602,974号(特許文献4)および同第6,166,172号(特許文献5)は、ホモポリマーおよびブロックコポリマーを含む位置規則性(regio-regular)ポリチオフェンを記載している。
【0007】
ドープされた、およびドープされていない状態の両方を含む特定の装置適用のために、新しい材料の合成におけるよりよい制御が必要とされている。
【0008】
【特許文献1】Gambogiら(DuPont)、国際公開公報第2005/081335号
【特許文献2】Heeneyら(Merck)、EP 1,279,691
【特許文献3】Kollerら、米国特許公報第2005/0080219号
【特許文献4】McCulloughら、米国特許第6,602,974号
【特許文献5】McCulloughら、米国特許第6,166,172号
【発明の開示】
【0009】
概要
一つの態様は、有機ルミネセンス装置における正孔注入または正孔輸送層として用いるための、3-アルキルまたはアリール置換基がヘテロ原子置換を有する、それらのコポリマーを含む位置規則性ポリ(3-置換チオフェン)を提供する。利点は安定性および合成の制御の改善を含む。
【0010】
一つの態様は、3-置換基がそのαまたはβ位のいずれかにヘテロ原子置換を有するアルキル、アリール、またはアルキル/アリール部分である、位置規則性ポリ(3-置換チオフェン)を含む少なくとも一つのポリマーを含むHIL/HTL層を含むエレクトロルミネセンス装置を提供する。
【0011】
3-置換基がそのα-またはβ-位のいずれかにヘテロ原子置換を有するアルキル、アリール、またはアルキル/アリール部分である、位置規則性ポリ(3-置換チオフェン)を含む少なくとも一つのポリマーを含むHIL/HTL層を含むエレクトロルミネセンス装置であって、ここで3-置換基はアルファ位に酸素置換を有するアルキル基であり、かつポリマーはホモポリマーである。
【0012】
もう一つの態様は、3-置換基がそのαまたはβ位のいずれかにヘテロ原子置換を有するアルキル、アリール、またはアルキル/アリール部分である、位置規則性ポリ(3-置換チオフェン)を含む少なくとも一つのポリマーを含むHIL/HTL層を含むエレクトロルミネセンス装置であって、3-置換基はアルファ位に酸素置換を有するアルキル基であり、かつポリマーはランダムコポリマーである装置を提供する。
【0013】
もう一つの態様は、位置規則性ポリ(3-置換チオフェン)を含む少なくとも一つのポリマーを含むHIL/HTL層を含むエレクトロルミネセンス装置であって、3-置換基はアルファ位に酸素置換を有するアルキル基であり、かつポリマーは有機酸化剤でドープされている装置を提供する。
【0014】
もう一つの態様は、位置規則性ポリ(3-置換チオフェン)を含む少なくとも一つのポリマーを含むHIL/HTL層を含むエレクトロルミネセンス装置であって、3-置換基はアルファ位に酸素置換を有するアルキル基であり、かつポリマーは、UV-Vis-NIR分析で示されるとおり、110℃、10分間での安定性を提供するために有機酸化剤で十分にドープされている装置を提供する。
【0015】
もう一つの態様は、ELL材料とHIL/HTL材料とを含むエレクトロルミネセンス装置であって、HIL/HTL材料は、3-置換基がそのαまたはβ位のいずれかにヘテロ原子置換を有するアルキル、アリール、またはアルキル/アリール部分である、位置規則性ポリ(3-置換チオフェン)を含む少なくとも一つのポリマーを含み、HIL/HTL材料はELL層と結合している装置を提供する。
【0016】
本発明は、エレクトロルミネセンス装置の製造法およびエレクトロルミネセンス装置の使用法も提供する。
【0017】
もう一つの基本的かつ新規な特徴は、材料がエレクトロルミネセンス適用を可能にするのに十分低いレベルの金属不純物を有することである。
【0018】
加えて、ヘテロ原子の使用は、エレクトロルミネセンス装置に調節可能性を提供する。
【0019】
詳細な説明
序文
2004年9月24日提出の先行米国特許仮出願第60/612,640号は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0020】
2004年9月24日提出の米国特許仮出願第60/612,641号、ならびに「光電池におけるヘテロ原子位置規則性ポリ(3-置換チオフェン)(Heteroatomic Regioregular Poly(3-substitutedthiophenes))」についての2005年9月 日提出の米国特許出願第 号も、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。これらの出願は一般にヘテロ原子置換位置規則性ポリチオフェンの光起電力適用を記載している。
【0021】
2005年2月10日提出の米国特許仮出願第60/651,211号(「正孔注入層組成物(Hole Injection Layer Compositions)」)は、本態様の実施において用いることができるその他の態様を記載しており、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0022】
ヘテロ原子の置換部位に関して以下に記載する用語において、二つの系を同等に用いることができる:(1)α、β、γなどは(2)1、2、3などと同等である。
【0023】
一つの態様は、3-置換基がそのαまたはβ位のいずれかにヘテロ原子置換を有するアルキル、アリール、またはアルキル/アリール部分である、位置規則性ポリ(3-置換チオフェン)を含む少なくとも一つのポリマーを含むHIL/HTL層を含むエレクトロルミネセンス装置である。多層装置は多くの異なる層化設計で製造することができる。例えば、二つの機能はそれらを両方提供する一つの層によって達成することもでき、または各層が二つの機能の一方を提供する二つの別々の層によって達成することもできる。以下により詳細に記載するとおり、多層装置においてHIL/HTL層は装置に正孔注入または正孔輸送を提供する層でありうる。HIL/HTL層はHIL層であってもよく、またはHTL層であってもよい。加えて、以下により詳細に記載するとおり、HIL/HTL層は、位置規則性ポリ(3-置換チオフェン)に加えて、ELL機能または陽極機能のために用いる材料を含むことができる。
【0024】
エレクトロルミネセンス装置および共役ポリマー全般
3-アルキルまたはアリール置換基がヘテロ原子置換を有する、ホモポリマーおよびそれらのコポリマー両方の位置規則性ポリ(3-置換チオフェン)を、有機またはポリマーエレクトロルミネセンス装置における正孔注入または正孔輸送層として用いることができる。
【0025】
エレクトロルミネセンス装置におけるこれらの材料の使用は、装置のルミネセンス増大、低い閾値電圧、長い寿命、電子遮断、装置製造中の材料および成分の加工の容易さ、エレクトロルミネセンス装置において正孔注入または正孔輸送層を適用するためにスピンキャスティング、ドロップキャスティング、インクジェット法、および他の印刷技術を用いる能力、より柔軟なエレクトロルミネセンス装置を調製する能力、軽量エレクトロルミネセンス装置を調製する能力、ならびに低コストエレクトロルミネセンス装置を調製する能力などのいくつかの望ましい特性を提供する。
【0026】
本発明の目的のために、エレクトロルミネセンス装置は電流を電磁放射に変換する電気化学装置である。これは、電子と正電荷すなわち「正孔」がエレクトロルミネセンス材料中で出会い、基底状態に減衰する際に光子を放出する励起状態の種すなわち励起子を生じて達成される。そのような装置の価値は、低電圧および最低限の放射熱で光を生じる効率的方法であることである。これらの装置は現在のところ、多くの消費者エレクトロニクスにおいて用いられている。
【0027】
エレクトロルミネセンス装置の一例は四つの成分を含む。これらの成分の二つは電極である。一つめは、その要求される透明性によって、電荷担体として機能し、装置からの光子の放出を可能にする、プラスティックまたはガラス基板上にコーティングされた酸化インジウムスズなどの透明陽極でありうる。第二の電極、すなわち陰極は、カルシウムもしくはアルミニウムまたは両方などの低仕事関数金属製であることが多い。いくつかの場合には、この金属はプラスティックまたはガラスシートなどの支持表面にコーティングされていてもよい。この第二電極も装置中に電子を伝導または注入する。これらの二つの電極の間はエレクトロルミネセンス層(ELL)および正孔注入または正孔輸送層(HIL/HTL)である。
【0028】
第三成分はELL材料である。ELLは、例えば、ポリフェニレンビニレン、ポリフルオレン、および有機遷移金属低分子錯体に基づく材料を含みうる。これらの材料は一般に、励起子が蛍光またはリン光を通して基底状態に緩和する時にそれらが光子を放出する効率について、および透明電極を通してそれらが放出する光の波長または色について選択される。
【0029】
この態様において、第四の成分はHIL/HTL材料である。HIL/HTLは、正電荷すなわち「正孔」を透明陽極からELLに移行させて、励起子を生じ、これが次いで発光を引き起こすことができる導電材料である。HIL/HTLは典型的には、正電荷をELLに移行させることができる能力および装置に寄与する全般的な効率改善について一般に選択される、p-ドープまたは酸化導電材料である。
【0030】
有機およびポリマーエレクトロルミネセンス装置は、様々な形を取りうる。ELLが低分子を含み、典型的には真空蒸着されている場合、装置は一般にOLED(有機発光ダイオード)と呼ばれる。ELLがエレクトロルミネセンスポリマーを含み、典型的には溶液加工および蒸着されている場合、装置は一般にPLED(ポリマー発光ダイオード)と呼ばれる。発光電気化学的電池を形成するためのエレクトロルミネセンス材料と固体電解質との混合物などのいくつかのELL層は、いずれかの説明に都合よく適合しないこともある。ELL層は、白色照明適用のため、またはフルカラーディスプレイ適用のために色フィルターにかける、白色光を放出するよう設計することができる。ELL層は、赤、緑、および青などの特定の色を放出するよう設計することもでき、これは次いで組み合わせてヒトの眼で見た場合にフルスペクトルの色を生じることができる。
【0031】
LEDは組み合せて、単色(一色)またはフルカラー(典型的には赤、緑および青の組み合わせによって作られる多数の色)いずれかのフラットパネルディスプレイを作ることができる。これらはパッシブマトリックスディスプレイであってもよく、この場合、HIL/HTLおよびELL層を間にはさんで陽極材料のストリップが陰極材料のストリップに直交に蒸着され、一つの陽極および一つの陰極ストリップを通って流れる電流によって交点がディスプレイにおける一つの画素としてルミネセンスを示す。またはこれらはアクティブマトリックスディスプレイであってもよく、この場合、それぞれの画素でトランジスターが、個々の画素がルミネセンスを示すかどうか、および明るさの度合いを制御する。アクティブマトリックスディスプレイは、光がトランジスター回路を通ってもしくは並んで放射するボトムエミッション型、または光がトランジスター回路を含む層の反対方向に放射するトップエミッション型のいずれであってもよい。
【0032】
エレクトロルミネセンス装置の性能は、放出される光の強度(エレクトロルミネセンス装置1平方メートルあたりのカンデラ)、電流が光に変換される効率(入力1ワットあたりの出力ルーメン)、および装置の寿命(千時間)の測定により評価することができる。典型的なフラットパネルディスプレイは100〜200 Cd/m2、5,000から20,000時間、および10〜20ルーメン/Wを示す。放出される光の色も、これらの装置の設計において重要な考慮すべき点であり、典型的にはCIEスペクトル上のxおよびy座標を指定することにより測定する。
【0033】
現行の材料は、我々の社会における有機ルミネセンス装置の広範な使用を一般に阻止してきたいくつかの制限を有している。例えば、装置は寿命(特に青色放出材料)、熱安定性、効率、およびコストによって制限されうる。
【0034】
有機エレクトロルミネセンス装置における一般的HIL/HTLはポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)すなわちPEDOTである。この材料は、典型的には、高分子の酸/酸化剤存在下、導電性状態で合成される。これは有機溶媒中で加工することができず、そうでなければ有機エレクトロルミネセンス装置調製のための「ドライボックス」となる状態において、この材料の水性分散液を含む必要が生じるため、いくつかの制限を有する。この材料は永続的に「ドープ」されているため、その導電性を調節することは難しい。また、均質なフィルムを一貫して生成することは難しく、酸性であることはITO陽極およびELL材料の両方に有害な影響をおよぼすと考えられる。
【0035】
本明細書において記載されるとおり、エレクトロルミネセンス装置のためのp型、ポリマーHIL/HTLは改善された特性を示すことができる。これらの材料は、一般的な有機溶媒に溶解することができ、スピンコーティング、ドロップキャスティング、ディップコーティング、噴霧、および印刷技術(インクジェット法、オフセット法、転写コーティング、および他のロール・ツー・ロールまたはコーティング法)によって容易に加工することができるという点で、利点を提供する。これらの材料は大面積様式で加工することができ、有機エレクトロルミネセンス装置の柔軟性コンピュータースクリーン、フラットスクリーンディスプレイ、屋外広告またはサイネージ、および固体照明としての新しい適用例を開くものである。これらの材料は自然な状態で製造するため、適用例に合ったレベルまで加工し、次いで酸化またはドープすることができる。これは装置設計における柔軟性を高める。ポリマー材料は、以下に述べる性能においていくつかの他の利点も提供する。
【0036】
ポリチオフェン
本発明の実施においてポリ(チオフェン)に関する以下の記載を利用することができる。他の共役ポリマーと同様、ポリ(チオフェン)は共役π電子帯構造を有しており、これによってエレクトロルミネセンス装置に適したp型半導体となることが明らかにされている。ポリ(チオフェン)は、適当に置換されたチオフェンの様々な化学および電気化学的変換によって調製することができ、主として単量体の2位および5位でチオフェン環のカップリングが起こる。これらのチオフェン部分の他の様式のカップリングの程度は用いる方法に依存し、様々な位置規則性のポリマーおよび/またはオリゴマーを生じうる。ポリチオフェンの合成は、ポリマーがほぼ100%これらの2-から5-カップリングを示しうる方法を用い、以下に詳細を記載するとおり、ポリマーに好都合な構造特性を与える。
【0037】
これらの材料の正孔の導体としての性能は、それらをドープすなわち酸化した場合に高めることができる。酸化後、電子は価電子帯から除かれる。酸化状態におけるこの変化により、バイポーラロンと呼ばれる新しいエネルギー状態が形成されることになる。エネルギーレベルは価電子帯に残っている電子のいくつかに接近可能で、ポリマーが導体として機能できるようにする。この共役構造の程度は固体状態で平面配座を形成するポリマー鎖に依存する。これは環-環からの共役がπ軌道の重なりに依存するためと考えられる。特定の環がねじれて平面から出ている場合、重なりは起こりえず、共役帯構造が失われうる。チオフェン環の間の重なりの程度はそれらの間の二面角のコサインに応じて変動するため、いくらかの小さいねじれは害にはならない。
【0038】
共役ポリマーのp型半導体としての性能も、固体のポリマーの形状に依存しうる。電子的性質はポリマー鎖間の電気的結合性および鎖間電荷輸送に依存する。電荷輸送の経路はポリマー鎖に沿って、または隣接する鎖の間でありうる。鎖に沿っての輸送は、電荷を運ぶ部分が環の間の二重結合特性の量に依存するため、平面の主鎖構造によって改善することができる。この鎖間の導電メカニズムも、πスタッキングと呼ばれる平面のポリマーセグメントの積み重ね、または励起子もしくは電子が離れようとする鎖に近接する別の鎖へと空間もしくは他のマトリックスを通り抜ける、もしくは「ホップ」することができる鎖間ホッピングメカニズムのいずれかによって改善することができる。したがって、固体のポリマー鎖の整列を推進することができる方法は、共役ポリマーのEL装置の成分としての性能を改善するのを助けることができる。位置規則性ポリチオフェンの薄膜の吸光度特性は、固体で起こるπスタッキング増大を反映しうる。
【0039】
他の共役ポリマーと同様、ポリ(チオフェン)は共役π電子帯構造を有し、これは制御酸化後に、ポリ(チオフェン)をエレクトロルミネセンス装置に適したp型HIL/HTLとすることが明らかにされている。ポリ(チオフェン)は、チオフェンの様々な化学および電気化学的酸化によって調製することができ、主として2位および5位でチオフェン環のカップリングが起こる。
【0040】
このπシステムにおけるπの重なりおよび電荷密度の量も、共役ポリマーのπ-π*遷移のエネルギーを決定し、固体の材料の仕事関数に影響をおよぼす。したがって、p型半導体の性質は有機エレクトロルミネセンス装置の効率および性能を決定する。
【0041】
共役ポリマーをこの適用例のためのp型導体として有効に用いるために、これはポリマーマトリックスからの有機およびイオン不純物の除去を可能にする方法で調製すべきである。この材料中の不純物、特に金属イオンの存在は、得られる有機エレクトロルミネセンス電池の性能に対して重大な有害影響を及ぼすことがある。これらの影響には、電荷の局在またはトラッピング、生成した励起子のクエンチング、電荷移動性の低下、相分離などの界面形状への影響、およびポリマーのHIL/HTL適用には不適当な無制御の導電状態への酸化または還元が含まれる。共役ポリマーから不純物を除去しうるいくつかの方法がある。これらのほとんどはポリマーを一般的な有機および極性溶媒中に溶解する能力によって促進される。残念ながら、ポリ(チオフェン)は、基本的には、不溶性である。
【0042】
置換ポリチオフェン
アルキル、アリール、およびアルキル-アリール置換基を有するいくつかのポリ(3-置換チオフェン)はテトラヒドロフラン(THF)、クロロホルム、トルエンおよびキシレンなどの一般的な溶媒に可溶であることが明らかにされている。これらの材料は、ポリ(チオフェン)の場合と類似の、共通の共役π電子帯構造を有し、それによってHIL/HTL適用に適したp型導体となっているが、これらは溶解性であるがゆえにポリ(チオフェン)よりも加工および精製がはるかに容易である。これらの材料は、nが2〜10の反復単位の数である(3-アルキルチオフェン)n、(3-アリールチオフェン)n、もしくは(3-アルキル/アリールチオフェン)nなどのオリゴマー鎖として、またはn=11〜350以上のポリマーとして調製することができるが、これらの材料に対し、nは最も典型的には50〜200の値を有する。
【0043】
しかし、チオフェン環に3-置換基を付加することにより、チオフェンの反復単位は非対称となる。3-置換チオフェンの通常の方法による重合は2,5'-カップリングとなるが、2,2'-および5,5'-カップリングも起こる。2,2'-カップリングまたは2,5'-、2,2'-および5,5'-カップリングの混合物の存在は、隣接するチオフェン環上の3-置換基の間で立体相互作用を引き起こすことがあり、これは環の間でねじれによるひずみを生じうる。次いで、環は平面配座から別の、熱力学的により安定な、そのようなカップリングからの立体相互作用を最小化する配座へと回転する。この新しい配座はπの重なりが著しく低減した構造を含みうる。これにより、隣接する環の間のπ軌道の重なりが低減し、非常に重度である場合には、正味の共役長が短くなり、それによってポリマーの共役帯構造が低減する。これらの効果の組み合わせは、これらの位置無作為にカップリングされたポリ(3-置換チオフェン)で作られたHIL/HTLとしての性能を損なう。
【0044】
Jenらの米国特許第4,711,742号はポリチオフェンの調製を記載している。
【0045】
位置規則性ポリ(チオフェン)材料
優れたπ共役、電気的コミュニケーション、および固体状態の形状を有する材料は、アルキル置換基を有するポリ(3-置換チオフェン)の2,5'-カップリングを95%より多く生じた位置特異的化学カップリング法を用いることにより調製することができる。これらの材料は、2-ブロモ-5-マグネシオブロモ-3-置換チオフェンの熊田型ニッケル触媒カップリングの使用により、ならびにReikeによって報告されているハロゲン化2-ブロモ-5-チエニル亜鉛の亜鉛カップリングにより、調製することができる。アルキル置換基を有する位置規則性ポリ(3-置換チオフェン)のより実用的調製を、2,5-ジブロモ-3-アルキルチオフェンのグリニャール複分解と、続くニッケルクロスカップリングにより行うことができる。当技術分野において記載されている他の方法は、Kollerらの米国特許公報第2005/0080219号により提供される。
【0046】
アルキル、アリール、およびアルキル/アリール置換基を有する位置無作為ポリ(3-置換チオフェン)と同様、アルキル、アリール、およびアルキル/アリール置換基を有する位置規則性ポリ(3-置換チオフェン)は一般的な有機溶媒に可溶性で、スピンコーティング、ドロップキャスティング、ディップコーティング、噴霧、および印刷技術(例えば、インクジェット法、オフセット法、転写コーティング、および他のロール・ツー・ロールまたはコーティング法など)などの蒸着法による適用において高い加工性を示す。したがって、これらの材料は、位置無作為ポリ(3-置換チオフェン)と比べて、エレクトロルミネセンス適用例のためのHIL/HTLとして、大面積様式でよりうまく加工することができる。さらに、その2,5'-環-環カップリングの均質性ゆえに、これらの材料はその実質的π共役の証拠およびπ-π*吸収に対応する可視光の吸収の高い消衰係数を示す。この吸収は、アルキル、アリール、またはアルキル/アリール置換基を有する位置規則性ポリ(3-置換チオフェン)をHIL/HTLとして用いる場合に利用しうる導電帯構造の質を決定し、したがってエレクトロルミネセンス装置の効率および性能を決定する。
【0047】
これらの材料の位置規則性のもう一つの利点は、これらが固体で自己組織化し、秩序だった構造を形成しうることである。これらの構造はチオフェン環系をπスタッキングモティーフを通じて並列し、別々のポリマー間のこの結合配列を通しての鎖間電荷輸送を改善可能にする傾向があり、位置無作為ポリマーと比べると導電性を増強する。したがって、発明者らはこれらの材料に対する形態的利点を認識している。
【0048】
ポリ(チオフェン)をエレクトロルミネセンス装置におけるHIL/HTLとして用いる場合と同様、この材料中の不純物、特に金属イオンの非常に多量の存在はポリチオフェン含有エレクトロルミネセンス装置の性能に対して重大な有害影響を及ぼすことがある。これらの影響には、電荷の局在またはトラッピング、生成した励起子のクエンチング、電荷移動性の低下、相分離などの界面形状への影響、およびポリマーのエレクトロルミネセンス適用には不適当なより高度に無制御の導電状態への酸化または還元の一つまたは複数が含まれる。共役ポリマーから不純物を除去し、許容できるレベルにしうるいくつかの方法がある。これらのほとんどはポリマーを一般的な有機および極性溶媒中に溶解する能力によって促進される。これらの材料が溶解性であることにより、エレクトロルミネセンス装置のためのHIL/HTLとしての適用に適したものとしうるような精製が容易になる。
【0049】
これらの材料は、nが2〜10の反復単位の数である(3-アルキルチオフェン)n、(3-アリールチオフェン)n、もしくは(3-アルキル/アリールチオフェン)nなどのオリゴマー鎖として、またはn=11〜350以上のポリマーとして調製することができるが、これらの材料に対し、nは最も典型的には50〜200の値を有する。
【0050】
位置規則性の程度は、例えば、約90%以上、または約95%以上、または約98%以上でありうる。
【0051】
ヘテロ合成
側鎖中にヘテロ原子を有する位置規則性ポリチオフェンを含む、合成法、ドーピング、およびポリマー特徴づけが、例えば、McCulloughらの米国特許第6,602,974号およびMcCulloughらの同第6,166,172号に記載されており、これらは全体が参照により本明細書に組み入れられる。その他の記載はRichard D. McCulloughによる論文「The Chemistry of Conducting Polythiphenes」、Adv. Mat., 10, No. 2、93〜116ページ、およびその中で引用される文献に見いだすことができ、これらは全体が参照により本明細書に組み入れられる。特に、第4項は「Chemical Synthesis of Heteroatomic Functionalized Substituents on PTs: Recognition Sites for Self-Assembly and Chemical Sensing」を記載している。
【0052】
当業者が利用しうるもう一つの参考文献はMcCulloughらによるHandbook of Conducting Polymers, 2nd Ed, 1998, Chapter 9, 「Regioregular, Head-to-Tail Coupled Poly(3-alkylthiophene) and its Derivatives」、225〜258ページであり、これは全体が参照により本明細書に組み入れられる。特に、第VI項はエーテル基およびチオアルキル基を含むHT PAT上のヘテロ原子置換基を記載している。
【0053】
この参考文献は、第29章、823〜846ページで「Electroluminescence in Conjugated Polymers」も記載しており、これは全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0054】
加えて、ポリアセチレン、ポリ(p-フェニレン)、ポリ(p-フェニレンスルフィド)、ポリピロール、およびポリチオフェンを含む電気的に伝導性のポリマーがThe Encyclopedia of Polymer Science and Engineering, Wiley, 1990、298〜300ページに記載されており、これは全体が参照により本明細書に組み入れられる。この参考文献は、ブロックコポリマー形成を含む、ポリマーの混和および共重合も記載している。混和したポリマー系を用いることができる。
【0055】
アルファ位の酸素
特に、アルキル、アリール、およびアルキル/アリール置換基と、3-置換基のα-位に酸素原子を有する位置規則性ポリ(3-置換チオフェン)も、McCullough(2-ブロモ-5-(マグネシオブロモ)-3-(アルコキシチオフェン)のニッケルクロスカップリング)およびGRIM(2,5-ジブロモ-3-(アルコキシチオフェン)のグリニャール複分解と、続くニッケルクロスカップリング反応)法によって調製することができる。このクラスの材料の特定の例には、1-オキサヘプチルおよび1,4,7-トリオキサオクチル置換基を有するポリ(3-置換チオフェン)が含まれる。いくつかの場合には、3-置換基はα位の酸素原子に加えて、酸素以外のヘテロ原子(例えば、S)を有していてもよい。これらの材料の位置規則性2,5'-カップリングの量は95%を超えうる。
【0056】
アルキル、アリール、およびアルキル/アリール置換基と、3-置換基のα位に酸素原子を有する位置規則性ポリ(3-置換チオフェン)は、加工性、欠陥のない電子的構造、高い消衰係数、高い電子移動性、および改善された固体の形状に関して、アルキル、アリール、およびアルキル/アリールを有する他の位置規則性ポリ(3-置換)チオフェンと同じ増強された性能を示す。さらに、ヘテロ原子官能基はこの材料の、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド(DMF)、酢酸1-メトキシ-2-プロパノール(PMA)、およびクロロホルムなどの極性有機溶媒中の溶解性を高め、この材料の加工の選択肢を増大し、他の装置成分存在下でこの層の選択的溶解を可能にする。安定性はヘテロ原子置換を有するドープ型で特に改善することができる。溶媒のもう一つの例はクロロベンゼンなどのハロベンゼンである。
【0057】
ポリ(チオフェン)をエレクトロルミネセンス装置におけるHIL/HTLとして用いる場合と同様、この材料中の不純物、特に金属イオンの非常に高いレベルでの存在はポリチオフェン含有エレクトロルミネセンス装置の性能に対して重大な有害影響を及ぼすことがある。これらの影響には、電荷の局在またはトラッピング、生成した励起子のクエンチング、電荷移動性の低下、相分離などの界面形状への影響、およびポリマーのエレクトロルミネセンス適用には不適当なより高度な導電状態への酸化または還元の一つまたは複数が含まれる。共役ポリマーから不純物を除去しうるいくつかの方法がある。これらのほとんどはポリマーを一般的な有機および極性溶媒中に溶解する能力によって促進される。これらの材料が溶解性であることにより、エレクトロルミネセンス装置のためのHIL/HTLとしての適用に適したものとしうるような精製が容易になる。
【0058】
これらの材料は、エレクトロルミネセンス装置におけるp型半導体として用いる場合、nが2〜10の反復単位の数である(3-アルコキシチオフェン)n、(3-アリールオキシチオフェン)n、もしくは(3アルキル/アリールオキシチオフェン)nなどのオリゴマー鎖として、またはn=11〜350以上のポリマーとして調製することができるが、これらの材料に対し、nは最も典型的には50〜200の値を有する。
【0059】
ベータ位の酸素
アルキル、アリール、およびアルキル/アリール置換基と、3-置換基のβ位に酸素原子を有する位置規則性ポリ(3-置換チオフェン)も、McCullough(2-ブロモ-5-マグネシオブロモ-3-アルコキシチオフェンのニッケルクロスカップリング)およびGRIM(2,5-ジブロモ-3-アルコキシチオフェンのグリニャール複分解と、続くニッケルクロスカップリング反応)法によって調製されている。このクラスの材料の特定の例には、2,5-ジオキサヘキシルおよび2,5,8-トリオキサノニル置換基を有するポリ(3-置換チオフェン)が含まれる。いくつかの場合には、3-置換基はα位の酸素原子に加えて、酸素以外のヘテロ原子を有していてもよい。これらの材料の位置規則性2,5'-カップリングの量は95%を超えうる。
【0060】
アルキル、アリール、およびアルキル/アリール置換基と、3-置換基のβ位に酸素原子を有する位置規則性ポリ(3-置換チオフェン)は、加工性、欠陥のない電子的構造、高い消衰係数、高い電子移動性、改善された固体の形状に関して、アルキル、アリール、およびアルキル/アリールを有する他の位置規則性ポリ(3-置換)チオフェンと同じ増強された性能を示す。さらに、ヘテロ原子官能基はこの材料の、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド(DMF)、酢酸1-メトキシ-2-プロパノール(PMA)、およびクロロホルムなどの極性有機溶媒中の溶解性を高め、この材料の加工の選択肢を増大し、他の装置成分存在下でこの層の選択的溶解を可能にする。
【0061】
ポリ(チオフェン)をエレクトロルミネセンス装置におけるHIL/HTLとして用いる場合と同様、この材料中の不純物、特に金属イオンの存在はポリチオフェン含有エレクトロルミネセンス装置の性能に対して重大な有害影響を及ぼすことがある。これらの影響には、電荷の局在またはトラッピング、生成した励起子のクエンチング、電荷移動性の低下、相分離などの界面形状への影響、およびポリマーのエレクトロルミネセンス適用には不適当なより高度な導電状態への酸化または還元の一つまたは複数が含まれる。共役ポリマーから不純物を除去しうるいくつかの方法がある。これらのほとんどはポリマーを一般的な有機および極性溶媒中に溶解する能力によって促進される。これらの材料が溶解性であることにより、エレクトロルミネセンス装置のためのHIL/HTLとしての適用に適したものとしうるような精製が容易になる。
【0062】
これらの材料は、nが2〜10の反復単位の数である(3-β-アルキルオキサチオフェン)n、(3-β-アリールオキサチオフェン)n、もしくは(3-β-アルキル/アリールオキサチオフェン)nなどのオリゴマー鎖として、またはn=11〜350以上のポリマーとして調製することができるが、これらの材料に対し、nは最も典型的には50〜200の値を有する。
【0063】
アルファ位のヘテロ原子
アルキル、アリール、およびアルキル/アリール置換基と、3-置換基のα位にヘテロ原子を有する位置規則性ポリ(3-置換チオフェン)も、McCullough(2-ブロモ-5-マグネシオブロモ-3-α-ヘテロアルキルチオフェンのニッケルクロスカップリング)およびGRIM(2,5-ジブロモ-3-α-ヘテロアルキルチオフェン)のグリニャール複分解と、続くニッケルクロスカップリング反応)法によって調製されている。このクラスの材料の特定の例には、1-チアヘプチル置換基を有するポリ(3-置換チオフェン)が含まれる。いくつかの場合には、3-置換基はα位のヘテロ原子に加えて、ヘテロ原子以外のヘテロ原子を含んでいてもよい。これらの材料のための位置規則性2,5'-カップリングの量は95%を超えうる。
【0064】
アルキル、アリール、およびアルキル/アリール置換基と、3-置換基のα位にヘテロ原子を有する位置規則性ポリ(3-置換チオフェン)は、加工性、欠陥のない電子的構造、高い消衰係数、高い電子移動性、改善された固体状態の形状に関して、アルキル、アリール、およびアルキル/アリールを有する他の位置規則性ポリ(3-置換)チオフェンと同じ増強された性能を示す。さらに、ヘテロ原子官能基はこの材料の、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド(DMF)、酢酸1-メトキシ-2-プロパノール(PMA)、およびクロロホルムなどの極性有機溶媒中の溶解性を高め、この材料の加工の選択肢を増大し、他の装置成分存在下でこの層の選択的溶解を可能にする。
【0065】
ポリ(チオフェン)をエレクトロルミネセンス装置におけるHIL/HTLとして用いる場合と同様、この材料中の不純物、特に金属イオンの存在はポリチオフェン含有エレクトロルミネセンス装置の性能に対して重大な有害影響を及ぼすことがある。これらの影響には、電荷の局在またはトラッピング、生成した励起子のクエンチング、電荷移動性の低下、相分離などの界面形状への影響、およびポリマーのエレクトロルミネセンス適用には不適当なより高度の導電状態への酸化または還元の一つまたは複数が含まれうる。共役ポリマーから不純物を除去しうるいくつかの方法がある。これらのほとんどはポリマーを一般的な有機および極性溶媒中に溶解する能力によって促進される。これらの材料が溶解性であることにより、エレクトロルミネセンス装置のためのHIL/HTLとしての適用に適したものとしうるような精製が容易になる。
【0066】
これらの材料は、nが2〜10の反復単位の数である(3-α-ヘテロアルキルチオフェン)n、(3-α-ヘテロアリールチオフェン)n、もしくは(3-α-ヘテロアルキル/アリールチオフェン)nなどのオリゴマー鎖として、またはn=11〜350以上のポリマーとして調製することができるが、これらの材料に対し、nは最も典型的には50〜200の値を有する。
【0067】
ベータ位のヘテロ原子
アルキル、アリール、およびアルキル/アリール置換基と、3-置換基のβ位にヘテロ原子を有する位置規則性ポリ(3-置換チオフェン)も、McCullough(2-ブロモ-5-マグネシオブロモ)-3-β-ヘテロアルキルチオフェンのニッケルクロスカップリング)およびGRIM(2,5-ジブロモ-3-β-ヘテロアルキルチオフェン)のグリニャール複分解と、続くニッケルクロスカップリング反応)法によって調製されている。このクラスの材料の特定の例には、2-チアオクチル置換基を有するポリ(3-置換チオフェン)が含まれる。いくつかの場合には、3-置換基はβ位のヘテロ原子以外のヘテロ原子を含んでいてもよい。これらの材料のための位置規則性2,5'-カップリングの量は95%を超えうる。
【0068】
アルキル、アリール、およびアルキル/アリール置換基と、3-置換基のβ位にヘテロ原子を有する位置規則性ポリ(3-置換チオフェン)は、加工性、欠陥のない電子的構造、高い消衰係数、高い電子移動性、改善された固体状態の形状に関して、アルキル、アリール、およびアルキル/アリールを有する他の位置規則性ポリ(3-置換)チオフェンと同じ増強された性能を示す。さらに、ヘテロ原子官能基はこの材料の、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド(DMF)、酢酸1-メトキシ-2-プロパノール(PMA)、およびクロロホルムなどの極性有機溶媒中の溶解性を高め、この材料の加工の選択肢を増大し、他の装置成分存在下でこの層の選択的溶解を可能にする。
【0069】
ポリ(チオフェン)をエレクトロルミネセンス装置におけるHIL/HTLとして用いる場合と同様、この材料中の不純物、特に金属イオンの存在はポリチオフェン含有エレクトロルミネセンス装置の性能に対して重大な有害影響を及ぼすことがある。これらの影響には、電荷の局在またはトラッピング、生成した励起子のクエンチング、電荷移動性の低下、相分離などの界面形状への影響、およびポリマーのエレクトロルミネセンス適用には不適当なより高度の導電状態への酸化または還元の一つまたは複数が含まれうる。共役ポリマーから不純物を除去しうるいくつかの方法がある。これらのほとんどはポリマーを一般的な有機および極性溶媒中に溶解する能力によって促進される。これらの材料が溶解性であることにより、エレクトロルミネセンス装置のためのHIL/HTLとしての適用に適したものとしうるような精製が容易になる。
【0070】
これらの材料は、nが2〜10の反復単位の数である(3-β-ヘテロアルキルチオフェン)n、(3-β-ヘテロアリールチオフェン)n、もしくは(3-β-ヘテロアルキル/アリールチオフェン)nなどのオリゴマー鎖として、またはn=11〜350以上のポリマーとして調製することができるが、これらの材料に対し、nは最も典型的には50〜200の値を有する。
【0071】
ドーピング
3-置換基がそのαもしくはβ位のいずれかに酸素置換またはそのαもしくはβ位のいずれかにヘテロ原子を有するアルキル、アリール、またはアルキル/アリール部分である、位置規則性ポリ(3-置換チオフェン)ならびにこれらの材料のコポリマーの、有機エレクトロルミネセンス装置におけるHIL/HTL層としての使用は、性能にとって重要な所望の導電状態を得るためのポリマーの制御された酸化すなわち「ドーピング」を含みうる。酸化後、電子は価電子帯から除去される。酸化状態におけるこの変化により、バイポーラロンと呼ばれる新しいエネルギー状態が形成されることになる。エネルギーレベルは価電子帯に残っている電子のいくつかに接近可能で、ポリマーが導体として機能できるようにする。この材料がHIL/HTLとして機能できるようにするのは、この酸化またはp型導電状態である。
【0072】
エレクトロルミネセンス装置において、HIL/HTLの導電性は約10-7から約102S/cmの範囲でありうるが、最も典型的には約10-5から約10-3S/cmの範囲である。3-置換基がそのαもしくはβ位のいずれかに酸素置換またはそのαもしくはβ位のいずれかにヘテロ原子を有するアルキル、アリール、またはアルキル/アリール部分である、位置規則性ポリ(3-置換チオフェン)の場合、導電HIL/HTL層の重要な特徴は、室温で数千時間も導電性を保持し、高温および/または高湿度で適当な装置ストレス試験に適合することである。もう一つの価値は、ドープ状態で、これらの材料は可視領域で80%よりも高い透過率と、低いバンドギャップを示すことである。これは、強い電荷移動性の操作範囲を促進し、ドーピング種の量および同一性を制御することによって特性の調節を可能にし、一次構造の調節によりこれらの特性を調節する能力を補足する。
【0073】
導電特性を調節するために用いうる多くの酸化剤がある。臭素、ヨウ素、および塩素などの分子ハロゲンはいくつかの利点を提供する。ドーパントのポリマーへの曝露の量を制御することにより、HIL/HTLの得られる導電性を制御することができる。ハロゲンは蒸気圧および有機溶媒中の溶解性が高いため、ガス相または溶液中で適用することができる。ポリマーの酸化は中性状態に比べて材料の溶解性を低下させうる。それにもかかわらず、いくつかの溶液を調製し、装置にコーティングしてもよい。
【0074】
他の例には、臭素、ヨウ素、塩素、三塩化鉄、三塩化金、五フッ化ヒ素、次亜塩素酸のアルカリ金属塩;ベンゼンスルホン酸およびその誘導体、プロピオン酸、ならびに他の有機カルボン酸およびスルホン酸などのプロトン性の酸、NOPF6もしくはNOBF4などのニトロソニウム塩、またはテトラシアノキノン、ジクロロジシアノキノンなどの有機酸化剤、ならびにヨードシルベンゼンおよびヨードベンゼン二酢酸などの超原子価ヨウ素酸化剤が含まれる。
【0075】
三塩化鉄、三塩化金、および五フッ化ヒ素などのいくつかのルイス酸酸化剤が、酸化還元反応によりポリ(3-置換チオフェン)をドープするために用いられている。これらのドーパントは安定な導電フィルムを生成すると報告されている。ドープしたフィルムのキャスティングは可能であるが、あまり報告されていないにもかかわらず、これは主にキャストフィルムの金属塩化物溶液への処理によって達成される。
【0076】
ベンゼンスルホン酸およびその誘導体、プロピオン酸、他の有機カルボン酸およびスルホン酸などのプロトン性の有機および無機酸、ならびに硝酸、硫酸および塩酸などの鉱酸を用いて、ポリ(3-置換チオフェン)をドープすることができる。
【0077】
NOPF6もしくはNOBF4などのニトロソニウム塩を用い、不可逆的酸化還元反応において安定な酸化窒素分子を生ずる反応により、ポリ(3-置換チオフェン)をドープすることができる。
【0078】
テトラシアノキノン、ジクロロジシアノキノンなどの有機酸化剤、ならびにヨードシルベンゼンおよびヨードベンゼン二酢酸などの超原子価ヨウ素酸化剤を用いることもできる。有機酸化剤は、例えば、アリールスルホン酸、ベンゾキノン誘導体、またはキノン酸化剤でありうる。混合物を用いることもできる。使用可能な一つの混合物はp-TSAおよびBQである。非酸性有機ドーパントを用いることもできる。本発明の記載は理論に制限されることはないが、ドープ状態で良好な安定性を提供するために不可逆的ドーピング反応を用いることは、安定性にとってよいと考えられる。
【0079】
例にはpTSA(p-トルエンスルホン酸);DDQ(2,3-ジクロロ-5,6-ジシアノ-1,4-ベンゾキノン);NQ(1,4-ナフトキノン);DNNDSA(ジノニルナフタレンジスルホン酸)DNDSA(ジノニルナフタレンスルホン酸);TCQ(2,3,4,5-テトラクロロキノン);TFQ(2,3,4,5-テトラフルオロキノン);BQ(1,4-ベンゾキノン);MESA(メタンスルホン酸);F4-TCNQ(2,3,5,6-テトラフルオロ-7,7,8,8-テトラシアノキノジメタン);およびTCNQ(7,7,8,8-テトラシアノキノジメタン)が含まれる。
【0080】
ドーピングは溶液または固体で実施することができる。最良または最大の酸化を達成するためにどれだけのドーパントが必要かを決定するためのドーパントの量は変動しうる。500nm付近の大きい吸収体をモニターすることができる。
【0081】
他の態様
3-置換基がそのαもしくはβ位のいずれかに酸素置換またはそのαもしくはβ位のいずれかにヘテロ原子を有するアルキル、アリール、またはアルキル/アリール部分である、位置規則性ポリ(3-置換チオフェン)ならびにこれらの材料のコポリマーを、有機エレクトロルミネセンス装置におけるHIL/HTL層として用いることができる。
【0082】
これらの材料のコポリマーは、3-置換基がそのαもしくはβ位のいずれかに酸素置換、またはそのαもしくはβ位のいずれかにヘテロ原子を有するアルキル、アリール、またはアルキル/アリール部分である、位置規則性ポリ(3-置換チオフェン)として定義される一つまたは複数の材料を組み込む、ホモ、ブロック、交互、およびランダムコポリマー、あるいは3-置換基がそのαもしくはβ位のいずれかに酸素置換、またはそのαもしくはβ位のいずれかにヘテロ原子を有するアルキル、アリール、またはアルキル/アリール部分である、位置規則性ポリ(3-置換チオフェン)と、CH2CHAr(Ar=任意のアリールまたは官能基付加アリール基)、イソシアネート、酸化エチレン、共役ジエン、CH2CH2R(R=H、アルキル、Cl、Br、F、OH)、ラクタム、ラクトン、シロキサン、ATRPマクロイニシエーターなどの単量体から構築されたポリマーからなるブロックとのコポリマーとしてでありうる。
【0083】
コポリマーは、3-置換基がそのαもしくはβ位のいずれかに酸素置換、またはそのαもしくはβ位のいずれかにヘテロ原子を有するアルキル、アリール、またはアルキル/アリール部分である、位置規則性ポリ(3-置換チオフェン)を含むランダムまたは構造の明確なコポリマー、あるいは3-置換基がそのαもしくはβ位のいずれかに酸素置換、またはそのαもしくはβ位のいずれかにヘテロ原子を有するアルキル、アリール、またはアルキル/アリール部分である、位置規則性ポリ(3-置換チオフェン)と、一つまたは複数の官能基化チオフェン誘導体からなるブロックとのコポリマーとして、あるいは3-置換基がそのαもしくはβ位のいずれかに酸素置換、またはそのαもしくはβ位のいずれかにヘテロ原子を有するアルキル、アリール、またはアルキル/アリール部分である、位置規則性ポリ(3-置換チオフェン)として、あるいは一つまたは複数のチオフェン単位からなるランダムまたは構造の明確なコポリマーとしての、3-置換基がそのαもしくはβ位のいずれかに酸素置換、またはそのαもしくはβ位のいずれかにヘテロ原子を有するアルキル、アリール、またはアルキル/アリール部分である、位置規則性ポリ(3-置換チオフェン)のコポリマーとしてでありうる。
【0084】
コポリマーは、3-置換基がそのαもしくはβ位のいずれかに酸素置換、またはそのαもしくはβ位のいずれかにヘテロ原子を有するアルキル、アリール、またはアルキル/アリール部分である、位置規則性ポリ(3-置換チオフェン)、あるいは3-置換基がそのαもしくはβ位のいずれかに酸素置換、またはそのαもしくはβ位のいずれかにヘテロ原子を有するアルキル、アリール、またはアルキル/アリール部分である、位置規則性ポリ(3-置換チオフェン)と、一つまたは複数の官能基化オリゴチオフェン(これもランダムまたは構造が明確である)からなるランダムまたは構造の明確なポリマーのブロックとのコポリマーとしてでありうる。
【0085】
外部電流をかけたときに蛍光および/またはリン光プロセスにより光子を放出する装置でありうる、エレクトロルミネセンス装置を製造することができる。装置は、最低でも、装置に電力供給するための電位をかける二つの電極と、その間の光の放出を担うルミネセンス材料とを有しうる。
【0086】
陽極および陰極の特定のストリップに電力供給することにより任意の一つの個別の画素が照射され、ここで選択された画素は二つの電極の交点を形成する、発光ダイオード画素のマトリックスを含む装置でありうる、パッシブマトリックス装置を製造することができる。
【0087】
画素を制御し、画素に電力供給するために必要な電流を供給するためのスイッチとしてはたらく、任意の一つの個別の画素の上、下、または隣接して配置される一つまたは複数のトランジスターを制御することにより画素が照射される、発光ダイオード画素のマトリックスを含む装置である、アクティブマトリックスを製造することができる。
【0088】
光が制御トランジスター回路を含む装置の一つまたは複数の層と反対方向に放射するアクティブマトリックス装置である、トップエミッション型エレクトロルミネセンス装置を製造することができる。
【0089】
光が制御トランジスター回路を含む装置の一つまたは複数の層の方向に放射し、回路を通ってまたは隣接して光るアクティブマトリックス装置である、ボトムエミッション型エレクトロルミネセンス装置を製造することができる。
【0090】
HILは、電極からエレクトロルミネセンス材料に直接、または続くHTL材料に陽電荷を運び、かつ個別の一体型層、あるいは複数のポリマーもしくは分子HIL、エレクトロルミネセンス材料を含むHIL、または導電性もしくは非導電性充填剤の加工補助物質を含むHILなどの機能性を有する材料の混和物または混合物からなる、エレクトロルミネセンス装置の成分でありうる。個別の構造単位もしくはアレイに組織化される一つもしくは複数のHIL活性材料、または一つもしくは両方の材料が結合して、ポリマーもしくは超分子骨格などの非活性組織化マトリックスとなるHIL活性材料の組み合わせであってもよい。
【0091】
HTLは、HILまたはHTLからエレクトロルミネセンス材料に直接、または続くHTL材料に陽電荷を運び、かつ個別の一体型層、あるいは複数のポリマーもしくは分子HTL、エレクトロルミネセンス材料を含むHTL、または導電性もしくは非導電性充填剤の加工補助物質を含むHTLなどの機能性を有する材料の混和物または混合物からなる、エレクトロルミネセンス装置の成分でありうる。個別の構造単位もしくはアレイに組織化される一つもしくは複数のHTL活性材料、または一つもしくは両方の材料が結合して、ポリマーもしくは超分子骨格などの非活性組織化マトリックスとなるHTL活性材料の組み合わせであってもよい。
【0092】
HIL/HTLはスピンキャスティング、ドロップキャスティング、蒸着もしくはスパッタリング、ディップコーティング、またはインクジェット法、オフセット法、転写法などの印刷技術、または噴霧塗布により製造することができる。
【0093】
さらに他の態様
本発明の第一の態様は、HIL/HTLが、3-置換基がそのαもしくはβ位のいずれかに酸素置換、またはそのαもしくはβ位のいずれかにヘテロ原子を有するアルキル、アリール、またはアルキル/アリール部分である、位置規則性ポリ(3-置換チオフェン)ならびにこれらの材料のコポリマーを含み、これはドープされていないか、または、例えば、臭素、ヨウ素、塩素、三塩化鉄、三塩化金、五フッ化ヒ素、プロトン性の酸、NOPF6もしくはNOBF4などのニトロソニウム塩、または有機酸化剤でドープされている、エレクトロルミネセンス装置である。図7は例示を提供する。
【0094】
本発明のもう一つの第二の態様は、HIL/HTLが、3-置換基がそのαもしくはβ位のいずれかに酸素置換、またはそのαもしくはβ位のいずれかにヘテロ原子を有するアルキル、アリール、またはアルキル/アリール部分である、位置規則性ポリ(3-置換チオフェン)ならびにこれらの材料のコポリマーを含み、これはドープされていないか、または、例えば、臭素、ヨウ素、塩素、三塩化鉄、三塩化金、五フッ化ヒ素、プロトン性の酸、NOPF6もしくはNOBF4などのニトロソニウム塩、または有機酸化剤でドープされており、EL材料と混和され、非混和ELLと非混和HIL/HTLまたは陽極との間の遷移層として適用されている、エレクトロルミネセンス装置である。適当なEL材料には、低分子およびポリマーエレクトロルミネセンス材料の両方が含まれる。図8は例示を提供する。
【0095】
本発明のもう一つの第三の態様は、HIL/HTLが、3-置換基がそのαもしくはβ位のいずれかに酸素置換、またはそのαもしくはβ位のいずれかにヘテロ原子を有するアルキル、アリール、またはアルキル/アリール部分である、位置規則性ポリ(3-置換チオフェン)ならびにこれらの材料のコポリマーを含み、これはドープされていないか、または、例えば、臭素、ヨウ素、塩素、三塩化鉄、三塩化金、五フッ化ヒ素、プロトン性の酸、NOPF6もしくはNOBF4などのニトロソニウム塩、または有機酸化剤でドープされており、EL材料と完全に混和され、HIL/HTLまたは陽極上に直接適用されている、エレクトロルミネセンス装置である。適当なEL材料には、低分子およびポリマーエレクトロルミネセンス材料の両方が含まれる。図9は例示を提供する。
【0096】
本発明のもう一つの第四の態様は、HIL/HTLが、3-置換基がそのαもしくはβ位のいずれかに酸素置換、またはそのαもしくはβ位のいずれかにヘテロ原子を有するアルキル、アリール、またはアルキル/アリール部分である、位置規則性ポリ(3-置換チオフェン)ならびにこれらの材料のコポリマーを含み、これはドープされていないか、または、例えば、臭素、ヨウ素、塩素、三塩化鉄、三塩化金、五フッ化ヒ素、プロトン性の酸、NOPF6もしくはNOBF4などのニトロソニウム塩、または有機酸化剤でドープされており、もう一つのHIL/HTL材料と混和され、非混和ELLと非混和HIL/HTLまたは陽極との間の遷移層として適用されている、エレクトロルミネセンス装置である。適当なHIL/HTL材料には、低分子およびポリマーエレクトロルミネセンス材料の両方が含まれる。図10は例示を提供する。
【0097】
本発明のもう一つの第五の態様は、HIL/HTLが、3-置換基がそのαもしくはβ位のいずれかに酸素置換、またはそのαもしくはβ位のいずれかにヘテロ原子を有するアルキル、アリール、またはアルキル/アリール部分である、位置規則性ポリ(3-置換チオフェン)ならびにこれらの材料のコポリマーを含み、これはドープされていないか、または、例えば、臭素、ヨウ素、塩素、三塩化鉄、三塩化金、五フッ化ヒ素、プロトン性の酸、NOPF6もしくはNOBF4などのニトロソニウム塩、または有機酸化剤でドープされており、ポリマー陽極材料と混和され、非混和ポリマー陽極と非混和HIL/HTLまたはELLとの間の遷移層として適用されている、エレクトロルミネセンス装置である。適当なポリマー陽極材料には、PEDOT、ポリ(3-置換)チオフェン、ポリ(3-置換)チエニレンビニレン、ポリアニリン、ポリフェニレンビニレン、ポリ(N-置換)ピロール、およびポリアセチレン製のものなどの高度導電および透明導電ポリマーが含まれる。図11は例示を提供する。
【0098】
本発明のもう一つの第六の態様は、HIL/HTLが、3-置換基がそのαもしくはβ位のいずれかに酸素置換、またはそのαもしくはβ位のいずれかにヘテロ原子を有するアルキル、アリール、またはアルキル/アリール部分である、位置規則性ポリ(3-置換チオフェン)ならびにこれらの材料のコポリマーを含み、これはドープされていないか、または、例えば、臭素、ヨウ素、塩素、三塩化鉄、三塩化金、五フッ化ヒ素、プロトン性の酸、NOPF6もしくはNOBF4などのニトロソニウム塩、または有機酸化剤でドープされており、ポリマー陽極材料と完全に混和され、非混和HIL/HTLまたはELLに直接伝導される、エレクトロルミネセンス装置である。適当なポリマー陽極材料には、PEDOT、ポリ(3-置換)チオフェン、ポリ(3-置換)チエニレンビニレン、ポリアニリン、ポリフェニレンビニレン、ポリ(N-置換)ピロール、およびポリアセチレン製のものを含む高度導電および透明導電ポリマーが含まれる。図12は例示を提供する。
【0099】
本発明のもう一つの第七の態様は、HIL/HTLが、3-置換基がそのαもしくはβ位のいずれかに酸素置換、またはそのαもしくはβ位のいずれかにヘテロ原子を有するアルキル、アリール、またはアルキル/アリール部分である、位置規則性ポリ(3-置換チオフェン)ならびにこれらの材料のコポリマーを含み、これはドープされていないか、または、例えば、臭素、ヨウ素、塩素、三塩化鉄、三塩化金、五フッ化ヒ素、プロトン性の酸、NOPF6もしくはNOBF4などのニトロソニウム塩、または有機酸化剤でドープされている、パッシブマトリックスエレクトロルミネセンス装置である。
【0100】
本発明のもう一つの第八の態様は、HIL/HTLが、3-置換基がそのαもしくはβ位のいずれかに酸素置換、またはそのαもしくはβ位のいずれかにヘテロ原子を有するアルキル、アリール、またはアルキル/アリール部分である、位置規則性ポリ(3-置換チオフェン)ならびにこれらの材料のコポリマーを含み、これはドープされていないか、または、例えば、臭素、ヨウ素、塩素、三塩化鉄、三塩化金、五フッ化ヒ素、プロトン性の酸、NOPF6もしくはNOBF4などのニトロソニウム塩、または有機酸化剤でドープされている、ボトムエミッション型アクティブマトリックスエレクトロルミネセンス装置である。
【0101】
本発明のもう一つの第九の態様は、HIL/HTLが、3-置換基がそのαもしくはβ位のいずれかに酸素置換、またはそのαもしくはβ位のいずれかにヘテロ原子を有するアルキル、アリール、またはアルキル/アリール部分である、位置規則性ポリ(3-置換チオフェン)ならびにこれらの材料のコポリマーを含み、これはドープされていないか、または、例えば、臭素、ヨウ素、塩素、三塩化鉄、三塩化金、五フッ化ヒ素、プロトン性の酸、NOPF6もしくはNOBF4などのニトロソニウム塩、または有機酸化剤でドープされている、トップエミッション型アクティブマトリックスエレクトロルミネセンス装置である。
【0102】
第十の態様において、チオフェン環の4位も置換することができる。4位の置換は3位と同じ置換基を提供することができ、対照置換パターンを示す。または3位および4位の置換は異なる置換基で、非対称置換パターンを提供することもできる。4位の置換基として用いることができる基の例には、メチル、エチル、プロピル、ブチルなどを含むアルキル、アリール、およびアルキルアリール基が含まれる。他の例には、ヘテロ原子を有するものを含む、3位について本明細書に記載の任意の置換基が含まれる。
【0103】
第十一の態様において、HILおよびELL材料は互いに結合されている。結合はイオンまたは共有結合でありうる。配位結合を用いることもできる。例えば、一つの材料が求核基を有し、他の材料が親電子基を有することができ、これらは互いに反応して共有結合を形成することができる。例えば、アミンのアルデヒド、カルボン酸、またはエステルの反応を含む共有結合法は、当技術分野において公知である。
【0104】
3-置換基がそのαもしくはβ位のいずれかに酸素置換、またはそのαもしくはβ位のいずれかにヘテロ原子を有するアルキル、アリール、またはアルキル/アリール部分である、位置規則性ポリ(3-置換チオフェン)、ならびにコポリマーを含むHIL/HTLを含むエレクトロルミネセンス装置の良好な性能は、p型材料が制御された導電状態(非ドープ半導体状態を含みうる)である場合に達成される。p型材料の金属不純物および他の不純物の混入は、約1,000ppmを超えないよう、または特に約500ppmを超えないように制御することができる。さらに好ましくは、不純物レベルは約150ppm以下である。不純物レベルは、原子吸光分析、光誘導X線放射分析、および他の当技術分野において公知の方法により測定することができる。
【0105】
好ましい態様
以下に当業者であれば実施することができる他の好ましい態様を示す:
1)3-置換基がそのα-位に酸素置換を有するアルキル、アリール、またはアルキル/アリール部分である、位置規則性ポリ(3-置換チオフェン)の、エレクトロルミネセンス装置のHIL/HTLとしての使用。
2)3-置換基がそのβ-位に酸素置換を有するアルキル、アリール、またはアルキル/アリール部分である、位置規則性ポリ(3-置換チオフェン)の、エレクトロルミネセンス装置のHIL/HTLとしての使用。
3)3-置換基がそのα-位にヘテロ原子を有するアルキル、アリール、またはアルキル/アリール部分である、位置規則性ポリ(3-置換チオフェン)の、エレクトロルミネセンス装置のHIL/HTLとしての使用。
4)ヘテロ原子が「S」または「O」である、好ましい態様#3。
5)位置規則性ポリ(3-置換チオフェン)がコポリマーである、態様#1〜4。
6)コポリマーがブロックコポリマーである、態様#5。
7)コポリマーが交互コポリマーである、態様#5。
8)コポリマーがランダムコポリマーである、態様#5。
9)コポリマーが非チオフェン単位を含む、態様#5〜8。
10)非チオフェン単位がCH2CHAr(Arは任意のアリールまたは官能基付加アリール基である)から誘導される、態様#9。
11)非チオフェン単位がイソシアネートから誘導される、態様#9。
12)非チオフェン単位が酸化エチレンから誘導される、態様#9。
13)非チオフェン単位が共役ジエンから誘導される、態様#9。
14)非チオフェン単位がラクトンから誘導される、態様#9。
15)非チオフェン単位がラクタムから誘導される、態様#9。
16)非チオフェン単位がシロキサンから誘導される、態様#9。
17)非チオフェン単位がCH2CH2R(RはClである)から誘導される、態様#9。
18)非チオフェン単位がCH2CH2R(RはOHである)から誘導される、態様#9。
19)非チオフェン単位がCH2CH2R(RはHである)から誘導される、態様#9。
20)非チオフェン単位がCH2CH2R(RはCH3である)から誘導される、態様#9。
21)非チオフェン単位がCH2CH2R(Rはアルキル基である)から誘導される、態様#9。
22)非チオフェン単位がCH2CH2R(RはFである)から誘導される、態様#9。
23)非チオフェン単位がCH2CH2R(RはBrである)から誘導される、態様#9。
24)一つまたは複数のチオフェン単位から誘導される非位置規則性ポリ(3-置換チオフェン)単位を含む、態様#9。
25)ランダムまたは構造が明確でもある一つまたは複数の官能基付加オリゴチオフェンから誘導される非位置規則性ポリ(3-置換チオフェン)単位を含む、態様#9。
26)構造が明確でもある一つまたは複数の官能基付加オリゴチオフェンから誘導される非位置規則性ポリ(3-置換チオフェン)単位を含む、態様#9。
27)HIL/HTL層が酸化剤でドープされている、態様#1〜26。
28)ドーピング剤が臭素である、態様#27。
29)ドーピング剤がヨウ素である、態様#27。
30)ドーピング剤が塩素である、態様#27。
31)ドーピング剤が三塩化鉄である、態様#27。
32)ドーピング剤が三塩化金である、態様#27。
33)ドーピング剤が五フッ化ヒ素である、態様#27。
34)ドーピング剤がプロトン性の酸である、態様#27。
35)ドーピング剤がニトロソニウム塩である、態様#27。
36)ニトロソニウム塩がNOPF6である、態様#35。
37)ニトロソニウム塩がNOBF4である、態様#35。
38)ドーピング剤が有機酸化剤である、態様#27。
39)HIL/HTLがEL材料と混和され、非混和ELLと非混和HIL/HTLまたは陽極との間の遷移層として適用されている、態様#1〜38。
40)EL材料が低分子またはポリマーエレクトロルミネセンス材料のいずれかである、態様#39。
41)HIL/HTLがEL材料と完全に混和され、非混和HIL/HTLまたは陽極上に適用されている、態様#1〜38。
42)EL材料が低分子またはポリマーエレクトロルミネセンス材料のいずれかである、態様#41。
43)HIL/HTLがもう一つのHIL/HTL材料と混和され、非混和ELLと非混和HIL/HTLまたは陽極との間の遷移層として適用されている、態様1〜38。
44)もう一つのHIL/HTL材料がPEDOT、フタロシアニン銅(CuPc)、NPD、NPB、PVK、TPDまたは他の有機低分子もしくはポリマー材料である、態様#43。
45)HIL/HTLがポリマー陽極材料と混和され、非混和ポリマー陽極と非混和HIL/HTLまたはELLとの間の遷移層として適用されている、態様#1〜38。
46)ポリマー陽極材料がPEDOT、ポリ(3-置換)チオフェン、ポリアニリン、ポリフェニレンビニレン、ポリアセチレン、またはその組み合わせである、態様#45。
47)HIL/HTLがポリマー陽極材料と完全に混和され、非混和HIL/HTLまたはELLに電荷を伝導するよう適用されている、態様#1〜38。
48)ポリマー陽極材料がPEDOT、ポリ(3-置換)チオフェン、ポリアニリン、ポリフェニレンビニレン、ポリアセチレン、またはその組み合わせである、態様#47。
49)装置がボトムエミッション型アクティブマトリックスエレクトロルミネセンス装置である、態様#1〜48。
50)装置がパッシブマトリックスエレクトロルミネセンス装置である、態様#1〜48。
51)装置がトップエミッション型アクティブマトリックスエレクトロルミネセンス装置である、態様#1〜48。
52)使用がp型材料としてであり、p型材料への金属不純物および他の不純物の混入が、約1,000ppmを超えない、特に約500ppmを超えない、特に約150ppmを超えない、態様#1〜51。
53)過フルオロアルキルおよびアリール基を含む、フッ素置換アルキルおよびアリール官能基を含む位置規則性ポリ(3-置換チオフェン)が用いられる、態様#1〜52。
54)HIL/HTL層が中性またはドープされていない、態様#1〜53。
【0106】
他の好ましい態様:
先行仮出願第60/612,640号は65の請求項を含み、これらは参照により本明細書に組み入れられる。これらの請求項において、一つの態様を本明細書において「ABC」と呼ぶが、これは、3-置換基がそのαまたはβ位のいずれかにヘテロ原子置換を有するアルキル、アリール、またはアルキル/アリール部分である、位置規則性ポリ(3-置換チオフェン)を含む少なくとも一つのポリマーを含むHIL/HTL層を含むエレクトロルミネセンス装置を含む。置換は酸素または硫黄によるものでありうる。他の特定の態様は以下のABCの装置を含む:
-置換が酸素による。
-置換が硫黄による。
-置換がアルファ位にある。
-置換がベータ位にある。
-置換がアルファ位の酸素である。
-置換がベータ位の酸素である。
-位置規則性ポリ(3-置換チオフェン)がホモポリマーである。
-ポリマーがホモポリマーである。
-ポリマーがコポリマーである。
-ポリマーがブロックコポリマーである。
-ポリマーがABAブロックコポリマーである。
-ポリマーがABブロックコポリマーである。
-ポリマーが交互コポリマーである。
-ポリマーがランダムコポリマーである。
-ポリマーが非チオフェン単位を含むコポリマーである。
-ポリマーが非チオフェン単位を含むブロックコポリマーである。
-ポリマーが少なくとも一つの他のポリマーと混合されている。
-ポリマーが少なくとも一つの他の本質的に導電性ポリマーと混合されている。
-ポリマーが非チオフェン単位を含む。
-非チオフェン単位があり、非チオフェン単位がアリールまたは官能基付加アリール基を含む。
-非チオフェン単位があり、非チオフェン単位がウレタンまたは尿素結合を含む。
-非チオフェン単位があり、非チオフェン単位が酸化アルキレン単位を含む。
-非チオフェン単位があり、非チオフェン単位がエチレン不飽和単位を含む。
-非チオフェン単位があり、非チオフェン単位がラクトンまたはラクタムから誘導される単位を含む。
-非チオフェン単位があり、非チオフェン単位がシロキサン単位を含む。
-非チオフェン単位があり、非チオフェン単位がCH2CH2R(RはCl、OH、H、CH3、アルキル、F、またはBrである)から誘導される。
-非チオフェン単位があり、非チオフェン単位がATRPマクロイニシエーターから誘導される。
-ポリマーがポリマー鎖中に少なくとも二つの異なるチオフェン単位を含むコポリマーである。
-ポリマーがポリマー鎖中に少なくとも二つの異なる官能基付加チオフェン単位を含むコポリマーである。
-ポリマーが一つまたは複数のチオフェン単位から誘導される非ポリ(3-置換チオフェン)単位を含む。
-ポリマーが一つまたは複数の官能基付加チオフェン単位から誘導される非ポリ(3-置換チオフェン)単位を含む。
-ポリマーが非位置規則性ポリ(3-置換チオフェン)単位を含む。
-ポリマーが非位置規則性ポリ(3-置換チオフェン)単位を含む。
-ポリ(3-置換チオフェン)が4位でさらに置換されている。
-HIL/HTL層が酸化剤であるドーピング剤でドープされている。
-HIL/HTL層がドーピング剤でドープされており、ドーピング剤が臭素、ヨウ素、もしくは塩素であるか、または
-ドーピング剤が三塩化鉄である。
-ドーピング剤が三塩化金である。
-ドーピング剤が五フッ化ヒ素である。
-ドーピング剤がプロトン性の酸である。
-ドーピング剤がニトロソニウム塩である。
-ニトロソニウム塩がNOPF6またはNOBF4である。
-ドーピング剤が有機酸化剤である。
-HIL/HTL層が、EL材料と混和され、非混和ELLと非混和HIL/HTLまたは陽極との間の遷移層として適用されているHIL/HTL材料を含む。
-装置がEL材料を含み、EL材料が低分子またはポリマーエレクトロルミネセンス材料のいずれかである。
-装置が、EL材料と完全に混和され、非混和HIL/HTLまたは陽極と直接接触して適用されているHIL/HTL材料を含む。
-EL材料が低分子またはポリマーエレクトロルミネセンス材料のいずれかである。
-装置が、混和され、非混和ELLと非混和HIL/HTLまたは陽極との間の遷移層として適用されているHIL/HTL材料を含む。
-装置が、PEDOT、フタロシアニン銅(CuPc)、NPD、NPB、PVK、TPDまたは他の有機低分子もしくはポリマー材料であるHIL/HTL材料を含む。
-装置が、ポリマー陽極材料と混和され、非混和ポリマー陽極と非混和HIL/HTLまたはELLとの間の遷移層として適用されているHIL/HTL材料を含む。
-ポリマー陽極がPEDOT、ポリ(3-置換)チオフェン、ポリアニリン、ポリフェニレンビニレン、またはポリアセチレンである。
-装置が、ポリマー陽極材料と完全に混和され、非混和HIL/HTLまたはELLに電荷を伝導するよう適用されているHIL/HTL材料を含む。
-装置がボトムエミッション型アクティブマトリックスエレクトロルミネセンス装置である。
-装置がパッシブマトリックスエレクトロルミネセンス装置である。
-装置がトップエミッション型アクティブマトリックスエレクトロルミネセンス装置である。
-ポリマーへの金属不純物および他の不純物の混入が約1,000ppm以下である。
-ポリマーへの金属不純物および他の不純物の混入が約500ppm以下である。
【0107】
もう一つの態様は、3-置換基がそのα位に酸素または硫黄置換を有するアルキル、アリール、またはアルキル/アリール部分である、位置規則性ポリ(3-置換チオフェン)の、エレクトロルミネセンス装置におけるHIL/HTLとしての使用である。
【0108】
もう一つの態様は、3-置換基がそのβ-位に酸素または硫黄置換を有するアルキル、アリール、またはアルキル/アリール部分である、位置規則性ポリ(3-置換チオフェン)の、エレクトロルミネセンス装置におけるHIL/HTLとしての使用である。
【0109】
もう一つの態様は、3-置換基がそのαまたはβ位のいずれかにヘテロ原子を有するアルキル、アリール、またはアルキル/アリール部分である、位置規則性ポリ(3-置換チオフェン)の、エレクトロルミネセンス装置におけるHIL/HTLとしての使用である。
【0110】
もう一つの態様は、ELL材料とHIL/HTL材料とを含むエレクトロルミネセンス装置であって、HIL/HTL材料が、3-置換基がそのαまたはβ位のいずれかにヘテロ原子置換を有するアルキル、アリール、またはアルキル/アリール部分である、位置規則性ポリ(3-置換チオフェン)を含む少なくとも一つのポリマーを含み、HIL/HTL材料がELL層と結合している装置である。結合は共有結合でありうる。HIL/HTL層は中性またはドープされていなくてもよい。
【0111】
安定性
本明細書において提供される利点は、熱安定性の改善を含む安定性の改善を含む。安定性は、例えば、フィルムの形での導電性またはスペクトル吸収などのポリマーの特性の変化により測定することができる。スペクトル吸収は一つまたは複数のスペクトル波長で測定することができる。高ストレス、短期安定性実験から、動力学モデリングを通して、低ストレス、長期安定性挙動を推測することができる。一つの有用な試験は、試料を110℃で10分間加熱することを含む。物理的特性の変化は、例えば、30%以下、または20%以下、または10%以下でありうる。基準と比較して、安定性は少なくとも10%、または少なくとも20%、または少なくとも30%改善されうる。
【0112】
実施例
以下の非限定的実施例も提供する。
【0113】
実施例1
ポリ(3-(l,4,7-トリオキサオクチル))チオフェン)(ICP)の2,3-ジクロロ-5,6-ジシアノ-1,4-ベンゾキノンによるドーピング
ICPを50mlメスフラスコに量り込み、クロロホルムをピペットでフラスコに加えてメスアップした。この溶液を、λmaxでの吸光度=1となるよう調製した。2,3-ジクロロ-5,6-ジシアノ-l,4-ベンゾキノン(DDQ)をバイアルに量り込み、クロロホルム5mlを1mlのマイクロピペットでバイアル中に加えた。一定量(20μl;ICPの反復単位に対して0.05eq)のDDQ/CHCl3溶液を、石英(1cm)キュベット中のICP/CHCl3溶液3mlにピペットで加えた。ドーパント溶液をそれぞれ添加した後、UV-Vis-NIRスペクトル(250〜2300nm)を得た。データは反復単位あたりのドーパント0.5モル等量に達するまで収集した。UVスペクトルデータを図13に示す。
【0114】
データ収集は、Caryモデル5000 UV-Vis-NIR分光計で、走査範囲180から2300nm、走査速度2000nm/分、二重ビームモードで操作して行った。基準線補正走査を、各測定または溶媒系の変更ごとに行った。
【0115】
実施例2
ポリ(3-(l,4,7-トリオキサオクチル))チオフェン)(ICP)のジノニルナフタレン-二スルホン酸(DNNDSA)によるドーピング
ICPを50mlメスフラスコに量り込み、クロロホルムをピペットでフラスコに加えてメスアップした。この溶液を、λmaxでの吸光度=1となるよう調製した。DNNDSAをバイアルに量り込み、クロロホルム5mlを1mlのマイクロピペットでバイアル中に加えた。一定量(20μl;ICPの反復単位に対して0.5eq)のDNNDSA/CHCl3溶液を、石英(1cm)キュベット中のICP/CHCl3溶液3mlにピペットで加えた。ドーパント溶液をそれぞれ添加した後、UV-Vis-NIRスペクトル(250〜2300nm)を得た。データは反復単位あたりのドーパント50モル等量に達するまで収集した。UVスペクトルデータを図14に示す。
【0116】
実施例3:同じICPのヨウ素ドーピングに比べてDDQでドープしたポリ(3-(l,4,7-トリオキサオクチル))チオフェン)(ICP)の熱安定性増大
DDQ(0.25eq)でドープしたICPのフィルムをクロロホルム溶液(3.0mg/mL)からキャストし、溶媒の飽和雰囲気下で乾燥させた。キャスティングの直後にスペクトルを得た。乾燥フィルムを窒素雰囲気ブランケット下、110℃のホットプレートに10分間置き、スペクトルを得た。ヨウ素対照は、3.0mg/mLクロロホルム溶液からキャストしたヨウ素蒸気曝露中性フィルムによるものであった。
【0117】
このヨウ素フィルムを、DDQドープ試料について記載したものと同じアニール条件に曝露した。UVスペクトルデータを図15に示す。熱安定性は、ヘキシル側鎖を有する、およびヘテロ原子置換のない、同様のポリチオフェンと比べて良好であった。
【図面の簡単な説明】
【0118】
【図1】3-置換基のαおよびβ位を示した、位置規則性ポリ(3-置換チオフェン)を例示する図である。
【図2】αヘテロ置換を有するポリ(3-置換チオフェン)、ポリ(3-[α-チアヘプチル]チオフェン)を例示する図である。
【図3】βヘテロ置換を有するポリ(3-置換チオフェン)、ポリ(3-[β-オキサヘプチル]チオフェン)を例示する図である。
【図4】αヘテロ置換を含む複数のヘテロ原子置換を有するポリ(3-置換チオフェン)、ポリ(3-[α,δ,η-トリオキサオクチル]チオフェン)を例示する図である。
【図5】βヘテロ置換を含む複数のヘテロ原子置換を有するポリ(3-置換チオフェン)、ポリ(3-[β,ε,θ-トリオキサノニル]チオフェン)を例示する図である。
【図6】位置規則性ポリ(3-置換)チオフェンの(A)AB型コポリマー、および(B)ABA型コポリマーを含む、異なる型のブロックコポリマーの概略図である(Bユニットはブロックポリチオフェンであり、Aユニットは別の型のコポリマーブロックである)。
【図7】電極の間に二つの陽極を有するEL装置のための態様1を例示する図である。
【図8】EL装置のための態様2を例示する図である。
【図9】EL装置のための態様3を例示する図である。
【図10】EL装置のための態様4を例示する図である。
【図11】EL装置のための態様5を例示する図である。
【図12】EL装置のための態様6を例示する図である。
【図13】ICPのDDQによるドーピングのUV-VIS-NIRスペクトルデータを示す図である(実施例1)。
【図14】ICPのDNNDSAによるドーピングのUV-VIS-NIRスペクトルデータを示す図である(実施例2)。
【図15】DDQでドープしたICPとヨウ素による無機酸化の熱安定性改善についてのUV-VIS-NIRスペクトルデータを示す図である(実施例3)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
3-置換基がそのαまたはβ位のいずれかにヘテロ原子置換を有するアルキル、アリール、またはアルキル/アリール部分である、位置規則性(regio-regular)ポリ(3-置換チオフェン)を含む少なくとも一つのポリマーを含むHIL/HTL層を含むエレクトロルミネセンス装置であって、
HIL/HTL層は酸化剤であるドーピング剤でドープされており;かつドーピング剤は有機酸化剤である装置。
【請求項2】
置換が酸素である、請求項1記載の装置。
【請求項3】
置換がアルファ位にある、請求項1記載の装置。
【請求項4】
置換がアルファ位の酸素である、請求項1記載の装置。
【請求項5】
ポリマーがホモポリマーである、請求項1記載の装置。
【請求項6】
ポリマーがコポリマーである、請求項1記載の装置。
【請求項7】
ポリマーがブロックコポリマーである、請求項1記載の装置。
【請求項8】
ポリマーがランダムコポリマーである、請求項1記載の装置。
【請求項9】
ポリマーがポリマー鎖中に少なくとも二つの異なるチオフェン単位を含むコポリマーである、請求項1記載の装置。
【請求項10】
ポリマーがポリマー鎖中に少なくとも二つの異なる官能基付加チオフェン単位を含むコポリマーである、請求項1記載の装置。
【請求項11】
ポリマーが非位置規則性ポリ(3-置換チオフェン)単位を含む、請求項1記載の装置。
【請求項12】
層が正孔注入層である、請求項1記載の装置。
【請求項13】
層が正孔輸送層である、請求項1記載の装置。
【請求項14】
金属不純物レベルが約500ppm未満であり、かつ3-置換基がアルファ位に酸素置換を有するアルキル基である、請求項1記載の装置。
【請求項15】
金属不純物レベルが約150ppm未満であり、かつ3-置換基がアルファ位に酸素置換を有するアルキル基である、請求項4記載の装置。
【請求項16】
3-置換基がそのαまたはβ位のいずれかにヘテロ原子置換を有するアルキル、アリール、またはアルキル/アリール部分である、位置規則性ポリ(3-置換チオフェン)を含む少なくとも一つのポリマーを含むHIL/HTL層を含むエレクトロルミネセンス装置であって、3-置換基はα位に酸素置換を有するアルキル基であり、かつポリマーはホモポリマーである装置。
【請求項17】
3-置換基がそのαまたはβ位のいずれかにヘテロ原子置換を有するアルキル、アリール、またはアルキル/アリール部分である、位置規則性ポリ(3-置換チオフェン)を含む少なくとも一つのポリマーを含むHIL/HTL層を含むエレクトロルミネセンス装置であって、3-置換基はα位に酸素置換を有するアルキル基であり、かつポリマーはランダムコポリマーである装置。
【請求項18】
位置規則性ポリ(3-置換チオフェン)を含む少なくとも一つのポリマーを含むHIL/HTL層を含むエレクトロルミネセンス装置であって、3-置換基はα位に酸素置換を有するアルキル基であり、かつポリマーは有機酸化剤でドープされている装置。
【請求項19】
位置規則性ポリ(3-置換チオフェン)を含む少なくとも一つのポリマーを含むHIL/HTL層を含むエレクトロルミネセンス装置であって、3-置換基はα位に酸素置換を有するアルキル基であり、かつポリマーはUV-Vis-NIR分析で示されるとおり、110℃、10分間での安定性を提供するために有機酸化剤で十分にドープされている装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公表番号】特表2008−515194(P2008−515194A)
【公表日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−533635(P2007−533635)
【出願日】平成17年9月26日(2005.9.26)
【国際出願番号】PCT/US2005/034042
【国際公開番号】WO2006/036755
【国際公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【出願人】(507094393)プレックストロニクス インコーポレーティッド (24)
【Fターム(参考)】